説明

密度測定のための荷重受けデバイス

【課題】荷重受けデバイスを提供する。
【解決手段】受けモジュール(300)は固体(900)を受けるように設計された陥凹部(310)を有し、受けモジュール(300)の第1の動作位置では、流体(1000)中で沈む固体(900)を固体(900)に作用する重力によって陥凹部(310)内に置く、受けモジュール(300)の第2の動作位置では、流体(1000)中で浮かぶ固体(900)を固体(900)に作用する浮力によって陥凹部(310)を用いて周囲流体(1000)中で適所に保持することができるように、陥凹部(310)の向きを選択的に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密度測定の間、周囲流体中で保持することができる少なくとも1つの固体を受ける荷重受けデバイスであって、秤の秤量セルに接続された部品への吊下げ接続を確立する役割を果たすハンガーモジュールを含み、ハンガーモジュールに接続され、固体を受ける役割を果たす受けモジュールをさらに含む、荷重受けデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の荷重受けデバイスは、主として、固体の密度の測定に使用される。密度測定の間、固体は、秤の秤量セルに連結されていない容器内部にある、周囲流体中で保持される。密度測定は、流体中で浮かぶ固体、ならびに流体中で沈む固体を用いて行うことができる。浮かぶ固体の場合、固体の密度は周囲流体の密度よりも低い。沈む固体の場合、固体の密度は周囲流体の密度よりも高い。固体を周囲流体中で保持するため、荷重受けデバイスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,561,025B2号
【特許文献2】米国特許第7,296,466B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周囲流体中で沈む固体のための荷重受けデバイスは、既知の最新技術に属する。この荷重受けデバイスは、陥凹部を備えた受けモジュールを有する。陥凹部の深さは重力の方向に向けられる。周囲流体中で沈む固体をこの陥凹部内に定置し、それによって流体中で適所に保持することができる。浮かぶ固体は流体の表面に上がってくるので、この受けモジュールは、流体上に浮かぶ固体の密度を測定するのには適さない。したがって、試験流体中で浮かぶ固体の密度測定のため、さらなる荷重受けデバイスが必要である。同様に最新技術に属するこの荷重受けデバイスは、陥凹部を備えた受けモジュールを有し、その陥凹部の深さは重力とは逆方向に向けられる。浮かぶ固体は受けモジュールの下方に配置される。浮かぶ固体に作用する浮力の力によって、固体が下方から陥凹部内へと押し込まれ、それによって固体が流体中で適所に保持される。
【0005】
これらの最新技術の荷重受けデバイスには、浮かぶ固体と沈む固体それぞれの密度を測定するのに異なる荷重受けデバイスが必要とされるという不利な点がある。
【0006】
この欠点は、米国特許第6,561,025B2号に開示されている荷重受けデバイスによって排除されている。この荷重受けデバイスは、密度測定プロセスにおいて、重力の方向に対して直角に位置付けられる剛性の平坦なグリッドを含む。沈む固体の密度測定の場合、固体をグリッド上にセットする。次に、グリッドとその上の本体とを有する荷重受けデバイスを流体に沈める。固体に作用する重力の力によって、固体が上からグリッドに押し付けられ、それによって固体が周囲流体中で適所に保持される。浮かぶ固体の密度測定の場合、固体を同様にグリッド上に配置する。固体が流体の表面に上がってくるのを防ぐため、浮力拘束具(buoyancy constraint)が本体の上に置かれる。浮力拘束具は、拘束具およびグリッドがともに中空のエンクロージャを形成し、密度測定の間、固体がその中で適所に保持されるようにして構成される。浮かぶ固体に対する密度測定を行うため、荷重受けデバイスと、グリッドおよび浮力拘束具の間で包囲された固体とを流体に沈める。固体に作用する浮力により、固体は浮力拘束具に押し付けられ、流体中で適所に保持される。浮力拘束具に作用する重力は、固体に作用する浮力よりも大きくなければならない。この荷重受けデバイスには、浮かぶ固体の密度を測定するために、追加の部品、具体的には浮力拘束具が必要とされるという不利な点がある。
【0007】
