説明

容器口部側面塗布装置

【課題】容器口部側面への塗布もれをなくし、塗布ベルトへの塗布液の付着ムラを改善し、さらに容器口部に塗布する塗布液の量を正確に制御する。
【解決手段】塗布ベルトの上面に接触し、塗布ベルトが上方に変位するのを抑制する押さえローラを設ける。また、外周面が常に塗布液含浸状態にある回転するフェルトローラと、回転しながら常に塗布ベルトに接触している転写ローラと、フェルトローラに接触し塗布液をフェルトローラから受け取る液受け位置と、転写ローラに接触し塗布液を転写ローラに渡す液渡し位置と、フェルトローラ及び転写ローラのいずれにも接触しない待機位置を移動する受渡ローラにより塗布液を塗布ベルトに供給することで、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびんなどの容器口部側面にコーティング液、撥水処理などの各種処理液、塗料などの液体を塗布する容器口部側面塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1〜3に示されるように、回動する無端塗布ベルトの塗布面を容器外面に接触させ該塗布面に含浸させた塗布液を容器外面に塗布する塗布装置が知られている。
これらは、いずれも、コンベア上を流れてくる容器を回転手段で回転させながら、容器外周面全体に塗布液を塗布するものである。
特許文献1の塗布装置は、塗布ベルトの塗布面に直接塗布液を注射針で供給するタイプのものである。
特許文献2の塗布装置は、スポンジローラの上部から塗布液を補充し、塗布ベルト塗布面をこのスポンジローラに接触させて塗布液を転写するタイプのものである。
特許文献3の塗布装置は、第1のローラに塗布液を滴下し、第2のローラに塗布液を転写し、第2のローラから塗布ベルトの塗布面に塗布液を転写するタイプのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−33232号公報
【特許文献2】実開昭62−199175号公報
【特許文献3】特開昭59−228973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のタイプは、図1に示すように、塗布ベルトの塗布面に直接塗布液を注射針で供給するので、塗布ベルト塗布面の上下方向及び長さ方向共に液の付着ムラが生じ、その結果、容器への塗布ムラが生じやすい。また、塗布量を注射液から供給する塗布液の量で制御しなければならないので、制御系が複雑なものとなり、特に、塗布液が撥水処理剤の場合のように、きわめて少ない量を塗布する場合に正確な制御ができないという問題がある。
前記特許文献2のタイプは、スポンジローラを使用するので、塗布ベルト塗布面の上下方向及び長さ方向の付着ムラは多少改善されるものの十分とは言えない。また、塗布量をスポンジローラに補充する塗布液の量で制御しなければならないので、前記特許文献1の場合と同様に、制御系が複雑なものとなり、特に、塗布液が撥水処理剤の場合のように、きわめて少ない量を塗布する場合正確な制御ができないという問題がある。
前記特許文献3のタイプは、ローラを2個使用するので、塗布ムラは前記特許文献2よりも改善されるが、それでもまだ不十分であり、塗布量を第1のローラに滴下する塗布液の量で制御しなければならないので、前記特許文献1、2の場合と同様の問題がある。
また、前記特許文献1〜3に共通する課題として、これらの塗布装置を容器口部側面の塗布に用いた場合、口部のビードやねじ山の影響で塗布ベルトが上方に移動する傾向があり、塗布すべき部分に的確に塗布液を塗布できない場合がある。
【0005】
本発明は、容器口部側面の塗布すべき部分にもれなく塗布液を塗布できるようにすること、及び、塗布ベルト塗布面への塗布液の付着ムラを改善して容器外面に塗布液を均一に塗布できるようにすること、並びに、容器に塗布する塗布液の量を容易に制御可能で、しかも、塗布液が撥水処理剤の場合のように、きわめて少ない量を塗布する場合でも正確な制御ができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1〕
本発明は、回動する無端塗布ベルトの塗布面を容器口部側面に接触させ該塗布面に含浸させた塗布液を容器口部側面に塗布する塗布装置において、
前記塗布ベルトの上面に接触し、塗布ベルトの移動に対応して回転し、塗布ベルトが上方に変位するのを抑制する押さえローラを有することを特徴とする容器口部側面塗布装置である。
本発明は、押さえローラによって塗布ベルトが上方に変位するのが防止されるので、塗布液を適正な位置に塗布することができる。
【0007】
〔請求項2〕
また本発明は、
外周面に塗布液が補充されて常に含浸状態にある回転するフェルトローラと、
回転しながら外周面が常に前記塗布ベルトに接触し、外周面に含浸している塗布液を塗布ベルト塗布面に転写する転写ローラと、
外周面が前記フェルトローラ外周面に接触し塗布液をフェルトローラから受け取る液受け位置と、外周面が前記転写ローラ外周面に接触し塗布液を転写ローラに渡す液渡し位置と、前記フェルトローラ及び転写ローラのいずれにも接触しない待機位置を移動する受渡ローラと、
該受渡ローラを移動する駆動手段と、
該駆動手段を制御する制御手段を有する請求項1の容器口部側面塗布装置である。
【0008】
図2はローラの数と塗布ベルトへの塗布液の付着ムラの説明図である。塗布液は第1ローラに間欠的に供給されるものと仮定し、第1ローラに塗布液が供給されてから次に供給されるまでの間の塗布ベルト塗布面への付着量の変化(長さ方向)を色の濃さで表している。同図において、下向きの矢印位置が第1ローラに塗布液が供給されたときを示している。
図2に示されるように、一般に、ローラの数が多いほど付着ムラ(最大量付着場所と最小量付着場所の付着量の差)が少なくなる。
また、上下方向の付着ムラもローラの数が多くなるほど少なくなる傾向がある。
本発明は3個のローラを使用するので、付着ムラが少ない。
【0009】
また本発明は、受渡ローラが液受け位置、液渡し位置、待機位置を移動するので、受渡ローラが液受け位置に留まる時間(液受け時間)、液渡し位置に留まる時間(液渡し時間)、待機位置に留まる時間(待機時間)を適宜設定することで、塗布ベルトに含浸させる塗布液量を制御できるので、制御系がきわめて簡単なものとなり、ローラに滴下する液量を制御するものではないので、塗布液が撥水処理剤の場合のように、容器にきわめて少ない量を塗布する場合でも正確な制御ができる。
【0010】
〔請求項3〕
また本発明は、前記フェルトローラは回転軸が垂設され、塗布液がフェルトローラの上部から補充されるもので、フェルトローラの下方に余剰の塗布液を受ける塗布液受パンを備え、フェルトローラ外周面の下部がその受パン内の塗布液内に浸漬している請求項2の容器口部側面塗布装置である。
【0011】
フェルトローラの下方に余剰の塗布液を受ける塗布液受パンを設けたので、補充液の量を特に制御する必要がなく(必要量より多めに補充すればよい)、補充された塗布液はフェルトローラ上部から下部まで至り、しかも下部が受パン内の塗布液内に浸漬しているので、毛細管現象により下部の含浸量も多くなる。その結果、フェルトローラの上下方向の含浸量のムラがきわめて少なくなり、転写される塗布ベルト塗布面における上下方向の付着ムラもなくなる。
なお、本発明のフェルトローラは、必ずしもフェルトを使用している必要はなく、ほぼ同等の液体保持性能を有するスポンジ、不織布などを使用したものでもよい。
【0012】
〔請求項4〕
また本発明は、当該装置に導入される容器を検知するセンサを備え、前記制御手段が該センサの検知信号により導入される容器の数をカウントし、そのカウントした容器数に基づいて前記駆動手段を制御する請求項2又は3の容器口部側面塗布装置である。
【0013】
例えばガラスびんの製造ラインのように、コンベア上を流れてくるびんの間隔が一定ではなく、単位時間に塗布するびん数が異なるような場合、カウントした容器数に基づいて駆動手段を制御し、受渡ローラの移動1サイクル(例えば、液受け位置→液渡し位置→待機位置の1サイクル)ごとに、一定の数の容器に塗布処理が行われるようにすることで、容器に塗布される塗布液の量を一定に保つことができる。
