説明

容器用の注出具

【課題】注出管部内に破断線を介して中栓を取付け、中栓と蓋体との間のラチェット機構を設け、中栓を回転させながら傾けることで容易に破断線を破断できる注出具を提案する。
【解決手段】先端面を注出口12とした注出管部8を備え、容器体へ取付け可能な主管2と、主管2の内周面に破断線22を介して連結され、外方突出する先部24bを有する中栓24と、注出管部8に蓋周壁の基半部42aを螺合させるとともに先半部42bを頂壁44の外周部に連結させた蓋体40とを具備し、その先半部42bと中栓の先部24bとの間に、中栓に対する蓋体の開方向への回動を不能とするラチェット機構Rを設け、この機構は、蓋周壁の先半部42bの内周面及び中栓の先部24bの外周面の一方の全周長に亘って等角的に配列した第1凸列60と、他方の一側部を除く周長部分に亘って等角的に配列した第2凸列62とで形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器用(例えば液体容器用)の注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
液体容器用の注出具として、筒壁の中間部に容器体の口部への取付部を設けた主管を有し、この主管に、有頂筒形の蓋体の周壁下端に破断線を介して付した封緘リングを嵌合し、この封緘リングの内周面と主管の外周面とに、閉方向への回動が可能で開方向への回動を不能とするラチェット機構を設けたものが知られている(特許文献1)。
また、容器の液密性を高めるために、容器体の注出筒内に有底筒形の栓体を嵌合し、さらに容器体の上部にキャップを嵌合させたときにキャップ頂壁から垂下する連結筒が上記栓体内に分離不能に結合し、再びキャップを外したときに栓体がキャップ側へ移行するように構成したものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−308193
【特許文献2】特開2010−052810
【特許文献3】特開2006−125576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容器の構造においてさらに密閉性を向上する必要があるときには、上述のような栓体を導入することが有利である。しかし特許文献2のように栓体を、注出筒と別体として形成すると部品数が多くなり、好ましくない。
【0005】
これに対して注出筒と栓体とを破断線(肉薄線)を介して分離可能な一体品に形成することが考えられるが、この場合に破断線の厚みを適正に設計することが難しい。肉厚が過小であると不意にシール性が損なわれる可能性があり、肉厚が過大であると、破断操作に大きな力を必要としたり、破断線が完全に破断されない可能性があるからである。

【0006】
本出願人は、この問題を鋭意検討し、ラチェット機構の歯列及び爪列のうちで歯又は爪の一部を省略することでこの機構本来の作用である回動力の他に中栓を傾動させる構造に想到した。
尚、爪列とは、一方向の回転において径方向に弾性変形し、歯列を乗り越え可能な弾性板構造となっており、歯列は実質的に弾性変形しない凸部で構成されている。
【0007】
従来技術においてはこうした工夫は見当たらない。例えば歯車の一部を欠歯とするものはあるが(特許文献3)、これは歯車と噛合する従動部が欠歯部分と向かい合ったときに一時的に動力の伝達が遮断されるものであり、歯又は爪の欠所を造ることで別の力を加えるという着想は存在しない。
【0008】
本発明の目的は、主管内周面に破断線を介して中栓を一体的に形成するとともに、この中栓と蓋体との間にラチェット機構を設けた注出具であって、ラチェット機構によって伝達される回転力以外の力を併用してあわせて破断線を容易に破断できるものを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段は、先端面を注出口12とする注出管部8を備え、容器体へ取付け可能な主管2と、
上記注出管部8の内周面に破断線22を介して連結され、上記注出口12を経て外方突出する先部24bを有する中栓24と、
上記注出管部8に蓋周壁の基半部42aを螺合させるとともに蓋周壁の先半部42bを頂壁44の外周部に連結させ、中栓の抜止め手段52を内部に設けた蓋体40とを具備し、
上記蓋周壁の先半部42bと中栓の先部24bとの間に、中栓24に対する蓋体40の閉方向の回動を許容するとともに開方向への回動を不能とするラチェット機構Rを形成して、強制的に蓋体40を開方向に回すことで破断線22が破断されるように設けた容器用の注出具において、
ラチェット機構Rは、蓋周壁の先半部42bの内周面及び中栓の先部24bの外周面の一方周面の全周長に亘って一定角度で等角的に配列した第1凸列60と、他方周面の一側部を凸部省略エリアAとしてこのエリアを除く周長部分に亘って一定角度で等角的に配列した第2凸列62とで形成している。
【0010】
本手段は、図2に示す蓋周壁と中栓との間のラチェット機構を構成する第1凸列60及び第2凸列62のうち後者の一部の凸部を省略することを提案する。環状の通常のラチェット機構では、中心軸の回りに回転力のみが作用する。これは、中栓がその中心軸をはさんで対向する2つの箇所に存する蓋周壁側の凸部から、大きさが同じで反対向きの2つの力(偶力)を受けるからである。本発明では、周方向の一部で凸部を省略することで、中栓の両側部に加わるべき力の一方がなくなり、他方に作用する力が中栓を傾動させる働きをする。その結果として破断線形成箇所が垂直方向に歪み、特定の部分に応力が集中することで破断線の破断を確実にする。
【0011】
第1凸列及び第2凸列は、一方の凸部が他方の凸部を蓋体の閉方向へ乗り越え可能で、開方向へは乗り越え出来ない形状の構造(例えば歯列及び爪列)とすればよい。各凸列の配置の態様としては、凸部の一部を省略した第2凸列を蓋周壁側に形成する場合及び中栓側に設ける場合が考えられ、さらに当該第2凸列を歯列とする場合と爪列とする場合とがあるので4つの態様が存在する。「凸部省略エリア」は、後述の通り他方周面のうち凸部形成エリア(凸部を含む円弧の部分)を除く部分として定義される。
【0012】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記他方周面の全領域を、第2凸列62の各第2凸部62aを含む円弧状の凸部形成エリアと上記凸部省略エリアAとに区分して、この凸部省略エリアの周方向の長さを他方周面の全周長の1/4以下とした。
【0013】
本手段では、凸部省略エリアを他方周面の全周長の1/4以下とすることを提案する。すなわち全周長を4つのエリアに分割して、そのうちの一つで凸部を省略することを意味する。一つのエリアに対応する凸部の数は一つに限らない。図7に1エリア内の凸部の数を複数とした例を示す。
【0014】
第3の手段は、第1又は第2の手段を有し、かつ上記第1凸列60及び第2凸列62のうちの一方を歯列とし、他方を爪列としている。
【0015】
本手段では、ラチェットの構造を確認的に規定している。すなわちラチェットを構成する歯列及び爪列のいずれを省略しても構わない。歯と爪とが当接し合わないことで、偶力の代わりに一方向力が働くという点では作用が同じだからである。逆に言えば第1凸列及び第2凸列との間で凸部同士が係合する(閉方向には乗り越え、開方向には係止する)という機能を有しない突起は本願にいう凸部ではない。本願の凸部省略エリアに相当する箇所にラチェット歯や爪とは別の目的の突起が存在しても、凸部省略エリアの作用を損なわない。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に係る発明によれば、ラチェット機構Rを、蓋周壁側及び中栓側の各周面にそれぞれ配置した第1凸列60と第2凸列62とで形成し、第2凸列に関しては周面の一部で凸部を省略したから、中栓に回転力及び傾動力を付与し、破断線の破断を確実にすることができる。
【0017】
第2の手段に係る発明によれば、凸部省略エリアAを周面の全周長の1/4以下としたから、中栓に効率的に傾動力を付与することができる。
【0018】
第3の手段に係る発明によれば、第1凸列60及び第2凸列62の一方を歯列に他方を爪列にしたから、各凸列の係合を確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る注出具の縦断面図である。
【図2】図1の注出具の一つの要部の横断面図である。
【図3】図1の注出具の要部の縦断面図である。
【図4】本発明の注出具の作用を説明するための簡素化した概略横断面図である。
【図5】図4に対応する縦断面図である。
【図6】図5の注出具の他の段階を示す縦断面図である。
【図7】本発明の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態に係る注出具1を示している。この注出具は、主管2と、中栓24と、蓋体40とで構成されている。これら各部材は特に断らない限り合成樹脂で形成することができる。
【0021】
主管2は、図示例では主管2の中間部を容器体80の口頸部への取付部であるフランジ部4とし、容器体内への挿入用の吸込み管部6及び容器体外方への突出用の注出管部8を有する。
【0022】
上記主管2の基端面(下端面)は吸込み口10とし、主管2の先端面(上端面)は、注出口12としている。図示例では、中間部の下方(フランジ部4の下方)近くに補助吸込み口11を開口している。
【0023】
上記注出管部8の上方には、後述の破断線の上方に位置する上端部9を除いて、その外面にネジ部14を形成している。またネジ部よりやや下方には、係止鍔部15を形成している。
【0024】
中栓24は、注出管部8の内周面に破断線22を介して一体に連結されている。この破断線22は脆弱であるがシール性を有する構造、例えば肉薄線に形成する。
【0025】
上記中栓24は、基部24aと先部24bとで形成している。図示例の基部24aは、栓筒26の上端側を先端小径のテーパ状の肩部を介して注出口12を閉塞する栓板28の外周部へ連結してなり、その栓筒の下端部を上記破断線22に連続させている。
【0026】
また上記中栓の先部24bは、上記栓板の外周部から上記栓筒より小径で上端開放の連結筒34を起立しており、この連結筒の内部に抜止め用のリブを周設している。
【0027】
蓋体40は、蓋周壁42の上端(先端)を頂壁44に連結している。蓋周壁の基端側の半部(基半部42a)は上記注出管部8のネジ部に螺合されている。また蓋周壁の外面には一対の指当て板48を付設している。蓋周壁42の下端には破断帯を介して付設した封緘リング50を、上記係止鍔部15に抜け出し不能に嵌合させている。
【0028】
上記蓋体40の頂壁からは抜止め手段52としての抜止め筒を垂下しており、上記連結筒内に係合させている。
【0029】
本発明においては、蓋周壁の先半部42b内周面に形成した第1凸列60と、中栓の連結筒34外周面に形成した第2凸列62とでラチェット機構Rを形成する。
【0030】
上記第1凸列60は、蓋周壁の先半部42bの内周面の全周に亘って中栓の中心軸周りに一定の角度で等角的に第1凸部60aを配列している。
【0031】
上記第2凸列62は、上記連結筒34の外周面の一部を凸部省略エリアAとしてこのエリアを除く周長部分に一定の角度で等角的に配列している。図示例では一つの係止凸部を省略している。
【0032】
図示例では第1凸部60aをラチェット爪に、また第2凸部62aをラチェット歯に形成しているが、その構造は適宜変更することができる。
【0033】
上記構成によれば、第2凸列のうちの凸部の一部を省略しているので、蓋体を開方向に回動したときに、中栓に対して回転力とともに傾動力が作用し、特定の破断線形成箇所(例えば、傾倒方向の前後2箇所)で局所的な変形を生じ、これにより破断線が容易に破断する。
【0034】
図4から図6は、本発明の作用を説明するための図である。これらの図では、説明を簡素化するために第1凸列の凸部の数を4つとしている。
【0035】
図4において連結筒34の外周面は、3つの凸部形成エリアAと1つの凸部省略エリアAとに分かれる。第1凸列60では、同図の左右に表れる一対の第1凸部60aが、中心軸Oを中心として180°回転対称位置にあり、対向配置されている。また、同図の上下に表れる第1凸部と当該凸部の欠落部も対向配置されている。
【0036】
蓋体を開方向に回転させると、図4における左右一対の凸部はそれぞれ第2凸部62aと係合しているので、図4に示すように大きさの異なる反対向きの回転力Tを中栓に及ぼす。しかし、図4の上下に表れる第1凸部と当該凸部の欠落部では、下側の第1凸部60aのみが第2凸部62aと係合しているため、一方向への力Fを及ぼす。これにより中栓24が図6に示すように傾動し、破断線形成箇所が傾動方向の2箇所(前後)に縦方向に延ばされる。これに加えて開方向の回動力が加わるために破断線を確実に切断することができる。
【0037】
なお、本発明では、蓋体の抜止め手段(抜止め筒)52が中栓の傾動を妨げないように、抜止め筒と連結筒との間に抜止め作用を損なわない範囲で遊びを設け、或いは抜止め筒の弾性変形が可能に設ける。
【0038】
図7は、本発明の変形例である。この変形例では、各凸部省略エリア及び凸部形成エリアが中心軸に対してなす角度θを90°とするとともに、一つのエリアに対応する凸部の個数を2としたものである。この構成では、図4とほぼ同様の作用が得られる。言いかえれば第1凸列の凸部の数が多い場合でも隣接する複数の凸部を省略することで、本発明を適用することができる。
【0039】
尚、上記実施形態では、第1凸部60aと第2凸部62a(欠落部を含む)との形成数を同数としたが、これに限定されない。
例えば、一つの第2凸部62aに対して、複数の第1凸部60aがそれぞれ対応するように配置されても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…注出具 2…主管 4…フランジ部 6…吸込み管部 8…注出管部
9…注出管上端部 10…吸込み口 11…補助吸込み口 12…注出口
14…ネジ部 15…係止鍔部 22…破断線 24…中栓 24a…基部 24b…先部 26…栓筒 28…栓板
34…連結筒 36…ラチェット歯
40…蓋体 42…蓋周壁 42a…基半部 42b…先半部 44…頂壁 46…ラチェット爪 48…指当て板
50…封緘リング 52…抜止め手段
60…第1凸列 60a…第1凸部 62…第2凸列 62a…第2凸部
80…容器体
…凸部形成エリア A…凸部省略エリア R…ラチェット機構 P…凸部対
θ…中心角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面を注出口(12)とする注出管部(8)を備え、容器体へ取付け可能な主管(2)と、
上記注出管部(8)の内周面に破断線(22)を介して連結され、上記注出口(12)を経て外方突出する先部(24b)を有する中栓(24)と、
上記注出管部(8)に蓋周壁の基半部(42a)を螺合させるとともに蓋周壁の先半部(42b)を頂壁(44)の外周部に連結させ、中栓の抜止め手段(52)を内部に設けた蓋体(40)とを具備し、
上記蓋周壁の先半部(42b)と中栓の先部(24b)との間に、中栓(24)に対する蓋体(40)の閉方向の回動を許容するとともに開方向への回動を不能とするラチェット機構(R)を形成して、強制的に蓋体(40)を開方向に回すことで破断線(22)が破断されるように設けた容器用の注出具において、
ラチェット機構(R)は、蓋周壁の先半部(42b)の内周面及び中栓の先部(24b)の外周面の一方周面の全周長に亘って一定角度で等角的に配列した第1凸列(60)と、他方周面の一側部を凸部省略エリア(A)としてこのエリアを除く周長部分に亘って一定角度で等角的に配列した第2凸列(62)とで形成したことを特徴とする、容器用の注出具。
【請求項2】
上記他方周面の全領域を、第2凸列(62)の各第2凸部(62a)を含む円弧状の凸部形成エリアと上記凸部省略エリア(A)とに区分して、この凸部省略エリアの周方向の長さを他方周面の全周長の1/4以下としたことを特徴とする、請求項1記載の容器用の注出具。
【請求項3】
上記第1凸列(60)及び第2凸列(62)のうちの一方を歯列とし、他方を爪列としたことを特徴とする、請求項1または2に記載の容器用の注出具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−51617(P2012−51617A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195213(P2010−195213)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】