説明

容器栽培野菜の収穫方法

【課題】 機械刈りはもとより手刈りの場合であっても、生育野菜をその葉などを傷めることなく適切に根本から刈り取ることができ、生育野菜の品質を損なわず、しかも収穫ロスがほとんど生じない栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法を提供する。
【解決手段】 栽培容器1を用いて栽培した野菜の収穫方法である。栽培容器1で栽培した野菜の生育後、その栽培容器をそのまま、または生育野菜の床部離脱防止手段を施したうえ上下逆さにして生育野菜2をその葉先を下にした吊り下がり姿勢とする。栽培容器1の逆さにした状態における下面から吊り下がり姿勢の生育野菜2をその葉本部から切り落として収穫する。栽培容器1に対する生育野菜2の床部5の離脱防止手段として、栽培容器1に装着および取り外し自在のフォークを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉野菜やハーブなどを栽培容器を用いて栽培し、生育後に収穫する方法であって、特にそれらの幼葉、いわゆるベビーリーフの状態で収穫する栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
葉野菜やハーブ、すなわちターサイ、ミズナ、オークリーレタス、ガーデンレタス、ホウレンソウ、コマツナ、ルッコラ、グリーンマスタード、レッドビートレッドマスタード、デトロイト、ケールなどの幼葉はベビーリーフと総称されるが、ベビーリーフには、それらの成葉に比べて栄養素が凝縮されていて、ミネラルやビタミンも豊富で注目されている。
【0003】
このような野菜の栽培方法は水耕栽培をはじめ種々の方法があるが、収穫の方法は、鋏による手刈りやあるいはレシプロカッタなどによる機械刈りが行われている。そして、機械刈りによる収穫の場合は、刈り取った野菜をエアーの吹き込みにより収穫袋に収納する方法がとられることが多い。
【0004】
なお、栽培容器および栽培容器を用いた野菜の栽培方法は、例えば、特開2004−344086公報、特開2004−344088公報に記載されている。また、水耕栽培した野菜の根本をカッタ装置で切断して収穫する方法および装置は、特開平6−105626号公報に記載されている。
【特許文献1】特開2004−344086公報
【特許文献2】特開2004−344088公報
【特許文献3】特開平6−105626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のベビーリーフは収穫時において野菜自体が小さいうえ、斜めの姿勢になっていたり、葉が垂れ下がっていたりすることが多いので、機械刈りによる場合は、葉などを損傷したり野菜を適切な部位で無駄なくカットすることができないこともあって、収穫ロスが大きくなることが問題となっている。
【0006】
本発明は、栽培容器を用いて栽培した野菜の生育後、その栽培容器を上下逆さにして生育野菜をその葉先を下にした吊り下がり姿勢としたうえ、栽培容器の逆さにした状態における下面から吊り下がり姿勢の生育野菜をその葉本部から切り落として収穫することにより、機械刈りはもとより手刈りの場合であっても、生育野菜をその葉などを傷めることなく適切に葉本から刈り取ることができ、生育野菜の品質を損なわず、しかも収穫ロスがほとんど生じない栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法は、栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法であって、栽培容器で栽培した野菜の生育後、その栽培容器をそのまま、または生育野菜の床部離脱防止手段を施したうえ上下逆さにして生育野菜をその葉先を下にした吊り下がり姿勢とし、栽培容器の逆さにした状態における下面から吊り下がり姿勢の生育野菜をその葉本部から切り落として収穫することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法は、請求項1の方法において、栽培容器に対する生育野菜の床部離脱防止手段として、栽培容器に装着および取り外し自在のフォークを用いることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法は、請求項1の方法において、栽培容器として、その底面が生育した野菜の根が絡み付く多孔状またはネット状のものを用いることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法は、請求項1、2または3の方法において、栽培する野菜は葉野菜やハーブであって、それらの幼葉を収穫することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法によれば、栽培容器を用いて栽培した野菜の生育後、その栽培容器を上下逆さにして生育野菜をその葉先を下にした吊り下がり姿勢としたうえ、栽培容器の逆さにした状態における下面にほぼ沿って吊り下がり姿勢の生育野菜をその葉本から切り落として収穫することにより、機械刈りはもとより手刈りの場合であっても、生育野菜をその葉などを傷めることなく適切に葉本から刈り取ることができ、生育野菜の品質を損なわず、しかも収穫ロスがほとんどなく栽培容器を用いて栽培した野菜を収穫することができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図には栽培する野菜としてベビーリーフについて例示している。図1に示すように、栽培容器1で栽培した野菜が生育して収穫時になったならば、栽培容器1の前後両側からフォーク3,3を装着して栽培容器1の上面をフォーク3,3の棒状部4で押さえ、栽培容器1を上下逆さにしても生育野菜2の床部5が離脱しないようにする。フォーク3,3は栽培容器1の前側または後側を挟む保持部6に前記棒状部4を複数本設けた構成のもので、フォーク3,3は栽培容器1に対して装着および取り外し自在である。
【0013】
図2に示すように、栽培容器1にフォーク3,3を装着して生育野菜2の床部5が栽培容器1から離脱しないようにしたうえ、図3に示すように、栽培容器1を上下逆さにして、生育野菜2をその葉先を下にした吊り下がり姿勢とする。この態様にすると、栽培容器1の生育野菜2は、葉などが垂れ下がり姿勢となるので、図4に示すように、カッター7により生育野菜2を葉本部(葉柄部)から切り落として葉の部分を収穫する。栽培容器1を逆さにする位置にはコンベア8を備えておけば、カッター7により切り落とした野菜は順次コンベア8により搬送される。
