説明

対象の腫瘍流入領域リンパ節へのCD40アゴニストの送達

本発明は、CD40のアゴニストが局所的に投与され、対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される、癌、前癌性障害又は感染症を治療するためのCD40アゴニストの使用に関する。随意に、CD40アゴニストは徐放製剤で処方される。随意に、CTL活性化ペプチドがさらに投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、前癌性障害又は感染症を治療するためのCD40アゴニストであって、局所的に投与され、対象の腫瘍流入領域リンパ節(単数又は複数)に標的されるCD40アゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの腫瘍はヒトの免疫系による監視を免れる。癌患者では、腫瘍細胞を除去する免疫系特異的機序に量的及び/又は質的欠損が明らかに存在する。これらの機序の1つは、ウイルスが感染した又は癌細胞に形質転換された細胞を認識して死滅させることが可能な細胞障害性T細胞(CTL)により提供される。Tヘルパー細胞はヘルパーシグナルをCTLに直接提供する(IL−2の分泌により)ことはなく、むしろTヘルパー細胞は、Tヘルパー細胞の不在下でCTLを活性化することが可能な部分的にのみ特徴付けられた細胞表面及び/又は可溶性分子を誘発するシグナルを樹状細胞(DC)に提供することが現在では知られている。Tヘルパー細胞によりDCに提供されるシグナルは、CD40L−CD40相互作用により媒介される。この新しい知見は、癌免疫療法に特有の機会を提供してきた。
【0003】
CD40アゴニスト剤を使用する研究によれば、CD40受容体を刺激すると抗腫瘍活性に付随する効果のカスケードを誘発することが報告されている。たとえば、抗原提示細胞上のCD40受容体を刺激すると、前記細胞の成熟、抗原提示機能、共刺激潜在能力及び前記細胞の免疫調節サイトカイン放出が増強されることが明らかにされている(Leeら、PNAS USA、1999、96(4):1421−6;Cellaら、J.Exp.Med.、1996、184(2):747−52)。これらの免疫刺激性及び直接抗腫瘍効果の重要性は、CD40アゴニスト抗体が腫瘍増殖を妨げ腫瘍耐性を逆転させることが明らかにされている動物モデルにおいて例証されている(Diehlら、Nature Med.、1999、5(7):774−9;Franciscoら、Cancer Res.、2000、60(12):32225−31)。その上、抗CD40アゴニストモノクローナル抗体を全身投与又は腫瘍内注入すれば、腫瘍流入領域リンパ節においてDCが活性化される。これらの活性化されたDCに誘発されて、腫瘍流入領域リンパ節にのみ属し、DC媒介活性化の直接の結果として、この時点で腫瘍流入領域リンパ節から遊走する不活性ないわゆる「落ち着いている」腫瘍特異的T細胞の集団は全身を循環する殺腫瘍性エフェクター細胞になり、腫瘍根絶を媒介する(van Mierloら、2002;van Mierloら、2004)。
【0004】
したがって、CD40アゴニストの使用は理論上は極めて有望であると思われるが、ヒト臨床試験でのその使用は、毒性と、もっとも重要なのは、発熱、悪寒、及び生命を危うくすることがあり用量制限的である血管効果に特徴付けられるサイトカイン放出症候群と関連付けられてきた(Vonderheideら、Journal of Clinical Oncology、2007、25:876−883)。したがって、癌の治療であって、前記治療がCD40アゴニストを用いる既知の治療よりも毒性の少ない治療のためにCD40アゴニストを使用する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
腫瘍流入領域リンパ節(単数又は複数)にCD40アゴニストを選択的に標的することは、局所投与の一種であり、古典的な全身投与と比べていくつかの利点があることを発明者らは実証した。これは、たとえば、腫瘍の近傍へのCD40アゴニストの皮下又は皮内注射により実現される局所投与ではあるが、それでも全身性抗腫瘍応答を誘発することになる。いかなる理論にも縛られたくはないが、CD40アゴニストを腫瘍流入領域リンパ節に選択的に送達することにより、腫瘍流入領域リンパ節に存在する「落ち着いている」T細胞が活性化され、局所的T細胞応答を全身性殺腫瘍性T細胞応答に変化させることになると本発明者らは予想している(上記参照)。さらに、本発明の決定的に重要な構成要素として、全身投与と比べて用量をかなり低く抑えることができるので、この特定の投与方式に付随する毒性効果は少なくなる。実際、非常に低量のCD40アゴニストでも、本明細書において後で定義される目的の抗腫瘍効果を誘発するのに使用することが可能であろう。
【0006】
したがって、第1の態様では、対象において癌、前癌性障害又は感染症を治療するための医薬であって、局所的に投与され前記対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される医薬の製造のためのCD40のアゴニストの使用が提供される。
【0007】
CD40アゴニスト
本発明の文脈内では、CD40アゴニストは、下で定義されるアッセイのうちのどれにおいてもCD40を発現している対象の細胞、組織又は生体と接触すると、対象のCD40分子に特異的に結合し、1つ又は複数のCD40活性を少なくとも約5%増加する又は増強する又は誘発する分子である。一部の実施形態では、アゴニストは1つのCD40活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は85%以上活性化する。一部の実施形態では、その活性化はCD40L(CD40リガンド)の存在下で生じる。一部の実施形態では、アゴニストの活性は、全血液白血球表面分子上方調節アッセイを使用して測定される。別の実施形態では、アゴニストの活性は、IL−12放出を測定する樹状細胞アッセイを使用して測定される。別の実施形態では、アゴニストの活性は、そのCTLの活性化能力を評価することにより測定される。CTL活性化は、蛍光的に標識されたモノクローナル抗体及びフローサイトメトリーを使用してCD62L、CD25、CD69などの細胞表面マーカーを評価し、in vitroトリチウム取込み試験においてその特異的抗原に対する増殖能を決定し、細胞内サイトカイン染色又はELISAを用いてサイトカイン産生を解析することにより解析することが可能である。別の実施形態では、アゴニストの活性は、in vivo腫瘍モデルを使用して測定される。この実施形態では、PBMC若しくはリンパ組織切片の四量体染色によってCD8細胞障害性T細胞活性を評価することにより、又はCD4、CD8並びにインターフェロンガンマ、IL−4、IL−5及びTNFアルファを含む異なるサイトカインについて同時に染色するCD4及びCD8細胞の細胞内サイトカイン染色により、又は異なった濃度のカラーCFSEを用いて染色され、特異的標的ペプチドを若しくは無関係なペプチドを充填された静脈内注射される脾臓標的細胞を利用するin vivo細胞障害性アッセイにより、アゴニストの活性が測定される。
【0008】
CD40のアゴニストの活性は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタン免疫ブロット法、又は樹状細胞若しくはT細胞上の免疫化学若しくはRNA発現アッセイなどの他の技術により試験することが可能である。
【0009】
好ましい実施形態では、CD40アゴニストはアゴニストCD40抗体である。本発明のCD40アゴニストは、従来の作製及びスクリーニング技術により作製可能である。ラット及びハムスター抗マウスCD40モノクローナル抗体(「Mab」)はそれぞれ、Nature 393:474−77(1998)に記載されており、市販されている(Pharmingen、Inc.、CA)。下に記載されている実験において使用されるFGK45と命名された抗マウスCD40抗体は、Rolink.A.ら、Immunity 5、319−330(1996)により記載されている。好ましい実施形態では、ヒト対象を治療するために、抗ヒトCD40抗体又はヒトCD40抗体が使用される。そのようなヒト抗体は、当技術分野で公知の、G.Khler and C.Milstein(Nature、1975:256:495−497)により記載されている技術に従って作製することが可能である。本明細書で使用されているように、用語「ヒト抗体」とは、可変及び定常ドメイン配列がヒト配列に由来する抗体のことである。ヒトCD40抗体は、WO03/040170に詳細に記載されている。ヒト抗体は、ヒト患者において非ヒト抗体の使用に付随する免疫原性及びアレルギー応答を最小化すると予想されるので、本発明の使用においてはかなりの利点を提供する。
【0010】
抗体は、細胞上で発現される又はヒト血漿若しくは尿から精製される陰性CD40或いは、真核生物又は原核生物系において発現される組換えCD40又はその断片のいずれかを用いて齧歯類(たとえば、マウス、ラット、ハムスター及びモルモット)を免疫することにより作製することが可能である。他の動物、たとえば、非ヒト霊長類、ヒト免疫グロブリンを発現しているトランスジェニックマウス及びヒトBリンパ球を移植された重症複合免疫不全(SCID)マウスは、免疫化のために使用することが可能である。ハイブリドーマは、G.Kohler and C.Milstein、Nature、1975:256:495−497により記載されているように、免疫動物由来のBリンパ球と骨髄腫細胞(たとえば、Sp2/0及びNSO)を融合することにより従来の手法で作製することが可能である。さらに、抗CD40抗体は、ファージディスプレイシステムにおいてヒトBリンパ球由来の組換え一本鎖Fv又はFabライブラリーのスクリーニングにより作製することが可能である。
【0011】
ヒト対象を治療するために、アゴニスト抗CD40抗体は、好ましくは、キメラ、脱免疫化、ヒト化又はヒト抗体であると考えられる。そのような抗体は、免疫原性を減少させ、したがって、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を回避することが可能である。抗体は、IgG4、IgG2、又は抗体依存性細胞障害性(S.M.Canfield and S.L.Morrison、J.Exp.Med.、1991:173:1483−1491)及び補体媒介細胞溶解(Y.Xuら、J.Biol.Chem.、1994:269:3468−3474;V.L.Pulitoら、J.Immunol.、1996;156:2840−2850)を増大しない他の遺伝的突然変異IgG若しくはIgMであることが好ましい。
【0012】
キメラ抗体は、当技術分野で公知の組換え方法により作製してもよく、動物可変領域及びヒト定常領域を有している。ヒト化抗体は通常、ヒトペプチド配列の程度がキメラ抗体よりも大きい。ヒト化抗体では、抗原結合及び特異性に関与する相補性決定領域(CDR)のみが動物由来であり、動物抗体に相当するアミノ酸配列を有しており、前記分子の残りの部分のほぼすべて(一部の場合には、可変領域内のフレームワーク領域の小部分を除いて)がヒト由来であり、アミノ酸配列がヒト抗体に一致している(L.Riechmannら、Nature、1988;332:323−327;G.Winter、United States Patent No.C.Queenら、米国特許第5530101号を参照)。
【0013】
脱免疫化抗体は、国際特許出願PCT/GB98/01473に記載されているように、T及びB細胞エピトープが除去されている抗体である。脱免疫化抗体は、in vivoにおいて適用されると免疫原性を減少させた。
