説明

密閉型電池および密閉型電池の製造方法

【課題】本発明は、外装のコストアップをともなうことなく、ケースの開口部への蓋体の圧入による、密封型電池内への金属異物の混入を防止することができる、密閉型電池および密閉型電池の製造方法を提供するものである。
【解決手段】一面が開口する有底角筒形状のケース2と、前記ケース2の開口部2aを閉塞する蓋体3とで構成される外装1を備えた密閉型電池であって、前記ケース2の開口部2aにおける周縁部21の内周面には段差部22が形成され、前記ケース2の開口部2aは、前記ケース2の短辺側および長辺側の各辺2b・2cのうちの少なくとも一辺において、前記段差部22と連続する深さにまで前記周縁部21を切り欠いて形成した凹部23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面が開口するケースと、前記ケースの開口部を閉塞する蓋体とで構成される外装を備えた密閉型電池および密閉型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池などの電池においては、一面が開口する有底角筒形状のケースと、平板状に形成され前記ケースの開口部を閉塞する蓋体とで構成される外装に発電要素を封入して構成される、角型の密閉型電池が知られている。
このような角型の密閉型電池の外装においては、有底角筒形状のケースにおける開口部の内周面に段差部を形成し、前記開口部の段差部が形成された部分に蓋体を嵌合して、嵌合した蓋体とケースとを溶接することにより、前記開口部を封口することが行われている。
例えば、特許文献1には、有底角筒形状のケースの開口部における四隅の内周面および長辺側の内周面に段差部を形成し、前記段差部が形成された開口部に蓋体を嵌合して溶接により封口することで構成した密閉型電池が開示されている。
【0003】
また、有底角筒形状のケースにおける開口部内周面の全周にわたって段差部を形成し、前記開口部の段差部形成部分に蓋体を嵌合するように構成した外装を備える密閉型電池がある。
例えば、図13に示す密閉型電池の外装101は、その一面に開口部102aが形成される有底角筒形状のケース102と、ケース102の開口部102aに嵌合される蓋体103とを備えている。
【0004】
開口部102aはケース102の上面に開口しており、ケース102の上面における開口部102aの周縁は周縁部121となっている。開口部102aにおける周縁部121の内周面には、全周にわたって段差部122が形成されている。
段差部122は、周縁部121の上端よりも所定の寸法だけ内部側(下側)に入った部分が内周側に突出して形成されている。つまり、段差部122の外周には、段差部122から前記所定の寸法だけ上方に延出する周縁部121が配置されている。
【0005】
蓋体103は、ケース102の開口部102aに応じた形状および大きさに形成される平板状部材にて構成されている。蓋体103は、図14に示すように、ケース102の開口部102aに嵌合して、その下面を段差部122に係止することで、開口部102aを閉塞するように構成されている。
【0006】
図15に示すように、ケース102の長辺方向における外形寸法をDaとし、ケース102の長辺方向における内形寸法(段差部122が形成されている部分の内形寸法)をDbとし、ケース102の長辺方向における開口部102aの内寸法(周縁部121の内形寸法)をDcとした場合、蓋体103の長辺方向の外形寸法Ddは、蓋体103が開口部102aに確実に嵌合してケース102を封口できるように、ケース102の前記内形寸法Db以上、かつ開口部102aの内寸法Dc以下の寸法(Db≦Dd≦Dc)に設定されている。
【0007】
しかし、ケース102の長辺方向における開口部102aの内寸法Dcや、蓋体103の長辺方向の外形寸法Ddの寸法公差により、外形寸法Ddが内寸法Dcよりも大きくなってしまうことがある(例えば、開口部102aの内寸法Dcが寸法公差の下限近くにあり、蓋体103の外形寸法Ddが寸法公差の上限近くにある場合)。
このような場合に、蓋体103を開口部102aに嵌合すると、蓋体103が開口部102aに圧入されることとなるが、蓋体103を開口部102aに圧入すると、ケース102および蓋体103が互いに相手部材により削られて金属異物が発生し、発生した金属異物が外装101内に封入される発電要素内部に混入して、密封型電池の内部短絡の原因となるおそれがある。
