説明

容器装置、これを備えたDNA検査装置およびその貫通方法

【課題】容器の大型化を防ぎながら周囲の異物、ホコリが容器内に入るのを防ぐことができる容器装置、これを備えたDNA検査装置およびその貫通方法を提供する。
【解決手段】容器装置100は、容器110と、ラミネートフィルム102と、弾性部材103と、穴あけカッター108とを有する。容器110は、開口部10を有し、開口部10を通じて溶液101を収容可能である。ラミネートフィルム102は、開口部10を覆って溶液101を封止するためのものである。弾性部材103は、薄厚であり、ラミネートフィルム102を覆うためのものである。穴あけカッター108は、弾性部材103の上方から移動し、弾性部材103を介してラミネートフィルム102を破断できる。弾性部材103は、穴あけカッター108がラミネートフィルム102を破断したときに破断されず、穴あけカッター108がラミネートフィルム102と接触することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液が充填された容器を有する容器装置、これを備えたDNA検査装置およびその貫通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA(Deoxyribonucleic Acid)検査の工程では、様々な種類の試薬が使用される。こうした試薬を自動装置で簡単に扱うために、1回の検査で使用する量があらかじめ充填された、いわゆるプレパックされた試薬容器を備えた容器装置が使用されている。
【0003】
このプレパックされた試薬容器は、プラスチックの容器に試薬を充填した後に、その開口部に試薬を封止する部材が固定された構成である。さらに、この試薬容器は、試薬を封止する封止部材によって試薬が外に漏れるのを防ぎ、製造されてから使用開始までの長期間にわたる保存に耐えられるように構成されている。
【0004】
容器を検査に使うときは、容器をDNA検査装置にセットし、この装置内に配設された先端が鋭利な凸形状の穴あけ部材が容器に向かって下降する。穴あけ部材により封止部材は破断される。以上により容器内部の試薬類を取り出したり、容器へ液体を加えたりすることが可能となる(特許文献1参照)。
【0005】
DNA検査装置が穴あけ部材を有する構成においては、以下のような課題が生じる可能性がある。
(1)封止部材の裏面に付着している試薬が、穴をあけた際に穴あけ部材である穴あけ用カッターに移動してしまう。
(2)封止部材の表面に付着した異物、ホコリが、穴をあけた際に穴あけ用カッターに移動してしまう。
【0006】
穴あけ用カッターは、試薬で濡れたまま放置されると、周囲の異物、ホコリが付着しやすくなる。穴あけ用カッターに付着した異物、ホコリは、次の検査以降の容器に穴あけ用カッターで穴をあけたときに封止部材の表面に付着してしまう。この容器にピペットチップを進入させる際に封止部材の表面に付着した異物、ホコリを含む汚れがピペットチップの外周面に付着する。ピペットチップが溶液内に深く進入されたときに、その外周面に付着した汚れが溶液内に流出する。その汚れによって容器内における試薬の反応が阻害される。
【0007】
特にPCR(Polymerase Chain Reaction)のように異物に影響されやすい試薬(酵素)を用いた反応においては、核酸が増幅しないという重大な影響が出る。
【0008】
上記課題を解決する手段として、容器の開口部を覆うフタで封止部材であるフィルムを破断する構成が考えられる。この破断構成を有する容器装置が、特許文献2および3に開示されている。
【0009】
特許文献2の容器装置では、容器の開口部を封止する封止部材として機能するシールブレイカー9が、シール部材を破断、貫通させる貫通手段としても機能している(図14参照)。シールブレイカー9の裏側(溶液側)にシール部材を破る破断突起18が、シールブレイカー9と一体的に形成されている。DNA検査で容器を使用するときには、シールブレイカー9を手で押し込んで破断突起18を容器方向へ押し下げることで、破断突起18は容器内に進入する。
【0010】
特許文献3の容器装置では、シール部材26の上方に先端が鋭利なピストン部材24が配置される(図15参照)。ピストン部材24はシール部材26を貫通させる貫通手段および溶液の容器外への漏れを防止する封止部材として機能している。ヘックス突起40がピストン部材24の上部にピストン部材24と一体的に形成されている。ヘックス突起40に当接する外部からの押し出し部材により、ピストン部材24は試薬が流れ出るウェルの方向へ押し下げられる。このようにピストン部材24を押し下げることで、ピストン部材24によりシール部材26は破断される。