【0014】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン発現ライブラリー(Stratagene Corp.、La Jolla、California)を使用してヒト抗体VH、VL、Fv、Fd、Fab、又は(Fab’)2の断片を作製し、これらの断片を使用してキメラ抗体を作製するための技術に類似する技術を使用して全ヒト抗体を構築することによるものを含むいくつかの異なる方法により作製することが可能である。代わりに、これらの断片を単独でアゴニストとして使用してもよい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンゲノムを有するトランスジェニックマウス中で作製することも可能である。そのようなマウスは、Abgenix.Inc.、Fremont、California、及びMedarex.Inc.、Annandale、New Jerseyから入手可能である。
【0015】
重鎖と軽鎖のFv領域が連結されている単一ペプチド鎖結合分子を作製することも可能である。一本鎖抗体(「ScFv」)及びその構築法は、米国特許第4946778号に記載されている。代わりに、Fabを類似の手段により構築し発現することが可能である(M.J.Evansら、J.Immunol.Meth.、1995;184:123−138)。全体的又は部分的ヒト抗体のすべてが全体的マウスMAbよりも免疫原性は少なく、その断片及び一本鎖抗体も免疫原性が少ない。したがって、これらの種類の抗体はすべて、免疫又はアレルギー応答を誘発する可能性は少ない。したがって、これらの種類の抗体は、特に反復又は長期投与が必要な場合には、全体的動物抗体よりもヒト対象におけるin vivo投与により適している。さらに、抗体断片のサイズが小さいほうが、腫瘍治療などの急性疾患徴候におけるより良好な用量蓄積に決定的に重要である可能性がある組織バイオアベイラビリティーを改善するのに役立つ可能性がある。好ましいヒト抗CD40抗体はWO2005/063289に広範に記載されている。
【0016】
抗CD40抗体の可変領域の分子構造に基づいて、分子モデリング及び合理的分子設計を使用すれば、抗体の結合領域の分子構造を模倣しCTLを活性化する分子を作製しスクリーニングすることができるであろう。これらの小分子は、ペプチド、ペプチド模倣薬、オリゴヌクレオチド、又は他の有機化合物であることが可能である。模倣分子は癌の治療のために使用することが可能である。代わりに、当分野で一般的に使用されている大規模スクリーニング法を使用すれば、化合物のライブラリーから適切な分子を単離することができるであろう。一実施形態では、いくつかのCD40アゴニストは、同時に又は順次使用される。
【0017】
投与
本発明は、CD40アゴニストが対象、好ましくはヒト対象に投与される方法にある。CD40アゴニストは好ましくは局所的に投与され、対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される。重要なのは、CD40アゴニストの局所投与が実施されることである。換言すれば、本発明は、CD40アゴニストの全身投与に向けられてはいない。好ましくは、本発明は、対象にCD40アゴニストを局所的に投与する特定の方法を定義している。CD40アゴニストの局所投与は、好ましくは対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される。さらに好ましい実施形態では、腫瘍流入領域リンパ節に標的される局所投与は、腫瘍流入領域リンパ節の近傍に又はその内部にCD40アゴニストを投与することにより実現される。この文脈では、「近傍に」は好ましくは、腫瘍流入領域リンパ節から約数cm又は数cm以内を意味する。この文脈では、「近傍に」は好ましくは腫瘍流入領域リンパ節の部位から離れても数cm以内を意味する。CD40アゴニストそれ自体は腫瘍流入領域リンパ節に直接投与されない。しかし、CD40アゴニストの投与は、投与されたCD40アゴニストが好ましくは腫瘍流入領域リンパ節中に選択的に送達されるものである。CD40アゴニストは、好ましくは腫瘍流入領域リンパ節に間接的に投与される、又は選択的に投与される、又は標的される。すなわち、CD40アゴニストは腫瘍流入領域リンパ節に直接的に投与されるのではなく、CD40アゴニストの投与法により、好ましくは最初に投与されるCD40アゴニストの少なくとも30%が腫瘍流入領域リンパ節に到達することになる。好ましくは、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%である。腫瘍流入領域リンパ節におけるCD40アゴニストの存在は、好ましくは生検への免疫染色又は680〜700nmの範囲の蛍光基(たとえば、ALEXA−flour基)で標識された特定のCD40アゴニスト抗体(好ましくは、実施例において同定されたFGK45)であって、対象に注射され、手術中蛍光的に標識された抗体はカメラを用いて検出することが可能である(カメラ誘導手術)前記抗体のバイオイメージングにより評価される。
【0018】
好ましい実施形態では、CD40アゴニストは腫瘍内に投与されることはない。腫瘍はそれぞれ異なり(すなわち、血管新生、組織分布、浸透圧等)、したがって、化合物の腫瘍内投与は標準化することができず、治療効果は予測不可能であることがあるために、腫瘍内投与は必ずしも好ましいものではない。
【0019】
好ましい実施形態では、CD40のアゴニストは、皮下又は皮内注射を介して局所的に投与され対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される。さらに好ましくは、皮下又は皮内注射は対象の腫瘍流入領域リンパ節に直接実施される。
【0020】
別の好ましい実施形態では、注射位置は、腫瘍とそれにもっとも近い腫瘍流入領域リンパ節間領域に、又は腫瘍流入領域リンパ節に直にある。
【0021】
別の好ましい実施形態では、CD40アゴニストはリンパ管に投与される。さらに好ましいリンパ管は、足背にあるリンパ管である。このさらに好ましい実施形態では、CD40のアゴニストは、リンパ管造影法を実施する際に使用されるのに類似する技術を使用する前記対象のリンパ節への傍大動脈注射により、局所的に投与され対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される(Guermaziら、Radiograph.2003:23:1541−1560 and Follenら、Cancer Suppl.2003:98:2028−2038)。リンパ管造影法という方法論により、薬物、この場合はCD40アゴニストの投与は足背において実施され、その後、薬物はリンパチャネルを選択的に進んで、これらのリンパ管が流れ込むリンパ節に入る。足背における投与(Follenら、Cancer Suppl.2003:98:2028−2038)の場合には、薬物は、骨盤のリンパ節をその後傍大動脈節を選択的に目指すことになる。これは、本明細書において後に定義される婦人科腫瘍の治療のための有利な投与法である。
【0022】
したがって、本発明は、足背への注射、骨盤のリンパ節への注射(直接的に又は足背への注射の結果として間接的に)、傍大動脈注射(直接的に又は足背への注射を介して若しくは骨盤のリンパ節への注射を介して間接的に)を包含する。
【0023】
本発明の文脈内では、皮下注射は好ましくは、腫瘍の近傍への皮下注射を意味し、前記腫瘍は好ましくは皮下又は皮内局在性を有する。本発明の文脈内では、皮内注射は好ましくは、腫瘍のすぐ近傍への皮内注射を意味し、前記腫瘍は好ましくは皮下又は皮内局在性を有する。さらに好ましい実施形態では、CD40のアゴニストは、局所的に投与され、リンパ静脈注射を通じて腫瘍流入領域リンパ節に標的される。これは、リンパ管造影法の分野の当業者などの当業者に既知の技術である。
【0024】
CD40アゴニストを1つ又は複数の腫瘍流入領域リンパ節(単数又は複数)に順次又は同時に、好ましくは皮下に局所的に投与し標的することが本発明ではさらに包含されている。CD40アゴニストを1つの腫瘍流入領域リンパ節に、好ましくは皮下に、皮内に及び/又はリンパ管造影法でのようにいくつかの直接リンパ静脈注射により局所的に投与して標的することも本発明により包含されている。
【0025】
腫瘍流入領域リンパ節への局所投与及び標的化にはいくつかの利点がある。先ず第1に、この方法はCD40アゴニストを、腫瘍流入領域リンパ節に存在するDCにほぼ直接送達することになる。そのような活性化されたDCは今度は、当業者には既知のCTLを活性化することになる。第2に、これは局所投与であるために、毒性は減少されると予想される。このことは実施例において特に実証されている。第3に、本明細書において実証されるように及び本明細書において広範に説明されるように、この局所投与は比較的低用量のCD40アゴニストの使用を可能にする。第4に、驚くべきことに、これは局所投与であるが、免疫系の全身的活性化が実施例において実証されている。
【0026】
本明細書において同定されるCD40のアゴニストを使用すれば、好ましくは治療効果を生じる。治療効果は、抗腫瘍及び/又は抗感染性効果であり得る。抗腫瘍効果は、好ましくは、
全身免疫系の活性化又は誘発:末梢血中の腫瘍特異的活性化CD4若しくはCD8T細胞の検出可能及び/若しくは前記細胞の増加、又は少なくとも治療1週間後のその増加若しくはこれらT細胞により産生されるサイトカインの増加、並びに/或いは
腫瘍細胞の増殖の抑制、並びに/或いは
腫瘍細胞死の誘発又は誘発の増加、並びに/或いは
腫瘍重量又は増殖の増加の抑制又は予防又は遅延、並びに/或いは
少なくとも1カ月、数カ月又はそれ以上の患者生存の延長(治療を受けなかった又はアイソタイプ対照を用いて治療された患者と比べて)
として確認される。
【0027】
少なくとも治療1週間後の末梢血中の腫瘍特異的活性化CD4又はCD8細胞の顕著な増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%以上であり得る。腫瘍細胞の増殖の抑制は、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%以上であり得る。腫瘍細胞死の誘発は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%以上であり得る。腫瘍増殖は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%以上抑制され得る。ある種の実施形態では、腫瘍重量増加は、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%以上抑制され得る。ある種の実施形態では、腫瘍増殖は、少なくとも1週間、1カ月、2カ月以上遅延され得る。
【0028】
本明細書において同定されるCD40のアゴニストの使用は、好ましくは抗感染性効果を生じる。抗感染性効果は好ましくは、
全身免疫系の活性化又は誘発:特に感染因子に対して又は感染細胞に対して向けられる末梢血中の特異的活性化CD4若しくはCD8T細胞(すなわち、本明細書では感染特異的活性化CD4若しくはCD8細胞と呼ばれる)の検出可能及び/若しくは前記細胞の増加、又は少なくとも治療1週間後のその増加若しくはT細胞により産生されるサイトカインの増加、並びに/或いは
感染細胞の又は感染因子の増殖の抑制、並びに/或いは
感染細胞又は感染因子の死の誘発又は誘発の増加、並びに/或いは
感染細胞又は感染因子の数の増加の抑制又は予防又は遅延、並びに/或いは
少なくとも1カ月、数カ月以上の患者生存の延長(治療を受けなかった又はアイソタイプ対照を用いて治療された患者と比べて)
として確認される。
【0029】
少なくとも治療1週間後の末梢血中の感染特異的活性化CD4又はCD8細胞の顕著な増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%以上であり得る。感染細胞(又は感染因子)の増殖の抑制は、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%以上であり得る。感染細胞(又は感染因子)の死の誘発は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%以上であり得る。感染細胞の数の増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%以上抑制され得る。
【0030】
CD40のアゴニストの効果が定量化される各実施形態では、アッセイは、治療を受けていない対象又は治療前の同一対象との比較により実施してもよいし、免疫グロブリンアイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して実施してもよい。一部の実施形態では、腫瘍はCD40陽性である。一部の実施形態では、腫瘍はCD40陰性である。腫瘍は固形腫瘍でも、リンパ腫などの非固形腫瘍でも可能である。本発明を使用して治療することが可能な腫瘍又は感染の一部の種類は、本明細書において後で広範に同定される。
【0031】
本発明のアゴニストの投与量は、下に記載されているin vitro試験及びアッセイからの、又は動物実験からの又はヒト臨床試験からの外挿により容易に決定することが可能である。腫瘍流入領域リンパ節に標的されたCD40の所与のアゴニストの1回分を局所投与すれば、さらに高用量の同一アゴニストの全身投与を使用するのと同じ抗腫瘍効果を誘発することが可能であることを本発明者らは実証した。したがって、本発明は、比較的低用量のCD40アゴニストの使用を可能にする。「比較的低い」は好ましくは、全身的に投与されるCD40のアゴニストの用量(量)のほぼ2〜20%を意味する。比較的低いは、ほぼ30から60%、40から70%、又は50%から80%のアゴニストを意味してもよい。比較的低いは、ほぼ20から40%、15から30%、又は10%から20%のアゴニストを意味してもよい。「比較的低い」は好ましくは、全身的に投与されるCD40のアゴニストの用量(量)の2〜20%を意味する。比較的低いは、30から60%、40から70%、又は50%から80%のアゴニストを意味してもよい。比較的低いは、20から40%、15から30%、又は10%から20%のアゴニストを意味してもよい。好ましい実施形態では、少なくも20μg、好ましくは少なくとも30μg、少なくとも40μg、少なくとも50μg、少なくとも60μg、少なくとも70μg、少なくとも80μg、少なくとも90μg、少なくとも100μgのCD40アゴニストの用量が単回投与で局所的に投与され腫瘍流入領域リンパ節に標的される。さらに好ましい実施形態では、多くて100μg、多くて90μg、多くて80μg、多くて70μg、多くて60μg、多くて50μg、多くて40μg、多くて30μg、多くて20μgの単回投与が局所的に投与され、腫瘍流入領域リンパ節に標的される。30μgのCD40アゴニストの単回投与を用いて非常に良好な結果が得られた。
【0032】
CD40アゴニストを用いて治療することが可能な対象には、癌、前癌性障害又は感染症に罹っていると診断された対象が挙げられるが、これに限定されることはない。癌の例には、脳癌、肺癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚若しくは眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、結腸直腸癌、結腸癌、婦人科腫瘍(たとえば、子宮肉腫、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫若しくは外陰部の癌腫、HPV由来癌)、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌(たとえば、甲状腺、副甲状腺若しくは副腎の癌)、軟組織の肉腫、白血病、骨髄腫、多発性骨髄腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、慢性若しくは急性白血病、小児の固形腫瘍、ホジキン病、リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、膀胱の癌、肝癌、腎癌、腎臓若しくは尿管の癌(たとえば、腎細胞癌、腎盂の癌腫)、又は中枢神経系の腫瘍(たとえば、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫若しくは下垂体腺腫)、神経膠腫又は線維肉腫が挙げられる。感染症の例には、HPV、HCV、HBV、HTLV I、ヘルペスウイルス8型(カポジ肉腫因子)、EBV又はHIV感染などの癌をもたらし得る感染が挙げられる。
【0033】
本明細書において使用されるように、用語「対象」とは、好ましくは、交差反応するCD40を発現するヒト又は非ヒト哺乳動物(たとえば、霊長類、カニクイザル若しくはアカゲザル)のことである。好ましくは、治療を受ける対象はヒトである。
【0034】
好ましい実施形態では、CD40のアゴニストの単回投与は、局所的に施され腫瘍流入領域リンパ節に標的される。先行技術では、通常、CD40アゴニストの数回連続全身投与が使用されて、所与の効果を得ている(たとえば、WO2005/063289参照)。これは、対象にとっては至極不便で煩わしい。さらに、毒性は通常、極めて高い。実施例において実証されるように、驚くべきことに、局所的に投与され腫瘍流入領域リンパ節に標的されるCD40アゴニストの単回投与が、免疫系の全身性活性化を誘発して特定の抗腫瘍性又は抗感染性応答を得るだけの活性があることを発明者らは発見した。さらに、CD40アゴニストのこの投与に伴う毒性効果は比較的少ない又は全くなかった。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、CD40アゴニストは、いわゆる徐放製剤又は徐放媒体で処方される。そのような製剤は遅延放出又は放出制御の製剤とも名付けられている。放出制御製剤は、その活性成分の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%を制御された形態で、すなわち、CD40アゴニストを1日、1週間、2週間、3週間、1カ月、又はそれより長い期間のうちに放出する製剤である。放出速度は、デキストラン分子及び架橋剤と製剤内部の含水量間の比により調整することが可能であり、治療化合物への要求される曝露期間に応じて適合させることが可能である。好ましい架橋剤はメタクリル酸である。この種の製剤はいくつかの利点があり、すなわち、先ず、そのような種類の製剤で投与されるとCD40アゴニストはこの製剤から放出されると長時間にわたり送達されることになるので、CD40アゴニストの投与を繰り返す必要がなくなると予想される。そのような長時間は、使用される徐放製剤の種類に応じて1日から、1週間、1カ月から数カ月まで変化してよい。第2に、極めて低い局所量のCD40アゴニストが検出可能だと予想されるので、毒性はさらに減少すると予想される。そのような低局所量は、同一抗体を用いた全身治療に必要とされる用量の10分の1でよいと予想される。そのような「低」量はどんな毒性も誘発するとは予想されないが、本明細書において定義される抗腫瘍又は抗感染性効果を誘発するには機能的であると予想される。本発明は特定の種類の徐放製剤に限定されない。ミネラルオイル(たとえば、モンタニド ISA 51)又は多(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)又はポリマーベース製剤などの数種類の徐放製剤がすでに知られている。ポリマーベース製剤の例は、WO2005/110377に記載されている荷電ポリマーを含むゲル組成物又はWO02/17884若しくはWO2005/051414若しくは米国特許第3710795号に記載されているデキストランハイドロゲルを含む組成物である。好ましい実施形態では、CD40アゴニストは、30%、40%、50%、60%含水量を含むデキストランハイドロゲルを用いて処方される。さらに好ましくは、含水量は45%と55%の間の範囲であり、さらに好ましくはほぼ50%である又は50%である。好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10μgのCD40アゴニストがそのようなデキストランハイドロゲルに処方される。CD40アゴニストが5μgで50%の含水量を有するデキストランハイドロゲルは、実験の部において魅力的であることが分かった。すなわち、前記デキストランハイドロゲルは可能なもっとも緩徐な製剤を示しているように思われ、血清中ではCD40アゴニストは検出可能ではなく、T細胞応答への効果は検出可能であった(実験の部参照)。
【0036】
別のさらに好ましい実施形態では、CD40アゴニストは、DCにより特異的に認識されることになる化合物に連結される又は融合される又は会合される又は混合される。この方法であれば、リンパ節内部のDCへのCD40アゴニストのターゲティングはさらに改善されると予想される。そのような化合物の例は、DC上のDC−SIGN C型レクチンのリガンドであり、このリガンドはDCの表面上に存在するDC−SIGNに結合することになる。別の例は、DC上のDEC−205分子のリガンドである。(Bozzacco,L.、Trumpfheller,C.、Siegal,F.P.、Mehandru,S.、Markowitz,M.、Carrington,M.,Nussenzweig,M.C.、Piperno,A.G.、and Steinman,R.M.(2007).DEC−205 receptor on dendritic cells mediates presentation of HIV gag protein to CD8T cells in a spectrum of human MHC I haplotypes.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 104、1289−1294)
【0037】
他の分子/治療
ある実施形態では、CD40アゴニストは別の分子及び/又は別の治療と一緒に(同時に又は順次)使用される。別の治療の例には、化学療法、放射線療法などの別の古典的癌治療が挙げられる。別の分子の例には、シスプラチンなどのDNA複製阻害剤並びに/又はペプチド、好ましくはCTL活性化ペプチド及び/若しくはTヘルパー活性化ペプチド並びに/又は別の化合物が挙げられる。
【0038】
好ましい実施形態では、CD40アゴニストは、免疫系を刺激することができる別の化合物又は分子、すなわち免疫刺激性化合物であって、今後第2の刺激化合物と名付けられる別の化合物又は分子と組み合わせて使用される。前記第2の刺激化合物による免疫系、好ましくは全身免疫系の活性化又は誘発は、本明細書において前で定義済みである。好ましい第2の化合物は抗体である。好ましい抗体には、CTLA4−遮断抗体、抗OX40活性化抗体及び抗41BB活性化抗体が挙げられる。CD40アゴニストと第2の刺激化合物は同時に投与されてもよいし順次投与されてもよい。さらに好ましくは、CD40アゴニストと第2の刺激化合物は単一組成物に、さらに好ましくは本明細書において前で定義された徐放製剤に処方される。実施例において実証されるように、これらの2つ又はそれ以上の化合物の使用により、T細胞の相乗的活性化が可能になる。ヒトにおいて使用することが可能な好ましいCTLA4−遮断抗体は、Camachoら、J.Clin.Oncol.(2009)、27:1075−1081に記載されている。
