説明

密閉型電子ドリフトスラスタ

【課題】一様な半径方向磁界を主チャネル内に形成し、巻線の質量を最小にする高出力の密閉型電子ドリフトスラスタを提供する。
【解決手段】本発明による密閉型の電子ドリフトスラスタは、環状の主チャネル(124)の中に磁界を生じさせる磁気回路を有し、磁気回路は、第1コイル(133)によって包囲された磁気コア(138)と、外側コイル(137)によって包囲された複数の外側磁気コア(137)と、凹形内周面(134)を有する外側磁極部分(134)と、凸形外周面(135a)を有する内側磁極部分(135)を有する。凹形内周面(134)及び凸形外周面(135a)はそれぞれ、一様な半径方向磁界を生じさせるように調整された輪郭を有し、それらの間に、幅が変化する隙間が形成され、外側コイルと隣接した最大値領域(232)と、外側コイル(137)同士の間に位置する最小値領域(231)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型の電子ドリフトスラスタであって、電子ドリフトスラスタの軸線周りに設けられたイオン化加速用の環状の主チャネルと、少なくとも1つの中空のカソードと、環状の主チャネルと同心の環状のアノードと、アノードにイオン化可能なガスを供給する管及びマニホルドと、環状の主チャネルの中に磁界を形成するための磁気回路とを有し、磁気回路は、第1のコイルによって包囲された少なくとも1つの軸線方向磁気コアと、外側コイルによって包囲された複数の外側磁気コアとを有し、前記軸線方向磁気コアは、回転体を形成する内側の上流側磁極部分によって包囲される、密閉型電子ドリフトスラスタに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の種類の密閉型電子ドリフトスラスタが既に知られている。
【0003】
第1の種類の密閉型電子ドリフトスラスタは、環状のコイルによって磁化される外側の磁極部分を有している。
【0004】
遮蔽された外側コイルを有する種類のスラスタは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献2はまた、環状の外側コイルを含む3つのコイルを有する密閉型電子ドリフトスラスタを記載している。
【0006】
図8は、特許文献2記載されているような外側の環状コイル31を有する密閉型電子ドリフトスラスタの一例の、半分を断面した正面図である。
【0007】
この先行技術のスラスタ20は、断熱材料で作られた部品22によって構成され且つ開口した下流端部を有するイオン化及び加速のための環状の主チャネル24と、イオン化可能なガスを供給する手段41と結合した少なくとも1つの中空のカソード40と、環状の主チャネル24と同心であり且つ開口した下流端部225からある距離のところに配置された環状のアノード25を有している。アノード25は、断熱部品22に設けられ、且つ、電気ライン43を介して直流(DC)電源44の正極に接続され、DC電源44は、例えば、200ボルト(V)〜300ボルトVであり、且つ、ライン42を介して中空のカソード40に接続された負極を有し、中空のカソード40は、キセノン等のイオン化可能なガスを供給するための管路41に結合されている。中空のカソード40は、実質的に基準ポテンシャルのプラズマ29を送出し、電子がプラズマ29から抽出され、アノード25とカソード40の間の電位差による静電界Eの効果の下で、アノード25に向かって進む。イオン化可能なガスを供給するための管路26が、アノード25よりも上流側で環状マニホルド27に開口している。
【0008】
環状の主チャネル24内の半径方向の磁界の勾配の制御は、内側の磁極部分35及び外側の磁極部分34と一緒に、内側環状コイル32,33及び外側環状コイル31を位置決めすることにより得られ、内側の磁極部分35が中央コア38により、外側の磁極部分は連結バー37により、ヨーク36に連結されており、このヨーク36は、超断熱保温材の1つ又は2つ以上の層30によって保護されるのが良い。
【0009】
外側環状コイルを備えた密閉型電子ドリフトスラスタ、例えば図8に示されている先行技術のスラスタは、外側の磁極部分34と内側の磁極部分35との間に形成された隙間内における一定の半径方向磁界を保証する。
【0010】
しかしながら、高い出力及び高い比推力を必要とする宇宙ミッションの場合、密閉型電子ドリフトプラズマスラスタは、熱的な面において欠点があり、その理由は、外側環状コイルは、長い長さの電線を含み、高い熱放散レベルが生じると共に巻線の質量が同様に大きくなる。加えて、外側環状コイル31は、特に、熱負荷が最も高い下流側部分において、セラミックチャネル24の冷却を妨げる。
【0011】
