説明

容器詰め食品の製造方法

【課題】 チャーハン、ピラフ、ドライカレー等パラパラした食感が必要な米を原料とする加工食品において、従来得ることができなかった米のパラパラした食感を充分に得ることができる容器詰め食品の製造方法を提供する。
【解決手段】 原料米を水に浸漬し、水切り後、油脂とともに炒めることにより水分含有率を15〜20%に調整し、該水分調整後の原料米を具材、水および調味料とともに容器に充填して密封後加熱殺菌する容器詰め食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米を原料とする容器詰め加工食品の製造方法に関し、特にチャーハン、ピラフ、ドライカレー等パラパラした食感が必要な米を原料とする加工食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来チャーハン、ピラフ、ドライカレー等の米を原料とするレトルト食品は、原料米を洗米後水切りし、具材を混入して味付けし、原料米を具材とともに炊き込んで柔らかくしてα化し、容器に充填した後レトルト殺菌することにより製造している。この方法では調理と殺菌の2工程があるために設備が多くなり設備費が嵩むという問題があるほかに,原料米は60%程度炊飯され具材も加熱調理した後のものを容器に充填した後レトルト殺菌で再度加熱されるため原料米や具材の味や風味が落ちるという問題があり、特に製品の米が餅のようにべとついて、これらの食品の身上である米のパラパラした食感が充分に得られないという問題があった。
【0003】
また、米のパラパラした食感を出すためにレトルト時の水分量を減らすことにより対処しようとすると、加熱ムラが生じたり、米粒の表面が崩れたりして食感が悪くなるという問題があった。
【0004】
また、特許文献1には、チャーハン等のレトルト食品の製造方法として、原料米を洗米し、水に浸漬した後水切りし、この原料米を食用油に漬け込み所定時間後に油を切った後原料米の表面を軽く炒め、これに食用油で炒めた具材を混合し、かつ味付け用調味料液を混入して容器に充填し、容器を密封後加熱手段で加熱殺菌と調理を同時に行う方法が開示されている。
【0005】
しかし、この製造方法は、水切りした米を食用油に所定時間漬け込むことにより米粒の表面が食用油によりコートされるので米粒どうしが粘着することを防止でき、米のパラパラした食感をある程度得ることはできるが、油に所定時間漬け込むために食品によっては米に油っぽさが残る場合が生じ、油に漬ける時間の調節が難しい。また、油に漬け込んだ後に油を切って軽く炒めることはチャーハン等の食品に必要な通常の調理の手順の一つであり、レトルト食品における米のパラパラした食感を出すための特別な手段ではない。
【特許文献1】特開平11−56270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の米を原料とする容器詰め食品の製造方法における問題点を解決するためになされたものであって、チャーハン、ピラフ、ドライカレー等パラパラした食感が必要な米を原料とする加工食品において、従来得ることができなかった米のパラパラした食感を充分に得ることができる容器詰め食品の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記本発明の目的を達成するために鋭意研究と実験を重ねた結果、原料米を水に浸漬し、水切り後容器に充填する前に原料米を油脂とともに炒めることにより米の水分含有率を所定比率に調節することによりこれらの食品の身上である米のパラパラした食感が充分に得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の容器詰め食品の製造方法は、原料米を水に浸漬し、水切り後、油脂とともに炒めることにより水分含有率を15〜20%に調整し、該水分調整後の原料米を具材、水および調味料とともに容器に充填して密封後加熱殺菌することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の1側面においては、容器が、自動蒸気抜き機構つき電子レンジ加熱対応容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料米を水に浸漬し、水切り後、油脂とともに炒めて水分含有率を15〜20%に調整することにより、製品としての食品は、米が柔らかさを保ちながらパラパラした食感が充分に得られる。また、米を油脂とともに炒めることにより米粒の形状が崩れ難くなるとともに、水分含有率を減らすための処理が短時間ですむという効果がある。
【0011】
本発明の1側面によれば、容器として自動蒸気抜き機構つき電子レンジ加熱対応容器を使用することにより、従来のこの種の食品のように食前に湯煎により加熱する手間が要らない上に、食前に電子レンジで加温することにより、容器内の余分な蒸気が抜けるので、米のパラパラした食感が一層増進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
本発明の方法の対象となる容器としては、レトルトパウチ、カップ、トレイ等の容器を使用することができるが、特に好ましい容器は、自動蒸気抜き機構つき電子レンジ加熱対応容器すなわち、食品を充填し密封した容器を電子レンジで加熱した場合に、容器の一部が自動的に開口して包装袋内部に発生した蒸気を自動的に容器外に逃がす自動開口機能を備えた包装袋等の容器である。
【0014】
この種の容器としては包装袋について種々の提案がなされており、また実際に使用されているが、もっとも好ましいものは、特開2002−249176号公報に記載され、現在商標E−RPの下に市販されている包装袋である。この包装袋は、プラスチックフイルムをヒートシールすることにより密封する包装袋に、少なくとも1個の弱化部を有する蒸気抜きシール部を設けるとともに、この蒸気抜きシール部の初期破断点を、包装袋の2つの短辺の周縁シール部内端中央に内接する円の円周上またはその内側に設けたものである。蒸気抜きシール部の弱化部は貫通孔、半貫通孔またはスリットにより形成されるか、あるいは、包装袋に袋の内方に向けて切りかきを設け、この切りかきの周縁部をヒートシールすることにより形成される。商標E−RPの下に市販されている包装袋はこの弱化部が1個の貫通孔により構成されているものである。
【0015】
本発明の自動蒸気抜き機構つき電子レンジ加熱対応容器としては、上記特開2002−249176号公報に記載の包装袋のほか、電子レンジ加熱時における包装袋の内圧上昇を自動的に逃がすために、(1)ヒートシール部に一部に薄膜を介して弱シール部を形成し、この弱シール部の一部にヒートシール巾の狭い巾狭シール部を設けた包装袋(特開平10−59433号公報)、(2)ヒートシール部の一部に弱接着部を設け、該弱接着部の外縁から内部に向かって弱接着部の巾を狭くする非シール部を形成した包装袋(特開平10−95471号公報)、(3)シール部の一部にシール巾を局所的に狭くした非シール部とこれに対応する内方膨出シール部を設けた包装袋(特開平10−101154号公報)、(4)開封部の一部に加熱時に開口を形成する熱収縮性フイルムを挟着した包装袋(特開平10−95470号公報)等の種々の包装袋を挙げることができる。
【0016】
電子レンジ用包装袋を構成するプラスチックフイルムとしては、通常包装袋の製造に用いられるヒートシール性を有するプラスチック材料が使用される。たとえば、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂からなる単層のフイルム、シート類や、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を他の熱可塑性樹脂と積層した多層フイルム等を挙げることができる。
【0017】
本発明の対象となる加工食品は、製品としての米がべとつかず、パラパラした食感を有することを身上とする米を主原料の少なくとも一つとする加工食品であり、チャーハン、ピラフ、ドライカレーのほか、チキンライス、パエリア、ジャンバラヤ、ビビンバ、バターライス等を含むものである。
【0018】
原料米としては、うるち米、もち米、無洗米、うるち米の発芽玄米、もち米の発芽玄米等を使用することができる。また、原料米のほかに、麦、もちきび等他の穀類を適当な比率で混合することもできる。
【0019】
本発明の方法は、原料米を水に浸漬し、水切り後、油脂とともに炒めることにより水分含有率を15〜20%に調整し、該水分調整後の原料米を具材、水および調味料とともに容器に充填して密封後加熱殺菌する。
【0020】
原料米は、たとえば洗米機等により洗米し、水に所定時間浸漬した後米の表面の水をたとえば遠心分離機等により水切りする。次いで水切りした米を油脂ととともに所定の水分含有率になるまで炒める。油脂としては、オリーブ油、大豆油、ヤシ油、ピーナツ油等の植物油のはか、バター、ラード等の動物性油脂も加工食品の種類に応じて適宜使用することができる。
【0021】
本発明に係る方法の重要な特徴は、米を油脂により炒めることにより米の水分含有率を15〜20%に調製することである。炒めた後の米の水分含有率が20%を超えると、製品としての米にべとつき感があり、パラパラとした食感を充分に得ることができない。また、水分含有率が15%未満では、米がパサついて食感が悪くなる。したがって、加工食品の種類や原料米の種類等に応じて15〜20%の範囲内で水分含有率を適当な値に調節することにより最適のパラパラした食感を得ることができる。
【0022】
水分含有量を調節した米を具材、水および調味料とともに包装袋等の容器に充填する。この際に添加する水の量は製品としての米のパラパラした食感を得るために影響する。パラパラした食感を得るためには、製品としての米の水分含有率が40〜55%の範囲内にあるように添加する水の量を調節することが好ましい。
【0023】
米、具材、水および調味料を充填した容器の密封および加熱殺菌は常法により行うことができる。この加熱殺菌により、米および具材の炊飯、調理も同時に達成され、炊飯調理工程を別途行う必要はない。
【実施例】
【0024】
実施例1
本発明の方法を使用して、電子レンジ対応自動蒸気抜き機構つきレトルト容器詰め発芽玄米カレーチャーハンを作成した。
【0025】
株式会社FANCL製うるち米発芽玄米4000gを活性炭ろ過水に1.5時間浸漬した。水切り後、水切り後の発芽玄米重量に対して1.5%の植物油とともに、水分含有率が17%になるまで煎った。所要時間は20分であった。水分含有率はKett社製赤外線水分計FD−100を用いて温度285℃で測定した。東洋製罐製電子レンジ対応自動蒸気抜き機構つきレトルトパウチE−RP(商標)に、煎った後の発芽玄米を55g充填した。キユーピー株式会社製の凍結全卵HVをその重量の1.7%の植物油とともに加熱し、炒り卵を作り、15g充填した。また約5mm角としたランチョンミートを15g充填した。カレールーの8%溶液を作り、攪拌しながら42g注入した。窒素ガスをフローしながらシールすることによりレトルトパウチを密封した。シャワー等圧殺菌シャワー冷却方式で121.1℃で19分間殺菌した。カレーチャーハン製品完成後の水分含有率は52%であった。
【0026】
実施例2
カレールー溶液の注入量を変化させることにより製品完成後の水分含有率を38%から60%まで2%ずつ変化させた12種類のカレーチャーハンを作成した以外は実施例1と同一方法によりカレーチャーハンを作成した。これらのカレーチャーハンは固い芯のあるチャーハンからパラパラした食感のチャーハンを経て餅のようにべとついたチャーハンに及ぶものである。これら12種類のチャーハンを7名のパネラーにより官能評価を行い、どれがパラパラした食感であるかを質問した。その結果、水分含有率40%から55%までの範囲をパラパラとした食感とした。
【0027】
比較例1
水分含有率が11%であるうるち米を活性炭ろ過水に1.5時間浸漬した。水切り後の水分含有率は31%であった。実施例1と同じく、そのうるち米を55g、具材とともにレトルトパウチに充填した。カレールーの8%溶液を攪拌しながら40g注入した。実施例1と同じ方法で密封、レトルト殺菌した。製品完成後の水分含有率は58%であった。完成後の米はべたつき、もち状に近く、パラパラした食感ではなかった。
【0028】
上記と同じ条件で、注入するカレールー溶液の量を30gと減らしたところ、製品完成後の水分含有率は55%となった。しかし加熱ムラや米粒表面の崩れがあり、官能評価でも実施例1と比較しておいしくないと判定された。
【0029】
比較例2
カレーチャーハンの製造において、水切り後のうるち米重量に対して1.5%の植物油とともに、水分含有率が23%になるまで煎った以外はすべて実施例1と同じ条件で製造した。製品完成後の水分含有率は53.5%であった。
【0030】
官能評価を行ったところ、実施例1とは異なり、べたついた食感と判定された。製品完成後の水分含有率だけでなく、油で炒めた後の水分含有率も重要であることが確認された。
【0031】
比較例3
同じくカレーチャーハンの製造において、うるち米の浸漬、水切り後の水分含有率の調整を、うるち米重量に対して1.5%の植物油をまぶし、水分含有率が17.0%になるまで30℃に設定した熱風乾燥器で約6時間乾燥させて行った他はすべて実施例1と同じ条件で製造した。製品完成後の水分含有率は50.6%であった。
【0032】
乾燥器で乾燥させた米は、表面にひびが入り、レトルト後には米が割れるという問題が生じ、商品価値がないと判定された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料米を水に浸漬し、水切り後、油脂とともに炒めることにより水分含有率を15〜20%に調整し、該水分調整後の原料米を具材、水および調味料とともに容器に充填して密封後加熱殺菌することを特徴とする容器詰め食品の製造方法。
【請求項2】
該容器が、自動蒸気抜き機構つき電子レンジ加熱対応容器であることを特徴とする請求項1記載の容器詰め食品の製造方法。


【公開番号】特開2006−129804(P2006−129804A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323620(P2004−323620)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】