説明

密着度測定器

【課題】本体の位置決めに人手を要さず、最小作業員をもって密着度を測定する密着度測定器を提供する。
【解決手段】密着度測定器は本体1と、本体1と連通して本体1から与えられる高圧作動油によってトングレールを開口するプッシャー4と、本体1を下側より支持する第1マウント10aおよび第2マウント10bとを備える。第1マウント10aおよび第2マウント10bはその下面に本体1を位置決め固定するマグネット11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分岐器のトングレールの密着度を測定する際に一瞬にして本体を位置決めし、最小人員をもって密着度を測定するようにした密着度測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道用分岐器では基本レールとトングレールとの密着調整状態を密着度測定器によって測定する。密着度とはトングレール先端に力を与えて開口させるとき、所定量(1mmまたは0.5mm)だけ開口するのに要する荷重値のことであり、この値を見出すのに上記の密着度測定器が相応しい手段として多用されている。通常、密着度測定器は作動油により高圧を発生する比較的大形の本体と、基本レールとトングレールとの間に開口を生じさせるべく力を与える、狭隘な空間に装着できる小形の加圧手段とを備え、これらの装置の間が油圧系統で結ばれる。
【0003】
ところで、分岐器の点検保守業務については、通常、列車の通行が止まる夜間等に実施される。運行時間外に行われるこうした保守業務に携わる要員は近年確保することが難しくなっており、より少ない要員で目的の業務をなし遂げることが求められ、また、夜間に実施する業務であるので、使用する測定器等は可能な限り、扱い易く、事故などを起こし難い軽便なものが求められる。
【0004】
密着度測定器もこうした要望に応える、より少ない要員による取り扱いが可能な軽便な手段が知られている。たとえばインターネット上にハンディスケールと称する軽便な手段が紹介されている(林総事(株)製品案内「ハンディスケール」参照)。この密着度測定器は圧油を発生する幾分小形の本体と、測定時に基本レールとトングレールとの間に装着されて開口を生じさせる小形の加圧手段とを備える。
【非特許文献1】林総事株式会社“ホームページ”、[online](平成17年1月31日検索)インターネット〈URL:http://www.hayashisoji.com/product/handy.html〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、密着度測定器による実際の測定ではポンプとして働く本体を保持もしくは固定してレバー操作を行う作業員以外に基本レールとトングレールとの間に生じた開口をゲージを使用して測る作業員を必要とする。すなわち、この密着度の測定をなし遂げるには2人の作業員が必要である。
【0006】
仮に、最小要員で測定をしようとすれば、たとえば本体を大形のクリップなどで基本レールに固定して片方の手が自由になった作業員が他方の手でレバー操作を行いながら、基本レールとトングレールとの間に生じた開口をゲージを使用して測定するというような手順が考えられる。しかし、このような方法は作業が煩雑で、好ましい方法といえない。
【0007】
本発明の目的は本体の位置決めに人手を要さず、最小作業員をもって密着度を測定することを可能にした密着度測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は作動油を所定の圧力に上昇させるポンプ室を有する本体と、本体と連通して設けられ、密着度測定時、本体から与えられる高圧作動油によってトングレールを開口するプッシャーと、本体を下側より支持するマウント部材とを備える密着度測定器において、マウント部材が本体を位置決めするマグネットを備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明においてはマウント部材にマグネットを設けているので、密着度を測定する際に、たとえば基本レールの上面に本体を一瞬にして位置決め固定することができ、本体の保持もしくは固定に人手を取られることなく、レバー操作を行いながら、他方の手で開口をゲージを使用して測定することができる。また、このような基本レールへの本体の固定が可能になることから、最小要員をもって密着度を測定することが可能になり、大幅な省力を達成することができる。
【0010】
本発明はマウント部材がマグネットを備えるのに代えて、それ自身磁性体として構成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による密着度測定器の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1(a)において、本発明の密着度測定器は作動油を所定の圧力に上昇させる、ポンプ室を有する本体1を備える。また、本体1の外側で作動油を昇圧するレバー2と、作動油昇圧中、 ポンプ室を閉止するバルブ装置3を備える。
【0012】
さらに、密着度測定器は測定に臨んで図示しない基本レールとトングレールとの間隙に装着されるプッシャー4を有する。このプッシャー4は測定時に本体1から与えられる高圧作動油によってトングレールを開口するように、本体1と外部系統5によって結ばれる。外部系統5は本体1からの作動油を導く細管6と、可撓性を有する高圧ホース7とからなる。この細管6と高圧ホース7とは回転式継手8で連結されており、密着度測定時には高圧ホース7を所定の方向に向けることができる。また、細管5の経路内に密着度測定時に荷重値を読むためのメータ9が設けられる。
【0013】
一方、本体1は本体下側より測定器を支える第1マウント10aおよび第2マウント10bを備える。図1(b)に示すように、第1マウント10aの下面にはマグネット11が固着される。このマグネット11は2個の小ねじ12によって第1マウント10aに固定される。図示は省略するが、第2マウント10bの下面にも同一のマグネットが固着される。
【0014】
本実施の形態のマグネット11は、図2(a)(b)に示すように、樹脂を成形して作られる基板13と、一対の磁石片14とで構成される。この一対の磁石片14はそれぞれレールとの接触面だけを露出させて基板13の内部に埋められている。
【0015】
密着度の測定において、図3に示すように、フロントロッドを取付けたトングレールRAと接している基本レールRの上面に密着度測定器を載せる。本体1下側の第1マウント10aおよび第2マウント10bが基本レールRと接触した瞬間、第1マウント10aおよび第2マウント10bのマグネット11がそれぞれ基本レールRと密着し、一瞬にして本体1が位置決め固定される。
【0016】
作業員2人がペアとなって作業する場合も、時間を掛けず本体を位置決め固定することは可能であるが、2人掛かりの測定のために空き時間が多く、無駄が大きい。本実施の形態では作業員が一瞬だけ本体1の固定に手を取られるだけで、直ちにレバー2を操作してポンプの昇圧に着手することが可能で、1人が連続して作業することになり、無駄が少ない。
【0017】
基本レールRとトングレールRAとの間の隙間を測定するときも、固定された本体1には手を掛ける必要がなく、同一作業員が片方の手でレバー操作を行いながら、他方の手で基本レールRとトングレールRAとの間の隙間にゲージを挿入して確認することが可能で、これにより、1人の作業員が測定に伴う全ての作業を他の作業員の手助けを借りないでなし遂げることできる。
【0018】
このように本実施の形態では基本レールに一瞬にして本体を位置決め固定することが可能で、作業員が直ちに測定に着手することができる。また、このような基本レールへの本体の固定が可能になることから、最小要員をもって密着度を測定することが可能で、大幅な省力を達成することができる。
【0019】
本発明の異なる実施の形態について図4を参照して説明する。本体1の下面にマウント15が4個の小ねじ16によって固着されている。このマウント15はそれ自身が磁性体として構成される。本実施の形態の磁性体はプラスチック磁石からなり、フェライトの粉末を合成樹脂を結合材としてプレス成形によって製作したものである。マウント15は本体1の長手方向に一定の間隔を保って2個配置される。
【0020】
本実施の形態においては、上記実施の形態と同様に、本体1下側のマウント15が基本レールと接触した瞬間、マウント15がそれぞれ基本レールと密着し、一瞬にして本体1が位置決め固定される。この結果、1人の作業員が測定に伴う全ての作業を他の作業員の手助けを借りないでなし遂げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の密着度測定器は基本レールに本体を一瞬にして位置決め固定し、最小要員で密着度を測定するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による密着度測定器を示すもので、(a)は密着度測定器の正面図、(b)は(a)に示される第1マウント部の断面図である。
【図2】本発明によるマグネットの詳細を示すもので、(a)はマグネットの平面図、(b)はマグネットの正面図である。
【図3】本発明の本体を基本レールに位置決めした状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る密着度測定器の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1… 本体
2… レバー
4… プッシャー
6… 細管
7… 高圧ホース
10a… 第1マウント
10b… 第2マウント
11… マグネット
15… マウント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油を所定の圧力に上昇させるポンプ室を有する本体と、前記本体と連通して設けられ、密着度測定時、前記本体から与えられる高圧作動油によってトングレールを開口するプッシャーと、前記本体を下側より支持するマウント部材とを備える密着度測定器において、前記マウント部材が前記本体を位置決め固定するマグネットを備えることを特徴とする密着度測定器。
【請求項2】
前記マウント部材がマグネットを備えるのに代えて、それ自身磁性体として構成されることを特徴とする請求項1記載の密着度測定器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−291524(P2006−291524A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111804(P2005−111804)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000159423)吉原鉄道工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】