【特許文献1】特開2003−329696号公報
【特許文献2】特開2006−29817号公報
【特許文献3】特許第3823053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
どちらの特許文献の容器装置でも、シール部材を貫通させる貫通手段として機能する破断突起とピストン部材の先端部とが容器の溶液を封止する蓋部分に一体化された構成が開示されている。しかしながら、特許文献2および3で開示された容器装置には、以下の課題がある。
【0012】
特許文献2で開示された容器装置では、シールブレイカーの破断突起がシール部材と直接触れる構成である。そのため、破断突起でシール部材を貫通させる際、破断突起の表面に付着した異物、ホコリがシール部材の表面に移動する。その後、ピペットチップを容器内に進入させると、異物、ホコリが付着したシール部材とピペットチップが接触する。その際、シール部材の表面に付着した異物、ホコリがピペットチップの外周面に移る。このピペットチップが容器内に深く進入され、容器内に収容された溶液に接触すると、ピペットチップの外周面の異物、ホコリが溶液内に混入するおそれがある。この異物混入により、上記のように核酸の増幅工程において核酸が増幅しないという問題が生じる。
【0013】
さらに、シールブレイカーが容器の開口部を覆った状態では、破断突起が容器内に進入する方向の破断突起の長さが容器の高さ方向長さに付加された容器装置の構成となっている。すなわち、この容器装置は、破断突起がない形態の容器装置に比べて高さが増大している。したがって、破断突起の大きさの分だけ容器を含む容器装置は大型化してしまう問題もある。
【0014】
一方、特許文献3で開示された容器装置では、ピストン部材がシール部材と直接触れる構成である。そのため、ピストン部材でシール部材を貫通させる際、ピストン部材の表面に付着した異物、ホコリがシール部材の表面に移動する。その後、ピペットチップを容器内に進入させると、異物、ホコリが付着したシール部材とピペットチップが接触する。その際、シール部材の異物、ホコリがピペットチップの外周面に移る。このピペットチップが容器内に深く進入され、容器内に収容された溶液に接触すると、ピペットチップの外周面の異物、ホコリが試薬内に混入するおそれがある。この異物混入により、上記のように核酸の増幅工程において核酸が増幅しないという問題が生じる。
【0015】
さらに、ヘックス突起は、ピストン部材と一体的に形成されて、ピストン部材を容器内へ押し込む押し込み手段として機能している。ヘックス突起の側壁の高さの分だけ、ヘックス突起を一体的に有するピストン部材もヘックス突起がない場合に比べ必然的に高くなる。したがって、このピストン部材を有する容器装置全体は、ヘックス突起がないピストン部材を有する容器装置に比べ大型化してしまうという問題もある。
【0016】
DNA検査装置で使用される容器は使い捨てであることが多く、多数の容器をまとめて購入し保管されることが想定される。保管スペースはなるべく小さくしたいので、容器の大型化は、保管スペースを増大させることにつながるため好ましくない。特に、上記のような容器とシール部材とを含む容器装置の高さ増大は、容器装置の上にさらに他の容器装置を載置する場合に保管スペースの高さに制約があるため、より好ましくない。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、容器の大型化を防ぎながら周囲の異物、ホコリが容器内に入るのを防ぐことができる容器装置、これを備えたDNA検査装置およびその貫通方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様の容器装置は、開口部を有し、開口部を通じて液体を収容可能な容器と、開口部を覆って液体を封止するための封止部材と、封止部材を覆うための薄厚の隔離部材と、隔離部材の上方から移動し、隔離部材を介して封止部材を破断することのできる貫通手段と、を有し、隔離部材は、貫通手段が封止部材を破断したときに破断されず、貫通手段が封止部材と接触することを防止することができる。
【0019】