【0008】
例えば、ケース102の外形寸法Daが100mm、ケース102の内形寸法Dbが98mm、ケース102の開口部102aの内寸法Dcが98.4mmであった(つまり、ケース102の外形寸法Daが100mmで、ケース102の周縁部121の厚みが0.8mm、ケース102の段差部122より下方部分の厚みが1.0mmである)場合、蓋体103の外形寸法Ddを98.3±0.3mmに設定すると、蓋体103の外形寸法Ddの最大寸法が98.6mmとなり、開口部102aの内寸法Dc(98.4mm)より大きくなって、蓋体103がケース102の開口部102aに圧入される場合がある。
一方、蓋体103の外形寸法Ddが開口部102aの内寸法Dcより大きくならないようにするためには、蓋体103の外形寸法Ddの寸法公差を小さくする(例えば98.2±0.2mmとする)ことが考えられるが、外形寸法Ddの寸法公差を小さくすると、蓋体103の加工精度を高くする必要があり、外装101のコストアップの原因となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−135282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明においては、外装のコストアップをともなうことなく、ケースの開口部への蓋体の圧入による、密封型電池内への金属異物の混入を防止することができる、密閉型電池および密閉型電池の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する密閉型電池および密閉型電池の製造方法は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、一面が開口する有底角筒形状のケースと、前記ケースの開口部を閉塞する蓋体とで構成される外装を備えた密閉型電池であって、前記ケースの開口部における周縁部の内周面には段差部が形成され、前記ケースの開口部は、前記ケースの短辺側および長辺側の各辺のうちの少なくとも一辺において、前記段差部と連続する深さにまで前記周縁部を切り欠いて形成した凹部を備える。
【0012】
また、請求項2記載の如く、前記蓋体は、前記ケースの開口部を閉塞した際に、前記開口部における前記凹部と対向する部位が、他の部位よりも薄厚に形成される。
【0013】
また、請求項3記載の如く、前記凹部は、前記ケースの開口部における、前記ケースの短辺側の対向する二辺、または長辺側の対向する二辺に形成される。
【0014】
また、請求項4記載の如く、前記ケースの開口部の前記蓋体による閉塞は、前記蓋体を前記ケースの開口部に嵌合し、前記蓋体の外周部と前記ケースの開口部とを溶接にて接合することにより行われ、前記蓋体の薄厚に形成された部位と前記ケースの開口部における前記凹部とが、貫通溶接により接合される。
【0015】
また、請求項5記載の如く、一面が開口する有底角筒形状のケースと、前記ケースの開口部を閉塞する蓋体とで構成される外装を備えた密閉型電池の製造方法であって、前記ケースの開口部における周縁部の内周面に段差部を形成し、前記ケースの開口部に、前記ケースの短辺側および長辺側の各辺のうちの少なくとも一辺において、前記段差部と連続する深さにまで前記周縁部を切り欠いて凹部を形成し、前記ケースの開口部を、前記蓋体により閉塞する。
【0016】
また、請求項6記載の如く、前記蓋体の、前記ケースの開口部を閉塞した際に、前記開口部における前記凹部と対向する部位を、他の部位よりも薄厚に形成する。
【0017】
また、請求項7記載の如く、前記凹部を、前記ケースの開口部における、前記ケースの短辺側の対向する二辺、または長辺側の対向する二辺に形成する。
【0018】
また、請求項8記載の如く、前記ケースの開口部の前記蓋体による閉塞は、前記蓋体を前記ケースの開口部に嵌合し、前記蓋体の外周部と前記ケースの開口部とを溶接にて接合することにより行い、前記蓋体の薄厚に形成された部位と前記ケースの開口部における前記凹部とを、貫通溶接により接合する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外装のコストダウンを図りながら、密封型電池内への金属異物の混入を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態にかかる、ケースの開口部を蓋体により閉塞した状態の外装を示す斜視図である。
