説明

対象の微生物汚染を評価するための分析機器および方法

【課題】各種サンプルのt閾値対TVCの2点較正曲線を使用してtの生存好気性菌数を確認するための機器および方法を提供する。
【解決手段】較正曲線上の一方の点は、x切片値(すなわち、サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中の試験の開始時(t)における最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値)である。もう一方の点は、tでのより小さい既知生存好気性菌数を有するサンプルから実験的に確認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年4月21日に出願された米国仮出願番号第61/477,695号の利益を主張している。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の好気性菌の総生存数(TVC)は、サンプル中の酸素の枯渇を、t閾値対TVCの先に確立した較正曲線に基づいて、閾値に達するまで経時的にモニタリングすることによって決定できる。例えば、F.C.O’Mahony and D. B. Papkovsky, Rapid High−Throughput Assessment of Aerobic Bacteria in Complex Samples by Fluorescence−Based Oxygn Respirometry, Applied and Environmental Microbiology、第72巻、第2号、2006年2月、1279〜1287頁を参照のこと。
【0003】
閾値対TVCの較正曲線は、既知の異なる出発TVCを含有するいくつかのサンプルのt閾値を実験的に決定することと、結果を片対数目盛にプロットすることと、回帰直線の一次方程式を確立することとによって確立する。
【0004】
このようなシステムは比較的迅速で、容易で、正確であるが、各種サンプル(例えば、各SKUまたは各種スワブまたはスワブサンプリングプロトコール)のt閾値対TVCの較正曲線の確立に関わる時間および費用のために、このシステムが商業的な使用には、特に、絶え間なく変わる製品ラインを有する、および/または数ダースもしくは数千でさえの種々のSKUを有する企業には適さないものとなっている。
【0005】
したがって、各種サンプルのt閾値対TVCの正確な較正曲線を迅速かつ安価に得るシステムおよび方法に対する大きな必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明者は、驚くべきことに、各種サンプルのt閾値対TVCの正確な較正曲線を、一方の点がx切片値(すなわち、サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中の試験の開始時(t)における最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値)であり、もう一方の点が、tでのより小さい既知生存好気性菌数、好ましくは、x切片でのtより数桁小さいtでの生存好気性菌数を有するサンプルから実験的に確認される、2点だけから確立できることを発見した。
【0007】
本発明の第1の態様は、(a)時間tで出発して対象から採取したサンプルを培養する段階と、(b)培養サンプルのO濃度を、検出されるO濃度が閾値より下に低下するまで定期的に確認する段階と、(c)tからO濃度が閾値より下に低下した時点までに測定される期間t閾値を確立する段階と、(d)次に示す一次方程式を使用して、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付ける段階とを含む、対象の微生物汚染を評価する方法である。
y=mx+b (式1)
ここで、
x=tにおける、サンプルの単位重量、容積またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数、
y=t閾値
x切片=(−b/m)=サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中のtにおける最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値、
m(傾き)=(y−y)/(x−x)であり、
およびyは、既知xを有する対象から採取されたサンプルのt閾値を確立することによって実験的に確認されるものであり、
およびyは、x切片でのxおよびyの値(−b/m,0)である。
【0008】
サンプルは、酸素感受性フォトルミネッセンス色素の存在下で、酸素感受性色素の蛍光を測定することによって培養サンプルのO濃度を確認しながら、密閉されたチャンバー中で培養することが好ましい。
【0009】
本発明の第2の態様は、Oセンサと、センサと電気的に連通しているマイクロプロセッサとを含む分析機器であり、ここで、機器は、(i)対象から採取された培養サンプルのO濃度を定期的に確認し、(ii)サンプルの培養が開始された時間tから、サンプルの確認されたO濃度が最初に閾値より下に落ちる時点までの期間t閾値を決定し、(iii)次に示す一次方程式を使用して、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付け、(iv)xの関連付けられた値を周辺装置に送信するのに有効である。
y=mx+b (式1)
ここで、
x=tにおける、サンプルの単位重量、容積、またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数、
y=t閾値