【0014】
〔請求項5〕
また本発明は、前記制御手段が、前記カウントした容器数に基づいて、前記受渡ローラが前記待機位置に留まる時間を制御する請求項4の容器口部側面塗布装置である。
【0015】
受渡ローラが待機位置に留まる時間(待機時間)を制御手段(コンピュータなど)がカウントした容器数に基づいて制御することで、容易に、容器に塗布される塗布液の量を一定に保つことができる。この場合、液受け時間、液渡し時間は所定の時間が設定されているので、受渡ローラがフェルトローラから受け取る液量、受渡ローラが転写ローラに渡す液量は一定であり、しかも受渡ローラの移動1サイクル(例えば、液受け位置→液渡し位置→待機位置の1サイクル)ごとに、一定の数の容器に塗布処理が行われるので、容器に塗布される塗布液の量は一定となる。なお、待機時間に加えて、又は待機時間に代えて液受け時間及び/又は液渡し時間を制御して容器に塗布される塗布液の量を一定にすることもできるが、待機時間のみを制御するのが最も簡単である。
【0016】
〔請求項6〕
また本発明は、塗布時に容器を回転させる回転手段を備えた請求項1〜5のいずれかの容器口部側面塗布装置である。
容器を回転させることで、容器側面の全周に亘って塗布液を付着させることができる。なお、回転手段は自由に選択可能で、周知の回転手段を使用できる。
【0017】
〔請求項7〕
また本発明は、前記塗布ベルトが、容器口部を挟んでその両側に1個ずつ、合計2個ある請求項1〜6のいずれかの容器口部側面塗布装置である。
【0018】
〔請求項8〕
また本発明は、前記2個の塗布ベルトの塗布面上端が容器口部天面よりも上方に突出している請求項7の容器口部側面塗布装置である。
【0019】
〔請求項9〕
また本発明は、前記2個の塗布ベルトのうち、一方はその塗布面上端が容器口部天面よりも上方に突出し、他方はその塗布面上端が容器口部天面より下にある請求項7の容器口部側面塗布装置である。
【0020】
〔請求項10〕
また本発明は、前記2個の塗布ベルトが、速度差を持って回動する請求項7〜9のいずれかの容器口部側面塗布装置である。
【0021】
〔請求項11〕
また本発明は、前記2個の塗布ベルトが、塗布時に容器を回転させる回転手段である請求項10の容器口部側面塗布装置である。
【0022】
例えば、容器口部外周面に撥水処理のための処理液を塗布する場合、処理液をねじの谷間に確実に付着させ、しかも外周面上端のR面部にも充分な量を付着させたいという要請がある。
このような場合、容器口部外周面に接触する2個の塗布ベルトの塗布面上端が容器口部天面よりも上方に突出するようにすると、ねじの谷間にも、外周面上端のR面部にも充分に処理液を付着させることができる。
【0023】
また、処理液をねじの谷間に確実に付着させ、しかも外周面上端のR面部に多すぎない適度の量を付着させたいという要請もある。
このような場合、容器口部外周面に接触する2個の塗布ベルトのうち、一方はその塗布面上端が容器口部天面よりも上方に突出し、他方はその塗布面上端が容器口部天面より下にあるようにすると、ねじの谷間の付着不良を防ぐと同時に、外周面上端のR面部に過分の処理液を付着させないですむ。
【0024】
ねじ山が形成された容器口部のように、表面に凹凸がある容器外面に塗布を行う場合、塗布ベルトを容器を挟んでその両側に2個設けることで、例えばねじの谷間のような凹部にも確実に塗布液を塗布することが可能となる。この場合、それぞれの塗布ベルトが速度差を持って回動するようにすると、塗布ベルトと容器外面の摩擦力により容器に回転力が付与され、塗布ベルトに容器の回転手段を兼ねさせることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、押さえローラによって塗布ベルトが上方に変位するが防止されるので、塗布液を容器口部側面の所定の位置に確実に塗布することができる。
また、塗布ベルト塗布面への塗布液の付着ムラを改善して容器口部側面に塗布液を均一に塗布できる。
さらに、容器に塗布する塗布液の量を容易に制御可能で、しかも、容器口部側面にきわめて少ない量の塗布液を塗布する場合でも、所定の塗布量を正確に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の容器口部側面塗布装置の説明図である。
【図2】ローラの数と塗布ベルトへの塗布液の付着ムラの説明図である。
【図3】実施例の容器口部側面塗布装置の平面説明図である。
【図4】実施例の容器口部側面塗布装置の要部側面説明図である。
【図5】他の実施例の容器口部側面塗布装置の平面説明図である。
【図6】容器口部と塗布ベルトの断面図である。
【図7】容器口部と塗布ベルトの断面図である。
【図8】容器口部の拡大断面説明図である。
【図9】制御方法の一例のフローチャートである。
【図10】受渡ローラ、転写ローラ、塗布ベルトの含浸量の説明図である。
【図11】制御手段における信号の流れの説明図である。
【図12】制御方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0027】
以下、実施例に関する図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図3は実施例の容器口部側面塗布装置の平面説明図、図4は実施例の容器口部側面塗布装置の要部側面説明図、図5は他の実施例の容器口部側面塗布装置の平面説明図、図6,7は容器口部と塗布ベルトの断面図、図8は容器口部の拡大断面説明図、図9は制御方法の一例のフローチャート、図10は受渡ローラ、転写ローラ、塗布ベルトの含浸量の説明図、図11は制御手段における信号の流れの説明図、図12は制御方法の一例のフローチャートである。
【0028】
図3、4に示す容器塗布装置は、塗布ベルト1、フェルトローラ2、転写ローラ3、受渡ローラ4などからなる。塗布ベルト1は適宜長さのベルトの両端を接続した無端状態のもので、外面は布材、スポンジなど液体を含浸する材質で構成された塗布面となっている。塗布ベルト1は、駆動プーリ7、受動プーリ8、9に架け渡され、駆動プーリ7の回転にしたがって回動する。塗布ベルト1は、容器20の移動手段であるコンベア14の片側に沿って設けられた5個の受動プーリ9にしたがって回動することで、コンベア上を流れてくる容器20の口部側面に圧接する。コンベア14の反対側に沿って押接板15が設けられ、コンベア上の容器20は両側から塗布ベルト1と押接板15に圧接状態で挟まれる。塗布ベルト1は、図3の右回りに回動し、受動プーリ9の区間においてはコンベア14の流れ方向と同じ方向に移動し、塗布ベルトの移動速度はコンベアの移動速度と同じか、それよりも早くなっているので、容器20は左回りに回転しながらコンベア上を移動する。この間に、塗布ベルト1の塗布面は容器20の口部側面全周に接触し、塗布面に含浸している塗布液が容器の口部側面に塗布される。
【0029】
フェルトローラ2は、外周面がフェルト、スポンジ、不織布などの液体保持性能の大きな材質で構成され、垂直方向の回転軸2aにモータ(図示せず)の回転が伝達されて回転している(図4)。上方から供給管12により塗布液18が滴下され、外周面のフェルト等に塗布液が常に補充されている。フェルトローラ2の下方に余剰の塗布液を受ける塗布液受パン10が設けられ、供給管12により補充された塗布液18が外周面のフェルト等の中を上から下に通過し、余剰分が塗布液受パン10の中に溜まっている。さらに、フェルトローラ2外周面の下部が受パン10の内部の塗布液18の中に浸漬している。このため、フェルトローラ2は常にほぼ一定量の塗布液をムラのない状態で含浸しており、後述する受渡ローラに常にほぼ一定量の塗布液を渡す(転写する)ことになる。受パン10内に溜まった塗布液は、オーバーフローして戻り管13によりサービスタンク11に送られるので、受パン10内の塗布液の液位は常に一定になっている。サービスタンク11内の塗布液は、ポンプPによって供給管12に送り出され、フェルトローラ2に塗布液が補充される。
【0030】
転写ローラ3は、外周面が布材、スポンジなど液体が含浸する材質で構成され、常に、塗布ベルト1の塗布面と接触し、塗布ベルトの回動に伴って回転し、後述する受渡ローラから受け取った塗布液を塗布ベルトの塗布面に転写する。
また、転写量を極少量に抑えたい場合は、平坦な表面をもった金属や樹脂製のローラを選択することで転写する量を極少量に抑えることも可能である。
【0031】
受渡ローラ4は、外周面が布材、スポンジなど液体が含浸する材質で構成され、アーム5の先端に回転自在に軸着されている。アーム5は受渡ローラの駆動手段6(ステップモータ)により、受渡ローラ4が液受け位置A、液渡し位置B、待機位置Cを移動するように回動する。
液受け位置Aにおいて、受渡ローラ4は、その外周面がフェルトローラ2の外周面に接触し、フェルトローラ2の回転に伴って回転しながらその外周面全周に塗布液が転写される。
液渡し位置Bにおいて、受渡ローラ4は、その外周面が転写ローラ3の外周面に接触し、転写ローラ3の回転に伴って回転しながら、その外周面に含浸している塗布液を転写ローラに転写する。
待機位置Cは、受渡ローラ4がフェルトローラ2にも転写ローラ3にも接触していない位置である。
また、受渡ローラ4も、平坦な表面をもった金属や樹脂製のローラを選択することで塗布液を受け渡す量を極少量に抑えることも可能である。
【0032】
受渡ローラの移動の駆動手段の制御はコンピュータ、シーケンサなどの制御手段によって行われる。制御の具体例は後述する。
【0033】
図3において、5個の受動プーリ9の間に、容器の移動手段(コンベア14)に沿って、4個の押さえローラ19が設けられている。押さえローラ19はフレーム25に回転自在に軸着され、その先端部の外周面が塗布ベルト1の上面に接触し、塗布ベルト1の移動に伴って回転する。押さえローラ19により、塗布ベルト1が上方に移動するのが防止される。
このように、押さえローラは、塗布ベルトが回動する領域全体に設ける必要はなく、容器に塗布が行われる領域にのみ設ければよい。
押さえローラ19の軸線(回転軸)は、上下方向の角度(側面視)は塗布ベルト上面と平行で、水平方向の角度(平面視)は塗布ベルト1及びコンベア14に対して直角であることが望ましいが、それぞれ30°以内程度の角度があっても差し支えない。
また、押さえローラ19は、フリーに軸着されて塗布ベルト1の移動によって回転してもよいし、モータなどによって塗布ベルトの移動速度とほぼ同じ周速度で強制的に回転するものであってもよい。
【0034】
図5は、図3の塗布ベルト1と同様の塗布ベルト1’をコンベア14の反対側にも設け、塗布ベルトを、容器口部を挟んで両側に1個ずつ、合計2個設置した例である。この例は、容器(ガラスびん)の口部に撥水処理を行う場合で、塗布液は撥水処理剤(シリコーンオイルなど)である。塗布ベルト1、1’の双方について、図3と同様のフェルトローラ、転写ローラ、受渡ローラ、アーム、駆動手段、塗布液受パン、サービスタンク、供給管、戻り管が設けられているが、同図では省略している。
塗布ベルト1、1’は同方向(右回り)に回動するので、受動プーリ9、9の間において、塗布ベルト1はコンベア流れ方向と同じ方向、塗布ベルト1’はコンベア流れ方向と反対方向に移動し、塗布ベルト1、1’及びコンベアの移動速度差により、容器20は回転しながらコンベアの流れ方向に進み、口部側面が塗布ベルト1、1’の塗布面に接触し、口部外周全周に塗布液が塗布される。この場合は、塗布ベルト1、1’が容器回転手段を兼ねているが、容器回転手段を別途設けることもできる。
【0035】
図6,7は、容器20口部の両側に塗布ベルト1、1’が圧接している状態である。
