説明

密封キャップ体

【課題】本体側のポート部にそのまま適用可能であり、密封特性の向上を図る。
【解決手段】筒状ポート部120の先端開口縁122が突き当たる蓋体部2の内面2Aに筒状ポート部120の外周部123を挟み込む内周係合部134と外周係合部135と頂点部が先端開口縁122と線接触状態で突き当たる突当て凸部7を一体に形成し、筒状ポート部120が嵌合する嵌合孔4を有する外周筒部3の開口部3Aの内面に筒状ポート部120側の抜止め凸部124と相対係合する係止凸部12及び開口部3Aに拡径特性と弾性力蓄勢特性を付与するスリット13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体側の筒状ポート部に着脱され、ポート部を被冠した装着状態において筒状ポート部を密封する合成樹脂製の密封キャップ体に関し、特に透析治療用のダイアライザーの透析液ポートや血液ポートに着脱されて透析容器を保護するキャップ体として好適に用いられる密封キャップ体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
透析治療は、患者の動脈から取り出した血液から透析装置により老廃物や過剰水分を除去して静脈を経由して再び体内へと戻す治療法である。透析装置100は、図7に示すように患者の体内から動脈血を取り出す血液ポンプ101と、半透膜を介して血液中の老廃物等を透析液中に透析するダイアライザー(透析容器)102と、ダイアライザー102に透析液を供給するとともに透析液中から不純物等を除去して循環させる不純物回収除去装置103等から構成される。
ダイアライザー102としては、一般に容器本体の内部に多数本の中空糸を束ねて収納した中空糸(ホローファイバー)型ダイアライザーが用いられている。ダイアライザー102は、容器本体の内部に透析液を流すとともに容器本体の内部に収納したセルロース系や高分子合成樹脂系の素材により中空体として形成した中空糸内に血液を流す。ダイアライザー102は、中空糸が血液成分を透過させない半透膜機能を奏し、血液中から不純物を透析液中に取り出すようにする。
ダイアライザー102は、図8に示すようにガラスや合成樹脂材により両端部を開口して内部に上述した中空糸104を収納した円筒形状の容器本体105と、この容器本体105の一端側の開口部を密封するとともに血液を流入させる血液流入ポート部107が形成された第1開口キャップ体106と、容器本体105の他端側の開口部を密封するとともに血液を流出させる血液流出ポート部109が形成された第2開口キャップ体108とを有する。容器本体105には、一端側の近傍に位置して透析液を流入させる透析液流入ポート部110が一体に形成されるとともに、他端側の近傍に位置して透析液を流出させる透析液流出ポート部111が一体に形成される。
ダイアライザー102には、容器本体105内への異物等の侵入防止或いは各ポート部の破損防止や清浄状態の保持等を目的として、第1ポートキャップ体112乃至第4ポートキャップ体115が装着される。第1ポートキャップ体112乃至第4ポートキャップ体115は、例えば合成樹脂材により形成され、透析治療を行う際に各ポート部から取り外される。第1ポートキャップ体112乃至第4ポートキャップ体115は、透析治療の終了後に容器本体105内の洗浄等を行う際には再び各ポート部に装着される。第1ポートキャップ体112乃至第4ポートキャップ体115は、相対する各ポート部の形状にそれぞれ適合して形成されるが、基本的な構成を同様とするものとして以下図9を参照して説明する。
【0003】
ポート部120は、各部毎に詳細形状をやや異にするが、基端側を容器本体105や第1開口キャップ体106或いは第2開口キャップ体108と一体化されて突出され、長さ方向に貫通して血液や透析液が流れる流路121を有する筒状部位からなる。ポート部120には、先端開口縁122から所定位置の外周部123に所定の突出量を有する抜止め凸部124が一体に形成されている。ポート部120は、先端開口縁122側からポートキャップ体130を装着することにより流路121が閉塞されて清浄状態を保持されるとともに、全体が機械的外因から保護される。