x切片=(−b/m)=サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中のtにおける最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値、
m(傾き)=(y−y)/(x−x)であり、
およびyは、既知xを有する対象から採取されたサンプルのt閾値を確立することによって実験的に確認されるものであり、
およびyは、x切片でのxおよびyの値(−b/m,0)である。
【0010】
センサは、発光寿命を有する酸素感受性フォトルミネッセンス色素と、酸素感受性色素の蛍光を測定することによって色素と流体連結している環境中のO濃度を決定するのに有効な読み取り装置とを含むことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って調製された例示的較正曲線を示す図である。
【図2】本発明に従った例示的Oセンサおよび培養サンプルから読み取り値を取るマイクロプロセッサを示す図であり、ここで、サンプルは、評価される対象から剥離された液化試料である。
【図3】本発明に従った例示的な培養サンプルを示す図であり、ここで、サンプルは、評価される対象の表面から採取したスワブサンプリングである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
構成
本発明は、対象(図示せず)から採取された培養サンプル50中の酸素濃度の変化をモニタリングすることと、容易に較正可能な一次方程式を使用して観察された変化を、培養前のサンプル50中の生存好気性菌数と関連付けることとによって、対象(図示せず)の微生物汚染を評価するための機器および方法を対象とする。
【0013】
微生物汚染について評価される対象(図示せず)は本質的に制限がなく、食肉加工およびパッケージング施設において使用される設備、食品調理用調理台、医療機器、果実、野菜および食肉などの固体ならびに乳製品、給水塔内に保持される水、生体サンプル、下水処理システムによって処理された下水、河川および小川を流れる水などの液体などに至る。
【0014】
当業者ならば、具体的であるが、排他的ではなく、鶏胸肉などの固体対象(図示せず)から試料を剥離すること、食品調理領域において使用される衛生的にされたステンレス鋼調理台などの硬表面から採取したスワブサンプリング、下水処理施設から採取されたアリコートなどを含めて、注目する種々の対象(図示せず)から適したサンプル50を得、調製することができる。
【0015】
各サンプル50を、開放上端21、閉鎖下端22および保持チャンバー29内のプローブ30を有する容器20の保持チャンバー29内に入れる。容器20は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0029402号明細書に開示されるものなどの、深さ対外周の高アスペクト比を有するバイアルまたはキュベットであることが好ましい。好ましい容器20は、バイアルまたはキュベット20であるので、開示内容のバランスは、バイアル20のような容器20を言及するものとするが、それによって制限されるものではない。
【0016】
本明細書に記載される好ましい方法および機器は、酸素(O)によるフォトルミネッセンスの消光に基づいて、サンプル50中の酸素(O)の微生物による消費をモニタリングする。発光とは、蛍光およびリン光の両方を包含する。紫外領域または可視領域における電磁放射が使用されて、分子が高い電子エネルギーレベルに励起される。励起された分子は、いくつかの方法のうち1種によってその過剰なエネルギーを失う。これらの方法の1種として、蛍光がある。蛍光とは、第一励起一重項状態から一重項基底状態への電子の放射遷移を指す(SからS)。蛍光の寿命は比較的短く、およそ10−9〜10−7秒である。しかし、最低励起一重項状態から三重項状態への項間交差が起こることが多く、これが、2つの状態のポテンシャルエネルギー曲線の交差の原因である。そのように生じた三重項状態は、リン光として知られる放射過程によって基底状態に戻り得る。リン光とは、最低励起三重項状態から一重項基底状態への電子の放射緩和である(TからS)。リン光につながる遷移は、スピン多重度の変化を含むので、確率が低く、したがって、10−4〜10秒の比較的長い寿命を有する。蛍光およびリン光寿命は、フォトルミネッセンス分子を消光できる分析物の分圧(P)の変化に関連する規定される様式で変化するとわかっている。したがって、フォトルミネッセンス材料と流体連結しているPは、フォトルミネッセンス寿命を測定することによって決定できる。
【0017】
好ましい実施形態では、プローブ30は光学的に活性であり、バイアル20の保持チャンバー29内に入れられたサンプル50中の酸素分圧PO2の変化を経験するよう構成され、配置された酸素分圧感受性材料である。酸素感受性材料は、好ましくは、酸素透過性ポリマーマトリックス内に埋め込まれたフォトルミネッセンス色素である。あるいは、酸素感受性フォトルミネッセンス色素を、サンプル50および/または任意の添加される増殖培地40中に溶解してもよい。
【0018】
酸素感受性フォトルミネッセンス色素は、周知の酸素感受性フォトルミネッセンス色素のいずれから選択してもよい。当業者ならば、プローブの意図される使用に基づいて適した色素を選択できる。適した酸素感受性フォトルミネッセンス色素の包括的でないリストとして、具体的であるが、排他的ではなく、ルテニウム(II)−ビピリジルおよびルテニウム(II)−ジフェニルフェナントロリン複合体、白金(II)−オクタエチルポルフィン−ケトンなどのポルフィリン−ケトン、白金(II)−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィンなどの白金(II)−ポルフィリン、パラジウム(II)−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィンなどのパラジウム(II)−ポルフィリン、テトラベンゾポルフィリンのリン光金属錯体、クロリン、アザポルフィリンおよびイリジウム(III)またはオスミウム(II)の長期減衰発光複合体が挙げられる。
