説明

容器詰めデンプン含有飲料およびその製造方法

【課題】加温販売用容器詰めデンプン含有飲料における高濃度の脂肪酸エステル添加による渋み、えぐみの発生を防止するために、飲料中の脂肪酸エステル添加量を低減した加温販売用容器詰めデンプン含有飲料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】増粘用のデンプンおよび静菌用の脂肪酸エステルを含有する加温販売用容器詰めデンプン含有飲料において、飲料中のアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより、脂肪酸エステルの添加量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンポタージュスープ等容器詰めデンプン含有飲料、特に自動販売機等により加温販売される容器詰めデンプン含有飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加温販売する容器詰めデンプン含有飲料は耐熱性芽胞形成細菌特にMoorella thermoaceticaによる変敗を防止するために脂肪酸エステルを添加するが、食品成分により静菌作用が阻害される。特にデンプンは阻害作用が強いため、たとえばポタージュスープその他のスープドリンク等のデンプン高含有飲料では2000〜3000ppmという高濃度での脂肪酸エステルの添加が必要となるが、このように高濃度の脂肪酸エステルを添加すると、飲料に渋み・えぐみを与えてしまう欠点を有している。変敗防止で飲料に使われている代表的な脂肪酸エステルはショ糖脂肪酸エステル(SE)とジまたはトリグリセリン脂肪酸エステル(DGE、TGE)の2系統である。
【0003】
デンプンは直鎖構造のアミロースと枝分かれ構造のアミロペクチンからなる。直鎖構造のアミロースはラセン構造を形成する。一方、アミロペクチンは高度に枝分かれした構造で分子は大きいが、最も外側の小さな側鎖のみがラセン構造とると考えられる。
【0004】
通常使用されるバレイショデンプン、コーンスターチなどは、アミロースを20〜25%含有している(うるち種)。一方、餅米に代表されるもち種のデンプンはアミロースを含まず100%アミロペクチンからなり、ワキシーコーンスターチが加工用として販売されている。
【0005】
デンプンの検出に使用されるヨウ素デンプン反応は、ラセン構造内に取り込まれたヨウ素により発色する。アミロペクチンはラセン構造をとれるのが外側の小さな側鎖であるため、ヨウ素の取り込みが少なく赤色に呈色する。ラセン構造のアミロースは分子の大きさに応じてヨウ素を取り込み、小さい分子で赤色〜大きな分子では濃青色を呈色する。100%アミロペクチンのワキシーコーンスターチ(ワキシ)は赤色、25%アミロース含有の通常コーンスターチ(ウルチ)と50%アミロース含有のハイアミロースデンプン(ハイアミロ)は濃青色に呈色する。
【0006】
アミロースは分子内あるいは分子間に多種多様な化合物を捕捉して複合体を形成する。ヨウ素はラセン構造内に取り込まれることが示されているが、他の物質については明らかでない。脂肪酸エステルの中ではTGE等グリセリン脂肪酸エステルがアミロースと複合体を形成することが知られているが、このアミロースTGE複合体がTGEの静菌作用にどのような影響を及ぼすかについては従来明にされてはいなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の加温販売用容器詰めデンプン含有飲料の問題点にかんがみなされたものであって、加温販売用容器詰めデンプン含有飲料における高濃度の脂肪酸エステル添加による渋み、えぐみの発生を防止するために、飲料中の脂肪酸エステル添加量を低減した加温販売用容器詰めデンプン含有飲料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者は、耐熱性が特に強いM. thermoaceticaを対象として脂肪酸エステルの静菌作用に対するデンプンの影響、アミロース脂肪酸エステル複合体形成について鋭意研究と実験を重ねた結果、デンプンによる脂肪酸エステルの静菌作用阻害の主体はデンプン中のアミロースであることを確認し、飲料中のアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより脂肪酸エステルの添加量を低減した容器詰めデンプン含有飲料を得ることに成功した。
【0009】
すなわち、本発明の上記目的を達成する容器詰めデンプン含有飲料は、増粘用のデンプンおよび静菌用の脂肪酸エステルを含有する加温販売用容器詰めデンプン含有飲料において、飲料中のアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより、脂肪酸エステルの添加量を減少させたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の1側面においては、増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させるように飲料の成分を調整することを特徴とする飲料が提供される
本発明の1側面においては、飲料の成分を調整するため、増粘用デンプンの少なくとも一部をワキシーコーンスターチ、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローストビーンガム、大豆多糖類からなる群から選ばれた少なくとも1種の増粘剤によって置換することにより増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させたことを特徴とする飲料が提供される。
【0011】
本発明の1側面においては、アミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させるため、増粘用デンプン中のアミロースの少なくとも一部を酵素分解させることにより低分子化することを特徴とする飲料が提供される。
【0012】
本発明の1側面においては、該デンプン含有飲料はコーンポタージュスープである。
【0013】
上記目的を達成する容器詰めデンプン含有飲料の製造方法は、増粘用のデンプンおよび静菌用の脂肪酸エステルを含有する加温販売用容器詰めデンプン含有飲料の製造方法であって、飲料中のアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより、脂肪酸エステルの添加量を減少させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の1側面においては、増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させるように飲料の成分を調整することを特徴とする製造方法が提供される。
【0015】
本発明の1側面においては、増粘用デンプンの少なくとも一部をワキシーコーンスターチ、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローストビーンガム、大豆多糖類からなる群から選ばれた少なくとも1種の増粘剤によって置換することにより増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させることを特徴とする製造方法が提供される。
【0016】
本発明の1側面においては、アミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させるため、飲料中の増粘用デンプン中のアミロースの少なくとも一部を酵素分解させることにより低分子化することを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、デンプンによる脂肪酸エステルの静菌作用阻害の主体であるアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより脂肪酸エステルの添加量を低減することができ、高濃度の脂肪酸エステル添加による渋み、えぐみの発生を防止することができる。
【0018】
本発明に1側面によれば、増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させるように飲料の成分を調整することにより、アミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることができる。
【0019】
本発明の1側面によれば、増粘用デンプンの少なくとも一部をワキシーコーンスターチ、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローストビーンガム、大豆多糖類からなる群から選ばれた少なくとも1種の増粘剤によって置換することによって増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させることにより、簡単で低コストの方法で飲料の成分を調整することができる。
【0020】
本発明の1側面によれば、増粘用デンプン中のアミロースの少なくとも一部を酵素分解させることにより低分子化することによって、アミロースの脂肪酸エステル吸収能力を低下させ、アミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
M. thermoaceticaに対する脂肪酸エステルの静菌作用に及ぼすデンプンの影響
変法TGC培地にM. thermoaceticaを接種した条件で脂肪酸エステルの最小阻止濃度を分析した結果、最小阻止濃度はSE:4ppm、TGE:3ppmであった。脂肪酸エステルの静菌作用に対するデンプンの阻害は、10ppm脂肪酸エステルを添加した変法TGC培地で評価した。SEに対する結果を表1、TGEに対する結果を表2に示す。
【0022】
【表1】

【表2】

【0023】
SEとTGEの両方の静菌作用に対して、バレイショデンプン0.05%、アミロース0.005%で阻害した。アミロペクチンはSEの静菌作用に対して0.1%で阻害したが、TGEの静菌作用に対しては0.1%でも阻害しなかった。以上の結果より脂肪酸エステルの静菌作用に対するデンプンの阻害はアミロースが主体であることが示された。
【0024】
直鎖構造のアミロースは分子内あるいは分子間に多種多様な化合物を捕捉して複合体を形成する。脂肪酸エステルもアミロースと複合体を形成して取り込まれるために、静菌作用が阻害されると考えられる。そこで、脂肪酸エステルとアミロースの複合体について次に検討した。
【0025】
アミロース脂肪酸エステル複合体の検討
アミロース複合体の分析では、ACI(アミロース複合体形成指数:注釈を参照のこと)が使用される。
注:アミロース溶液に化合物を添加すると、ものによっては添加量に応じてアミロースが複合体を形成し沈殿する。このため、溶液に残ったアミロースをヨウ素デンプン反応で発色、660nmの吸光度を測定すると、複合体形成量の増加とともに吸光度は低下する。従って下記の式で求めたACI(またはSCI)は複合体を形成したアミロースの割合を示す。デンプンに対して分析した場合はSCI(デンプン複合体形成指数)と表記する。ACIは理論上100%となる。しかし、デンプン溶液ではアミロース以外にアミロペクチンを含むためSCIは100%にならず、アミロースが無くなった時点でSCIはプラトーになる。
【0026】
ACI,SCI={(コントロールの吸光度)―(添加試料の吸光度)}/(コントロールの吸光度)×100
【0027】
脂肪酸エステルの静菌作用に対するデンプンの阻害は脂肪酸エステルがアミロース複合体を形成するためと推察されることから、アミロース脂肪酸エステル複合体形成について検討した。容器詰め飲料ではレトルト殺菌されるので、複合体形成の分析では121℃、15分加熱処理して複合体形成させた。0.1%アミロース溶液に脂肪酸エステルを添加後加熱処理した液の上澄液をヨウ素デンプン反応させた時の吸光度変化を図1、そのデータより、脂肪酸エステル添加によるACIの変化を図2に示す。
【0028】
アミロースは脂肪酸エステルと複合体を形成・沈殿するため、添加量が増えると溶解しているアミロースの割合が減少した(図1)。ACIが直線的に変化する添加領域で1次回帰式を求め、ACIを100%にする脂肪酸エステル添加量を求めた。その結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
0.1%アミロースの複合体形成能はSE:133.7ppm、TGE:86.1ppmであった。複合体形成能は脂肪酸エステルを吸収する能力であるので、アミロースの吸収量はSEの方がTGEより多いことを示している。この差は、分子量と純度によると思われる。
【0031】
なお、脂肪酸エステルを添加後121℃加熱処理したアミロース溶液は高温では透明で冷却すると白い懸濁液になったが、脂肪酸エステル未添加のアミロースは121℃加熱処理後冷却しても透明な溶液のままであった。懸濁液より得た沈殿物のFTIR分析より、アミロースと脂肪酸エステルが複合体を形成し、沈殿したことが示された。
【0032】
0.1%アミロペクチン溶液でも同様の試験を行ったが、アミロペクチンはアミロースと異なりヨウ素反応による660nmの吸光度は低く、脂肪酸エステル添加でほとんど変化しなった。
【0033】
次に、加工でよく使用されるバレイショデンプンとコーンスターチを用いデンプンの複合体形成について検討した。その結果を表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
デンプンの比較ではバレイショデンプンよりコーンスターチで複合体形成能が高かった。アミロース含有量は、バレイショデンプン22%、コーンスターチ25%と報告されているので、アミロース含有量の多いコーンスターチの方が高い値を示したことは妥当な結果であった。脂肪酸エステルの比較ではデンプンにおいてもアミロースと同様にSEの方がTGEより多く複合体として吸収されることを示した。
【0036】
脂肪酸エステルの静菌作用に対する阻害と脂肪酸エステル吸収との関係
アミロース、デンプンの脂肪酸エステル吸収量が推定できたことから、1項の静菌作用に対する阻害効果との関係を解析した。その結果を表5,6に示す。
【0037】
【表5】

【0038】
変法TGC培地でSEの静菌作用に対して阻害を示した0.005%アミロースの推定吸収量と添加量10ppmとの差をみると、SEは2.1ppmで最小阻止濃度4ppmより低い値を示し、静菌作用を阻害した結果と一致した。0.001%濃度では吸収量が1/5となるため、差は最小阻止濃度より高くなり、静菌作用を阻害しなかった結果と一致した。
【0039】
【表6】

【0040】
変法TGC培地でのSEの静菌作用に対して阻害を示した0.05%バレイショデンプンの推定吸収量と添加量10ppmとの差をみると、SEは添加した全ての量が吸収され、静菌作用を阻害した結果と一致した。0.01%濃度では吸収量が1/5となるため、差は最小阻止濃度より高くなり、静菌作用を阻害しなかった結果と一致した。
【0041】
以上、アミロースとデンプンの脂肪酸エステル複合体形成能から推定した吸収量と脂肪酸エステルの静菌作用に対するアミロースとデンプンの阻害効果が一致したことにより、デンプン含有飲料における脂肪酸エステルの静菌作用に対する原料中のデンプンによる阻害を推定できるようになった。
【0042】
以上の実験から、デンプン中のアミロースが脂肪酸エステルによる静菌作用を阻害する主体であることが確認された。したがって、各種デンプン含有飲料について、デンプン中のアミロースによる脂肪酸エステル吸収量を減少させるように飲料の成分を調整することにより、デンプン含有飲料に添加される脂肪酸エステルの添加量を低減し、渋み、えぐみの発生を防止することが可能となることがわかった。
【0043】
アミロースによる脂肪酸エステル吸収量を減少させる1方法は、飲料中のアミロースの量特に増粘用デンプン中のアミロース量を減少させるように飲料の成分を調整することである。
【0044】
飲料の成分を調整するには、増粘用デンプンの少なくとも一部をワキシーコーンスターチ、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローストビーンガム、大豆多糖類からなる群から選ばれた少なくとも1種の増粘剤によって置換することが好ましい。カラギーナン等の多糖類はデンプンに比べて静菌作用阻害は低いことが確認された。これによって、簡単な方法で増粘用デンプン中のアミロースの量を顕著に減少させることができる。
【0045】
また、アミロースによる脂肪酸エステル吸収量を減少させる他の方法は、増粘用デンプン中のアミロースの少なくとも一部をアミラーゼ等の酵素を使用して酵素分解させることによってらせん構造を破壊し低分子化することにより、アミロース脂肪酸エステル複合体の生成量を減少させ、静菌作用に寄与することができる脂肪酸エステルの量の減少を防止することである。
また、デンプン以外の原料の酵素処理を行うことも考えられる。
【0046】
本発明は、コーンポタージュスープの他パンプキンスープ、インゲン豆のスープなど種々の加温販売用容器詰デンプン含有飲料に適用することができる。
【実施例1】
【0047】
コーンポタージュスープ飲料でのデンプンによる脂肪酸エステル吸収量の推定
コーンポタージュスープのレシピでは、コーンピューレを10%添加しているので、10%コーンピューレの脂肪酸エステル複合体形成能をデンプンと同様の方法で分析した。その結果を表7に示す。
【0048】
【表7】

【0049】
2種類の冷凍コーンピューレの脂肪酸エステル複合体形成能はどちらもほぼ同じであった。
アミロース、バレイショデンプン、コーンピューレ原料の脂肪酸エステル吸収量が推定できたので、SEの推定吸収量を元にコーンスープ飲料缶詰のレシピに基づき換算したコーンポタージュスープにおけるデンプンによるSEの吸収量を表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
添加したSEの878ppmは複合体形成によりデンプンに吸収されることになるので、静菌作用を期待するにはそれ以上の添加が必要となることを示している。原料毎にみると、吸収に寄与するのは、コーンピューレ原料と増粘剤として添加するデンプンであるが、その割合はコーンピューレ原料由来2割、デンプン由来8割と推定された。このことから、増粘剤として添加しているデンプンの少なくとも一部(全部であることが好ましい)をアミロペクチン100%のワキシーコーンスターチや他の多糖類等に置換することによりSEの添加量をたおえば従来品の2000〜3000ppmから1000ppm程度に低減することができる。
【実施例2】
【0052】
コーンスープ缶詰の調製と缶詰菌接種試験
1.調製品
ショ糖脂肪酸エステルP1670の添加量を変更して4種類の菌接種缶詰を製造した。乳化剤BS-20を添加し、P1670の量も増やして実施した。
【0053】
2−1.使用原料

【0054】
2−2.配合

【0055】
3.製造方法
コーンピューレ、オニオンソテーは前日冷蔵庫に入れて溶かしておく。オニオンソテーは等量の水を加えてミキサー処理しておく(種類ごとに40×2=80g加えることになる)。P1670とBS-20を粉の状態でよく混和し、それを砂糖と混ぜておく。コーンピューレ、牛乳、ブイヨン、オニオンソテー、濃縮酵母エキス、こしょう、5倍量の水に分散させたコーンスターチ、バター、生クリーム、SEと砂糖の混ぜたものを合わせ、水を加えて全量にする。中火で沸騰まで加熱し、沸騰後、水で蒸発量分を戻す。
【0056】
ピストンホモ処理(25-30MPa)後、接種区および無接種区に等分し、再度90℃以上に昇温、缶(J200TF2-S)に充填、常温まで冷却後、123℃で殺菌 (接種区はF0=5、無接種区はF0=40目標)、冷却する。
【0057】
4.接種方法
今回接種には、Moorella Thermoacetica 24-1を用いた。 ,菌数は1.0×106CFU/mlに調製した。4種類の配合ごとに無接種区、接種区を製造する。接種区には、コーンスープを缶に充填後、106CFU/mlを100μl(1缶当たり105CFU/ml)を入れ、巻締、転倒し、常温まで冷却、殺菌した。55℃にて9/13から3週間保存した。
【0058】
5.味センサーにて味覚試験
【0059】
6.結果
殺菌値
接種区: F0= 4.960(MAX=117.6℃)
無接種区: F0=45.02(MAX=123.9℃)
出来上がり缶数
[1]接種区:19缶 無接種区:19缶(うちセンサー2缶)
[2]接種区:19缶 無接種区:19缶(うちセンサー2缶)
[3]接種区:19缶 無接種区:18缶(うちセンサー1缶)
[4]接種区:19缶 無接種区:18缶(うちセンサー1缶)
【0060】
缶の状態

【0061】
微生物試験(接種後55℃保管)(注:P30003の3は3回目の試験の意味です)
保存後のpH分析と臭いによる変敗確認の結果

【0062】
7.考察
殺菌前後のコーンスープを比べると、スープの水色は殺菌後は褐変気味だが、市販品ほど悪くはなかった。やや分離していて、乳化剤の量に比例して分離は少なくなっていた。
【0063】
えぐみは、[1]のP1670を3000ppm添加したのが、今まであまりえぐみを感じなかった人でもえぐみを感じた。[2][3][4]は、えぐみはほとんど感じなかった。ワキシーコーンの方が黄色が強く出た。
【0064】
微生物試験の結果、SE(ショ糖脂肪酸エステルP-1670)を3000ppm添加した従来品([1]P30003)でも、8缶中5缶で変敗した。一方、デンプンをワキシーコーンスターチに変更した改良品はSE1000ppm添加で9缶全部が変敗し無かった([2]P10003)。SEを500ppm添加したスープは、通常のコーンスターチ([3]P5003)、ワキシーコーンスターチ([4]P500W3)どちらも変敗した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】0.1%アミロース溶液に脂肪酸エステルを添加後加熱処理した液の上澄み液をヨウ素デンプン反応させた時の吸光度変化を示すグラフである。
【図2】図1のデータに基く脂肪酸エステル添加によるACIの変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘用のデンプンおよび静菌用の脂肪酸エステルを含有する容器詰めデンプン含有飲料において、飲料中のアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより、脂肪酸エステルの添加量を減少させたことを特徴とする容器詰めデンプン含有飲料。
【請求項2】
増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させるように飲料の成分を調整することを特徴とする請求項1記載の飲料
【請求項3】
増粘用デンプンの少なくとも一部をワキシーコーンスターチ、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローストビーンガム、大豆多糖類からなる群から選ばれた少なくとも1種の増粘剤によって置換することにより増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させたことを特徴とする請求項2記載の飲料。
【請求項4】
増粘用デンプン中のアミロースの少なくとも一部を酵素分解させることにより低分子化することを特徴とする請求項1記載の飲料。
【請求項5】
該デンプン含有飲料はコーンポタージュスープであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
増粘用のデンプンおよび静菌用の脂肪酸エステルを含有する容器詰めデンプン含有飲料の製造方法であって、飲料中のアミロースによる脂肪酸エステルの吸収量を減少させることにより、脂肪酸エステルの添加量を減少させる工程を含むことを特徴とする容器詰めデンプン含有飲料の製造方法。
【請求項7】
増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させるように飲料の成分を調整することを特徴とする請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
増粘用デンプンの少なくとも一部をワキシーコーンスターチ、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、ジェランガム、ローストビーンガム、大豆多糖類からなる群から選ばれた少なくとも1種の増粘剤によって置換することにより増粘用デンプン中のアミロースの量を減少させることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
飲料中の増粘用デンプン中のアミロースの少なくとも一部を酵素分解させることにより低分子化することを特徴とする請求項5記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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