ポートキャップ体130は、合成樹脂材を素材とし、円板状の蓋体部131と、この蓋体部131の外周縁に沿って一体に形成された外周筒部132とにより、内部に蓋体部131によって一端側が閉塞された有底の嵌合孔133を構成した円筒形の部材からなる。ポートキャップ体130は、嵌合孔133がポート部120の外径とほぼ等しい内径を有しており、ポート部120に対してその先端開口縁122側から装着される。ポートキャップ体130は、ポート部120に装着した状態において、図9に示すように蓋体部131の内面131Aに先端開口縁122が突き当てられて流路121を閉塞する。
ポートキャップ体130には、蓋体部131と外周筒部132に、ポート部120に対して簡易な操作により着脱が行われるとともに装着した状態が保持されるようにする保持構造が一体に形成される。保持構造は、蓋体部131の内面131Aに形成した内周係合部134及び外周係合部135と、外周筒部132の開口縁の内面に形成した抜止め部136とから構成される。保持構造は、内周係合部134と外周係合部135が、蓋体部131の中心から内径を異にする同心円上に位置して一体に形成される。
【0004】
内周係合部134は、蓋体部131の内面131Aに、ポート部120の流路121とほぼ同径の円周上に位置して一体に形成された複数個の立壁片部からなる。内周係合部134は、ポート部120に対してポートキャップ体130を装着した状態において、各立壁片部が流路121内にやや収斂した圧入状態で係合する。内周係合部134は、各立壁片部がポート部120の外周部123に対して内側から弾性力を作用させる。
外周係合部135は、蓋体部131の内面131Aに、ポート部120の先端開口縁122の外径とほぼ同径の円周上に位置して一体に形成された複数個の立壁片部からなる。外周係合部135は、ポート部120に対してポートキャップ体130を装着した状態において、各立壁片部が外周部123の先端開口縁122に圧入状態で係合する。外周係合部135は、各立壁片部が内周係合部134からの弾性力を作用されたポート部120の外周部123を内周係合部134との間で挟み込むことにより、ポート部120に対するポートキャップ体130の装着状態が保持されるようにする。
抜止め部136は、外周筒部132の開口縁部位を大径として内面側に全周に亘って係合凹部136Aを形成するとともに、この係合凹部136Aの一部に複数個の係合凸部136Bを一体に形成してなる。抜止め部136は、ポート部120に対してポートキャップ体130を装着した状態において、ポート部120側の抜止め凸部124と相対して外周筒部132に形成される。抜止め部136は、係合凹部136Aが抜止め凸部124の突出量とほぼ同等の深さを以って形成される。
【0005】
ポートキャップ体130は、ポート部120に対して、その先端開口縁122側から外周部123を嵌合孔133内に嵌合させることにより装着される。ポートキャップ体130は、ポート部120に対して押込み操作することにより内周係合部134の各立壁片部が流路121内にやや収斂した圧入状態で係合し、さらにさらに押込み操作することにより外周係合部135の各立壁片部が外周部123の先端開口縁122に圧入状態で係合する。
ポートキャップ体130は、ポート部120に対して、その先端開口縁122が蓋体部131の内面131Aに突き当たった状態で、抜止め部136がポート部120側の抜止め凸部124と相対係合する。ポートキャップ体130は、ポート部120に対して、抜止め部136の係合凹部136Aに抜止め凸部124を相対係合させて押し込むとともに、その状態で全体を回動操作することによって係止凸部136Bが抜止め凸部124の底面側に回り込むことにより先端開口縁122を係止する。ポートキャップ体130は、これによりポート部120に装着するとともにこの装着した状態が保持され、上述したポート部120に対する保護作用等が確実に奏されるようにする。
ポートキャップ体130は、上述した透析装置100のダイアライザー102に用いられ、このダイアライザー102を所定位置にセットした状態で各ポート部からの取外し操作が行われる。ポートキャップ体130は、ポート部120に対して、全体を回動操作して強く引抜き操作することにより、取り外しが行われる。