【0039】
CD40抗体と組み合わせて使用されるCTL活性化ペプチドは、WO99/61065に広範に記載されている。CTL活性化ペプチド又はTヘルパー活性化ペプチドは、好ましくは腫瘍由来又はウイルス由来ペプチドである。CTL活性化ペプチド又はTヘルパー活性化ペプチドは、いかなる長さにも限定されるものではない。しかし、そのようなペプチドは、19から45までのアミノ酸を含む長さを有するのが好ましい。前記アミノ酸配列は、好ましくは、全体的に又は部分的に腫瘍細胞により発現されるタンパク質由来である。ペプチド内部に含まれるタンパク質由来の隣接するアミノ酸配列の長さは、好ましくは、19〜45、22〜45、22〜40、22〜35、24〜43、26〜41、28〜39、30〜40、30〜37、30〜35、32〜35、33〜35、31〜34アミノ酸を含む。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、タンパク質のうちの22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45又は45を超える隣接するアミノ酸残基を含む。好ましいCTL活性化ペプチド又はTヘルパー活性化ペプチドは、癌がHPV関連癌である及び/又は感染がHPV感染である場合には、HPVタンパク質由来である。
【0040】
別の好ましい実施形態では、CTL活性化ペプチド又はTヘルパー活性化ペプチドは、HPV E2、E6及びE7、p53、PRAME、NY−ESO−1などの腫瘍関連タンパク質、又は他の任意の腫瘍関連若しくは腫瘍特異的タンパク質又は任意の感染性関連若しくは感染性特異的タンパク質のアミノ酸配列由来の9〜45アミノ酸長の隣接するアミノ酸配列のどれからでもなる。HPVセロタイプ16E2、E6及びE7タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2及び3に描かれている。HPVセロタイプ(抗原型)18E2、E6及びE7タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、5及び6に描かれている。ヒトp53のアミノ酸配列は、配列番号7に描かれている。
【0041】
好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、HPV E2、E6又はE7由来である。実験の部では、異なる腫瘍関連タンパク質由来の2つのペプチドが、本発明の文脈において使用される適切なペプチドの例として使用されている。すなわち、1つのペプチドは長い合成CEAペプチドとして同定されており、複数の異なる上皮腫瘍型で過剰発現されている癌胎児性抗原(CEA)由来であり、第2のペプチドは、長い合成HPVペプチドであり、HPV E7タンパク質由来である。さらに好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、HPV E2、E6又はE7由来であり、WO02/070006に開示されている。好ましくは、HPV E2、E6又はE7タンパク質の完全長アミノ酸配列から選択される隣接アミノ酸配列を含む又はそれらからなるCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、セロタイプ16、18、31、33又は45などの高リスクHPVセロタイプ由来であり、さらに好ましくはHPV E6及びE7セロタイプ16、18、31又は33のアミノ酸配列由来であり、もっとも好ましくはセロタイプ16又は18由来で、このうち16がもっとも好ましい。
【0042】
E2由来の好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、HPV E2タンパク質のアミノ酸46〜75、HPV E2タンパク質のアミノ酸51〜70、HPV E2タンパク質のアミノ酸61〜76、HPV E2タンパク質のアミノ酸151〜195、HPV E2タンパク質のアミノ酸316〜330、HPV E2タンパク質のアミノ酸311〜325、HPV E2タンパク質のアミノ酸326〜355、HPV E2タンパク質のアミノ酸346〜355、HPV E2タンパク質のアミノ酸351〜365からなる、又はそれらを含む。
【0043】
E6由来の好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、HPV E6タンパク質のアミノ酸1〜32、HPV E6タンパク質のアミノ酸11〜32、HPV E6タンパク質のアミノ酸13〜22、HPV E6タンパク質のアミノ酸19〜50、HPV E6タンパク質のアミノ酸29〜38、HPV E6タンパク質のアミノ酸37〜68、HPV E6タンパク質のアミノ酸41〜65、HPV E6タンパク質のアミノ酸52〜61、HPV E6タンパク質のアミノ酸51〜72、HPV E6タンパク質のアミノ酸55〜80、HPV E6タンパク質のアミノ酸55〜86、HPV E6タンパク質のアミノ酸61〜82、HPV E6タンパク質のアミノ酸71〜92、HPV E6タンパク質のアミノ酸71〜95、HPV E6タンパク質のアミノ酸73〜105、HPV E6タンパク質のアミノ酸85〜109、HPV E6タンパク質のアミノ酸91〜112、HPV E6タンパク質のアミノ酸91〜122、HPV E6タンパク質のアミノ酸101〜122、HPV E6タンパク質のアミノ酸109〜140、HPV E6タンパク質のアミノ酸121〜142、HPV E6タンパク質のアミノ酸129〜138、HPV E6タンパク質のアミノ酸127〜140、HPV E6タンパク質のアミノ酸127〜158、HPV E6タンパク質のアミノ酸129〜138、HPV E6タンパク質のアミノ酸137〜146、HPV E6タンパク質のアミノ酸149〜158からなる、又はそれらを含む。
【0044】
E7由来の好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、HPV E7タンパク質のアミノ酸1〜32、HPV E7タンパク質のアミノ酸1〜35、HPV E7タンパク質のアミノ酸11〜19、HPV E7タンパク質のアミノ酸21〜42、HPV E7タンパク質のアミノ酸22〜56、HPV E7タンパク質のアミノ酸35〜77、HPV E7タンパク質のアミノ酸35〜50、HPV E7タンパク質のアミノ酸50〜62、HPV E7タンパク質のアミノ酸43〜77、HPV E7タンパク質のアミノ酸51〜72、HPV E7タンパク質のアミノ酸64〜98、HPV E7タンパク質のアミノ酸76〜86からなる、又はそれらを含む。
【0045】
別の好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、p53タンパク質、好ましくはヒトp53由来である。p53由来の好ましいCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドは、p53タンパク質のアミノ酸86〜115、p53タンパク質のアミノ酸102〜131、p53タンパク質のアミノ酸101〜110、p53タンパク質のアミノ酸112〜120、p53タンパク質のアミノ酸113〜120、p53タンパク質のアミノ酸113〜122、p53タンパク質のアミノ酸117〜126、p53タンパク質のアミノ酸142〜171、p53タンパク質のアミノ酸149〜157、p53タンパク質のアミノ酸154〜163、p53タンパク質のアミノ酸154〜164、p53タンパク質のアミノ酸156〜163、p53タンパク質のアミノ酸156〜164、p53タンパク質のアミノ酸157〜186、p53タンパク質のアミノ酸172〜181、p53タンパク質のアミノ酸190〜219、p53タンパク質のアミノ酸196〜205、p53タンパク質のアミノ酸205〜214、p53タンパク質のアミノ酸224〜248、p53タンパク質のアミノ酸225〜254、p53タンパク質のアミノ酸241〜270、p53タンパク質のアミノ酸257〜286、p53タンパク質のアミノ酸229〜236、p53タンパク質のアミノ酸264〜272、p53タンパク質のアミノ酸273〜302、p53タンパク質のアミノ酸283〜291、p53タンパク質のアミノ酸305〜334、p53タンパク質のアミノ酸311〜319、p53タンパク質のアミノ酸311〜320、p53タンパク質のアミノ酸312〜319、p53タンパク質のアミノ酸322〜330、p53タンパク質のアミノ酸340〜348、p53タンパク質のアミノ酸353〜382、p53タンパク質のアミノ酸360〜370、p53タンパク質のアミノ酸363〜370、p53タンパク質のアミノ酸363〜372、p53タンパク質のアミノ酸369〜393、p53タンパク質のアミノ酸373〜381、p53タンパク質のアミノ酸374〜382、p53タンパク質のアミノ酸376〜386からなる、又はそれらを含む。
【0046】
本発明は、そのアミノ酸配列が本明細書において同定される配列の1つと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%の同一性を有し、このペプチドがHPV E2、E6、E7又はp53タンパク質ではないCTL活性化又はTヘルパー活性化ペプチドをさらに包含する。好ましくは、ペプチドは同定されている配列の1つとのその同一性により定義され、本明細書において前で同定された長さを有する。同一性は、確実に最大数の同一アミノ酸が得られるように両方の配列を整列した後に2つの配列間の同一アミノ酸の数を明確にすることにより計算される。
【0047】
本発明において使用されるそのような長さのペプチドは容易に合成され得る。最近当技術分野では、ペプチドを作製する多くの方法が知られている。本発明は、作製されたペプチドが所与の配列のどれでもを含み、それらからなり又はそれらと重複し、本明細書において前で定義された必要な活性を有している限り、どのような形態の作製されたペプチドにも限定されることはない。ペプチドは単一ペプチドとして存在してもよいし、融合タンパク質に組み込まれていてもよい。ペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸の欠失又は置換により、追加のアミノ酸又は官能基を用いたN−及び/若しくはC−終端での伸長によりさらに改変されてもよく、これによりT細胞をターゲティングするバイオアベイラビリティーが改善され得る、又はアジュバント若しくは(同時)刺激性機能を提供する免疫調節物質が含まれ得る若しくは放出され得る。N−及び/又はC−終端での随意の追加のアミノ酸は、好ましくは、そのアミノ酸が由来するタンパク質のアミノ酸配列中の対応する位置には存在しない。代わりに、腫瘍細胞は治療を受ける対象から単離されてもよく、CTL活性化ペプチドはこれらの腫瘍細胞から同定され、続いて短い又は長い合成ペプチドとして処方されてもよい。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、CD40アゴニスト及び随意にCTL活性化ペプチド及び/又はTヘルパー細胞活性化ペプチドは、組成物として処方される。好ましくは、組成物は医薬組成物である。そのような医薬組成物は、好ましくは医薬賦形剤及び/又は免疫モジュレータをさらに含む。どんな既知の不活性な薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤でも組成物に添加され得る。医薬の製剤、及び薬学的に許容可能な賦形剤の使用は当技術分野では既知であり習慣的であり、たとえば、Remington;The Science and Practice of Pharmacy,21nd Edition 2005,University of Sciences in Philadelphiaに記載されている。
