説明

密封容器封入金属の真贋判定装置

【課題】この発明は、密封容器に封入された金属の真贋を、検出センサーを用いて判定する装置に関する。
【解決手段】電波通過容器に封入された金属の真贋を判定する真贋判定装置1であって、測定部5が、前記密封容器封入金属Mに、異なる複数の周波数により、密封容器封入金属Mの異なる深度に生ずる渦電流を計測し、制御部10の判定部が、新超音波真贋法を用いて、計測結果の組合せを基に、金属の真贋を判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、密封容器封入金属の真贋を検出センサーを用いて判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属のメダル等の真贋鑑定として、特開2000−251108号公報のように、メダルに打撃を与えることによって、発生した音を検出し、フーリエ展開することによって得られた周波数の中から一番多い周波数により識別する方法が提案されている。
また、特開2009−294693では、メダルが他の部材に非接触の状態で硬貨等に衝撃を与えて発生する音を検出し、その複数の固有振動数を解析することにより硬貨等の真贋を識別する方法も知られている。
しかし、上記構成では、密封容器封入金属の場合、密封容器に衝撃を与えることになり、内蔵した金属の真贋を判定することができない。
一方、音ではなく電気であれば密封容器の影響を殆ど受けずに計測ができるが、この場合であっても意図的に測定条件(位置や測定距離)を変化させることに対しての真贋判定ができなければ、正しい測定を行うことができない。
従来の超音波真贋法は、使用する周波数帯(30KHz〜400KHz)の波形成分から、複数の計測値で相対的な成分分析を行う方法であり、測定条件にあまり左右されない真贋法であるが、本発明では密封容器の存在を消して測定する必要があるので、音波の振動を電気の振動に置き換えて測定し、且つ金属の異なる深度での測定値の組合せを基に真贋を判定する方法を用いている。
上記判定方法を、説明上、新超音波真贋法と称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−251108号公報
【特許文献2】特開2009−294693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、新超音波真贋法を用いて密封容器封入金属の真贋を判定することができる真贋判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
電波通過容器に封入された金属の真贋を判定する真贋判定装置であって、
測定部が、前記金属に、異なる複数の周波数により金属の異なる深度に生ずる渦電流を計測し、
判定部が、該計測結果の組合せを基に金属の真贋を判定することを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
真贋判定装置の測定部が、異なる複数の周波数をコイルに発生させる周波数発生器と、前記周波数毎にコイルとコンデンサにより共振状態とする共振コンデンサ切替回路と、前記周波数に応じた深度毎に前記金属に生ずる渦電流を測定する検出センサーと、検出センサーで測定された異なる深度の測定値を基に位相を比較する位相比較器と、該位相比較器の比較を基に差分を取り出す整流回路とからなっており、
判定部が、予め記憶されている真正品の各深度毎の差分データと、検出センサーの深度毎の測定値の差分とを比較して真贋を判定してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明の密封容器封入金属の真贋判定装置では、密封容器封入金属に対して前記金属の異なる深度での複数の測定値を測定し、その測定結果を相対的に比較することで、密封容器中であっても、あるいは鍍金であっても正確な測定を行って真贋を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】真贋判定装置の実施例1を示す斜視図である。
【図2】検出センサーの異なる周波数での検出状態を説明する図である。
【図3】回路構成を示すブロック図である。
【図4】検出センサーを1個所にした回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、この発明の密封容器封入金属の真贋判定装置の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
本実施例では、電波通過容器に封入された金属(以下「密封容器封入金属」という。)Mとして、金などの貴金属、その合金またはめっきなどが用いられる。
本発明で用いる測定法は、新超音波真贋法を用いている。
【0010】