【0019】
通常、疎水性酸素感受性フォトルミネッセンス色素を、適した酸素透過性かつ疎水性の担体マトリックスとともに配合する。やはり、当業者ならば、プローブ30の意図される使用および選択された色素に基づいて、適した酸素透過性疎水性担体マトリックスを選択できる。酸素透過性疎水性担体マトリックスとして使用するための適したポリマーの包括的でないリストとして、具体的であるが、排他的ではなく、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリ塩化ビニルおよびいくつかの共重合体が挙げられる。
【0020】
プローブ30が、分析物によるフォトルミネッセンスの消光に基づく場合には、バイアル20またはプローブ30でコーティングされたバイアル20の少なくともその部分は、励起および発光波長の放射が、プローブ30に送信され、プローブ30から受け取られるのを、最小にしか干渉せずに可能にしなくてはならない。
【0021】
分析物によるフォトルミネッセンスの消光に基づいてプローブ30を調べるための機器10は、周知であり、ニュージャージー州フランクリンレイクのBecton Dickinsonnおよびミネソタ州ミネアポリスのMocon,Inc.をはじめとする種々の供給源から市販されている。このような機器10は、通常、マイクロプロセッサ16、コンピュータメモリ(図示せず)、マウス(図示せず)および/またはキーボード(図示せず)などの入力装置、ディスプレイ15およびプリンター(図示せず)を含むか、またはそれらと連通するよう装備される。
【0022】
プローブ30を含有するバイアル20の製造
プローブ30を含有するバイアル20は、(A)酢酸エチルなどの有機溶媒(図示せず)中にフォトルミネッセンス酸素感受性色素と、酸素透過性ポリマーとを含有するコーティングカクテル(図示せず)を調製することと、(B)シリンジ(図示せず)を使用することなどによって、保持チャンバー29の底22にカクテルを置くことと、(C)カクテル(図示せず)を乾燥させ、それによって、固体状態コーティングが、バイアル20の底22で保持チャンバー29内に形成され、それによって、バイアル20内にプローブ30を形成することによって従来的に製造できる。
【0023】
一般に、有機溶媒中のポリマーの濃度は、1:20から1:10,000w/w、好ましくは、1:50〜1:5,000w/wの範囲の色素対ポリマーの割合で、0.1〜20重量%の範囲になくてはならない。
【0024】
使用
対象の微生物汚染は、(a)対象から採取したサンプル50を得ることおよびプローブ30を備えた容器20の保持チャンバー29中に置くことと、(b)場合により、サンプル50を規定の期間、消化することと、(c)置かれたサンプル50内に含有される微生物の増殖を支持するために必要かつ適当な場合には、場合により、増殖培地40を保持チャンバー29中に置くことと、(d)時間tで出発して、サンプル50を培養することと、(e)プローブ30で検出されるO濃度が閾値より下に低下するまで、培養サンプル50のO濃度を定期的に確認することと、(f)tから、O濃度が閾値よりも下に低下した時点までに測定される期間t閾値を確立することと、(g)次に示す一次方程式を使用して、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付けることとによって評価できる。
y=mx+b (式1)
ここで、
x=tにおける、サンプルの単位重量、容積または、サンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数、
y=t閾値
x切片=(−b/m)=サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中のtにおける最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値、
m(傾き)=(y−y)/(x−x
ここで、
およびyは、既知xを有する対象から採取されたサンプルのt閾値を確立することによって実験的に確認されるものであり、
およびyは、x切片でのxおよびyの値(−b/m,0)である。
【0025】
サンプルは、酸素感受性フォトルミネッセンス色素の存在下で、Oセンサと、センサと電気的に連通しているマイクロプロセッサとを含む分析機器10を用いて、酸素感受性色素の蛍光を測定することによって培養サンプルのO濃度を確認しながら、密閉されたチャンバー中で培養することが好ましい。
【0026】
濃度閾値は、(i)Oの大気中濃度の低下%として、(ii)tでの容器20中のプローブ30と流体連結しているOの濃度に対する、容器20中のプローブ30と流体連結しているOの濃度の低下%として、または(iii)容器20の保持チャンバー29内のOの濃度の絶対値として確立してもよい。選択肢(i)または選択肢(ii)のいずれかが使用される場合には、好ましい低下%は、25%から75%の間の低下である。選択肢(iii)が使用される場合には、5%から16%の間の絶対値が好ましい。
【0027】
サンプル50が消化される場合には、tは、サンプル50をtstomachの規定の期間、消化した後に確立しなくてはならない。この規定の期間は、サンプル50内の細菌の誘導増殖期内に起こるように設定することが好ましく、60分未満の期間が通常許容され、5分未満の期間が望ましいことが多い。
【0028】
保持チャンバー29内の酸素濃度は、実質的に任意の所望のスケジュールで調べることができるが、2時間を超える間隔をおいての読み取りは、tでのTVCの最終確認値において過度の不正確性の影響を受ける結果をもたらす傾向があり、一方で、30分未満しか間隔をおかない読み取りは、実質的にさらなる時間および努力を必要とするが、tでのTVCの最終確認値の正確性において中程度の改善しか伴わない。
【0029】
励起されたプローブ30によって放出される放射は、強度および/または寿命(減衰の速度、位相変動または異方性)の観点から測定でき、寿命の測定は、一般に、色素が酸素によって消光されてしまう程度の測定によって酸素濃度を確立しようとする場合に、より正確な、信頼性のある測定技術として好ましい。
【0030】
一次方程式およびその較正
密閉されたサンプル50が規定量または%の酸素を消費するのに必要な時間からサンプル50中の好気性菌の総生存数(TVC)を調べるために、図1に表されるものなどのt閾値対TVCの先に確立された較正曲線を使用することが必要である。
【0031】
伝統的に、t閾値対TVCのこのような較正曲線は、既知の種々の出発TVCを含有する同一サンプル種(例えば、地下水、乳、鶏胸肉、挽肉のハンバーグ、挽いた卵殻、壊れていない卵の外側から採取したスワブサンプル、衛生的にされたステンレス鋼食品加工作業面から採取したスワブサンプルなど)のいくつかのサンプル50のt閾値を実験によって求めることと、半対数目盛に結果をプロットすることと、回帰直線の一次方程式を確立することとによって確立する。
【0032】
本発明者は、驚くべきことに、各種サンプルのt閾値対TVCの正確な較正曲線は、一方の点がx切片値(すなわち、サンプル50を培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル50中の試験の開始時(t)における最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値)であり、もう一方の点が、tでのより小さい既知生存好気性菌数、好ましくは、x切片でのtより数桁小さいtでの生存好気性菌数を有するサンプル50から実験的に確認される、2点だけから確立できることを発見した。使用される対数は、自然対数であることが好ましい。
【0033】
ひとたび、サンプル種のt閾値対TVCの較正曲線を確立すると、培養前のそのサンプル種のサンプル50中の生存好気性菌数を、次に示す一次方程式を使用して、tからO濃度が閾値より下に低下した時点までに測定されるt閾値の実験的に得られる値から確認できる。
y=mx+b (式1)
ここで、
x=tにおける、サンプルの単位重量、容積、またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数、
y=t閾値
x切片=(−b/m)=サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中のtにおける最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値、
m(傾き)=(y−y)/(x−x
ここで、
およびyは、既知xを有する対象から採取されたサンプルのt閾値を確立することによって実験的に確認されるものであり、
およびyは、x切片でのxおよびyの値(−b/m,0)である。
【0034】
x切片値は、実験的に確立することが好ましいが、推定してもよい。推定する場合には、多くの場合、6から10の間の、最も多くは、7から9の間の推定値が、許容される結果をもたらすとわかった。
【0035】
実施例
実施例1(予測)
剥離されたサンプル
プローブ30において酸素感受性色素の蛍光を測定することによってプローブ30と流体連結しているサンプル50中のO濃度を決定できる検査装置10に、特定の種類のサンプル50の1種のサンプル50からy(t閾値)を実験的に得ると、方程式1をx(tにおける、サンプルの単位重量、容積またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数)について解くことができる、種々の特定の種類のサンプルのm(傾き)およびb(y切片)の値を提供する。
【0036】
検査装置10がmおよびbの値を有するサンプル50の種類に合致する、保存料を含有する加工食品のサンプル50を、毎正時30分に加工ラインから採取して、パッケージングの直前に生存細菌数(TVC、APCまたはCFU)を確認する。各サンプル50を加工ラインから試験室へ運び、所定の期間消化し、既知容積または重量のサンプル50を、フォトルミネッセンス酵素感受性プローブ30を含有するバーコードをつけたバイアル20中に置く。
【0037】
検査装置10を用いてプローブ30を検査することによって、サンプル50を含有する各バイアル20中のプローブ30から最初の読み取り値をとる。サンプル50の種類、最初の読み取り値の結果および最初の読み取り値をとる時刻を記録し、調べられるバイアル20のバーコードと関連付ける。最初の検査を完了すると、各バイアル20のその後の検査のスケジュールを定め、バイアル20を培養チャンバー(図示せず)中に入れる。
【0038】
各バイアル20を、定めた検査スケジュールで続いて検査する。各バイアル20の各検査の結果および最初の検査からの経過時間を記録する。
【0039】
