説明

密閉キャップ及び密閉容器

【課題】口頸部の内面への締めトルクによる回転抵抗を低減することが可能な密閉キャップ及び密閉容器を提供する。
【解決手段】容器体の口頸部外面への螺合用の外周壁14の上端に内向きフランジ20を付設した周壁部材12と、蓋板34の外周部に一体的に連設させた環状パッキン32を上記外周壁14の上部14a内面に回動可能に係止し、蓋板34の外周部に口頸部内面への密嵌用のシール筒40を形成してなる蓋部材30とで構成されている。上記口頸部への外周壁14の螺進により口頸部の頂面と内向きフランジ20との間に環状パッキン32を挟持できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉キャップ及び密閉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器体の口頸部に螺合する有頂筒形の外蓋と、外蓋の頂板(蓋板)及び口頸部の上面の間に挟持させた円板状パッキンの裏面から口頸部内面への嵌合用のシール筒を垂下した内蓋とを含む密閉キャップであって、外蓋の筒壁内に、外蓋の引上げ時に円板状パッキンの裏面を支持するための適数の係合突起を設けたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−188342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の密閉キャップは、容器体の口頸部へ螺合させるときに口頸部内面へシール筒が圧入されるように構成している。このためシール筒と連続する円板状パッキンが外蓋の蓋板裏面全体に圧接され、外蓋と内蓋との間、内蓋のシール筒と口頸部との間にそれぞれ摩擦力が作用する。故にシール性能を高めるためにシール筒を口頸部で固く締め付けるようにすると締めトルクによる大きな回転抵抗が生じるおそれがある。
【0005】
密閉キャップのうちネジ構造を有する周壁部材を、シール筒を含む部分と別パーツとして、締めトルクによる抵抗を緩和することも考えられるが、口頸部への外周壁の螺合力によりキャップの上部の外形が広がってしまう可能性がある。
【0006】
さらに特許文献1の構成では、外蓋の蓋板と内蓋の円板状パッキンとを2重に重ねているために樹脂量が多くなるという問題がある。
【0007】
本発明の第1の目的は、口頸部の内面への締めトルクによる回転抵抗を低減することが可能な密閉キャップ及び密閉容器を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、密閉キャップを、蓋板・パッキン・シール筒を含む第1の部材と、ネジ筒を含む第2の部材との2体で形成し、口頸部から螺脱させるときにネジの螺合力でキャップの上部が拡開することを防止することが可能なものを提案することである。
【0009】
本発明の第3の目的は、蓋周壁付きの蓋本体の蓋板に板状のパッキンを重ねた従来技術に比べて樹脂量を少なくすることができる密閉キャップを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段は、密閉キャップであり、
容器体の口頸部外面への螺合用の外周壁14の上端に内向きフランジ20を付設した周壁部材12と、
蓋板34の外周部34aに一体的に連設させた環状パッキン部32を上記外周壁14の上部14a内面に回動可能に係止し、蓋板34の外周部34aに口頸部内面への密嵌用のシール筒40を形成してなる蓋部材30と、
で構成され、上記口頸部への外周壁14の螺進により口頸部の上面と内向きフランジ20との間に環状パッキン部32を挟持できるように構成している。
【0011】
本手段の密閉キャップは、図1、図6に示す如く蓋板34の外周部34aに環状パッキン部32を設けた蓋部材30と、内向きフランジ20を有する周壁部材12との2部材からなり、環状パッキン部32を内向きフランジ20と口頸部との間に挟持するように設け、かつ蓋板34の外周部34aに口頸部内面への密嵌用のシール筒40を形成したものを提案している。環状パッキン部32は外周壁14の上部内面に回動可能に係止されているので、シール筒40の締りトルクによる回転抵抗が軽減される。外周壁の内周面には環状パッキン部を回動可能に支持する係止手段(例えば図2に示す係止突条16)を設けるとよい。
【0012】
シール筒40は、図2に示すように蓋板34の外周部34aの下面から垂下してもよく、図7に示すように蓋板34の外周部34aに深溝状の環状凹溝36を凹設し、この環状凹溝36の外方側壁部で形成してもよい。
【0013】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記蓋板34の外周部34aに環状凹溝36を形成し、この環状凹溝36内に、上記内向きフランジ20の内周部下端に付設した係合突起22を嵌合させるとともに、蓋板34の中央部34bを上記内向きフランジ20のフランジ孔20a内に遊嵌させた。
【0014】
本手段は、図1に示すように蓋板34の外周部34aに形成した環状凹溝36に、内向きフランジ20の係合突起22を嵌合させた構造を提案している。これにより密閉キャップの外周壁14を容器体の口頸部に螺合させることで図5に示す応力fが作用しても、この応力に上記係合突起の係合力で対抗して、密閉キャップの上部が拡開することを防止できる。
【0015】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記周壁部材12及び蓋部材30をそれぞれ合成樹脂で形成するとともに、
上記蓋板34の中央部34b上面と内向きフランジ20の上面を面一とし、かつ蓋板34の中央部34bの下面を、環状パッキン部32の下面よりも高くした。
【0016】
本手段では、蓋板34の中央部34bを環状パッキン部32の下面よりも高くすることを提案している。これにより蓋板の下面にパッキンを兼ねるシール板を取付けた従来のキャップに比べて樹脂量を少なくすることができる。
【0017】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段の何れかを有し、かつ
上記周壁部材12及び蓋部材30の各対向面のうち一面に、周壁部材12の回転軸から一定の距離を保って弧状に伸長しかつその伸長方向に沿って他面と摺接する摺接リブ38を形成している。
【0018】
本手段では、図2に示すように減摩手段としての摺接リブ38を提案している。このようにすることで周壁部材12及び蓋部材30の対向面のうち摩擦を生ずる面積がさらに減少し、摩擦力による回転抵抗を低減することができる。図示の摺接リブ38は、環状のリブとしているが、複数の円弧状のリブを周方向に間欠的に設けても構わない。
【0019】
第5の手段は、密閉容器であって、
口頸部6を起立する容器体2と、その口頸部6に螺合させた第1の手段から第3の手段のいずれかに記載した密閉キャップ10とからなる。
【発明の効果】
【0020】
第1の手段に係る発明によれば、密閉キャップを、周壁部材12及びこれに対して回動可能な蓋部材30で形成し、蓋部材30に環状パッキン部32及びシール筒40を組み込んだから、口頸部に着脱するときにシール筒40の締めトルクによる抵抗を低減できる。
第2の手段に係る発明によれば、蓋板34の環状凹溝36に周壁部材12の係合突起22を嵌合させたから、密閉キャップを2パーツで形成しても、口頸部に装着するときに密閉キャップの上部が外側へ広がることを防止できる。
第3の手段に係る発明によれば、蓋板34の中央部34bの下面を、環状パッキン部32の下面よりも高くしたから、材料とする樹脂量を少なくすることができる。
第4の手段に係る発明によれば、周壁部材12及び蓋部材30の各対向面のうち一面に、他面と線接触する摺接リブ38を設けたから、両者間の摩擦を減少できる。
第5の手段に係る発明によれば、軽く閉開蓋操作をすることができる使い勝手の良い密閉キャップを有する容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る密閉容器の主要部の縦断面図である。
【図2】図1の主要部の一部の拡大図である。
【図3】図1の容器のA−A方向の横断面図である。
【図4】図1の容器のB−B方向の横断面図である。
【図5】図1の容器の密閉キャップの作用説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る密閉容器の主要部の縦断面図である。
【図7】図6の容器の要部拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から図5は、本発明の第1実施形態の密閉容器を示している。この密閉容器は、図1に示すように容器体2と密閉キャップ10とで構成されている。これら各部材は合成樹脂で形成することができる。
【0023】
容器体2は図示しない胴部から肩部を介して口頸部6を起立している。この口頸部6の外面にはネジが形成されており、またネジの下方外面には係合リブ8が周設されている。また図示例では、肩部と口頸部6との間から外方張出し板4を側外方へ突出している。
【0024】
密閉キャップ10は、周壁部材12と蓋部材30とで構成されている。
【0025】
上記周壁部材12は、外周壁14の上端部に内向きフランジ20を付設している。この周壁部材12は、例えばポリプロピレン(PP)で一体に成形することができる。
【0026】
上記外周壁14は、上下方向中間部14bの内面にネジを形成するとともに、外周壁の上部14aを小内径に形成し、この内部の下端に図2に示す係止突条16を付設している。また図示例では、上記外周壁の下部14cを、図1に示す如く上下方向中間部14bとの間に破断線15を存して分離可能としたバージンリングとしている。このバージンリングの下端からは、複数の係止片18が上内方へ延びており、この係止片18の先端を上記係合リブ8下面に係止させている。本実施形態では、上記係止片18は図1に想像線で示すように外周壁の下部14cから肉薄ヒンジ17を介して下方へ突出しており、密閉キャップ10を口頸部6に装着するときに、外方張出し板4に当たって上内方へ屈折するようにしている。もっともこの構造は適宜変更できる。
【0027】
上記内向きフランジ20は口頸部6の内面よりも内方へ突出している。この内向きフランジ20の内周部下面には係合突起22を周設している。図示例の係合突起22は断面矩形である。
【0028】
上記蓋部材30は、上記外周壁14の上部14a内面に嵌合させた環状パッキン部32を有しており、この環状パッキン部32に蓋板34の外周部34aを一体的に連設させている。この蓋部材30は、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)で一体に形成することができる。
【0029】
図示の環状パッキン部32は断面矩形であり、その下面外縁部を上記係止突条16で回動可能に支えている。
【0030】
上記蓋板34は、外周部34aから環状パッキン部32の外周面に亘って上面開口の環状凹溝36を周設しており、この環状凹溝36内に上記係合突起22を回動可能に嵌合している。
【0031】
上記蓋板34の中央部34bは平板部に形成し、かつ上記内向きフランジ20のフランジ孔20a内に遊嵌させている。また蓋板34の中央部34bの上面は上記内向きフランジ20の上面と面一に形成し、かつ蓋板34の中央部34bの下面は環状パッキン部32の下面より高く位置させる。
【0032】
上記蓋板34の外周部34aの下面からは、シール筒40を垂下する。このシール筒40は上記口頸部6の内面に気密に嵌着させる。口頸部6の内面に対するシール筒40の摩擦抵抗は、蓋部材30に対する周壁部材12の摩擦抵抗に比べて大きいものとする。
【0033】
本実施形態では、蓋部材30と周壁部材12との摩擦抵抗を低減するため、蓋部材30のうちと接する面に摺接リブ38を設けている。この摺接リブは、周壁部材12の回転軸から等距離を保って伸長しており、蓋部材30に対して周壁部材12が回転するときにその伸長方向に沿って周壁部材12と摺接する。これにより両部材間の摩擦抵抗が減少する。
【0034】
好適な図示例では、環状パッキン部32の上面には第1摺接リブ38aを、また環状凹溝36の外側面と底面とに第2摺接リブ38b及び第3摺接リブ38cを、それぞれ形成している。これら3面には口頸部6への密閉キャップ10の着脱の際に摩擦力が強く働くからである。もっとも摺動リブの配置は適宜変更することができ、摺接リブを周壁部材12に設けてもよい。各面に複数の摺接リブを設けるときには、これら摺接リブは同じ高さに形成する。
【0035】
上記構成において、密閉キャップ10を図1の閉蓋状態から開方向に回転させると、シール筒40の外面と口頸部6の内面との間には大きな摩擦力Fが作用し(図3の黒矢印参照)、蓋部材30と周壁部材12との間には小さな摩擦力Fが作用する(図4の黒矢印参照)。同様に密閉キャップ10を閉蓋させる際にシール筒40が口頸部6に螺合させるときにも、シール筒40と口頸部6との間には大きな摩擦力F’が作用し(図3の白矢印参照)、蓋部材30と周壁部材12との間には小さな摩擦力F’が作用する(図4の白矢印参照)。これにより蓋部材30は口頸部6に対して回転せず、周壁部材12は口頸部6及び蓋部材30に対して回転する。
【0036】
前述の特許文献1では、閉蓋操作時に大きな回転抵抗を生ずる。これは口頸部の内面と内蓋のシール筒との間に大きな締めトルクが生じており、かつ内蓋の円板パッキンの全面が外蓋の蓋板に圧接することで内蓋に対して外蓋が回転し難いからである。
【0037】
これに対して本願の構成では、周壁部材12は蓋部材30の蓋板34の外周部34aに接しているに過ぎす、摩擦面積が小さい。口頸部6とシール筒40と間の締めトルクがいくら大きくても蓋部材30に対する周壁部材12の摩擦力を超える抵抗は密閉キャップ10を持つ手に伝わらないので、閉蓋操作における回転抵抗が低減する。
【0038】
また閉蓋操作において、外周壁14が口頸部6の外面に螺合することで、図5に示す如く外周壁14の上部には側外方への応力fが、また係合突起22には上外方への応力fがそれぞれ作用する。しかし、これらの応力に対して環状凹溝36の係合突起22の嵌合力で対抗するために、密閉キャップ10の上部が拡開することが防止できる。
【0039】
図6から図7は、本発明の第2実施形態の密閉容器を示している。本実施形態では、蓋板34の外周部34aの環状凹溝36を、口頸部6の上面よりも下方へ陥没する深溝とし、この環状凹溝36の外側壁をシール筒40として、口頸部6内面に圧接している。
【0040】
係合突起22は、上記環状凹溝36に対応して下方に長く設ける。嵌合突起の外面には摺接リブ38を付設する。
【0041】
また図7に示すように上記環状パッキン部32の上面の内外方向中間部には溝42を周設している。
【符号の説明】
【0042】
2…容器体 4…外方張出し板 6…口頸部 8…係合リブ
10…密閉キャップ 12…周壁部材 14…外周壁
14a…上部 14b…上下方向中間部 14c…下部
15…破断線 16…係止突条 17…肉薄ヒンジ 18…係止片
20…内向きフランジ 20a…フランジ孔 22…係合突起
30…蓋部材 32…環状パッキン部 34…蓋板 34a…外周部 34b…中央部
36…環状凹溝 38…摺接リブ 40…シール筒 42…溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の口頸部外面への螺合用の外周壁(14)の上端に内向きフランジ(20)を付設した周壁部材(12)と、
蓋板(34)の外周部(34a)に一体的に連設させた環状パッキン部(32)を上記外周壁(14)の上部(14a)内面に回動可能に係止し、蓋板(34)の外周部(34a)に口頸部内面への密嵌用のシール筒(40)を形成してなる蓋部材(30)と、
で構成され、上記口頸部への外周壁(14)の螺進により口頸部の上面と内向きフランジ(20)との間に環状パッキン部(32)を挟持できるように構成したことを特徴とする、密閉キャップ。
【請求項2】
上記蓋板(34)の外周部(34a)に環状凹溝(36)を形成し、この環状凹溝(36)内に、上記内向きフランジ(20)の内周部下端に付設した係合突起(22)を嵌合させるとともに、蓋板(34)の中央部(34b)を上記内向きフランジ(20)のフランジ孔(20a)内に遊嵌させたことを特徴とする、請求項1記載の密閉キャップ。
【請求項3】
上記周壁部材(12)及び蓋部材(30)をそれぞれ合成樹脂で形成するとともに、
上記蓋板(34)の中央部(34b)上面と内向きフランジ(20)の上面を面一とし、かつ蓋板(34)の中央部(34b)の下面を、環状パッキン部(32)の下面よりも高くしたことを特徴とする、請求項2記載の密閉キャップ。
【請求項4】
上記周壁部材(12)及び蓋部材(30)の各対向面のうち一面に、周壁部材(12)の回転軸から一定の距離を保って弧状に伸長しかつその伸長方向に沿って他面と摺接する摺接リブ(38)を形成したことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れかに記載の密閉キャップ。
【請求項5】
口頸部(6)を起立する容器体(2)と、その口頸部(6)に螺合させた請求項1から請求項4のいずれかに記載した密閉キャップ(10)とからなる密閉容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−232767(P2012−232767A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101565(P2011−101565)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】