本発明の一態様の容器装置の貫通方法は、内部に液体が収容され、開口部が封止部材で覆われ、封止部材が薄厚の隔離部材で覆われた容器を設けるステップと、貫通手段が、隔離部材の上方から移動し、隔離部材を介して封止部材を破断するステップと、を有し、隔離部材は、貫通手段が封止部材を破断したときに破断されず、貫通手段が封止部材と接触することを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隔離部材は、貫通手段が封止部材を破断したときに破断されず、貫通手段が封止部材と接触することを防止することができる。これにより、貫通手段と容器内の液体とは接触することがない。さらに、隔離部材は薄厚である。そのため、容器の高さと隔離部材の薄厚とを有する容器装置の高さは抑えられる。したがって、容器の大型化を防ぎながら周囲の異物、ホコリが容器内に入るのを防ぐことができる容器装置、これを備えたDNA検査装置およびその貫通方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。本発明が適用されるDNA検査装置の増幅部を構成する容器装置については詳細に説明する。
(第1の実施例)
図1に本発明の実施例に係るDNA検査装置の概略図を示す。
【0022】
DNA検査装置1は、抽出部2と、増幅部3と、ハイブリダイゼーション部4と、検出部5とを有する。抽出部2では、生体試料からDNAを抽出する。増幅部3では、抽出部2で抽出されたDNAを増幅させる。なお、増幅部3は、本発明の第1の実施例または第2の実施例の容器装置100、118で構成される。ハイブリダイゼーション部4では、増幅部3で増幅されたDNAをプローブDNAと結合させる。検出部5では、ハイブリダイゼーション部4で結合されたDNAが確実にプローブDNAと結合したかどうかを検出する。さらに、DNA検査装置1は、上記の構成部以外にも搬送部、ピペット部6、ピペット搬送部、ピペットチップ保持部、ピペット廃棄部などから構成されている(搬送部とピペット搬送部以降のDNA検査装置構成部とは不図示)。搬送部は、図2に示すPCRプレート8を搬送する。ピペット部6は、PCRプレート8およびその他の部分に溶液を供給、吐出する。ピペット廃棄部は、使用済みピペットチップを収容する。
【0023】
ピペット部6は、リードスクリュー(不図示)を利用したピペット搬送部により矢印7のように上下前後左右に移動可能に構成されており、抽出、増幅、ハイブリの工程間で溶液を移動させる。
【0024】
図2にPCRプレート8を示す。8×12個の試料管が構成されている。各容器の底部9(先端部)は、後述する金属ブロックと嵌合可能な形状になっている。本実施例では、PCRプレートにはPCRに使用する酵素の他に、PCR後の溶液を精製するための溶液があらかじめ充填されている。
【0025】
容器の開口部10においては、外部からの異物混入を防ぐためにアルミと樹脂でできているラミネートフィルムが接着、熱溶着もしくは超音波溶着で固定されている。これにより、溶液が蒸発するのを防ぎ、溶液の長期間保存に対応できるように構成されている。図2では、ラミネートフィルム、後述する封止部材およびその周辺の機構部材を省略した状態が示されている。
【0026】
図3にPCRプレートを含む容器装置の断面図(PCRプレートについては図2の側面図)を示す。容器装置100は、PCRプレート8と、ラミネートフィルム102と、弾性部材103と、穴あけカッター108と、アクチュエータ109とを有する。
【0027】
PCRプレート8には、開口部10を通じて試薬液体である溶液101を収容可能な容器110が設けられている。溶液101は容器110の内部に増幅反応前に予め充填されている。容器110を構成する側壁の側面からはプレート部119が側方に延びている。プレート部119の上端面には枠104が設けられており、枠104はプレート部119の上端面から上方に逆L字を有して延びている。枠104は弾性部材103を保持する保持部材である。枠104はヒンジ部105と凸部107とを備えている。ヒンジ部105の下端はPCRプレート8の上端面に固定されており、ヒンジ部105は角部106を支点Fとして回動可能である。ヒンジ部105を備える枠104は、支点F周りにアクチュエータ109によって回動されることで容器110の開口部10から取り外される。凸部107は、容器110と嵌合し、その内周面と容器110の側壁の外周面とは密着する。
【0028】