各バイアル20を、プローブ30からの読み取り値が閾値に到達するまで検査し、その時点で、検査装置10は、試験が完了したことを示し、試験されたサンプル50の種類のmおよびbについて先に提供された値およびyについて実験的に確認された値を使用して生存細菌数(x)を決定し、xについて予め決められた閾値に基づいてサンプル50が許容されるまたは許容されない生存細菌数を含有していたかどうかについての表示をオペレーターに提供する。要求に応じて、オペレーターは、生存細菌数の実値を検査装置10から得ることができる。
【0040】
実施例2(予測)
スワブされたサンプル
プローブ30において酸素感受性色素の蛍光を測定することによってプローブ30と流体連結しているサンプル50中のO濃度を決定できる検査装置10に、特定の種類のサンプル50の1種のサンプル50からy(t閾値)を実験的に得ると、方程式1をx(tにおける、サンプルの単位重量、容積またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数)について解くことができる、種々の特定の種類のサンプルのm(傾き)およびb(y切片)の値を提供する。
【0041】
検査装置10がmおよびbの値を有するサンプル50の種類に合致する、食品加工プラント中の作業面の既知面積をスワブすることによって得られるサンプル50を、作業面が清掃され、衛生的にされる時間毎に採取し、生存細菌数(TVC、APCまたはCFU)を確認し、それによって、清掃および衛生化過程の有効性を検証する。スワブ51のサンプル含有部分を、フォトルミネッセンス酸素感受性プローブ30を含有するバーコードをつけたバイアル20中に直ちに置き、適した増殖培地40を加える。
【0042】
検査装置10を用いてプローブ30を検査することによって、サンプル50を含有する各バイアル20中のプローブ30から最初の読み取り値をとる。サンプル50の種類、最初の読み取り値の結果および最初の読み取り値をとる時刻を記録し、調べられるバイアル20のバーコードと関連付ける。最初の検査を完了すると、各バイアル20のその後の検査のスケジュールを定め、バイアル20を培養チャンバー(図示せず)中に入れる。
【0043】
各バイアル20を、定めた検査スケジュールで続いて検査する。各バイアル20の各検査の結果および最初の検査からの経過時間を記録する。
【0044】
各バイアル20を、プローブ30からの読み取り値が閾値に到達するまで検査し、その時点で、検査装置10は、試験が完了したことを示し、試験されたサンプル50の種類のmおよびbについて先に提供された値およびyについて実験的に確認された値を使用して生存細菌数(x)を決定し、xについて予め決められた閾値に基づいてサンプル50が許容されるまたは許容されない生存細菌数を含有していたかどうかについての表示をオペレーターに提供する。要求に応じて、オペレーターは、生存細菌数の実値を検査装置10から得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
用語
10 検査装置
15 検査装置のディスプレイ構成要素
16 マイクロプロセッサ
20 容器、バイアルまたはキュベット
21 容器、バイアルまたはキュベットの開放上端
22 容器、バイアルまたはキュベットの密閉下端
29 容器、バイアルまたはキュベットの保持チャンバー
30 プローブ
40 増殖培地
50 サンプル
51 サンプルを含有するスワブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の微生物汚染を評価する方法であって、
(a)時間tで出発して、対象から採取したサンプルを培養する段階と、
(b)培養サンプルのO濃度を、検出されるO濃度が閾値より下に低下するまで定期的に確認する段階と、
(c)tからO濃度が閾値より下に低下した時点までに測定される期間t閾値を確立する段階と、
(d)下記の一次方程式[式1]を使用して、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付ける段階と、
を有する方法。
y=mx+b・・・ [式1]
ここで、
x=tにおける、サンプルの単位重量、容積またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたりの生存好気性菌数の対数、
y=t閾値
x切片=(−b/m)=サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中のtにおける最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値、
m(傾き)=(y−y)/(x−x)であり、
およびyは、既知xを有する対象から採取されたサンプルのt閾値を確立することによって実験的に確認されるものであり、
およびyは、x切片でのxおよびyの値(−b/m,0)である。
【請求項2】
対数が自然対数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サンプルが、対象から剥離された試料であり、x=tにおけるサンプルの単位重量または容積あたりの生存好気性菌数の対数である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サンプルが、対象の表面から採取されたスワブサンプリングであり、x=tにおけるサンプルを得るためにスワブされた対象の単位面積たりの生存好気性菌数の対数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表面の衛生化を検証する目的で、スワブサンプリングを、表面を衛生的にした後に採取する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象が食料品であり、tが、サンプルを時間tstomachの規定の期間消化した後に生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