【図3】第一の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す平面図である。
【図4】第二の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す斜視図である。
【図5】第二の実施形態にかかる、ケースの開口部を蓋体により閉塞した状態の外装を示す斜視図である。
【図6】第二の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す平面図である。
【図7】第三の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す斜視図である。
【図8】第三の実施形態にかかる、ケースの開口部を蓋体により閉塞した状態の外装を示す斜視図である。
【図9】第三の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す平面図である。
【図10】第四の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す斜視図である。
【図11】第四の実施形態にかかる、ケースの開口部を蓋体により閉塞した状態の外装を示す斜視図である。
【図12】第四の実施形態にかかる外装のケースおよび蓋体を示す平面図である。
【図13】従来の外装のケースおよび蓋体を示す斜視図である。
【図14】従来の、ケースの開口部を蓋体により閉塞した状態の外装を示す斜視図である。
【図15】従来の外装のケースおよび蓋体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る密閉型電池は、例えばリチウムイオン二次電池であり、一面が開口して開口部2aが形成される有底角筒形状のケース2と、平板状に形成され前記ケース2の開口部2aを閉塞する蓋体3とで構成される外装1に発電要素(図示略)を封入して構成される、角型の密閉型電池に構成されている。
即ち、本実施形態の密閉型電池の外装1は、その一面に開口部2aが形成される有底角筒形状のケース2と、ケース2の開口部2aに嵌合される蓋体3とを備えている。
【0023】
開口部2aはケース2の上面に開口しており、ケース2の上面における開口部2aの周縁(ケース2の各側壁面の上端部)は周縁部21となっている。開口部2aにおける周縁部21の内周面には、全周にわたって段差部22が形成されている。
段差部22は、周縁部21の上端よりも所定の寸法dだけ内部側(下側)に入った部分が内周側に突出して形成されている。つまり、段差部22の外周には、段差部22から前記所定の寸法dだけ上方に延出する周縁部21が配置されている。
【0024】
蓋体3は、ケース2の開口部2aに応じた形状および大きさに形成される平板状部材にて構成されている。蓋体3は、図2に示すように、ケース2の開口部2aに嵌合して、その下面を段差部22に係止することで、開口部2aを閉塞するように構成されている。
【0025】
ケース2の開口部2aはケース2の各側壁面により矩形状に形成されており、開口部2aの矩形状は、短辺側の各辺2b・2bおよび長辺側の各辺2c・2cにより形成されている(以降、ケース2における辺2bが延出する方向を「短辺方向」と、辺2cが延出する方向を「長辺方向」と、適宜記載する)。
そして、ケース2は、開口部2aにおける短辺側の各辺2b・2bのうちの一辺において、前記段差部22と連続する深さにまで周縁部21を切り欠いて形成した凹部23を備えている。
【0026】
つまり、段差部22の外周における、短辺側の一方(図3における左方)の辺2b、および長辺側の両方(図3における上下方)の辺2c・2cの部分には、段差部22から寸法dだけ上方に延出する周縁部21が形成されている。一方、短辺側の他方(図3における右方)の辺2bの部分においては、周縁部21が切り欠かれていて、段差部22の上面と凹部23の上面とが連続した平面(面一)となっている。
このように、本実施形態のケース2においては、開口部2aは、長辺側の両方の辺2c・2cに形成される周縁部21と、短辺側の一方の辺2bに形成される周縁部21と、短辺側の他方の辺2bに形成される凹部23とで囲まれる範囲となっている。