ラミネートフィルム102は、容器110と対向する第1の面1021と第1の面1021の反対側の面を構成する第2の面1022とを有する。第1の面1021と第2の面1022とは略平行であり、第1の面1021と第2の面1022との間隔は小さい。これにより、ラミネートフィルム102は薄膜形状を有している。ラミネートフィルム102は、容器110の側壁の上端面に固定され、容器110の開口部10を覆っている。これにより、ラミネートフィルム102は、容器110内の溶液101が容器110外へ漏れるのを防ぐとともに、外部から異物、ホコリが溶液101内へ混入するのを防止する封止部材として機能している。
【0029】
弾性部材103は、容器110の開口部10を形成する側壁の外周面の径とほぼ同じ大きさに形成されており、薄厚の膜形状を有している。弾性部材103は、ラミネートフィルム102と穴あけカッター108との間に配置されている。弾性部材103は、ラミネートフィルム102と穴あけカッター108とを隔離し、かつラミネートフィルム102を覆うための隔離被覆手段として機能する隔離部材である。弾性部材103は、穴あけカッター108がラミネートフィルム102を破断したときに破断されず、穴あけカッター108がラミネートフィルム102と接触することを防止することができる。さらに、弾性部材103は、弾性体であるため復元可能に変形する。弾性部材103の側面と枠104の凸部107とは密着しており、弾性部材103は枠104により一端が保持されている。増幅反応時には、弾性部材103は、ラミネートフィルム102を介して容器110の開口部10を覆っている。増幅反応終了後、アクチュエータ109により図3において時計回りに支点Fを中心として弾性部材103が回動されることで、弾性部材103で覆われていた開口部10は開放される。
【0030】
薄膜状の弾性部材103の材質は、穴あけカッター108が当接したときに切れたり避けたりしない条件を満たすように材料と厚みが決定されている。その材料は、合成ゴム、天然ゴムから選択される。また、弾性変形するような形状に成形されたプラスチック材料であってもよい。
【0031】
穴あけカッター108は、弾性部材103を介してラミネートフィルム102を破断することができる貫通手段として機能する。穴あけカッター108は、ラミネートフィルム102に穴あけすることが可能な凸形状の先端部を有している。さらに、穴あけカッター108は、ステンレスやアルミといった金属材料とプラスチック材料とでできている。穴あけカッター108は、DNA検査装置1側に構成された不図示の駆動源により図3における上下左右方向に動かされる。穴あけカッター108は、ラミネートフィルム102に穴をあけるときに薄厚の弾性部材103を破断しないように先端がわずかに丸められている。
【0032】
アクチュエータ109は、弾性部材103を回動させる回動手段として機能し、不図示の駆動源により動かされる。アクチュエータ109は、枠104に形成された凸部107に作用し枠104を開閉させる。アクチュエータ109は、保持部材である枠104の一端の角部106を支点Fとして弾性部材103を回動する。
【0033】
次に図4を参照して増幅反応中の増幅部3の容器装置100の構成を説明する。
【0034】
金属ブロック11はPCRプレート8と嵌合する。金属ブロック11には、アルミや銅合金などの熱伝導性の良い金属により構成され、96個のウェル(穴部)が点線のように形成されている。
【0035】
金属ブロック11の下部には金属ブロック11を加熱するペルチェ素子12が配置されている。ペルチェ素子12と接触する金属ブロック11の接触面をペルチェ素子12の表面と密着させてペルチェ素子12から金属ブロック11へ熱を確実に伝える必要がある。そのため、金属ブロック11の接触面とペルチェ素子12の接触面にはグリス(不図示)が塗布されている。グリス以外で同様な熱伝導効果を得るものとして熱伝導性の良いシート材料を用いてもよい。
【0036】
ペルチェ素子12の下部には増幅部3の構成部品が配置されたベース板13がある。ベース板13は、開口14、15を備えた中空構造になっており、開口14、15に接続された不図示の配管を介して冷却水が流れる構造となっている。金属ブロック11の温度を下げるときに、この冷却水によってペルチェ素子12の下面の冷却が促進される。
【0037】
PCRプレート8の上部にはアルミや銅合金などの熱伝導性の良い金属により構成された加熱板16が配置されている。加熱板16の上部にはペルチェ素子17が配置されている。ペルチェ素子12と接触する加熱板16の接触面をペルチェ素子12の表面と密着させてペルチェ素子12から加熱板16へ熱を確実に伝える必要がある。そのため、加熱板16の接触面とペルチェ素子12の接触面にはグリス(不図示)が塗布されている。
【0038】
ペルチェ素子17の上部には金属材料でできた冷却ブロック18が、上記と同様に両ペルチェ素子17と冷却ブロック18との接触面にグリスを介して固定されている。ペルチェ素子17の上面から放熱するときに、冷却ブロック18によって冷却することで放熱を促進させる。
【0039】
冷却ブロック18は、開口19、20を備えた中空構造になっており、開口19、20に接続された不図示の配管を介して冷却水が流れる構造となっている。
【0040】
加熱板16、ペルチェ素子17および冷却ブロック18は一つのユニット(天板ユニット21)として構成されている。天板ユニット21は不図示の駆動手段により、移動可能に構成されている。
【0041】
使用者がPCRプレート8を増幅部3にセットするときは、天板ユニット21が退避位置にあってセット作業を妨げない状態になっている。増幅反応時は加熱位置にあってPCRプレート8を上部から加熱する。
【0042】
次にDNA検査装置の動作をもとに本発明の説明を進める。
【0043】
まず、DNA検査装置1の抽出、増幅、ハイブリの各工程ユニットにそれぞれ試薬が充填された容器をセットする。抽出部2では血液、尿などの生体試料がセットされて公知の手段によりDNAを含む溶液が得られる。抽出が終了するまでに増幅部3にはPCRプレート8がセットされている。
【0044】
DNAを含むこの核酸溶液をピペット部6に取り付けたピペットチップ(不図示)に吸引して増幅部3に移動させる。このときピペットチップは、抽出部2で使用したものから新しいものに交換される。
【0045】
溶液の移動に先立って、移動先の増幅用容器110を覆うラミネートフィルム102に穴をあけておく必要がある。
【0046】
図5は、穴あけ直前の容器装置の状態を示すものである。核酸溶液101は容器110の開口部10を通じて容器110内に収容される。ラミネートフィルム102で容器110の開口部10を覆って溶液101を封止する。薄厚の弾性部材103をラミネートフィルム102の上方に配置して、弾性部材103でラミネートフィルム102を覆う。このようにして、ラミネートフィルム102と弾性部材103とで覆われた容器110が設けられる。穴あけカッター108は不図示の駆動源により容器110の弾性部材103の上方に配置され、位置決めされている。この状態から穴あけカッター108を不図示の駆動系により下方へ動かして、穴あけカッター108を弾性部材103に当接させる。穴あけカッター108をさらに溶液101の方向に下げていくと、弾性部材103は溶液101側に弾性変形する。その後、弾性部材103は、ラミネートフィルム102の第2の面1022に接触する。穴あけカッター108をさらに容器110内に進入させると、穴あけカッター108は弾性部材103を介してラミネートフィルム102を破断する。穴あけカッター108がラミネートフィルム102を破断したときに、弾性部材103は、破断されずに、穴あけカッター108とラミネートフィルム102とが接触することを防止することができる。穴あけカッター108を所定位置まで下げきるとラミネートフィルム102には、ピペットチップが通過可能な穴が形成される。図6は、ラミネートフィルム102が破れた後、穴あけカッター108が最下点に到達した状態である。
【0047】
この状態から穴あけカッター108を上昇させると弾性部材103は復元力により元の形状に戻り図7のようになる。このとき、弾性部材103の形状が十分には戻らずに多少溶液101側に撓んだ状態になることも許容できる。
【0048】
穴あけカッター108は、図5と同じ位置に戻った後に待機位置に戻される。
【0049】
次に、図8に示すようにDNA検査装置1の本体側のアクチュエータ109を枠104の凸部107に引っ掛け、支点Fとして機能する角部106を中心にヒンジ部105を回転させる。これにより、容器110は、開口部10において弾性部材103の被覆が解除され、開放状態となる。図8の中でアクチュエータ109が一番右上にあり枠104および弾性部材103がほぼ直立しているところが開放状態である。アクチュエータ109は、図8のようにヒンジ部105の回動に追従するように駆動する。
【0050】
核酸溶液を吸引したピペットチップを容器110の真上に移動させた後、吐出位置まで下降させる。そして、ピペットチップ内の溶液を容器110に吐出する。このときアクチュエータ109で開放状態を維持したままピペットチップを駆動してもよい。または、開放状態にした後にアクチュエータ109を凸部107から離し、ピペッティングの際にピペットチップ近傍に配置した不図示のガイド部材で枠104の開放状態を維持する構成でもよい。
【0051】
以上のように穴あけカッター108は、弾性部材103を介してラミネートフィルム102に作用し、ラミネートフィルム102を変形させた後、破断させる。この破断状態において弾性部材103は、破断されずに、穴あけカッター108がラミネートフィルム102と接触することを防止している。これにより、容器110内の溶液101は穴あけカッター108に接触しない。ゆえに、溶液101が穴あけカッター108の表面に付着することはなくなる。また、穴あけカッター108の表面に異物、ホコリが付いていても、穴あけカッター108の表面から落下した異物、ホコリを穴あけカッター108と溶液101との間に介在する弾性部材103の表面が受容する。したがって、ラミネートフィルム102の第2の面1022上に異物、ホコリが落ちることを低減できるとともに、溶液101内に異物、ホコリが混入するおそれを回避することができる。
【0052】
また、弾性部材103はラミネートフィルム102が穴あけされた後、容器110の開口部10を覆い、溶液101を封止する手段として機能する。弾性部材103は薄厚の膜形状であることによって、容器110の高さと弾性部材103の薄厚とを有する容器装置100の高さを従来よりも抑えることができる。したがって、容器装置を従来よりも小型化することができる。
【0053】
次に増幅工程の説明をする。所定の容器110に溶液101を吐出したら、ピペットチップはPCRプレート8上から退避させる。開放位置にあった枠104を図9に示すようにアクチュエータ109によって容器110方向に動かしていき容器110に対して圧入する。退避していた天板ユニット21は枠104および弾性部材103と対向する位置まで戻る。次にPCRプレート8と金属ブロック11は、不図示の駆動機構により図の下方より上昇し、天板ユニット21の加熱板16に対して押圧される。これにより、PCRプレート8の底部9と金属ブロック11の嵌合部分とが密着し、図6の状態となる。このときのPCRプレート8の拡大側面図は図10に示す通りである。加熱板16は、枠104の内側に保持された弾性部材103に接触し、容器110を上部から加熱する。図10は、図4の右側面図でもあり、紙面奥行き方向の容器110でPCRを実施する。このとき天板ユニット21は、PCRプレート8の容器を1ヶ所あたり50〜100gf、場合によってはそれ以上の力で押圧できる構造となっている。
【0054】
このように容器110を押圧した状態でPCRを開始する。約92℃〜55℃〜72℃の間で所定の保持時間、サイクル数でPCRを実施することにより容器110内のDNAは増幅される。
【0055】
DNA増幅終了後、先に記載した手順と同じ手順により天板ユニット21を退避させる。さらに、アクチュエータ109で枠104および弾性部材103を開放し、ピペットチップで各容器の増幅産物を吸引し不図示の精製部まで搬送する。再びアクチュエータ109で枠104および弾性部材103を閉じる。
【0056】
精製部にも抽出容器やPCRプレートと同様な容器がセットされており、その容器の中にはあらかじめ精製に用いる磁性粒子、精製液、洗浄液、溶出液などが充填されている。増幅産物を精製容器に吐出する際のピペットチップの動きは抽出部2から増幅部3に溶液を移動したときと同じなので説明は省略する。
(第2の実施例)
本発明の第1の実施例に係る容器装置では、穴あけ手段である穴あけカッターが単一の部材で構成されている。しかし、本発明はこの構成に限定されものではない。すなわち、穴あけ手段を複数の部材で構成することができる。第2の実施例に係る容器装置では、2つの部材(押圧部材および切断部材)で構成された穴あけ手段を規定する。
【0057】
本発明の第2の実施例に係る容器装置を図11から13を参照して詳細に説明する。第1の実施例と同じ構成要素については、同じ符号が付されている。
【0058】
第2の実施例の容器装置118のラミネートフィルム102を破断させる貫通手段は、切断部材である穴あけカッター111と押圧部材112とで構成されている。穴あけカッター111は押圧部材112から着脱可能である。
【0059】
穴あけカッター111はPCRプレート8に不図示の保持手段で固定される。穴あけカッター111の先端部は、鋭利になっており弾性部材103を介してラミネートフィルム102を破断可能に構成されている。
【0060】
押圧部材112は、穴あけカッター111を押圧することで、弾性部材103を介して穴あけカッター111を容器114内に進入させる。押圧部材112の外周面は、穴あけカッター111の凹部を形成している内周面にきつめに接触するように形成されている。枠104はヒンジ部105と一体的に形成されている。枠104の端部には第1の実施例と同様に凸部107が設けられている。枠104は、容器114に圧入可能な内周面を有し、支点Fとして機能する角部106を中心に回動する。枠104は、第1の実施例と同様に、図11中不図示のアクチュエータで凸部107を引っ掛けて容器114の開口部10を開閉する。
【0061】
次に、ラミネートフィルム102に穴をあける際の容器装置の動作を説明する。
【0062】
押圧部材112を穴あけカッター111の上方に移動後、下降させて図11に示すように穴あけカッター111の凹部に挿入する。次に図12のように、弾性部材103の上方に穴あけカッター111を移動後、下降させて弾性部材103を介してラミネートフィルム102を破る。その後、穴あけカッター111をさらに下降させ、穴あけカッター111のフランジ部117が枠104に突き当たる時点で穴あけカッター111を停止させる。その後、押圧部材112と穴あけカッター111を引き上げて待機位置に戻す。穴あけカッター111の凹部には押圧部材112がきつめに圧入されているので、穴あけ動作中に穴あけカッター111は押圧部材112から外れないようになっている。
【0063】
図13は、全ての容器114の穴あけが終了した状態を示す図である。穴あけカッター111と押圧部材112とを容器114に近接したカッター保持部115の上方に移動後、下降させる。ある程度の高さまで下げたらDNA検査装置1側に備えられた除去手段116によって穴あけカッター111を押圧部材112から離脱させる。除去手段116は、押圧部材112と相対的に上下動可能に構成されており、穴あけカッター111のフランジ部117を押し下げる。離脱した穴あけカッター111は、カッター保持部115で不図示の固定手段により保持される。穴あけカッター111は、カッター保持部115ではなくDNA検査装置1内の所定位置にまとめて保管される形態でもよい。
【0064】
以上のように本実施例では貫通手段が押圧部材112と穴あけカッター111とで構成されている。これにより、押圧部材112の穴あけカッター111への押圧力(すなわち、押圧部材112の外周面と穴あけカッター111の凹部を形成している内周面との接触圧力)を調整することができる。そのため、弾性部材103を介した穴あけカッター111からラミネートフィルム102への押圧力を調整できる。したがって、この押圧力調整によりラミネートフィルム102に設けられる貫通孔の大きさを調節することができる。
【0065】
さらに、穴あけカッター111は押圧部材112から着脱可能である。これにより、押圧部材112は、穴あけカッター111と接触する外周面が磨耗しない限り、幾度でも再使用可能である。一方、穴あけカッター111は、押圧部材112と接触する内周面の磨耗が進んだら、別の部品と交換または単独で廃棄することができる。
【0066】
また、ラミネートフィルム102に貫通孔が設けられた時点において弾性部材103は穴あけカッター111と溶液101との間に配置される。そのため、容器114内の溶液101が穴あけカッター111に接触しない容器装置118の構成となる。ゆえに、溶液101が穴あけカッター111の表面に移ることはなくなる。また、穴あけカッター111の表面に異物、ホコリが付いていても、穴あけカッター111の表面から落下した異物、ホコリを穴あけカッター111と溶液101との間に介在する弾性部材103の表面が受容する。したがって、ラミネートフィルム102の第2の面1022上に異物、ホコリが落ちることを低減できるとともに、溶液101内に異物、ホコリが混入するおそれを回避することができる。
【0067】
