説明

密閉式ブースおよび基板処理システム

【課題】その内部に密閉された作業空間を形成するとともに、組み立てにおける作業性を良好としながら、確実に密閉性を実現できる密閉式ブースおよびこのような密閉式ブースを利用した基板処理システムを提供する。
【解決手段】互いに連結された複数のフレーム部材と、複数のフレーム部材に支持された複数のパネル部材とを備える密閉式ブースにおいて、第1フレーム部材と、第1フレーム部材に連結される第2フレーム部材と、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する弾性部材と、第1フレーム部材、第2フレーム部材、および弾性部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、パネル部材との間に配置され、パネル封止領域とパネル部材との間を連続的に封止する封止部材とにより構成される連結封止構造を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内部に密閉された作業空間を形成する密閉式ブースに関するものであり、特に、クリーンルーム内にて使用される装置を囲うことで、装置に要求される密閉環境を形成する密閉式ブース、およびこのような密閉式ブースを利用した基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーンルーム内にて使用される装置を囲うクリーンブースは、複数のアルミニウム製のフレーム(骨部材)を、ボルト止めあるいは溶接などの手段を用いて組み立てることによりフレーム構造体を形成した後、ステンレス製、アルミニウム製、あるいは樹脂製などのパネル部材がこのフレーム構造体に貼り付けられた構造が採用されている。さらにこのようなクリーンブースでは、ブースの天井にファン付のHEPAフィルタユニットを組み付けて、ブース内空間を清浄環境とするシステムが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来のクリーンブースを用いることで、装置に要求される清浄環境(例えば、クラス100〜1000など)をクリーンブース内に形成することができ、装置による所定の作業処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4089036号公報
【特許文献2】特開2004−174659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、クリーンルーム内にて製造される製品の技術革新が進むに伴って、製品の製造工程にて使用される処理装置に対して要求される環境条件も多様化しつつある。例えば、フラットディスプレイパネルの一種である有機ELディスプレイパネルの製造工程にて使用される基板処理装置の中には、要求される環境条件として、清浄環境に加えて、より水分量が少ないドライ環境や酸素濃度が低減された低酸素環境などが要求されるものがある。より具体的には、有機ELディスプレイパネルや太陽電池等の製造工程において、ガラスパネル等の基板上に塗液を塗布して膜を形成するコーティング処理を行うコータと称される基板処理装置では、その環境条件として、清浄環境に加えて窒素ガス等の不活性ガス環境が要求される。
【0006】
このような窒素ガス環境の要求に対応するためには、従来のクリーンブースを密閉構造とする必要があり、フレームを溶接接続としてOリングなどの封止部材を用いてパネル部材等を封止する、あるいは、コーキング剤を用いて隙間を埋める構造にすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、フレームを溶接接続して、パネル部材の封止にOリングを用いるような構造では、コータのような基板処理装置をその内側に配置する比較的大型のブースに対応することが困難となる。すなわち、このような装置をその内側に配置するブースは、いわゆるグローブボックス装置(例えば、特許文献2参照)と比して、そのサイズが大型となり、ブースの運搬などの作業性を考えると、現場であるクリーンルーム内にて組み立てることが望ましい。しかしながら、現場での溶接作業を伴うことは、ブース組み立てにおける作業性を低下させるとともに、クリーンルーム内におけるパーティクル発生の問題も生じるおそれがある。
【0008】
また、コーキング剤を用いて隙間を埋めるような構造についても、やはり現場での作業性が良好とは言えず、また、コーキング剤の劣化によりパーティクル発生の問題も生じる。
【0009】