【0027】
前記蓋体3においては、蓋体3がケース2の開口部2aを閉塞した際に、開口部2aにおける凹部23と対向する部位が、他の部位よりも薄厚に形成される薄厚部3aとして構成されている。薄厚部3aは、蓋体3の長辺方向における他端部(図3における右端部)に形成されている。
薄厚部3aは、蓋体3の上面側を切り欠くことにより構成されている。蓋体3の上面においては、薄厚部3aと他部との間に段差が形成されており、蓋体3の下面においては、薄厚部3aと他部との間に段差が形成されておらず、全面が平面状に形成されている。
【0028】
蓋体3によるケース2の開口部2aの閉塞は、蓋体3を開口部2aに嵌合して、蓋体3の下面をケース2の段差部22に係止することにより行う。このように、蓋体3の下面がケース2の段差部22に係止した状態では、同様に蓋体3の薄厚部3aもケース2の凹部23に係止する。
また、開口部2aに嵌合した蓋体3の外周部とケース2の周縁部21、および蓋体3の薄厚部3aとケース2の凹部23(凹部23に連続する段差部22も含む)とを溶接することにより、外装1を密封する。特に、蓋体3の薄厚部3aとケース2の凹部23および段差部22との間では貫通溶接が行われる。
このように貫通溶接を行った箇所では、溶接痕のケース2内部への混入を抑制することができるとともに、溶接代を小さくしつつ溶接強度の向上を図ることが可能となる。
【0029】
ここで、図3に示すように、ケース2の長辺方向における外形寸法をDa1とし、ケース2の長辺方向における内形寸法(段差部22が形成されている部分の内形寸法)をDb1とし、ケース2の長辺方向における開口部2aの内寸法(ケース2の開口部2aにおける一方の短辺2bに形成される周縁部21の内周と、他方の短辺2bに形成される凹部23の外周との間の寸法)をDc1とし、蓋体3の長辺方向の外形寸法をDd1とした場合、蓋体3の外形寸法をDd1は、蓋体3により開口部2aを確実に閉塞することができるとともに、蓋体3がケース2の外形からはみ出さないようにすることが必要であることから、ケース2の内形寸法Db1以上、かつ開口部2aの内寸法Dc1以下の寸法(Db1≦Dd1≦Dc1)となるように設定することが好ましい。
【0030】
つまり、蓋体3の長辺方向の外形寸法Dd1が、ケース2の内形寸法Db1よりも短かった場合は、長辺方向において蓋体3が開口部2aを完全に塞ぐことができず、逆に開口部2aの内寸法Dc1よりも長かった場合は、蓋体3の薄厚部3a側端部がケース2の外形からはみ出して、外装1の外形寸法に影響を及ぼすこととなるため、蓋体3の外形寸法Dd1を上述の範囲(Db1≦Dd1≦Dc1)に設定している。
【0031】
例えば、ケース2の外形寸法Da1が100mm、ケース2の内形寸法Db1が98mm、ケース2の開口部2aの内寸法Dc1が99.2mmである(つまり、ケース2の外形寸法Da1が100mmで、ケース2の周縁部21の厚みが0.8mm、ケース2の段差部22が形成されている部分の厚みが1.0mmである)場合に、蓋体3の外形寸法Dd1を98.3±0.3mmに設定すると、蓋体3の外形寸法Dd1の最大寸法は98.6mmとなるが、開口部2aの内寸法Dc1(99.2mm)よりも小さく、蓋体3がケース2の開口部2aに圧入されることはない。
【0032】
また、蓋体3の外形寸法Dd1は、Db1≦Dd1≦Dc1を満たすように設定されるため、98mm〜99.2mmの範囲となる。従って、寸法公差をプラス方向とマイナス方向へ均等に配分して蓋体3の外形寸法Dd1を設定すると、外形寸法Dd1は98.6±0.6mmに設定することが可能となる。
【0033】
つまり、従来のケース102のように、開口部102aの全周にわたって周縁部122が形成されていると、ケース102の外形寸法Daが100mm、ケース102の周縁部121の厚みが0.8mm、ケース102の段差部122より下方部分の厚みが1.0mmである(ケース102の内形寸法Dbが98mm、ケース102の開口部102aの内寸法Dcが98.4mmである)と、蓋体103の外形寸法Ddを98.3±0.3mmに設定した場合でも、蓋体103がケース102の開口部102aに圧入されてしまうことがある。
しかし、本実施形態における外装1では、蓋体3の外形寸法Dd1を、従来よりも寸法公差の大きい98.6±0.6mmに設定した場合でも、蓋体3がケース2の開口部2aに圧入されてしまうことはない。
従って、蓋体3の加工精度を従来よりも低く設定して外装のコストダウンを図りながら、密封型電池内への金属異物の混入を防止することが可能となる。
【0034】
なお、本実施形態においては、開口部2aの凹部23の上面は段差部22の上面と連続した平面となっているため、仮に蓋体3の外形寸法Dd1が、開口部2aの内寸法Dc1よりも大きくなったとしても、(蓋体3の薄厚部3a側端部がケース2の外形から突出するが)蓋体3が開口部2aに圧入されることはない。
【0035】
次に、外装1の第二の実施形態について説明する。
外装1のケース2は、開口部2aに形成される凹部23を、短辺側の両方の辺2b・2bに形成することができる。
【0036】
図4〜図6に示す第二の実施形態の外装1においては、ケース2の開口部2aにおける短辺側の各辺2b・2bに、段差部22と連続する深さにまで周縁部21を切り欠いて形成した凹部23・23が形成されている。
つまり、段差部22の外周における、長辺側の両方(図6における上下方)の辺2c・2cの部分には、段差部22から寸法dだけ上方に延出する周縁部21が形成されている。一方、短辺側の両方(図6における左右方)の辺2b・2bの部分においては、周縁部21が切り欠かれていて、段差部22の上面と凹部23の上面とが連続した平面(面一)となっている。
このように、本実施形態のケース2においては、開口部2aは、長辺側の両方の辺2c・2cに形成される周縁部21と、短辺側の両方の辺2b・2bに形成される凹部23・23とで囲まれる範囲となっている。
【0037】
また、第二の実施形態の外装1における蓋体3は、蓋体3がケース2の開口部2aを閉塞した際に、開口部2aにおける凹部23・23と対向する部位が、他の部位よりも薄厚に形成される薄厚部3a・3aとして構成されている。薄厚部3a・3aは、蓋体3の長辺方向における両端部(図6における左右端部)に形成されている。
薄厚部3a・3aは、蓋体3の上面側を切り欠くことにより構成されている。蓋体3の上面においては、薄厚部3a・3aと他部との間に段差が形成されており、蓋体3の下面においては、薄厚部3a・3aと他部との間に段差が形成されておらず、全面が平面状に形成されている。
【0038】
蓋体3がケース2の開口部2aに嵌合し、蓋体3の下面が段差部22に係止した、蓋体3によりケース2の開口部2aを閉塞した状態では、同様に蓋体3の薄厚部3a・3aもケース2の凹部23・23に係止する。
また、本実施形態においても、開口部2aに嵌合した蓋体3の外周部とケース2の周縁部21、および蓋体3の薄厚部3a・3aとケース2の凹部23・23(凹部23・23に連続する段差部22・22も含む)とを溶接することにより外装1が密封され、特に、蓋体3の薄厚部3a・3aとケース2の凹部23・23および段差部22・22との間で貫通溶接が行われる。
【0039】
ここで、図6に示すように、ケース2の長辺方向における外形寸法をDa2とし、ケース2の長辺方向における内形寸法(段差部22が形成されている部分の内形寸法)をDb2とし、ケース2の長辺方向における開口部2aの内寸法(ケース2の開口部2aにおける一方の短辺2bに形成される凹部23の外周と、他方の短辺2bに形成される凹部23の外周との間の寸法)をDc2とし、蓋体3の長辺方向の外形寸法をDd2とした場合、蓋体3の外形寸法をDd2は、蓋体3により開口部2aを確実に閉塞することができるとともに、蓋体3がケース2の外形からはみ出さないようにすることが必要であることから、ケース2の内形寸法Db2以上、かつ開口部2aの内寸法Dc2以下の寸法(Db2≦Dd2≦Dc2)となるように設定することが好ましい。
【0040】
つまり、蓋体3の長辺方向の外形寸法Dd2が、ケース2の内形寸法Db2よりも短かった場合は、長辺方向において蓋体3が開口部2aを完全に塞ぐことができず、逆に開口部2aの内寸法Dc2よりも長かった場合は、蓋体3の薄厚部3a・3aが形成される端部がケース2の外形からはみ出して、外装1の外形寸法に影響を及ぼすこととなるため、蓋体3の外形寸法Dd2を上述の範囲(Db2≦Dd2≦Dc2)に設定している。
【0041】