stomachが、細菌の誘導期増殖内に完了する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
培養サンプルのO濃度を、少なくとも毎時1回確認する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
濃度閾値が、tにおけるO濃度の25%から75%の間の低下である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付けることが、一次方程式をxについて解くことによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付けることが、ルックアップテーブルの使用によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
x切片が実験値である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
x切片が、6から10の間の推定値である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
サンプルを、酸素感受性フォトルミネッセンス色素の存在下で密閉チャンバー中で培養し、培養サンプルのO濃度を酸素感受性色素の蛍光を測定することによって確認する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
酸素感受性色素の発光寿命が、培養サンプルのO濃度の変化に応じて変化する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
酸素感受性フォトルミネッセンス色素が、サンプルと物理的に接触する酸素透過性疎水性ポリマーマトリックス内に埋め込まれている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
酸素感受性フォトルミネッセンス色素を、サンプル中に溶解する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
センサと、センサと電気的に連通しているマイクロプロセッサとを含む分析機器であって、
(i)対象から採取された培養サンプルのO濃度を定期的に確認し、
(ii)サンプルの培養が開始された時間tから、サンプルの確認されたO濃度が最初に閾値より下に落ちた時点までの期間t閾値を決定し、
(iii)下記の一次方程式[式1]を使用して、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付け、
(iv)xの関連付けられた値を周辺装置に送信する、
のに有効である機器。
y=mx+b・・・ [式1]
ここで、
x=tにおけるサンプルの単位重量、容積またはサンプルを得るためにスワブされた面積あたり生存好気性菌数の対数、
y=t閾値
x切片=(−b/m)=サンプルを培養の開始時に実質的に即時にt閾値に達するようにさせるのに有効な、サンプル中のtにおける最小生存好気性菌数の対数の推定値または実験値、
m(傾き)=(y−y)/(x−x)であり、
およびyは、既知xを有する対象から採取されたサンプルのt閾値を確立することによって実験的に確認されるものであり、
およびyは、x切片でのxおよびyの値(−b/m,0)である。
【請求項19】
対数が自然対数である、請求項18に記載の機器。
【請求項20】
培養サンプルのO濃度を、少なくとも2時間に1回確認するようプログラムされている、請求項18に記載の機器。
【請求項21】
のO濃度からの25%から75%の間の低下のO濃度閾値を用いてプログラムされている、請求項18に記載の機器。
【請求項22】
一次方程式をxについて解くことによって、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付ける、請求項18に記載の機器。
【請求項23】
ルックアップテーブルを使用することによって、t閾値を、培養前のサンプル中の生存好気性菌数と関連付ける、請求項18に記載の機器。
【請求項24】
少なくともユーザーインターフェースをさらに含み、x切片が、人によって入力される実験値である、請求項18に記載の機器。
【請求項25】
少なくともユーザーインターフェースをさらに含み、x切片が、人によって入力される6から10の間の推定値である、請求項18に記載の機器。
【請求項26】
センサが、発光寿命を有する酸素感受性フォトルミネッセンス色素と、酸素感受性色素の蛍光を測定することによって色素と流体連結している環境中のO濃度を決定するのに有効な読み取り装置とを含む、請求項18に記載の機器。
【請求項27】
酸素感受性色素の発光寿命が、培養サンプルのO濃度の変化に応じて変化する、請求項26に記載の機器。
【請求項28】
酸素感受性フォトルミネッセンス色素が、対象から採取したサンプルと物理的に接触させて配置することができる酸素透過性疎水性ポリマーマトリックス内に埋め込まれている、請求項27に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225932(P2012−225932A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−110005(P2012−110005)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(592014182)モコン・インコーポレーテッド (16)