この不利な点は、米国特許第7,296,466B2号に開示されている荷重受けデバイスにおいて回避されている。この参照文献に開示されているような荷重受けデバイスは、2つの端部を有する金属の筒体と、平坦な底板とを有する。密度測定のプロセスにおいて、筒体の軸線は重力の方向に向けられる。底板は、重力の方向に自由に移動できるようにして、筒体内部で捕捉される。流体中で沈む固体に対する密度測定を行うときは、固体を底板上にセットする。固体に作用する重力により、底板は下方へ押される。第1のストッパは、底板が筒体の下端部から滑り出るのを防ぐ。浮かぶ固体の密度を測定するためには、固体は底板の下方に配置される。密度測定の間に固体に作用する重力のため、底板は上向きの方向に押される。第2のストッパは、底板が筒体の上端部から滑り出るのを防ぐ。浮かぶ固体の密度を測定するため、固体に作用する浮力は底板を押し上げるのに十分な強さである必要がある。固体の密度が流体の密度に近い場合、固体を信頼性高く流体中で適所に保持することができないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的は、あらゆる程度の密度を有する固体の密度測定に信頼性高く使用することができる、荷重受けデバイスを提供することである。荷重受けデバイスは、特に、周囲流体と類似した密度を有する固体に対して有用であるべきである。
【0009】
この目的は、独立特許クレームに記載される特徴を備えた荷重受けデバイスによって満たされる。さらに有利な実施形態は従属クレームに提示される。
【0010】
密度測定の間、周囲流体中で適所に保持することができる少なくとも1つの固体を受ける役割を果たす、本発明による荷重受けデバイスは、部品に対する吊下げ接続を確立し、その部品が次いで秤の秤量セルに接続されるハンガーモジュールを含み、ハンガーモジュールに接続され、固体を受ける役割を果たす受けモジュールをさらに含む。さらに、受けモジュールは固体を受けるように設計された陥凹部を有し、受けモジュールの第1の動作位置では、流体中で沈む固体を固体に作用する重力によって陥凹部で置くことができ、受けモジュールの第2の動作位置では、流体中で浮かぶ固体を固体に作用する浮力によって陥凹部を用いて周囲流体中で適所に保持することができるように、陥凹部の向きを選択的に設定することができる。
【0011】
本発明による荷重受けデバイスは、重力または浮力のどちらかによって必然的に移動する部品がないという利点を有する。したがって、荷重受けデバイスは、固体に作用する重力または浮力がほんのわずかしかない場合にも使用することができる。周囲流体中で浮かぶ固体の密度測定に、例えば浮力拘束具などの追加の部品が必要ないことは有利でもある。
【0012】
1つの可能な実施形態では、受けモジュールは、重力の方向に垂直な回転軸を中心にして旋回することができるように枢動可能に取り付けられる。受けモジュールをこの回転軸を中心にして旋回させることによって、第1および第2の動作位置の間で選択的に反転させることができる。これは約180°の旋回を伴う。第1の動作位置では、密度測定の間、陥凹部の底部は重力の方向を指す。第2の動作位置では、密度測定の間、陥凹部の底部は浮力の方向を指す。
【0013】
回転軸は、受けモジュールを通るか、または受けモジュールのリムを通ることができる。回転軸が受けモジュールのリム上における2つの対角線上の地点を通る場合、受けモジュールは特に安定している。
【0014】
1つの可能な実施形態による荷重受けデバイスは、高さ調節要素を有し、それによって、周囲流体中への受けモジュールの浸入深さを変動させることができる。浸入深さは、理想的には、第1の動作位置では、すなわち流体中で沈む固体の場合、固体を流体中で浸漬させるのに十分な空間が受けモジュールの上方にあるように、また、第2の動作位置では、すなわち流体中で浮かぶ固体の場合、流体中で十分な空間が受けモジュールの下方にあるようにして選択される。周囲流体中で沈む固体よりも、浮かぶ固体の密度を測定する場合の浸入深さがより小さいように選択することが有利である。
【0015】
高さ調節要素は、理想的にはハンガーモジュールの一部であるが、高さ調節要素が受けモジュールの一部である代替例も可能である。
【0016】
理想的には、密度測定の間の受けモジュールに対する回転軸の鉛直位置は、第1の動作位置では、回転軸が受けモジュールの上方に位置し、第2の動作位置では、回転軸が受けモジュールの下方に位置するようなものである。この配置によって、受けモジュールは、第2の動作位置の場合よりも第1の動作位置の場合に、周囲流体中により深く下降する。これには、第2の動作位置では、すなわち浮かぶ固体の密度測定の場合、受けモジュールの下方の流体中で、固体のためのより高さのある空間が利用可能であるという利点がある。第1の動作位置では、すなわち沈む固体の密度測定の場合、受けモジュールの上方の流体中で、固体のためのより高さのある空間が利用可能である。受けモジュールからの回転軸の距離を適切に選択することによって、第1および第2の位置の両方で、周囲流体中における受けモジュールの適正な浸入深さが自動的に保証される。したがって、追加の高さ調節要素が不要になる。
【0017】
荷重受けデバイスが、受けモジュールを2つの動作位置の少なくとも一方で解放可能に係止する役割を果たす、少なくとも1つの係止要素を有する場合に有利である。これには、固体を確実に規定された位置に保持することができるという利点がある。受けモジュールを固定した場合、流体中で固体をその適所に置くことがより簡単になる。
【0018】
係止要素が動作位置の規定された設定のための手段を含む場合、これによって、ユーザが受けデバイスを必要な動作位置へと切り換えることがより単純になる。
【0019】
動作位置の規定された設定のための可能な手段は、互いに協働するインデントおよびバネから成ることができる。バネはハンガーモジュールの一部であることができ、インデントは受けモジュールの一部であることができる。しかし、バネが受けモジュールの一部であり、インデントがハンガーモジュールの一部である配置も考えられる。ハンガーモジュールならびに受けモジュールがバネを有することも可能である。さらに、受けモジュールまたはハンガーモジュールの一部とともに働くインデントが、バネに埋め込まれる設計も考えられる。
【0020】
1つの可能な実施形態のハンガーモジュールは、受けモジュールを締結するための2つのロッドを有し、受けモジュールは少なくとも1つのインデントを有する。この配置では、ロッドの少なくとも一方は曲げられて、受けモジュールのインデントとともに働くバネになる。しかし、ロッドが両方とも曲げられてバネになると、バネそれぞれに対して協働するインデントが受けモジュールにある場合、係合は特に安定する。
【0021】
受けモジュールは、切欠きを備えた舌部を含むことができ、その切欠きは係止要素のインデントを形成する。
【0022】
代替例として、受けモジュールは、2つの外曲げ区画(bent-out sections)を備えた舌部を有することができ、係止要素のインデントは外曲げ区画によって形成される。この配置では、外曲げ区画は外側輪郭縁部と折曲げ線縁部とによって境界が定められる。折曲げ線縁部はインデントに隣接する。
【0023】
理想的には、係止要素は自動調心性である。これは、互いに向かう折曲げ線縁部と滑らかに湾曲した外側輪郭縁部とによって実現することができる。輪郭縁部はそれぞれ、丸み付けされた輪郭に沿ってロッドを滑動させてインデント内へと案内できるように形作られる。その結果、ロッド自体を明確に規定された位置に定置することができる。
【0024】
代替実施形態では、受けモジュールは可逆的に変形可能な材料を含む。受けモジュールの変形性は、目標の力を加えることによって、受けモジュールが第1および第2の動作位置の間で可逆的に嵌まることができるようなものである。変形可能な材料は、クリッカー玩具(clicker toy)と似たように、2つの動作位置間での切換えを可能にするように形作られた弾性バネ材料である。この実施形態には、受けモジュールとハンガーモジュールとの間の移動可能な接続を必要としないという利点がある。受けモジュールおよびハンガーモジュールは、互いに堅く接続することができる。この実施形態では、第1および第2の動作位置の間で切り換えても、受けモジュールの浸入深さは自動的に変わらない。したがって、通常は、付加的な高さ調節要素が必要である。
【0025】
誤差を引き起こす恐れがあるエアポケットの形成を防ぐため、受けモジュールは、理想的には、空気を逃がすことができる穿孔を有する。
【0026】
周囲流体は通常は液体であり、ほとんどの場合、蒸留水またはエタノールである。
【0027】
以下、図面に概略的に示される実施形態を通して、本発明による荷重受けデバイスについて記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1a)は、周囲流体中で沈む固体の場合の最新技術による荷重受けデバイスを示す正面図である。図1b)は、その側面図である。図1c)は、その斜視図である。
【図2】図2a)は、周囲流体中で浮かぶ固体の場合の最新技術による荷重受けデバイスを示す正面図である。図2b)は、その側面図である。図2c)は、その斜視図である。
【図3】図3a)は、回転可能に支持された受けモジュールが第1の動作位置にある、本発明の荷重受けデバイスの第1の実施形態を示す正面図である。図3b)は、その側面図である。
【図4】図4a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第1の実施形態の詳細を示す斜視図である。図4b)は、第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第1の実施形態の詳細を示す斜視図である。
【図5】図5a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第2の実施形態を示す正面図である。図5b)は、その側面図である。
【図6】図6a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第2の実施形態の詳細を示す斜視図である。図6b)は、第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第2の実施形態の詳細を示す斜視図である。
【図7】図7a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第3の実施形態を示す正面図である。図7b)は、その側面図である。
【図8】図8a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第3の実施形態を示す斜視図である。図8b)は、第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第3の実施形態を示す斜視図である。
【図9】図9a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第4の実施形態を示す正面図である。図9b)は、その側面図である。
【図10】図10a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第4の実施形態を示す斜視図である。図10b)は、第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第4の実施形態を示す斜視図である。
【図11】図11a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第5の実施形態を示す正面図である。図11b)は、その側面図である。
【図12】図12a)は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第5の実施形態を示す斜視図である。図12b)は、第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイスの第5の実施形態を示す斜視図である。
【図13】周囲流体中で沈む固体の密度測定のための、第1の動作位置にある本発明による荷重受けデバイスの第1の実施形態を備えた秤を示す側面図である。
【図14】周囲流体中で浮かぶ固体の密度測定のための、第2の動作位置にある本発明による荷重受けデバイスの第1の実施形態を備えた秤を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、周囲流体中で沈む固体の場合の、最新技術の荷重受けデバイス10の、a)正面図、b)側面図、およびc)斜視図を表す。荷重受けデバイス10は受けモジュール30を含む。受けモジュール30は、本質的に、陥凹部31を有する円形の表面から成る。受けモジュール30は円形のリムを有する。陥凹部31の底部は重力の方向を指す。陥凹部31は、周囲流体中で沈むが、密度測定の間、受けモジュール30によって適所に保持される、少なくとも1つの固体を受ける役割を果たす。固体の密度が周囲流体の密度よりも高い場合、固体は周囲流体中で沈む。受けモジュール30は、部品に対する吊下げ接続を確立するハンガーモジュール20に接続され、その部品は次いで、秤の秤量セルに接続される。ハンガーモジュール20は2つのロッド21を含む。各ロッド21の一端は、受けモジュール30のリムの一点に堅く接続される。ハンガーモジュール20と受けモジュール30との間の2つの接続点は、受けモジュール30の円形のリム上で互いに対角線反対側に配置される。2つのロッド21は等しい長さのものであり、ロッド21の長さは、密度測定において、受けモジュール30上にある固体が液体に完全に浸漬するように選択される。受けモジュール30に接続されるのと反対側の端部では、ロッド21はともにスリーブ25によって保持される。ロッド21ならびにスリーブ25は、密度測定の間、鉛直に向けられる。スリーブ25は、液体外の測定用のさらなる受けモジュール50に接続される。液体外の測定用の受けモジュール50は、本質的に、少なくとも1つの固体を受ける役割を果たすボウルである。受けモジュール50は、秤の秤量セルに接続された、水平に向いたアームを有するスタンドから吊り下げることができる。ボウルの下側はスタンドのアーム上に定置することができる。
【0030】
図2は、周囲流体中で浮かぶ固体の場合の、最新技術によるさらなる荷重受けデバイス10の、a)正面図、b)側面図、およびc)斜視図を表す。固体を沈めるための図1の荷重受けデバイス10は、図2の荷重受けデバイス10と本質的に同じ特徴を有する。違いは、受けモジュール30の陥凹部31の向き、およびハンガーモジュール20のロッド21の長さである。陥凹部31は浮力の方向に向けられる。この配置では、周囲流体中で浮かぶ固体を受けモジュール30の下に配置することができる。固体に作用する浮力の結果、固体は陥凹部31内へと押し込まれ、それによって周囲流体中で適所に保持される。周囲流体中に固体を収容するのに十分な空間を持たせるため、ロッド21は、沈む固体のための荷重受けデバイスの場合よりも短い必要がある。
【0031】
図3は、回転可能に支持された受けモジュール300が第1の動作位置にある、本発明の荷重受けデバイス100の第1の実施形態の、a)正面図およびb)側面図を示す。この荷重受けデバイス100は、本質的に、図1および2の最新技術の荷重受けデバイス10と同じ構成要素を有する。荷重受けデバイス100と最新技術の荷重受けデバイス10との間の顕著な違いは、ハンガーモジュール200と荷重受けモジュール300との間の接続にある。荷重受けモジュール300は、回転軸240を中心にして旋回する能力を伴って枢動可能に支持される。両方の動作位置において、密度測定の間、回転軸240は水平に向けられる。第1の動作位置では、すなわち周囲流体中で沈む固体900の密度測定の場合、回転軸240は受けモジュール300の上方に位置する。2つの舌部340が、2つの対角線上反対側の地点で受けモジュール300のリムに取り付けられる。舌部340は受けモジュール300に堅く接続される。密度測定の間、2つの舌部340はほぼ鉛直の向きを有する。舌部340は細長い形状のものであり、2つの端部を有する。各舌部340の第1の端部は受けモジュール300に接続される。舌部340は、舌部340の第2の端部が水平に方向付けられるように形作られる。第2の端部の縁部は、ハンガーモジュール200のロッド210の一方に係合する役割を果たすインデント421を有する。インデント421は、受けモジュールを第1または第2の動作位置で係止できるように配置される。各舌部340はさらに、ハンガーモジュール200のロッド210の一方の端部を受け入れる役割を果たす穴の形態の軸受330を含む。軸受330がロッド210の端部を受け入れられるようにするため、受けモジュール300に接続するロッド210の端部は、その動作位置では水平に方向付けられ、軸受330に挿入することができるように、曲げられなければならない。ロッド210の水平に方向付けられた端部は、受けモジュール300が回転可能に支持される回転軸240を規定する。
【0032】
ハンガーモジュール200のロッド210はそれぞれ曲げられてバネ410になるので、各ロッド210に発生するバネ張力によって、ロッド210は対応するインデント421に押し込まれる。これは、受けモジュール300を第1および第2の動作位置のどちらかで固定する、追加の手段としての役割を果たす。
【0033】
密度測定の間に、吸蔵された気泡(occluded air bubbles)が何かの加減で取り出された場合、測定結果の誤差を引き起こすことになる。したがって、受けモジュール300は、密度測定の間の気泡の吸蔵を中和する穿孔320を有する。
【0034】
図4は、それぞれ第1および第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第1の実施形態の詳細の等角図を示す。回転軸240を形成するハンガーモジュール200のピン230は、受けモジュール300が第1の動作位置にあるとき、その上方に位置する。受けモジュール300は、回転軸240を中心にして第1の動作位置から180°反転されると、回転軸240が受けモジュール300の下方に位置する第2の動作位置を占めるようになる。
【0035】
上述した回転軸240の配置によって、周囲流体1000中における受けモジュール300の浸入深さは自動的に変わる。固体900が受けモジュール300上に置かれる第1の動作位置では、受けモジュール300は、固体900が下方から受けモジュール300に押し付けられる第2の動作位置よりも深く浸漬される。浸入深さが可変である結果、第1の動作位置では、受けモジュール300の上部に固体900を受け入れ、また第2の動作位置では、受けモジュール300の下方に固体900を受け入れるのに利用可能な十分な空間がある。
【0036】
図5は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第2の実施形態の正面図および側面図を表す。図6は、それぞれ第1および第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第2の実施形態の詳細の等角図を示す。
【0037】
第2の実施形態は、本質的に、舌部340の設計において、図3および図4の第1の実施形態とは異なる。舌部340は、密度測定の間、ほぼ鉛直の向きを有する。各舌部の第1の端部は受けモジュール300に接続される。第2の端部は、ハンガーモジュール200のロッド210の一方を受け入れる役割を果たすインデントを有する。インデントは、舌部340の第1および第2の外曲げ区画422によって形成される。外曲げ区画422は、第1および第2の折曲げ線縁部423に沿って舌部340を折り曲げることによって作り出される。折曲げ線縁部は、舌部340の第2の端部に向かってV字形で互いに対して角度が付けられる。しかし、2つの折曲げ線縁部は交わらず、ハンガーモジュール200のロッド210を定置するのに十分な空間が間に残される。第1および第2の外曲げ区画422は両方とも丸み付けられた外側輪郭424を有する。一方の動作位置から他方の動作位置へと切り換えるとき、ハンガーモジュール200のロッド210は丸み付けられた輪郭424に沿って滑動することができる。第1の実施形態と全く同様に、ロッドは曲げられてバネ410になるので、ロッド210は張力を受け、舌部340に押し付けられる。位置を変える場合、ハンガーモジュール200のロッド210は、ロッド210がインデント内に定置されるまで、丸み付けられた輪郭424に沿って案内される。ロッド210はバネ410によって張力を受けているので、ロッド210はインデントに嵌まり込む。
【0038】
第2の実施形態の舌部340は、第1の実施形態の舌部340に比べてより大きな表面積を有する。このより大きな表面は、誤差をもたらす吸蔵された気泡のより高いリスクを伴う。この問題は舌部340の穿孔320によって緩和される。
【0039】
図7は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第3の実施形態の正面図および側面図を表す。図8は、それぞれ第1および第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第3の実施形態の等角図を示す。第3の実施形態は、回転軸240が、第3の実施形態では受けモジュール300のリムと同じ水平面内にあるという点で、第1および第2の実施形態とは異なる。したがって、第1および第2の実施形態とは対照的に、第3の実施形態の受けモジュール300の浸入深さは動作位置とともに変わらない。これは、第1および第2の動作位置に対して同じ浸入深さが維持されることを意味する。しかし、既に上述したように、第1の動作位置にある受けモジュール300が、第2の動作位置の場合よりも深く周囲流体1000に浸漬されることが有利である。
【0040】
したがって、ハンガーモジュール200は高さ調節要素220を有し、それによって、周囲流体1000中における受けモジュール300の浸入深さを調整することができる。高さ調節要素220の一部として、ハンガーモジュール200の2つのロッド210は動作位置において鉛直に向けられるスリーブ250内で互いに接合される。スリーブ250は、スライドブッシュ(slide bushing)222内部に定置されるので、その動作位置にあるスリーブ250をブッシュ222内で鉛直方向上下に滑動させることができる。このようにして、流体1000中における受けモジュール300の浸入深さを調整することができる。スリーブ250は、固体の乾重量を測定する役割を果たす受けモジュール500に接続される。係止ねじ223を用いて、スリーブ250をスライドブッシュ222内の適切な高さで固定することができる。
【0041】
さらに、ここに示されるような第3の実施形態は、受けモジュール300を第1または第2の動作位置で固定する係止要素を含まない。しかし、固体900に作用する浮力または重力のどちらかによって、受けモジュール300は、それでもやはり、適正なそれぞれの動作位置で適所に保持されている。
【0042】
図9は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第4の実施形態の正面図および側面図を示す。図10は、それぞれ第1および第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第4の実施形態の等角図を示す。この実施形態におけるハンガーモジュール200および受けモジュール300は、互いに枢動可能に接続されていない。陥凹部310の向きの変更は、受けモジュール300の可逆的に変形可能な材料によって達成される。受けモジュール300に目標の力を加えることによって、受けモジュール300を第1および第2の動作位置の間で切り換えることができる。2つの位置間での切換え効果はクリッカー玩具と似ている。この実施形態では、周囲流体1000中の受けモジュール300の浸入深さは、高さ調節要素220によって調整される。
【0043】
図11は、第1の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第5の実施形態の正面図および側面図を示す。図12は、それぞれ第1および第2の動作位置にある、本発明による荷重受けデバイス100の第5の実施形態の等角図を示す。この第5の実施形態は、本質的に、舌部340の設計によって、図3および4に示される第1の実施形態と区別される。舌部340は2つのインデント421を有する。第1のインデントは、ハンガーモジュール200のロッド210に第1の動作位置で係合する役割を果たす。第2のインデントは、ハンガーモジュール200のロッドに第2の動作位置で係合する役割を果たす。回転軸240は第1および第2のインデントの間に配置される。理想的には、第1および第2のインデントは回転軸240から等距離である。したがって、第1および第2の動作位置では、ロッド210上の同じ地点がバネ力によって対応するインデントに押し込まれる。結果として、2つの動作位置のどちらでも、ロッド210は、インデント421の一方または他方を同じバネ力で押し付ける。この設計は、第1の実施形態を上回る次の利点を有する。第1および第2の動作位置において、第1の実施形態の1つのインデント421は、ロッド210の別個の部分とそれぞれ協働する。したがって、1つのインデント421に作用するバネ力の量は2つの動作位置で異なる。より具体的には、インデント421に作用するバネ力は、第1の動作位置よりも第2の動作位置の場合の方が小さく、したがって、受けモジュール300は、第2の動作位置では、第1の動作位置ほどしっかりと固定されない。
【0044】
図13は、周囲流体中で沈む固体900の密度測定のための、第1の動作位置にある本発明による荷重受けデバイス100の第1の実施形態を備えた秤600の側面図を表す。流体1000を保持する容器650が秤600上に配置されているが、秤量セルに機能的に接続されてはいない。流体1000は、好ましくは、例えば蒸留水またはエタノールなどの液体である。秤600の秤量セルには、ほぼ水平なカンチレバーアーム710を備えたスタンド700が接続されている。カンチレバーアーム710は、秤600および容器650の上方に配置される。スタンド700のアーム710は、荷重受けデバイスをそこに取り付けることができるように設計される。理想的には、荷重受けデバイス100のハンガーモジュール200をカンチレバーアーム710から吊り下げることができる。荷重受けデバイス100は、周囲流体1000中で沈むであろう固体900を置く陥凹部310を備えた受けモジュール300を有する。このようにして、固体900は流体1000中で適所に保持される。
【0045】
図14は、周囲流体中で浮かぶ固体900の密度測定のための、第2の動作位置にある、図11に示されるような本発明による荷重受けデバイス100を備えた秤600の側面図を表す。固体900の密度は周囲流体1000の密度よりも低い。固体900に作用する浮力の結果、固体は受けモジュール300の陥凹部310内に押し込まれる。このようにして、固体900は流体1000中で適所に保持される。
【0046】
浮かぶ固体900に作用する浮力によって荷重受けデバイス1000が押し上げられるのを防ぐため、追加の重り800が乾重量受けモジュール500に入れられる。
【0047】
特定の実施形態を提示することによって本発明について記載してきたが、例えば、個々の例示的実施形態の特徴を互いに組み合わせることによって、かつ/または異なる例示的実施形態の間で機能単位を交換することによって、本発明の知識から多数のさらなる種々の解決策を作り出すのが可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0048】
10、100 荷重受けデバイス
20、200 ハンガーモジュール
21、210 ロッド
220 高さ調節要素
222 ブッシュ
223 係止ねじ
230 ピン
240 回転軸
25、250 スリーブ
30、300 液体内での秤量用の受けモジュール
31、310 陥凹部
320 穿孔
330 軸受
340 舌部
400 係止要素
410 バネ
421 インデント、切欠き
422 外曲げ区画
423 折曲げ線縁部
424 丸み付けられた輪郭
50、500 液体外での秤量用の受けモジュール
600 秤
650 容器
700 スタンド
710 カンチレバーアーム
800 重り
900 固体
1000 周囲流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度測定の間、周囲流体(1000)中で適所に保持することができる少なくとも1つの固体(900)を受ける役割を果たす荷重受けデバイス(100)であって、部品(700)に対する吊下げ接続を確立するハンガーモジュール(200)であって、該部品(700)が次いで秤(600)の秤量セルに接続される、ハンガーモジュール(200)を備え、前記ハンガーモジュール(200)に接続されるとともに前記固体(900)を受ける役割を果たす受けモジュール(300)をさらに備える、荷重受けデバイス(100)において、前記受けモジュール(300)が前記固体(900)を受けるように設計された陥凹部(310)を有し、第1の動作位置では、前記流体(1000)中で沈む固体(900)を前記固体(900)に作用する重力によって前記陥凹部(310)に置くことができ、前記受けモジュールの第2の動作位置では、前記流体(1000)中で浮かぶ固体(900)を前記固体(900)に作用する浮力によって前記陥凹部(310)を用いて前記周囲流体(1000)中で適所に保持することができるように、前記陥凹部(310)の向きを選択的に設定することができることを特徴とする、荷重受けデバイス(100)。
【請求項2】
前記受けモジュール(300)が枢動可能に支持され、重力の方向に垂直な回転軸(240)を中心にして旋回することができ、前記回転軸(240)を中心にして旋回させることによって、前記受けモジュール(300)を前記第1および第2の動作位置の間で選択的に反転させることができることを特徴とする、請求項1に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項3】
前記回転軸(240)が前記受けモジュール(300)を通ることを特徴とする、請求項2に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項4】
前記周囲流体(1000)中における前記受けモジュール(300)の浸入深さを高さ調節要素(220)によって変動させることができることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項5】
前記高さ調節要素(220)が前記ハンガーモジュール(200)の一部であることを特徴とする、請求項4に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項6】
前記回転軸(240)が前記受けモジュール(300)から鉛直距離に配置され、前記鉛直距離が、前記第1の動作位置では前記回転軸(240)が前記受けモジュール(300)の上方に位置し、前記第2の動作位置では前記回転軸(240)が前記受けモジュール(300)の下方に位置するような距離であることを特徴とする、請求項2から5に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項7】
前記荷重受けデバイス(100)が少なくとも1つの係止要素(400)を備え、それによって前記受けモジュール(300)を前記2つの動作位置の少なくとも一方で解放可能に係止することができることを特徴とする、請求項2から6の一項に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項8】
前記係止要素(400)が、少なくとも1つのインデント(421、422)と協働するバネ(410)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項9】
前記バネ(410)が前記ハンガーモジュール(200)の一部であり、前記少なくとも1つのインデント(421、422)が前記受けモジュール(300)の一部であることを特徴とする、請求項8に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項10】
前記ハンガーモジュール(200)が前記受けモジュール(300)を取り付けることができる2つのロッド(210)を備え、前記ロッド(210)の少なくとも一方が曲げられて、前記受けモジュールの少なくとも1つのインデント(421、422)と協働するバネ(410)にされることを特徴とする、請求項9に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項11】
前記受けモジュール(300)が切欠き(421)を備えた舌部(340)を備え、前記切欠き(421)が前記係止要素(400)のインデントを形成することを特徴とする、請求項9または10の一項に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項12】
前記受けモジュール(300)が、前記係止要素(400)のインデントを形成する外曲げ区画(422)を備えた舌部(340)を備えることを特徴とする、請求項9、10、または11に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項13】
前記受けモジュール(300)が可逆的に変形可能な材料を含み、その結果として、目標の力を加えることによって前記受けモジュール(300)を前記第1および第2の動作位置の間で可逆的に切り換えることができることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項14】
前記受けモジュール(300)がエアポケットの蓄積を防ぐ穿孔(320)を備えることを特徴とする、請求項1から13の一項に記載の荷重受けデバイス(100)。
【請求項15】
請求項1から14の一項に記載の荷重受けデバイス(100)を備えた秤(600)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−169897(P2011−169897A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−28565(P2011−28565)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland