説明

密封構造式吸水チャック

【課題】包材内への水分透過を抑制すると共に内容物の雰囲気を乾燥した状態に保つことのできる密閉性の高い密封構造式吸水チャックを提供する。
【解決手段】密封構造式吸水チャック60は、袋状本体50の開口部52の近傍における内側に、開口部52を横断方向に伸びるように形成された開口部52を封止するプラスチックのチャック部60を備える。チャック部60は、内側に積層された一対のプラスチックフィルム72、74と、一対のプラスチックフィルム72、74に形成されたチャック70、71とを有する。一対のプラスチックフィルム72、74及び/又はチャック70、71は、ゼオライトを含有するプラスチックで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造式吸水チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品の包材において、生鮮食品の酸化を防止したり生鮮食品の鮮度を維持したりするために、生鮮食品を収容した包材の内部に、窒素などの不活性ガスや酸素を充填する形態の包材が使われている。
そのような包材は、例えば、特許文献1に記載の包装袋がある。特許文献1に記載の包装袋は、酸素吸収機能を有する袋基体の開口部に再密封及び再開封可能な一般的なチャック部を備えており、種々の飲食品、例えば、ハム・ソーセージ、ハンバーグ、カレー、シチュー、お粥、中華料理の具、液体調味料などをボイル又はレトルト熱処理し、殺菌又は滅菌処理した包装製品を製造する包装袋として有用なものであるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−022558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのような袋基体の開口部に一般的なチャック部を形成したチャック付の包材において、袋基体の内部を減圧にした場合、チャック部より徐々に大気が漏れ込み、袋基体の内部の減圧状態が保たれない。
また、開口部のチャック部から袋基体の内部に侵入する微量の湿った空気をできるだけ抑えたいという要望がある。
また、最近では袋基体の内部に食品などを保存している際において、チャック部からダニなどが侵入し、その食品が、アレルギーを発生するような不衛生な状態となった事例が報告されている。
【0005】
本発明の目的は、包材内への水分透過を抑制すると共に内容物の雰囲気を乾燥した状態に保つことのできる密閉性の高い密封構造式吸水チャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る密封構造式吸水チャックは、袋状本体の開口部の近傍における内側に、前記開口部を横切る横断方向に伸びるように形成された前記開口部を封止するプラスチックのチャック部を備える。前記チャック部は、前記横断方向に伸びるように前記内側に積層された一対のプラスチックフィルムと、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルムに形成されたチャックとを有する。前記一対のプラスチックフィルム及び/又は、前記チャックが、ゼオライトを含有するプラスチックで形成されている。
【0007】
また、前記チャック部は、さらに、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルムの前記チャックより前記開口部側に形成された別のチャックを有することが好ましい。前記一対のプラスチックフィルムのそれぞれは、前記チャックと前記別のチャックとの間に形成された貫通孔を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密封構造式吸水チャックを、袋状本体の開口部の近傍における内側に、密封構造式吸水チャックが開口部を横切る横断方向に伸びるように形成することにより、袋状本体内の空間部分を密閉状態に保ち、また、袋状本体内への水分透過を外層により抑制することができる。
さらに、一対のプラスチックフィルムがゼオライトを含有しポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層を有しているので、一対のプラスチックフィルムのチャックが形成する空間部分の湿気及び一対のプラスチックフィルムの近傍における袋状本体内の空間部分の湿気を吸収する。
これにより、一対のプラスチックフィルムのチャックが形成する空間部分の雰囲気を乾燥状態にすると共に、その空間部分の圧力を減圧する。その空間部分が減圧されると、チャックがより密着的に係合する。
【0009】
また、チャック部は、吸湿機能を保有しているので、チャックが形成する空間部分(例えば、図1における空間部分R)や、チャックと別のチャックとの間における一対のプラスチックフィルムに挟まれた空間部分(例えば、図1における空間部分Q)の雰囲気を乾燥状態にする。このため、万が一、ダニなどがチャック部から侵入しようとしても、進入途中に乾燥状態の空間部分があるので、ダニなどは、乾燥状態を嫌って、その空間部分に侵入しない。仮に、ダニなどがその乾燥した空間部分に侵入したとしても、侵入したダニなどは乾燥により死滅するから、袋状本体の内部には到達しない。このため、チャック部は、袋状本体の内部に保存した保存物への侵入防止に有効に作用する。
【0010】
よって、本発明によれば、包材内への水分透過を抑制すると共に内容物の雰囲気を乾燥した状態に保つことのできる密閉性の高い密封構造式吸水チャックを提供することができる。
【0011】
本発明の密封構造式吸水チャックを備えた湿分吸収包材は、環境中の水分や湿気の存在が好ましくない材料の包装、保存に適している。密封構造式吸水チャックを備えた湿分吸収包材は、例えば、水分や湿気によって変質しやすい材料、すなわち加水分解反応、溶解、固着などを起こしやすい医薬品、化粧品、乾燥食品、化学物質などや、Li電池関連の電極や材料、また、錆びなどを発生しやすい金属製機械、装置、動作不良を起こしやすい精密機器や電子部品などの保管や輸送時の包材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る密封構造式吸水チャックの一部断面図である。
【図2】図1に示した密封構造式吸水チャックの部分拡大図である。
【図3】図1に示した密封構造式吸水チャックの湿分を吸収した状態を示す一部断面図である。
【図4】本発明に係る密封構造式吸水チャックの別のチャックの部分拡大図である。
【図5】本発明に係る密封構造式吸水チャックのさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図6】本発明に係る密封構造式吸水チャックのさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図7】本発明に係る密封構造式吸水チャックのさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図8】本発明に係る密封構造式吸水チャックのさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図9】密封構造式吸水チャックの重量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2を参照するに、密封構造式吸水チャックであるチャック部60を備えた密封構造式吸水チャック付き湿分吸収包材10は、袋状本体50と、開口部52の近傍における内側に、開口部52を横切る横断方向Xに伸びるように形成され開口部52を封止するプラスチックのチャック部60とを備える。チャック部60は、2つのチャック70、71を備える。本実施の形態では、チャック70は、開口部52において袋側部分Pの側に、チャック71は、開口部52において袋側部分Pとは反対側に備える。
【0014】
(袋状本体)
袋状本体50は、水分不透過性の外層20とポリオレフィンの内層30とを有する2枚の積層フィルム40によって構成されている。袋状本体50は、2枚の積層フィルム40の周囲を溶着などの公知の方法により密閉状態の接合部54を形成し、袋側部分Pを備える。
袋状本体50の材質は、特に限定されないが、例えば、一般的なポリオレフィン包材であってもよいし、湿分吸収性能を有する機能性包材などでもよい。湿分吸収効果をより効果的に発揮させるためには、本密封構造式吸水チャックは、湿分吸収性能を有する包材との組み合わせをすることが好ましい。外層20は、例えば、積層フィルム40の表面層を構成し、プラスチック層22及びアルミ箔層24を備える。内層30が湿分吸収性能を有する包材の場合、内層30は、例えば、ゼオライトを含有しポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層32と、ゼオライトを含有せずポリオレフィンを有する一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層34、34とを有し、一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層34、34は、吸湿性プラスチック層32を挟むように吸湿性プラスチック層32の両側に積層されていることが好ましい。
【0015】
(チャック部)
チャック部60は、袋状本体50の開口部52の近傍における内側に形成されている。チャック部60は、互いに同じ形状のチャック70、71を有する。チャック71は、横断方向Xと直角の方向Yにおいて、一対のプラスチックフィルム72及び74のチャック70より開口部52側に形成されている。
チャック70、71は、横断方向Xに伸びるように開口部52の内側に積層された一対のプラスチックフィルム72、74と、横断方向Xに伸びるようにプラスチックフィルム72に形成された一対の雌鈎爪82、83と、横断方向Xに伸びるようにプラスチックフィルム74に形成された一対の雄鈎爪84、85と、一対のシール部分86、87からなるシール部88とを有する。一対のシール部分86、87は、それぞれ、雌鈎爪82、83と雄鈎爪84、85とが互いに係合して一対のロック部90、91を形成した際に互いに気密状に係合して、シール部88となる。一対の雄鈎爪84、85は、それぞれ、一対の雌鈎爪82、83に係合可能に構成されている。シール部分86は、横断方向Xに伸びるように、雌鈎爪82と雌鈎爪83との間における一対のプラスチックフィルム72に形成されている。シール部分87は、横断方向Xに伸びるように雄鈎爪84と雄鈎爪85との間におけるプラスチックフィルム74に形成されている。
【0016】
チャック部60において、一対のプラスチックフィルム72、74及び/又はチャック70、71が、ゼオライトを含有するプラスチックで形成される。
このうち特に、一対のプラスチックフィルム72及び74は、ゼオライトを含有しポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層72a及び74aを有していることが好ましい。
また、チャック部60のうち一対のプラスチックフィルム72、74はゼオライトを含有するプラスチックで形成され、チャック70、71はゼオライトを含有しないプラスチックで形成されていることがより好ましい。このようにすることにより、チャック部60を繰り返して開けたり閉めしたりしても、チャック部60の表面にゼオライトが析出しないので、チャック部60の繰り返し開閉による密閉性の低下を抑えることができる。
一対のプラスチックフィルム72及び74のチャック70、71が形成する空間部分Rの湿気及び一対のプラスチックフィルム72及び74の近傍における袋状本体50内の袋側部分P、空間部分Q及びRの湿気を吸収する。
これにより、一対のプラスチックフィルム72及び74のチャック70、71が形成する空間部分Rの雰囲気を乾燥状態にすると共に、空間部分Rの圧力を減圧する。空間部分Rの圧力が減圧されると、チャック70、71が密着的に係合する。
【0017】
プラスチックフィルム72及び74のゼオライト非含有ポリオレフィン層72b、74bは、それぞれ、チャック70とチャック71との間に形成された貫通孔75及び76を有する。貫通孔75及び76からは、それぞれ、プラスチックフィルム72及び74の吸湿性プラスチック層72a、74aが露出しているので、吸湿性プラスチック層72a、74aは、2つのシール部88の間(換言するとチャック70とチャック71との間)の空間部分Qの湿気を吸湿することが可能になる。すなわち、チャック部60に形成された空間部分Qの湿気を吸湿することによって、チャック部60での吸湿もされるため、袋状本体50の袋側部分Pの吸湿効果をより効率的に持続することができる。
貫通孔75及び76の形状は、円筒側面形状として説明したが、多角形の筒状側面形状であってもよいし、円錐形状や多角形錐形状の側面であってもよい。また、貫通孔75及び76は、1列に並ぶように形成されているが、複数列であってもよい。複数列の場合、千鳥配列(列の伸びる方向において、一方の列の貫通孔と他方の列の貫通孔とが、隣接する貫通孔の間のピッチの半分だけずれている配列)や格子配列(列の伸びる方向において、一方の列の貫通孔と他方の列の貫通孔とが揃う配列)やこれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
プラスチックフィルム72、74に用いられる吸湿性プラスチック層72a、74aやゼオライト非含有ポリオレフィン層72b、74bのポリオレフィンの密度は、0.880〜0.960g/mlの範囲にあるものから選ぶことができる。さらに、吸湿性プラスチック層72a、74aのポリオレフィンの密度を、ゼオライト非含有ポリオレフィン層72b、74bのポリオレフィンの密度より低くすることによって吸湿速度を向上することができる。
吸湿性プラスチック層72a、74aは、ポリエチレン又はエチレン系エラストマーにゼオライトを練り込んだものであることが好ましい。
吸湿性プラスチック層72a、74aやゼオライト非含有ポリオレフィン層72b、74bのポリオレフィンは、ポリエチレン、エチレン系エラストマー、ポリプロピレン又はプロピレン系エラストマーから選ばれる単体又は混合物が好ましい。吸湿性プラスチック層72a、74aやゼオライト非含有ポリオレフィン層72b、74bのポリオレフィンは、さらに好ましくは、ポリエチレン又はエチレン系エラストマーであり、ゼオライト非含有ポリオレフィン層72b、74bのポリエチレン又はエチレン系エラストマーの密度は0.880〜0.930g/mlであり、さらに好ましくは、0.910〜0.925g/mlである。また、前記一対のゼオライト非含有のポリエチレンの密度は、0.910g〜0.960g/mlであり、さらに好ましくは、0.915〜0.930g/mlである。ポリエチレンは、低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマーであることが好ましい。
【0019】
吸湿性プラスチック層72a、74aは、細孔径が3Å〜10Åのゼオライトを用いることが好ましく、さらに好ましくは、細孔径が3Å〜4Åのゼオライトを用いることである。吸湿性プラスチック層72a、74aは、水分子のみを吸着することが可能となるように、3Å〜4Åの細孔径を持つゼオライトを吸湿性プラスチック層72a、74aに用いることが好ましい。
例えば、細孔径が3Å〜4Åのゼオライトとしては、結晶構造がA型で、金属カチオンがアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であるゼオライトが挙げられる。金属カチオンは、2種類以上であっても構わない。金属カチオンは、好ましくは、アルカリ金属、特に好ましくは、カリウムやナトリウムであるモレキュラーシーブが挙げられる。
【0020】
吸湿性プラスチック層72a、74aのゼオライトの含有量が50質量%を越えると製膜は可能であるが成形品としての可撓性がなくなり、一方、1質量%未満ではゼオライトの吸湿能力が十分に発揮されない。吸湿性プラスチック層72a、74aのゼオライト含有量は、除湿したい水分量によって適宜選択することが可能ではあるが、吸湿性能、加工性及び包装材料の物性などから鑑みると、吸湿性プラスチック層72a、74aのゼオライトの含有量は、1質量%〜50質量%であることが好ましい。ゼオライト含有量は、さらに好ましくは、10質量%〜40質量%である。
【0021】
また、プラスチックフィルム72、74は、吸湿性プラスチック層72a、74aにゼオライトを混合させることによって半透明フィルムとなるが、吸湿性プラスチック層72a、74aの吸湿に応じてプラスチックフィルム72、74の屈折率が変わり、半透明のフィルムが吸湿するに従って透明に変わることから吸湿状態を判断することができる。この機能を利用することによって吸湿状態のインジケート機能を有するフィルムにすることができる。特に、シリカ蒸着PETフィルムをなどの透明性材料用いた場合、吸湿状態を外層20の外から判断することが可能である。透明となる部分に着色しておけば、インジケート機能がより明確になる。
【0022】
シール部分86、87は、それぞれ、雄鈎爪84、85と平行になるように、雄鈎爪84、85に形成された溝状の締めつけ壁92と、雌鈎爪82、83と平行になるように、プラスチックフィルム72に形成され、締めつけ壁92に圧接する押しつけリブ93と、を有する。締めつけ壁92の断面は、雌鈎爪82、83が形成されているプラスチックフィルム74から離れるに従って広くなる連続した溝を構成している。シール部88は、押しつけリブ93と締めつけ壁92とがラインコンタクト又は面コンタクトするように、押しつけリブ93が、締めつけ壁92に圧接するように構成されている。締めつけ壁92及び押しつけリブ93は、締めつけ壁92及び押しつけリブ93のうち一方の剛性が他方の剛性より高く、他方の弾力性が一方の弾力性よりあるように構成している。又は、締めつけ壁92及び押しつけリブ93は、締めつけ壁92及び押しつけリブ93のうち一方の剛性が他方の剛性より高くなるような、かつ、他方の弾力性が一方の弾性力よりあるような材質で構成してもよい。
【0023】
密封構造式吸水チャック付き湿分吸収包材10についてさらに詳細に説明する。
雌鈎爪82、83又は雄鈎爪84、85の内側に形成されている締めつけ壁92は、雌鈎爪82、83又は雄鈎爪84、85の内側の押しつけリブ93と密着して袋状本体内を気密に保持することができるように、原則として根本において狭く、先が広くなっている逆三角形(直線でも曲線であってもよいテーパー形状)の連続した溝を形成していることが好ましい。他方の鈎爪は十分な剛性を備え、外力に対して変形を起こさない構造であることが好ましい。この鈎爪の内側には押しつけリブを設けることが好ましいが、この押しつけリブは一方の鈎爪の内側に設けられた締めつけ壁との間において、雌鈎爪及び雄鈎爪の結合により、ラインコンタクトあるいは面コンタクトの完全なシール部88を形成するように形成されている。
【0024】
このコンタクトは、単に密閉性を目的とするだけであれば、プラスチックチャックのロック部の結合により、締めつけ壁の壁面に対し押しつけリブの先端部が圧着する程度に密接なコンタクトができればよい。また、コンタクトは、ラインコンタクトであっても面コンタクトであっても密閉できればその形式は問わない。もし強度の圧力又は密封度の高い包材の必要がある場合には、ロック部の材質の剛性も高いものが必要になるが、シール部88の圧着の圧力を強くすることが好ましい。
【0025】
シール部88は、締めつけ壁面の断面(溝)が逆三角形の直線状であっても、又はゆるいカーブを描いた曲線であってもよい。また、締めつけ壁面に接触する押しつけリブの先端部は、ラインコンタクトあるいは面コンタクトできればよいので、例えば断面が半円状、楕円形状、三角形状、矩形状、梯形状あるいは多角形状など、形状はいかなるものであってもよい。製造の容易性からは半円形状、楕円形状、矩形状などが好ましい。
【0026】
プラスチックフィルム72は、雌鈎爪82、83及び雄鈎爪84、85の内側に押しつけリブ93を設けている。プラスチックフィルム74には、雌鈎爪82、83と係合する雄鈎爪84、85を設けている。雄鈎爪84、85は、雄鈎爪84、85の鈎の反対側(内側)を根本が狭く、先端が広い溝状の締めつけ壁92を構成している。締めつけ壁92の面は、押しつけリブ93と圧接してシール可能であれば平面であっても曲面であってもよい。締めつけ壁92の面を、僅かの曲率を有する曲面にすると、締めつけ壁の製造は容易になる。
【0027】
なお、押しつけリブ93、締めつけ壁92の組み合わせにおいて、成形上、形状の精密性を高くすることが容易でない場合がある。そのような場合は、一方の剛性を高く、他方が弾力性を有するようにすれば、シールの密閉性を高めることができる。しかし、ロック部の雌鈎爪、雄鈎爪はロックのために柔軟性を付与することは問題があり、鈎爪と押しつけリブ又は締めつけ壁92の材質を変えて製造することも困難である場合には、例えば高剛性を付与する側の根本部分を厚く、弾力性を付与する側の根本部分を凹み95を設けるなどにより薄く成形することが好ましい。
【0028】
以上の密封構造式吸水チャック付き湿分吸収包材10は、これの袋部に内容物を入れ、開口部52をチャック70、71で密閉状態にすることにより、シール部88及び一対のロック部90、91は、一対のプラスチックフィルム72、74の間に形成され、袋状本体50内を密閉状態に保ち、また、袋状本体50内への水分透過を外層20により抑制することにより、袋状本体50内の雰囲気を維持した状態に保つことができる。
【0029】
さらに、開口部52がチャック70、71で密閉状態にされた状態で、内層30の吸湿性プラスチック層32が袋状本体50内の湿気を吸収するので、袋状本体50内の雰囲気が乾燥状態になると共に、袋状本体50内の圧力は減圧される。袋状本体50内の圧力が減圧されると、袋状本体50を構成する2枚の積層フィルム40が内容物に密着する。このとき、図3に示すように、チャック70よりも袋側部分Pの側の一対のプラスチックフィルム72、74(図3においてA、Bの範囲)は、互いに接近する様に(図3において矢印Fの方向に)、撓む。このため、2つのチャック70、71のうち袋側部分Pのチャック70において、一対のロック部90、91のうち、シール部88より袋側部分Pの側のロック部91を構成する雌鈎爪83と雄鈎爪85とは、シール部88側に撓ませる力を受ける。したがって、撓ませる力は、押しつけリブ93が雌鈎爪83と雄鈎爪85とに形成されている溝状の締めつけ壁92に圧接する圧接力を増加させるように作用し、シール部88の気密性をより向上させる。
【0030】
さらに、図3のA、Bの範囲が互いに近づくように撓むと、チャック70とチャック71との間の範囲のプラスチックフィルム72、74は互いに離れる方向に撓もうとする。しかし、チャック70とチャック71との間の範囲のプラスチックフィルム72、74のチャック71側の端部は、チャック71によってプラスチックフィルム72とプラスチックフィルム74とが互いに離れないように保持している。そのため、シール部88より袋側部分Pとは反対側のロック部91を構成する雌鈎爪83と雄鈎爪85とは互いに気密性を維持した状態を維持する。
【0031】
密封構造式チャック付き湿吸包材のチャックは、上記のチャックに限定されず、例えば、以下のように種々変更してもよい。
【0032】
図4に示すように、チャック70aは、雄鈎爪84、85の根元が薄くなっている。また、雌鈎爪82、83の先端が雄鈎爪84、85の根元の近傍まで伸びている。このような構成にすることにより、チャック70aをコンパクトにまとめることができるので、薄手のフィルムや小容量の包材に利用可能である。
【0033】
図5に示すように、チャック70bは、シール部を二重に設けたもので、雄鈎爪84、85の内側に1つの独立壁89を設け、これに二つの押しつけリブ93a及び93bを設けてシール部としたものである。このためプラスチックチャックの幅は広くなるがシールが二重に行えるため密閉度を高くすることができる。チャック70bは、厚手のフィルムを用いた包材又は大容量の包材用として有用である。
【0034】
図6に示すように、チャック70cは、雄鈎爪84、85の内側に押しつけリブ93cを設け、雌鈎爪82、83の内側に締めつけ壁93d、93eを設け、さらに材質として成形が容易で弾力性のあるプラスチックチャックである利点を利用して、締めつけ壁93d、93eの外側壁を押しつけリブとして雄鈎爪84、85の内側壁面との間にシールラインを形成させることもできる。
【0035】
図7に示すように、チャック70dは、さらに強度の圧力あるいは大容量のために、雌、雄の鈎爪が内圧によっては簡単に剥離しないようにロック押え94a、94bを設けてもよい。この場合、内圧だけを問題とするなら、ロック押え94a、94bは包材の内側だけに設けるだけでもよい。
【0036】
図8に示すように、チャック70eは、チャック70のような押しつけリブと締め付け壁とを備えなくてもよい。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を挙げて、密封構造式吸水チャックについて具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)
親水性ゼオライト60kgと密度が0.919g/ml、MFR(190℃、2.16kg)が8の低密度ポリエチレン(LDPE)140kgとを混錬し、ダイス径4mmφ×4穴のダイスを用いて押出し、ゼオライトを30%含有するLDPEのペレットを得た。
その後、本ペレットと密度が0.926g/ml、MFR(190℃、2.16kg)が0.9の低密度ポリエチレン(LDPE)とを用い、一対のプラスチックフィルムをゼオライトを含有する低密度ポリエチレン(LDPE)、チャックの雄鈎爪と雌鈎爪の部分をゼオライト非含有の低密度ポリエチレン(LDPE)となるように共押出しし、密封構造式吸水チャックを形成した。
【0039】
(比較例1)
ゼオライトを混合しない以外は実施例と同様にした密閉構造式チャックを形成した。
【0040】
(評価)
実施例の密封構造式吸水チャック及び比較例の密閉構造式チャックについて、以下の吸水評価を実施した。
(吸水評価)
実施例1の密封構造式吸水チャック及び比較例1の密封構造式チャックを、1cm×1cmの大きさに切り取り試験片を作成し、それらの試験片の重量を測定した。それらの試験片を、25℃、RH100%の恒温恒湿Boxに入れ、それらの試験片の重量の経時変化を測定し、ゼオライト添加量に対する吸着性能(%)を算出した。実施例1の試験片は添加したゼオライトの吸着性能に近い吸着性能を有することを認めることができたが、比較例1の試験片の吸着性能はほとんど認められなかった。図9に、算出したゼオライト添加量に対する吸着性能の経時変化の結果を示した。図9中、ゼオライト添加量に対する吸着性能とは、添加したゼオライトの吸着性能と同等に吸水した場合を100%とした。
【符号の説明】
【0041】
10 密封構造式吸水チャック付き湿分吸収包材
20 外層
22 プラスチック層
24 アルミ箔層
30 内層
32 吸湿性プラスチック層
34 ゼオライト非含有ポリオレフィン層
40 積層フィルム
50 袋状本体
52 開口部
60 チャック部(密封構造式吸水チャック)
70、70a、70b、70c、70d、70e、71 チャック
72、74 プラスチックフィルム
72a、74a プラスチックフィルムの吸湿性プラスチック層
72b、74b プラスチックフィルムのゼオライト非含有ポリオレフィン層
75、76 プラスチックフィルムの貫通孔
82、83 雌鈎爪
84、85 雄鈎爪
86、87 シール部分
88 シール部
89 独立壁
90、91 ロック部
92 締めつけ壁
93、93a、93b、93c 押しつけリブ
93d、93e 締めつけ壁
94a、94b ロック押え
95 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状本体の開口部の近傍における内側に、前記開口部を横切る横断方向に伸びるように形成された前記開口部を封止するプラスチックのチャック部を備え、
前記チャック部は、前記横断方向に伸びるように前記内側に積層された一対のプラスチックフィルムと、
前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルムに形成されたチャックとを有し、
前記一対のプラスチックフィルム及び/又は、前記チャックが、ゼオライトを含有するプラスチックで形成されている、密封構造式吸水チャック。
【請求項2】
前記ゼオライトを含有するプラスチックが、ポリオレフィンである、請求項1に記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項3】
前記ポリオレフィンの密度が、0.880〜0.960g/mlである、請求項2に記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項4】
前記チャック部は、さらに、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルムの前記チャックより前記開口部側に形成された別のチャックを有し、
前記一対のプラスチックフィルムのそれぞれは、前記チャックと前記別のチャックとの間に形成された貫通孔を有する、請求項1から3のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項5】
前記チャックは、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルムの一方に形成された一対の雌鈎爪と、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルムの他方に形成された一対の雄鈎爪であって前記一対の雌鈎爪にそれぞれ係合可能な一対の雄鈎爪と、を有する、請求項1から4のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項6】
前記チャックは、さらに、それぞれが各雌鈎爪と各雄鈎爪とが互いに係合して一対のロック部を形成した際に、互いに気密状に係合する一対のシール部分を有するシール部を有し、
前記一対のシール部分の一方は、前記横断方向に伸びるように、前記一対の雌鈎爪の間における前記一対のプラスチックフィルム部の一方に形成され、
前記一対のシール部分の他方は、前記横断方向に伸びるように前記一対の雄鈎爪の間における前記一対のプラスチックフィルムの他方に形成された、請求項5に記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項7】
前記一対のシール部分の一方が、各ロック部の雌鈎爪及び雄鈎爪のうち一方の鈎爪と平行になるように、前記一対のプラスチックフィルムのうち前記一方の鈎爪が形成されているプラスチックフィルムに形成された溝状の締めつけ壁を有し、
前記一対のシール部分の他方が、他方の鈎爪と平行になるように、前記他方の鈎爪に形成された、前記締めつけ壁に圧接する押しつけリブを有する、請求項1から6のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項8】
前記締めつけ壁の断面が、前記一方の鈎爪が形成されているプラスチックフィルムから離れるに従って広くなる連続した溝である、請求項7に記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項9】
前記一対のシール部分のそれぞれが、前記押しつけリブが前記締めつけ壁に圧接するように、前記押しつけリブと前記締めつけ壁とがラインコンタクト又は面コンタクトする接触面を有する、請求項7又は8に記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項10】
前記締めつけ壁及び前記押しつけリブが、前記締めつけ壁及び前記押しつけリブのうち一方の剛性が他方の剛性より高く、他方の弾力性が一方の弾力性よりあるような断面形状で形成された、請求項7から9のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項11】
前記締めつけ壁及び前記押しつけリブが、前記締めつけ壁及び前記押しつけリブのうち一方の剛性が他方の剛性より高くなるような、かつ、他方の弾力性が一方の弾性力よりあるような材質で構成した、請求項7から10のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項12】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、エチレン系エラストマー、ポリプロピレン及びプロピレン系エラストマーから選ばれる単体又は混合物の組み合わせである請求項1から11のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項13】
前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマーである、請求項1から12のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項14】
前記一対のプラスチックフィルム及び/又は前記チャックが、ポリオレフィンにゼオライトを練り込んだものである、請求項1から13のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項15】
前記一対のプラスチックフィルム及び/又は前記チャックのゼオライトを含有するプラスチック層のゼオライトの細孔径が3〜10Åである、請求項1から14のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項16】
前記一対のプラスチックフィルム及び/又は前記チャックのゼオライトを含有するプラスチック層のゼオライトの含有量が1〜50重量%である、請求項1から15のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。
【請求項17】
前記一対のプラスチックフィルム及び/又は前記チャックが、ゼオライトを含有するプラスチック層の吸湿に応じて前記一対のプラスチックフィルム及び/又は前記チャックのプラスチックの屈折率が変わるインジケート機能を有する、請求項1から15のいずれかに記載の密封構造式吸水チャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51992(P2013−51992A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190161(P2011−190161)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(507131159)ハイパック株式会社 (9)
【出願人】(390016090)ユニオン昭和株式会社 (9)
【Fターム(参考)】