【0014】
本発明に係る方法の実施には、育成室(図示せず)に、図5に示すような収穫設備をするとよい。図5に示す収穫設備は、一対のレール9,9により栽培容器1の移動案内路10を構成したもので、11はその移動反転部である。
【0015】
育成室から搬出した栽培容器1は、移動案内路10の一端側(A)から一対のレール9,9上に搭載し、フォーク装着位置(B)に移動して栽培容器1にフォーク3,3を装着する。次いでフォーク3,3を装着した栽培容器1を刈り取り位置(C)まで移動させて上下逆さに置き替える。刈り取り位置(C)には、移動案内路10を横切るように生育野菜2の葉本部を切るレシプロカッタ12を備え、かつ切り落とされた収穫野菜を搬送するコンベア13を装備してあり、刈り取り位置(C)で移動案内路10に案内させて逆さにした栽培容器1を移動させると、吊り下がり姿勢の生育野菜2の葉本部が順次レシプロカッタ12によって切り落とされる。切り落とされた収穫野菜はコンベア13により搬出される。
【0016】
このようにして刈り取りを終えて野菜の根本部が残っている栽培容器1は、移動反転部11を経て反対側の基端側(D)において元の正立姿勢に戻したうえ、フォーク3,3を取り外し、順次末端側(E)まで移動させて育成室に搬入する。栽培容器1に植え付けた野菜は、生育後に葉本部から葉の部分だけを収穫するので、栽培容器1に芽部が残されている野菜は、育成室で繰り返し育成して収穫することができる。
【0017】
図6に示す収穫設備は、図5に示した設備を立体状に構成したものであって、コンベア14,14を上下に対向するように懸架した構成である。育成室から搬出した栽培容器1にはフォーク3,3を装着してコンベア14,14間に搭載すると、コンベア14,14によって搬送される栽培容器1はコンベア14,14の下段部で反転し、逆さ姿勢となって移動するが、その移動にともなって、レシプロカッタ15により生育野菜2はその葉本部が切り落とされて葉の部分は収穫され、コンベア16により搬出される。収穫後の栽培容器1は再びコンベア14,14の上段部に戻って正立姿勢となるので、この位置で栽培容器1をコンベア14,14から取り上げ、フォーク3,3を外したうえ育成室に戻して次期育成をする。
【0018】
本発明に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法の実施においては、栽培容器1対する生育野菜2の床部5の離脱防止手段として、栽培容器1に装着および取り外し自在のフォーク3,3を用いるが、栽培容器として、その底面が生育した野菜の根が絡み付く多孔状またはネット状のものを用いることにより、栽培容器の多孔状またはネット状の底面に生育野菜の根絡みを生じさせることができるので、生育野菜の床部の離脱防止手段として必ずしもフォーク3,3を用いなくてもよい。
【0019】
本発明に係る栽培容器は本実施例のトレー状の他、鉢状の物やマット状の物などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る容器栽培方法は、特にベビーリーフの単種栽培はもとより混種栽培にも適しているが、広く野菜や花卉の幼苗の生産などにも好適である。よって、本発明に係る容器栽培方法は、広範囲にわたる利用可能性が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法の実施に用いる栽培容器と野菜が生育した態様を示す斜視図である。
【図2】図1に示す栽培容器にフォークを装着する態様を示す斜視図である。
【図3】フォークを装着した栽培容器を上下逆さにした態様を示す正面図である。
【図4】同上生育野菜の刈り込みを終えた状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法の実施のための収穫設備を例示する模式的斜視図である。
【図6】同上他例の模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 栽培容器
2 生育野菜
3,3 フォーク
4 棒状部
5 生育野菜の床部
6 フォークの保持部
7 カッター
8 コンベア
9,9 一対のレール
10 移動案内路
11 移動反転部
12 レシプロカッタ
13 コンベア
14,14 コンベア
15 レシプロカッタ
16 コンベア
(A) 一端側
(B) フォーク装着位置
(C) 刈り取り位置
(D) 反対側の基端側
(E) 末端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法であって、
栽培容器で栽培した野菜の生育後、その栽培容器をそのまま、または生育野菜の床部離脱防止手段を施したうえ上下逆さにして生育野菜をその葉先を下にした吊り下がり姿勢とし、
栽培容器の逆さにした状態における下面から吊り下がり姿勢の生育野菜をその葉本部から切り落として収穫することを特徴とする
栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法。
【請求項2】
栽培容器に対する生育野菜の床部離脱防止手段として、栽培容器に装着および取り外し自在のフォークを用いることを特徴とする請求項1記載の栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法。
【請求項3】
栽培容器として、その底面が生育した野菜の根が絡み付く多孔状またはネット状のものを用いることを特徴とする請求項1記載の栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法。
【請求項4】
栽培する野菜は葉野菜やハーブであって、それらの幼葉を収穫することを特徴とする請求項1、2または3記載の栽培容器を用いて栽培した野菜の収穫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−180834(P2006−180834A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380595(P2004−380595)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】