説明

対物レンズ駆動装置

【課題】高温環境下での対物レンズ駆動装置のワイヤねじれによる記録・再生性能劣化を起こさない光ピックアップを提供する。
【解決手段】半導体レーザーで発生したレーザー光を対物レンズ2を介してディスクに導き、ディスクとの間で情報を記録または再生する光ピックアップに具備され、対物レンズ2を保持する可動部5と、ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向に離間して配置された可動部5を弾性保持する複数本のワイヤ7a,7b,7c,7dを有し、フォーカス方向に対向するワイヤ対の一方のワイヤ7a,7bに右方向にねじれを加えたワイヤAを配置し、もう一方のワイヤ7c,7dに左方向にねじれを加えたワイヤBを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクとの間で情報を記録または再生する光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップに用いる従来の対物レンズ駆動装置の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の対物レンズ駆動装置は、対物レンズを有する可動部と、この可動部をワイヤを介して支持しヨークを有する固定部と、これら固定部及び可動部を収容するピックアップ筐体とを備える。そしてこの構成において、ピックアップ筐体に前記固定部の側面または前記ヨークを固定し、環境温度が変化したときに固定部が自由に熱変形することを特徴としている。
【特許文献1】特開2006−127586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、対物レンズ駆動装置とピックアップ筐体との位置ズレを低減できるが、対物レンズを有する可動部と固定部との支持部材であるワイヤは真直度を得るためねじりをもたせており、高温環境下では残留応力が開放されねじれが発生する。その結果、記録・再生する光ディスクに対し対物レンズが傾斜してしまい、記録・再生性能が劣化する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するため開発されたものであり、高温環境下での対物レンズ駆動装置のワイヤねじれによる記録・再生性能劣化を起こさない光ピックアップを提供するものである。
【0005】
そして上記目的は、半導体レーザーで発生したレーザー光を対物レンズを介してディスクに導き、前記ディスクとの間で情報を記録または再生する光ピックアップに具備され、前記対物レンズを保持する可動部と、前記ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向に離間して配置された前記可動部を弾性保持する複数本のワイヤを有し、フォーカス方向に対向する前記ワイヤ対の一方に右方向にねじれを加えたワイヤAを配置し、もう一方に左方向にねじれを加えたワイヤBを配置することにより、環境温度が変化したときに残留応力の開放によるワイヤねじれにより前記可動部の回転を抑制することを可能にしたことを特徴とする光ピックアップによって達成される。
【0006】
また、半導体レーザーで発生したレーザー光を対物レンズを介してディスクに導き、前記ディスクとの間で情報を記録または再生する光ピックアップに具備され、前記対物レンズを保持する可動部と、前記ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向に離間して配置された前記可動部を弾性保持する複数本のワイヤを有し、トラッキング方向に対向する前記ワイヤ対の一方に右方向にねじれを加えたワイヤAを配置し、もう一方に左方向にねじれを加えたワイヤBを配置することを特徴とする光ピックアップによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
高温環境下での各ワイヤの残留応力が開放されねじれが発生するが、それぞれのねじれが相殺され、ワイヤのねじれによる可動部の回転を抑制することが可能になる。すなわち、記録・再生する光ディスクに対し対物レンズが水平に保持され、記録・再生性能の劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明にかかる光ピックアップのいくつかの実施例を、図面を参照して説明する。本発明に係る光ピックアップ10の一例を図4に示す。
【0009】
光ピックアップ10は、対物レンズ駆動装置1、光学系及びフレキシブルプリント基板11の3つの要素を有している。対物レンズ駆動装置1は、ディスクの回転に追従して性格8に情報を記録または再生するために、対物レンズ2をフォーカシング方向とトラッキング方向に可動可能である。対物レンズ駆動装置は、ヨーク3と永久磁石4a、4bで形成される磁気回路と、対物レンズ2を取り付けた可動部5を保持する固定部6と、固定部6に対して可動部5を弾性支持するワイヤ7a〜7dとを有する。
【0010】
可動部5には、フォーカシングコイル51とトラッキングコイル52が組み込まれている。(図1参照)これらのコイル51、52に電流を流すと永久磁石4a、4bとの間でフレミングの法則により電磁力が発生し、可動部5が駆動される。光学系は、レーザー光を出射・受光する半導体レーザーユニット12と、半導体レーザーからの光を平行光にする図示しないコリメーターレンズとミラーと、半導体レーザーからの光を集光するレンズ2とを有する。これらの光学部品は接着剤を用いて光ピックアップ筐体13に固定されている。フレキシブルプリント基板11は、対物レンズ駆動装置1および光学系を、図示しない回路基板に接続する。
【0011】