例えば、ケース2の外形寸法Da2が100mm、ケース2の内形寸法Db2が98mm、ケース2の開口部2aの内寸法Dc2が100mmである(つまり、ケース2の外形寸法Da2が100mmで、ケース2の段差部22が形成されている部分の厚みが1.0mmである)場合に、蓋体3の外形寸法Dd2を98.3±0.3mmに設定すると、蓋体3の外形寸法Dd2の最大寸法は98.6mmとなるが、開口部2aの内寸法Dc2(100mm)よりも小さく、蓋体3がケース2の開口部2aに圧入されることはない。
【0042】
また、蓋体3の外形寸法Dd2は、Db2≦Dd2≦Dc2を満たすように設定されるため、98mm〜100mmの範囲となる。従って、寸法公差をプラス方向とマイナス方向へ均等に配分して蓋体3の外形寸法Dd2を設定すると、外形寸法Dd2は99.0±1.0mmに設定することが可能となる。
つまり、本実施形態における外装1では、蓋体3の外形寸法Dd2を、従来(98.3±0.3mm)よりも寸法公差の大きい99.0±1.0mmに設定した場合でも、蓋体3がケース2の開口部2aに圧入されてしまうことはない。
従って、蓋体3の加工精度を従来よりも低く設定して外装のコストダウンを図りながら、密封型電池内への金属異物の混入を防止することが可能となる。
【0043】
次に、外装1の第三の実施形態について説明する。
外装1のケース2は、開口部2aに形成される凹部23を、長辺側の一方の辺2cに形成することができる。
【0044】
図7〜図9に示す第三の実施形態の外装1においては、ケース2の開口部2aにおける長辺側の各辺2c・2cのうちの一辺において、前記段差部22と連続する深さにまで周縁部21を切り欠いて形成した凹部23が形成されている。
つまり、段差部22の外周における、長辺側の一方(図9における上方)の辺2c、および短辺側の両方(図9における左右方)の辺2b・2bの部分には、段差部22から寸法dだけ上方に延出する周縁部21が形成されている。一方、長辺側の他方(図9における下方)の辺2cの部分においては、周縁部21が切り欠かれていて、段差部22の上面と凹部23の上面とが連続した平面(面一)となっている。
このように、本実施形態のケース2においては、開口部2aは、短辺側の両方の辺2b・2bに形成される周縁部21と、長辺側の一方の辺2cに形成される周縁部21と、長辺側の他方の辺2cに形成される凹部23とで囲まれる範囲となっている。
【0045】
また、第三の実施形態の外装1における蓋体3は、蓋体3がケース2の開口部2aを閉塞した際に、開口部2aにおける凹部23と対向する部位が、他の部位よりも薄厚に形成される薄厚部3aとして構成されている。薄厚部3aは、蓋体3の短辺方向における他端部(図9における下端部)に形成されている。
薄厚部3aは、蓋体3の上面側を切り欠くことにより構成されている。蓋体3の上面においては、薄厚部3aと他部との間に段差が形成されており、蓋体3の下面においては、薄厚部3aと他部との間に段差が形成されておらず、全面が平面状に形成されている。
【0046】
蓋体3がケース2の開口部2aに嵌合し、蓋体3の下面が段差部22に係止した、蓋体3によりケース2の開口部2aを閉塞した状態では、同様に蓋体3の薄厚部3aもケース2の凹部23に係止する。
また、本実施形態においても、開口部2aに嵌合した蓋体3の外周部とケース2の周縁部21、および蓋体3の薄厚部3aとケース2の凹部23(凹部23に連続する段差部22も含む)とを溶接することにより外装1が密封され、特に、蓋体3の薄厚部3aとケース2の凹部23および段差部22との間で貫通溶接が行われる。
【0047】
ここで、図9に示すように、ケース2の短辺方向における外形寸法をDa3とし、ケース2の短辺方向における内形寸法(段差部22が形成されている部分の内形寸法)をDb3とし、ケース2の短辺方向における開口部2aの内寸法(ケース2の開口部2aにおける一方の長辺2cに形成される周縁部21の内周と、他方の長辺2cに形成される凹部23の外周との間の寸法)をDc3とし、蓋体3の短辺方向の外形寸法をDd3とした場合、蓋体3の外形寸法をDd3は、蓋体3により開口部2aを確実に閉塞することができるとともに、蓋体3がケース2の外形からはみ出さないようにすることが必要であることから、ケース2の内形寸法Db3以上、かつ開口部2aの内寸法Dc3以下の寸法(Db3≦Dd3≦Dc3)となるように設定することが好ましい。
【0048】
つまり、蓋体3の短辺方向の外形寸法Dd3が、ケース2の内形寸法Db3よりも短かった場合は、短辺方向において蓋体3が開口部2aを完全に塞ぐことができず、逆に開口部2aの内寸法Dc3よりも長かった場合は、蓋体3の薄厚部3a側端部がケース2の外形からはみ出して、外装1の外形寸法に影響を及ぼすこととなるため、蓋体3の外形寸法Dd3を上述の範囲(Db3≦Dd3≦Dc3)に設定している。
【0049】
このように、ケース2における開口部2aの凹部23を一方の長辺2cに形成した場合も、凹部23を一方の短辺2bに形成した場合と同様に、蓋体3の短辺側における外形寸法Dd3の寸法公差を、従来よりも大きく設定した場合でも、蓋体3がケース2の開口部2aに圧入されてしまうことを防止できる。
従って、蓋体3の加工精度を従来よりも低く設定して外装のコストダウンを図りながら、密封型電池内への金属異物の混入を防止することが可能となる。
【0050】
次に、外装1の第四の実施形態について説明する。
外装1のケース2は、開口部2aに形成される凹部23を、長辺側の両方の辺2c・2cに形成することができる。
【0051】
図10〜図12に示す第四の実施形態の外装1においては、ケース2の開口部2aにおける長辺側の各辺2c・2cに、段差部22と連続する深さにまで周縁部21を切り欠いて形成した凹部23・23が形成されている。
つまり、段差部22の外周における、短辺側の両方(図12における左右方)の辺2b・2bの部分には、段差部22から寸法dだけ上方に延出する周縁部21が形成されている。一方、長辺側の両方(図12における上下方)の辺2c・2cの部分においては、周縁部21が切り欠かれていて、段差部22の上面と凹部23の上面とが連続した平面(面一)となっている。
このように、本実施形態のケース2においては、開口部2aは、短辺側の両方の辺2b・2bに形成される周縁部21と、長辺側の両方の辺2c・2cに形成される凹部23・23とで囲まれる範囲となっている。
【0052】
また、第四の実施形態の外装1における蓋体3は、蓋体3がケース2の開口部2aを閉塞した際に、開口部2aにおける凹部23・23と対向する部位が、他の部位よりも薄厚に形成される薄厚部3a・3aとして構成されている。薄厚部3a・3aは、蓋体3の短辺方向における両端部(図12における上下端部)に形成されている。
薄厚部3a・3aは、蓋体3の上面側を切り欠くことにより構成されている。蓋体3の上面においては、薄厚部3a・3aと他部との間に段差が形成されており、蓋体3の下面においては、薄厚部3a・3aと他部との間に段差が形成されておらず、全面が平面状に形成されている。
【0053】
蓋体3がケース2の開口部2aに嵌合し、蓋体3の下面が段差部22に係止した、蓋体3によりケース2の開口部2aを閉塞した状態では、同様に蓋体3の薄厚部3a・3aもケース2の凹部23・23に係止する。
また、本実施形態においても、開口部2aに嵌合した蓋体3の外周部とケース2の周縁部21、および蓋体3の薄厚部3a・3aとケース2の凹部23・23(凹部23・23に連続する段差部22・22も含む)とを溶接することにより外装1が密封され、特に、蓋体3の薄厚部3a・3aとケース2の凹部23・23および段差部22・22との間で貫通溶接が行われる。
【0054】
ここで、図12に示すように、ケース2の短辺方向における外形寸法をDa4とし、ケース2の短辺方向における内形寸法(段差部22が形成されている部分の内形寸法)をDb4とし、ケース2の短辺方向における開口部2aの内寸法(ケース2の開口部2aにおける一方の長辺2cに形成される凹部23の外周と、他方の長辺2cに形成される凹部23の外周との間の寸法)をDc4とし、蓋体3の短辺方向の外形寸法をDd4とした場合、蓋体3の外形寸法をDd4は、蓋体3により開口部2aを確実に閉塞することができるとともに、蓋体3がケース2の外形からはみ出さないようにすることが必要であることから、ケース2の内形寸法Db4以上、かつ開口部2aの内寸法Dc4以下の寸法(Db4≦Dd4≦Dc4)となるように設定することが好ましい。
【0055】
つまり、蓋体3の短辺方向の外形寸法Dd4が、ケース2の内形寸法Db4よりも短かった場合は、短辺方向において蓋体3が開口部2aを完全に塞ぐことができず、逆に開口部2aの内寸法Dc4よりも長かった場合は、蓋体3の薄厚部3a・3aが形成される端部がケース2の外形からはみ出して、外装1の外形寸法に影響を及ぼすこととなるため、蓋体3の外形寸法Dd4を上述の範囲(Db4≦Dd4≦Dc4)に設定している。
【0056】
このように、ケース2における開口部2aの凹部23を両方の長辺2c・2cに形成した場合も、凹部23を両方の短辺2b・2bに形成した場合と同様に、蓋体3の短辺側における外形寸法Dd4の寸法公差を、従来よりも大きく設定した場合でも、蓋体3がケース2の開口部2aに圧入されてしまうことを防止できる。
従って、蓋体3の加工精度を従来よりも低く設定して外装のコストダウンを図りながら、密封型電池内への金属異物の混入を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 外装
2 ケース
2a 開口部
3 蓋体
3a 薄厚部
21 周縁部
22 段差部
23 凹部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開口する有底角筒形状のケースと、前記ケースの開口部を閉塞する蓋体とで構成される外装を備えた密閉型電池であって、
前記ケースの開口部における周縁部の内周面には段差部が形成され、
前記ケースの開口部は、前記ケースの短辺側および長辺側の各辺のうちの少なくとも一辺において、前記段差部と連続する深さにまで前記周縁部を切り欠いて形成した凹部を備える、
ことを特徴とする密閉型電池。
【請求項2】
前記蓋体は、前記ケースの開口部を閉塞した際に、前記開口部における前記凹部と対向する部位が、他の部位よりも薄厚に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の密閉型電池。
【請求項3】
前記凹部は、前記ケースの開口部における、前記ケースの短辺側の対向する二辺、または長辺側の対向する二辺に形成される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の密閉型電池。
【請求項4】
前記ケースの開口部の前記蓋体による閉塞は、
前記蓋体を前記ケースの開口部に嵌合し、前記蓋体の外周部と前記ケースの開口部とを溶接にて接合することにより行われ、
前記蓋体の薄厚に形成された部位と前記ケースの開口部における前記凹部とが、貫通溶接により接合される、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の密閉型電池。
【請求項5】
一面が開口する有底角筒形状のケースと、前記ケースの開口部を閉塞する蓋体とで構成される外装を備えた密閉型電池の製造方法であって、
前記ケースの開口部における周縁部の内周面に段差部を形成し、
前記ケースの開口部に、前記ケースの短辺側および長辺側の各辺のうちの少なくとも一辺において、前記段差部と連続する深さにまで前記周縁部を切り欠いて凹部を形成し、
前記ケースの開口部を、前記蓋体により閉塞する、
ことを特徴とする密閉型電池の製造方法。
【請求項6】
前記蓋体の、前記ケースの開口部を閉塞した際に、前記開口部における前記凹部と対向する部位を、他の部位よりも薄厚に形成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の密閉型電池の製造方法。
【請求項7】
前記凹部を、前記ケースの開口部における、前記ケースの短辺側の対向する二辺、または長辺側の対向する二辺に形成する、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の密閉型電池の製造方法。
【請求項8】
前記ケースの開口部の前記蓋体による閉塞は、
前記蓋体を前記ケースの開口部に嵌合し、前記蓋体の外周部と前記ケースの開口部とを溶接にて接合することにより行い、
前記蓋体の薄厚に形成された部位と前記ケースの開口部における前記凹部とを、貫通溶接により接合する、
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の密閉型電池の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−114798(P2013−114798A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257682(P2011−257682)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】