塗布ベルト1、1’は、共に、タイミングベルト1d、1d’の外側にウレタンゴムなどの高弾性素材でなる基材ベルト1a、1a’、その外側に発泡樹脂、合成ゴムなどのやはり高弾性素材でなるベルト1b、1b’、その外側に塗布面を構成する布材1c、1c’(合成繊維を織ったもの)を貼付したものである。タイミングベルト1d、1d’には、プーリの歯形と噛み合う歯形1e、1e’が形成されている。また、基材ベルト1a、1a’の上面は一番高くなっており、押さえローラ19には基材ベルト1a、1a’の上面のみが接触し、布材1c、1c’及びタイミングベルト1d、1d’は接触しないようになっている。このようにすることで、押さえローラ19で押さえつけられても塗布ベルト1が傾くことがない。
塗布ベルト1は、容器口部のねじ山26やビード27の影響で上方にせり上がる傾向があるが、押さえローラ19によってこれが防止される。
【0036】
図6において、塗布ベルト1、1’ の塗布面(布材1c、1c’)上端は容器口部天面よりも上方に突出している。塗布ベルト1、1’の塗布面の幅は共に19mmである。
【0037】
図7において、塗布ベルト1の塗布面(布材1c)上端は容器口部天面よりも上方に突出し、他方の塗布ベルト1’の塗布面上端(布材1c’)は容器口部天面より下になるように、塗布面の幅(高さ)が異なっている。塗布ベルト1の塗布面の幅は19mm、塗布ベルト1’は9mmである。この理由を図8に基づいて説明する。
【0038】
図8は、容器口部外周面に塗布液が塗布された状態を示している。同図において符号20は容器、21は口部外周面、22は天面、23はR面部、24は口部内周面、18は塗布液(シリコーンオイル)である。
口部外周面の最上部はR面部23となっており、シリコーンオイルはR面部23を含む口部側面21に付着される。このように、シリコーンオイルをR面部23に付着させた状態でシリコーンオイルの焼き付けを行うと、シリコーンオイルが加熱されて流動性が増し、天面22上を矢印D方向に広がり、天面22全体に行き渡り、一部は内周面24に流れ込んで付着する。このように、シリコーンオイルは高温で加熱されると非常に広く拡がる性質がある。シリコーンオイルは人体に無害であるといわれているが、撥水処理が不要な容器内部の奧までシリコーン被膜が形成されるのは好ましくない。R面部23にシリコーンが過度に付着するとシリコーンが容器内部の奧まで流れ込んでしまい、少なすぎると天面全体に行き渡らずに撥水処理が不完全になる。したがって、R面部に付着させるシリコーンの量は一定範囲内に厳密に保たれる必要がある。
【0039】
R面部に付着させるシリコーンの量を調整する1つの手段は、塗布ベルトの容器口部に対する押圧具合と、接触角度の調整である。押圧力を強くすると塗布ベルトと容器口部の干渉量が増加し、R面部の付着量が多くなりすぎる。押圧力を弱くすると、R面部の付着量は適度にできるが、口部外周のねじの谷部等への付着が不十分になり、当該部分の撥水処理が不完全になる。R面部に付着させるシリコーンの量を調整する他の手段は、塗布ベルトを容器側に傾斜させることである。傾斜を大きくすると、R面部の付着量が多くなるが、口部外周のねじの谷部等への付着が不十分になり、当該部分の撥水処理が不完全になる。
図8の例では、塗布ベルト1によりR面部に付着させるシリコーンの量を適正なものとし、塗布ベルト1’により口部外周のねじの谷部等への付着も十分なものとしている。この場合、塗布ベルト1の角度は垂直であるが、容器側に傾斜させて設けてもよい。
【0040】
図9は制御手段による制御の一例(繰り返しルーチンの部分)を示している。これは、容器がコンベア上をほぼ一定間隔で運ばれてくる場合(単位時間当たりに塗布する容器数がほぼ一定の場合)に適したものである。
この場合、受渡ローラ4が液受け位置A、液渡し位置B、及び待機位置Cに留まるそれぞれの適宜な時間が予め制御手段に設定されている。
【0041】
ステップ101の「液受け位置Aに移動」で、受渡ローラ4が液受け位置Aに移動する。
ステップ102の「液受け位置Aに所定時間留まる」で、受渡ローラ4がフェルトローラ2に予め設定された所定時間接触し、これにより所定量の塗布液をフェルトローラから受け取る。
ステップ103の「液渡し位置Bに移動」で、受渡ローラ4が液渡し位置Bに移動する。
ステップ104の「液渡し位置Bに所定時間留まる」で、受渡ローラ4が転写ローラ3に予め設定された所定時間接触し、これにより所定量の塗布液を転写ローラに渡す。この時間を適宜に設定しておくことで、転写ローラ及び塗布ベルトに過度の塗布液が含浸し、容器への塗布量が多くなりすぎるのを防ぐことができる。
ステップ105の「待機位置Cに移動」で、受渡ローラ4が待機位置Cに移動する。
ステップ106の「待機位置Cに所定時間留まる」で、受渡ローラ4が予め設定された所定時間、時間待ちを行う。この時間を適宜に設定しておくことで、転写ローラ及び塗布ベルトの塗布液含浸量が多くなりすぎたり少なくなりすぎたりするのを防ぎ、容器への塗布量を所望の範囲に保つことができる。
本発明は、上記のような非常に簡単な制御で、容器に塗布される塗布液の量を所定の範囲に保つことができる。
【0042】
図10は、図9に示すように制御を行った場合の受渡ローラ4、転写ローラ3及び塗布ベルト1の塗布液含浸量の変化を時間経過に伴って記録したもので、図5〜8に示す、容器口部に少量の塗布液(撥水処理剤)を塗布する場合のものである。容器への塗布量を適正な範囲に保つため、塗布ベルトの含浸量は「塗布液含浸量上限」「塗布液含浸量下限」の破線の範囲内にある必要がある。上記の制御により、塗布ベルトの含浸量は常にこの範囲内で推移している。なお、図中「a」は受渡ローラ4が液受け位置Aに移動したとき(ステップ101)、「b」は液渡し位置Bに移動したとき(ステップ103)、「c」は待機位置Cに移動したとき(ステップ105)を示している。
本発明は、上記のような非常に簡単な制御で、容器に塗布される塗布液の量を所定の範囲に保つことができる。とくに、この例のように、容器への塗布量が微量な場合でも正確な制御が可能である。
【0043】
次に、容器がコンベア上をほぼ一定間隔で運ばれて来ない場合(単位時間当たりに塗布する容器数が異なる場合)について説明する。
このようなときのため、図3、5において、塗布ベルト1のすぐ上流側のコンベア14の脇に、塗布装置に導入される容器を検知するセンサ16が設けられている。すなわち、センサ16は1個の容器が装置に導入されるたびに1個の検知信号を制御手段17に送り、制御手段はその検知信号をカウントして装置に導入された容器の数を把握し、それに基づいて受渡ローラ駆動手段6に制御信号を送って駆動手段6を作動させる(図11)。
【0044】
図12は、このような場合の制御手段による制御の一例(繰り返しルーチンの部分)を示している。本例の場合、受渡ローラ4が液受け位置A及び液渡し位置Bに留まるそれぞれの適宜な時間が予め制御手段に設定され、待機位置Cに留まる時間は設定されていない。その代わり、受渡ローラの移動の1サイクルで塗布すべき容器の数が設定されている。
【0045】
ステップ201の「液受け位置Aに移動」で、受渡ローラ4が液受け位置Aに移動する。
ステップ202の「液受け位置Aに所定時間留まる」で、受渡ローラ4がフェルトローラ2に予め設定された所定時間接触し、これにより所定量の塗布液をフェルトローラから受け取る。
ステップ203の「液渡し位置Bに移動」で、受渡ローラ4が液渡し位置Bに移動する。
ステップ204の「液渡し位置Bに所定時間留まる」で、受渡ローラ4が転写ローラ3に予め設定された所定時間接触し、これにより所定量の塗布液を転写ローラに渡す。この時間を適宜に設定しておくことで、転写ローラ及び塗布ベルトに過度の塗布液が含浸し、容器への塗布量が多くなりすぎるのを防ぐことができる。
ステップ205の「待機位置Cに移動」で、受渡ローラ4が待機位置Cに移動する。
ステップ206の「容器本数を読み込む」で、メモリ内に格納されている今までカウントした容器の数を読み込む。
ステップ207の「所定本数に達したか?」で、ステップ206で読み込んだ容器の数と、予め設定されている容器の数を比較し、所定本数に達しているかどうかを判断する。「YES」の場合は、メモリの容器数をリセットし、ステップ201に進む。「NO」の場合は、ステップ206に戻り、再び「容器本数を読み込む」の作業を行う。ステップ207→ステップ206の移動は、適当なタイムラグ(例えば3秒)を設定しておいてもよい。ステップ207→ステップ206→ステップ207は、メモリの容器数が設定された容器数に達するまで繰り返される。