図4で示した光ピックアップに用いる対物レンズ駆動装置1を、図1を用いて詳細に示す。対物レンズ2を保持する可動部5に、フォーカシングコイル51とトラッキングコイル52が取り付けられている。支持部材ワイヤ7a〜7dの一端が可動5に固定されており、他端が固定部6に固定されている。可動部5では、フォーカシングコイル51にトラッキングコイル52が取り付けられており、フォーカシングコイルの中心空間部には、ヨーク3の折り曲げ部31、32が挿入される。折り曲げ部31、32には、永久磁石4とバックヨーク8が取り付けられて磁気回路を形成する。
【0012】
本実施例においては、前記可動部5と、この可動部5のフォーカス方向およびトラッキング方向に離間して配置された前記可動部5を弾性保持する前記ワイヤ7a〜7dを有し、フォーカス方向に対向する前記ワイヤ7aとワイヤ7bに右方向にねじれを加え、前記ワイヤ7cとワイヤ7dに左方向にねじれを加えている。このことにより、高温環境下での各ワイヤ7a〜7dの残留応力が開放されねじれが発生するが、それぞれのねじれが相殺され、ワイヤのねじれによる前記可動部5の回転を抑制することが可能になる。すなわち、記録・再生する光ディスクに対し対物レンズが水平に保持され、記録・再生性能の劣化を低減することができる。
【0013】
本発明におけるピックアップの他の実施例を、図2に示す。本実施例は上記実施例とは、ワイヤ7a〜7dの配置場所の点で相違する。前記可動部5と、この可動部5のフォーカス方向およびトラッキング方向に離間して配置された前記可動部5を弾性保持する前記ワイヤ7a〜7dを有し、トラッキング方向に対向する前記ワイヤ7aとワイヤ7bに右方向にねじれを加え、前記ワイヤ7cとワイヤ7dに左方向にねじれを加えている。このことにより、高温環境下での各ワイヤ7a〜7dの残留応力が開放されねじれが発生するが、それぞれのねじれが相殺され、ワイヤのねじれによる前記可動部5の回転を抑制することが可能になる。すなわち、記録・再生する光ディスクに対し対物レンズが水平に保持され、記録・再生性能の劣化を低減することができる。
【0014】
本発明におけるピックアップの他の実施例を、図3に示す。本実施例は上記実施例とは、ワイヤ7a〜7dの配置場所の点で相違する。前記可動部5と、この可動部5のフォーカス方向およびトラッキング方向に離間して配置された前記可動部5を弾性保持する前記ワイヤ7a〜7dを有し、トラッキング方向に対向する前記ワイヤ7aとワイヤ7bにおいて、前記ワイヤaには右方向にねじれを加え、前記ワイヤbには左方向のねじれを加えている。また、前記ワイヤaとフォーカス方向に対向する前記ワイヤdには左方向のねじれを加え、前記ワイヤdにトラッキング方向に対向する前記ワイヤcには左方向にねじれを加えている。このことにより、高温環境下での各ワイヤ7a〜7dの残留応力が開放されねじれが発生するが、それぞれのねじれが相殺され、ワイヤのねじれによる前記可動部5の回転を抑制することが可能になる。すなわち、記録・再生する光ディスクに対し対物レンズが水平に保持され、記録・再生性能の劣化を低減することができる。
【0015】
上記各実施例によれば、高温環境下での前記対物レンズ駆動装置1の前記ワイヤ7a〜dのねじれによる、前記可動部5の回転を抑制することができ、記録・再生性能劣化の劣化を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明にかかる対物レンズ駆動装置は、記録・再生性能の劣化を低減することができるものであり、光ピックアップ等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光ピックアップの一実施例を示す図
【図2】本発明に係る光ピックアップに用いる対物レンズ駆動装置を示す図
【図3】図2に示した本発明に係る光ピックアップに用いる対物レンズ駆動装置の他の実施例を示す図
【図4】本発明に係る光ピックアップ10の一例示す図
【符号の説明】
【0018】
1 対物レンズ駆動装置
2 対物レンズ
3 ヨーク
4a、4b 永久磁石
5 可動部
6 固定部
7a〜7d ワイヤ
8 バックヨーク
10 光ピックアップ
11 フレキシブルプリント基板
12 半導体レーザーユニット
13 ピックアップ筐体
31、32 折り曲げ部
51 フォーカシングコイル
52 トラッキングコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザーで発生したレーザー光を対物レンズを介してディスクに導き、前記ディスクとの間で情報を記録または再生する光ピックアップに具備され、前記対物レンズを保持する可動部と、前記ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向に離間して配置された前記可動部を弾性保持する複数本のワイヤを有し、フォーカス方向に対向する前記ワイヤ対の一方に右方向にねじれを加えたワイヤAを配置し、もう一方に左方向にねじれを加えたワイヤBを配置することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
半導体レーザーで発生したレーザー光を対物レンズを介してディスクに導き、前記ディスクとの間で情報を記録または再生する光ピックアップに具備され、前記対物レンズを保持する可動部と、前記ディスクに対してフォーカス方向及びトラッキング方向に離間して配置された前記可動部を弾性保持する複数本のワイヤを有し、トラッキング方向に対向する前記ワイヤ対の一方に右方向にねじれを加えたワイヤAを配置し、もう一方に左方向にねじれを加えたワイヤBを配置することを特徴とする対物レンズ駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate