説明

容器

【課題】本発明は、航空輸送時に生じる外気圧の変化に晒されても、収納物の漏出や収納物の汚染が生じ難い新規な容器を提供することを目的とする。
【解決手段】容器本体2と、前記容器本体2の開口部22に内嵌される中蓋3と、前記容器本体2の開口部22に外嵌される外蓋4とを具備する容器1において、前記中蓋3の周縁に沿って、前記中蓋3の下面34側に向かって垂下する舌片部32を円環状に設け、容器1外の気圧に対して容器1内が正圧となされた際に、前記舌片部32の外周面が前記開口部22の内周面に密着されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と、前記容器本体の開口部に嵌挿される中蓋と、前記容器本体の開口部に外嵌される外蓋と、を具備する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板配線に用いられる金や銀等のペースト状の導電性材料は、通常、外蓋及び中蓋によって二重に蓋された密封容器内に収納されて輸送や保管に供される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
図12の分解斜視図、及び図13の拡大断面図に示すように、特許文献1に記載の容器(蓋付き容器)10は、容器本体20と、容器本体20の開口部内側に嵌合される中蓋30と、容器本体20の開口部外側に嵌合される外蓋40とからなり、前記中蓋30の外周に容器本体20の開口端に当接させるフランジ301を設け、外蓋40の内周には、上記フランジ301に対する係合によって中蓋30が外蓋40から外れるのを防止する膨出部401を形成し、この膨出部401の内周面に係合溝402を設け、容器本体20の外周面に上記係合溝402に係合可能な係合突条201を形成し、中蓋30の外周面に係合突条302を設け、容器本体20の内周面に係合凹部202を形成し、中蓋30と容器本体20の対向面間に形成された上記係合突条201と係合凹部202の係合力が前記膨出部401とフランジ301の係合力より強くされていることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5‐86853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載された容器10は、容器本体20の開口端と外蓋40との間でフランジ301を挟持することによって一応の気密性が確保される構造となっているが、このような構造の容器10にペースト状の導電性材料を収納し、航空輸送に共すると、航空機の離陸後から上昇持においては、外気に対して容器10内の気圧が正圧となって、容器10内の空気と共に容器10内に収納された導電性材料が漏出する場合がある。一方、航空機の下降時においては、外気に対して容器10内の気圧が負圧となって、外気中に含まれる異物とともに外気が容器10内に吸い込まれるため、容器本体20内に収納された導電性材料が汚染される場合がある。
【0006】
国際航空運送協会(IATA)では、この種の容器の気密性について厳しい基準を設けており、気圧の変化によって内容物が漏出するような容器については、航空輸送に供することはできない。
【0007】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、航空輸送時に生じる外気圧の変化に晒されても、収納物の漏出や収納物の汚染が生じ難い新規な容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の容器は、円筒状の開口部を有する容器本体と、前記開口部に内嵌されて、前記開口部を閉塞する中蓋と、前記開口部に外嵌されて、前記中蓋の上面を覆う外蓋と、を具備してなる容器であって、前記中蓋には、前記中蓋の下面側から垂下する舌片部が、前記中蓋の周縁に沿って円環状に設けられてなり、前記舌片部が、100〜500MPaの曲げ弾性率を有する樹脂を素材として形成され、且つ前記舌片部の厚みが0.1〜2mmとなされることによって、容器外の気圧に対して容器内が正圧となされた際に、前記舌片部の外周面が前記開口部の内周面に密着されることを特徴とする。
【0009】
本発明の容器においては、前記中蓋には、前記中蓋が前記開口部に内嵌される際に、前記開口部の開口端に当接されるフランジ部が設けられてなり、前記フランジ部によって、前記前記開口部に対する前記中蓋の下面側の挿入深さ、及び前記開口部の開口端から突出する前記中蓋の上面側の突出高さが規定されるものが好ましい態様となる。
【0010】
本発明の容器においては、前記開口部には、その外周面に係合部が設けられてなり、前記外蓋には、その周壁の内周面に被係合部が設けられてなり、前記外蓋が前記開口部に外嵌される際に、前記係合部と前記被係合部とが係合されることによって、前記外蓋に対する前記開口部の挿入代が規定されるものであり、前記挿入代(L)と、前記外蓋の周壁の奥行き(H)と、前記開口部の開口端から突出する前記中蓋の上面側の突出高さ(T)とが、H>L+Tの関係となされることによって、前記中蓋が前記開口部に内嵌されると共に前記外蓋が前記開口部に外装された際、前記外蓋と前記中蓋とが非接触となるものが好ましい態様となる。
【0011】
本発明の容器においては、前記舌片部の外周面が、前記舌片部の先端に向かって外径を縮径するテーパ面となされ、前記開口部の内周面における前記舌片部が密着される部分が、前記舌片部の外周面のテーパ率と同一のテーパ率にて、開口端に向かって内径を拡径するテーパ面となされたものが好ましい態様となる。
【0012】
本発明の容器においては、前記中蓋には、その周縁に沿って上面側から立ち上がる円筒状のリブが設けられなり、前記舌片部が、前記リブの基端と連続して設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0013】
本発明の容器においては、前記中蓋には、その周縁に沿って下面側から垂下する円筒状のリブが設けられてなり、前記舌片部が、前記リブの先端と連続して設けられてなるものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の容器は、航空輸送時に生じる外気圧の変化に晒されても、収納物の漏出や収納物の汚染が生じ難いといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態1に係る本発明の容器を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る本発明の容器を示す断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る本発明の容器に対し、容器外の気圧に対して容器内が正圧となされた状態を示す断面図である。
【図4】図4は、容器本体の各種形状を例示する正面図(a)と斜視図(b)である。
【図5】図5(a)〜(c)は、中蓋の各種形状を例示する断面図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る本発明の容器を示す分解斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る本発明の容器を示す断面図である。
【図8】図8は、容器本体の開口部を一部切り欠いて拡大して示す部分正面図である。
【図9】図9は、外蓋の周壁内周面を拡大して示す部分斜視図である。
【図10】図10は、容器本体に形成された溝部に外蓋に設けられた凸条を係合する状態を示す部分正面図である。
【図11】図11は、実施形態2に係る本発明の容器に対し、容器外の気圧に対して容器内が正圧となされた状態を示す断面図である。
【図12】図12は、従来の容器を示す分解斜視図である。
【図13】図13は、従来の容器を拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0017】
[実施形態1]
図1の分解斜視図、及び図2の断面図に示すように、本実施形態に係る容器1は、容器本体2と、中蓋3と、外蓋4とからなる。
【0018】
前記容器本体2は、有底円筒形状の中空体(内容量約5リットル)であり、収納部21の一端に円筒形状の開口部22が設けられている。この容器本体2は、高密度ポリエチレン(FCFC社製、商品名:TAISOX 8050)を射出成形することによって形成されたものである。
【0019】
前記開口部22の外周面には、外周面に沿って螺旋状に周回する雄ネジ23が設けられている。この雄ネジ23は、特許請求の範囲における係合部に相当するものである。
【0020】