【0049】
本発明において使用されるCD40アゴニスト及び随意にCTL活性化ペプチドは、好ましくはわずか35%から減少して0%まで;35、20、10、5又は0%DMSOを含む生理学的に許容可能な水溶液(たとえば、PBS)に可溶性である。そのような溶液では、CD40アゴニストは、好ましくはmlあたり少なくとも0.5、1、2、4、6、8又は10mgCD40アゴニストの濃度で可溶性である。そのような溶液では、CTL活性化ペプチドは、好ましくはmlあたり少なくとも0.5、1、2、4、又は8mgペプチドの濃度で可溶性である。
【0050】
どんな既知の免疫モジュレータも、本明細書に定義される組成物に添加してよい。好ましくは、免疫モジュレータはアジュバントである。さらに好ましくは、組成物は、本明細書において前で定義されたペプチド及び少なくとも1つのアジュバントを含む。アジュバントは、モンタニド若しくはPBS中に処方される、フロイント不完全アジュバント、モンタニドISA51(Seppic、France)、モンタニド720(Seppic、France)又はTLRリガンドなどの水中油型エマルジョンであることが可能である。この種の医薬は単回投与として投与してよい。代わりに、CD40アゴニスト及び随意に本明細書において前で定義されたCTL活性化ペプチド及び/若しくはアジュバントの投与は必要であれば繰り返してよく、並びに/又は異なるCD40アゴニスト及び/若しくは異なるCTL活性化ペプチド及び/若しくは異なるアジュバントを順次投与してよい。
【0051】
特に好ましいアジュバントは、トール様受容体(TLR)を介して作用することが知られているアジュバントである(Kawai & S.Akira Signaling to NF−κB by Toll−like receptors Trends in Molecular medicine Vol.13,p.460−469,2007)。自己免疫系を活性化することができるアジュバントは、TLR1〜10を含むトール様受容体(TLR)を介して及び/又はRIG−1(レチノイン酸誘導性遺伝子−1)タンパク質を介して及び/又はエンドセリン受容体を介して特によく活性化されることが可能である。TLR受容体を活性化することができる化合物、並びにその改変物及び誘導体は、当技術分野では十分に実証されている。TLR1は、細菌性リポタンパク質及びそのアセチル化型により活性化され得る。TLR2は、さらに、グラム陽性菌糖脂質、LPS、LPA、LTA、線毛、外膜タンパク質、細菌由来若しくは宿主由来熱ショックタンパク質、及びマイコバクテリアリポアラビノマンナンにより活性化され得る。TLR3は、特にウイルス起源のdsRNAにより、又は化合物poly(I:C)により活性化され得る。TLR4は、グラム陰性LPS、LTA、宿主由来又は細菌性起源由来の熱ショックタンパク質、ウイルス外被又はエンベロープタンパク質、タキソール又はその誘導体、オリゴ糖を含有するヒアルロン酸及びフィブロネクチンにより活性化され得る。TLR5は、細菌鞭毛又はフラジェリン(flagellin)を用いて活性化され得る。TLR6は、マイコバクテリアリポタンパク質及びB群連鎖球菌熱不安定性可溶性因子(GBS−F)又はブドウ球菌モデュリン(modulins)により活性化され得る。TLR7は、イミダゾキノリン及び誘導体により活性化され得る。TLR9は、非メチル化CpG DNA又はクロマチン−IgG複合体により活性化され得る。特にTLR3、TLR4、TLR7及びTLR9は、ウイルス感染に対する自己免疫応答を媒介するのに重要な役割をはたしており、これらの受容体を活性化することができる化合物は本発明における使用のために特に好ましい。特に好ましいアジュバントは、TLR3及びTLR9受容体、IC31、TLR9アゴニスト、IMSA VAC、TLR4アゴニストを誘発するdsRNA、poly(I:C)、非メチル化CpG DNAを含む合成的に作製される化合物を含むが、これらに限定されることはない。別の好ましい実施形態では、アジュバントは、本明細書において前で定義されたペプチドに物理的に連結されている。ペプチドを含むHLAクラスI及びHLAクラスIIエピトープへのアジュバント及び同時刺激性化合物又は官能基の物理的連結により、抗原を内部に取り込み、代謝し、表示する抗原提示細胞、特に樹状細胞の同時刺激によって増強された免疫応答が提供される。別の好ましい免疫改変化合物は、T細胞接着阻害剤であり、さらに好ましくは、BQ−788などのエンドセリン受容体の阻害剤である(Buckanovich RJら,Ishikawa K,PNAS(1994)91:4892)。BQ−788は、N−シス−2,6−ジメチルピペリジノカルボニル−L−ガンマ−メチルロイシル−D−1−メトキシカルボニルトリプトファニル−D−ノルロイシンである。しかし、BQ−788のどんな誘導体又は改変BQ−788化合物も、本発明の範囲内に包含されている。
【0052】
さらに、本発明において使用される医薬中に存在するCD40アゴニスト及び随意にCTL活性化ペプチドと組み合わせた、WO99/61065及びWO03/084999に記載されているAPC(同時)刺激性分子の使用は好ましい。特に、4−1−BB及び/若しくはCD40リガンド、又は機能的断片及びその誘導体の他にも類似のアゴニスト活性を有する合成化合物の使用は、好ましくは、対象の最適な免疫応答の開始をさらに刺激するために、治療を受ける対象に、別々に又は医薬中に存在するCD40アゴニスト及び随意にCTL活性化ペプチドと組み合わせて施される。
【0053】
好ましい実施形態では、アジュバントは、エキソソーム、樹状細胞、モノホスホリルリピドA及び/又はCpG核酸を含む。
【0054】
したがって、好ましい実施形態では、医薬は、CD40アゴニスト及び随意にCTL活性化ペプチドそれ自体又は本明細書において前で定義された組成物中に存在するCD40アゴニスト及び随意にCTL活性化ペプチド、並びに水中油エマルジョン(モンタニドISA51、モンタニドISA 720)からなる群から選択されるアジュバント、トール様受容体を介して作用することが知られているアジュバント、APC同時刺激性分子、エキソソーム、樹状細胞、モノホスホリルリピドA及びCpG核酸を含む。
【0055】
別の好ましい実施形態では、専門の抗原提示細胞又は樹状細胞によるCTL活性化ペプチドの提示を促進するために、ペプチドを含む組成物又は医薬は、DC活性化剤をさらに含む。
【0056】
当技術分野では既知であり習慣的である投与法は、たとえば、Remington;The Science and Practice of Pharmacy、21nd Edition 2005、University of Sciences in Philadelphiaに記載されている。CD40アゴニストの投与は本明細書において広範に説明されてきた。本発明において使用されるCTL活性化ペプチド及び/又は他のどんな分子の投与も、CD40アゴニストと同じ方法で(同時に又は順次)実施され得る。代わりに、CTL活性化ペプチド及び/又は他のどんな分子も、静脈内若しくは皮下、又は筋肉内投与に適するように処方され得るが、たとえば、注射による粘膜投与又は真皮内(intradermal)及び/若しくは皮膚内(intracutaneous)投与などの他の投与経路を企図することが可能である。
【0057】
本発明において使用される少なくとも1つのCD40アゴニスト、随意に少なくとも1つのCTL活性化ペプチド及び/又は少なくとも1つの他の分子若しくはアジュバントの投与は単回投与として実施され得ることは本発明によりさらに包含されている。代わりに、本発明において使用される少なくとも1つのCD40アゴニスト、随意に少なくとも1つのCTL活性化ペプチド及び/又は少なくとも1つの他の分子若しくはアジュバントの投与は、必要であれば繰り返してよい。
【0058】
したがって、追加の態様では、癌、前癌性障害又は感染症を治療するための方法であって、CD40のアゴニストが局所的に投与され対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される方法が提供される。この方法のそれぞれの特徴は、すでに本明細書において前で広範に定義されている。好ましくは、この方法では、腫瘍流入領域リンパ節はCD40のアゴニストの投与後除去されることになる。この文脈では、「後」とは、7日又は8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18日以上を意味し得る。腫瘍流入領域リンパ節は、通常、原発腫瘍及び転移した腫瘍細胞を含有する可能性があるリンパ節を除去することを目的とする外科的処置の一部として除去される。この方法は、腫瘍流入領域リンパ節に存在する腫瘍特異的T細胞をCD40活性化DCにより活性化させることが可能であるために魅力的である。この活性化の結果として、腫瘍特異的T細胞は、この腫瘍流入領域リンパ節が除去される前に腫瘍流入領域リンパ節から末梢に遊走することになる。この方法では、癌は、本明細書において前で定義されたのと同じ意味を与えられる。好ましくは、そのような方法では、腫瘍は手術により除去されていた。
【0059】
本文書及びその特許請求の範囲では、動詞「含む(to comprise)」及びその活用はその非限定的意味で使用されて、この単語に続く品目が含まれることを意味するが、特に言及されていない品目が排除されているわけではない。さらに動詞「なる(to consist)」は、本明細書において定義されているCD40アゴニスト又はCTL活性化ペプチドが特に同定されているCD40アゴニスト又はCTL活性化ペプチド以外の追加の成分(単数又は複数)を含んでいてよく、前記追加の成分(単数又は複数)は本発明に特有の特徴を変更しないことを意味する「基本的に〜からなる」で置き換えられ得る。さらに、不定冠詞の「a」又は「an」による要素への言及は、文脈がその要素のうちの唯一の要素が存在することを明確に要求しなければ、その要素のうちの2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞の「a」又は「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。用語「ほぼ(approximately)」又は「約(about)」は、数値と関連して使用される場合(ほぼ10、約10)、好ましくはその値は、その値の10プラス又はマイナス1%の所与の値であり得ることを意味する。
【0060】
本明細書に引用されている特許及び参考文献はすべて、これによって参照によりその全体が組み込まれているものとする。
【0061】
以下の実施例は、説明目的のためだけに提供されており、いかなる点でも本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】全身抗CD40投与により、腫瘍流入領域リンパ節中の部分的に活性化された腫瘍特異的CTLは増殖し全身的に広がる。全身性アゴニスト抗CD40抗体処置された(図1a)又は無処置(図1b)の、血液、脾臓、腫瘍流入及び非流入領域リンパ節中の四量体で染色された腫瘍特異的CTL。
【図2】FGK(アゴニスト抗CD40抗体)の異なる投与法を用いた、右側腹部にAR6腫瘍のあるマウスの生存曲線。腫瘍流入領域の皮下に単回投与の30μgFGKを注射されたマウスの生存は、無処置マウスと比べて著しく増強されている(p=0.002)。非流入領域に単回投与の30μgFGKを皮下に注射されても、有益な効果は観察されない(腫瘍流入対非流入領域、p=0.03)。腫瘍流入領域に、静脈内に高用量(100μgFGKを3回)を受けていたマウスと低用量皮下注射を受けたマウスとの間で生存の有意差は観察されなかった。
【図3】血清中で測定された異なる投与法後の抗CD40抗体(FGK)の毒性。A:抗CD40処置の開始後1日目及び3日目のマウス由来血清中で測定されたALAT及びASAT。BとC:抗CD40処置の開始後1日目及び3日目のマウス由来血清中のIL−1b及びIL−6それぞれのサイトカイン濃度。
【図4】処置開始後3日目に単離された、異なる器官の低温貯蔵切片のH&E染色。
【図5】群あたり8マウスでの、抗体なし(無処置)又は1)3日間連続での用量100μgの静脈内注射、2)腫瘍流入領域での皮下へのモンタニド(Montanide)中150μg、3)反対側の側腹部の非腫瘍流入領域での150μgとして抗CD40アゴニスト抗体(FGK45)のいずれかを用いた樹立皮下触知同系AR6(Ad5 E1誘発)腫瘍を有するC57BL/6マウスの生存曲線。
【図6】処置開始後の9日目に解析され、処置されない(無処置)又は図5に記載されている静脈内(FGK静脈内)若しくは腫瘍流入領域での皮下(FGK皮下)に注射される抗CD40アゴニスト抗体を用いて処置された、のいずれかの腫瘍を担うマウスの末梢静脈血中でのアデノ−E1−特異的CTLの検出。血液試料は処置開始9日後に回収された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が示されている。
【図7】図5に記載されている異なる処置プロトコール後の血清中の抗CD40抗体(FGK)の毒性。ALAT(a)及びASAT(b)は、抗CD40処置の開始後1、3、7及び21日目にマウス由来の血清において測定された。
【図8a】処置されない(無処置)又は図5に記載されている(FGK静脈内)若しくは皮下同側性腫瘍流入領域(FGK皮下)における抗CD40アゴニスト抗体を用いて処置された、のいずれかの腫瘍を担うマウスの末梢静脈血中でのアデノ−E1−特異的CTLの検出。血液試料は処置開始11日後に回収された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が示されている。
【図8b】無処置の試料のフローサイトメトリーの例。
【図8c】抗CD40高用量静脈内処置の試料のフローサイトメトリーの例。
【図8d】抗CD40低用量徐放同側性処置の試料のフローサイトメトリーの例。
【図8e】抗CD40低用量徐放対側性処置の試料のフローサイトメトリーの例。
【図9】マウスは、含水量の異なる、異なる用量のデキストラン粒子及び抗CD40(FGK−45)を含む異なる製剤を用いて処置された。A:抗CD40の血清濃度は、2、4、6及び8日目にELISAにより解析された。B:末梢静脈血中のE1A TCR−Tg CTLの検出は、2、4、6、8、10、14及び22日目に解析された。血液試料はブースト後異なる時間で回収された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が経時的に示されている。 使用された用量は;モンタニド中30μg抗CD40抗体(四角形で示されている、30モンタニド),70%HOを含有するデキストラン粒子中30μg抗CD40抗体(三角形で示されている、30 70%HO)、50%HOを含有するデキストラン粒子中30μg抗CD40抗体(アステリスク及び薄灰色の線で示されている、30 50%HO)、及び70%HO、60%HO、50%HOを含有するデキストラン粒子の混合物中30μg抗CD40抗体(アステリスク及び黒線で示されている、30混合物)、70%HOを含有するデキストラン粒子中5μg抗CD40抗体(円で示されている、5 70%HO)、50%HOを含有するデキストラン粒子中5μg抗CD40抗体(黒の実線で示されている、5 50%HO)、及び70%HO、60%HO、50%HOを含有するデキストラン粒子の混合物中5μg抗CD40抗体(シングル縞と薄灰色の線で示されている、5混合物)。
【図10】腫瘍流入領域において皮下注射される、モンタニド中の抗CD40抗体とCTLA−4遮断抗体間の相乗作用を示す実験。末梢静脈血中のE1A TCR−Tg CTLの検出は、4、7、10及び18日目に解析された。血液試料はブースト後異なる時間で回収された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が経時的に示されている。
【図11】照射された腫瘍細胞を用いたブースト後の経時的な血液中で四量体を用いて染色された腫瘍特異的CTL。坦腫瘍マウスは5群に分けられた。マウスの1群は、腫瘍と腫瘍流入領域リンパ節(T+LN)二重切除前に徐放製剤の局所的抗CD40抗体(FGK−45)を用いて前処置され、マウスの残りの群は、腫瘍と腫瘍流入領域リンパ節切除前は無処置のままであった。残りの4群のうち、群2及び3のマウスはその腫瘍を切除され(T)、群4及び5のマウスは腫瘍と腫瘍流入領域リンパ節を切除された(T+LN)。群2及び4のマウスは手術直後局所的な徐放製剤の抗CD40抗体(FGK−45)を受け、群3及び5のマウスは無処置のままであった。手術の12日後、マウスは照射された腫瘍細胞を用いたブーストを受けた。腫瘍細胞に対するCTL応答は、四量体染色により血液中で解析された。血液試料はブースト後異なる時間で回収された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が経時的に示されている。
【図12a】皮下又は静脈内のいずれかに注射される、抗CD40と組み合わせた合成長ペプチドを用いたワクチン接種後のT細胞応答。図12aは脾臓中のHPV E7四量体に陽性なCD8T細胞の割合を示す。マウスは、同一モンタニドデポー中30μg抗CD40又は静脈内への3回の100μg抗CD40(0、1、2日)のいずれかと組み合わせたモンタニド中HPV E7由来の合成長ペプチドを接種された。マウスは、抗CD40抗体を添加することなく、14日後にモンタニド中同一ペプチドをブーストされた。T細胞応答は、四量体染色により脾臓中で解析された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が示されている。細胞内サイトカイン染色も実施された。両方ともブースト接種の10日後に実施された。群あたり5マウスが処置された。
【図12b】皮下又は静脈内のいずれかに注射される、抗CD40と組み合わせた合成長ペプチドを用いたワクチン接種後のT細胞応答。図12bはin vitroでのHPV E7ペプチド刺激後にIFN−γ産生が陽性のCD8T細胞の割合を示す。マウスは、同一モンタニドデポー中30μg抗CD40又は静脈内への3回の100μg抗CD40(0、1、2日)のいずれかと組み合わせたモンタニド中HPV E7由来の合成長ペプチドを接種された。マウスは、抗CD40抗体を添加することなく、14日後にモンタニド中同一ペプチドをブーストされた。T細胞応答は、四量体染色により脾臓中で解析された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が示されている。細胞内サイトカイン染色も実施された。両方ともブースト接種の10日後に実施された。群あたり5マウスが処置された。
【図12c】皮下又は静脈内のいずれかに注射される、抗CD40と組み合わせた合成長ペプチドを用いたワクチン接種後のT細胞応答。図12cはin vitroでのHPV E7ペプチド刺激後にIFN−γ及びTNF−α産生に二重陽性なCD8T細胞の割合を示す。マウスは、同一モンタニドデポー中30μg抗CD40又は静脈内への3回の100μg抗CD40(0、1、2日)のいずれかと組み合わせたモンタニド中HPV E7由来の合成長ペプチドを接種された。マウスは、抗CD40抗体を添加することなく、14日後にモンタニド中同一ペプチドをブーストされた。T細胞応答は、四量体染色により脾臓中で解析された。PBMCは単離され、CD8及び四量体を用いて染色された。四量体陽性CD8T細胞の割合が示されている。細胞内サイトカイン染色も実施された。両方ともブースト接種の10日後に実施された。群あたり5マウスが処置された。
【図12d】皮下又は静脈内のいずれかに注射される、抗CD40と組み合わせた合成長ペプチドを用いたワクチン接種後のT細胞応答。図12dはin vitroでのCEAペプチド刺激後にIFN−γ産生に陽性なCD8T細胞の割合を示す。マウスは、同一モンタニドデポー中30μg抗CD40又は静脈内への3回の100μg抗CD40(0、1、2日)のいずれかと組み合わせたモンタニド中CEA由来の合成長ペプチドを接種された。マウスは、抗CD40抗体を添加することなく、14日後にモンタニド中同一ペプチドをブーストされた。細胞内サイトカイン染色も実施された。両方ともブースト接種の10日後に実施された。群あたり5マウスが処置された。
【図12e】皮下又は静脈内のいずれかに注射される、抗CD40と組み合わせた合成長ペプチドを用いたワクチン接種後のT細胞応答。図12eはin vitroでのCEAペプチド刺激後にIFN−γ及びTNF−α産生に二重陽性なCD8T細胞の割合を示す。マウスは、同一モンタニドデポー中30μg抗CD40又は静脈内への3回の100μg抗CD40(0、1、2日)のいずれかと組み合わせたモンタニド中CEA由来の合成長ペプチドを接種された。マウスは、抗CD40抗体を添加することなく、14日後にモンタニド中同一ペプチドをブーストされた。細胞内サイトカイン染色も実施された。両方ともブースト接種の10日後に実施された。群あたり5マウスが処置された。
【図13】抗CD40処置後の血清中のサイトカイン濃度。マウスは処置されない(無処置)又は抗CD40(モンタニド中30μg)を皮下に若しくは静脈内に注射された(0、1、2日目に100μgを3回)。処置開始後1、3、7及び12日目に、血清試料は収集され、サイトカイン濃度についてマルチプレックスアッセイにより解析された。群あたり、4マウスが処置された。a:経時的な血清中のIL−2濃度。b:経時的な血清中のGM−CSF濃度。
【実施例】
【0063】
本明細書のそれぞれの実施例では、抗CD40活性化抗体は本明細書において同定された通りに使用された。
【0064】
(例1)
<腫瘍流入領域における低用量抗CD40活性化治療は、抗腫瘍CTL応答を生み出すのに高用量全身治療と同程度に効果的であり、毒性は減少する>
アデノウイルスE1誘発腫瘍細胞を使用するマウスモデルでは、弱い腫瘍特異的CTL応答が生み出される。これらのCTLは腫瘍流入領域リンパ節で持続し、腫瘍を除去することはできない。腫瘍特異的CD8T細胞は、腫瘍流入領域リンパ節で腫瘍抗原を提示する樹状細胞(DC)により刺激される。これらのDCは、トール様受容体に送達される危険信号などの危険信号の欠如のために活性化されない(TLR、G.J.van Mierlo、らJ.Immunol.173、6753−6759、2004)。活性化抗CD40抗体を全身的に注射することにより、樹状細胞は活性化され、CTLを刺激する。腫瘍特異的CTLは増殖を開始し、腫瘍流入領域リンパ節を離れ、腫瘍を除去する(Van Mierloら(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99、5561;G.J.van MierloらJ.Immunol.173、6753−6759、2004)。(図1)。
【0065】
