説明

容器入り氷菓

【課題】スプーン刺さりの良い氷菓となる容器入り氷菓を提供する。
【解決手段】炭酸ガスを含有し、5℃におけるゲル強度を0.05〜2.2N/cmとする。更にゲル化剤として、カラギナン、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びマンナンから選ばれる1種又は2種以上を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を開封した直後においても氷菓が柔らかくスプーン刺さりが良くなるため食しやすい、容器入り氷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸ガスを含有するシャーベットについては種々検討されている。例えば、冷菓原料液に安定剤を添加し、殺菌後冷却し、炭酸ガスを加圧溶解し、密封し、低温度で冷却、凍結する、開封時炭酸ガスの膨張拡散による微細な氷の結晶を有する泡状の炭酸を含有するシャーベットの製造法が記載されており、安定剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC),寒天、ゼラチンなどが挙げられている(特許文献1〜2)。
【0003】
この方法によると、例えば、CMCを使用した場合は、凍結してシャーベットとした場合、シャーベットが固くなりスプーン刺さりが良くなかったり、また、冷蔵状態ではゲル化せずゼリーとならない。また、寒天やゼラチンを使用した場合、これらゲル化剤を溶解するため80〜100℃程度の高温加熱をする必要があったり、ゲル化剤を溶解する際に発泡がひどく製造上困難となったりするという問題点があった。
【0004】
一方、ガス圧が0.5〜1.5kg/cmの炭酸ガスとゲル化剤を含有する発泡性冷菓のゲル化剤として、ゼラチン、カラギナン及び寒天よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられており、氷菓としては実施例2にコーラ風味バーが記載されている(特許文献3)。但し、アイスバーは、抜き取り用モールド充填という開放系で製造するものが一般的であり、そもそもアイスバーにはスプーン刺さりを良くするという課題はないものである。
【0005】
このように、炭酸ガスを含有するシャーベットについて、スプーン刺さりの改善や、また製造中における課題があった。更には、炭酸ガスの圧力を高くすると(例えば、2.0kg/cm以上)、容器としてアルミ缶容器に充填した場合、凍結すると内容物が膨張して缶が変形するという問題点もあり、改善策が求められていた。
【0006】
一方で、シャーベット状ゼリー菓子や、凍結ゼリー飲料などのゲル化剤として、カラギナン、ローカストビーンガム、キサンタンガムが使用できることが知られている(特許文献4〜7など)。特許文献4には、燐酸カリウム、精製ローカストビーン、カラギーナン、グリコース等の配合からなるゼリー化剤を使用して製造したゼリー菓子は凍結後においてもスプーンで食するのに差し支えない程度の柔らかさを保っていると記載されているものの、実際には、冷凍庫から出した直後には、凍結ゼリーはとても固くスプーンがとても刺さるものではなかった。特許文献5には、リキュール類を含むシャーベットの安定剤としてカラギーナン、ローカストビーンガムなどのガム類が記載されているが、ゲル状組織とならない量の添加しか提案されていない。
【0007】
特許文献6には、室温または冷蔵ではゼリー状であり、冷凍することによりシャーベットゼリー状となる凍結ゼリー飲料として、ゲル化剤にカラギーナンとローカストビーンガムが挙げられており、冷凍庫から取り出した直後もスプーンなしで細い飲み口からそのまま飲食することが可能であり、ソフトで滑らかな食感と清涼感のある凍結ゼリー飲料となると記載されている。しかし、カラギーナンとローカストビーンガムを使用した場合であっても、実施例において凍結後のやわらかさが好ましくない系が挙げられており、固く凍結してしまう場合もあった。特許文献7には、アルコール、ミキサーおよび安定剤を含む凍結しうるアルコール飲料であって、安定剤に、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガムまたはそれらの混合物が使用できることが記載されている。しかし、スプーン刺さりの改善については一切検討されていない。
【0008】
【特許文献1】特公昭48−6788号公報
【特許文献2】特公昭47−19号公報
【特許文献3】特開平6−261690号公報
【特許文献4】特開昭50−36666号公報
【特許文献5】特公平7−40884号公報