また、第2の種類の密閉型電子ドリフトスラスタが知られており、第2の種類の密閉型電子ドリフトスラスタでは、スラスタの軸線に一致した中心を有する大径の外側環状コイルが用いられず、その代わりに、スラスタの周囲に分散して配置され且つ外側の磁極部分を磁化するのに使用される複数の小径コイルが用いられている。
【0012】
かくして、特許文献3は、複数の外側コイルを有し、高い熱負荷に適合したスラスタを記載している。
【0013】
特許文献4及び5の各々もまた、4つの外側コイルを有するスラスタを記載している。
【0014】
ALT−D55という名称で知られている密閉型電子ドリフトスラスタは、3つの外側コイルを備えている。かかるALT−D55密閉型電子ドリフトスラスタは、非特許文献1及び2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第0900196号明細書
【特許文献2】仏国特許第2693770号明細書
【特許文献3】欧州特許第0982976号明細書
【特許文献4】米国特許第6208080号明細書
【特許文献5】米国特許第5359258号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】ジョン・エム・サンコビック(John M. Sankovic),トーマス・エクス・ハッグ(Thomas X. Haag),オハイオ州クリーブランド所在のナサ・ルイス・リサーチ・センター(NASA Lewis Research Center),デービッド・エイチ・マンツェッラ(Davis H. Manzella),オハイオ州ブルック・パーク所在のニマ社(Nyma Inc. )による「オペレーティング・キャラクタリステッィクス・オブ・ザ・ロシアン・D−55・スラスタ・ウィズ・アノード・レイヤー(Operating characteristics of the Russian D-55 thruster with anode layer)」と題する、推進力に関する第30回AIAA会議における論文AIAA−94−3011
【非特許文献2】シー・ガーナー(C. Garner),ジェー・アール・ブロピー(J.R. Bropy),ジェー・イー・ポーク(J.E. Polk),エス・セメンキン(S. Semenkin),ブイ・ガークスカ(V. Garkuska),エス・トバードクヘルボブ(S. Tverdokhelbov)及びシー・マレッセ(C. Marrrese)による「エクペリメンタル・エバキュエーション・オブ・ロシアン・アノード・レイヤー・スラスタ(Experimental evacuation of Russian anode layer thruster)」と題する、推進力に関する第30回AIAA会議における論文AIAA−94−3010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、多数の外側コイルスラスタによって生じる半径方向磁界は、厳密に言えば一様ではなく、ばらつきがあり、このばらつきが大きい(数パーセント)場合があることが判明した。
【0018】
残念ながら、半径方向の磁界のこの非一様性により、スラスタが高い出力又は高い電圧で動作する場合、深刻な問題が生じる。プラズマの閉じ込めは、磁界の強度と直接関連するので、磁界に僅かなばらつきがあると、プラズマと壁の相互作用が角度方向に変化し、スラスタの効率及び潜在的寿命を損なうことが判明した。さらに、環状のチャネルの任意の箇所で所望の磁界を必ず達成するようにするためには、磁界がその最も小さい値を有する領域に基づいて、磁気ポテンシャル、即ち、コイルのアンペアターンを増大させることが必要であり、その結果、巻線の質量が増大する。
【0019】
本発明は、上述の欠点を解決し、環状の主チャネルの良好な冷却の恩恵を受け、一様な半径方向磁界を主チャネル内に形成し、且つ巻線に必要な電線の長さを最小にして、巻線の質量を最小にする高出力密閉型電子ドリフトスラスタを作ることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は、本発明による密閉型電子ドリフトスラスタによって達成され、かかる密閉型電子ドリフトスラスタは、スラスタの軸線周りに設けられたイオン化及び加速用の環状の主チャネルと、少なくとも1つの中空のカソードと、環状の主チャネルと同心に設けられた環状のアノードと、アノードにイオン化可能なガスを供給する管及びマニホルドと、環状の主チャネル中に磁界を生じさせる磁気回路とを有し、磁気回路は、第1のコイルによって包囲された少なくとも1つの軸線方向磁気コアと、外側コイルによって包囲された複数の外側の磁気コアとを有し、軸線方向磁気コアは、回転体を形成する内側の上流側磁極部分によって包囲され、磁気回路は、更に、本質的に半径方向に凹形の内周面を有する外側の第1の磁極部分と、本質的に半径方向に凸形の外周面を有する内側の第2の磁極部分とを有し、凹形の内周面及び凸形の外周面はそれぞれ、一様な半径方向磁界を生じさせるために、円筒面と異なるように調整された輪郭を有し、かかる輪郭は、凹形の内周面と凸形の外周面との間に、幅が変化する隙間を形成し、かかる隙間は、外側コイルと隣接した最大値領域と、外側コイルと外側コイルの間に位置する最小値領域を有する。
【0021】
第1の好ましい実施形態では、回転体を形成する内側の上流側磁極部分は、本質的に円錐形であり、カソードに近い方の自由端部に、異形周縁部を有する。
【0022】
本発明によるこの実施形態において、磁気回路は、更に、本質的に円錐形である外側の上流側磁極部分を有し、カソードに近い方の自由端部に、異形周縁部を有する。本質的に円錐形である回転体を形成する内側の上流側磁極部分の異形周縁部、及び、本質的に円錐形である外側の上流側磁極部分の異形周縁部はそれぞれ、磁界のプロファイルを全方位にわたって(全周にわたって)一定に保つように調整された輪郭を有し、外側コイルと隣接したところに、電子ドリフトスラスタの軸線方向に凹んだ部分を有する。
【0023】
別の好ましい実施形態では、回転体を形成する内側の上流側磁極部分は、本質的に円筒形である内側の磁気シールドを有し、内側の磁気シールドの、カソードに近い方の自由端部に、異形周縁部を有する。
【0024】
本発明によるこの実施形態において、磁気回路は、更に、本質的に円筒形である外側の磁気シールドを有し、外側の磁気シールドの、カソードの近い方の自由端部に、異形周縁部を有する。内側の磁気シールドの異形周縁部、及び、外側の磁気シールドの異形周縁部はそれぞれ、磁界のプロファイルを全方位にわたって(全周にわたって)一定に保つように調整された輪郭を有し、外側コイルと隣接したところに、電子ドリフトスラスタの軸線方向に凹んだ部分を有する。
【0025】
本発明の電子ドリフトスラスタは、好ましくは、4つの外側の磁気コアを包囲する4つの外側コイルを有する。
【0026】
しかしながら、本発明が推奨する手段により、3つの外側の磁気コアを包囲する3つの外側コイルであっても、2つの外側の磁気コアを包囲する2つの外側コイルであっても、優れた結果を得ることが可能であり、そのように構成されてもよい。
【0027】
本発明の他の特徴及び利点は、例示として与えられると共に添付の図面を参照して行われる特定の実施形態についての以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態を構成する密閉型の電子ドリフトスラスタの半分の軸線方向断面図である。
【図2】図1のスラスタの特定の要素の一部分の概略的な斜視図である。
【図3】図1のスラスタの調整された磁極部分の平面図である。
【図4】図1のスラスタの調整された上流側磁極部分の側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を構成する密閉型の電子ドリフトスラスタの平面図である。
【図6】図5のスラスタの半分の軸線方向断面図である。
【図7】図5及び図6のスラスタの調整された磁気シールドの側面図である。
【図8】先行技術の環状外側コイルを備えた密閉型の電子ドリフトプラズマスラスタの半分を断面にした図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜図4は、本発明が適用された密閉型の電子ドリフトスラスタの第1の実施形態を示す。
【0030】
この種類のスラスタは、特許文献3に記載された説明に大部分一致した基本構造を有している。
【0031】
かくして、プラズマスラスタは、本質的には、断熱壁122によって定められるイオン化及び加速用の環状の主チャネル124を有している。主チャネル124は、その下流端部125aで開口しており、その軸線方向平面において、円錐台形の断面を上流側部分に有し、円筒形の断面を下流側部分に有している。中空のカソード140が主チャネル124の外側に配置され、環状のアノード125が主チャネル124の中に配置されている。管126を介して供給されるイオン化可能なガスのマニホルド127が、イオン化可能なガスをアノード125の壁に形成された孔120を通して注入するのに使用される。アノード125を付勢するための電線145も図1に見られる。
【0032】
アノード125とカソード140との間の放電は、外側の磁極部分134を含む磁気回路によって定められる磁界分布によって制御され、外側の磁極部分134は、本質的に半径方向に凹形の内周面134aを有している。
【0033】
