説明

密閉型電池の製造方法

【課題】集電リードを蓋と共に電池缶の開口周縁にシーム溶接しても電池缶の開口を蓋で確実に封口できる密閉型電池の製造方法を得る。
【解決手段】左右横長の電池缶1の開口上面を塞ぐ蓋3の外周縁の長辺3aに、電極体2の外周側から導出した正極集電リード6を通すための切り欠き16を予め設けておく。切り欠き16の切り込み幅寸法は正極集電リード6の厚み寸法よりも小さく、切り欠き16の左右幅寸法は正極集電リード6の左右幅寸法よりも大きく設定してある。電池缶1内に電極体2を収容し、正極集電リード6を蓋3の切り欠き16に通した状態で蓋3を電池缶1の開口上面に嵌め込んだのちに、電池缶1の開口周縁3に蓋3の外周縁と共に正極集電リード6をシーム溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPDA(携帯情報端末)などの小型電子機器の電源などに用いる密閉型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1・2の密閉型電池は、有底角筒形状の電池缶と、電池缶の開口上面を塞ぐ蓋と、正極および負極を有して電池缶内に収容される電極体と、前記正極および前記負極にそれぞれ接続した正負の集電リードとを有する。そこでの正極集電リードは、電池缶の開口周縁と蓋の外周縁との間に挟み込まれた状態で、蓋と共に電池缶の開口周縁にシーム溶接される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−162792号公報(段落番号0017、図1−2)
【特許文献2】特開2003−272597号公報(段落番号0025、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1・2では、正極集電リードの厚みの分だけ電池缶の開口周縁が外方に押されて湾曲状に変形し、その湾曲状に変形した分だけ電池缶の開口周縁と蓋の外周縁との間において、広い範囲にわたって隙間が生じてしまう。このため、電池缶の開口周縁と蓋の外周縁との間を溶接で完全に封口することが容易ではないところに問題がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、集電リードを蓋と共に電池缶の開口周縁に溶接しても、電池缶の開口を確実に封口できる密閉型電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、図1に示すごとく、左右横長の電池缶1の開口上面を塞ぐ蓋3の外周縁の長辺3aに、電極体2の外周側から導出した集電リード6を通すための切り欠き16を予め設けておき、切り欠き16の切り込み幅寸法は、集電リード6の厚み寸法と同じかもしくは小さく、切り欠き16の左右幅寸法は、集電リード6の左右幅寸法と同じかもしくは大きく設定されており、電池缶1内に電極体2を収容し、集電リード6を蓋3の切り欠き16に通した状態で蓋3を電池缶1の開口上面に嵌め込んだのちに、電池缶1の開口周縁3に蓋3の外周縁と共に集電リード6を溶接することを特徴とする。ここでの集電リード6は、正極側に限らず負極側のそれであってもよい。切り欠き16の切り込み幅寸法は、蓋3を電池缶1の開口上面に嵌め込んだ際に、集電リード6が切り欠き16内にほぼ収まる程度に塑性変形できる範囲であれば集電リード6の厚み寸法よりも小さくできる。
【0007】
具体的には、蓋3の切り欠き16の切り込み幅寸法は、集電リード6の厚み寸法に対して0〜20μm小さく、切り欠き16の左右幅寸法は、集電リード6の左右幅寸法に対して0〜3mm大きく設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集電リード6を蓋3の切り欠き16に通した状態で電池缶1の開口上面に蓋3を嵌め込むので、集電リード6が蓋3の切り欠き16に嵌まり込む分だけ電池缶1の開口周縁が集電リード6によって外方に押されにくくなり、その分だけ電池缶1の開口周縁の変形が抑えられて、電池缶1の開口周縁と蓋3の外周縁との間に隙間が生じることが低減される。これによって電池缶1の開口周縁に蓋3の外周縁を確実に溶接できて、電池缶1の開口を蓋3で確実に封口できる。
【0009】
切り欠き16の切り込み幅寸法を集電リード6の厚み寸法と同じかもしくは小さくすることで、電池缶1の開口周縁と切り欠き16の周縁とで正極集電リード6を確りと挟持できるとともに、切り欠き16の切り込み幅寸法が小さくなる分だけ切り欠き16を溶接で確実に埋めることができる。
【0010】
