説明

密閉型グラブバケット

【課題】 土砂と一緒に掴んだグラブバケット内の水を排出し、土砂だけを揚げて土運船内の余水を減らす。
【解決手段】 両シェル1の掴み状態時にその上側開放部を閉鎖する上部閉鎖蓋20を備え、開閉操作手段により下フレーム5を上フレーム8対して上下に動作させることによって両シェル1が開閉動作されるようにしてなる密閉型グラブバケットにあって、上部閉鎖蓋20は、各シェルの掴み状態時における上部開口内にあってその基端側をシェルの前記アーム連結側に回動自在に取り付け、該各上部閉鎖蓋20の上面とアーム7との間を連動用リンク22をもって連結し、両シェル1の閉じ方向側の動作時に両上部閉鎖蓋20がそれぞれ下向きに回動され、掴み動作完了状態時にその先端が互いに当接されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として浚渫用として使用され、掬い取った水底の土砂を周囲の水域に拡散させないようにした密閉型グラブバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グラブ浚渫時の汚濁拡散防止対策のひとつとして、密閉型グラブバケットが使用されている。この種の従来の密閉型グラブバケットは、互いに開閉する一対のシェルをもってグラブが構成され、シェルの閉鎖状態、即ちグラブに土砂を掴んだ状態の時に、上側開放部分が閉鎖されるようにしたものであり、各シェルの上部に下向き箱状又は板状の蓋が固定されており、シェルの掴み状態、即ち閉じ状態にあるときに、両シェルに固定されている蓋の先端部が互いに当接し、両シェルによって囲まれた内部の空間、即ちグラブの内部空間が閉鎖状態となるようにしている(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
また、シェルが開かれた状態から掴み方向の動作が終了するまでの間に、グラブの土砂が増加することによって、内部の水が排出される必要があるため、蓋体は排水口が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−325602号公報
【特許文献2】特開2008−255691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の密閉型グラブバケットは、グラブの掴み完了状態時に、蓋に設けた排水口を除き密閉状態となるため、一旦グラブで掴んだ土砂は外に流出することがなく、汚濁の拡散を防止できるが、一緒に掴まれた水が排出されずに土運船に積み込まれることとなり、土運船に余水が溜まってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、土砂と一緒に掴んだグラブバケット内の水を排出し、土砂だけを揚げて土運船内の余水を減らすことを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、バケット移動手段により支持された上フレームと、該上フレームに対して上下に相対動作させる開閉操作手段を介して支持させた下フレームと、該下フレームに対し枢支軸を介して回動可能に支持され、該枢支軸を中心にしてそれぞれが互いに開閉方向に回動自在な一対のシェルと、該各シェルと前記上フレーム間を連結したアームと、前記両シェルの掴み状態時にその上側開放部を閉鎖する上部閉鎖蓋とを備え、前記開閉操作手段により下フレームを上フレームに対して上下に動作させることによって両シェルが開閉動作されるようにしてなる密閉型グラブバケットにおいて、
【0008】
前記上部閉鎖蓋は、各シェルの掴み状態時における上部開口内にあってその基端側をシェルの前記アーム連結側に回動自在に取り付け、該各上部閉鎖蓋の上面と前記アームとの間を連動用リンクをもって連結し、前記両シェルの閉じ方向側の動作時における該シェルと前記アームとの相対角度の変化により前記両上部閉鎖蓋がそれぞれ下向きに回動されるようにしたことにある。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記上部閉鎖蓋には排水口を設け、該排水口には、内部の水が排出される方向に開き、その逆向きには開かない逆止め弁を備えていることにある。
【0010】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成に加え、前記逆止め弁は、排水口を遮蔽する状態に設けた多孔状の弁座部材と、その外側に重ねられたゴム状弾性板材からなるフラップ弁体とをもって構成されていることにある。
【0011】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れかの請求項の構成に加え、前記両上部閉鎖蓋及び連動用リンクは、それぞれの長さを違えて複数種類備え、前記シェル掴み動作完了状態時における両上部閉鎖蓋の先端が当接する高さ位置を違えることによってグラブ容量を変更可能にしたことにある。
【発明の効果】
【0012】
上述したように本発明においては、上部閉鎖蓋は、各シェルの掴み状態時における上部開口内にあってその基端側をシェルの前記アーム連結側に回動自在に取り付け、該各上部閉鎖蓋の上面と前記アームとの間を連動用リンクをもって連結し、前記両シェルの閉じ方向側の動作時における該シェルと前記アームとの相対角度の変化により前記両上部閉鎖蓋がそれぞれ下向きに回動されるようにしたことにより、グラブが閉じるときに、上部閉鎖蓋も閉じ方向に回動し、グラブ内の土砂を閉じ込めるだけでなくこれを押し込むため、グラブ内の余水が完全に排出され、土運船への余水の投入がなくなり運搬効率が向上する。
【0013】
また、本発明では、前記上部閉鎖蓋には排水口を設け、該排水口には、内部の水が排出される方向に開き、その逆向きには開かない逆止め弁を備えることによって、グラブ内の余水の排出をより効果的なものとできる。
【0014】
更に本発明では、前記逆止め弁を、排水口を遮蔽する状態に設けた多孔状の弁座部材と、その外側に重ねられたゴム状弾性板材からなるフラップ弁体とをもって構成することによって、簡便な構造で、水の排出量を大きくできるとともに、必要な逆止め効果が得られる。
【0015】
更に本発明では、前記両上部閉鎖蓋及び連動用リンクは、それぞれの長さを違えて複数種類備え、前記シェル掴み動作完了状態時における両上部閉鎖蓋の先端が当接する高さ位置を違えることによってグラブ容量を変更可能とすることにより、浚渫土厚によって掴み量が変化した場合においても、同じグラブバケットを使用して余水をグラブ内に掴み残さない浚渫ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る密閉型グラブバケットの一例を示す縦断面図である。
【図2】同上のシェルに対する上部閉鎖蓋の取り付け状態を示す横断面図である。
【図3】同上の排水口と逆止め弁を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る密閉型グラブバケットの浚渫土砂掴み前の状態を示す模式的側面図である。
【図5】同、浚渫土砂掴み始め状態を示す模式的側面図である。
【図6】同、浚渫土砂掴み完了稍前の状態を示す模式的側面図である。
【図7】同、浚渫土砂掴み完了時の状態を示す模式的側面図である。
【図8】本発明に係る密閉型グラブバケットの他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明に係る密閉型グラブバケットの実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。図において符号1,1はグラブを構成している一対のシェルであり、この各シェル1は、円弧状の内周面を持つシェル本体板2とその両端に一体に備えた一対の側板3,3と殻構成されており、シェル本体板2の下縁が土砂を掬い取る掘削エッジ2aを構成し、グラブのつかみ状態、即ち両シェル1,1の閉鎖時には掘削エッジ2a,2a及び両側板の前縁部3a,3aが互いに接合し、グラブの下側及び側部が閉鎖されるようになっている。尚、図には示してないが、掘削エッジ2a及び前縁部3aの接合は、パッキンが介在されて密閉状態が維持される構造となっている。
【0018】
両シェル1,1はその側板3の前縁上部が下フレーム5に対し、枢支軸6を介して回動可能に支持されているとともに、シェル本体板2の上縁部背面にアーム7が回動可能に連結され、このアーム7を介して上フレーム8に対して吊り持ちされている。
【0019】
上フレーム8は、グラブをバケット移動手段である吊りワイヤー10によって吊り持ちされ、クレーン(図示せず)にて上下方向及び水平方向に移動されるようになっている。
【0020】