なお、中空糸型ダイアライザーを用いる透析装置については、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。また、中空糸型ダイアライザーについては、例えば特許文献3や特許文献4に記載されている。さらに、ポート部に着脱するポートキャップ体については、特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−329205号公報
【特許文献2】特許第3931315号公報
【特許文献3】特公平4−47582号公報
【特許文献4】特開平9−215748号公報
【特許文献5】実公平6−7719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のポートキャップ体130においては、ポート部120に対する高密封性を作用させるために、蓋体部131の内面131Aに対して先端開口縁122が全周に亘って均一な状態で突き当てられるようにして装着される必要がある。ポートキャップ体130は、このために精密な成形金型によってポート部120側の相対して係合する部位を高寸法精度を以って形成されるために、高コストとなるといった問題があった。ポートキャップ体130は、ポート部120側との寸法のバラツキや組合せ精度のバラツキ等により、蓋体部131の内面131Aとポート部120の先端開口縁122との間に微小な隙間が生じて密封性が低下するといった問題があった。
本発明は、例えば透析治療用のダイアライザーの透析液ポートや血液ポートに装着されて透析容器を保護するキャップ体として好適に用いられる密封キャップ体であり、基本的な構成を従来品と同等として本体側のポート部にそのまま適用可能であり、密封特性の向上を図る密封キャップ体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成する本発明に係る密封キャップ体は、内部を貫通する嵌合孔を形成した外周筒部と、この外周筒部の一方側に嵌合孔を閉塞して一体に形成した蓋体部とからなり、本体側に設けた筒状ポート部、例えば透析治療用のダイアライザー等に設けた透析液ポートや血液ポートに嵌合して装着することにより密封する。密封キャップ体は、蓋体部に、外周筒部の嵌合孔内に嵌合された筒状ポート部の先端開口縁が突き当たる内面に、筒状ポート部の流路内に嵌合する内周係合部と、この内周係合部を取り囲んで同心円をなして形成され筒状ポート部の外周部に係合する外周係合部と、内周係合部と外周係合部との間の環状領域に位置して突出形成されたリング状の凸部からなり頂点部が筒状ポート部の先端開口縁に全周に亘って突き当たる突当て凸部が形成される。密封キャップ体は、外周筒部に、開口縁の内面に筒状ポート部の外周部に形成した抜止め凸部と相対係合する係止凸部を有する抜止め部と、係止凸部と開口縁部位に拡径特性と弾性力の蓄勢特性を付与する開口縁に開放された軸方向の複数のスリットが形成される。
密封キャップ体は、筒状ポート部に対してその先端側に嵌合孔の開口を嵌合して押込み操作が行われる。密封キャップ体は、筒状ポート部に対して押込み操作を行うにしたがって、内周係合部が筒状ポート部の流路の開口に相対して流路内を次第にその奥に向かって進入する。密封キャップ体は、筒状ポート部に対して押込み操作を行うにしたがって、外周係合部が筒状ポート部の外周部の先端に相対して外周部に沿って進入する。密封キャップ体は、筒状ポート部に対して外周部の先端開口縁が蓋体部の内面に突き当たるまで押込み操作されると、蓋体部の内面に形成した突当て凸部が先端開口縁と突き当たる。密封キャップ体は、内周係合部と外周係合部により筒状ポート部の外周部を厚み方向に挟み込むとともに、突当て凸部の頂点部が筒状ポート部の先端開口縁と突き当たった状態で、筒状ポート部に装着される。
【0009】
密封キャップ体は、筒状ポート部に対してその先端開口縁が蓋体部の内面に突き当たるまで押込み操作される際に、外周筒部の開口縁の内面に形成した抜止め部の係止凸部が筒状ポート部の外周部に形成した抜止め凸部間を通過する。密封キャップ体は、筒状ポート部に対して外周部の先端開口縁が蓋体部の内面に突き当たるまで押込み操作されると、所定角度の回動操作が行われる。密封キャップ体は、これにより係止凸部が抜止め凸部の底面側に回り込んで抜け方向に対して係止される。密封キャップ体は、係止凸部を大きな突出量を以って形成することにより抜止め凸部と大きな重ね合わせ代を確保して筒状ポート部に対する装着状態が確実に保持する。密封キャップ体は、大きな突出量の係止凸部を形成することにより嵌合孔が小径となる開口縁部位が、スリットを形成したことにより弾性変形して拡径することが可能である。
密封キャップ体は、蓋体部の内面に形成した突当て凸部が、筒状ポート部の先端開口縁に対して全周に亘って頂点部で突き当たるいわゆる線接触の状態で筒状ポート部に装着される。密封キャップ体は、外周筒部の開口縁部位に蓄勢された弾性力が係止凸部を介して筒状ポート部に対してその先端開口縁を蓋体部の内面側に押し付ける軸方向の力として作用する。密封キャップ体は、突当て凸部と先端開口縁が、線接触状態の突き当てと弾性力の作用により確実に保持されて筒状ポート部を密封する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成された本発明に係る密封キャップ体は、筒状ポート部の先端開口縁が突き当たる蓋体部の内面に筒状ポート部の外周部を挟み込む内周係合部及び外周係合部を形成するとともに内周係合部と外周係合部との間に頂点部が先端開口縁と線接触状態で突き当たる突当て凸部を一体に形成し、筒状ポート部が嵌合する嵌合孔を有する外周筒部の開口部の内面に筒状ポート部側の抜止め凸部と相対係合する係止凸部に拡径特性と弾性力の蓄勢特性を付与するスリットを形成してなる。密封キャップ体は、蓋体部と外周筒部に形成した上述した保持構造により、筒状ポート部の構造を変えることなくこの筒状ポート部に対して簡易な操作により組み付けられるとともに、筒状ポート部を被冠した状態が確実に保持することが可能である。密封キャップ体は、突当て凸部が筒状ポート部の先端開口縁に対して頂点部が線接触状態で突き当たることにより、筒状ポート部の密封状態をより確実に保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る密封キャップ体の実施の形態として示すポートキャップ体の正面図である。
【図2】同ポートキャップ体の断面図である。
【図3】同ポートキャップ体の蓋体部の構成を示す要部断面図である。
【図4】同ポートキャップ体の外周筒部の構成を示す要部断面図である。
【図5】同外周筒部の開口縁の構成を示す要部底面図である。
【図6】同ポートキャップ体をポート部に被冠した状態の断面図である。
【図7】透析装置の回路図である。
【図8】透析装置に用いられるダイアライザーの一部切り欠き側面図である。
【図9】ポートキャップ体をポート部に被冠した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態として図面に示したポートキャップ体1について詳細に説明する。ポートキャップ体1も、上述したポートキャップ体130と同様に、透析治療に用いるダイアライザー102に設けたポート部120、すなわち容器本体105に一体に形成した血液流入ポート部107や血液流出ポート部109或いは第1開口キャップ体106や第2開口キャップ体108に形成した透析液流入ポート部110や透析液流出ポート部111に被冠してこれを密封する。なお、ポートキャップ体1は、かかる用途に限定されず、各種の筒状部材の開口部を被冠してこれを密封する各種の密封キャップ体にも適用されることが可能である。
ポートキャップ体1は、従来のポートキャップ体130が被冠される上述したポート部120に対して、その構造を変えることなく従来のポートキャップ体130に代えて用いられ、その開口側に被冠されることにより内部の流路121を密封して清浄状態に保持するとともに機械的外因から保護する。ポートキャップ体1は、透析治療に際してダイアライザー102を所定位置にセットした状態で、各ポート部からの取外し操作が行われる。ポートキャップ体1は、透析治療を終えて透析回路を取り外した容器本体105のポート部120に再装着される。ポートキャップ体1は、後述する構造により再装着した状態でもポート部120の密封特性が保持される。
【0013】
ポート部120は、図6に示すように内部を貫通する流路121を有する筒状部位からなり、ポートキャップ体1が被冠されることにより流路121を密封される。ポート部120は、後述するように被冠されるポートキャップ体1の蓋体部2の内面2Aに、先端開口縁122が突き当てられることにより流路121が密封される。ポート部120には、先端開口縁122から所定位置の外周部123に一対の抜止め凸部124が一体に形成されている。抜止め凸部124は、中心対称の位置に、円周方向に所定の長さを有する円弧状の凸部として外周部123に一体に形成される。
ポート部120には、図6に示すように先端部位125がやや薄肉に形成されるとともにその内面に周回りの係合段部125Aが形成される。ポート部120には、外周部123に1個又は数個の周回りの接続用係合凹部126が形成されている。ポート部120は、透析治療に際してポートキャップ体1が取り外されて透析回路が接続されるが、上述した各部が透析回路の接続部位として作用する。
【0014】
ポートキャップ体1は、例えばスチレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系等のエラストマー合成樹脂や合成ゴム等を素材として形成される。ポートキャップ体1も、図1及び図2に示すように、円板状の蓋体部2と、この蓋体部2の外周縁に沿って一体に形成された外周筒部3とからなり、外周筒部3の内部に蓋体部2によって一端側が閉塞された有底の嵌合孔4を構成した円筒形の部材からなる。ポートキャップ体1は、ポート部120よりもやや長軸体であり、嵌合孔4がポート部120の外径とほぼ等しい内径を有している。
ポートキャップ体1は、図6を参照して詳細を後述するがポート部120に対して、嵌合孔4内に外周部123をその先端側から嵌合して先端開口縁122が蓋体部2の内面2Aに突き当たるまで押し込んで組み付けることによりポート部120を被冠して流路121を閉塞する。ポートキャップ体1にも、ポート部120に対して簡易な操作により着脱が行われるとともに、ポート部120を被冠した状態においてこのポート部120の所定部位と共同して被冠状態が確実に保持されるようにする保持構造が一体に形成される。
ポートキャップ体1は、図2に示すように、保持構造が蓋体部2の内面2Aに形成した第1の保持構造(蓋体部保持構造)5と、外周筒部3の開口部3Aの内面に形成した第2の保持構造(外周筒部保持構造)6とから構成される。また、ポートキャップ体1は、蓋体部2の内面2Aに詳細を後述する突当て凸部7を一体に形成し、この突当て凸部7によりポート部120を被冠した状態において密封特性の向上が図られるようにする。
ポートキャップ体1は、第1の保持構造5によりポート部120の外周部123の先端部位を保持し、第2の保持構造6がポート部120の外周部123に形成した抜止め凸部124と相対係合してポート部120からの脱落が防止されるように作用する。第1の保持構造5は、蓋体部2の内面2Aに、蓋体部2の中心から内径を異にする同心円上に位置して一体に形成された内周係合部8及び外周係合部9とから構成される。
【0015】
内周係合部8は、蓋体部2の内面2Aに、ポート部120の流路121とほぼ同径の円周上に位置して一体に立設した複数個の立壁片部からなる。内周係合部8は、図2及び図3に示すようにやや大きな厚みを有する基部8Aと、この基部8Aの所定高さ位置において外周部が流路121の内径よりもやや大径となるように次第に厚みを大きくして形成された部位からなる係合部8Bと、この係合部8Bから外周部が流路121の内径よりもやや大径であるが次第に厚みを小さくして形成された部位からなる弾性変位部8Cとから構成される。
内周係合部8は、ポートキャップ体1をポート部120に対して、外周部123の先端から嵌合孔4に嵌合して押込み操作を行うことにより、弾性変位部8Cをガイドとして流路121内へと進入する。内周係合部8は、流路121内に進入するにしたがって弾性変位部8Cが次第に収斂することにより圧入状態で係合する。内周係合部8は、ポート部120の先端開口縁122が蓋体部2の内面2Aに突き当たった状態において、係合部8Bがポート部120の係合段部125Aと相対係合する。内周係合部8は、図6矢印aで示すように係合部8Bと係合段部125Aの係合状態が弾性変位部8Cに蓄勢された弾性力により保持されるとともに、ポート部120の先端部位125に対して内側から弾性力を作用させる。
【0016】
外周係合部9は、図2及び図3に示すように蓋体部2の内面2Aに、ポート部120の先端開口縁122の外径とほぼ同径の環状立壁部からなる。外周係合部9は、内周係合部8の基部8Aとほぼ同等の高さを有するとともに、やや大きな厚みを有して形成される。外周係合部9は、ポートキャップ体1をポート部120に対して、外周部123の先端から嵌合孔4に嵌合して押込み操作を行うことにより、ポート部120の先端部位125の外周に嵌合する。外周係合部9は、上述した弾性変位部8Cを介して内側から弾性力を作用されるポート部120の先端部位125を内周係合部8との間で挟み込んでポート部120に対するポートキャップ体1の装着状態が保持されるようにする。
突当て凸部7は、図2及び図3に示すように蓋体部2の内面2Aに、内周係合部8と外周係合部9との間の構成される環状領域10に位置して一体に突出形成される。突当て凸部7は、小さな厚みと突出量を以って形成されたリブ状の凸部であり、頂点部が円弧状に形成される。突当て凸部7は、ポートキャップ体1をポート部120に装着した状態において、ポート部120の先端開口縁122に全周に亘って突き当たる。
突当て凸部7は、円弧状の頂点部の構成により、ポート部120の先端開口縁122に対していわゆる線接触の状態で全周に亘って突き当たる。突当て凸部7は、小さなリブ状凸部の構成により、ポート部120の先端開口縁122に対して頂点部が部分的にやや押し潰された状態で突き当たることも可能である。突当て凸部7は、上述した保持構造とともに後述する開口部3A側に形成した係止凸部12を介して作用される軸方向の弾性力により、ポート部120の先端開口縁122との突当て状態が確実に保持される。突当て凸部7は、ポート部120の先端開口縁122に対して線接触状態の突当て構造とすることにより、従来の面接触状態の突当て構造と比較して隙間等の発生を低減し、ポートキャップ体1の各部の寸法精度を緩和する。
【0017】
ポートキャップ体1は、第2の保持構造6により、ポート部120の外周部123の基端側部位を保持して脱落の防止が図られるとともに上述した第1の保持構造5側に弾性力を作用させる。第2の保持構造6は、外周筒部3の開口部3Aに対応する部位を肉厚部3Bとし、この肉厚部3Bの内面に形成した係合凹部11と係止凸部12からなる抜止め部により構成する。また、第2の保持構造6は、肉厚部3Bに拡径特性と弾性力の蓄勢特性を付与する、開口縁に開放されて形成した軸方向の複数のスリット13により構成する。
第2の保持構造6は、肉厚部3Bが外周筒部3の開口部3Aに対向して外方に突出する環状凸部からなり、蓋体部2に対して、ポート部120の先端開口縁122から抜止め凸部124の間隔とほぼ等しい高さ位置において形成する。肉厚部3Bには、図4及び図5に示すように、内周面を全周に亘って小さな厚みとなるように係合凹部11が形成されるとともに、開口縁から円周方向に適宜の間隔を以って係合凹部11内に突出するようにして複数の係止凸部12が形成されている。肉厚部3Bには、開口縁に開放された複数のスリット13が円周方向に適宜の間隔を以って形成される。
第2の保持構造6は、肉厚部3Bの内面に係合凹部11を、外周筒部3の開口部3Aがポート部120に形成した抜止め凸部124により構成される外径とほぼ同径となる開口径とする深さを以って形成する。係合凹部11は、開口部3Aから、後述する係止凸部12の厚みとポート部120の抜止め凸部124の厚みよりもやや大きな深さ(高さ)を以って肉厚部3Bの内面に形成される。係合凹部11は、ポートキャップ体1をポート部120に装着する際に、抜止め凸部124が開口部3Aで係止されることなく嵌合孔4内へと嵌合されるようにする。
第2の保持構造6は、係止凸部12が、係合凹部11の天井面(開口部3Aと対向する面)に対してポート部120の抜止め凸部124の厚みとほぼ等しい対向間隔を以って対向するリブ状凸部として肉厚部3Bの内面に円周方向に並んで一体に形成される。第2の保持構造6は、係止凸部12を形成することにより、係合凹部11の内周面により構成する嵌合孔4の内径をポート部120の外周部123の外径とほぼ同径とする。なお、係止凸部12については、型抜き構造上、複数個に分割して形成したが、円弧状の凸壁として一体に形成することも可能である。
係止凸部12は、肉厚部3Bの内面からの突出量が係合凹部11の深さ量、換言すればポート部120の抜止め凸部124の突出量よりも大きくして形成される。係止凸部12は、これによりポート部120に対してポートキャップ体1を装着した状態において抜止め凸部124と大きな重ね合わせ代が確保されるようにしてポートキャップ体1が確実に保持されるようにする。
【0018】
第2の保持構造6は、図5に示すように肉厚部3Bの内面において中心対称の2位置、換言すればポート部120に形成した一対の抜止め凸部124に対応する2位置おいて係止凸部12を形成せずに、係合凹部11が開口部3Aに直接開放されるようにする。第2の保持構造6は、開口部3Aに開放される係合凹部11の周方向の長さを、抜止め凸部124の周方向の長さよりもやや大きく形成する。第2の保持構造6は、ポートキャップ体1がポート部120に対して、上述した係止凸部12が形成されずに係合凹部11が開口部3Aに直接開放された部位に抜止め凸部124を相対させて押込み操作が行われる。第2の保持構造6は、嵌合孔4内にポート部120の抜止め凸部124が嵌合することを可能とする。
第2の保持構造6は、ポートキャップ体1がポート部120に対して蓋体部2の内面2Aに外周部123の先端開口縁122が突き当たった位置において、係止凸部12が抜止め凸部124の底面側に位置する。第2の保持構造6は、ポートキャップ体1がポート部120に対して所定角度の回動操作が行われることにより、係止凸部12が抜止め凸部124の底面に回り込んで係止される。第2の保持構造6は、抜止め凸部124により係止凸部12を係止することにより、ポートキャップ体1をポート部120に対して抜け止めした状態で装着されるようにする。
【0019】
第2の保持構造6は、図4及び図5に示すように係合凹部11を形成して薄肉となった肉厚部3Bに、係止凸部12を周方向に切り分けるようにして開口部3Aに開放された軸方向のスリット13を形成する。第2の保持構造6は、係止凸部12を上述した突出量を以って形成することにより、係止凸部12の内周縁がポート部120の外周部123よりも小径となる。第2の保持構造6は、ポート部120に対してポートキャップ体1を押込み操作することにより、外周筒部3の開口部3Aにおいて、スリット13により切り分けられた部位が外方に向かって弾性変位して拡径することが可能となり、係止凸部12が外周部123の外周面上に乗り上げ可能となる。
第2の保持構造6は、係止凸部12が、ポート部120の外周部123上に乗り上がって外周部123に圧接して弾性力を蓄勢する。第2の保持構造6は、係止凸部12が、係止された抜止め凸部124に対して図6矢印bで示すように蓄勢された弾性力を作用させる。第2の保持構造6は、ポートキャップ体1側から作用された弾性力が、あたかもポート部120を押し上げる軸方向の力として作用する。第2の保持構造6は、この弾性力の反作用力が、蓋体部2の内面2Aをポート部120の先端開口縁122に押し付ける方向に作用される。第2の保持構造6は、上述した先端開口縁122に対する突当て凸部7の線接触による突き当て状態がより確実に保持されるようにしてポート部120の密封が行われる。
【0020】
以上のように構成したポートキャップ体1においては、ポート部120に対して、その先端開口縁122側から外周部123を嵌合孔4内に嵌合させることにより装着される。ポートキャップ体1においては、内周係合部8と外周係合部9を有する第1の保持構造5によりポート部120の外周部123の先端部位を保持し、係合凹部11と係止凸部12を有する第2の保持構造6によりポート部120からの脱落が防止される。
ポートキャップ体1は、外周筒部3の開口部3A側から嵌合孔4内にポート部120を嵌合して押し込み操作が行われる。ポートキャップ体1においては、内周係合部8が、図6に示すように弾性変位部8Cが収斂しながら流路121内に進入して圧入状態で係合するとともに、蓋体部2の内面2Aに外周部123の先端開口縁122が突き当たった位置において、係合部8Bがポート部120の係合段部125Aと相対係合する。ポートキャップ体1においては、内周係合部8が、同図矢印aで示すように係合部8Bと係合段部125Aの係合状態が弾性変位部8Cに蓄勢された弾性力により保持され、ポート部120の先端部位125に対して内側から弾性力を作用させる。
ポートキャップ体1においては、外周係合部9が、図6に示すようにポート部120の先端部位125の外周に嵌合する。ポートキャップ体1においては、内周係合部8と外周係合部9との間でポート部120の先端部位125を挟み込むことにより、装着状態が保持されるようにする。
【0021】
ポートキャップ体1においては、係止凸部12が形成されずに係合凹部11が開口部3Aに直接開放された部位に抜止め凸部124を相対させる。ポートキャップ体1においては、ポート部120に対して蓋体部2の内面2Aに外周部123の先端開口縁122が突き当た位置において係止凸部12が抜止め凸部124の底面側に位置し、所定角度の回動操作が行われて係止凸部12が抜止め凸部124の底面に回り込んで係止される。ポートキャップ体1においては、スリット13により係止凸部12と外周筒部3の開口部位に開口縁部位に拡径特性と弾性力の蓄勢特性を付与されることにより、係止凸部12と抜止め凸部124が大きな重ね合わせ代を以って係合することが可能であるとともに、ポート部120に対して軸方向の弾性力を作用させる。
ポートキャップ体1においては、内周係合部8と外周係合部9との間の環状領域10において、突当て凸部7の円弧状頂点部がポート部120の先端開口縁122に対していわゆる線接触の状態で全周に亘って突き当たる。ポートキャップ体1においては、突当て凸部7の小さなリブ状凸部の構成と第2の保持構造6側から作用される弾性力により、突当て凸部7が隙間を生じることなく先端開口縁122に突き当たってポート部120を全域に亘って密封する。
ポートキャップ体1においては、ポート部120に簡易な操作によって着脱されるとともに、装着した状態が確実に保持される。ポートキャップ体1においては、水漏れ等を生じることなくポート部120を精密に密封することが可能であり、ポート部120に対する保護作用等を確実に奏する。
なお、本発明は、上述した実施の形態として示したポートキャップ体1に限定されるものでは無く、特許請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、構成要件について様々な変更、置換が行われることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 ポートキャップ体(密封キャップ体)、2 蓋体部、2A 内面、3 外周筒部、3A 開口部、4 嵌合孔、5 第1の保持構造(蓋体部保持構造)、6 第2の保持構造(外周筒部保持構造)、7 突当て凸部、8 内周係合部、9 外周係合部、10 環状領域、11 係合凹部、12 係止凸部、13 スリット、100 透析装置、102 ダイアライザー、105 容器本体、120 ポート部、121 流路、122 先端開口縁、123 外周部、124 抜止め凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を貫通する嵌合孔を形成した外周筒部と、前記嵌合孔の一端側を閉塞して前記外周筒部と一体に形成した蓋体部とからなり、前記嵌合孔内に本体側に設けた筒状ポート部を嵌合して被冠することにより、前記筒状ポート部を密封する合成樹脂製の密封キャップ体であり、
前記蓋体部には、前記嵌合孔内に嵌合された前記筒状ポート部の先端開口縁が突き当たる内面に、前記筒状ポート部に形成した流路内に嵌合する内周係合部と、この内周係合部を取り囲んで同心円をなして形成され前記筒状ポート部の外周部に係合する外周係合部と、前記内周係合部と前記外周係合部との間の環状領域に位置して突出形成されたリング状の凸部からなり頂点部が前記筒状ポート部の前記先端開口縁に全周に亘って突き当たる突当て凸部が形成され、
前記外周筒部には、開口縁の内面に前記筒状ポート部の外周部に形成した係合凸部と相対係合する係止凸部を有する抜止め部と、前記係止凸部と開口縁部位に拡径特性と弾性力の蓄勢特性を付与する前記開口縁に開放された軸方向の複数のスリットが形成され、
前記筒状ポート部に被冠した状態で、先端開口縁に対して前記突当て凸部の頂点部が全周に亘って突き当ることにより前記筒状ポート部を密封する密封キャップ体。
【請求項2】
前記本体側に設けた筒状ポート部が、透析治療用のダイアライザーの透析液ポートや血液ポートであり、透析治療に際して取り外される請求項1に記載の密封キャップ体。
【請求項3】
前記蓋体部の内面に形成したリング状の突当て凸部は、前記筒状ポート部の前記先端開口縁が突き当たる前記頂点部が円弧状の断面形状を有して形成される請求項1又は2に記載の密封キャップ体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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