切り欠き16の左右幅寸法を集電リード6の左右幅寸法と同じかもしくは大きくすることで、電極体2の製作誤差などによって正極集電リード6が左右方向に若干位置ずれしても正極集電リード6の導出端部を切り欠き16に確実に通すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および図2は、本発明に係る密閉型電池としてのリチウムイオン二次電池を示しており、上面に左右横長の開口を有する有底筒形状の電池缶1と、電池缶1内に収容される電極体2および非水電解液と、電池缶1の開口上面を塞ぐ左右横長の蓋3と、蓋3の内側に配置されるプラスチック製の絶縁体5などを備えている。電池缶1は、アルミニウムまたはその合金からなる板材を深絞り加工して上下縦長の薄型に形成してあり、左右幅寸法が18mm、上下高さ寸法が20mm、前後厚み寸法が5mmである。
【0012】
電極体2は、シート状の正極と負極とを微多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを間にして渦巻状に巻回してなる。正極の電極からは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる短冊状の正極集電リード6が上向きに導出されている。負極の電極からは、ニッケルや銅、あるいはこれらの複合体からなる短冊状の負極集電リード7が上向きに導出されている。
【0013】
各集電リード6・7は、左右幅寸法が3mm、厚み寸法が80μmである。正極集電リード6は電極体2の巻回方向の外周側に配されており、負極集電リード7は電極体2の巻回方向の内周側に配されている。
【0014】
蓋3は、アルミニウム合金などの板材をプレス成形してなり、電池缶1の開口周縁に蓋3の外周縁がレーザーでシーム溶接される。蓋3の中央には、上側の絶縁パッキング9および下側の絶縁板10を介して負極端子11が貫通状に取り付けられる。蓋3の左右方向の一端寄り(図2では右側)には、電解液を電池缶1内に注入するための注液孔12が上下貫通状に形成されている。
【0015】
注液孔12は、電解液の注入後に栓13で塞いで封口する。蓋3には、別に防爆用の溝15を形成してある。なお、防爆用の溝を電池缶1に設けたり、電池缶1と蓋3との間のシーム溶接の強度を一部だけ弱くして防爆を図ったりする場合などには、防爆用の溝15を蓋3に形成しなくてもよい。
【0016】
蓋3の外周縁における前後方向の一方の長辺3aであって蓋3の左右方向の一端寄り側には、正極集電リード6の導出端部を通すための切り欠き16を設けてある。切り欠き16は、前後切り込み幅寸法が75μm、左右幅寸法が4mmである。図3および図4に示すごとく正極集電リード6の導出端部を蓋3の切り欠き16に通して、正極集電リード6の導出端部と共に蓋3の外周縁を電池缶1の開口周縁にレーザーでシーム溶接することで、正極集電リード6が蓋3および電池缶1に対して電気的に導通した状態で固定される。蓋3および電池缶1の任意の位置にアルミニウムとニッケルとからなるクラッド材を溶接することで、正極端子部を形成することができる。
【0017】
負極端子11の下端には、図2に示すごとく、蓋3の内面において左右横長の薄板からなるリード体17が接続されている。このリード体17は、前記注液孔12の反対側に延びており、下側の絶縁板10で蓋3と絶縁されている。このリード体17の下面に負極集電リード7をレーザー溶接する。なお、リード体17は、注液孔12の下面に重ならない寸法や形状であれば注液孔12側に延びるように配してもよい。
【0018】
蓋3の切り欠き16の前後切り込み幅寸法を正極集電リード6の厚み寸法よりも僅かに小さく設定したことで、電池缶1の開口に蓋3を嵌め込んだ際には、図4に示すごとく電池缶1の開口周縁の長辺1aと切り欠き16の周縁とで正極集電リード6の導出端部が確りと挟持され、また前記シーム溶接で切り欠き16が確実に埋められる。
【0019】
一方、切り欠き16の前後切り込み幅寸法を小さくし過ぎると、電池缶1の開口に蓋3を嵌め込んだ際に正極集電リード6で電池缶1の開口周縁が外方に押されて湾曲状に変形するおそれがある。したがって、切り欠き16の前後切り込み幅寸法は、正極集電リード6の厚み寸法と同一にすることが好ましいが、部品の加工精度ならびに製造時の歩留まりを考慮すると、正極集電リード6の厚み寸法に対して0〜20μm小さくすることがより好ましい。上記の実施例では5μmに設定してある。
【0020】
蓋3の切り欠き16の左右幅寸法を正極集電リード6の左右幅寸法よりも大きくしたことで、正極集電リード6が左右方向に位置ずれしても正極集電リード6の導出端部が切り欠き16を通ることができる。シーム溶接で切り欠き16を確実に埋めるためには、切り欠き16の左右幅寸法と正極集電リード6の左右幅寸法との差ができる限り小さいことが好ましく、正極集電リード6の位置ずれを考慮すると、切り欠き16の左右幅寸法は、正極集電リード6の左右幅寸法に対して0〜3mm大きくすることが好ましいが、過度に隙間をあけると気密性および液密性を保って溶接することが困難になるため、溶接時の歩留まりを考慮して1〜2mm大きくすることがより好ましい。上記の実施例では1mmに設定してある。
【0021】
電極体2は、次のようにして作製される。負極集電リード7の下端基部は、図1に示すごとく負極において巻回方向の内周側となる位置に溶接し、正極集電リード6の下端基部は、正極において巻回方向の外周側となる位置に溶接する。次いで、正極と負極とは、両者間にセパレータを挟んで、電池缶1の形状に合致するよう断面長円形状に巻回したのち、テープ止めする。
【0022】
前記密閉型電池の組み立てに際しては、まず蓋3の長辺3aに切り欠き16を予め設けておく。また、蓋3に対して負極端子11、上側の絶縁パッキング9、下側の絶縁板10およびリード体17を予め取り付けておく。そして、電池缶1内に電極体2および絶縁体5を収容し、正極集電リード6を絶縁体5の外周縁に設けた切り欠き5aを介して電池缶1の開口上面の外側上方に導出し、さらに負極集電リード7を絶縁体5に設けた透孔5bを介して電池缶1の開口上面の外側上方に導出する。
【0023】
次いで、負極集電リード7をリード体17にレーザー溶接し、さらに図3および図4に示すごとく、正極集電リード6を蓋3の切り欠き16に通した状態で、電池缶1の開口上面に蓋3を嵌め込む。この後、電池缶1の開口周縁に蓋3の外周縁をレーザーでシーム溶接する。
【0024】
このシーム溶接によって、電池缶1の開口周縁の長辺1aと切り欠き16の周縁とで挟持された正極集電リード6の導出端部が電池缶1の開口周縁および蓋3に溶着し、また正極集電リード6の導出端部であって蓋3の外側上方に飛び出している部分が溶断され、さらに図5に示すごとく切り欠き16が塞がれる。前記シーム溶接の条件は、正極集電リード6が飛び出している部分と、それ以外の部分とで変更することが好ましい。また、正極集電リード6を予め切断して、正極集電リード6の導出端部が蓋3の外側上方に飛び出さないようにしてからシーム溶接してもよい。
【0025】
続いて、注液孔12から電解液を注入したのち、最後に注液孔12を栓13で塞いで封口する(図2の状態)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の密閉型電池の構成部材の分解斜視図
【図2】密閉型電池の縦断正面図
【図3】密閉型電池の製造方法を説明するための斜視図
【図4】密閉型電池の縦断側面図
【図5】密閉型電池の上面図
【符号の説明】
【0027】
1 電池缶
2 電極体
3 蓋
3a 蓋の長辺
6 正極集電リード
7 負極集電リード
16 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶の開口上面を塞ぐ蓋の外周縁に、電極体から導出した集電リードを通すための切り欠きを予め設けておき、
前記電池缶内に前記電極体を収容し、前記集電リードを前記蓋の前記切り欠きに通した状態で前記蓋を前記電池缶の開口上面に嵌め込んだのちに、前記電池缶の開口周縁に前記蓋の外周縁と共に前記集電リードを溶接することを特徴とする密閉型電池の製造方法。
【請求項2】
左右横長の電池缶の開口上面を塞ぐ蓋の外周縁の長辺に、電極体の外周側から導出した集電リードを通すための切り欠きを予め設けておき、
前記切り欠きの切り込み幅寸法は、前記集電リードの厚み寸法と同じかもしくは小さく、前記切り欠きの左右幅寸法は、前記集電リードの左右幅寸法と同じかもしくは大きく設定されており、
前記電池缶内に前記電極体を収容し、前記集電リードを前記蓋の前記切り欠きに通した状態で前記蓋を前記電池缶の開口上面に嵌め込んだのちに、前記電池缶の開口周縁に前記蓋の外周縁と共に前記集電リードを溶接することを特徴とする密閉型電池の製造方法。
【請求項3】
左右横長の電池缶の開口上面を塞ぐ蓋の外周縁の長辺に、電極体の外周側から導出した集電リードを通すための切り欠きを予め設けておき、
前記切り欠きの切り込み幅寸法は、前記集電リードの厚み寸法に対して0〜20μm小さく、前記切り欠きの左右幅寸法は、前記集電リードの左右幅寸法に対して0〜3mm大きく設定されており、
前記電池缶内に前記電極体を収容し、前記集電リードを前記蓋の前記切り欠きに通した状態で前記蓋を前記電池缶の開口上面に嵌め込んだのちに、前記電池缶の開口周縁に前記蓋の外周縁と共に前記集電リードを溶接することを特徴とする密閉型電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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