説明

寝台装置及び機能画像/形態画像診断装置

【課題】構成が複雑化するのを防止し、大型化やコスト高の要因をなくすことが可能な寝台装置及び機能画像/形態画像診断装置を提供する。
【解決手段】実施形態の寝台装置は、スライダはXリンクの両方のリンク部材の下端部に軸支され、ナット部材が設けられる。ガイドレールは各スライダを略水平方向に案内する。スクリュー部材は、ガイドレールに沿って配置され、各ナット部材に対し相対回転するとき、各スライダに対し略水平方向に移動させる駆動力を印加する。クラッチ手段は、駆動力が一方のスライダに印加されないように、一方のナット部材をスクリュー部材と一体的に回転させ、又は駆動力が一方のスライダに印加されるように、一方のナット部材をスクリュー部材に対して相対回転させることを選択的に行う。拘束手段は、駆動力が一方のスライダに印加されないとき、一方のスライダをガイドレールに拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、寝台装置及び機能画像/形態画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断には、主として形の変化を観察する形態画像データと、機能の変化を観察する機能画像データに分類することができる。形態画像データを得るための形態画像診断装置には、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などがあり、機能画像データを得るための機能画像診断装置には、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission CT)装置等の核医学診断装置がある。
【0003】
PET装置では、ポジトロンを放出する放射性同位元素で標識した薬剤を被検体に投与し、この薬剤が被検体の腫瘍等の患部に集積して、体内からポジトロンが放出され消失する際に発生する放射線を検出する。この撮影により得られたPET画像データに腫瘍等の患部が現われる。そして、PET画像データによって診断された被検体の患部を治療する場合、PET画像データだけでは解剖学的な位置情報が少ない。
【0004】
そこで、最近では、形態画像データと機能画像データを得るために形態画像診断装置と機能画像診断装置を組み合わせた機能画像/形態画像診断装置がある。例えば、PET装置とX線CT装置を組み合わせたPET−CT装置がある(特許文献1)。
【0005】
例えば、PET−CT装置は、架台と、寝台と、天板と、寝台水平移動手段と、天板水平移動手段と、天板上下移動手段と、を有している。架台は開口部を有している。開口部の奥側にPET撮影位置が設けられ、開口部の手前側にCT撮影位置が設けられている。
【0006】
寝台は天板を支持している。天板は被検体を載置するものである。寝台水平移動手段は寝台を略水平方向に移動させる。天板水平移動手段は寝台に対して天板を略水平方向に移動させる。天板上下移動手段は寝台に対して天板を上下方向に移動させる。
【0007】
寝台水平移動手段により寝台を略水平方向に移動させることにより、天板上の被検体をCT撮影位置と、PET撮影位置とに移動することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−072327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述したPET−CT装置の例では、寝台水平移動手段と天板上下移動手段とが別々に構成されているため、構成が複雑化し、大型化やコスト高の要因となるという問題点があった。
【0010】
この実施形態は、上記の問題を解決するものであり、構成が複雑化するのを防止し、大型化やコスト高の要因をなくすことが可能な寝台装置及び機能画像/形態画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、実施形態の寝台装置は、寝台、Xリンク、スライダ、ガイドレール、スクリュー部材、クラッチ手段、及び拘束手段を有している。Xリンクは、長尺形状を有し、X字状に配された二つのリンク部材を備え、両方のリンク部材の下端部同士の間隔を狭めることにより、両方のリンク部材の上端部に支持した前記寝台を上昇させ、下端部同士の間隔を広げることにより、寝台を下降させる。スライダは、両方のリンク部材の下端部に軸支され、ナット部材が設けられる。ガイドレールは各スライダを略水平方向に案内する。スクリュー部材は、ガイドレールに沿って配置され、各ナット部材に螺合し、各ナット部材に対し相対回転するとき、各スライダに対し略水平方向に移動させる駆動力を印加する。クラッチ手段は、駆動力が一方のスライダに印加されないように、一方のナット部材をスクリュー部材と一体的に回転させ、又は駆動力が一方のスライダに印加されるように、一方のナット部材をスクリュー部材に対して相対回転させることを選択的に行う。拘束手段は、駆動力が一方のスライダに印加されないとき、一方のスライダをガイドレールに拘束し、駆動力が一方のスライダに印加されるとき、一方のスライダをガイドレールから解除する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態において、PET撮影位置p1に移動した寝台装置の模式図。
【図2】CT撮影位置p2に移動した寝台装置の模式図。
【図3】寝台装置を正面から見たときの模式図。
【図4】寝台装置を上方から見たときの模式図。
【図5A】クラッチ板が解除位置に移動されたときのスライダの断面図。
【図5B】クラッチ板が固定位置に移動されたときのスライダの断面図。
【図6】ナット部材が固定されたスライダの断面図。
【図7】寝台を上昇させたときの寝台装置の模式図。
【図8】第2の実施形態に係る制御手段の一例を示す回路図。
【図9】第3の実施形態に係るスライダ等を上方から見たときの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
この寝台装置の第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。なお、この寝台装置は、PET−CT装置に用いられるものとして説明する。
【0014】
図1はPET撮影位置p1に移動した寝台装置の模式図、図2はCT撮影位置p2に移動した寝台装置の模式図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、このPET−CT装置Aは、架台A1の開口A2を有し、天板1a上の被検体を開口A2の奥側のPET撮影位置p1と開口A2の手前側のCT撮影位置p2との間を略水平方向に移動し、かつ、それぞれの位置p1、p2で天板1aを高さ方向に位置調節するものである。
【0016】
図3は寝台装置を正面から見たときの模式図、図4は寝台装置を上方から見たときの模式図である。なお、架台A1の開口A2の奥側及び手前側は、図3で左側及び右側に相当する。
【0017】
図3に示すように、寝台装置1は、寝台基板2、Xリンク3、スライダ4、ガイドレール5、スクリュー部材6、クラッチ手段7、及び拘束手段8を有している。
【0018】
(寝台)
寝台は、ベースとなる寝台基板2を有している。なお、従来のPET−CT装置と同様に、寝台基板2には天板1aが略水平方向に移動可能に支持されている。以下の説明で、寝台基板2を寝台という場合がある。
【0019】
寝台基板2の前端部にはヒンジ21が固定されている。寝台基板2の後端部には、ヒンジ22がガイド部材23により略水平方向(図3において左右方向)に移動可能に配設されている。
【0020】
(Xリンク)
Xリンク3は、長尺形状を有し、X字状に配された二つのリンク部材31、32を備えている。
【0021】
二つのリンク部材31、32の中央部同士は、連結ピン33により相互に軸支されている。
【0022】
さらに、リンク部材31の下端部31aは、奥側位置(図3で左側)に配設された奥側のスライダ4に軸支され、リンク部材31の上端部31bは、ヒンジ22に軸支されている。
【0023】
さらに、リンク部材32の下端部32aは、手前側位置(図3で右側)に配設された手前側のスライダ4に軸支され、リンク部材32の上端部32bは、ヒンジ21に軸支されている。
【0024】
以上のように構成されることにより、Xリンク3は、両方のリンク部材31、32の下端部31a、32a同士の間隔を狭めることにより、両方のリンク部材31、32の上端部31b、32bに支持した寝台基板2(寝台)を上昇させ、下端部31a、32a同士の間隔を広げることにより、寝台基板2を下降させるように構成されている。下降させた寝台基板2を図3に示し、上昇させた寝台基板2を図7に示す。
【0025】
(スライダ)
奥側及び手前側のスライダ4について、図5A、図5B及び図6を参照して説明する。図5Aはクラッチ板が解除位置に移動されたときのスライダ4の断面図であり、図5Bはクラッチ板が固定位置に移動されたときのスライダ4の断面図、図6はナット部材が固定された手前側のスライダ4の断面図である。
【0026】
図4、図5A及び図5Bに示すように、奥側のスライダ4は、ブロック41、ナット部材42、及びクラッチ手段7を有している。
【0027】
ナット部材42は、クラッチ手段7を介してブロック41に支持されている。クラッチ手段7については後述する。
【0028】
図4及び図6に示すように、手前側のスライダ4は、ブロック41及びナット部材42を有している。ナット部材42は、手前側のスライダ4(ブロック41)に固定されている。
【0029】
(ガイドレール)
図3及び図4に示すように、ガイドレール5は、奥側及び手前側のスライダ4を略水平方向に案内する。ガイドレール5は、ベース部材51を介して設置面(図示省略)に固定される。なお、以下、一対のガイドレール5の一方及びそれに案内されるスライダ4について説明するが、一対のガイドレール5の他及びそれに案内されるスライダ4についても同様であり、それらの説明を省略する。
【0030】
(スクリュー部材)
図3及び図4に示すように、スクリュー部材6は、一対のガイドレール5の間の隙間にそれらに沿って配置され、奥側及び手前側のスライダ4の各ナット部材42に螺合し、各ナット部材42に対し相対回転するとき、奥側及び手前側のスライダ4に対し略水平方向に移動させる駆動力を印加する。
【0031】
スクリュー部材6の一端部は、減速機構61を介して駆動モータ62に連結されている。スクリュー部材6には、ボールスクリューを用いることが好ましい。
【0032】
駆動モータ61の動力により、例えば、スクリュー部材6が正転し、その駆動力が奥側及び手前側のスライダ4に印加されると、奥側及び手前側のスライダ4が略水平方向の一方(図3及び図4の左方向)に移動し、スクリュー部材6が逆転し、その駆動力が奥側及び手前側のスライダ4に印加されると、奥側及び手前側のスライダ4が略水平方向の他方(図3及び図4の右方向)に移動するように構成されている。
【0033】
(クラッチ手段)
図4、図5A及び図5Bに示すように、クラッチ手段7は、一方のスライダである奥側のスライダ4のブロック41に設けられている。クラッチ手段7は、あらゆる公知の手段が用いられる。例えば、クラッチ手段7は、電磁石71及びクラッチ板72を有している。電磁石71にはスイッチ手段を介して電源が電気的に接続されている。電磁石71による引力/斥力を受けてクラッチ板72が第1位置(図5Aに示す解除位置)と第2位置(図5Bに示す固定位置)との間を往復移動する。第1位置に移動させたクラッチ板72によりナット部材42が奥側のスライダ4(ブロック41)に対する固定が解除される。第2位置に移動させたクラッチ板72によりナット部材42が奥側のスライダ4(ブロック41)に対して固定される。なお、図4では、クラッチ手段7を簡略化して示している。
【0034】
クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されないように、クラッチ板72を第1位置に移動させ、ナット部材42を奥側のスライダ4(ブロック41)に対して固定解除させることにより、ナット部材42をスクリュー部材6と一体的に回転させ、又は、その駆動力が奥側のスライダ4に印加されるように、クラッチ板72を第2位置に移動させ、ナット部材42を奥側のスライダ4(ブロック41)に対して固定させることにより、ナット部材42をスクリュー部材6に対して相対移動させることを選択的に行うよう構成されている。
【0035】
(拘束手段)
拘束手段8は、ガイドレール5側に設けられている。ここで、ガイドレール5側とは、ガイドレール5及びそれが固定される場所(例えば、ベース部材51)を含むものである。拘束手段8は、最奥側位置及び最手前側位置(寝台においてPET撮影位置p1及びCT撮影位置p2)にそれぞれ移動した奥側のスライダ4に対応する位置に設けられる。
【0036】
なお、図3及び図4では、最奥側位置に移動した奥側のスライダ4に対応する位置に設けられた拘束手段8のみを示し、最手前側位置に移動した奥側のスライダ4に対応する位置に設けられた拘束手段8を省略している。
【0037】