【特許文献6】特開2002−272431号公報
【特許文献7】特表2002−530098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、冷凍庫から出した直後であっても、氷菓が柔らかいためスプーンの刺さりが極めて良好であり食しやすい容器入り氷菓を、工業的に問題なく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、炭酸ガスを含有した状態で、かつ、5℃におけるゲル強度が0.05〜2.2N/cmとなるようにゲル化させたところ、冷凍庫から出した直後においても、容器開封後に炭酸ガスの膨張拡散による微細な氷の結晶を有する泡状の氷菓となり、かかる氷菓が柔らかいためスプーンの刺さりが極めて良好な氷菓となるため、冷凍庫から出した直後でも食しやすい、容器入り氷菓が製造できることを見い出した。
【0011】
また、ゼリー化するためのゲル化剤としてとして、カラギナン、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びマンナンから選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましいことを見いだした。
【0012】
すなわち本発明は、以下の態様を有する;
項1.炭酸ガスを含有し、5℃におけるゲル強度が0.05〜2.2N/cmであることを特徴とする容器入り氷菓。
項2.カラギナン、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びマンナンから選ばれる1種又は2種以上を含有する、項1に記載の容器入り氷菓。
項3.容器開封直後に炭酸ガスの膨張拡散により微細な氷の結晶を有する泡状の氷菓となる、項1又は2に記載の容器入り氷菓。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、冷凍庫から出した直後であってもスプーンの刺さりが極めて良好であるため食しやすい、容器入り氷菓を工業的に問題なく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の容器入り氷菓は、炭酸ガスを含有し、5℃におけるゲル強度が0.05〜2.2N/cmであることを特徴とする、容器入り氷菓である。
【0015】
本発明の容器入り氷菓は、まず、炭酸ガスを含有することが特徴である。炭酸ガスの食品中における含有量としては特に限定はないが、20℃のゲル状食品時における炭酸ガス圧が、0.5〜3.0ボリューム(kg/cm2)程度となる量を例示することができる。
【0016】
次に、本発明の容器入り氷菓は、5℃のゲル状食品時におけるゲル強度が0.05〜2.2N/cm、好ましくは0.05〜1.0N/cm、さらに好ましくは0.06〜0.5N/cm、となるように調整することが特徴である。ゲル強度を前述の範囲に設定することにより、冷凍庫から出した直後であっても氷菓が柔らかいためスプーンの刺さりが極めて良好であり、食しやすい氷菓となる。
【0017】
更には、炭酸ガスの含有量が多くなると、冷凍した場合、缶などの容器が変形することがあるが、上記ゲル強度に設定することにより、冷凍時における缶の変形も防止することができる。
【0018】
なお、ゲル強度を前記数値内となるように設定するためのゲル化剤としてとして、カラギナン(κ−カラギナン、ι−カラギナン)、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びマンナンから選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。具体的には、κ−カラギナン単独、ι−カラギナン単独、ネイティブ型ジェランガム単独、κ−カラギナン及びローカストビーンガムの組み合わせ、κ−カラギナンとマンナンの組み合わせ、キサンタンガムとローカストビーンガムの組み合わせ、κ−カラギナン、ローカストビーンガム及びキサンタンガムの組み合わせなどを挙げることができる。
【0019】
上記ゲル化剤の添加量は、前述のゲル強度の範囲内になるように適宜調整することができるが、例えば、κ−カラギナンを使用する場合、0.01〜1.3質量%、ι−カラギナンを使用する場合、0.05〜1.5質量%、ネイティブ型ジェランガムを使用する場合、0.05〜1.0質量%、キサンタンガムを使用する場合、0.01〜0.3質量%、ローカストビーンガムを使用する場合、0.01〜0.5質量%、マンナンを使用する場合、0.01〜0.2質量%を例示することができる。なお、各ゲル化剤について少ない添加量で使用する場合はゲル化剤単独使用ではゲル化しない場合があるため、複数のゲル化剤を組みあわせて使用する方が好ましい。
【0020】
その他、前述以外の増粘・ゲル化剤については、本発明の効果に影響を与えない限度で併用してもよい。その他の増粘・ゲル化剤としては、λ−カラギナン、タマリンドシードガム、タラガム、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、グァーガム、ファーセレラン、ペクチン、発酵セルロース、大豆多糖類等より適宜選択して使用することが出来る。
【0021】
本発明では、容器入り氷菓中、前記ゲル化剤に加えて、炭酸ガスを含有する。炭酸ガスを含有させる方法としては、常法で行うことができるが、例えば、前述のゲル化剤を常温の水に分散させた後、当該溶液を冷却してカーボネーションを行う。常温の水とは、特に加温や冷却の必要のない水性媒体であることを意図しており、特に限定されないが、0〜40℃程度を挙げることができる。分散方法も特に限定されず、攪拌装置、均質化装置などを用いることができる。
【0022】
また、前述のゲル化剤に加えて、副原料として、通常の食品において使用される、糖類、高甘味度甘味料、酸味料、調味料、色素、香料、果汁、果肉、ピューレ、保存料、エキス、糊料、pH調整剤、酒類、乳化剤、乳製品、蛋白質、ビタミン、その他ミネラル類等を任意に添加することもできる。
【0023】
特に、前述のゲル化剤と塩類とを組みあわせて使用しても良い。塩類の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を挙げることができる。ナトリウム塩の一例としては、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、カリウム塩の一例として、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸カリウム及び塩化カリウム等を挙げることができる。
【0024】
カルシウム塩の例として、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム等の水可溶性のカルシウム塩の形態で用いられるか、または牛乳や豆乳などの動・植物性乳並びにこれらの乳製品の形態で用いることができる。
【0025】
これら塩類の添加量としては、使用する食品処方の配合に応じて適宜調整することができるが、例えば、0.05〜0.3質量%程度を挙げることができる。
【0026】
本発明の容器入り氷菓の製造方法としては、特に限定はされないが、前述のゲル強度となるようにゲル化剤を配合し、他の副原料と合わせたゲル化剤含有分散溶液を調製し、当該溶液に炭酸ガスを含有させ、容器充填し、加熱殺菌後、冷却固化させて製造する方法を挙げることができる。
【0027】
炭酸ガスを含有させる方法(カーボネーション)も特に限定はなく、例えば、カーボネーターなどの装置を用いたり、後述するゲル化剤分散溶液と炭酸水を混合したりするなど、公知の方法で行うことができる。更に、カーボネーションを行う際は、ゲル化剤分散溶液を冷却しておくことが好ましく、例えば5℃以下に冷却しておくことが望ましい。得られた炭酸ガス封入ゲル化剤分散液を容器充填後、加熱殺菌を行う。容器としては、特に制限はないが、例えば、アルミ缶、スティール缶、ブロー成型されたポリエチレンテレフタレート製ボトル(ペットボトル)、ポリプロピレン(PP)製ボトル、ポリエチレン(PE)製ボトル、ガラスビンなどが挙げられる。
【0028】
なお、本発明の容器入り氷菓は、どのような製品にも適用でき、例えば、各種フルーツ風味のシャーベットをはじめとした各種製品に応用可能である。更には、0〜30℃程度の常温又は冷蔵下ではゼリーとなるため、ゼリーとして飲食することができる。具体的には、前述のゲル強度の範囲でゲル強度が低め(0.05〜0.5N/cm程度)の場合は、数回振ることによりドリンクゼリーとして飲用でき、また、ゲル強度を高め(0.5〜2.2N/cm程度)にすると、スプーンですくって食するような食用ゼリーとして飲食することが可能である。
【実施例】
【0029】
以下に、実験例及び実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0030】
実験例1:(ゲル化剤の違いによる試験)
下記表1に掲げる処方のうち、水、液糖を攪拌しつつ、砂糖、クエン酸三ナトリウム、クエン酸及びゲル化剤の粉体混合物を加え室温(25℃)で10分間攪拌分散した後、125g/250ml容量缶に充填し、5℃の炭酸水を125g注ぎ、密封して75℃20分間加熱殺菌した。水冷固化し、5℃でのゲル強度を測定し、ゲル・ゾルの状態を観察した(pH3.7)。
【0031】
ゲル強度測定方法
テクスチャーアナラーザーTA.XT.plus(Stable Micro Systems)使用。
プランジャー:直径25mm、ステンレス製
架台速度:1mm/s
品温:5℃
【0032】
また、マイナス20℃の冷凍庫で凍結して、缶入り氷菓を調製した。調製した氷菓について、容器開封直後のスプーン刺さりについて評価した。結果を表2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
注1)スプーン刺さりの評価
「◎」:缶開封直後、氷菓が柔らかく盛り上がった状態となり(図2参照)、スプーンがさっと刺さる。
「○」:缶開封直後、氷菓が盛り上がった状態となり(図2参照)、「◎」よりも氷菓の状態は固いがスプーンがさっと刺さる。
「△」:缶開封直後の氷菓の盛り上がりはないが、多糖類無添加の系よりは若干スプーンの刺さりが良い。
「×」:缶を開封しても氷菓の盛り上がりはなく、固い凍結ゲルとなり、多糖類無添加の系と同様に全くスプーンは刺さらない。
【0036】
表2より、開封直後にスプーン刺さりを良くするためには、冷蔵時にゲル状態となることが条件となった。また、実験例1−7と比較例1−2のように、冷蔵時にゲル状態であっても、その強度によって開封直後のスプーン刺さりが異なることをつきとめ、下記実験例2でその関係を詳細に試験した。
【0037】
また、ゲル化剤として一般的に知られている寒天やゼラチンを使用した場合は、溶解がうまく行かなかったり、ゲル化剤を添加する際に発泡したりといった問題が生じ、炭酸ガスを含有させた場合一定のゲル強度を付与することができなかった。
【0038】
なお、5℃の冷蔵時のゼリーを食したが、実施例1−1〜1−7のゼリーは、炭酸ガス由来の爽快感が感じられる飲用可能なゼリーとなった。
【0039】
実験例2:(ゲル強度の違いによる試験)
下記表3に掲げる処方のうち、水、液糖を攪拌しつつ、砂糖、クエン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸及びゲル化剤の粉体混合物を加え室温(25℃)で10分間攪拌分散した後、125g/250ml容量缶に充填し、5℃の炭酸水を125g注ぎ、密封して75℃20分間加熱殺菌した。水冷固化し、実験例1と同様の方法で5℃でのゲル強度を測定した(pH3.7)。また、マイナス20℃の冷凍庫で凍結して、缶入り氷菓を調製した。調製した氷菓について、容器開封直後のスプーン刺さりについて実験例1と同様の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
注2)ゲル化剤(製品名;ゲルアップ※J−7327*)
κ−カラギナン36%、ローカストビーンガム7.2%、キサンタンガム6%、塩化カリウム12%、乳酸カルシウム12%配合品。
【0042】
【表4】

【0043】
表4より、冷蔵時にゲル状態となることに加えて、冷蔵時のゲル強度が0.05〜2.2N/cmとすることにより、氷菓容器開封直後のスプーン刺さりが良好となった。
なお、冷蔵時においては、実施例2−1〜2−4がドリンクゼリーとして良好に飲用することができた。また、実施例2−5についてはスプーンですくって食べるカップゼリーとして良好に食することができた。
【0044】
実験例3(炭酸ガス圧の違いによる試験)
下記表5に掲げる処方に示すとおりに、水、液糖を攪拌しつつ、砂糖、クエン酸三ナトリウム、クエン酸及びゲル化剤の粉体混合物を加え、室温で10分間攪拌分散したもの(A液)を表6に示す量となるように、250ml容量缶に入れ、5℃の炭酸水を表6に示す量注ぎ、密封した。75℃20分間加熱殺菌後、水冷固化し、炭酸ガス含有ドリンクゼリーを調製した(pH3.7)。実験例1と同様の方法で5℃におけるゲル強度を測定した。更に、マイナス20℃の冷凍庫で凍結し、氷菓を調製した。翌日、実験例1と同様の方法でスプーン刺さりの評価を行った。結果を表6に示す。また、冷凍後の缶の変形の有無について図1の写真で、また、開封直後の氷菓の様子を図2の写真で示す。
【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
注3)比較例3−1〜3−4については、表3のA液中ゲル化剤を抜いた処方でA液を調製した。
【0048】
表6に示す上記内圧の範囲(実施例3−1〜3−4)で、いずれもゲル化剤添加でスプーン刺さりが良好な結果が得られ、開封後すぐ食してもスプーン刺さりが良好な氷菓となった。更には、炭酸ガスの内圧が低い(炭酸水の含有量が少ない)場合であっても、炭酸ガスの爽快感は若干劣るが、刺激は感じれられ、氷菓としても良好な食感であった。なお、炭酸ガス無添加では、スプーン刺さりが良好にはならなかった(比較例3−5)。
【0049】
また、図1に示す写真の通り、炭酸ガスの内圧が高くなると、凍結時に容器が変形している(比較例3−1)。しかし、ゲル化剤を添加することでその問題も改善できている(実施例3−1)。更には 図2より、比較例3−5の炭酸ガスなしのものと比べ、実施例3−1の氷菓は、開封後冷菓が柔らかく盛り上がった状態であることが判る。
【0050】
なお、5℃の冷蔵時のゼリーを食したが、実施例のゼリーは、炭酸ガス由来の爽快感が感じられる飲用可能なゼリーとなった。特に、炭酸ガスの含有量が高いもの程、爽快感が感じられ良好であった。
【0051】
実験例4
下記表7に掲げる処方の通り、水、液糖を攪拌しつつ、砂糖、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、ゲル化剤、塩類の粉体混合物を加え、室温で10分間攪拌分散したものを、250g/250ml缶に入れ、5℃の炭酸水を注ぎ、密封した。75℃20分間加熱殺菌後、水冷固化し、炭酸ガス含有ドリンクゼリーを調製した(pH3.7)。更に、マイナス20℃の冷凍庫で凍結し、氷菓を調製した。冷凍庫から氷菓を取り出し、缶を開封した直後の様子の写真を図3に、スプーンを刺した様子の写真を図4に示す。
【0052】
【表7】

【0053】
図3の写真より、炭酸水(炭酸ガス)及びゲル化剤を含有している実施例4は、冷凍庫から出して開封した直後に、中の氷菓が盛り上がっているが、炭酸水を含有しない比較例4は、開封後も中の氷菓に変化はなかった。更に、図4の写真より、比較例4は、氷菓が固くほとんどスプーンが氷菓に刺さらない状態であったが、実施例4はスプーン刺さりも良く、ソフトなシャーベット状となった。
【0054】
実験例5
下記表8に掲げる処方の通り、水、液糖を攪拌しつつ、砂糖、クエン酸三ナトリウム、甘味料、クエン酸及び多糖類の粉体混合物と色素、香料を加え、室温で10分間攪拌分散したものを、125g/250ml缶に入れ、5℃の炭酸水を125g注ぎ、密封した。70℃20分間加熱殺菌後、水冷固化し、炭酸ガス含有ドリンクゼリーを調製した(pH3.7)。更に、マイナス20℃の冷凍庫で凍結し、氷菓を調製した。得られた氷菓は、図5の写真で示す通り、スプーン刺さりも良くソフトなシャーベット状であった。
【0055】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明により、常温及び冷蔵状態では炭酸ガスを含有するドリンクゼリーであり、冷凍するとスプーン刺さりの良い氷菓となる容器入り氷菓を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実験例3において、容器入り氷菓の容器の変形の程度を観察した写真である。左は比較例3−1であり、容器の右部及び下部が変形しているが、右の実施例3−1は変形は起こっていない。
【図2】実験例3において、容器入り氷菓を冷凍庫から出してすぐに開封した直後の写真である。比較例3−5の炭酸水無添加系は氷菓が固く、盛り上がりもないが、炭酸水を添加した実施例は開封直後に中の氷菓が盛り上がっている様子が判る。
【図3】実験例4において、容器入り氷菓を冷凍庫から出してすぐに開封した直後の写真である。比較例4の炭酸水無添加系は氷菓が固く、盛り上がりもないが、炭酸水を添加した実施例4は開封直後に中の氷菓が盛り上がっている様子が判る。
【図4】実験例4において、氷菓にスプーンを刺した様子を示す写真である。比較例4は氷菓が固くスプーンが刺さらないが、実施例4は氷菓が柔らかくスプーン刺さりが良好であることを示す。
【図5】実験例5において、本発明の実施例5の氷菓がスプーン刺さりが良好であることを示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスを含有し、5℃におけるゲル強度が0.05〜2.2N/cmであることを特徴とする容器入り氷菓。
【請求項2】
カラギナン、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びマンナンから選ばれる1種又は2種以上を含有する、請求項1に記載の容器入り氷菓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate