説明

容器

【課題】 傾けたときに液体が流出しにくい、液体を収容する容器を提供することである。
【解決手段】 天板部14が環状に形成され、内側周壁部16は、天板部の内周部23から底板部13に向かって突出して形成される。外側周壁部12と内側周壁部16との間には、内部空間が形成され、内部空間は天板部14によって規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、第1の従来技術に係るインク容器1の断面図である。インク2を収容するインク容器1は、蓋3を外した状態で使用され、傾けることによって、インク2がインク容器1から流出する可能性がある(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平2−85199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
子供にインク容器1を使用させると、インク容器1が倒され、インク2が流出し易いという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、傾けたときに液体が流出しにくい、液体を収容する容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外側周壁部と、
外側周壁部の軸線方向一方を塞ぐ底板部と、
外側周壁部の軸線方向他方を塞ぐ環状の天板部と、
天板部の内周部から底板部に向かって突出する内側周壁部とを含むことを特徴とする容器である。
【0007】
また本発明は、容器の内部空間のうち、内側周壁部の底板部側の端部である開口部の、底板部側の端面を含む仮想平面よりも、底板部側の領域部分の容積は、天板部側の領域部分の容積に比較して、小さいことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記開口部が底板部の鉛直上方に位置する基本姿勢の前記開口部のうち、最も鉛直下方に位置する開口部端部の鉛直方向の位置よりも下方の領域部分の容積は、基本姿勢以外の容器の姿勢における前記開口部のうち、最も鉛直下方に位置する開口部端部の鉛直方向の位置よりも下方の領域部分の容積に比較して、小さいことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記基本姿勢において、鉛直下方に面する底面は、水平に形成され、底面は、基本姿勢における重心を通る鉛直方向の仮想直線と交わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天板部が環状に形成され、内側周壁部は、天板部の内周部から底板部に向かって突出して形成される。これによって、外側周壁部と内側周壁部との間には、内部空間が形成され、内部空間は天板部によって規定される。したがって、内部空間に液体を収容することが可能となる。これによって、容器に液体を収容した容器を傾けると、液体の一部または全部を、外側周壁部と内側周壁部との間に進入させることができる。したがって、容器を傾けたときに容器は、収容していた液体の一部または全部を収容することができる。したがって、容器から流出する液体の量を低減することができる。
【0011】
また本発明によれば、開口部よりも底板部側端面を含む仮想平面よりも、底板部側の領域部分の容積は、天板部側の領域部分の容積よりも小さい。これによって、容器を逆さにしたときに、容器は、収容していた液体の一部または全部を収容することができる。したがって、容器を逆さにしても、容器から流出する液体の量を低減することができる。
【0012】
また本発明によれば、基本姿勢における開口部のうち、最も低い位置の開口部端部よりも下方に形成される領域部分の容積は、基本姿勢以外の容器の姿勢における開口部の、最も低い位置の開口部暗部よりも下方に形成される領域部分の容積に比較して小さい。これによって、容器を傾けたときに、容器に収容された液体が容器から流出することを防止することができる。
【0013】
また本発明によれば、基本姿勢において鉛直下方に面する底面は水平に形成され、容器の重心を通る鉛直方向の仮想直線は、底面と交わる。これによって、基本姿勢において、容器を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る容器10の断面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る容器10の斜視図である。本発明の第1実施形態に係る容器10は、液体11を収容する容器10である。容器10は、外側周壁部12と、底板部13と、天板部14と、内側周壁部16とを含んで構成される。外側周壁部12は、筒状に形成され、容器10に形成される内部空間を規定する周壁である。底板部13は、外側周壁部12の軸線方向一方を塞ぐ板状部材である。天板部14は、外側周壁部12の軸線方向他方を塞ぐ環状の板状部材である。内側周壁部16は、天板部の内周部23から底板部13に向かって突出する部材である。厚みが一様な部材を「板状部材」と称し、厚み方向に延びる仮想直線と交差する2つの表面が、曲面である場合を含む。
【0015】
本発明において、内側周壁部16の底板部13側の端部を「開口部」と称する。開口部17の底板部13側の端面は、底板部13と平行に形成される。外側周壁部12の軸線L1は、開口部17に規定される開口18の中心を通り、底板部13に垂直である。外側周壁部12の軸線L1を単に「軸線」と称する。第1実施形態において、開口部17の底板部13側の端面を含む仮想平面よりも、底板部13側の領域部分の容積は、底板部13側の領域部分の容積に比較して、小さい。
【0016】
本発明において、開口18が、容器10を成す部材以外の部材によって閉じられた場合に、開口18よりも底板部13側の空間およびこの空間に連通する空間を「内部空間」と称する。開口18が、容器10を成す部材以外の部材によって閉じられた場合に、軸線L1近傍の、開口18よりも底板部13から遠い方の空間と、この空間に連通する空間とを「外部空間」と称する。開口18が開かれた状態においても、容器10との相対位置に基づいて、同じ名称を用いる。
【0017】
内部空間の一部分を「領域部分」と称する。開口部17が底板部13の鉛直上方に位置するときの容器10の姿勢を「基本姿勢」と称し、容器10が基本姿勢から傾いたときの容器10の姿勢を「傾斜姿勢」と称する。基本姿勢および傾斜姿勢において、開口部17のうち、最も鉛直下方に位置する開口部17端部を「開口下端部」と称し、開口下端部19の、鉛直方向の位置を、「開口下端部高さ」と称する。
【0018】
本発明において、内部空間または領域部分の体積を「容積」と称する。容積は、内部空間または領域部分が収容できる液体11の体積に相当する。またある1つの物品または空間の鉛直方向における位置に対して、他の物品または空間の位置が低いことを「下方」と称する。「下方」は「鉛直下方」を含む。
【0019】
第1実施形態において、基本姿勢における容器10の、鉛直下方に面する底面は、水平に形成される。基本姿勢における容器10の重心を通る鉛直方向の仮想直線は、底面と交わる。底面は底板部13の厚み方向に垂直な2つの平面のうち、開口18から遠い方の平面である。底板部13の厚み方向に垂直な2つの平面は、互いに平行に形成される。開口部17の、最も底板部13に近い端面は、底板部13の厚み方向に垂直な2つの平面に対して平行である。
【0020】
第1実施形態において、容器10に収容される液体11は、塩化第二鉄の水溶液であり、子供が液体11を筆に付けて文字を筆記する場合、または絵を描画する場合、あるいは塗り絵をする場合に、容器10が傾けられることを想定する。「子供」は幼児を含む。容器10に収容される液体11は、基本姿勢において、開口下端部高さよりも下方に収容される。軸線L1は、容器10に対してn回対称軸であり、容器10に対して軸線L1まわりにn回回転の操作を行うと、n回回転の操作を行う前の姿勢における形状と、n回回転の操作を行った後の姿勢における形状とが一致する。nは、2以上の数値であり、無限大を含む。n回回転の操作とは、たとえばn=2のとき、180°の角変位を行う操作であり、n=3のときは、120°の角変位を行う操作である。
【0021】
第1実施形態において、nは無限大であり、外側周壁部12は、円筒形状に形成され、底板部13は円形である。外側周壁部12の外径および内径は、軸線方向に一様である。天板部の内周部23は、天板部14のうち最も軸線L1に近い端部であり、底板部13に平行な仮想平面が通過する位置に形成される。天板部14の厚み方向に延びる仮想直線と交差する天板部14の2つの表面は、底板部13から遠い方に凸の形状に形成される。
【0022】
内側周壁部16は、筒状に形成される。内側周壁部16の、軸線L1から遠い方の面および軸線L1に近い方の面を、底板部13に平行な仮想平面で切断すると、いずれも円形に形成される。内側周壁部16の、軸線L1に垂直な方向の厚みは、軸線方向の位置に関して一様である。内側周壁部16は、天板部の内周部23に固定される基端部26から底板部13側の端部である開口部17に向かうに連れて、軸線L1に近づく形状として形成され、いわゆるテーパ状である。容器10の重心は、軸線L1上にあり、基本姿勢において軸線L1は鉛直方向に延びる。軸線L1は、底板部13に対して、底板部13を軸線方向に見たときの中心部において交わる。
【0023】
容器10の外部空間は内部空間に連通し、外部空間と内部空間とは開口部17が規定する開口18を通じて連通する。内部空間を規定する外側周壁部12の内周面は、天板部14の底板部13側の表面に連続する。外側周壁部12には、外部空間と内部空間とを連通させる貫通孔21が形成され、容器10は、貫通孔21に嵌合することによって、貫通孔21を開閉可能に塞ぐ密栓22をさらに含んで構成される。貫通孔21は、軸線方向に垂直な方向に外部空間と内部空間とを連通させる。貫通孔21の内径は、軸線L1から遠い方から軸線L1に近づく向きに向かうにつれて小さくなるように形成される。密栓22は、軸線L1から遠い方から軸線L1に近づく向きに向かうにつれて、先細状に形成され、外側周壁部12のうち貫通孔21を規定する部分に密着することによって、貫通孔21を通じて連通される外部空間と内部空間とを区切る。容器10の材質については、規定しない。
【0024】
図3は、容器10が液体11を収容している容器10が傾けられるときの、容器10および液体11の断面図である。図3では、密栓22は省略する。底板部13の底面の直径は、基本姿勢における容器10の高さよりも長く設定される。基本姿勢においては、図3(a)に示すように、開口部17の底板部13側の端面の高さよりも低い位置にまで液体11が収容される。容器10が傾けられ、容器10が傾斜姿勢となると、図3(b)に示すように、液体11は外側周壁部12と内側周壁部16との間に進入し、開口18から液体11が外部空間へ流出する可能性は従来のインクの容器10に比べて低減される。開口部17が底板部13よりも下方に位置する姿勢となると、図3(b)に示すように、液体11は、外側周壁部12と天板部14と内側周壁部16とに規定される領域部分に位置する。このように、基本姿勢の上下を逆にした姿勢においても、容器10は液体11を収容することができる。
【0025】
第1実施形態によれば、天板部14が環状に形成され、内側周壁部16は、天板部の内周部23から底板部13に向かって突出して形成される。これによって、外側周壁部12と内側周壁部16との間には、内部空間が形成され、内部空間は天板部14によって規定される。したがって、内部空間に液体11を収容することが可能となる。これによって、容器10に液体11を収容した容器10を傾けると、液体11の一部または全部を、外側周壁部12と内側周壁部16との間に進入させることができる。したがって、容器10を傾けたときに容器10は、収容していた液体11の一部または全部を収容することができる。したがって、容器10から流出する液体11の量を低減することができる。
【0026】
また開口部17よりも底板部13側端面を含む仮想平面に比べて、底板部13側に位置する領域部分の容積は、天板部14側に位置する領域部分の容積よりも小さい。これによって、容器10を逆さにしたときに、容器10は、収容していた液体11の一部または全部を収容することができる。したがって、容器10を逆さにしても、容器10から流出する液体11の量を低減することができる。
【0027】
また基本姿勢において鉛直下方に面する底面は水平に形成され、容器10の重心を通る鉛直方向の仮想直線は、底面と交わる。これによって、基本姿勢において、容器10を安定させることができる。
【0028】
また天板部14の厚み方向に延びる仮想直線と交差する天板部14の2つの表面は、底板部13から遠い方に凸の形状に形成される。これによって、容器10に収容される液体11が、内部空間を規定する天板部の表面24に衝突した場合に、液体11は、軸線方向に対して角度を成す方向の向きに、底板部13側の天板部の表面24から外力が付与される。したがって、液体11が流動するときの液体11の摩擦によって、液体11の揺れを緩和することができる。これによって、液体11が開口18を通過して外部空間に流出する可能性を低減することができる。
【0029】
内側周壁部16は、天板部の内周部23に固定される基端部26から底板部13側の端部である開口部17に向かうに連れて、軸線L1に近づく形状として形成され、いわゆるテーパ状である。天板部の内周部23の内径は、開口部17の内径よりも大きい。これによって、液体11を、開口部17から容器10に注入することが容易になる。また開口部17の内径は、天板部の内周部23の内径よりも小さいので、容器10に収容された液体11が、開口部17を通過して外部空間に流出する可能性を低減することができる。
【0030】
底板部13の底面の直径は、基本姿勢における容器10の高さよりも長く設定される。これによって、容器10は基本姿勢で安定し、傾斜姿勢となりにくいので、基本姿勢における容器10の高さよりも底板部13の底面の直径が長い場合に比べて、容器10が傾斜姿勢となる可能性を低減し、容器10に収容された液体11が容器10の外部空間に流出する可能性を低減することができる。
【0031】
外側周壁部12には、貫通孔21が形成され、容器10は、貫通孔21を開閉可能に塞ぐ密栓22を含んで構成される。したがって、密栓22を除去することによって、貫通孔21を開き、貫通孔21を通じて、容器10内の液体11を容器10の内部空間から外に放出することが容易になる。他の実施形態においては、容器10内の液体11を容器10の内部空間から外に放出するために、天板部14または底板部13のいずれか一方または両方が、外側周壁部12から分離可能に形成されてもよい。
【0032】
図4は、本発明の第2実施形態に係る容器10の断面図である。図5は、本発明の第2実施形態に係る容器10の斜視図である。第2実施形態において、天板部14は、平板状の部材であり、底板部13に平行に形成される。内側周壁部16は、円筒形状の部材であり、内側周壁部16の外径および内径は、軸線方向の位置に関して一様である。第2実施形態において、容器10に収容される液体11は、インクであるものとする。
【0033】
第2実施形態に係る容器10の外側周壁部12の内部には、突出部27が形成される。突出部27は、軸線L1まわりの周方向全体にわたって、外側周壁部12の内部に、外側周壁部12と底板部13とに接して形成される。突出部27は、軸線L1に垂直な全ての方向に一定の厚みを有する円筒形状の部材である。突出部27の軸線方向の長さs1は、開口部17の底板部13側の端面と底板部13との距離s1に等しく形成される。突出部27は、基本姿勢において、開口18よりも下方の領域部分の容積を制限する部分である。底板部13に臨む天板部の表面24と、天板部14に臨む底板部の表面30との軸線方向の距離s2は、突出部27の軸線方向の長さs1の2倍よりも長い。
【0034】
基本姿勢の開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積は、傾斜姿勢における開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積に比較して、小さい。基本姿勢において開口下端部高さよりも下方に位置する突出部27の一部は、傾斜姿勢において開口下端部高さよりも上方に位置する。
【0035】
図6は、本発明の第2実施形態に係る容器10が液体11を収容したときに、傾けられる様子を比較対象の容器28とともに示す断面図である。図6(a)、(c)および(e)は、比較対象の容器28の断面図であり、図6(b)、(d)および(f)は、本発明の第2実施形態に係る容器10の断面図である。図6における比較対象の容器28は、円筒形状の外側周壁部12と、円形の底板部13と、環状に形成される天板部14と、円筒形状の内側周壁部16とを備え、突出部27は形成されていない。比較対象の容器28の、外側周壁部12の内径s3は、図6(b)、(d)および(f)に示した第2実施形態の突出部27の内径に等しく形成される。
【0036】
比較対象の容器28の、開口部17の底板部13側の端面と底板部13との距離は、第2実施形態に係る容器10の開口部17の底板部13側の端面と底板部13s1との距離に等しい。比較対象の容器28の、底板部13に臨む天板部の表面24と、天板部14に臨む底板部の表面30との軸線方向の距離s4は、開口部17の底板部13側の端面と底板部13との距離s1の2倍に等しい。比較対象の容器28は、外側周壁部12の内径と、突出部27の有無と、底板部13に臨む天板部の表面24から天板部14に臨む底板部の表面30までの軸線方向の距離s4とを除いて、第2実施形態に係る容器10と同様に形成される。
【0037】
図6の(a)および(b)に示すように、底板部13を水平に配置し、開口部17が底板部13の鉛直上方に位置する基本姿勢において、比較対象の容器28および第2実施形態に係る容器10には、開口部17の底板部13側の端面の高さまで液体11が満たされる。これらの容器10の天板部14を図6の(c)および(d)に示すように、水平方向一方に変位させて、これらの容器10を角度θ1だけ傾斜させる。これによって、基本姿勢において底板部13中央部の鉛直上方に位置していた開口部17は、傾斜姿勢において底板部13中央部よりも水平方向一方に相対的に変位する。
【0038】
比較対象の容器28および第2実施形態における容器10内の液面の、軸線方向の位置は、最も水平方向一方に位置するの外側周壁部12の一部分の内側において、最も天板部14に近い位置をとなる。図6(c)は、比較対象の容器28において、外側周壁部12と底板部13との接線のうち、最も水平方向他方の点を、液面を含む平面が通過する状態にあるときの断面図である。図6(d)は、第2実施形態に係る容器10の天板部14を水平方向一方に変位させて、比較対象の容器28を図6(c)において傾けたときと同じ傾斜角度θ1で容器10を傾けた状態における第2実施形態に係る容器10の断面図である。
【0039】
比較対象の容器28を傾斜させたときには、軸線方向に最も天板部14側に位置する液面の、軸線方向の位置と、基本姿勢における液面の軸線方向の位置との差s5は、軸線方向に最も底板部13側に位置する液面の、軸線方向の位置と、基本姿勢における液面の軸線方向の位置との差に等しい。これらはs1と同じ距離である。基本姿勢における液面と軸線L1との交点を「中心点」と称すると、傾斜姿勢における液面は、軸線L1に対して中心点29において交わる。したがって、基本姿勢における比較対象の容器28に、開口部17の底板部13側の端面の高さまで液体11を見たし、比較対象の容器28を傾斜させると、液体11の一部は、開口18を通過して開口部17よりも天板部14側に移動する。
【0040】
第2実施形態に係る容器10を傾斜させたときには、突出部27よりも天板部14側に変位した液体11は、軸線L1に臨む突出部27の表面よりも軸線L1から遠い位置、かつ突出部27よりも天板部14側の位置に形成される領域部分31に位置する。第2実施形態に係る容器10を傾斜させたときに、中心点29を通る水平な平面よりも下方に位置する領域部分の体積は、基本姿勢において中心点29を通る水平な平面よりも下方に位置する領域部分の体積に比較して大きい。したがって、第2実施形態に係る容器10を傾斜させたときには、液面は、中心点29よりも下方に位置する。
【0041】
外側周壁部12の内径と突出部27の内径との差s6を大きく設定すればするほど、傾斜姿勢における液面の高さと傾斜姿勢における中心点29の高さとの差s7は大きくなる。また開口部17の内径s8を大きく設定すればするほど、開口下端部高さと中心点29の高さとの差s9は大きくなる。外側周壁部12の内径と突出部27の内径との差s6と開口部17の内径s8とを設定することによって、傾斜姿勢における液面の高さと傾斜姿勢における中心点29の高さとの差s7を、開口下端部高さと中心点29の高さとの差s9よりも大きくする。これによって、基本姿勢の開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積は、傾斜姿勢における開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積に比較して、小さく設定される。
【0042】
図6(e)は、比較対象の容器28を(c)の状態に比べてさらに水平方向一方に傾けたときの断面図である。この状態において図6(e)に示した容器10は基本姿勢に対して傾斜角度θ2の角度で傾斜する。0<θ1<θ2<90°であり、θ2は、θ1よりも大きく90°よりも小さい任意の角度である。図6(e)において、液面を含む平面は、軸線L1よりも水平方向他方において、天板部14に臨む側の底板部の表面30を含む平面に交わり、交線が形成される。これを「第1交線」と称する。液面を含む平面は、軸線L1よりも水平方向一方において、底板部13に臨む側の天板部の表面24を含む平面に交わり、交線が形成される。これを「第2交線」と称する。
【0043】
第1交線32と、底板部13の天板部側の表面30に含まれ、最も水平方向他方に位置する点との距離s10は、第2交線33と、天板部14の底板部13側の表面に含まれ、最も水平方向一方に位置する点との距離に等しい。傾斜角度がθ2の、図6(e)の状態において、液面は軸線L1と中心点29で交わる。
【0044】
図6(f)は、第2実施形態に係る容器10を、図6(e)と同じ傾斜角度θ2だけ水平方向に傾けたときの断面図である。底板部13に臨む天板部の表面24から天板部14に臨む底板部の表面30までの軸線方向の距離s11は、開口部17の底板部13側の端面と底板部13との距離s1の2倍よりも大きい。したがって、第2実施形態に係る容器10には、傾斜角度θ1から傾斜角度θ2に角変位したときに移動する液体11が、底板部13の天板部側の表面30から軸線方向天板部14側にs1の2倍以上離れた位置よりも、さらに天板部14側に移動することのできる領域部分34が形成される。これによって、底板部13に臨む天板部の表面24から天板部14に臨む底板部の表面30までの軸線方向の距離s11が、開口部17の底板部13側の端面と底板部13との距離s1の2倍以下であるときに比べて、第2実施形態に係る容器10を傾斜角度θ2まで傾斜させたときの液面の高さは、低くなる。したがって、容器10に収容された液体11が開口18を通過して外部空間に流出することが防止される。
【0045】
第2実施形態において、容器10を傾ける作業は、可逆的に行われるものとする。「可逆的」とは、熱力学的な用語としての意味を有する。第2実施形態において液面の位置は、傾斜角度に対して常に平衡を保っているものとする。傾斜角度の変化は、傾斜角度を、無限小だけ逆に変化させれば、液面の位置の変化が逆の経路をたどる条件の下で、行われる。
【0046】
第2実施形態によれば、基本姿勢において開口下端部高さよりも下方に形成される領域部分の容積は、傾斜姿勢における開口下端部高さよりも下方に形成される領域部分の容積に比較して小さい。これによって、容器10を傾けたときに、容器10に収容された液体11が容器10から流出することを防止することができる。
【0047】
第2実施形態においては、第1実施形態と同様の貫通孔21が外側周壁部12に形成され、容器10は密栓22を伴って形成されてもよい。また貫通孔21は、底板部13または天板部14に形成されてもよい。また他の実施形態においては、天板部14及び内側周壁部16が外側周壁部12に螺合することによって、容器10全体が一体となる構成であってもよい。これによって、容器10内に収容された液体11を、容器10から取出すことが容易となる。
【0048】
外側周壁部12のうち軸線方向の天板部14側の一部が、外側周壁部12のうち軸線方向の底板部13側の他の部分に対して分離可能に形成されてもよい。この場合には、軸線方向の底板部13側の他の部分と分離される外側周壁部12の天板部14側の一部は、開口部17の底板部13側の端面よりも天板部14であることが好ましい。これによって、基本姿勢において、開口部17の底板部13側の端面の高さまで収容した液体11を、分離された容器10のうちの底板部13側の材料によって保持することができる。したがって、容器10から液体11を取出すときに、溶液が分離された容器10から流出することを防止することができる。
【0049】
第2実施形態において突出部27は、軸線方向に、開口部17の底板部13側の端面と底板部13との距離s1に等しい長さを有し、基本姿勢における開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積を制限することによって、基本姿勢における開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積が、傾斜姿勢における開口下端部高さよりも下方の領域部分の容積に比較して小さく形成されていればよい。たとえば他の実施形態において突出部27は、外側周壁部12の内周面から離れて、底板部13に固定されて形成されてもよい。
【0050】
第1および第2実施形態において外側周壁部12は、円筒形状に形成されたけれども、他の実施形態において外側周壁部12は、軸線方向に見て多角形に形成されてもよい。第2実施形態においては、突出部27の体積と、開口部17の内径とを調整することによって、傾斜角度を問わず常に容器10内の液体11が開口18から流出することを防止することが可能となる。具体的には、突出部27の体積は、大きければ大きいほど、また開口部17の内径は小さければ小さいほど、容器10内の液体11が流出する可能性を低減することができる。
【0051】
第1および第2実施形態において、nを2以上の自然数とし、nは無限大を含むものとし、軸線L1は、n回対称軸であるものとした。これによって容器10を軸線方向に見たときの形状は正多角形または円形であり、開口部17は、底板部13の中央部の軸線方向天板部14側に形成される。ただし、他の実施形態において軸線L1は、n回対称軸でなくてもよい。開口部17は、底板部13の中央部の軸線方向天板部14側の位置から、軸線L1に垂直な方向の一方の向きに偏って形成されてもよい。
【0052】
第1実施形態において液体11は、塩化第二鉄の水溶液であるものとし、第2実施形態においては、インクであるものとしたけれども、本発明において液体11の成分は規定しない。
【0053】
第1および第2実施形態において容器10は、開口18を塞ぐ部材を伴っていないけれども、他の実施形態において容器10は、開口18を開閉可能に塞ぐ部材を伴って形成されてもよい。これによって、容器10に収容した液体11に外部空間から、物体が混入することを防止することができる。
【0054】
第1および第2実施形態において底板部13は、平板状の部材であり、底板部13の厚み方向に垂直な2つの表面のうち、開口部17から遠い方の表面は、平坦に形成されるものとしたけれども、他の実施形態において底板部13は、開口部17側に凸の形状に形成され、基本姿勢における底板部13の下方に凹部が形成されてもよい。これによって、基本姿勢で容器10を載置したときに、底板部13の中央部の下方に物体があった場合に、この物体が底板部13の凹部に収容される大きさであるならば、容器10は安定に基本姿勢を保つことができる。
【0055】
また他の実施形態において、底板部13は、軸線方向の、開口部17から遠い向きに凸の形状に形成されてもよい。これによって、容器10は傾斜姿勢を取り易くなり、容器10は揺れることが容易になる。容器10に収容される液体11は容器10から流出しにくいので、容器10が揺れた場合に容器10から液体11が流出しない様子を子供に観察させることができ、子供の興味を引くことが可能となる。
【0056】
第1および第2実施形態において外側周壁部12は、円筒形状であるものとしたけれども、他の実施形態において外側周壁部12は、天板部14から底板部13までの軸線方向中央部において内径が大きく、天板部14近傍および底板部13近傍での内径が小さい樽状の形状に形成されてもよい。外側周壁部12、天板部14および底板部13が軸線方向に見て矩形である場合には、外側周壁部12を成す板状部材が、天板部14から底板部13までの軸線方向中央部において外方に突出し、天板部14近傍および底板部13近傍においては軸線方向中央部に比べて、軸線L1に近い位置に形成されてもよい。
【0057】
これによって、容器10が基本姿勢から傾けられ、自重に基づく駆動力によって外側周壁部12を下方に向けた姿勢に角変位した場合において、容器10の角変位に関して容器10にかかる負の加速度が低減される。すなわち、容器10が倒されたときに角変位が急激に停止しない。これによって、容器10に対する液体11の相対的な位置の変化を低減することができる。したがって、容器10から液体11が流出する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る容器10の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る容器10の斜視図である。
【図3】容器10が液体11を収容している容器10が傾けられるときの、容器10および液体11の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る容器10の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る容器10の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る容器10が液体11を収容したときに、傾けられる様子を比較対象の容器28とともに示す断面図である。
【図7】第1の従来技術に係るインク容器の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 容器
11 液体
12 外側周壁部
13 底板部
14 天板部
16 内側周壁部
17 開口部
18 開口
19 開口下端部
21 貫通孔
22 密栓
23 天板部の内周部
26 基端部
27 突出部
28 比較対象の容器
29 中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側周壁部と、
外側周壁部の軸線方向一方を塞ぐ底板部と、
外側周壁部の軸線方向他方を塞ぐ環状の天板部と、
天板部の内周部から底板部に向かって突出する内側周壁部とを含むことを特徴とする容器。
【請求項2】
容器の内部空間のうち、内側周壁部の底板部側の端部である開口部の、底板部側の端面を含む仮想平面よりも、底板部側の領域部分の容積は、天板部側の領域部分の容積に比較して、小さいことを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記開口部が底板部の鉛直上方に位置する基本姿勢の前記開口部のうち、最も鉛直下方に位置する開口部端部の鉛直方向の位置よりも下方の領域部分の容積は、基本姿勢以外の容器の姿勢における前記開口部のうち、最も鉛直下方に位置する開口部端部の鉛直方向の位置よりも下方の領域部分の容積に比較して、小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記基本姿勢において、鉛直下方に面する底面は、水平に形成され、底面は、基本姿勢における重心を通る鉛直方向の仮想直線と交わることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−273536(P2008−273536A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116155(P2007−116155)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(592002950)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】