前記中蓋3は、円盤状の中蓋本体部(厚さ3mm)31と、前記中蓋本体部31の周縁に沿って下面34側に垂下する円環状の舌片部(高さ10mm、厚さ1mm)32とからなり、前記中蓋本体部31の周縁には、前記舌片部32の外周面に向かって張り出すフランジ部(厚さ3mm)33が設けられている。この中蓋3は、低密度ポリエチレン(商品名:住友化学社製、商品名スミカセンGA701、曲げ弾性率195MPa)を射出成形することによって形成されたものである。なお、曲げ弾性率は、ASTM D1822‐61Tに準拠して測定されたものである(以下、同様)。
【0021】
この中蓋3は、下面34側(前記舌片部32の先端側)が前記容器本体2内に臨む状態、且つ、前記舌片部32の外周面が前記開口部22の内周面に当接された状態にて前記容器本体2における前記開口部22に内嵌される。この際、前記舌片部32の外周面、及び前記開口部22の内周面は凹凸の無い平坦面であることから、前記舌片部32の外周面と前記開口部22の内周面とは過度に擦り合わされることが無い。従って、前記中蓋3を前記開口部22に内嵌させる際に、微細な異物は殆ど発生しない。
【0022】
前記中蓋3を前記開口部22に内嵌させると、前記フランジ部33が、前記開口部22の開口端に当接される。これによって、前記前記開口部22に対する前記中蓋3の下面34側の挿入深さ(X)、及び前記開口部22の開口端から突出する前記中蓋3の上面35側の突出高さ(T)が規定される。本実施形態において、前記フランジ部33と前記中蓋本体部31とは、前記中蓋3の上面35側において連続面を形成することから、前記挿入深さ(X)は10mmとなり、前記突出高さ(T)は前記フランジ部33の厚さと同一(3mm)となる。
【0023】
前記外蓋4は、円筒状の周壁41と、前記周壁41の一開口端を覆う円盤状の天板42とからなる。この外蓋4は、ポリプロピレン(FCFC社製、商品名:TAIRIPRO K8009)を射出成形することによって形成されたものである。
【0024】
前記周壁41の内周面には、内周面に沿って螺旋状に周回する雌ネジ43が設けられている。この雌ネジ43は、特許請求の範囲における被係合部に相当するものである。なお、前記周壁41の奥行き(H)は、25mmに設定されている。
【0025】
この外蓋4は、前記雌ネジ43を前記容器本体2の前記開口部22に設けられた前記雄ネジ23に係合(螺合)させることによって、前記開口部22に外嵌される。前記外蓋4に対する前記開口部22の挿入代(L)は、前記雌ネジ43と前記雄ネジ23との係合終了点によって規定される。本実施形態において、前記挿入代(L)は、20mmに規定されていることから、前記挿入代(L)と、前記外蓋4の周壁41の奥行き(H)と、前記開口部22の開口端から突出する前記中蓋3の上面35側の突出高さ(T)とが、H>L+Tの関係となる。これより、前記中蓋3が前記開口部22に内嵌されると共に前記外蓋4が前記開口部22に外装された際、前記外蓋4と前記中蓋3とは非接触となる。言い換えれば、前記フランジ部33と前記天板42との間には、都合2mmの空隙が形成される。従って、前記外蓋4を前記開口部22に外嵌させる際、前記外蓋4は前記フランジ部33と擦り合わされないことから、前記外蓋4と前記フランジ部33との擦り合わせに起因する微細な異物は発生しない。又、本実施形態においては、前記容器本体2の素材と前記外蓋4の素材を異ならせていることから、前記雄ネジ43と前記雌ネジ23とを螺合させる際に発生する摩擦力が小さくなり、スムーズに前記外蓋4を前記容器本体2に外嵌し得ると共に、異物の発生をより一層抑制することができる。
【0026】
この容器1内に、例えば、銀ペーストや金ペーストなどの導電性材料を収納し、航空輸送に供すると、航空機の上昇に伴って外気圧が徐々に減少し、容器1外の気圧に対して容器1内(収納部21内)の内圧が正圧となる。
【0027】
容器1外の気圧に対して容器1内の内圧が正圧となると、図3に示すように、前記容器1内の空気は膨張し、膨張した空気に押し広げられるようにして前記舌片部32が前記開口部22の内周面に密着する。これより、前記容器1内から空気や導電性材料が漏出することが防止される。又、空気が漏出しないことから、前記容器1内の内圧は、航空機の離陸時の内圧と比較して、殆ど減圧されない。
【0028】
この際、膨張した空気によって、前記中蓋3が前記外蓋4の天板42に向かって押し上げられたり、膨れ上がったりする場合もあるが、前記中蓋3の挿入深さ(X=10mm)は、前記フランジ部33と前記天板42との間に形成された空隙(=2mm)より長いため、押し上げられたり、膨れ上がったりした前記中蓋3は、前記天板42に当接した位置で支持される。これより、前記開口部22から前記中蓋3が外れることは無い。なお、前記中蓋3の挿入深さ(X)は、前記フランジ部33と前記天板42との間に形成された空隙の2倍以上の長さとすることが好ましく、更に、3倍以上の長さとすることが好ましい。
【0029】
一方、航空機の下降中は、徐々に外気圧が上昇するが、前記容器1内の内圧は、航空機が着陸するまで外気圧より正圧を維持することから、外気中に含まれる微細な異物が前記容器1内に流入することが抑制される。
【0030】
これより、本発明の容器1は、航空輸送時に生じる外気圧の変化に晒されても、収納物の漏出や収納物の汚染が生じ難いものとなり、国際航空運送協会(IATA)に定められた気密性の基準をクリアするものとなる。
【0031】
ところで、図1及び図2に示す容器1においては、前記容器本体2として有底円筒形状の中空体を用いたが、前記容器本体2の形状としては、その開口部22が円筒形状でありさえすれば、その他の部分の形状は特に限定されるものではない。容器本体2の他の例としては、図4(a)に示すような、収納部21が紡錘形状となされたものや、図4(b)に示すような、収納部21がほぼ直方体の形状をなすものなどを挙げることができる。
【0032】
又、図1及び図2に示す容器1においては、前記外蓋4として、円筒状の周壁41と、前記周壁41の一開口端を覆う円盤状の天板42とからなるものを用いたが、前記天板42としては、前記周壁41の一開口端を覆い得るものであれば、必ずしも平坦な円盤状のものを用いる必要は無い。従って、前記外蓋4としては、例えば、前記天板42が外側に向かってドーム状に湾曲するものや、前記天板42に凹凸が設けられたものや、前記天板42に取っ手などが設けられたものなどを用いても良い。
【0033】
更に、図1及び図2に示す容器1においては、前記中蓋3として、前記中蓋本体部31と前記舌片部32とを一体的に射出形成したものを用いたが、前記中蓋本体部31と前記舌片部32とは別体にて形成し、接着、溶着、嵌合などの固定手段によって前記中蓋本体部31に前記舌片部32を固定したものを用いても良い。要は、前記舌片部32が100〜500MPa(好ましくは200±50MPa)の曲げ弾性率を有する素材から形成され、且つ、その厚みが0.1〜2mm(好ましくは1±0.5mm)となされていれば良い。
【0034】
前記舌片部32の曲げ弾性率が100MPa未満となったり、厚みが0.1mm未満となされたりした場合、前記舌片部32の保形性が悪くなり、使用中にしわがよって前記容器本体2の内周面に対する密着性が悪くなることが確認されている。一方、前記舌片部32の曲げ弾性率が500MPaを超えたり、厚みが2mmを超えたりすると、柔軟性が悪くなって、容器1外の気圧に対し容器1内の内圧が正圧となされた際、前記舌片部32が速やかに前記容器本体2の内周面に密着しなくなることが確認されている。
【0035】
又、前記舌片部32の高さは、特に限定されるものではないが、通常、5〜50mmとされる。前記舌片部32の高さが5mm未満となると前記容器本体2の開口部22から前記中蓋3が外れやすくなる場合がある。前記舌片部32の高さが50mmを超えると、前記舌片部32が前記容器本体2内に収納された収納物(例えば、導電性材料)と常時接触し、毛細管現象によって漏出が生じる場合がある。
【0036】
なお、図1及び図2に示す容器1においては、前記中蓋3の素材として、低密度ポリエチレンを用いたが、前記舌片部32を形成する素材としては、100〜500MPaの曲げ弾性率を有するものであれば、特に限定されるものではない。低密度ポリエチレン以外の素材としては、例えば、シリコーンゴムやポリウレタンなどを上げることができる。
【0037】
又、図1及び図2に示す容器1においては、前記中蓋3として、円盤状の中蓋本体部31の周縁に円環状の舌片部32を直接設けたものを用いたが、前記中蓋3としては、図5(a)に示すような円盤状の中蓋本体部31の周縁に沿って上面35側から立ち上がる円筒状のリブ36が設けられてなり、前記舌片部32が、前記リブ36の基端と連続して設けられてなるものや、図5(b)に示すような、円盤状の中蓋本体部31の周縁に沿って下面34側から垂下する円筒状のリブ36が設けられてなり、前記舌片部32が、前記リブ36の先端と連続して設けられてなるものを用いることが好ましい。前記中蓋3として、円盤状の中蓋本体部31の周縁に沿って円筒状のリブ36が立設されたものを用いれば、前記中蓋3の保形性が向上し、容器1の気密性がより一層向上する。
【0038】
ここで、図5(a)及び(b)に示す前記中蓋3は、いずれも前記フランジ部33が前記中蓋3の上面35と連続面を構成するように設けられていることから、前記容器本体2に内嵌された際、前記開口部22の開口端から突出する前記中蓋3の上面35側の突出高さ(T)は、前記フランジ部33の厚さと同一となる。一方、図5(c)に示す中蓋3のように、フランジ部33が前記中蓋3の上面35から一定の代幅をあけて設けられている場合、前記開口部22の開口端から突出する前記中蓋3の上面35側の突出高さ(T)は、前記フランジ部33の厚みに前記代幅を加えたものとなる。
【0039】
[実施形態2]
図6の分解斜視図、及び図7の断面図に示すように、本実施形態に係る容器1は、容器本体2と、中蓋3と、外蓋4とからなる。
【0040】
前記容器本体2は、有底円筒形状の中空体(内容量約5リットル)であり、収納部21の一端に円筒形状の開口部22が設けられている。この容器本体2は、前記実施形態1と同様、高密度ポリエチレン(FCFC社製、商品名:TAISOX 8050)を射出成形することによって形成されたものである。
【0041】
図8に拡大して示すように、前記容器本体2における開口部22の内周面は、開口端に向かって内径を拡径するテーパ面24となされている。
【0042】
又、前記容器本体2の外周面には、外周面を周回する円環状リブ25が開口端から一定の代幅をあけて設けられている。この円環状リブ25が設けられることによって、前記開口部22の保形性が向上し、もって容器1の気密性が向上する。又、前記容器本体2の開口端と前記円環状リブ25との間の所定位置には、複数の凸条26が、それぞれ60度の位相差、且つ、開口端と平行関係をもって設けられている。
【0043】
この凸条26は、直方体に類似する形状を有する。又、この凸条26における下面(前記円環状リブ25に面する側の面)には、その一端(図中右側の端部)側において、一端に向かって先細るテーパ部261が設けられており、その他端(図中左側の端部)側において、段落ち部262が設けられている。なお、この凸条26は、特許請求の範囲における係合部に相当するものである。
【0044】
前記中蓋3は、円盤状の中蓋本体部(厚さ3mm)31の周縁にリブ36(高さ9mm、厚さ3mm)が設けられてなり、このリブ36の基端に連続して、円環状の舌片部(高さ10mm、厚さ1mm)32が設けられている。前記舌片部32の外周面と前記リブ36の外周面とがなす連続面37は、前記舌片部32の先端に向かって前記舌片部32の外径を縮径するテーパ面となされている。この連続面37のテーパ率は、前記容器本体2の開口部22の内周面に設けたテーパ面24のテーパ率と同一となされている。この中蓋3は、前記実施形態1と同様、低密度ポリエチレン(商品名:住友化学社製、商品名スミカセンGA701、曲げ弾性率195MPa)を射出成形することによって形成されたものである。
【0045】
前記リブ36の先端には、前記リブ36の外周面側に向かって張り出すフランジ部(厚さ3mm)33が設けられている。又、前記リブ36の先端には、前記中蓋本体部31の中心に向かって延設された指掛け部38が設けられている。この指掛け部38は、前記容器本体2の開口部22に内嵌された前記中蓋3を前記開口部22から取り外す際に、作業者の指が引っ掛けられるものである。即ち、この指掛け部38は、前記中蓋3を前記開口部22から容易に引き出すことができるように設けられたものである。
【0046】
前記指掛け部38は、前記リブ36の周縁に沿って三つのパートに分かれており、各パート間のつなぎ目には、それぞれ通気用凹溝39が前記リブ36の先端において、前記リブ36の厚み方向に沿って設けられている。又、前記リブ36の内周面には、前記通気用溝39と連続して、通水用凹溝390が前記リブ36の高さ方向に沿って設けられている。前記通水用凹溝390は、前記中蓋を水洗した際、前記指掛け部38内に滞留した水を排出するために設けられたものである。前記通気用溝39の役割については後述する。
【0047】
この中蓋3は、下面34側(前記舌片部32の先端側)が前記容器本体2内に臨む状態、且つ、前記舌片部32の外周面と前記リブ36の外周面とがなす連続面37が前記開口部22の内周面に設けられたテーパ面24に当接された状態にて前記開口部22に内嵌される。この際、前記連続面37、及び前記テーパ面24は凹凸の無い平坦面であることから、前記連続面37と前記テーパ面24とは過度に擦り合わされることが無い。又、前記連続面37は、前記舌片部32の先端に向かって、前記舌片部32の外径を縮径するテーパ面となされていることから、非常にスムーズに前記開口部22に内嵌される。従って、前記中蓋3を前記開口部22に内嵌させる際に、微細な異物は殆ど発生しない。
【0048】
なお、前記中蓋3を前記開口部22に内嵌させるにあたっては、前記フランジ部33が、前記開口部22の開口端に当接される。これによって、前記前記開口部22に対する前記中蓋3の下面34側の挿入深さ(X)、及び前記開口部22の開口端から突出する前記中蓋3の上面35側の突出高さ(T)が規定される。本実施形態において、前記突出高さ(T)は、前記フランジ部33の厚さと同一となる。
【0049】
前記外蓋4は、円筒状の第一周壁411上に、前記第一周壁411より小径の第二周壁412が連設された周壁41と、前記第二周壁412の上端開口を覆う天板42とからなる。前記天板42は、上面に向かって突出する凸台421が、前記天板42の中心を挟む位置に二箇所設けられており、更に、各凸台421を架橋する形で、取手部422が設けられている。なお、前記凸台421は中空であり、且つ、前記外蓋4の下面側に向かって開口している。又、前記第一周壁411と前記第二周壁412とからなる前記周壁41の奥行き(H)は、25mmに設定されている。この外蓋4は、前記実施形態1と同様、ポリプロピレン(FCFC社製、商品名:TAIRIPRO K8009)を射出成形することによって形成されたものである。
【0050】
図9に拡大して示すように、前記第一周壁411の内周面には、複数の係止片44が、内周面に沿って、それぞれ60度の位相差をもって設けられている。この係止片44は、前記第一周壁411の端縁に沿って配された第一凸条441と、前記第一凸条441の一端から前記第一周壁411の内周面と前記第二周壁412の端縁とがなす角部に向かって延設された第二凸条442とからなるL字状の形状を有する。従って、この係止片44と前記第二周壁412の端縁とに囲まれた部分には、前記係止片44の他端側に向かって開口する溝部45が形成される。なお、この溝部45は、特許請求の範囲における被係合部に相当するものである。
【0051】
前記第一凸条441の他端には、前記溝部45の開口に向かって溝幅を拡張する傾斜片443が設けられており、前記溝部45における前記傾斜辺443と対向する位置には、第一係止突起444が設けられている。前記傾斜片443と前記第一凸条441との接点には、前記溝部45内に向かって僅かに膨出する膨出部446が設けられている。
【0052】
又、前記溝部45の第二凸条442側には、前記第一周壁411の内周面と前記第二周壁412の端縁とがなす角部において第二係止突起445が設けられている。
【0053】
更に、前記第一周壁411の内周面における前記係止片44が設けられていない部分には、前記第一周壁411の内周面と前記第二周壁412の端縁とがなす角部において、複数の案内片46が一定の間隔をあけて設けられている。
【0054】
この外蓋4を前記容器本体2の開口部22に外嵌するにあたっては、まず、前記外蓋4に設けられた係止片44が前記開口部22に設けられた凸条26と接触しないように位置決めした上で、前記外蓋4にて前記開口部22を覆う。この際、前記凸条26の上面は、前記案内片46と接触する。
【0055】
この状態で、前記外蓋4を時計回りに回せば、図10に示すように、前記凸条26は、その一端側に設けられたテーパ部261が、前記溝部45に設けられた傾斜片443に案内されて前記溝部45内に挿入される。前記溝部45内に挿入された凸条26は、その一端側が、前記第一凸条441と前記第二係止突起445によって挟持されると共に、他端側が、前記第一凸条441と前記第一係止突起444によって挟持される。この際、前記凸条26の他端に設けた段落ち部262が前記膨出部446に係止されることによって、前記外蓋4が前記容器本体2の開口部22に固定される。
【0056】
即ち、本実施形態において、前記容器本体2の開口部22に対して前記外蓋4を外嵌する作業は、前記開口部22を前記外蓋4にて覆った後、前記外蓋4を時計回りに僅かに回転させて、前記凸条26を前記溝部45に挿入することによって行うことができる。従って、前記外蓋4を数回回転させて前記開口部22に外嵌するネジの螺合を利用した係合手段と比較して、前記容器本体2の開口部22と前記外蓋4とが擦り合わされる接触機会が格段に少なくなる。これにより、擦り合わせに起因して発生する異物の発生量を少なくすることができる。
【0057】
図7に示すように、前記外蓋4に対する前記開口部22の挿入代(L)は、前記凸条26と前記溝部45との係合位置によって規定される。本実施形態において、前記挿入代(L)は、20mmに設定されていることから、前記挿入代(L)と、前記外蓋4の周壁41奥行き(H)と、前記開口部22の開口端から突出する前記中蓋3の上面35側の突出高さ(T)とが、H>L+Tの関係となり、もって、前記中蓋3が前記開口部22に内嵌されると共に前記外蓋4が前記開口部22に外装された際、前記外蓋4と前記中蓋3とは非接触となる。従って、前記外蓋4を前記開口部22に外嵌させる際、前記外蓋4は前記フランジ部33と擦り合わされないことから、前記外蓋4と前記フランジ部33との擦り合わせに起因する微細な異物は発生しない。
【0058】
この容器1内に、例えば、銀ペーストや金ペーストなどの導電性材料を収納し、航空輸送に供すると、航空機の上昇に伴って外気圧が徐々に減少し、容器1外の気圧に対して容器1内(収納部21内)が正圧となる。
【0059】
容器1外の気圧に対して容器1内が正圧となると、前記容器1内の空気は膨張し、図11に示すように、膨張した空気に押し広げられるようにして前記舌片部32が前記開口部22の内周面に密着する。これより、前記容器1内から空気や導電性材料が漏出することが防止される。又、空気が漏出しないことから、前記容器1内の内圧は、航空機の離陸時の内圧と比較して、殆ど減圧されない。
【0060】
この際、前記外蓋4と前記中蓋3とによって囲まれた空間に存する空気は、前記中蓋3に設けられた通気用凹溝39を介して、容器1外に速やかに排出される。即ち、前記外蓋4と前記中蓋3によって囲まれた空間内の内圧は速やかに容器1外の気圧と等しくなる。従って、収納部21内の内圧と前記外蓋4と前記中蓋3とによって囲まれた空間内の内圧との間に速やかに気圧差が生じるため、前記舌片部32は速やかに前記開口部22の内周面に密着する。
【0061】
収納部21内の内圧と前記外蓋4と前記中蓋3とによって囲まれた空間内の内圧との間に気圧差が生じると、前記中蓋3は前記外蓋4の天板42に向かって押し上げられたり、膨れ上がったりする場合もあるが、前記舌片部32の高さ(X)は、前記フランジ部33と前記天板42との間に形成された空隙より長いため、押し上げられた前記中蓋3は、前記天板42に当接した位置で支持される。これより、前記開口部22から前記中蓋3が外れることは無い。
【0062】
一方、航空機の下降中は、徐々に外気圧が上昇し、前記中蓋3に設けた通気用凹溝39を介して、前記中蓋3と前記外蓋4とによって囲まれた空間内に空気が流入する。即ち、外気は、前記通気用凹溝39を介して、優先的に前記中蓋3と前記外蓋4とによって囲まれた空間内に導かれることから、収納部21内には全くと言っていいほど外気が流入しない。前記中蓋3と前記外蓋4とによって囲まれた空間内に空気が流入すると、前記中蓋3は、前記容器本体2内に向かって徐々に押し下げられる。
【0063】
従って、航空機が着陸するまで、前記容器1内の内圧は、外気圧より正圧を維持し、外気中に含まれる微細な異物が前記容器1内に進入することが抑制される。
【0064】
これより、本発明の容器1は、航空輸送時に生じる外気圧の変化に晒されても、収納物の漏出や収納物の汚染が生じ難いものとなる。
【0065】
その余は、前記実施形態1と同様であることから繰り返しを避けるためここでは説明を省略する。
【0066】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、航空輸送に適した容器として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 容器
2 容器本体
21 収納部
22 開口部
23 雄ネジ
24 テーパ面
25 円環状リブ
26 凸条
261 テーパ部
262 段落ち部
3 中蓋
31 中蓋本体部
32 舌片部
33 フランジ部
34 下面
35 上面
36 リブ
37 連続面
38 指掛け部
39 通気用凹溝
390 通水用凹溝
4 外蓋
41 周壁
411 第一周壁
412 第二周壁
42 天板
421 凸台
422 取手部
43 雌ネジ
44 係止片
441 第一凸条
442 第二凸条
443 傾斜片
444 第一係止突起
445 第二係止突起
446 膨出部
45 溝部
46 案内片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の開口部を有する容器本体と、
前記開口部に内嵌されて、前記開口部を閉塞する中蓋と、
前記開口部に外嵌されて、前記中蓋の上面を覆う外蓋と、
を具備してなる容器であって、
前記中蓋には、前記中蓋の下面側から垂下する舌片部が、前記中蓋の周縁に沿って円環状に設けられてなり、
前記舌片部が、100〜500MPaの曲げ弾性率を有する樹脂を素材として形成され、且つ前記舌片部の厚みが0.1〜2mmとなされることによって、
容器外の気圧に対して容器内が正圧となされた際に、前記舌片部の外周面が前記開口部の内周面に密着されることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器において、
前記中蓋には、前記中蓋が前記開口部に内嵌される際に、前記開口部の開口端に当接されるフランジ部が設けられてなり、
前記フランジ部によって、前記前記開口部に対する前記中蓋の下面側の挿入深さ、及び前記開口部の開口端から突出する前記中蓋の上面側の突出高さが規定される容器。
【請求項3】
請求項2に記載の容器において、
前記開口部には、その外周面に係合部が設けられてなり、
前記外蓋には、その周壁の内周面に被係合部が設けられてなり、
前記外蓋が前記開口部に外嵌される際に、前記係合部と前記被係合部とが係合されることによって、前記外蓋に対する前記開口部の挿入代が規定されるものであり、
前記挿入代(L)と、前記外蓋の周壁の奥行き(H)と、前記開口部の開口端から突出する前記中蓋の上面側の突出高さ(T)とが、H>L+Tの関係となされることによって、
前記中蓋が前記開口部に内嵌されると共に前記外蓋が前記開口部に外装された際、前記外蓋と前記中蓋とが非接触となる容器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器において、
前記舌片部の外周面が、前記舌片部の先端に向かって外径を縮径するテーパ面となされ、
前記開口部の内周面における前記舌片部が密着される部分が、前記舌片部の外周面のテーパ率と同一のテーパ率にて、開口端に向かって内径を拡径するテーパ面となされた容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器において、
前記中蓋には、その周縁に沿って上面側から立ち上がる円筒状のリブが設けられなり、
前記舌片部が、前記リブの基端と連続して設けられてなる容器。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器において、
前記中蓋には、その周縁に沿って下面側から垂下する円筒状のリブが設けられてなり、
前記舌片部が、前記リブの先端と連続して設けられてなる容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−23221(P2013−23221A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156082(P2011−156082)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591270419)ゴールド工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】