抗CD40抗体の全身注射は、腫瘍流入領域でDCを活性化するだけではなく、全身においてDCの他にもB細胞、マクロファージ及び他のいくつかの細胞型も活性化する。患者において、抗CD40抗体の全身注射は、サイトカイン放出症候群及びリンパ球数、血小板、D−ダイマーの異常を引き起こす(Vonderheideら(2007)J Clin Oncol.Mar 1;25(7):876−83)。全身的の代わりに腫瘍流入領域に局所的に抗CD40抗体を投与することにより、有効性を失うことなく用量を減らすことが可能であると本発明者らは仮定した。本発明者らは、数日間、腫瘍抗原提示DC上でCD40シグナル伝達を連続して刺激するために、皮下注射には徐放系(モンタニドISA 51、Seppic France)を使用した。本発明者らが使用した用量は、マウス実験において全身的に使用された用量の10分の1である。本発明者らは、30μgの抗CD40抗体を腫瘍流入領域の、腫瘍と腫瘍流入領域リンパ節間の皮下に注射した。本発明者らが使用した腫瘍モデルは材料及び方法に記載されている。
【0066】
図2に示されるように、高用量抗CD40抗体を静脈内注射で受けたマウスの生存は、低用量を腫瘍流入領域において皮下注射で受けたマウスに匹敵していたが、用量の違いは10倍である。どちらかの投与方法を通してCD40抗体を受けたマウスは、無処置のマウス又は非流入領域(反対側の側腹部)に低用量FGKを受けたマウスと比べて腫瘍クリアランスの著しい増加を示した。
【0067】
腫瘍流入領域に徐放エマルジョンで投与されたこの10分の1の濃度により、治療化合物の用量は、必要な部位、すなわち腫瘍流入領域リンパ節で十分高いことが可能であったが、全身レベルは低く保たれ、これにより毒性は大幅に減少した。
【0068】
異なった投与経路及び異なった用量の毒性効果を実証するために、3種の異なるアッセイを用いて全身毒性が測定された(図3及び7)。ALAT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びASAT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)レベルが決定された。これらの酵素は肝細胞に存在している。肝臓が損傷を受けると、これらの酵素は血流中の死滅しかけている肝細胞から放出され、したがって肝臓毒性の尺度としての働きをする。IL−1b及びIL−6は、サイトカイン放出症候群(CRS)と呼ばれる有害事象に関与するサイトカインであり、血清中のこれらのサイトカインの上昇は全身毒性の徴候である。図3a、b、c及び図7aとbは、皮下の局所投与により静脈内全身投与よりも毒性が低くなることを明白に示している。
【0069】
本発明者らは、組織切片に基づいて毒性レベルを評価するために処置開始後3日目にマウス由来の異なる器官も調べた。図4では、FGKの高用量全身投与により、肝臓、肺臓及び腎臓に重度の症状が生じたことを示している。器官は、重篤な浮腫、組織損傷及び生理学的器官構造の喪失を示している。FGKの低用量皮下投与を受けたマウスの器官は、無処置マウス由来の器官と比べて毒性の軽い徴候しか示していない。重要なことであるが、高用量全身投与と低用量皮下投与間の毒性の差は著しい。
【0070】
材料及び方法
マウス
C57BL/6khマウスが飼育され、LUMCの動物施設で管理された。
腫瘍細胞
Ad5E1AプラスEJ−rasにより形質転換されたマウス胚細胞が、8%(v/v)FCS、50μM 2−ME、グルタミン、及びペニシリンを補充したIMDM(Invitrogen Life Technologies、Rockville、MD)で培養された。
腫瘍実験
CD40陰性E1A発現腫瘍細胞(1×10)が、生後7週間から13週間のオスマウスの側腹部に200μlのPBS中で皮下注射された。腫瘍サイズは、週2回キャリパーを用いて三次元で測定された。処置は、腫瘍接種の8〜18日後で、触知可能腫瘍が存在する時に開始された。無用の苦しみを回避するため、マウスは腫瘍サイズが1cmを超えると屠殺された。
処置
刺激性の抗CD40Abを産生しているFGK−45融合細胞はA.Rolink(Basel Institute for Immunology、Basel、Switzerland)により提供された。マウスは、200μl PBS中静脈内に与えられる100μgの抗CD40mAb(処置の0、1及び2日目)を受けた。皮下注射は腫瘍流入領域で実施された(側腹部の皮膚下、腫瘍と腫瘍流入領域リンパ節の間、200μlモンタニドエマルジョン)。エマルジョンは、PBS中0.3μg/ml FGKとモンタニドISA 51(Seppic、France)の1対1の溶液をボルテックス上で30分間混合することにより作製された。最終投与量は30μgのFGKであった。
四量体染色:
APC−コンジュゲートE1A234−243負荷H−2D四量体を使用して、CD8a染色と組み合わせて腫瘍特異的CTLを染色し、解析はフローサイトメトリーにより実施した。
ヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色:
マウス組織の凍結切片は、Googleを通じてアクセス可能なIHC world Life Science Networkに記載されている方法に従って染色された。H&E染色プロトコールは、Roy Ellis、Divison of Pathology、Queen Elizabeth Hospital、Woodville Road、Woodville、South Australia、5011の染色プロトコールであった。
ALAT及びASAT解析:
ASAT及びALATは、IFCC(International Federation for Clinical Chemistry)推奨に従って測定された。試薬はRoche Diagnostics GmbH(Mannheim、FRG)製である。ASATのカタログ番号11876848及びALATのカタログ番号11876805である。試験原理は、ASAT又はALAT濃度の上昇に伴うNADHの減少に依拠している。NADHは測光法で測定される。両酵素は、P800 Modularの完全自動化ラボラトリーシステム(Roche/Hitachi Tokyo、Japan)を用いて測定される。これらの測定値のCVは2%より下である。
マルチプレックスアレー:
血清試料は、心臓穿刺を用いて1、3、7及び21日目に収集された。血清は、製造元のプロトコールを使用して、Bio−rad社製Bio−Plex Pro Mouse Cytikine 23−Plex Panelを使用してIL−1、IL−6の存在について解析された。
【0071】
(例2)
<腫瘍流入領域におけるさらに高用量の抗CD40抗体を用いた腫瘍実験(図5)>
腫瘍クリアランス及び減少した毒性により測定される機能的効果を維持しつつ、抗CD40抗体の用量を局所的に増加することが可能かどうかを本発明者らは決定した。増加した用量、すなわち150μgのFGK−45を、腫瘍流入領域又は腫瘍の反対側の側腹部(非流入領域)に皮下投与した。生存は、100μgのFGKを3回用いて静脈内注射されたマウスと比較された。興味深いことに、高用量のFGKが注射されても処置されたマウス間の生存における差は観察できなかった。抗体が腫瘍流入領域に注射されたかどうかが実際重要であった低用量FGK(モンタニド中30μg)とは対照的であった(図2参照)。これにより、注射が非流入領域での局所的(皮下注射)なものであるとしても、高用量の抗体であれば確実に十分な量の抗体が全身分布を通して末梢へ到達することが実証される。これは、抗CD40の用量が高いので、注射が腫瘍流入領域リンパ節の近くでなくても、十分に高い濃度が腫瘍流入領域リンパ節に到達して腫瘍特異的応答が活性化されるという事実により説明される。
【0072】
結論として、全身毒性を防ぐためには、抗CD40抗体腫瘍流入領域リンパ節までを局所的に送達するだけではなく、用量が全身分布ではなく、確実に局所的組織のみに取り込まれる程度であることも重要である。
【0073】
(例3)
<皮下腫瘍を有するマウスの血液試料への四量体染色(図6及び8)>
血液試料は抗CD40処置開始後9日目(図6)又は11日目(図8)に得られた。腫瘍特異的CTLの数は、無処置の又は処置を受けた坦腫瘍マウス間で比較された。処置を受けたマウスは、高用量抗CD40抗体(FGK−45)を静脈内に(100μgを3回)又は腫瘍流入領域に若しくは反対側の側腹部(非流入領域)に、低用量を皮下に(モンタニド中30μg)のいずれかを受けた。処置されないマウスに比べて反対側の側腹部(非流入領域)に抗CD40を皮下で処置されたマウスの血液中では、四量体陽性CD8 T細胞の増加は検出できなかった。重要なことには、全身抗CD40処置を受けたマウス又は腫瘍流入領域に抗CD40を皮下で受けていたマウスでは、四量体陽性CD8 T細胞の明瞭な集団を実証することができた。これにより、低用量抗CD40を用いる皮下処置が局所的処置であるとしても(前記処置は、腫瘍流入領域に与えられない場合、この用量では効果的ではない)、この処置は全身性免疫応答:すなわち、末梢血液中で検出可能な腫瘍特異的CTLの誘発を引き起こしたことが証明される。
【0074】
皮下に処置を受けた群と静脈内に処置を受けた群間の四量体陽性CD8 T細胞のレベル差は、静脈内に処置を受けた群において抗CD40の毒性が増強されたことにより説明することができた。この差は、処置後1週間で血液中のリンパ球の数の重度の異常を引き起こし、正常レベルを回復するのにもう1週間かかった(Vonderheideらでも、もっと低い程度で記載されている)。
【0075】
材料及び方法
四量体染色:
APC−コンジュゲートE1A234−243負荷H−2D四量体を使用して、CD8a染色と組み合わせて腫瘍特異的CTLを染色し、解析はフローサイトメトリーにより実施した。
【0076】
(例4)
<抗CD40抗体を用いた免疫治療のための徐放製剤としてのデキストランベース微粒子>
デキストランベース微粒子は、特に抗体などのより大きなタンパク質の徐放に適合した徐放製剤を形成する。例1の材料及び方法に記載されているように、アゴニスト抗CD40抗体(FGK−45)を含有するデキストランベース微粒子を、本マウスモデルを用いる実験において徐放製剤として使用した。1×10のE1A TCR Tg CD8 T細胞を、E1A発現腫瘍を担うマウスの静脈内に注射し、続いて抗CD40含有微粒子を注射した。低投与量、デキストラン粒子中5μg抗CD40抗体(FGK)での50%含水量のもっとも遅い放出製剤では、血清中の抗CD40抗体濃度は検出できなかった(図9a)が、それでも血液中の活性化されたCTLは測定可能である(図9b)ことが分かった。
【0077】
これらのデータから、徐放系としてのデキストランベース微粒子の使用により、腫瘍特異的T細胞応答に影響を与えることなく、腫瘍流入領域に皮下注射される抗CD40の用量を減らすことが可能であることが示されている。さらに、減少させた濃度を使用すれば、血液中の抗CD40抗体の濃度は減少し、全身毒性も減少することになると示唆される。
【0078】
材料及び方法
処置の追加:
抗CD40抗体を含有するデキストランベース粒子は、すでに記載されている通りに調製された(O.Franssen、L.Vandervennet、P.Roders、and W.E.Hennink.Chemically degrading dextran hydogels;controlled release of a model protein from.)。マウスは200μl PBS中様々な濃度のデキストラン粒子を用いて処置され、皮下注射は腫瘍流入領域において実施された(側腹部の皮膚の下、腫瘍と腫瘍流入領域リンパ節の間)。
マウスの追加
H−2D制限E1A234−243アデノウイルスエピトープに特異的なTCR(E1A TCR−Tg)を発現しているマウスが飼育され、LUMCの動物施設で管理された。
トランスジェニックCTL解析:
CD8 T細胞は、BD Imagリンパ球濃縮キットを用いてE1A TCR Tgマウス由来の脾臓及びリンパ節から単離された。100万個のCD8 T細胞が腫瘍を担うマウスの静脈内に注射された。血液中のCTL応答の動態はフローサイトメトリーにより測定された。
血清中の抗体検出:
血清中の抗CD40抗体濃度は、抗ラット抗体を使用してELISAにより決定された。
【0079】
(例5)
<腫瘍流入領域における徐放デポーでの免疫活性化抗体間の相乗作用>
腫瘍流入領域における徐放デポーでの投与は、抗CD40以外の他の免疫活性化抗体に適している。異なる免疫活性化抗体を組み合わせれば、CTL応答の質及び/又は量が増強される可能性がある。腫瘍特異的TCRトランスジェニックマウス由来の1×10CD8 T細胞を坦腫瘍マウスに注射した。次に、抗CD40抗体FGK−45とCTLA−4遮断抗体(9H10)をモンタニド製剤で組み合わせて、血液中の末梢CTL応答の動態を解析した(図10)。それぞれの抗体のみを用いた処置と比べて、抗CD40と抗CTLA−4抗体の組合せを用いた処置を受けたマウスでは血液中の腫瘍特異的CTLの数が増強されていた。これにより、異なる抗体間に相乗作用があることが示唆され、1つの徐放製剤での複数の免疫刺激抗体の組合せが支持されている。
【0080】
(例6)
<抗CD40局所的処置前の腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節の外科的除去は抗腫瘍CTL応答を抑制する>
病院では、腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節(LN)は、一般に治療の一部として外科的に切除される。腫瘍と腫瘍流入領域LNの両方が局所的免疫活性化抗体治療の成功に必要であり、したがって、治療は腫瘍と腫瘍流入領域LN切除前に開始するほうがよいと本発明者らは仮定した。
【0081】
これを実証するために、5群のマウスに腫瘍細胞を接種した。腫瘍が触知できるようになると、群1をモンタニド中の局所的抗CD40で処置した。12日後、すべてのマウスが手術を受けた。群1、2及び3のマウスでは腫瘍及び腫瘍流入領域LNが切除され、群4及び5のマウスでは腫瘍のみが切除された。群2及び4のマウスは切除直後に抗CD40を受けた。群3及び5のマウスは、抗CD40を全く受けなかった。手術の12日後、すべてのマウスが反対側の側腹部に照射された腫瘍細胞のブースト接種を受けた。血液試料は定期的に採取され、四量体染色により抗腫瘍CTL応答を解析した。
【0082】
図11に示されるように、腫瘍及び腫瘍流入領域LN切除前に抗CD40を受けたマウスでは良好なCTL応答があるが、他の群ではどのマウスにも良好な応答はない。したがって、腫瘍流入領域リンパ節がまだ存在する時にこの種の処置を実施することが重要であり得る。
【0083】
材料及び方法
マウスは、ケタミン及びキシラジン(PBS中1対1対2、100マイクロリットル腹腔内)で麻酔をかけられた。腫瘍及び腫瘍流入領域リンパ節は単離され、創傷は創傷クリップで閉じられた。5日後、クリップは外された。マウスはブースト接種を受けた。
【0084】
(例7)
以前本発明者らは、予防接種設定において抗CD40活性化抗体の添加がペプチドに対するCTLのプライミングにプラス効果を及ぼすことを公表している(DiehlらNat Med.1999 Jul;5(7):774−9)。したがって、局所的に与えられる単回徐放製剤での抗CD40とCTLエピトープを含有する長HPV由来ペプチド(BijkerらJ Immunol.2007 Oct 15;179(8):5033−40)の組合せが、別々の徐放製剤でCTLエピトープと組み合わせた以前使用された抗CD40の全身投与に類似する効果をT細胞プライミングに及ぼすかどうか試験した。マウスには、モンタニド中30μg抗CD40及びHPV長ペプチドが皮下に注射された、又は100μg抗CD40を3回の静脈内注射と同時にモンタニド中HPV長ペプチドの皮下注射を受けた。T細胞応答は、処置を受けたマウスの脾臓におけるブースターペプチド接種の10日後に測定された。抗CD40抗体(FGK−45)の低用量局所的徐放製剤を使用するほうが、高用量静脈内注射よりもペプチド接種のアジュバントとして効果的であることを本発明者らは明らかにしている。長合成HPVペプチドでも長合成CEAペプチドでも、応答は、高用量静脈内注射と比べて、抗CD40抗体(FGK−45)の低用量局所的徐放製剤を用いて処置されたマウスにおいてはCD8T細胞の量と質の両方で増強されていた(図12a、b、c)。
【0085】
この知見をCTLエピトープを含有する他の長ペプチドにも拡張することが可能かどうかを決定するため、いくつかの上皮癌において過剰発現されているもう1つの腫瘍関連タンパク質であるCEA由来の長ペプチドを使用して同一実験が実施された。このペプチドを使用して同一知見が実証された(図12d及びe)。
【0086】
結論として、長合成HPVペプチドでも長合成CEAペプチドでも、応答は、高用量静脈内注射と比べて、抗CD40抗体の低用量局所的徐放製剤を用いて処置されたマウスにおいてはCD8T細胞の量と質の両方で増強されていた。
【0087】
(例8)
サイトカインは、病原体若しくは腫瘍に対するより良好な免疫応答に寄与する、又は特異的T細胞の生存を改善することが可能である。予防接種及び癌治療などの治療設定において、サイトカインは時にアジュバントとして患者に与えられる。そのような免疫ブーストサイトカインの例は、IL−2及びGM−CSFである。腫瘍流入領域に皮下注射された低用量徐放製剤、又は高用量静脈内注射のいずれかでの、抗CD40活性化抗体(FGK−45)を用いた処置後のマウスの血清中のこれらのサイトカインの濃度を本発明者らは決定している(例1〜3において前で記載されている)。IL−2(図13a)でもGM−CSF(図13b)でも、高用量静脈内注射と比べて、長時間後でも、低用量徐放処方された抗CD40抗体を用いた処置後のマウスでそのレベルが強く上昇していることを本発明者らは明らかにしている。これにより、治療後の有益なサイトカインの誘発に関しては、腫瘍流入領域における低用量での抗CD40の局所的送達は抗CD40の全身投与よりも優れていることが再び示されている。
【0088】
材料及び方法
ペプチド接種:
各ペプチドの40nmol(HPV E7:


又はCEA:


(CTLエピトープは太字で示されている))が、PBSとモンタニドの1対1エマルジョンで200μl皮下に注射された。マウスの1つの群は、ペプチドと同じモンタニド製剤での30μgの抗CD40活性化抗体も受けた。マウスの第2の群は、0日目に皮下に注射されるモンタニドデポー中のペプチド及び100μg抗CD40活性化抗体の同時注射を静脈内に受けた。これに続いて、1及び2日目に100μg抗CD40の追加の注射を静脈内に受けた。14日後、マウスは、反対側の側腹部にPBSとモンタニドの1対1エマルジョンで注射される、各ペプチドの40nmolからなるブースト接種を200μl皮下に受けた。今回、抗CD40抗体は与えられなかった。
細胞内サイトカイン染色:
脾細胞が単離され、5μg/mlの合成長ペプチドを用いて一晩刺激された。染色には、Becton Dickinson Cytofix/Cytopermキットが使用された。試料はフローサイトメトリーにより解析された。使用されたフローサイトメトリー抗体は、抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗IFN−γ及び抗TNF−αであり、すべてBecton Dickinson社製であった。
多重アッセイ:
血清試料は、1、3、7及び21日目に心臓穿刺を用いて収集された。血清は、製造元のプロトコールを使用して、Bio−rad社製Bio−Plex Pro Mouse Cytikine 23−Plex Panelを使用してIL−2及びGM−CSFの存在について解析された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌、前癌性障害又は感染症を治療するための医薬であって、前記医薬が局所的に投与され対象の腫瘍流入領域リンパ節に標的される医薬を製造するためのCD40のアゴニストの使用。
【請求項2】
CD40のアゴニストが腫瘍内に投与されない、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
CD40のアゴニストが皮下に投与される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
CD40のアゴニストが皮内に投与される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
腫瘍流入領域リンパ節へのターゲティングが、リンパ管造影法の実行において知られているように、リンパ静脈注射を通してCD40のアゴニストを投与することにより実施される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
CD40のアゴニストが、抗CD40抗体若しくはその断片、ペプチド、オリゴヌクレオチド又は有機分子である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
CD40のアゴニストが、抗CD40抗体であり、この抗体は好ましくは、ヒト、ヒト化、キメラ又は脱免疫化抗体である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
全身的に投与されるCD40のアゴニストの量の25%から50%が局所的に投与され、腫瘍流入領域リンパ節に標的される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
CD40のアゴニストが単一用量として投与される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
CD40のアゴニストが最大で30μg投与される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
CD40のアゴニストが徐放製剤で処方される、請求項1から10までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
CTL活性化ペプチド及び/又は第2の刺激化合物、請求項1から11までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
第2の刺激化合物がCTLA4遮断抗体である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
CD40のアゴニストが局所的に投与され、腫瘍流入領域リンパ節に標的される、癌、前癌性障害又は感染症を治療するための方法。
【請求項15】
腫瘍流入領域リンパ節がCD40のアゴニストの投与後に除去されることになる、請求項14に記載の方法。

【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図12e】
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【図13】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8a】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−501323(P2012−501323A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524927(P2011−524927)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050518
【国際公開番号】WO2010/024676
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(509329730)
【Fターム(参考)】