上フレーム8と下フレーム5とに跨って、両者を上下に相対移動操作させる開閉操作手段が備えられている。この開閉操作手段として、この例では両フレーム5,8にそれぞれ備えたシーブ11,12とこれに掛け回した操作ワイヤー13からなる滑車機構を使用しており、操作ワイヤー13の一端を両フレーム5,8の何れかに固定し、他端側を上フレーム8より上方に繰り出させ、これをクレーンによって巻き取り・繰り出し操作することによって下フレーム5を上フレーム8に対して上下動させるようになっている。
【0021】
このようにして上フレーム8に対して下フレーム5を下側に移動させることによって、両シェル1,1は開かれる方向に回動し、逆にしたフレーム5を上昇させることによって両シェルが閉じられるようになっている。
【0022】
なお、本例においては開閉操作手段として滑車機構を使用しているが、油圧シリンダーによって両フレーム間を上下に相対移動動操作させるものであってもよい。
【0023】
両シェル1,1には、両者が閉じられた状態、即ちグラブが掴み状態にあるときに、上部を閉鎖する上部閉鎖蓋20がそれぞれ備えられている。この上部閉鎖蓋20は、平板状をなしており、その基端部が、シェルを構成しているシェル本体板2の上縁部内側に枢支軸21により回動可能に支持されている。この支軸21は、前述したシェル1の枢支軸6と平行配置となっている。
【0024】
上部閉鎖蓋20は、その全周縁部にパッキン20aが固定され、回動側先端を除く3辺が、シェル1の内面と水密状態が保たれるようになっている。両上部閉鎖蓋20,20の回動側先端部20bは、両シェルが閉じた時に水密状態で接合されるようになっている。
【0025】
各上部閉鎖蓋20は、その先端側が、該蓋とその蓋が取り付けられている側のシェルに連結されているアーム7との間に両端を枢着させた連動用リンク22に支持されている。この連動用リンク22及び上部閉鎖蓋20の長さは、図1に示すように、シェル閉じ状態の時に、両上部閉鎖蓋20,20の先端が接合する長さに調整されている。
【0026】
各上部閉鎖蓋20には排水口25が形成されている。この排水口25には図3に示すように逆止め弁26が備えられ、グラブ内からの水は排出されるが、グラブ閉じ状態時に外部からの浸水が阻止されるようになっている。
【0027】
この逆止め弁26は、排水口25を遮蔽する状態に設けた多孔状の弁座部材27と、その外側に重ねられたゴム状弾性板材からなるフラップ弁体28とをもって構成されおり、フラップ弁体28は、一方の縁部が排出口縁部に固定され、他方側が、グラブ内からの水圧によって開かれるようになっている。
【0028】
弁座部材27は、エキスパンドメタル等の金属網状材やパンチング板などの多孔板が使用できる。
【0029】
尚、両上部閉鎖蓋20,20及び連動用リンク22,22は、それぞれの長さを違えて複数種類備え、シェル掴み動作完了状態時における両上部閉鎖蓋の先端が当接する高さ位置を違えることによってグラブ容量を変更可能にしている。
【0030】
次に、この密閉型グラブバケットの動作について説明する。
【0031】
図1に示すように、操作ワイヤー13を引き下フレーム5を上フレーム8側に動作させることによって、両シェル1,1は、背面側がアーム7、7によって移動が規制されるため、互いに閉じる方向に動作される。
【0032】
この時、上部閉鎖蓋20とアーム7とのシェルに対する枢支位置が接近しているため、両者の相対角度は略一定に保たれるが、シェル1とアーム7との相対角度が変化するため、上部閉鎖蓋20は、シェル1内に押し込まれる方向に相対動作され、閉じ動作完了時に、両シェル1,1の接合部分が密着すると同時に、両上部閉鎖蓋20,20の先端が互いに水密状態に当接する。これによってグラブ内が密閉状態となる。
【0033】
この閉じ状態から、操作ワイヤー13を送り出すとシェル及び下フレーム5の重量によって下フレーム5が下方に移動し、これによって図4に示すようにシェル1,1は互いに開かれた状態となる。
【0034】
この状態で図5に示すように水底の浚渫地盤30上に降下させ、操作ワイヤー13を引くことにより下フレーム5が引き上げられ、シェル1,1は互いに閉じ方向に動作し、浚渫地盤の土砂を掴み取りが開始される。更に閉じ方向の動作が進行すると、図6に示すようにシェル1,1が接近するに従って内部の土砂31が上昇する。
【0035】
この閉じ側の動作によって、上部閉鎖蓋20は、シェル1内側に相対的に回動される。そして図6に示すように、土砂31の上部が上部閉鎖蓋20に達すると、シェル1内の土砂はこの上部閉鎖蓋20によって押えられつつこれに沿って移動する。
【0036】
また、この閉じ動作時に上部閉鎖蓋20の下側にあるシェル内の水が、排水口25及び上部閉鎖蓋20,20の先端間からから排出されつつ図7に示す閉じ動作終了状態時には、グラブ内の余水がほとんど排出された状態となって密閉される。
【0037】
このようにグラブが閉じるときに、上部閉鎖蓋20も閉じ方向に回動し、グラブ内の土砂を閉じ込めるだけでなくこれを押さえ込み、余水を開口から完全に排出する。
また、浚渫土厚に応じて、上部閉鎖蓋20及び連動用リンク22を、その長さを違えたものに取り替えることにより、同じグラブバケットをしようして余水をグラブ内に掴み残さない浚渫ができる。
【0038】
上述の例では、両上部閉鎖蓋20,20の先端がバケットの閉じ動作完了時に互いに当接する構造となっているが、この他、図8に示すように両シェル1,1にそれぞれの側板3,3間に掛け渡された配置の蓋受け9を設置しておき、閉じ動作完了時にこり蓋受け9,9が互いに接合され、これにそれぞれの上部閉鎖蓋20,20の先端が当接することによって上部を閉鎖する構造としてもよい。
【0039】
また、図1、図8に示すように、両シェル1,1の各側板3,3の内面に、上部閉鎖蓋20,20の両側縁下面が当接する蓋受け9b,9bを設けることが、密閉度を高める上で好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 シェル
2 シェル本体板
2a 掘削エッジ
3 側板
3a 前縁部
5 下フレーム
6 枢支軸
7 アーム
8 上フレーム
9a,9b 蓋受け
10 吊りワイヤー
11,12 シーブ
13 操作ワイヤー
20 上部閉鎖蓋
20a パッキン
20b 回動側先端部
21 枢支軸
22 連動用リンク
25 排水口
26 逆止め弁
27 弁座部材
28 フラップ弁体
30 浚渫地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケット移動手段により支持された上フレームと、該上フレームに対して上下に相対動作させる開閉操作手段を介して支持させた下フレームと、該下フレームに対し枢支軸を介して回動可能に支持され、該枢支軸を中心にしてそれぞれが互いに開閉方向に回動自在な一対のシェルと、該各シェルと前記上フレーム間を連結したアームと、前記両シェルの掴み状態時にその上側開放部を閉鎖する上部閉鎖蓋とを備え、前記開閉操作手段により下フレームを上フレームに対して上下に動作させることによって両シェルが開閉動作されるようにしてなる密閉型グラブバケットにおいて、
前記上部閉鎖蓋は、各シェルの掴み状態時における上部開口内にあってその基端側をシェルの前記アーム連結側に回動自在に取り付け、該各上部閉鎖蓋の上面と前記アームとの間を連動用リンクをもって連結し、前記両シェルの閉じ方向側の動作時における該シェルと前記アームとの相対角度の変化により前記両上部閉鎖蓋がそれぞれ下向きに回動されるようにしたことを特徴としてなる密閉型グラブバケット。
【請求項2】
前記上部閉鎖蓋には排水口を設け、該排水口には、内部の水が排出される方向に開き、その逆向きには開かない逆止め弁を備えてなる請求項1に記載の密閉型グラブバケット。
【請求項3】
前記逆止め弁は、排水口を遮蔽する状態に設けた多孔状の弁座部材と、その外側に重ねられたゴム状弾性板材からなるフラップ弁体とをもって構成されている請求項2に記載の密閉型グラブバケット。
【請求項4】
前記両上部閉鎖蓋及び連動用リンクは、それぞれの長さを違えて複数種類備え、前記シェル掴み動作完了状態時における両上部閉鎖蓋の先端が当接する高さ位置を違えることによってグラブ容量を変更可能にしてなる請求項1〜3の何れか1に記載の密閉型グラブバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−84372(P2011−84372A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238858(P2009−238858)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】