即ち、本実施例では、前記密封容器封入金属Mの異なる複数の深度を測定可能なように、渦電流の検出センサー53を配置している。
ここで、金属物質は、電気抵抗率と透磁率に反応して特有の位相角を呈するので、上記位相角の変化曲線は、金属それぞれ特有の材質固有曲線となる。
【0011】
この発明では、異なる電磁波の周波数で金属の深度の異なる複数個所を計測することで、測定距離に影響されない確実な固有物性値を測定することができる(図2参照)。
これにより、ある1点での測定値ではなく、深度の異なる複数の測定点から得られる変化量を測定し、該変化量から材質固有曲線を判定することで、質量の変化であっても、めっき等の物性構造変化であっても判別することが可能となる。
従って、めっきのように深度によって素材が異なる場合は、例えば表面と、めっき層と、地金層のそれぞれに達する深度となるように異なる電磁波の周波数を選択して測定に用いればよい。
【0012】
本実施例の真贋判定装置1は、図1から図3に示すように制御部10を介して、操作スイッチ2、表示器3、プリンタ4、測定部5、投入出駆動部6及び投入検出回路7とが接続されている。
【0013】
測定部5は、マイクロプロセッサの制御部10によって制御されるもので、該制御部10には複数の周波数(例えば10KHz〜400KHzの周波数帯から選択した複数の周波数)を同時又は順次に発生させるうる周波数発生器51が接続されている。
本実施例では、周波数発生器51としてダイレクト・デジタル・シンセサイザが用いられている。
該周波数発生器51は制御部10によって、金属の異なる深度の渦電流を測定するために異なる複数(本実施例では3つ)の周波数を発生させる。
【0014】
上記周波数発生器51は、制御部10に接続された共振コンデンサ切替回路52と接続される。
共振コンデンサ切替回路52は、図示省略のコイルとコンデンサにより形成される共振回路により共振状態を形成するために用いられる。
【0015】
該共振コンデンサ切替回路52は検出センサー53と接続されており、該検出センサー53は測定位置にセットされることで、測定位置に移動して前記コイルに接近した密封容器封入金属に発生する渦電流を測定する。
そして、異なる周波数で、前記測定を複数回(本実施例では3回)繰り返して測定する(図2参照)。
この検出センサー53は本実施例の場合、測定位置の上部と下部にセットされている(図3参照)。
【0016】
これは測定位置に投入された密封容器が表と裏で封入金属の位置が異なるので、封入金属と検出センサー53の位置が同じになるように上部と下部の検出センサー53の位置が設定されている。
これにより投入口11で密封容器が表裏いずれの側から投入されても、正確に測定することができる。
【0017】
投入された密封容器の表裏の形状を変えるか識別子(図示せず)を取り付けておき、上記形状又は識別子を判別科可能な表裏判別センサー(図示せず)で表裏を判別することで、測定に使用する検出センサー53が上部又は下部のいずれにするかを決定することができる。
【0018】
本実施例では同じ構成の測定部5を上下一対に設けた場合を図示したが、検出センサー53を上下に設け、他の構成51〜52、54〜55は共用してもよい。
また、この発明では、密封容器封入金属Mの測定位置が一定に設定できるならば、検出センサー53は1つであってもよい(図4参照)。
【0019】
そして、検出センサー53は、周波数発生器51と接続された位相比較器54と接続される。
検出センサー53で測定された複数の周波数による測定値が、位相比較器54により比較される。
【0020】
前記位相比較器54には整流回路55が接続されており、前記位相比較器54で比較された複数の位相の差分を取出して制御部10のA/Dコンバータ55に入力させる。
【0021】
制御部10では、前記A/Dコンバータ55から入力された測定値を、真贋判定部15に送り、上記測定された位相の差分のパターンと、図示しないメモリに記憶された真正の封入金属のパターンを呼び出して、一致するか否か判定し、一致した場合には真正品と判定し、一致しない場合には贋物と判定する。
【0022】
ここで、封入金属が同じ金属であっても重さや面積で異なる種類が存在する場合、例えば0.5gの場合と1gの場合のように複数種類ある場合には、前記測定値から、真贋の判定と共にどちらの種類かも判別することができる。
従って、真正品の場合は、種類毎にその数(枚数)をカウントすることができる。
符号9は外部接続される現金支払機であって、密封容器封入金属が遊技具の賞品用の場合に、換金額を計算し、自動的に現金を支払うようにしてもよい。
【0023】
投入出駆動部6は、投入口11の近傍に設けて密封容器封入金属Mの投入を検出するリセットスイッチや近接センサーなどを有する投入検出回路7により、密封容器の投入を検出すると、モータコントローラ61を介してモータ62を回転し、投入口から測定位置までの搬送装置を駆動する。
【0024】
そして、モータ位置検出回路63で、密封容器封入金属Mが測定位置までくるとモータコントローラ61によりモータ62の回転を制御する。
同様に、前記測定部5により測定が行われ、真正品と判定されると、前記モータコントローラ61を介してモータ62を回転し、密封容器封入金属Mを排出口12まで搬送して排出口12から吐出させる。
【0025】
また、贋物と判定されると表示器3にエラー表示をし、贋作対処用の処理が行われる。
本実施例では、密封容器封入金属Mは装置内に内蔵したまま停止するので、担当者が装置を開かない限り、密封容器封入金属Mは取り出すことができない。
その他、例えば、贋作排出口を設けて、贋作と判定された密封容器封入金属Mは贋作排出口から排出するようにしてもよい。
【0026】
次に、真贋判定装置1の作用を説明する。
まず、操作スイッチ2を投入して、真贋判定装置1を始動させる。
密封容器封入金属Mが投入口11に投入されると、投入検出回路7によって投入が検出され、モータコントローラ61を介してモータ62が回転し、搬送装置を駆動させて密封容器封入金属Mを測定位置手前まで搬送する。
【0027】
そこで、まず、周波数発生器51が1番目に設定された周波数をコイルに発生させ、共振コンデンサ切替回路52により前記1番目の周波数と共振するようにコンデンサが切り替えられ、測定位置に共振状態が形成される。
そして、前記モータ62が駆動し、密封容器封入金属Mが測定位置内に移動して、検出センサー53による測定が開始される。
【0028】
密封容器封入金属Mには、周波数に対応した深度に渦電流が発生するので、これを検出センサー53で測定する。
そして、周波数を変えて(測定対象の深度を変えて)同様に測定を繰り返す。
このようにして得られた複数の測定値は位相比較器54で比較し、位相の差分を整流回路55で作成し、その結果をA/Dコンバータ56へ入力する。
【0029】
このようにして得られた周波数の異なる帯域での3回分の差分データを基に真贋の判定が行われる。
即ち、前記差分データが、メモリに予め記憶してある正しいパターンと比較して、一致するか否か判定する。
【0030】
一致した場合には、制御部10からモータコントローラ61に排出指示信号が出力され、モータ62を駆動して密封容器封入金属Mを排出口12まで搬送して排出させ、次の密封容器封入金属Mを測定位置まで移動させる。
一致しない場合には、本実施例では、そのままモータを停止したままとし、マニュアル操作に移行する。
【0031】
上記実施例は、一例であって、この発明の構成を限定するものではない。
即ち、この発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 真贋判定装置
2 操作スイッチ
3 表示器
4 プリンタ
5 測定部
6 投入出駆動部
7 投入検出回路
10 制御部
11 投入口
12 排出口
51 周波数発生器
52 共振コンデンサ切替回路
53 検出センサー
54 位相比較器
55 整流回路
56 A/Dコンバータ
61 モータコントローラ
62 モータ
63 モータ位置検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波通過容器に封入された金属の真贋を判定する真贋判定装置であって、
測定部が、前記金属に、異なる複数の周波数により金属の異なる深度に生ずる渦電流を計測し、
制御部の判定部が、該計測結果の組合せを基に金属の真贋を判定することを特徴とする真贋判定装置。
【請求項2】
真贋判定装置の測定部が、異なる複数の周波数をコイルに発生させる周波数発生器と、前記周波数毎にコイルとコンデンサにより共振状態とする共振コンデンサ切替回路と、前記周波数に応じた深度毎に前記金属に生ずる渦電流を測定する検出センサーと、検出センサーで測定された異なる深度の測定値を基に位相を比較する位相比較器と、該位相比較器の比較を基に差分を取り出す整流回路とからなっており、
判定部が、予め記憶されている真正品の各深度毎の差分データと、検出センサーの深度毎の測定値の差分とを比較して真贋を判定してなることを特徴とする請求項1に記載の真贋判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−258162(P2011−258162A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134593(P2010−134593)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(510164692)株式会社アルネッツ (1)
【出願人】(500484618)東京ユニオンサーキュレーション株式会社 (1)
【Fターム(参考)】