外側の磁極部分134は、外側コイル131によって包囲された複数の磁気コア137によって、本質的に円錐形の第2の外側の磁極部分311に連結され、第2の外側の磁極部分311は、カソード140の近い方の自由端部のところに、異形周縁部311aを有している。
【0034】
磁気回路は、更に、内側の磁極部分135を含み、内側の磁極部分135は、本質的に半径方向に凸形の外周面135aを有している。
【0035】
内側の磁極部分135は、内側コイル133によって包囲された中央軸線方向磁気コア138によって延長されている。軸線方向磁気コア138自体は、スラスタの上流側部分のところにおいて、連結部分を介して第2の内側の磁極部分351まで延長され、第2の内側の磁極部分351は、上流側に配置され、円錐形状であり、この円錐の頂点は、好ましくは、上流側に向けられている(図1及び図2参照)。本明細書全体を通じ、用語「下流側」は、主チャネル124の出口平面S及び開口端部125aの近くの領域を意味し、用語「上流側」は、出口側平面Sから遠くにあり且つアノード125を備えた環状の主チャネル124の閉鎖部分の近くの領域を意味することに注目すべきである。
【0036】
追加の内側の磁気コイル132が、第2の内側の磁極部分351の上流側部分において、その外面の上に配置されるのがよい。追加の内側の磁気コイル132の磁界は、第2の外側の磁極部分311、第2の内側の磁極部分351、及び半径方向アーム136によって導かれ、半径方向アーム136は、軸線方向磁気コア138を外側の磁気コア137に連結されている。
【0037】
コイル133,131,132は、熱伝導性材料で作られた構造ベース175を介して熱伝導によって直接冷却されるのがよく、構造ベース175は、スラスタの機械的支持部として使用される。
【0038】
外側コイル131の数は、2〜8個であるのがよく、好ましくは、3つ又は4つであり、外側コイル131には、外側の磁極部分134と第2の外側の磁極部分311の間に配置された磁気コア137が設けられている。外側コイル131の使用により、環状の主チャネル124の外壁から来る放射線の大部分が通過することを可能にする。第2の外側の磁極部分311の円錐形状は、外側コイル131が利用可能な容積を増大させること、及び、放射線の立体角を増大させることに役立つ。更に、円錐形である第2の外側の磁極部分311は、有利には、セラミック部品(断熱壁)122の形態係数(view factor)を増大させるよう孔あけされ、それにより、大きいスペースではない非常にコンパクトな磁気回路が得られ、主チャネル124の側面の全てが放射を行うことを可能にする。
【0039】
本発明の密閉型の電子ドリフトプラズマスラスタは、高出力に適合しており、本発明の密閉型電子ドリフトプラズマスラスタが環状の主チャネルの良好な冷却を可能にするならば、単一の環状の大径コイルの代りに、複数の外側コイル131を設けられ、それによって、巻線に必要な電線の長さを最小にし、更に、一様な半径方向磁界が主チャネル124内に得られることを確保する措置がとられる。
【0040】
用語「加速チャネル124内の一様な磁界輪郭」は、本明細書において、チャネル124内の磁界が、スラスタの軸線を含む任意の平面において同一であるということを意味するのに用いられる。
【0041】
本発明によれば、一様な半径方向磁界が主チャネル124内に得られ、その理由は、外側の磁極部分134の凹形の内周面134aと内側の磁極部分135の凸形の外周面135aの両方がそれぞれ、円筒面と異なるように調整された輪郭を有し、それらの間に、幅が変化する隙間を形成するからであり、かかる隙間は、外側コイル131に隣接した最大値領域(最大幅領域)232と、外側コイル131と外側コイル131の間に位置する最小値領域(最小幅領域)231を有している(図2及び図3参照)。
【0042】
図3において、破線のトレース434a,435aは、補正せずに厳密な円筒形であった場合の凹形の内周面134a及び凸形の外周面135aの位置を示す。
【0043】
更に、回転体を形成する本質的に円錐形である上流側の(第2の)内側の磁極部分351の異形周縁部351a、及び、本質的に円錐形である上流側の(第2の)外側の磁極部分311の異形周縁部311aもそれぞれ、主チャネル124内における磁界のプロファイルを全方位角にわたって(全周にわたって)一定に維持するように調整された輪郭を有し、かかる輪郭は、外側コイル131に隣接したところに、スラスタの軸線の方向に凹んだ部分を有している(図1及び図4参照)。図4では、破線のトレース411aは、補正されていない場合の異形周縁部311a、即ち、先行技術のように形成されることにより凹み部分を有していない場合の異形周縁部311aの形状を示す。
【0044】
考えられる第1の方法では、内側の磁極部分135及び外側の磁極部分134aの補正輪郭135a,134aを得るための補正を、3次元磁界計算ソフトウェアを用いて計算するのがよいことに注目すべきであり、3次元磁界計算ソフトウェアを使用して、最初、外側コイル131と隣接したところの磁界の増加分を計算し、次に、磁界を一様にするのに必要な隙間の増加分を決定する。図3は、正方形の頂点のところに実質的に配置された磁気コア137に取付けられた4つの外側コイル131を有する実施形態に関し、図3では、外側コイル131と隣接した領域232の隙間の幅が、磁気コア137から45°のところに位置する領域231の隙間の幅よりも大きく、コア137から45°のところに位置する領域231の隙間の幅が最小である。図3では、補正前の外側の磁極部分134の内周面の輪郭434a、及び、補正前の内側の磁極部分135の外周面の輪郭435aが破線で引かれ、補正後の内周面及び外周面の輪郭が連続線で引かれている。いったん補正を計算したら、数値制御工作機械等の使用を含む機械加工を使用して、所望の表面134a,135a,311a,351aを得る。
【0045】
考えられる第2の方法では、補正を、繰返し法により実験的に決定するのがよいことに注目すべきであり、軸対称である形態上の磁界の1回目の3次元測定をした後、1回目の数値制御機械加工による補正を実施し、3次元磁界の分布を再び測定する。1回目の補正が満足でない等の場合、2回目の機械加工作業を実施する。
【0046】
本発明はまた、特許文献5に記載されているような、磁気シールドを備えた密閉型の電子ドリフトプラズマスラスタに適用可能である。
【0047】
図5〜図7は、かかるプラズマスラスタを示し、このプラズマスラスタは、環状のアノードを形成するガスマニホルド1と、カソード2と、環状の放電チャンバ3と、放電チャンバ3を包囲し且つ自由端表面5aで終端する外側の磁気シールド5と、凹形の周面6aで終端する外側の磁極部分6と、凸形の周面7aで終端する内側の磁極部分7と、磁気回路8と、内側磁界を生じさせる中央コイル9と、外側磁界を生じさせる複数の外側コイル10と、中央コア12と、熱シールド13と、支持体17とを有している。
【0048】
図5では、4つの外側コイル10I,10II、10III,10IVが、外側の磁極部分6と一緒に見られる。
【0049】
図1〜図4の実施形態の場合と同様、磁極部分6の凹形の内周面6aと磁極部分7の凸形の外周面7aはそれぞれ、円筒面と異なるように調整された輪郭を有し、かかる輪郭は、凹形の内周面6aと凸形の外周面7aとの間に、幅が変化する隙間を形成し、かかる隙間は、外側コイル10と隣接した最大値領域(最大幅領域)と、外側コイル10と外側コイル(図5のコイル10I,10II、10III,10IV)の間の最小値領域(最小幅領域)を有する。図5において、補正前の面6a,7a、即ち、厳密に円形である補正前の表面の輪郭が、破線で引かれている。
【0050】
図5〜図7のスラスタは、本質的に円筒形である内側の磁気シールド4を有し、内側の磁気シールド4は、カソード2に近い方の自由端部のところに、異形周縁部4aを有している。内側の磁気シールド4の異形周縁部4a及び外側の磁気シールド5の異形周縁部5aはそれぞれ、磁界のプロファイルを全方位角にわたって(全周にわたって)一定に維持するように調整された輪郭を有し、調整された輪郭は、外側コイル10と隣接したところに、スラスタの軸線の方向に凹んだ部分を有している。図7では、調整後の異形周縁部5aの輪郭を連続線で示し、調整前の異形周縁部5a輪郭405aを破線で示す。
【符号の説明】
【0051】
1 ガスマニホルド(アノード)
2 カソード
3 放電チャンバ(主チャネル)
4 内側の磁気シールド(内側の上流側磁極部分)
4a 異形周縁部
5 外側の磁気シールド
5a 異形周縁部
6 外側の磁極部分(外側の第1の磁極部分)
6a 凹形の内周面
7 内側の磁極部分(内側の第2の磁極部分)
7a 凸形の外周面
8 磁気回路
9 中央コイル(第1のコイル)
10 外側コイル
12 中央コア(軸線方向磁気コア)
124 主チャネル
125 アノード
126 管
127 ガスマニホルド
131 外側コイル
133 内側コイル(第1のコイル)
134 外側の磁極部分(外側の第1の磁極部分)
134a 凹形の内周面
135 内側の磁極部分(内側の第2の磁極部分)
135a 凸形の外周面
137 外側の磁気コア
138 軸線方向磁気コア
140 カソード
231 最小値領域
232 最大値領域
311 第2の外側の磁極部分(外側の上流側磁極部分)
311a 異形周縁部
351 第2の内側の磁極部分(内側の上流側磁極部分)
351a 異形周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型の電子ドリフトスラスタであって、
前記電子ドリフトスラスタの軸線周りに設けられた、イオン化及び加速のための環状の主チャネル(124;3)と、
少なくとも1つの中空のカソード(140;2)と、
前記環状の主チャネル(124;3)と同心に設けられた環状のアノード(125;1)と、
前記アノード(125;1)にイオン化可能なガスを供給する管(126)及びマニホルド(127)と、
前記環状の主チャネル(124;3)中に磁界を生じさせる磁気回路と、を有し、
前記磁気回路は、第1のコイル(133;9)によって包囲された少なくとも1つの軸線方向磁気コア(138;12)と、外側コイル(131;10)によって包囲された複数の外側の磁気コア(137)とを有し、前記軸線方向磁気コアは、回転体を形成する内側の上流側磁極部分(351)によって包囲され、
前記磁気回路は、更に、本質的に半径方向に凹形の内周面(134a;6a)を有する外側の第1の磁極部分(134;6)と、本質的に半径方向に凸形の外周面(135a;7a)を有する内側の第2の磁極部分(135;7)と、を有し、
前記凹形の内周面(134a;6a)及び前記凸形の外周面(135a;7a)はそれぞれ、円筒面と異なるように調整された輪郭を有し、それにより、前記内周面と前記外周面の間に、幅が変化する隙間を形成し、前記隙間は、一様な半径方向磁界を生じさせるために、前記外側コイル(131;10)と隣接した最大値領域(232)と、前記複数の外側コイル(131;10)の間に位置する最小値領域(231)とを有する、電子ドリフトスラスタ。
【請求項2】
回転体を形成する前記内側の上流側磁極部分(351)は、本質的に円錐形であり、前記カソード(140)に近い方の自由端部のところに、異形周縁部(351a)を有する、請求項1に記載の電子ドリフトスラスタ。
【請求項3】
前記磁気回路は、更に、本質的に円錐形である外側の上流側磁極部分(311)を有し、前記外側の上流側磁極部分(311)は、前記カソード(140)に近い方の自由端部のところに、異形周縁部(311a)を有し、
回転体を形成し且つ本質的に円錐形である前記内側の上流側磁極部分(351)の異形周縁部(351a)、及び、本質的に円錐形である前記外側の上流側磁極部分(311)の異形周縁部(311a)はそれぞれ、前記磁界のプロファイルを全方位にわたって一定に保つように調整された輪郭を有し、その結果、前記外側コイル(131)に隣接したところに、前記電子ドリフトスラスタの軸線方向に凹んだ部分を有する、請求項2に記載の電子ドリフトスラスタ。
【請求項4】
回転体を形成する前記内側の上流側磁極部分(4)は、本質的に円筒形である内側の磁気シールドを有し、前記内側の磁気シールドは、前記カソード(2)に近い方の自由端部のところに、異形周縁部(4a)を有する、請求項1に記載の電子ドリフトスラスタ。
【請求項5】
前記磁気回路は、更に、本質的に円筒形である外側の磁気シールド(5)を有し、前記外側の磁気シールド(5)は、前記カソード(2)に近い方の自由端部のところに、異形周縁部(5a)を有し、
前記内側の磁気シールド(4)の異形周縁部(4a)、及び、前記外側の磁気シールド(5)の異形周縁部(5a)はそれぞれ、前記磁界のプロファイルを全方位にわたって一定に保つように調整された輪郭を有し、その結果、前記外側コイル(131)に隣接したところに、前記電子ドリフトスラスタの軸線方向に凹んだ部分を有する、請求項4に記載の電子ドリフトスラスタ。
【請求項6】
前記電子ドリフトスラスタは、4つの外側の磁気コア(137)を包囲する4つの外側コイル(131;10)を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の電子ドリフトスラスタ。
【請求項7】
前記電子ドリフトスラスタは、3つの外側の磁気コア(137)を包囲する3つの外側コイル(131;10)を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の電子ドリフトスラスタ。
【請求項8】
前記電子ドリフトスラスタは、2つの外側の磁気コア(137)を包囲する2つの外側コイル(131;10)を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載の電子ドリフトスラスタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−174894(P2010−174894A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−31766(P2010−31766)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)