寝具用パッド及びベッド装置
【課題】軽量かつ小型であるが、利用者を適切に支えられるように流体が封入された寝具用パッド等を提供すること。
【解決手段】利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、当該セルが前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする。
【解決手段】利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、当該セルが前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の体を支える用途に用いられるマットレス、パッド、クッションには種々のタイプがあるが、その中で流体(例えば、防腐剤、不凍液を含有する水等の液体)が封入されている、いわゆるウォーターマットレス、パッド等が知られている。
【0003】
例えば、ウォーターマットレスの一例としては、特許文献1のようなものが開示されている。ウォーターマットレスの上面に横たわった利用者の形状(頭、背中、腰、臀部、足等の形状)に応じて、流体が流動することにより、利用者の体圧が分散され、適切に支持される。そして、利用者の姿勢に応じて(例えば、仰臥状態から横臥状態に姿勢が変化した場合等)でも、封入された流体が流動することにより、より自然に利用者を支持することが出来る。
【0004】
更に、ウォーターパッドの一例としては、特許文献2のようなものが開示されている。これは、ウォーターマットレスと比較し、小さな形状の内部に流体が封入されている。具体的には、上下2枚の柔軟な合成樹脂シートを熱溶着して内部に流体を収容している。ウォーターパッドは、ウォーターマットレスと比較して小型軽量に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3021659号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/001567号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウォーターマットレスを用いることにより、利用者の褥瘡を防止する効果や、快適な睡眠を実現出来ることから、需要が高まってきている。更に近年は、在宅介護等の普及により自宅等においてもウォーターマットレス等を利用したいという要望も強くなっている。
【0007】
このとき、従来のウォーターマットレスでは、ウォーターマットレスに封入されている流体の量がかなり多く(例えば、シングルサイズのマットレスで200L/m2以上)、そのためマットレス全体の重量が極めて重いといった問題が生じていた。
【0008】
ウォーターマットレスに封入される流体の量を単純に減らせば重さは軽くなるが、今度は利用者の重みで流体が利用者を適切に支えることが出来ず、底付いてしまうという問題が生じてしまう。とくに人間の臀部は重たいことから、臀部部分が底付いてしまうという問題点あった。
【0009】
また、特許文献2のような小型のウォーターパッドの利用も考えられるが、利用者の体を必ずしも適切に支えられないとい問題点があった。すなわち、パッドの上に均等に乗る形で利用者が仰臥状態となっている場合は良いが、寝る位置が端の場合や、姿勢が側臥位の場合には、流体に偏りが出てしまい、やはり底付いてしまう。これにより、利用者の体を十分に支えられないという問題が生じていた。
【0010】
この場合、流体の量を増やせば底付かないようにすることは出来るが、今度は流体の量が多くなり、利用者の寝返り時に流動する流体の量も増え、体を動かす場合に大きな抵抗となってしまう問題が生じてしまう。
【0011】
上述した課題に鑑み、本発明が目的とするところは、軽量かつ小型であるが、利用者を適切に支えられるように流体が封入された寝具用パッド等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題に鑑み、本発明の寝具用パッドは、利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルが前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記セルは、当該セル内を複数の領域に区切るための堰部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記堰部は、前記セル内において、第1の方向に平行に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記セルは、利用者の背中近傍に当接する長セルと、利用者の臀部近傍に当接し、長セルより短い短セルとに分けて形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記セルは一端が山型となっており、前記長セルと前記短セルとは、当該山型が交互になるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、封入される流体容量は、前記ウォーターパッドの面積当たりの流体容量と比較して小さくなることを特徴とする。
【0018】
本発明の寝具用パッドは、利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルは、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられており、
前記セル内において、流体の流路が曲がって形成されるように、異なる方向に堰部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記堰部は、略L字形状にて形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明のベッド装置は、マットレスと、利用者の背中から臀部を支えるために当該マットレスに載置される寝具用パッドとを備えたベッド装置において、
前記寝具用パッドは、
流体が流動可能に封入され、ベッド装置の長手方向に長く形成されているセルを複数有し、
当該セルがベッド装置の幅方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルが、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられることとなる。
【0022】
したがって、利用者が寝具用パッドの上で寝返りを打って姿勢を変えたとしても、流体はセル内でのみ流動することとなり、パッドの片側に偏らず、底付きを防ぐことが可能である。また、利用者が底付かず、セル内でのみ流体が流動することから、流路が閉ざされず、第2の方向に移動する流体の量も少ないため、利用者が移動しやすいといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したパッドを使用した場合における図面の一例である。
【図2】第1実施形態のパッドを説明するための図である。
【図3】第1実施形態のパッドの断面図である。
【図4】第1実施形態のパッド(変形例)を説明するための図である。
【図5】第1実施形態のパッド(変形例)を説明するための図である。
【図6】第1実施形態のパッド(変形例)を説明するための図である。
【図7】第2実施形態のパッドを説明するための図である。
【図8】第3実施形態のパッドを説明するための図である。
【図9】第4実施形態のパッドを説明するための図である。
【図10】第5実施形態のパッドを説明するための図である。
【図11】第5実施形態のパッドを説明するための図である。
【図12】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【図13】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【図14】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【図15】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明が適用された(寝具用)パッドを、ベッド装置のマットレスに載置された例について説明するが、載置される場所はマットレスに限定するものではない。
【0025】
[1.第1実施形態]
図1は、パッド1の使用した場合における全体図を示した図である。図1(a)は上面図であり、図1(b)は側面図である。ベッド装置100の上にマットレス200が載置されており、そのマットレス200にパッド1が載置されている。
【0026】
パッド1は、主に利用者Pの背中〜臀部に当接されるように載置される。ここで、本実施形態では、弾性体としてマットレスの上に載置される場合について説明するが、例えばスプリング等の他の弾性体や、布団の上に載置しても良いし、マットレス等に内蔵されても良い。
【0027】
なお、図1(a)に示すように、ベッド装置100の幅方向(短手方向)をM1方向、ベッド装置100の長手方向をM2方向という。また、M2方向において、図1(a)の左側(利用者Pの頭側、背中側)をH側、右側(利用者Pの足側、臀部側)をF側という。
【0028】
図2は、パッド1を上から見た図であり、図3はパッド1の断面図である。パッド1は、カバー10(上面カバー10a及び下面カバー10b)を重ね合わせ、縁部12が溶着(密着)されることにより内部に中空部を形成するように構成されている。ここでカバー10の材質としては、柔軟性があり、かつ、耐久性の高いものが用いられており、例えば塩化ビニールや合成樹脂等により構成されている。
【0029】
このパッド1は、溶着部16により複数の区画のセルに分割されており、セルの中にはそれぞれ流体が封入されている。なお、流体が封入される量としては、流体が流動(移動)することにより、緩衝する効果が十分期待出来る量であり、利用者の肩、背中〜腰、臀部に亘って形状に沿って凹凸に変形できる量である。例えば、中空部に封入可能な容量の50%程度の流体を封入することとする。また、本実施形態において封入されている流体は防腐剤や不凍剤等を添加した水を主成分とする液体であるが、同様の効果が期待できる流体であれば他の流体であっても良い。
【0030】
セルは、背中から臀部に亘って支える長セル3と、主に臀部を支える短セル5とに別れて形成されている。長セル3は、M2方向(利用者の背中から臀部に沿った方向)に沿って長く形成されており、M1方向に沿って長セル3a、3b、3c、3d、3及び3fがH側(背中側)に並設されている。また、短セル5は、M2方向に沿って長セル3より短く構成されており、M1方向に沿って短セル5a、5b、5c、5d及び5eがF側(臀部側)に並設されている。
【0031】
すなわち、利用者が例えば仰臥状態のとき、臀部が最も重くなるため、過剰に背中の他の部位に圧力が伝わらないよう、臀部を一部支えるセルとして短セル5が形成されている。
【0032】
ここで、セルの幅については、標準的な利用者の臍位腹部厚径に準じた長さとする。例えば、理想的なセル幅としては150mm以下である。
【0033】
更に各セルには、セルの内部を複数の領域に区切るためにM2方向に堰部14が形成されている。例えば、長セル3には堰部14aが、短セル5には堰部14bが設けられている。この堰部14は、例えばカバー10をそれぞれ溶着(密着)させることにより形成されている。
【0034】
堰部14が、M2方向に平行に設けられていることから、パッド1に封入されている流体のM2方向への移動を容易にする作用があるとともに、堰部14が設けられていることから、各セルに封入する流体の量を減らす効果がある。なお、図2では1つのセルに付き堰部14を2つ(短セル5a及び5eについては3つ)設けているが、本数については流体の流動を妨げない本数であれば何本であっても良い。
【0035】
また、各セルは一端(長セルと短セルとが隣り合わせとなる箇所)が山型の形状となっている。具体的には、長セル3b〜3eと、短セル5b〜5dの一端が山型の形状(三角形に近似した形状)となっている。そして、長セル3b〜3eの山型と、短セル5b〜5dの山型とが交互(互い違い)に形成されることにより、領域R10を形成する。なお、M1方向端にある長セル3a及び3fは略矩形状となっており、端部は凸状の形状(略台形)を形成している。短セル5a及び5eは、長セル3a及び3fの凸状の形状に併せた形状を有して山型の形状となっている。
【0036】
領域R10は、利用者Pの腰〜臀部辺りが当接することとなる。すなわち、領域R10は、各セル部が山型になっており、本実施形態においては各セルの山型が交互になるように形成されることとなる。これにより、背中側を支えるセル(長セル)の流体と、臀部側を支えるセル(短セル)の流体が領域R10で均等に存在することとなり、長セルと短セルとの間で生じる段差のような違和感(セルの区切りによる違和感)を解消することが出来る。
【0037】
ここで、領域R10における断面図を示すと、S12の位置の断面図を図3(b)に、S14の位置の断面図を図3(c)に、S16の位置の断面図を図3(d)に示す。各セル部の断面図に比較して、中空部20の体積が大きなことから、封入された流体がより流動的に動くこととなる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、利用者の姿勢に応じて、流体がセル内で流動することとなる。流体が流動する範囲は、セル内に限られ、セル内でM1方向及びM2方向に流動する。これにより、例えば、利用者が寝返りを打ったとしても、M1方向においては、各セルの幅毎にしか移動しないため、流体がパッド1の一方向に偏ってしまうといったことを防止することができる。
【0039】
更に、流動する範囲がセル内に限られることから、パッド1の一部を利用したとしても(例えばパッド1の端で利用者が横臥している状態であっても)、流体がパッドの片側に寄ってしまうといった状態にならず、セル毎に均等の厚さを提供する事ができる。従って、底付きを防止することが出来る。
【0040】
また、パッド1内において、各セルに区切られていることから、流体の量も従来のパッドのように全体に封入する場合と比べ、少ない量とすることが出来る。流体の量が少なくなると、パッド1の重さが軽くなり、容易に取り扱えるといった効果が期待できる。
【0041】
なお、堰部14の形状については、上述した図2の形状に限定されるものでは無い。例えば、図2では、堰部14を1つのセルに付き2つ用いたが、図4に示すように、堰部142(長セルには堰部142a、短セルには堰部142b)として主に1つという構成として良い。この場合、図2と比較して堰部142の溶着部分の面積が大きいため、封入されている流体の移動量が減り、クッション性は低下するが、形成しやすいとった利点がある。
【0042】
さらに、図2では、堰部14をM2方向に水平に設けたが、図5に示すように、堰部144(長セルには堰部144a、短セルには堰部144b)として、M1方向に水平に設けることとしても良い。この場合、図2と比較して封入されている流体は、M2方向の移動に時間がかかり、M1方向の移動が早くなる。従って利用者の移動(寝返りを打った場合等)に対して反応が良いパッドを提供することが可能となる。
【0043】
さらに、図2では、堰部14を直線上に設けたが、図6に示すように、堰部146(長セルには堰部146a、短セルには堰部146b)として、くの字型として形成したとしても良い。この場合、図2と比較すると封入されている流体の移動量は大きくなり、利用者の移動に対して反応が良いパッドを提供することが出来る。
【0044】
[2.第2実施形態]
続いて第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して長セル及び短セルが異なった形状に形成されている(本実施形態の場合、略矩形状に形成されている)場合について説明する。
【0045】
第2実施形態において説明するパッド1aについて図7を用いて説明する。図7に示すように、パッド1aにおいて、長セル203と短セル205とがそれぞれ形成されている。ここで、図7の場合、長セル203a、203c、203eのM2方向の長さは、長セル203b、203d、203fより長く形成されている。
【0046】
また、対応するように、短セル205a、205c、205eのM2方向の長さは、短セル205b、205d、205fより短く形成されている。
【0047】
すなわち、長セルと、短セルとが同じライン(M2方向で直線状)に形成されている。そして、M1方向に隣の行のセルは長セルと短セルとの区切り位置が異なるように、例えば長セル203a及び短セル205aとの区切りと、長セル203b及び短セル205bとの区切りとは互い違いになるように形成されている。
【0048】
このように、各セルは分割されて形成されていることから、パッド1aに封入されている流体が偏らないといった効果を奏している。また、区切りが互い違いに形成されることにより、長セルと短セルとの区切りの領域における違和感を軽減させることができる。第1実施形態と比較すると、形状が簡単に形成されているが、ほぼ同様の効果を期待することができる。
【0049】
[3.第3実施形態]
続いて第3実施形態について説明する。第3実施形態は、セルを長セルと短セルとに分けない場合の構成である。
【0050】
図8に示すようにパッド1bにおいて、セル303は、セル303a〜303fに区切られて形成されている。しかし、第1実施形態及び第2実施形態のように、長セル、短セルには区切られていない。
【0051】
各セル303の中には、堰部314がM2方向に水平に2本設けられている。この堰部314により、封入される流体の量を減らす効果が期待できるのと合わせて、M1方向の流体の移動を抑制することが出来る。
【0052】
図8の第3実施形態においては、長セルと短セルに別れていないために、臀部の支えは第1実施形態と比較すると効果が弱くなってしまう。しかし、利用者の寝返り等の姿勢が動いた場合でも、セル303が各セルに別れて形成されているために、封入されている流体の偏りを防止することが可能である。また、第1実施形態と比較すると、形状が簡単であるため、低コストで製造可能であるといった利点を有することとなる。
【0053】
[4.第4実施形態]
続いて第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第3実施形態におけるセルの構成をM2方向に短くし、臀部を支えるために臀部領域405を設けている。
【0054】
図9に示すように、パッド1cは、臀部領域405が形成されており、臀部領域405は、セル403より固い状態の領域である。臀部領域405は、例えばセル403より、封入されている流体の量を増やしたり、流動性の低い液体を用いたり、クッション等の別の部材により形成されている。すなわち、臀部の落ち込みについて、臀部領域405により防止している。
【0055】
[5.第5実施形態]
続いて第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1実施形態と比較して堰部の構造を複雑にした場合について説明する。
【0056】
第5実施形態において説明するパッド1dについて図10を用いて説明する。図10に示すように、流体が流れる流路が曲がって形成されるように、堰部を異なる方向に、屈曲して形成する。
【0057】
すなわち、長セルであるセル503(503a、503b、503c、503d、503e、503f)において、堰部を組み合わせて、異なる方向となるように形成することにより、流路が曲がって形成されることとなる。また、短セルであるセル505(505a、505b、505c、505d、505e)においても、複数の堰部を組み合わせて形成することにより、流路が曲がって形成されるようになる。
【0058】
具体的に、セル503bを例にとって、図11を用いて説明する。セル503bには、直線上の堰部542と、略L字形状(略逆L字形状)の堰部544a、544b、544c及び544dとが形成されている。
【0059】
堰部544a及び堰部544cと、堰部544bとは、異なる方向に形成されており、堰部の間に流路が形成されている。また、堰部544a〜544cの一端部は、セル503bの端部に近接しており、大部分の流体は、図11の矢印で示された部分を流路として、動くこととなる。
【0060】
これにより、上述の実施形態と比較し、本実施形態の流体パッド1dは、流路が曲がって形成されることとなり、流体の移動に時間がかかることとなる。従って、利用者の移動に対してゆっくりと変化する流体パッドを提供することが可能となる。
【0061】
[6.適用例]
上述したパッドは、M1方向に沿って並列に形成されたセルが、それぞれ区切られていることから、利用者の姿勢が変わっても、流体が偏ることにより底付くといったことを防止することができ、適切に利用者の体を支えることが可能である。
【0062】
例えば、図12は、利用者が仰臥状態である場合を模式的に示した図である。図12(a)及び(b)は従来のパッドを用いた図であり、図12(c)が本実施形態におけるパッド1を用いた図である。図12(a)のように、封入されている流体の量が多い場合、寝返り等により利用者の体位が変わると、大量の流体を移動させる必要が有る。この、流体の移動は、利用者にとって抵抗となるため、動きにくい状態となってしまう。
【0063】
また、図12(b)のように、封入されている流体の量が少ない場合、利用者の重さにより流体が支えきれず、利用者が底づいてしまう。底づいてしまうと、利用者の体を変形して支えるという本来の効果が発揮出来ず、パッドの快適性が失われる。更に、流体が左右に移動する流路が閉ざされてしまうため、動きにくい状態となってしまう。
【0064】
図12(c)の第1実施形態のパッド1の場合、各セルで区切られていることから、流体が偏ることなく底づかずに、利用者はパッドに支えられることとなる。更に、左右に移動する流体の量が少ないことから、利用者にとって動きやすい状態となる。
【0065】
図13は、利用者が側臥位の状態の場合について模式的に示した図である。従来のパットを利用した図13(a)では、流体が左右に逃げてしまい、利用者が底づいてしまうという問題が生じていた。
【0066】
図13(b)のように、上述した実施形態のパッドの場合、各セルで区切られていることから、流体がセルから移動することがなく、従って底付くこと無く利用者を支えることが可能となる。
【0067】
また、図13(c)に示すように、上述した実施形態においては、セル内に堰部を設けていることから、利用者がどの位置にいたとしても、流体の逃げ場が少なくなり、より底付きにくい構成となっている。
【0068】
図14は、パッドを利用している利用者を横から見た模式図である。図14(a)は、従来のパッドを用いた図であり、背中〜臀部まで一つで形成されているパッドである。この場合、臀部は背中よりも面積当たりの重量が重いため臀部が底付いてしまい、腰から背中部分が過剰に持ち上げられてしまうという問題が生じてしまう。
【0069】
図14(b)は、上述した実施形態(とくに第1実施形態)におけるパッド1を利用した図である。図14(b)のパッド1では、背中から臀部を支える長セルと、臀部を支える短セルとに別れて形成されている。そして、長セルが利用者の背中〜腰、臀部を支え、短セルが利用者の臀部を主に支えている。
【0070】
図14(b)では、短セルが臀部を支えるセルとして、利用者の臀部の落ち込みを適度に支えている。更に、長セルが肩、背中〜腰、臀部を体に沿って流体に凹凸に形成されることにより、適切な状態で利用者を支持することが出来る。
【0071】
ここで、本実施形態において、パッド1に封入される流体容量について、第1実施形態(図2のパッド1)を用いて説明する。図15は、パッド1における流体の封入可能量(飽和量)を算出するために、便宜的に領域毎に分けている図である。
【0072】
領域Bは短セルのうち広い領域を、領域Cは、長セルのうち、パッド1の端に形成される台形部分を、領域Dは、各セルの一端部に形成される三角形部分を示しており、領域Aはその他の部分を示している。なお、パッド1は、730×870(mm)の大きさであり、各セルの幅は110(mm)として算出する。
【0073】
以下、各領域の封入可能量について算出する。
A:円周60mmの円筒とし、長さをかけて計算する。
まず、長さ全体は、420×18カ所+110×9カ所+130×13カ所+90×2カ所+170×2カ所=10760(mm)、半径は、およそ9.54mm。
よって、π×9.542×10760/103≒3076(cm3)
【0074】
B:円周80mmの円筒とし、長さをかけて計算する。
まず、長さ全体は、130×4カ所=520(mm)。半径はおよそ12.73mm。
よって、π×12.732×520/103≒264(cm3)
【0075】
C:Aより厚みを同等の19mmとし、面積との積で求める。
形状は略台形であることから、
((110+50)/2×150)×19×2カ所/103≒456(cm3)
【0076】
D:Aより厚みを同等の19mmとし、面積との積で求める。
形状は略三角形であることから、
((110×150)/2)×19×9カ所/103≒1411(cm3)
【0077】
上記A〜Dを合計すると、封入される流体の量は5207(cm3)≒約5.21Lとなる。ここで、パッドの表面積は730×870/106=0.6351m2であり、単位面積では、
5.21(L)/0.6351(m2)=8.2(L)
となる。
【0078】
従って、第1実施形態におけるパッド1の単位面積あたりの飽和量は約8.2L/m2となる。ここで、流体を飽和量まで封入すると、流体が流動せずパッドとして機能しない。よって、流体の量としては、多くとも85%(約7L/m2)以下の流体の量にする必要が有り、本実施形態ではより優れた効果が期待できる50%(約4.1L/m2)としている。
【0079】
このように、本実施形態によれば、従来の寝具用パッドにおける単位面積当たりの流体の量と比較し、少ない流体の量で、底付きすることなく、流体の移動性に優れた軽量の寝具用パッドを実現することが出来る。
【0080】
[7.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0081】
なお、上述した実施形態においては、ベッド装置に載置されるマットレスに利用されることとして説明したが、利用者の体を支えるような用途であれば、他の用途(例えばリクライニング機構を有する椅子、自動車や電車、航空機等の乗り物用途)にも利用可能なことは勿論である。
【0082】
また、上述した実施形態においては、ベッド装置(マットレス)と組み合わせて利用される例について説明しているが、利用者の使用方法としては、例えばパッドを単独で使用したとしても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
1 パッド
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f 長セル
5、5a、5b、5c、5d、5e 短セル
10 カバー
10a 上面カバー
10b 下面カバー
12 縁部
14、14a、14b 堰部
16 溶着部
20 中空部
100 ベッド装置
200 マットレス
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の体を支える用途に用いられるマットレス、パッド、クッションには種々のタイプがあるが、その中で流体(例えば、防腐剤、不凍液を含有する水等の液体)が封入されている、いわゆるウォーターマットレス、パッド等が知られている。
【0003】
例えば、ウォーターマットレスの一例としては、特許文献1のようなものが開示されている。ウォーターマットレスの上面に横たわった利用者の形状(頭、背中、腰、臀部、足等の形状)に応じて、流体が流動することにより、利用者の体圧が分散され、適切に支持される。そして、利用者の姿勢に応じて(例えば、仰臥状態から横臥状態に姿勢が変化した場合等)でも、封入された流体が流動することにより、より自然に利用者を支持することが出来る。
【0004】
更に、ウォーターパッドの一例としては、特許文献2のようなものが開示されている。これは、ウォーターマットレスと比較し、小さな形状の内部に流体が封入されている。具体的には、上下2枚の柔軟な合成樹脂シートを熱溶着して内部に流体を収容している。ウォーターパッドは、ウォーターマットレスと比較して小型軽量に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3021659号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/001567号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウォーターマットレスを用いることにより、利用者の褥瘡を防止する効果や、快適な睡眠を実現出来ることから、需要が高まってきている。更に近年は、在宅介護等の普及により自宅等においてもウォーターマットレス等を利用したいという要望も強くなっている。
【0007】
このとき、従来のウォーターマットレスでは、ウォーターマットレスに封入されている流体の量がかなり多く(例えば、シングルサイズのマットレスで200L/m2以上)、そのためマットレス全体の重量が極めて重いといった問題が生じていた。
【0008】
ウォーターマットレスに封入される流体の量を単純に減らせば重さは軽くなるが、今度は利用者の重みで流体が利用者を適切に支えることが出来ず、底付いてしまうという問題が生じてしまう。とくに人間の臀部は重たいことから、臀部部分が底付いてしまうという問題点あった。
【0009】
また、特許文献2のような小型のウォーターパッドの利用も考えられるが、利用者の体を必ずしも適切に支えられないとい問題点があった。すなわち、パッドの上に均等に乗る形で利用者が仰臥状態となっている場合は良いが、寝る位置が端の場合や、姿勢が側臥位の場合には、流体に偏りが出てしまい、やはり底付いてしまう。これにより、利用者の体を十分に支えられないという問題が生じていた。
【0010】
この場合、流体の量を増やせば底付かないようにすることは出来るが、今度は流体の量が多くなり、利用者の寝返り時に流動する流体の量も増え、体を動かす場合に大きな抵抗となってしまう問題が生じてしまう。
【0011】
上述した課題に鑑み、本発明が目的とするところは、軽量かつ小型であるが、利用者を適切に支えられるように流体が封入された寝具用パッド等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題に鑑み、本発明の寝具用パッドは、利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルが前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記セルは、当該セル内を複数の領域に区切るための堰部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記堰部は、前記セル内において、第1の方向に平行に形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記セルは、利用者の背中近傍に当接する長セルと、利用者の臀部近傍に当接し、長セルより短い短セルとに分けて形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記セルは一端が山型となっており、前記長セルと前記短セルとは、当該山型が交互になるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、封入される流体容量は、前記ウォーターパッドの面積当たりの流体容量と比較して小さくなることを特徴とする。
【0018】
本発明の寝具用パッドは、利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルは、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられており、
前記セル内において、流体の流路が曲がって形成されるように、異なる方向に堰部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の寝具用パッドにおいて、前記堰部は、略L字形状にて形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明のベッド装置は、マットレスと、利用者の背中から臀部を支えるために当該マットレスに載置される寝具用パッドとを備えたベッド装置において、
前記寝具用パッドは、
流体が流動可能に封入され、ベッド装置の長手方向に長く形成されているセルを複数有し、
当該セルがベッド装置の幅方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルが、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられることとなる。
【0022】
したがって、利用者が寝具用パッドの上で寝返りを打って姿勢を変えたとしても、流体はセル内でのみ流動することとなり、パッドの片側に偏らず、底付きを防ぐことが可能である。また、利用者が底付かず、セル内でのみ流体が流動することから、流路が閉ざされず、第2の方向に移動する流体の量も少ないため、利用者が移動しやすいといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したパッドを使用した場合における図面の一例である。
【図2】第1実施形態のパッドを説明するための図である。
【図3】第1実施形態のパッドの断面図である。
【図4】第1実施形態のパッド(変形例)を説明するための図である。
【図5】第1実施形態のパッド(変形例)を説明するための図である。
【図6】第1実施形態のパッド(変形例)を説明するための図である。
【図7】第2実施形態のパッドを説明するための図である。
【図8】第3実施形態のパッドを説明するための図である。
【図9】第4実施形態のパッドを説明するための図である。
【図10】第5実施形態のパッドを説明するための図である。
【図11】第5実施形態のパッドを説明するための図である。
【図12】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【図13】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【図14】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【図15】本発明を適用したパッドの適用例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明が適用された(寝具用)パッドを、ベッド装置のマットレスに載置された例について説明するが、載置される場所はマットレスに限定するものではない。
【0025】
[1.第1実施形態]
図1は、パッド1の使用した場合における全体図を示した図である。図1(a)は上面図であり、図1(b)は側面図である。ベッド装置100の上にマットレス200が載置されており、そのマットレス200にパッド1が載置されている。
【0026】
パッド1は、主に利用者Pの背中〜臀部に当接されるように載置される。ここで、本実施形態では、弾性体としてマットレスの上に載置される場合について説明するが、例えばスプリング等の他の弾性体や、布団の上に載置しても良いし、マットレス等に内蔵されても良い。
【0027】
なお、図1(a)に示すように、ベッド装置100の幅方向(短手方向)をM1方向、ベッド装置100の長手方向をM2方向という。また、M2方向において、図1(a)の左側(利用者Pの頭側、背中側)をH側、右側(利用者Pの足側、臀部側)をF側という。
【0028】
図2は、パッド1を上から見た図であり、図3はパッド1の断面図である。パッド1は、カバー10(上面カバー10a及び下面カバー10b)を重ね合わせ、縁部12が溶着(密着)されることにより内部に中空部を形成するように構成されている。ここでカバー10の材質としては、柔軟性があり、かつ、耐久性の高いものが用いられており、例えば塩化ビニールや合成樹脂等により構成されている。
【0029】
このパッド1は、溶着部16により複数の区画のセルに分割されており、セルの中にはそれぞれ流体が封入されている。なお、流体が封入される量としては、流体が流動(移動)することにより、緩衝する効果が十分期待出来る量であり、利用者の肩、背中〜腰、臀部に亘って形状に沿って凹凸に変形できる量である。例えば、中空部に封入可能な容量の50%程度の流体を封入することとする。また、本実施形態において封入されている流体は防腐剤や不凍剤等を添加した水を主成分とする液体であるが、同様の効果が期待できる流体であれば他の流体であっても良い。
【0030】
セルは、背中から臀部に亘って支える長セル3と、主に臀部を支える短セル5とに別れて形成されている。長セル3は、M2方向(利用者の背中から臀部に沿った方向)に沿って長く形成されており、M1方向に沿って長セル3a、3b、3c、3d、3及び3fがH側(背中側)に並設されている。また、短セル5は、M2方向に沿って長セル3より短く構成されており、M1方向に沿って短セル5a、5b、5c、5d及び5eがF側(臀部側)に並設されている。
【0031】
すなわち、利用者が例えば仰臥状態のとき、臀部が最も重くなるため、過剰に背中の他の部位に圧力が伝わらないよう、臀部を一部支えるセルとして短セル5が形成されている。
【0032】
ここで、セルの幅については、標準的な利用者の臍位腹部厚径に準じた長さとする。例えば、理想的なセル幅としては150mm以下である。
【0033】
更に各セルには、セルの内部を複数の領域に区切るためにM2方向に堰部14が形成されている。例えば、長セル3には堰部14aが、短セル5には堰部14bが設けられている。この堰部14は、例えばカバー10をそれぞれ溶着(密着)させることにより形成されている。
【0034】
堰部14が、M2方向に平行に設けられていることから、パッド1に封入されている流体のM2方向への移動を容易にする作用があるとともに、堰部14が設けられていることから、各セルに封入する流体の量を減らす効果がある。なお、図2では1つのセルに付き堰部14を2つ(短セル5a及び5eについては3つ)設けているが、本数については流体の流動を妨げない本数であれば何本であっても良い。
【0035】
また、各セルは一端(長セルと短セルとが隣り合わせとなる箇所)が山型の形状となっている。具体的には、長セル3b〜3eと、短セル5b〜5dの一端が山型の形状(三角形に近似した形状)となっている。そして、長セル3b〜3eの山型と、短セル5b〜5dの山型とが交互(互い違い)に形成されることにより、領域R10を形成する。なお、M1方向端にある長セル3a及び3fは略矩形状となっており、端部は凸状の形状(略台形)を形成している。短セル5a及び5eは、長セル3a及び3fの凸状の形状に併せた形状を有して山型の形状となっている。
【0036】
領域R10は、利用者Pの腰〜臀部辺りが当接することとなる。すなわち、領域R10は、各セル部が山型になっており、本実施形態においては各セルの山型が交互になるように形成されることとなる。これにより、背中側を支えるセル(長セル)の流体と、臀部側を支えるセル(短セル)の流体が領域R10で均等に存在することとなり、長セルと短セルとの間で生じる段差のような違和感(セルの区切りによる違和感)を解消することが出来る。
【0037】
ここで、領域R10における断面図を示すと、S12の位置の断面図を図3(b)に、S14の位置の断面図を図3(c)に、S16の位置の断面図を図3(d)に示す。各セル部の断面図に比較して、中空部20の体積が大きなことから、封入された流体がより流動的に動くこととなる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、利用者の姿勢に応じて、流体がセル内で流動することとなる。流体が流動する範囲は、セル内に限られ、セル内でM1方向及びM2方向に流動する。これにより、例えば、利用者が寝返りを打ったとしても、M1方向においては、各セルの幅毎にしか移動しないため、流体がパッド1の一方向に偏ってしまうといったことを防止することができる。
【0039】
更に、流動する範囲がセル内に限られることから、パッド1の一部を利用したとしても(例えばパッド1の端で利用者が横臥している状態であっても)、流体がパッドの片側に寄ってしまうといった状態にならず、セル毎に均等の厚さを提供する事ができる。従って、底付きを防止することが出来る。
【0040】
また、パッド1内において、各セルに区切られていることから、流体の量も従来のパッドのように全体に封入する場合と比べ、少ない量とすることが出来る。流体の量が少なくなると、パッド1の重さが軽くなり、容易に取り扱えるといった効果が期待できる。
【0041】
なお、堰部14の形状については、上述した図2の形状に限定されるものでは無い。例えば、図2では、堰部14を1つのセルに付き2つ用いたが、図4に示すように、堰部142(長セルには堰部142a、短セルには堰部142b)として主に1つという構成として良い。この場合、図2と比較して堰部142の溶着部分の面積が大きいため、封入されている流体の移動量が減り、クッション性は低下するが、形成しやすいとった利点がある。
【0042】
さらに、図2では、堰部14をM2方向に水平に設けたが、図5に示すように、堰部144(長セルには堰部144a、短セルには堰部144b)として、M1方向に水平に設けることとしても良い。この場合、図2と比較して封入されている流体は、M2方向の移動に時間がかかり、M1方向の移動が早くなる。従って利用者の移動(寝返りを打った場合等)に対して反応が良いパッドを提供することが可能となる。
【0043】
さらに、図2では、堰部14を直線上に設けたが、図6に示すように、堰部146(長セルには堰部146a、短セルには堰部146b)として、くの字型として形成したとしても良い。この場合、図2と比較すると封入されている流体の移動量は大きくなり、利用者の移動に対して反応が良いパッドを提供することが出来る。
【0044】
[2.第2実施形態]
続いて第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して長セル及び短セルが異なった形状に形成されている(本実施形態の場合、略矩形状に形成されている)場合について説明する。
【0045】
第2実施形態において説明するパッド1aについて図7を用いて説明する。図7に示すように、パッド1aにおいて、長セル203と短セル205とがそれぞれ形成されている。ここで、図7の場合、長セル203a、203c、203eのM2方向の長さは、長セル203b、203d、203fより長く形成されている。
【0046】
また、対応するように、短セル205a、205c、205eのM2方向の長さは、短セル205b、205d、205fより短く形成されている。
【0047】
すなわち、長セルと、短セルとが同じライン(M2方向で直線状)に形成されている。そして、M1方向に隣の行のセルは長セルと短セルとの区切り位置が異なるように、例えば長セル203a及び短セル205aとの区切りと、長セル203b及び短セル205bとの区切りとは互い違いになるように形成されている。
【0048】
このように、各セルは分割されて形成されていることから、パッド1aに封入されている流体が偏らないといった効果を奏している。また、区切りが互い違いに形成されることにより、長セルと短セルとの区切りの領域における違和感を軽減させることができる。第1実施形態と比較すると、形状が簡単に形成されているが、ほぼ同様の効果を期待することができる。
【0049】
[3.第3実施形態]
続いて第3実施形態について説明する。第3実施形態は、セルを長セルと短セルとに分けない場合の構成である。
【0050】
図8に示すようにパッド1bにおいて、セル303は、セル303a〜303fに区切られて形成されている。しかし、第1実施形態及び第2実施形態のように、長セル、短セルには区切られていない。
【0051】
各セル303の中には、堰部314がM2方向に水平に2本設けられている。この堰部314により、封入される流体の量を減らす効果が期待できるのと合わせて、M1方向の流体の移動を抑制することが出来る。
【0052】
図8の第3実施形態においては、長セルと短セルに別れていないために、臀部の支えは第1実施形態と比較すると効果が弱くなってしまう。しかし、利用者の寝返り等の姿勢が動いた場合でも、セル303が各セルに別れて形成されているために、封入されている流体の偏りを防止することが可能である。また、第1実施形態と比較すると、形状が簡単であるため、低コストで製造可能であるといった利点を有することとなる。
【0053】
[4.第4実施形態]
続いて第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第3実施形態におけるセルの構成をM2方向に短くし、臀部を支えるために臀部領域405を設けている。
【0054】
図9に示すように、パッド1cは、臀部領域405が形成されており、臀部領域405は、セル403より固い状態の領域である。臀部領域405は、例えばセル403より、封入されている流体の量を増やしたり、流動性の低い液体を用いたり、クッション等の別の部材により形成されている。すなわち、臀部の落ち込みについて、臀部領域405により防止している。
【0055】
[5.第5実施形態]
続いて第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1実施形態と比較して堰部の構造を複雑にした場合について説明する。
【0056】
第5実施形態において説明するパッド1dについて図10を用いて説明する。図10に示すように、流体が流れる流路が曲がって形成されるように、堰部を異なる方向に、屈曲して形成する。
【0057】
すなわち、長セルであるセル503(503a、503b、503c、503d、503e、503f)において、堰部を組み合わせて、異なる方向となるように形成することにより、流路が曲がって形成されることとなる。また、短セルであるセル505(505a、505b、505c、505d、505e)においても、複数の堰部を組み合わせて形成することにより、流路が曲がって形成されるようになる。
【0058】
具体的に、セル503bを例にとって、図11を用いて説明する。セル503bには、直線上の堰部542と、略L字形状(略逆L字形状)の堰部544a、544b、544c及び544dとが形成されている。
【0059】
堰部544a及び堰部544cと、堰部544bとは、異なる方向に形成されており、堰部の間に流路が形成されている。また、堰部544a〜544cの一端部は、セル503bの端部に近接しており、大部分の流体は、図11の矢印で示された部分を流路として、動くこととなる。
【0060】
これにより、上述の実施形態と比較し、本実施形態の流体パッド1dは、流路が曲がって形成されることとなり、流体の移動に時間がかかることとなる。従って、利用者の移動に対してゆっくりと変化する流体パッドを提供することが可能となる。
【0061】
[6.適用例]
上述したパッドは、M1方向に沿って並列に形成されたセルが、それぞれ区切られていることから、利用者の姿勢が変わっても、流体が偏ることにより底付くといったことを防止することができ、適切に利用者の体を支えることが可能である。
【0062】
例えば、図12は、利用者が仰臥状態である場合を模式的に示した図である。図12(a)及び(b)は従来のパッドを用いた図であり、図12(c)が本実施形態におけるパッド1を用いた図である。図12(a)のように、封入されている流体の量が多い場合、寝返り等により利用者の体位が変わると、大量の流体を移動させる必要が有る。この、流体の移動は、利用者にとって抵抗となるため、動きにくい状態となってしまう。
【0063】
また、図12(b)のように、封入されている流体の量が少ない場合、利用者の重さにより流体が支えきれず、利用者が底づいてしまう。底づいてしまうと、利用者の体を変形して支えるという本来の効果が発揮出来ず、パッドの快適性が失われる。更に、流体が左右に移動する流路が閉ざされてしまうため、動きにくい状態となってしまう。
【0064】
図12(c)の第1実施形態のパッド1の場合、各セルで区切られていることから、流体が偏ることなく底づかずに、利用者はパッドに支えられることとなる。更に、左右に移動する流体の量が少ないことから、利用者にとって動きやすい状態となる。
【0065】
図13は、利用者が側臥位の状態の場合について模式的に示した図である。従来のパットを利用した図13(a)では、流体が左右に逃げてしまい、利用者が底づいてしまうという問題が生じていた。
【0066】
図13(b)のように、上述した実施形態のパッドの場合、各セルで区切られていることから、流体がセルから移動することがなく、従って底付くこと無く利用者を支えることが可能となる。
【0067】
また、図13(c)に示すように、上述した実施形態においては、セル内に堰部を設けていることから、利用者がどの位置にいたとしても、流体の逃げ場が少なくなり、より底付きにくい構成となっている。
【0068】
図14は、パッドを利用している利用者を横から見た模式図である。図14(a)は、従来のパッドを用いた図であり、背中〜臀部まで一つで形成されているパッドである。この場合、臀部は背中よりも面積当たりの重量が重いため臀部が底付いてしまい、腰から背中部分が過剰に持ち上げられてしまうという問題が生じてしまう。
【0069】
図14(b)は、上述した実施形態(とくに第1実施形態)におけるパッド1を利用した図である。図14(b)のパッド1では、背中から臀部を支える長セルと、臀部を支える短セルとに別れて形成されている。そして、長セルが利用者の背中〜腰、臀部を支え、短セルが利用者の臀部を主に支えている。
【0070】
図14(b)では、短セルが臀部を支えるセルとして、利用者の臀部の落ち込みを適度に支えている。更に、長セルが肩、背中〜腰、臀部を体に沿って流体に凹凸に形成されることにより、適切な状態で利用者を支持することが出来る。
【0071】
ここで、本実施形態において、パッド1に封入される流体容量について、第1実施形態(図2のパッド1)を用いて説明する。図15は、パッド1における流体の封入可能量(飽和量)を算出するために、便宜的に領域毎に分けている図である。
【0072】
領域Bは短セルのうち広い領域を、領域Cは、長セルのうち、パッド1の端に形成される台形部分を、領域Dは、各セルの一端部に形成される三角形部分を示しており、領域Aはその他の部分を示している。なお、パッド1は、730×870(mm)の大きさであり、各セルの幅は110(mm)として算出する。
【0073】
以下、各領域の封入可能量について算出する。
A:円周60mmの円筒とし、長さをかけて計算する。
まず、長さ全体は、420×18カ所+110×9カ所+130×13カ所+90×2カ所+170×2カ所=10760(mm)、半径は、およそ9.54mm。
よって、π×9.542×10760/103≒3076(cm3)
【0074】
B:円周80mmの円筒とし、長さをかけて計算する。
まず、長さ全体は、130×4カ所=520(mm)。半径はおよそ12.73mm。
よって、π×12.732×520/103≒264(cm3)
【0075】
C:Aより厚みを同等の19mmとし、面積との積で求める。
形状は略台形であることから、
((110+50)/2×150)×19×2カ所/103≒456(cm3)
【0076】
D:Aより厚みを同等の19mmとし、面積との積で求める。
形状は略三角形であることから、
((110×150)/2)×19×9カ所/103≒1411(cm3)
【0077】
上記A〜Dを合計すると、封入される流体の量は5207(cm3)≒約5.21Lとなる。ここで、パッドの表面積は730×870/106=0.6351m2であり、単位面積では、
5.21(L)/0.6351(m2)=8.2(L)
となる。
【0078】
従って、第1実施形態におけるパッド1の単位面積あたりの飽和量は約8.2L/m2となる。ここで、流体を飽和量まで封入すると、流体が流動せずパッドとして機能しない。よって、流体の量としては、多くとも85%(約7L/m2)以下の流体の量にする必要が有り、本実施形態ではより優れた効果が期待できる50%(約4.1L/m2)としている。
【0079】
このように、本実施形態によれば、従来の寝具用パッドにおける単位面積当たりの流体の量と比較し、少ない流体の量で、底付きすることなく、流体の移動性に優れた軽量の寝具用パッドを実現することが出来る。
【0080】
[7.変形例]
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0081】
なお、上述した実施形態においては、ベッド装置に載置されるマットレスに利用されることとして説明したが、利用者の体を支えるような用途であれば、他の用途(例えばリクライニング機構を有する椅子、自動車や電車、航空機等の乗り物用途)にも利用可能なことは勿論である。
【0082】
また、上述した実施形態においては、ベッド装置(マットレス)と組み合わせて利用される例について説明しているが、利用者の使用方法としては、例えばパッドを単独で使用したとしても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
1 パッド
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f 長セル
5、5a、5b、5c、5d、5e 短セル
10 カバー
10a 上面カバー
10b 下面カバー
12 縁部
14、14a、14b 堰部
16 溶着部
20 中空部
100 ベッド装置
200 マットレス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルが前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする寝具用パッド。
【請求項2】
前記セルは、当該セル内を複数の領域に区切るための堰部を有することを特徴とする請求項1に記載の寝具用パッド。
【請求項3】
前記堰部は、前記セル内において、第1の方向に平行に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の寝具用パッド。
【請求項4】
前記セルは、利用者の背中近傍に当接する長セルと、利用者の臀部近傍に当接し、長セルより短い短セルとに分けて形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の寝具用パッド。
【請求項5】
前記セルは一端が山型となっており、前記長セルと前記短セルとは、当該山型が交互になるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の寝具用パッド。
【請求項6】
前記流体が封入される流体容量は、寝具用パッドの面積当たりの流量容量と比較して小さくなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の寝具用パッド。
【請求項7】
利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルは、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられており、
前記セル内において、流体の流路が曲がって形成されるように、異なる方向に堰部が形成されていることを特徴とする寝具用パッド。
【請求項8】
前記堰部は、略L字形状にて形成されていることを特徴とする請求項7に記載の寝具用パッド。
【請求項9】
マットレスと、利用者の背中から臀部を支えるために当該マットレスに載置される寝具用パッドとを備えたベッド装置において、
前記寝具用パッドは、
流体が流動可能に封入され、ベッド装置の長手方向に長く形成されているセルを複数有し、
当該セルがベッド装置の幅方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とするベッド装置。
【請求項1】
利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルが前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とする寝具用パッド。
【請求項2】
前記セルは、当該セル内を複数の領域に区切るための堰部を有することを特徴とする請求項1に記載の寝具用パッド。
【請求項3】
前記堰部は、前記セル内において、第1の方向に平行に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の寝具用パッド。
【請求項4】
前記セルは、利用者の背中近傍に当接する長セルと、利用者の臀部近傍に当接し、長セルより短い短セルとに分けて形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の寝具用パッド。
【請求項5】
前記セルは一端が山型となっており、前記長セルと前記短セルとは、当該山型が交互になるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の寝具用パッド。
【請求項6】
前記流体が封入される流体容量は、寝具用パッドの面積当たりの流量容量と比較して小さくなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の寝具用パッド。
【請求項7】
利用者の背中から臀部を支えるために載置される寝具用パッドにおいて、
流体が流動可能に封入され、背中から臀部に沿った第1の方向に長く形成されているセルを複数有し、
前記セルは、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って複数並列に設けられており、
前記セル内において、流体の流路が曲がって形成されるように、異なる方向に堰部が形成されていることを特徴とする寝具用パッド。
【請求項8】
前記堰部は、略L字形状にて形成されていることを特徴とする請求項7に記載の寝具用パッド。
【請求項9】
マットレスと、利用者の背中から臀部を支えるために当該マットレスに載置される寝具用パッドとを備えたベッド装置において、
前記寝具用パッドは、
流体が流動可能に封入され、ベッド装置の長手方向に長く形成されているセルを複数有し、
当該セルがベッド装置の幅方向に沿って複数並列に設けられていることを特徴とするベッド装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【公開番号】特開2013−341(P2013−341A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134403(P2011−134403)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390039985)パラマウントベッド株式会社 (165)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390039985)パラマウントベッド株式会社 (165)
【Fターム(参考)】
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