穴あけカッター111は穴あけ時以外はカッター保持部115に保持される。また、弾性部材103は薄厚の膜形状である。これらにより、容器装置118の高さは従来に比べ増加しない。したがって、容器装置の大型化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係るDNA検査装置を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るPCRプレートを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る容器装置を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る増幅反応中の状態の容器装置を示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る穴あけ直前の状態の容器装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る穴あけカッターが最下点にある状態の容器装置を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る穴あけ終了後、容器の開口部が閉じられた状態の容器装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例に係る容器の開口部を開放するときのアクチュエータの動きを示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施例に係る容器の開口部を閉じるときのアクチュエータの動きを示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施例に係る増幅反応中の状態の容器装置を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係る容器装置を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係る穴あけカッターが最下点にある状態の容器装置を示す断面図である。
【図13】本発明の第2の実施例に係る穴あけカッターを押圧部材から取り外す状態の容器装置を示す断面図である。
【図14】従来の容器装置の一形態を示す断面図である。
【図15】従来の容器装置の別形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 DNA検査装置
10 開口部
100、118 容器装置
101 溶液
102 ラミネートフィルム
103 弾性部材
104 枠
108、111 穴あけカッター
109 アクチュエータ
110、114 容器
112 押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、該開口部を通じて液体を収容可能な容器と、
前記開口部を覆って前記液体を封止するための封止部材と、
前記封止部材を覆うための薄厚の隔離部材と、
前記隔離部材の上方から移動し、該隔離部材を介して前記封止部材を破断することのできる貫通手段と、
を有し、
前記隔離部材は、前記貫通手段が前記封止部材を破断したときに破断されず、該貫通手段が該封止部材と接触することを防止することができる、
容器装置。
【請求項2】
前記隔離部材は弾性体であり復元可能に変形する、請求項1に記載の容器装置。
【請求項3】
前記貫通手段は単一の部材で構成されており、該貫通手段の先端部は凸形状を有している、請求項1または2に記載の容器装置。
【請求項4】
前記貫通手段は押圧部材と切断部材とを有し、該切断部材は該押圧部材から着脱可能である、請求項1または2に記載の容器装置。
【請求項5】
前記隔離部材を回動するための回動手段と、該隔離部材を保持するための保持部材と、を有し、
前記回動手段は前記保持部材の一端を支点として前記隔離部材を回動する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の容器装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の容器装置を備えたDNA検査装置。
【請求項7】
内部に液体が収容され、開口部が封止部材で覆われ、該封止部材が薄厚の隔離部材で覆われた容器を設けるステップと、
貫通手段が、前記隔離部材の上方から移動し、該隔離部材を介して前記封止部材を破断するステップと、
を有し、
前記隔離部材は、前記貫通手段が前記封止部材を破断したときに破断されず、該貫通手段が該封止部材と接触することを防止することができる、
容器装置の貫通方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−30986(P2009−30986A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192013(P2007−192013)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】