これにより、容器がコンベア上をほぼ一定間隔で運ばれて来ない場合(単位時間当たりに塗布する容器数が異なる場合)でも、上記のような非常に簡単な制御で、容器に塗布される塗布液の量を所定の範囲に保つことができ、受渡ローラ4、転写ローラ3及び塗布ベルト1の塗布液含浸量の時間的変化は図10と同様になる。
【符号の説明】
【0046】
1 塗布ベルト
2 フェルトローラ
3 転写ローラ
4 受渡ローラ
5 アーム
6 駆動手段
7 駆動プーリ
8 受動プーリ
9 受動プーリ
10 塗布液受パン
11 サービスタンク
12 供給管
13 戻り管
14 コンベア
15 押接板
16 センサ
17 制御手段
18 塗布液
19 押さえローラ
20 容器
21 外周面
22 天面
23 R面部
24 内周面
25 フレーム
26 ねじ山
27 ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動する無端塗布ベルトの塗布面を容器口部側面に接触させ該塗布面に含浸させた塗布液を容器口部側面に塗布する塗布装置において、
前記塗布ベルトの上面に接触し、塗布ベルトの移動に対応して回転し、塗布ベルトが上方に変位するのを抑制する押さえローラを有することを特徴とする容器口部側面塗布装置。
【請求項2】
外周面に塗布液が補充されて常に含浸状態にある回転するフェルトローラと、
回転しながら外周面が常に前記塗布ベルトに接触し、外周面に含浸している塗布液を塗布ベルト塗布面に転写する転写ローラと、
外周面が前記フェルトローラ外周面に接触し塗布液をフェルトローラから受け取る液受け位置と、外周面が前記転写ローラ外周面に接触し塗布液を転写ローラに渡す液渡し位置と、前記フェルトローラ及び転写ローラのいずれにも接触しない待機位置を移動する受渡ローラと、
該受渡ローラを移動する駆動手段と、
該駆動手段を制御する制御手段を有する請求項1の容器口部側面塗布装置。
【請求項3】
前記フェルトローラは回転軸が垂設され、塗布液がフェルトローラの上部から補充されるもので、フェルトローラの下方に余剰の塗布液を受ける塗布液受パンを備え、フェルトローラ外周面の下部がその受パン内の塗布液内に浸漬している請求項2の容器口部側面塗布装置。
【請求項4】
当該装置に導入される容器を検知するセンサを備え、前記制御手段が該センサの検知信号により導入される容器の数をカウントし、そのカウントした容器数に基づいて前記駆動手段を制御する請求項2又は3の容器口部側面塗布装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記カウントした容器数に基づいて、前記受渡ローラが前記待機位置に留まる時間を制御する請求項4の容器口部側面塗布装置。
【請求項6】
塗布時に容器を回転させる回転手段を備えた請求項1〜5のいずれかの容器口部側面塗布装置。
【請求項7】
前記塗布ベルトが、容器口部を挟んでその両側に1個ずつ、合計2個ある請求項1〜6のいずれかの容器口部側面塗布装置。
【請求項8】
前記2個の塗布ベルトの塗布面上端が容器口部天面よりも上方に突出している請求項7の容器口部側面塗布装置。
【請求項9】
前記2個の塗布ベルトのうち、一方はその塗布面上端が容器口部天面よりも上方に突出し、他方はその塗布面上端が容器口部天面より下にある請求項7の容器口部側面塗布装置。
【請求項10】
前記2個の塗布ベルトが、速度差を持って回動する請求項7〜9のいずれかの容器口部側面塗布装置。
【請求項11】
前記2個の塗布ベルトが、塗布時に容器を回転させる回転手段である請求項10の容器口部側面塗布装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図10】
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