説明

密着イメージセンサー

【課題】小型化に適し、生産性の良い防水構造を備えた圧力調整機構付き密着イメージセンサーを得る。
【解決手段】第1の防水蓋2と第2の防水蓋3はU字形状の防水パッキン9を用いて本体ケース1の側壁及び底部との防水性を保ち、本体ケース1の搬送面及び第1の防水蓋2と第2の防水蓋3の搬送面側の段差部2dに透過体7を接着すると共に、防水パッキン9の両端を透過体7に接着して、搬送面の防水性を保つ構成とし、第1の防水蓋2には、圧力変化を抑制する貫通穴2aと防水通気フィルター10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ、コピー機、スキャナ、検査機器などの画像読み取りや画像識別に用い、防水構造を備えたイメージセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
密着イメージセンサーに防水、防塵機能を設ける場合、密閉構造とする必要がある。密閉構造とした場合、密着イメージセンサーの筐体内部には照明部品や基板に実装された半導体部品などの発熱部品があるため、外気温との温度差から生じる圧力変化の影響による筐体内部に設けられた部品の損傷の恐れがある。特開2001−237568号公報(特許文献1)に記載の防水通気筐体では、カバーと筐体との間にOリングを挟んでカバーを筐体に固定して防水構造とし、筐体に通気穴を設けこの通気穴に防水通気膜を取り付けることにより、防水性を維持しながら筐体内部の圧力変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水通気筐体においては、カバー及び筐体の全周にOリングを挟事するための肉厚が必要であり、筐体の小型化には適していない。
【0005】
Oリングは、ゴムなどの弾性体であり、輪形状であるためカバーや筐体の所定の位置への装着が困難である課題がある。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、小型化に適し、生産性の良い防水構造を備えた圧力調整機構付き密着イメージセンサーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る密着イメージセンサーは、搬送される被照射体に光を照射する光源、被照射体で反射した反射光を収束するレンズ体、このレンズ体で収束された光を受光する受光部、この受光部を載置するセンサ基板が収納され、底部、対向して配置された一組の側壁、開口部を有し対向して配置された一組の側面部、前記底部に対向し開口部を有する上面を備えた筐体と、一組の前記側面部に取り付けられ前記上面側に段差部を有する一組の防水蓋と、少なくとも一方の前記防水蓋に設けられた貫通穴と、前記貫通穴に取り付けられた防水通気フィルターと、前記上面と一組の前記防水蓋の段差部とに接着され、前記光源からの光の照射経路に介在し、光を透過する平板状の透過体と、前記防水蓋と前記側面部とに挟持され、前記段差部の一端側から他端側に前記側面部の開口部の外側を周回して設けられ、一方の端と他方の端とが前記段差部に接着された前記透過体に接着されたU字形状の弾性体とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、前記防水蓋は、搬送面側に設けられ前記透過体の副走査方向の長さを有する段差部、この段差部の一端側から多端側に向けて前記開口部に対面する面の外側を周回して設けられたU字形状の弾性体、前記開口部に対面する面に設けられた貫通穴、この貫通穴に取り付けられた防水通気フィルターを有し、前記弾性体が前記平面部との間に挟持され、前記段差部に前記透過体の主走査方向の端部が接着されているので、透過体の接着部には弾性体が無いので主走査方向の寸法が小型化され、弾性体はU字形状であるため、筐体や防水蓋の所定の位置への装着が容易となり、さらには、防水通気フィルターは防水蓋に装着されているので、防水通気フィルターの取り付けや交換作業が容易となり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1における第1の防水蓋側から見た密着イメージセンサーの構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における第2の防水蓋側から見た密着イメージセンサーの構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1における底部側から見た密着イメージセンサーの構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における第1の防水蓋の本体ケースへの取り付け構造を示す側面図である。
【図5】この発明の実施の形態2における密着イメージセンサーの防水通気フィルターの取り付け部を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3における密着イメージセンサーの防水通気フィルターの取り付け部を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4における密着イメージセンサーの防水通気フィルターの取り付け部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1について、図を参照して説明する。図1は、この発明の実施の形態1における第1の防水蓋側から見た密着イメージセンサーの構成図であり、図2は、この発明の実施の形態1における第2の防水蓋側から見た密着イメージセンサーの構成図である。図1及び図2において、1は密着イメージセンサーの本体ケース(筐体)であり1aは側壁、1bは底蓋、1cは開口部、1dは開口部1cの平面部である。2は第1の防水蓋、3は第2の防水蓋、4は第1及び第2の防水蓋を本体ケース1に固定するねじである。
【0011】
5は光源、6は光源5から出射された光をライン状に照射する導光体、7は導光体6から照射された光を被照射体へと透過するガラスなどの透過体、8は被照射体で反射され、透過体7を介して入射した光を集束するレンズ体である。
【0012】
9はU字形状を有する防水パッキン(弾性体)、10は防水通気フィルター、11は第2の防水蓋3に取り付けられた電源や信号用の防水電気コネクタである。
【0013】
図3は、この発明の実施の形態1における底部側から見た密着イメージセンサーの構成図である。図3において、12は輪形状の防水パッキン、1eは防水パッキン12を入れる溝部、13は底蓋1bを本体ケース1に固定するねじである。
【0014】
本体ケース1は、密着イメージセンサーの構成部品を内部に保持する形状と、部品をケース内に収納する大きさをもっている。また、本体ケース1の側面部と底部には開口穴を設けており、組立性、保守性を考慮したアクセス用の窓になっており、軽量化の効果もある。
【0015】
底部の開口穴の周囲の平面部には、防水パッキン12を入れる溝部1eを設けている。防水パッキン12を溝部1eにはめ込み、底蓋1bを取り付けて防水パッキン12を挟持した上で、ねじ13で底蓋1bを本体ケース1に固定することにより、防水パッキン12が溝部1eの溝内で押し潰され密閉性が保たれる。
【0016】
本体ケース1、第1の防水蓋2、第2の防水蓋3及び底蓋1bは、金属材料を使用しており、筐体内部に組み込まれる基板や光源などの照明部品の発熱に対して放熱性をもたせている。
【0017】
図4は、この発明の実施の形態1における第1の防水蓋の本体ケースへの取り付け構造を示す側面図である。図4において、15はイメージセンサー部であり、光源5、導光体6、レンズ体7、センサIC(図示しない)、センサICを載置するセンサ基板(図示しない)から構成されている。
【0018】
第1の防水蓋2には、本体ケース1への取り付け面側に、防水パッキン9をはめ込む溝部2cと、本体ケース1の底部の反対側に位置する搬送面(上面)に相当する側に段差部2dを設けている。溝部2cは、段差部2dの一端側から他端側へ向けて、本体ケース1の開口部1cの外側を周回するように設けられている。
【0019】
防水パッキン9は、防水・防塵機能を満足するためのもので、本体ケース1と第1の防水蓋2との取り付け部から、水が浸入しないように設けられた弾性体である。本体ケース1の平面部1dと第1の防水蓋2に設けられた溝部2cとの間に防水パッキン9を挿入し、ねじ4で第1の防水蓋2を本体ケース1に固定することで防水パッキン9が溝部2cの溝内で押し潰され密閉性が保たれる。防水パッキン9は、溝部2cが段差部2dと交差する一端側から段差部2dと交差する他端側までの長さを有している。
【0020】
第1の防水蓋2には、通気用の貫通穴2aが設けられている。また、本体ケース1への取り付け面側に貫通穴2aの周囲には凹み部2bを設けている。凹み部2bの平面は、防水通気フィルター10の貼り付け面となっている。この凹み部2bの外形は、防水通気フィルター10の外形寸法より少し大きい寸法となっており、防水通気フィルター10を貼り付ける際に貼り付け用の位置決めにもなっており作業性を良くしている。防水用通気フィルター10は、四弗化エチレン樹脂多孔質膜と貼り付け用の接着部を有する膜であり、例えば、日東電工株式会社製の商品名『TEMISH』が使用される。
【0021】
凹み部2bは、貫通穴2aの中心軸と同軸となるように加工されており、貫通穴2aに対して偏った貼り付けがなされるのを防止するのと、貼り付け面積を均等化して安定した接着力が確保できる形状となっている。また、貫通穴2aは、筐体内の光源や電子部品などの発熱部のエリアに対して、その側面となるような位置関係に配置されている。
【0022】
第2の防水蓋3は、貫通穴や防水通気フィルターを備えていなく、防水電気コネクタ11が装着されていることを除けば、本体ケース1への取り付け方法は第1の防水蓋2の取り付け方法と同様である。
【0023】
透過体7は、本体ケース1の底部の反対側に位置する搬送面(上面)に接着剤にて接着されると共に、透過体7の両端部は一方の端部が第1の防水蓋2の搬送面側に設けた段差部2dに接着剤にて接着され、他方の端部は第1の防水蓋2と同様に第2の防水蓋3の搬送面側に設けた段差部(図示しない)に接着材にて接着され、密閉性を保っている。また、透過体7を段差部2dに接着する際に、防水パッキン9の両端とも接着され、透過体7と防水パッキン9との間に隙間が発生しないようにしている。
【0024】
上述のように、第1の防水蓋2と第2の防水蓋3はU字形状の防水パッキン9を用いて本体ケース1の側壁及び底部との防水性を保ち、本体ケース1の搬送面及び第1の防水蓋2と第2の防水蓋3の搬送面側の段差部に透過体7を接着して搬送面の防水性を保つ構成とすることにより、防水パッキン9が輪形状の防水パッキンを用いていないので、本体ケース1の搬送面側に防水パッキンを挟持する枠などの構造体を設ける必要がなく、密着イメージセンサーが小型化される。
【0025】
さらに、この発明の実施の形態1における密着イメージセンサーは、防水通気フィルター10が貼付された貫通穴2aを介して通気されるので、防水性を保ちつつ密着イメージセンサー内部の圧力変化が抑制される。
【0026】
この発明の実施の形態1においては、貫通穴2a、凹み部2b及び防水通気フィルター10は、第1の防水蓋2に設けたが、第2の防水蓋3に防水電気コネクタ11と干渉しないように設けても良く、さらには、第1の防水蓋2及び第2の防水蓋3の両方に設けても良い。
【0027】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2について図面を参照して説明する。図5は、この発明の実施の形態2における密着イメージセンサーの防水通気フィルターの取り付け部を示す断面図である。図5において、図4と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
第1の防水蓋2は、通気用の貫通穴2aが設けられ、本体ケース1への取り付け面とは反対側となる外側の面に凹み部2bを設けている。この凹み部2bの外形は、防水通気フィルター10の外形寸法より少し大きい寸法となっており、防水通気フィルター10を貼り付ける際の貼り付け用の位置決めになっている。凹み部2bの平面は、防水通気フィルター10の貼り付け面となっており、凹み部2bは、貫通穴2aの中心軸と同軸となるように加工されている。
【0029】
この発明の実施の実施形態1においては、本体ケース1側の面に防水通気フィルター10を貼り付けていたが、外側に貼り付けることで、防水通気フィルター10の交換の保守性が改善される。また、凹み部2bを設けていることで直接防水通気フィルター10に干渉し難い構造であるため、外部要因での剥がれが生じ難くなっている。さらに、気圧差で密着イメージセンサー内部に負圧が生じた場合、フィルターが内部に引き込まれる力に対しても接着力が確保される。
【0030】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3について図面を参照して説明する。図6は、この発明の実施の形態3における密着イメージセンサーの防水通気フィルターの取り付け部を示す断面図である。図6において、図4と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図6において、8は樹脂接着剤である。
【0031】
第1の防水蓋2、貫通穴2a、凹み部2b、溝部2cは、この発明の実施の形態1と同様に構成をし、防水通気フィルター10を貼り付けている。貼り付け後、防水通気フィルター10の外周に第1の防水蓋2に架かるように樹脂接着剤14を塗布し硬化させる。これにより、防水通気フィルター10の固定力がさらに向上される。また、樹脂接着剤14は凹み部2bの輪郭に沿って塗布するため作業性も良い。
【0032】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4について図面を参照して説明する。図7は、この発明の実施の形態4における密着イメージセンサーの防水通気フィルターの取り付け部を示す断面図である。図7において、図4と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。図6において、110は防水通気フィルターである。
【0033】
この発明の実施の形態1においては、防水通気フィルター10は膜形状としたが、この発明の実施の形態4では、防水通気フィルター110は凸型形状とし、貫通穴2aを埋設している。このように構成することにより、貫通穴2aに水滴や異物が溜まることが防止される。
【符号の説明】
【0034】
1 本体ケース(筐体)、 1a 側壁、 1b 底蓋
1c 開口部、 1d 平面部、 1e 溝部
2 第1の防水蓋、 2a 貫通穴、 2b 凹み部
2c 溝部、 2d 段差部
3 第2の防水蓋
4 ねじ
5 光源
6 導光体
7 透過体
8 レンズ体
9 防水パッキン
10 防水通気フィルター
11 防水電気コネクタ
12 防水パッキン
13 ねじ
14 樹脂接着剤
15 イメージセンサー部
110 防水通気フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被照射体に光を照射する光源、被照射体で反射した反射光を収束するレンズ体、このレンズ体で収束された光を受光する受光部、この受光部を載置するセンサ基板が収納され、底部、対向して配置された一組の側壁、開口部を有し対向して配置された一組の側面部、前記底部に対向し開口部を有する上面を備えた筐体と、一組の前記側面部に取り付けられ前記上面側に段差部を有する一組の防水蓋と、少なくとも一方の前記防水蓋に設けられた貫通穴と、前記貫通穴に取り付けられた防水通気フィルターと、前記上面と一組の前記防水蓋の段差部とに接着され、前記光源からの光の照射経路に介在し、光を透過する平板状の透過体と、前記防水蓋と前記側面部とに挟持され、前記段差部の一端側から他端側に前記側面部の開口部の外側を周回して設けられ、一方の端と他方の端とが前記段差部に接着された前記透過体に接着されたU字形状の弾性体とを備えた密着イメージセンサー。
【請求項2】
前記防水通気フィルターは、前記貫通穴の前記側面部の開口部に対面する面側に設けた凹み部に取り付けられた請求項1に記載の密着イメージセンサー。
【請求項3】
前記防水通気フィルターは、前記貫通穴の前記側面部の開口部に対面する面と反対側の面側に設けた凹み部に取り付けられた請求項1に記載の密着イメージセンサー。
【請求項4】
前記防水通気フィルターは、前記貫通穴を埋設する凸型形状を有する請求項1に記載の密着イメージセンサー。
【請求項5】
前記防水通気フィルターの周囲と前記防水蓋とを接着剤で固定した構造を有する請求項1に記載の密着イメージセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−156577(P2012−156577A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11109(P2011−11109)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】