また、拘束手段8は、一対のガイドレール5側のそれぞれに設けられているが、両方の拘束手段8は、同様な構成をしているため、一方の拘束手段8について説明し、他方の拘束手段8の説明を省略する。
【0038】
拘束手段8は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されないとき、奥側のスライダ4をガイドレール5に拘束し、その駆動力が奥側のスライダ4に印加されるとき、奥側のスライダ4をガイドレール5から解除する。
【0039】
拘束手段8の一例としては、ソレノイドである。ソレノイドは、本体81、コイル(図示省略)及びシャフト82を有し、コイルに電流が流れると、シャフト82が本体81から出没するように構成されている。コイルにはスイッチ手段(図示省略)を介して電源(図示省略)に電気的に接続されている。
【0040】
ソレノイドは、シャフト82を奥側のスライダ4の被係止部(図示省略)に係止することにより奥側のスライダ4をガイドレール5に拘束する位置と、シャフト82を奥側のスライダ4から離脱することにより奥側のスライダ4をガイドレール5から解除する位置との間を移動させる。
【0041】
拘束手段8の一例によれば、奥側のスライダ4を最奥側位置で拘束することが可能となる。
【0042】
〔寝台装置の動作〕
次に、寝台(寝台基板2)を水平方向及び高さ方向に位置調節するときの寝台装置の動作について図3及び図7を参照して説明する。図7は寝台を上昇させたときの寝台装置の模式図である。なお、図3及び図7では、寝台がPET撮影位置p1(架台の開口の奥側)にあるものとして説明する。
【0043】
寝台の位置調整は、クラッチ手段7及び拘束手段8の協働により行われる。以下に説明する寝台の位置調整においては、操作者がクラッチ手段7及び拘束手段8のスイッチ手段をオン/オフ操作することにより行われる。
【0044】
(寝台の奥側移動)
寝台をCT撮影位置p2からPET撮影位置p1の方向(奥側)に移動するとき、クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されるように、ナット部材42をスクリュー部材6に対して相対移動させる。このとき、拘束手段8は、奥側のスライダ4をガイドレール5から解除している。
【0045】
それにより、奥側及び手前側のスライダ4は、駆動力が印加され、ガイドレール5に沿って奥側に移動する。このとき、寝台も奥側に移動する。PET撮影位置p1に移動した寝台基板2を図3に示す。このとき、奥側のスライダ4は移動可能な範囲において最奥側位置に移動する。
【0046】
(寝台の上昇)
寝台をPET撮影位置p1に移動したとき、クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されないように、ナット部材42をスクリュー部材6と一体的に回転させる。このとき、拘束手段8は、奥側のスライダ4をガイドレール5に拘束する。
【0047】
それにより、奥側のスライダ4が最奥側位置で拘束される一方、手前側のスライダ4のみがさらに、奥側に移動する。それにより、両方のリンク部材31、32の下端部31a、32a同士の間隔が狭くなり、両方のリンク部材31、32の上端部31b、32bに支持した寝台を上昇させる。上昇させた寝台を図7に示す。なお、被検体を載置した天板1aも上昇する。
【0048】
寝台が所定の高さ位置になったならば、スクリュー部材6の回転を停止する。このとき、拘束手段8及びスクリュー部材6により、両方のリンク部材31、32の下端部31a、32aの前後移動が阻止され、寝台を所定の高さ位置に維持することが可能となる。それにより、スクリュー部材6の回転量に応じて、寝台の高さ調節が可能となる。
【0049】
(寝台の下降)
寝台を下降させるときは、スクリュー部材6を逆回させればよい。それにより、奥側のスライダ4を最奥側位置で拘束される一方、手前側のスライダ4のみが手前側(図3及び図4において右方)に移動する。それにより、両方のリンク部材31、32の下端部31a、32a同士の間隔が広くなり、両方のリンク部材31、32の上端部31b、32bに支持した寝台を下降させる。なお、被検体を載置した天板1aも下降する。
【0050】
寝台が所定の高さ位置になったならば、スクリュー部材6の回転を停止する。このとき、拘束手段8及びスクリュー部材6により、両方のリンク部材31、32の下端部31a、32aの前後移動が阻止され、寝台を所定の高さ位置に維持することが可能となる。
【0051】
(寝台の手前側移動)
寝台をPET撮影位置p1からCT撮影位置p2の方向(手前側:図3及び図4において右方)に移動するとき、スクリュー部材6を逆回させればよい。クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されるように、ナット部材42をスクリュー部材6に対して相対回転させる。このとき、拘束手段8は、奥側のスライダ4をガイドレール5から解除している。
【0052】
それにより、奥側及び手前側のスライダ4は、駆動力が印加され、ガイドレール5に沿って手前側に移動する。このとき、寝台も手前側に移動する。寝台をCT撮影位置p2に移動し、CT撮影位置p2において寝台の高さ調節するときも、PET撮影位置p1のときと同様に行われる。
【0053】
以上のように、クラッチ手段7及び拘束手段8を協働させることにより、寝台を水平方向及び高さ方向の所定位置に移動し、かつ、その位置に維持させることが可能となる。
【0054】
従来のPET−CT装置の例では、寝台水平移動手段と天板上下移動手段とが別々に構成されていた。
【0055】
これに対し、実施形態に係るPET−CT装置では、寝台を略水平方向に移動する手段(寝台水平移動手段)と寝台を昇降する手段(天板上下移動手段)とが一つの機構により構成されているため、その構成が複雑化するのを防止することが可能となる。
【0056】
なお、この実施形態では、拘束手段8により奥側のスライダ4がガイドレール5側に拘束される構成を示したが、拘束手段8により手前側のスライダ4がガイドレール5側に拘束されるように構成してもよい。
【0057】
このような構成では、例えばCT撮影位置p2にある寝台が次のように移動調節される。
クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が手前側のスライダ4に印加されるように、手前側のスライダ4のナット部材42をスクリュー部材6に対し相対回転させる。スクリュー部材が正転されると、手前側及び奥側のスライダ4が共に奥側に移動し、それにより、寝台がCT撮影位置p2からPET撮影位置p1に移動する。このとき、拘束手段8が手前側のスライダ4をガイドレール5側に拘束する。また、クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が手前側のスライダ4に印加されないように、手前側のスライダ4のナット部材42をスクリュー部材6と一体的に回転させる。
【0058】
その後、スクリュー部材が逆転されると、奥側のスライダ4のみが手前側に移動し、手前側のスライダ4との距離が近づく。それにより、リンク部材31、32の下端部31a、32a同士の間隔が狭まり、寝台が上昇する。反対に、スクリュー部材が正転されると、奥側のスライダ4のみが奥側に移動し、手前側のスライダ4との距離が遠ざかる。それにより、リンク部材31、32の下端部31a、32a同士の間隔が広がり、寝台が下降する。このようして、寝台の高さ位置調整が可能となる。
【0059】
〔拘束手段の変形例〕
前記拘束手段8の一例では、拘束手段8をガイドレール5側に設けたが、拘束手段の変形例としては、拘束手段8を奥側のスライダ4側に設けてもよい。ここで、奥側のスライダ4側とは、奥側のスライダ4及びこれと一体的に移動する部材(例えば、リンク部材31の下端部31a)を含むものである。
【0060】
拘束手段8としては、前記拘束手段8の一例と同様にソレノイドである。すなわち、ソレノイドは、シャフト82をガイドレール5の被係止部(図示省略)に係止することにより奥側のスライダ4をガイドレール5に拘束する位置と、シャフト82をガイドレール5から離脱することにより奥側のスライダ4をガイドレール5から解除する位置との間を移動させる。
【0061】
拘束手段8の変形例によれば、ガイドレール5に被係止部(例えば凹部)を所定間隔(例えば、2cm)で設けることにより、奥側のスライダ4を所定間隔毎に拘束することが可能となる。さらに、奥側のスライダ4を拘束した位置で、寝台の高さ位置調節が可能となる。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る寝台装置について図8を参照して説明する。
【0063】
第2の実施形態において、第1の実施形態の構成と同じものについては同一番号を付してその説明を省略する。
【0064】
第1の実施形態では、操作者がクラッチ手段7及び拘束手段8の各スイッチ手段を操作して、クラッチ手段7及び拘束手段8を協働させ、それによって、寝台を水平方向及び高さ方向の所定位置に移動調節した。
【0065】
(制御手段)
第2実施形態では、クラッチ手段7及び拘束手段8を協働させるための制御手段9が設けられている。
【0066】
制御手段9は、a接点であるスイッチ9a、9bを有している。電源は、スイッチ9a、9bを介してクラッチ手段7及び拘束手段8に電気的に接続されている。
【0067】
制御手段9は、寝台を略水平方向に移動させる指示情報(図8にaで示す)を受けて、スイッチ9a、9bをオンさせると、クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されるように、ナット部材42をスクリュー部材6に対して相対回転可能にさせる。また、拘束手段8は、奥側のスライダ4をガイドレール5から解除する。
【0068】
制御手段9は、寝台を高さ方向に移動させる指示情報aを受けて、スイッチ9a、9bをオフさせると、クラッチ手段7は、スクリュー部材6の駆動力が奥側のスライダ4に印加されないように、ナット部材42をスクリュー部材6と一体的に回転可能にさせる。また、拘束手段8は、奥側のスライダ4をガイドレール5に拘束する。
【0069】
この実施形態では、操作者が寝台をどのような位置にするかを指示するだけで、制御手段9がその指示を受けて、クラッチ手段7及び拘束手段8を協働させるように制御するので、寝台の位置調節操作が容易となる。
【0070】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る寝台装置について図9を参照して説明する。
第3の実施形態において、第1の実施形態の構成と同じものについては同一番号を付してその説明を省略する。
【0071】
第1の実施形態では、拘束手段8は、ソレノイドであったが、この第3の実施形態では、拘束手段8は、ラック85、ギア86、ブレーキ88を有する。
【0072】
(ラック)
図9はスライダ4等を上方から見たときの模式図である。図9に示すように、ラック85は、ガイドレール5に沿って設けられている。
【0073】
(ギア)
ギア86は、奥側のスライダ4に設けられ、ガイドレール5に対する奥側のスライダ4の相対移動に応じてラック85上を転動する。
【0074】
(ブレーキ手段)
ブレーキ手段88は、ギア86の転動を制止することにより、ガイドレール5に対する奥側のスライダ4の相対移動を阻止する。
【0075】
奥側のスライダ4の移動可能な範囲のいずれの位置においても、奥側のスライダ4をその位置に移動しないように拘束することが可能となる。それにより、寝台を移動可能な範囲の任意の位置に移動し、その位置で高さ調節することが可能となる。
【0076】
なお、上記各実施形態及び変形例において拘束手段8を説明してきたが、拘束手段8は、スライダ4とガイドレール5側とを相対移動しないように拘束し、かつ、相対移動するようにその拘束を解除するものであれば、あらゆる公知の手段が適用される。
【0077】
(機能画像/形態画像診断装置)
なお、上記実施形態では、寝台装置1がPET/CT装置に設けられたものを示したが、これに限らず、第1の診断位置を有し、形態画像データを得るための形態画像診断装置と、第2の診断位置を有し、機能画像データを得るための機能画像診断装置とを組み合わせた機能画像/形態画像診断装置に設けてもよい。
【0078】
前述したように、形態画像データを得るための形態画像診断装置には、X線診断装置、X線CT装置、MRI装置などがあり、機能画像データを得るための機能画像診断装置には、PET装置、SPECT装置等の核医学診断装置がある。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 寝台装置
1a 天板
2 寝台基板
3 Xリンク
4 スライダ
5 ガイドレール
6 スクリュー部材
7 クラッチ手段
71 電磁石
72 クラッチ板
8 拘束手段
9 制御手段
p1 PET撮影位置
p2 CT撮影位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝台と、
長尺形状を有し、X字状に配された二つのリンク部材を備え、両方のリンク部材の下端部同士の間隔を狭めることにより、両方のリンク部材の上端部に支持した前記寝台を上昇させ、前記下端部同士の間隔を広げることにより、前記寝台を下降させるXリンクと、
両方のリンク部材の下端部に軸支され、ナット部材が設けられたスライダと、
各スライダを略水平方向に案内するガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って配置され、各ナット部材に螺合し、各ナット部材に対し相対回転するとき、各スライダに対し略水平方向に移動させる駆動力を印加するスクリュー部材と、
前記駆動力が前記一方のスライダに印加されないように、一方のナット部材を前記スクリュー部材と一体的に回転させ、又は前記駆動力が一方のスライダに印加されるように、前記一方のナット部材を前記スクリュー部材に対して相対回転させることを選択的に行うクラッチ手段と、
前記駆動力が一方のスライダに印加されないとき、一方のスライダを前記ガイドレールに拘束し、前記駆動力が一方のスライダに印加されるとき、一方のスライダを前記ガイドレールから解除する拘束手段と、
を有する
ことを特徴とする寝台装置。
【請求項2】
前記クラッチ手段及び前記拘束手段を制御する制御手段をさらに有し、
前記制御手段は、
前記寝台を略水平方向へ移動させる指示を受けて、一方のスライダを前記ガイドレールから解除するように前記拘束手段を制御し、かつ、前記一方のナット部材を前記スクリュー部材に対して相対回転させるように前記クラッチ手段を制御し、
前記寝台を上下移動させる指示を受けて、一方のスライダを前記ガイドレールに拘束するように前記拘束手段を制御し、かつ、前記一方のナット部材を前記スクリュー部材と一体回転させるように前記クラッチ手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の寝台装置。
【請求項3】
前記拘束手段は、前記ガイドレール側に設けられ、
シャフトを有し、
前記シャフトを前記一方のスライダに係止することにより前記一方のスライダを前記ガイドレールに拘束する位置と、前記シャフトを前記一方のスライダから離脱することにより前記一方のスライダを前記ガイドレールから解除する位置との間を移動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の寝台装置。
【請求項4】
前記拘束手段は、前記一方のスライダ側に設けられ、
シャフトを有し、
前記シャフトを前記ガイドレールに係止することにより前記一方のスライダを前記ガイドレールに拘束する位置と、前記シャフトを前記ガイドレールから離脱することにより前記一方のスライダを前記ガイドレールから解除する位置との間を移動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の寝台装置。
【請求項5】
前記拘束手段は、
前記ガイドレールに沿って設けられたラックと、
前記一方のスライダに設けられ、前記ガイドレールに対する前記一方のスライダの相対移動に応じて前記ラック上を転動するギアと、
前記ギアの転動を制止することにより、前記ガイドレールに対する前記一方のスライダの相対移動を阻止するブレーキ手段と、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の寝台装置。
【請求項6】
前記請求項1から請求項5のいずれかに記載の寝台装置を、
第1の診断位置を有し、形態画像データを得るための形態画像診断装置と、第2の診断位置を有し、機能画像データを得るための機能画像診断装置とを組み合わせた機能画像/形態画像診断装置に設けられる
ことを特徴とする機能画像/形態画像診断装置。
【請求項7】
前記機能画像/形態画像診断装置は、被検体に所定の薬剤を投与することにより被検体から発生する放射線の検出情報に基づいて機能画像データを得るPET装置と、被検体を透過したX線の検出情報に基づいて形態画像データを得るCT装置とを組み合わせたPET/CT装置であることを特徴とする請求項6に記載の機能画像/形態画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39303(P2013−39303A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179449(P2011−179449)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】