さらに、このような従来の構造では、クリーンブースの保守作業やブースの移動作業を行う際に、フレームの着脱、分解を行うことが困難であるという問題も生じる。特に、フレームが溶接接続されている場合は、フレームの着脱や分解を行うことが不可能に近く、また、コーキング剤を用いて封止を行っている場合についても特に分解時のパーティクル処理等、その作業が著しく困難となる。
【0010】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、その内部に密閉された作業空間を形成するとともに、組み立てにおける作業性を良好としながら、確実に密閉性を実現できる密閉式ブースおよびこのような密閉式ブースを利用した基板処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、互いに連結された複数のフレーム部材と、複数のフレーム部材に支持された複数のパネル部材とを備える密閉式ブースであって、第1フレーム部材と、第1フレーム部材に連結される第2フレーム部材と、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する弾性部材と、第1フレーム部材、第2フレーム部材、および弾性部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、パネル部材との間に配置され、パネル封止領域とパネル部材との間を連続的に封止する封止部材とを備える連結封止構造を有する、密閉式ブースを提供する。
【0013】
本発明の第2態様によれば、第1フレーム部材と第2フレーム部材との連結部分に弾性部材が挿入される凹部が形成され、弾性部材は、凹部の縁部よりも突出して形成され、封止部材を介してパネル部材により、弾性部材が凹部の深さ方向に弾性圧縮変形されることにより、第1フレーム部材、第2フレーム部材、および弾性部材のそれぞれの表面が、実質的に同じ高さにて連続的に連なったパネル封止領域が形成される、第1態様に記載の密閉式ブースを提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、第1フレーム部材、第2フレーム部材および弾性部材は、少なくとも2枚のパネル部材の縁部を封止する隣接して延在するパネル封止領域を形成し、第1フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分において、少なくともそれぞれのパネル封止領域に配置される封止部材の間の部分が弾性部材により封止される、第1または第2態様に記載の密閉式ブースを提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、第1フレーム部材は、第2フレーム部材と第3フレーム部材とを互いに直交させる方向に配置させた状態にて連結する連結用フレーム部材であり、前記弾性部材として、連結用フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する第1弾性部材と、連結用フレーム部材と第3フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する第2弾性部材とが備えられ、連結用フレーム部材、第2フレーム部材、第3フレーム部材、第1弾性部材、および第2弾性部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、1枚のパネル部材との間が、1本の封止部材により連続的に封止される、第1から第3態様のいずれか1つに記載の密閉式ブースを提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、第1から第4態様のいずれか1つに記載の密閉式ブースと、前記密閉式ブース内の空間を不活性ガスにて満たす不活性ガス充填手段と、不活性ガスにて満たされた密閉式ブース内に配置され、基板に対する処理を行う基板処理装置とを備える、基板処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1フレーム部材と第2フレーム部材との連結部分に弾性部材が配置されていることにより、このフレーム部材間の連結部分を弾性部材により確実に封止することができる。さらに、互いに連結されかつ封止された状態の第1フレーム部材、第2フレーム部材、および弾性部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、パネル部材との間に、封止部材が延在して配置されていることにより、パネル封止領域とパネル部材との間を連続的に封止することができる。特に、パネル封止領域において、第1フレーム部材の表面と第2フレーム部材の表面との間に、弾性部材の表面が連なるように配置されていることにより、弾性部材の弾性を効果的に利用して、パネル部材との間を確実に封止することができる。したがって、第1および第2フレーム部材、弾性部材、封止部材、およびパネル部材の組み立て性を良好としながら、フレーム部材の連結部分およびパネル部材との間を確実に封止して、密閉性が確保された密閉式ブースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一の実施形態にかかる密閉式クリーンブースの外観模式図
【図2】コーナー連結部分の分解状態の模式斜視図
【図3】図2のコーナー連結部分におけるC−C線矢視図
【図4】図2のコーナー連結部分におけるD−D線矢視図
【図5】図1のクリーンブースの内側よりコーナー連結部分を見た模式斜視図
【図6】ブロック部材に対するシール用ゴム部材の配置関係(外側シール構造)を示す図
【図7A】シール用ゴム部材およびOリングを用いた連結封止構造の模式説明図
【図7B】シール用ゴム部材およびOリングを用いた連結封止構造の模式説明図
【図8】ブロック部材に対するシール用ゴム部材の配置関係(内側シール構造)を示す図
【図9】T字連結部分の分解状態の模式斜視図
【図10】T字連結部分の組み立て状態の模式斜視図
【図11】図10のT字連結部分におけるE−E線矢視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本発明の一の実施形態にかかる密閉式ブースの一例である密閉式クリーンブース1の外観の模式図を図1に示す。図1に示すように、本実施形態の密閉式クリーンブース1は、X方向、Y方向、およびZ方向に配置された複数のフレーム部材(骨部材)が互いに連結された箱状枠体形状を有するフレーム構造体2と、このフレーム構造体2の複数の開口を覆うように、フレーム構造体2に固定して支持された複数のパネル部材3とを備えている。さらに、それぞれのフレーム部材の連結部分およびパネル部材3とフレーム構造体2との間は、後述するように封止部材等により封止(シール)されており、クリーンブース1の直方体状の内部空間が、クリーンブース1の外部に対して密閉された状態となっている。なお、図1において、X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する方向である。
【0021】
フレーム構造体2を構成するそれぞれのフレーム部材としては、清浄環境にて使用することができる剛体材料として、例えば、金属製の部材を用いることができ、コストおよび汎用性を考慮して、アルミニウム製の部材が用いられる。また、パネル部材3としては、ステンレス製、アルミニウム製、または樹脂製などの部材を用いることができ、要求される清浄度レベルやその他の環境条件などに応じた材質を設定することができる。また、クリーンブース1内を外部から視認可能とするために、パネル部材3として透明性を有する材料により形成されたパネル部材を用いても良い。
【0022】
図1に示すように、フレーム構造体2におけるそれぞれのフレーム部材の連結封止構造の典型的な種類としては、大きく2種類の連結封止構造があり、コーナー連結部分AとT字連結部分Bとがある。以降、コーナー連結部分AおよびT字連結部分Bにおけるフレーム部材の連結構造およびパネル部材3の支持構造ならびに封止構造(すなわち、連結封止構造)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
まず、コーナー連結部分Aの構造について、その分解状態の模式斜視図を図2に示し、コーナー連結部分AにおけるC−C線矢視図を図3に示し、D−D線矢視図を図4に示す。また、クリーンブース1の内側よりコーナー連結部分Aを見た模式斜視図(一部分解状態)を図5に示す。なお、図4および図5においては、図2に比してフレーム部材などの詳細形状をより簡略化して示している。
【0024】
図2および図5に主に示すように、コーナー連結部分Aにおけるフレーム構造体2は、X方向、Y方向、およびZ方向に沿ってそれぞれ配置された3本のフレーム部材11、12、13(第2フレーム部材または第3フレーム部材の一例である。)と、これら3本のフレーム部材11〜13を互いに連結するコーナー用ブロック部材14(第1フレーム部材および連結用フレーム部材の一例である。)とを備えている。
【0025】
アルミニウム製のフレーム部材11〜13は、図2に示すように、中空断面形状を有しており、その外周面にはパネル部材3を取り付けるための複数の溝(例えば、溝11a)が長手方向に沿って連続的に形成されており、さらにその断面部分にはブロック部材14と連結するための複数のボルト連結用孔(例えば、ボルト連結用孔11b)が形成されている。
【0026】
コーナー用ブロック部材14は、アルミニウム材料により形成された大略立方体形状を有しており、その3つの面において、それぞれのフレーム部材11〜13と連結される連結面14x、14y、14zを有している。それぞれの連結面14x、14y、および14zには、フレーム部材11〜13のボルト連結用孔(11b)およびボルトを介して連結するためのボルト連結用孔14aが形成されている。
【0027】
それぞれのフレーム部材11〜13の端面が、ブロック部材14のそれぞれの連結面14x、14y、14zに互いに接した状態にて、ボルト連結用孔14aおよび11b等を通して、図示しないボルトにより互いに連結されることにより、フレーム部材11〜13がブロック部材14を介して連結されたコーナー連結部分Aのフレーム構造体2が構成される。
【0028】
図2に示すように、ブロック部材14におけるそれぞれの連結面14x、14y、14zは、連結されるそれぞれのフレーム部材11〜13の端面よりも一回り小さく形成されている。そのため、ブロック部材14とフレーム部材11〜13とが連結された状態にて、両者の連結部分における外周面に凹部15が形成される。この凹部15内には、弾性部材の一例であるシール用ゴム部材16が挿入配置される。シール用ゴム部材16は、大略L字形状を有しており、フレーム部材11〜13とブロック部材14とのそれぞれの連結部分におけるクリーンブース1の外面側を封止するように、それぞれの凹部15内に挿入配置される。クリーンブース1の外面側の封止箇所とは、例えば、図2において、X方向のフレーム部材11とブロック部材14との連結部分における図示下辺部分と右辺部分であり、この部分に相当する凹部15内にL字形状のシール用ゴム部材16が挿入配置されることにより、これらの部分が封止される。なお、シール用ゴム部材16の配置位置をより理解し易くするために、ブロック部材14と3つのシール用ゴム部材16との模式分解図を図6に示す。また、このようなシール用ゴム部材16としては、弾性材料にて形成されていれば良く、例えば、硬度50〜90度程度のゴム材料が用いられ、凹部15内に隙間無く挿入配置されるように形成されている。
【0029】
次に、コーナー連結部分Aにおいて、このような連結封止構造を有するフレーム構造体2に対して、3枚のパネル部材3を固定してパネル部材3とフレーム構造体2との間を確実に封止する構造について説明する。
【0030】
図4に示すコーナー連結部分AにおけるD−D線矢視図において、フレーム構造体2の内縁側の表面上には、X方向のフレーム部材11の表面、シール用ゴム部材16の表面、ブロック部材14の表面、別のシール用ゴム部材16の表面、およびZ方向のフレーム部材13の表面が、それぞれのフレーム部材11、13の長手方向に沿って連続的に連なった図示大略L字状の領域が形成される(図4において点線にて示す帯状の領域)。このフレーム構造体2上の領域をパネル封止領域Rとして、このパネル封止領域Rとパネル部材3との間にOリング17(封止部材の一例)を配置することで、パネル封止領域Rとパネル部材3との間が連続的に封止される。図4においては、一例として、XZ平面に配置されるパネル部材3の封止構造について説明したが、他の平面、例えば、YZ平面(あるいはXY平面)に配置されるパネル部材3の封止構造についても同様である。なお、図4に示すように、コーナー連結部分Aにおいては、XZ平面、YZ平面、およびXY平面の3平面それぞれにパネル部材3が配置された構造が採用されている。また、図4では、XZ平面に配置されるパネル部材3を透過させた状態にて、フレーム構造体2の構造を図示している。
【0031】
パネル部材3の縁部には、Oリング17を配置されるための凹部3a(図3および図4参照)が、その周縁に沿って連続的に形成、すなわち全周囲に渡って形成されている。また、パネル部材3は、図示しない固定手段と用いて、フレーム部材11〜13に解除可能に固定されている。なお、このような固定手段として、ボルトおよびナットが用いられる場合には、フレーム部材11〜13の溝11a等がボルト固定用溝として用いられる。また、図4に示す構造では、フレーム部材11、13が第1フレーム部材、第3フレーム部材に相当し、シール用ゴム部材16および別のシール用ゴム部材16が第1弾性部材、第2弾性部材に相当し、ブロック部材14が連結用フレーム部材に相当する。
【0032】
なお、本実施形態では、パネル封止領域とパネル部材との間を封止する封止部材として、Oリングが用いられるような場合を例としているが、封止部材としてその他様々な形態の部材を適用することができる。すなわち、封止部材としては、パネル部材3の縁部全周囲に沿って配置される細長い環状形状を有し、かつ、弾性を有する部材を適用することができる。Oリングの他に、Xリングなどを封止部材として適用しても良い。
【0033】
ここで、シール用ゴム部材16およびOリング17を用いた連結封止構造について、図7Aおよび図7Bに示す模式説明図を用いて、さらに詳細に説明する。なお、図7Aおよび図7Bでは、本実施形態の連結封止構造の理解を容易にするために、フレーム部材やブロック部材などの各構成部材をさらに模式化して、連結封止構造を概念的に示している。
【0034】
図7Aでは、例えば、Z方向のフレーム部材13とブロック部材14との連結部分を、X方向より見た状態を模式的に示している。図7Aに示すように、互いに連結されるフレーム部材13とブロック部材14との連結部分には凹部15(図示上面)が形成される。この凹部15内には、シール用ゴム部材16が挿入配置される。パネル部材3が配置されておらず、かつ、フレーム部材13とブロック部材14とが連結されていない状態では、ブロック部材14の凹部15に配置されたシール用ゴム部材16が、パネル部材3側に突出高さhだけ突出するとともに、フレーム部材13側に突出幅wだけ突出するような寸法形状に、シール用ゴム部材16は形成されている。すなわち、シール用ゴム部材16が弾性圧縮変形されていない状態にて、凹部15の深さ方向(図示上下方向)および幅方向(図示左右方向)において、シール用ゴム部材16が凹部15の開口縁部よりも突出するように、シール用ゴム部材16は形成されている。
【0035】
その後、フレーム部材13とブロック部材14とが連結されると、突出幅wだけブロック部材14の端面より突出されていた状態のシール用ゴム部材16が弾性圧縮変形される。さらに、図7Bに示すように、パネル封止領域Rに相当する領域にOリング17を介してパネル部材3が配置されると、突出高さhだけフレーム部材13およびブロック部材14の表面より突出されていた状態のシール用ゴム部材16が弾性圧縮変形される。この弾性圧縮変形により、シール用ゴム部材16は、高さhおよび幅wだけ押し縮められて、フレーム部材13の表面、ブロック部材14の表面、およびシール用ゴム部材16の表面が実質的に同じ高さにて連続的に連なったパネル封止領域Rが形成される。
【0036】
このようにシール用ゴム部材16が弾性圧縮変形されて、フレーム部材13の表面とブロック部材14の表面とが、実質的に同じ高さ位置にてシール用ゴム部材16の表面により連なった状態とされることにより、フレーム部材13とブロック部材14との連結部分と、パネル部材3との間を、Oリング17により確実に封止することができる。また、シール用ゴム部材16は、凹部15の幅方向においても弾性圧縮変形されることにより、フレーム部材13とブロック部材14との連結部分を確実に封止することができる。特に、この連結部分とパネル部材3との間は、シール用ゴム部材16とOリング17とが互いに接触されかつ弾性変形された状態にて封止が行われるため、その封止効果を高めることができる。さらに、シール用ゴム部材16が高さ方向および幅方向に弾性圧縮変形されることにより、凹部15における封止効果、すなわちフレーム部材13とブロック部材14との連結部分における封止効果を高めることができる。
【0037】
このようなシール用ゴム部材16の突出高さhおよび突出幅wは、弾性圧縮変形による「潰し代」とも言うことができる。この潰し代hおよびwは、シール用ゴム部材16に用いられる弾性部材の材質、硬度、形状、そして密閉式クリーンブース1に求められる圧力などの仕様に応じて最適な値に設定することができる。また、Oリング17は、例えば、硬度50〜90度程度の弾性材料により形成されたものを用いることができる。シール用ゴム部材16を潰し代hだけ確実に弾性変形させるという観点からは、シール用ゴム部材16は、Oリング17よりも低い硬度の材料により形成されていることが好ましい。
【0038】
また、図3および図4に示すように、1本のフレーム部材11〜13に、2枚のパネル部材3が支持されているような場合には、1つのシール用ゴム部材16と接触する2つのOリング17との接触位置P1、P2間における連結部分が、シール用ゴム部材16により連続的に封止されている必要がある。このような観点から、コーナー連結部分Aの封止構造では、大略L字形状を有するシール用ゴム部材16が用いられる。
【0039】
なお、図7Aおよび図7Bの説明では、シール用ゴム部材16が、凹部15に対して突出高さhおよび突出幅wを有するような場合を例として説明したが、シール用ゴム部材16の形状は、このような場合についてのみ限定されるものではない。シール用ゴム部材16は少なくとも凹部15の深さ方向について弾性圧縮変形されるような形態であれば良く、シール用ゴム部材16が凹部15に対して突出高さhのみを有するような場合であっても良い。ただし、パネル部材との間およびフレーム部材の連結部分の両方をより確実に封止するという観点からは、シール用ゴム部材16が突出高さhおよび突出幅wを有することが好ましい。
【0040】
なお、上述の説明では、ブロック部材14とそれぞれのフレーム部材11〜13との連結部分において、クリーンブース1の外面側を封止するように、3つのシール用ゴム部材16が、図6等に示すように用いられる場合を例として説明したが、本実施形態は、このような場合についてのみ限定されるものではない。図6に示すような場合に代えて、図8に示すような配置構成を採用しても良い。図8では、ブロック部材14とそれぞれのフレーム部材11〜13との連結部分において、クリーンブース1の内面側を封止するようにX方向、Y方向、およびZ方向の3方向に延在して形成されたシール用ゴム部材26が配置されている。
【0041】
図6に示すシール用ゴム部材16の配置構成を外側シール構造とし、図8に示すシール用ゴム部材26の配置構成を内側シール構造とした場合、内側シール構造では、シール用ゴム部材26の端縁が、それぞれのOリング17との接触箇所となるため、シール用ゴム部材26の潰し代hの寸法管理が外側シール構造に比して難しくなる。外側シール構造では、凹部15の深さとシール用ゴム部材16の幅寸法の精度管理を行うことで、シール用ゴム部材16の潰し代hの寸法管理を行うことができ、その管理を比較的容易にすることができる。さらに、外側シール構造では、クリーンブース1の外側より主な作業を行うことができるため、その作業性が良好となる。
【0042】
次に、T字連結部分Bの構造について、その分解状態の模式斜視図を図9に示し、組み立て状態の模式斜視図を図10に示し、T字連結部分BにおけるE−E線矢視図を図11に示す。基本的には、T字連結部分Bにおける連結封止構造は、コーナー連結部分Aにおける連結封止構造と実質的に同様な考え方を利用するものである。したがって、以下の説明では、相違する構成を中心に説明する。
【0043】
図9および図10に示すように、T字連結部分Bにおけるフレーム構造体2は、Y方向に沿って配置されたフレーム部材31と、このフレーム部材31の側面に連結されるZ方向に沿って配置されるフレーム部材32と、これら2本のフレーム部材31および32を互いに連結する連結用プレート部材33(連結用フレーム部材の一例である。)とを備えている。
【0044】
図9に示すように、Z方向のフレーム部材32の端面には、連結用プレート部材33が、ボルト連結用孔33aを通してボルトを用いて固定されている。連結用プレート部材33は、その幅寸法がフレーム部材32の端面よりも大きく形成されており、フレーム部材32に固定された状態にて、両側よりフランジ部33bが突出している。それぞれのフランジ部33bには、ボルト連結用孔33cが形成されている。このボルト連結用孔33cを通して、Y方向のフレーム部材31の側面に設けられた溝31aに、ボルトにてフランジ部33bが固定されることにより、フレーム部材32が連結用プレート部材33を介して、フレーム部材31の側面に固定されている。
【0045】
また、図11等に示すように、連結用プレート部材33には切り欠き部が設けられており、フレーム部材31および32が互いに連結された状態にて、この切り欠き部が凹部35となる。この凹部35内には、シール用ゴム部材36が挿入配置されており、これにより、フレーム部材31および32の連結部分が封止される。
【0046】
また、このシール用ゴム部材36は、その深さ方向(図11の上下方向)に弾性圧縮変形されていない状態にて、凹部35の開口縁部よりも突出するように潰れ代が設定されている。図10および図11に示すように、2枚のパネル部材3が配置されることにより、シール用ゴム部材36が弾性圧縮変形して、フレーム部材31の表面と、フレーム部材32の表面と、シール用ゴム部材36の表面とが連なったパネル封止領域Rが形成される。なお、T字連結部分Bにおいては、それぞれのフレーム部材31、32の内縁に沿って隣接配置された2つのパネル封止領域Rが形成される。
【0047】
これら2つのパネル封止領域Rと2枚のパネル部材3の外縁との間に、Oリング37がそれぞれ配置されることにより、パネル部材3とフレーム部材31、32との間の封止が行われる。なお、連結部分において、2つのパネル封止領域R上に配置される2本のOリング37間を封止するように、シール用ゴム部材36が両Oリング37間に配置されていれば良い。すなわち、図10および図11において、一方のOリング37とシール用ゴム部材36との接触位置と、他方のOリング37とシール用ゴム部材36との接触位置との間における連結部分(すなわち、凹部35の内周面)が、シール用ゴム部材36により封止されていれば良く、シール用ゴム部材36が両側のフランジ部33bにまで配置されていなくても良い。
【0048】
このようにT字連結部分Bにおいても、コーナー連結部分Aと実質的に同様な考え方に基づく連結封止構造が採用されていることにより、フレーム部材31、32を、連結用プレート部材33を介して連結しながら、連結部分の間を、シール用ゴム部材36により確実に封止することができる。それとともに、フレーム部材31および32の表面と、シール用ゴム部材36の表面とが、実質的に同じ高さ位置にて連なった状態とされ、このそれぞれの表面上にOリング37が配置されることにより、フレーム部材31、32およびシール用ゴム部材36と、パネル部材3との間を、確実に封止することができる。
【0049】
本実施形態の密閉式クリーンブース1におけるコーナー連結部分AおよびT字連結部分Bの連結封止構造について説明したが、このような連結封止構造は、その他連結部分(例えば、十字連結部分やL字連結部分など)にも適用することができる。
【0050】
また、上述の説明では、フレーム部材とブロック部材との連結、およびフレーム部材と連結用プレート部材との連結を、ボルトおよびナットを用いて行うような場合を例として説明したが、その他様々な連結手段を適用することができる。フレーム部材等に形成されたボルト連結用孔を用いて、ボルトによる連結を行った場合、必要に応じて、ボルト連結用孔をパッキンなどの封止部材を用いて封止することが好ましい。
【0051】
上述したようなフレーム構造体2およびパネル部材3の連結封止構造が用いられた密閉式クリーンブース1において、ファン付HEPAフィルタユニットなどを設置することにより、クリーンブース1内を清浄環境とすることができる。
【0052】
また、不活性ガス充填手段を用いて、本実施形態の密閉式クリーンブース1内に不活性ガスを供給して不活性ガス空間を形成することができる。このような不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスなどがある。その他、クリーンブース1内の空間を低酸素環境やドライ環境に保つこともできる。
【0053】
例えば、本実施形態の密閉式クリーンブース1内に、基板に対して所定の処理を行う基板処理装置(図示せず)を配置するとともに、クリーンブース1内の環境を、この基板処理に求められる環境に保つための手段、例えば、不活性ガス充填手段を設置して、密閉式クリーンブースを用いた基板処理システムとして構築することもできる。
【0054】
このような基板処理装置としては、フラットディスプレイパネルの製造工程にて行われる処理装置、例えば、基板(パネル)表面に塗膜を形成する塗布装置(コーター)、検査装置、乾燥装置などがある。特に、有機ELディスプレイパネルや太陽電池等の製造工程では、窒素ガスなどの不活性ガスが充填された環境にて基板処理を行う必要がある。そのため、有機ELディスプレイパネルや太陽電池等の製造工程にて使用される基板処理装置と、本実施形態の密閉式クリーンブース1とを組み合わせた基板処理システムは、有機ELディスプレイパネルの製造工程において特に有効である。
【0055】
また、本実施形態の密閉式クリーンブース1では、連結封止構造による密閉性を活用して、その内部空間の設定圧力を、例えば、5KPa以下の所望の圧力に保つことができる。ただし、5KPaを超える設定圧力であっても、各構成部材の材質や厚さなど好適に設定することにより、同様な構造を用いながら対応することもできる。
【0056】
本実施形態によれば、互いに連結されるフレーム部材(ブロック部材含む)の連結部分にシール用ゴム部材が配置されていることにより、このフレーム部材間の連結部分をシール用ゴム部材により確実に封止することができる。さらに、互いに連結されかつ封止された状態のフレーム部材およびシール用ゴム部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、パネル部材との間に、Oリングが延在して配置されていることにより、パネル封止領域とパネル部材との間を連続的に封止することができる。特に、パネル封止領域において、一方のフレーム部材の表面と他方のフレーム部材の表面との間に、シール用ゴム部材の表面が連なるように配置されていることにより、シール用ゴム部材の弾性を利用して、パネル部材との間を確実に封止することができる。したがって、クリーンブースの密閉性を高めることができる。
【0057】
また、各フレーム部材の連結、およびシール用ゴム部材やOリングを用いた封止における作業性も良好であるとともに、クリーンルームなどの現場において、溶接やシーリング剤注入などの作業を伴うことがないため、クリーンブースの組み立て性や、保守作業、移動作業を行う際のフレームの脱着、分解が良好となる。
【0058】
また、フレーム構造体を構成する各フレーム部材としては、一般的に流通しているフレーム部材を用いることができるため、汎用性が高い。
【0059】
したがって、その組み立て性を良好としながら、フレーム部材の連結部分およびパネル部材との間を確実に封止して、密閉性に優れた密閉式クリーンブースを提供することができる。
【0060】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、良好な組み立て性と高い密閉性とを両立することができる密閉式ブースを提供することができる。このような密閉式ブースは、清浄環境に加えて不活性ガス環境等が要求されるような場合に利用することができ、特に、有機ELディスプレイパネルの製造工程において活用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 密閉式クリーンブース
2 フレーム構造体
3 パネル部材
11〜13 フレーム部材
14 コーナー用ブロック部材
15 凹部
16 シール用ゴム部材
17 Oリング
31、32 フレーム部材
33 プレート部材
35 凹部
36 シール用ゴム部材
37 Oリング
A コーナー連結部分
B T字連結部分
h 突出高さ(潰し代)
w 突出高さ(潰し代)
R パネル封止領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結された複数のフレーム部材と、複数のフレーム部材に支持された複数のパネル部材とを備える密閉式ブースであって、
第1フレーム部材と、
第1フレーム部材に連結される第2フレーム部材と、
第1フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する弾性部材と、
第1フレーム部材、第2フレーム部材、および弾性部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、パネル部材との間に配置され、パネル封止領域とパネル部材との間を連続的に封止する封止部材とを備える連結封止構造を有する、密閉式ブース。
【請求項2】
第1フレーム部材と第2フレーム部材との連結部分に弾性部材が挿入される凹部が形成され、
弾性部材は、凹部の縁部よりも突出して形成され、
封止部材を介してパネル部材により、弾性部材が凹部の深さ方向に弾性圧縮変形されることにより、第1フレーム部材、第2フレーム部材、および弾性部材のそれぞれの表面が、実質的に同じ高さにて連続的に連なったパネル封止領域が形成される、請求項1に記載の密閉式ブース。
【請求項3】
第1フレーム部材、第2フレーム部材および弾性部材は、少なくとも2枚のパネル部材の縁部を封止する隣接して延在するパネル封止領域を形成し、
第1フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分において、少なくともそれぞれのパネル封止領域に配置される封止部材の間の部分が弾性部材により封止される、請求項1または2に記載の密閉式ブース。
【請求項4】
第1フレーム部材は、第2フレーム部材と第3フレーム部材とを互いに直交させる方向に配置させた状態にて連結する連結用フレーム部材であり、
前記弾性部材として、連結用フレーム部材と第2フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する第1弾性部材と、連結用フレーム部材と第3フレーム部材との間の連結部分に配置され、当該連結部分を封止する第2弾性部材とが備えられ、
連結用フレーム部材、第2フレーム部材、第3フレーム部材、第1弾性部材、および第2弾性部材のそれぞれの表面が連続的に連なって形成されたパネル封止領域と、1枚のパネル部材との間が、1本の封止部材により連続的に封止される、請求項1から3のいずれか1つに記載の密閉式ブース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の密閉式ブースと、
前記密閉式ブース内の空間を不活性ガスにて満たす不活性ガス充填手段と、
不活性ガスにて満たされた密閉式ブース内に配置され、基板に対する処理を行う基板処理装置とを備える、基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−129630(P2011−129630A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285312(P2009−285312)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)