説明

対象物検出方法及びライダー装置、環境測定方法

【課題】水上、あるいは水中から発した照明光を用いて、海底にある微弱な蛍光を発する対象物を含む地形の詳細な情報を得る
【解決手段】このライダー装置10は、特に海底にある対象物50からの蛍光を撮像するのに適している。第1の光電子増倍管(光検出部)15は対象物50側から戻ってきた散乱光を、第2の光電子増倍管(光検出部)16は同様に対象物50側から戻ってきた蛍光を高感度で検出する。このライダー装置10においては、第1の光電子増倍管15の出力のみから対象物50の深さが算出される。カメラ22の露光タイミングは、制御部11が、第2の光電子増倍管16の出力における二つ目のピークに基づいて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を対象物に照射して対象物が発する蛍光の画像を得るレーザーレーダー(ライダー)装置、あるいは、これを用いた対象物検出方法に関する。また、この対象物検出方法を用いて環境を測定する環境測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダーでは、電波を対象物に照射し、対象物から散乱、反射されて戻ってくる電磁波から対象物の情報を得る。この電波の代わりにレーザー光を用いて同様の計測を行う技術はレーザーレーダー(ライダー:LIDAR(Light Detection and Ranging))として知られている。
【0003】
レーザー光は空気中、水中を問わず伝搬するため、ライダー技術は、特に海洋観測等に有効に利用されており、単に対象物までの距離を測定するだけでなく、対象物に関する様々な情報が得られる。例えば、特許文献1には、パルス形状のレーザー光を空中から海面に照射し、反射光や散乱光及び蛍光をマイクロチャンネルプレートで受光するタイミングを制御して画像を得る技術が記載されている。この技術においては、海面からの反射光や、海中深度に対応する散乱光及び蛍光を同時に測定することができるため、海水中の懸濁物やプランクトンの濃度を測定することができる。
【0004】
また、特に飛翔体からレーザー光を照射し、その際の微弱な蛍光を撮像する技術が特許文献2に記載されている。この技術においては、パルス状のレーザー光を例えば海上の対象物を含む領域に発散光として照射する。この場合、広い範囲を照射することができる反面、対象物に照射される光量が小さくなり蛍光が微弱となるためにその撮像が困難となる。これに対して、対象物が発する微弱な蛍光を光電子増倍管が受光し、その出力から、最適な撮像のタイミングを設定し、撮像動作を行う。パルス状のレーザー光が対象物に到着し、対象物がこれを吸収してから短時間の間だけ蛍光は持続するという性質があるため、この構成を用いて撮像タイミングを最適化することができる。従って、微弱な蛍光に対しても、その画像を高感度で得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−69546号公報
【特許文献2】特開2003−83895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、対象物が発する蛍光を擾乱する要素が多い場合、例えば海底にある対象物の発する蛍光を撮像する際には、上記の技術を用いても、良好な画像を得ることは困難であった。
【0007】
例えば、海中における生きた珊瑚(キクメイシ)は508nmの波長の光を発するが、その光強度は照射光、反射光、散乱光と比べて非常に弱い。従って蛍光が測定器に達するまでには蛍光自体が海水中で散乱・吸収され、更にその強度は減衰する。
【0008】
更に、単に対象物(珊瑚)までの距離が長いという点だけではなく、海面、海中には様々な擾乱要因がある。例えば、海面においては、入射光の一部が反射することによる、透過光成分の減少等がこの要因となる。また、波浪は撮像の歪みの原因となる。水中においては、気泡や水の濁り等が透過光成分の減少の要因となる。特に航行船舶からこの測定を行った場合には、自船の航走波により水中に大量に発生する気泡が問題である。海面、海中、海底での太陽光の反射光、散乱光は、上記測定の背景光となり、照射光により発生した対象物からの微弱な蛍光のシグナル−ノイズ比を低下させる。また、実際の測定には、対象物の蛍光の2次元画像だけではなく、対象物(珊瑚)がある海底の地形、すなわち、水深情報も必要である。
【0009】
従って、ライダー装置によって、海底にある微弱な蛍光を発する対象物を含む地形の詳細な情報を得ることは困難であった。
【0010】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の請求項1に係る対象物検出方法は、照明光を水上から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、第1のパルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、前記パルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出する深さ算出ステップと、前記パルス出力における二つ目のピークに基づいて撮像素子の露光タイミングを設定する露光タイミング設定ステップと、第2のパルス状の前記照明光を再度前記対象物に照射する再照射ステップと、前記露光タイミングで前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光を前記撮像素子で撮像する撮像ステップと、を具備することを特徴とする。
この発明においては、水上から発した照明光を用いて水中の対象物が発する光の撮像が行われる。この際、撮像素子とは別に高感度の光検出部を用いる。照明光の照射によって水中の対象物側から戻ってきた光をこの光検出部が検出すると、その出力パルスには、水面に起因するピークと、対象物に起因するピークの二つのピークが現れる。この二つのピークの時間差から対象物の深さを算出する。かつ、その二つ目のピークに基づいて露光タイミングを設定し、照明光の再照射を行った際に、対象物が発する光での撮像をこの露光タイミングで行う。
また、本発明の対象物検出方法は、前記受光ステップにおいて、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光する第1の光検出部と、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光する第2の光検出部とが用いられ、前記深さ算出ステップにおいて、前記第1の光検出部からの第1のパルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出し、前記露光タイミング設定ステップにおいて、前記第2の光検出部からの第2のパルス出力における二つ目のピークに基づいて前記露光タイミングを設定する、ことを特徴とする。
この発明においては、前記の光検出部として、散乱光を検出する第1の光検出部と、対象物が発する光(例えば蛍光)を検出する第2の光検出部が共に用いられる。第1の光検出部の出力における二つのピークの時間差から深さが算出されると共に、第2の光検出部の出力における二つ目のピークに基づいて露光タイミングが設定されることにより、太陽散乱光等の背景光を減少させて、高いシグナル−ノイズ比で撮像が行われる。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る対象物検出方法は、照明光を水上から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、パルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、前記パルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出する深さ算出ステップと、前記パルス出力における二つ目のピークに同期して、前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光における撮像を撮像素子が開始する撮像ステップと、を具備することを特徴とする。
この発明においては、照明光を水上から照射するが、前記の再照射ステップは行わず、照射ステップにおいて発せられたパルス状の照明光によって深さの算出と露光開始タイミングが設定される。この露光開始タイミングは、二つ目のピークに同期して設定され、照射ステップにおいて発せられたパルス状の照明光によって対象物が発した光の撮像が、この露光開始タイミングで開始される。すなわち、照明光の1回の照射によって深さ算出、露光開始タイミング設定、及び撮像が行われる。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る対象物検出方法は、照明光を水中から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、第1のパルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、前記パルス出力におけるピークに基づいて前記深さを算出する深さ算出ステップと、前記パルス出力におけるピークに基づいて撮像素子の露光タイミングを設定する露光タイミング設定ステップと、第2のパルス状の前記照明光を再度前記対象物に照射する再照射ステップと、前記露光タイミングで前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光を前記撮像素子で撮像する撮像ステップと、を具備することを特徴とする。
この発明においては、水中から発した照明光を用いて水中の対象物が発する光の撮像が行われる。この際、撮像素子とは別に高感度の光検出部を用いる。照明光の照射によって水中の対象物側から戻ってきた光をこの光検出部が検出すると、その出力パルスにおけるピークに基づいて深さを算出する。かつ、このピークに基づいて露光タイミングも設定し、照明光の再照射を行った際に、対象物が発する光での撮像をこの露光タイミングで行う。
また、本発明の対象物検出方法は、前記受光ステップにおいて、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光する第1の光検出部と、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光する第2の光検出部とが用いられ、前記深さ算出ステップにおいて、前記第1の光検出部からの第1のパルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差に基づいて前記深さを算出し、前記露光タイミング設定ステップにおいて、前記第2の光検出部からの第2のパルス出力におけるピークに適合して前記露光タイミングを設定する、ことを特徴とする。
この発明においては、前記の光検出部として、散乱光を検出する第1の光検出部と、対象物が発する光(例えば蛍光)を検出する第2の光検出部が共に用いられる。第1の光検出部の出力における二つのピークの時間差に基づいて深さを算出すると共に、第2の光検出部からの第2のパルス出力におけるピークに適合して露光タイミングが設定されることにより、撮像が行われる。
【0014】
また、本発明の請求項6に係る対象物検出方法は、照明光を水中から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、パルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、前記パルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差に基づいて前記深さを算出する深さ算出ステップと、前記パルス出力におけるピークに同期して、前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光における撮像を撮像素子が開始する撮像ステップと、を具備することを特徴とする。
この発明においては、照明光を水中から照射するが、前記の再照射ステップは行わず、照射ステップにおいて発せられたパルス状の照明光によって深さの算出と露光開始タイミングが設定される。この露光開始タイミングは、光検出部の出力におけるピークに基づいて設定され、照射ステップにおいて発せられたパルス状の照明光によって対象物が発した光の撮像が、この露光開始タイミングで開始される。すなわち、照明光の1回の照射によって深さ算出、露光開始タイミング設定、及び撮像が行われる。
【0015】
また、本発明の対象物検出方法において、前記光検出部は、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光することを特徴とする。
この発明においては、前記の光検出部は散乱光を検出する。その出力におけるピークに基づいて深さが算出されると共に、露光タイミングも設定されることにより、撮像が行われる。すなわち、散乱光を検出する単一の光検出部を用いて深さ算出、露光タイミング設定、及び撮像が行われる。
また、本発明の対象物検出方法において、前記光検出部は、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光することを特徴とする。
この発明においては、前記の光検出部は、対象物が発する光(例えば蛍光)を検出する。その出力におけるピークに基づいて深さが算出されると共に、露光タイミングも設定されることにより、撮像が行われる。すなわち、対象物が発する光を検出する単一の光検出部を用いて深さ算出、露光タイミング設定、及び撮像が行われる。
また、本発明の対象物検出方法は、前記受光ステップ後に、前記照射ステップから所定時間経過後の前記光検出部からのパルス出力の値に応じて、警告を発する警告ステップを具備することを特徴とする。
この発明においては、特に水中から発した照明光を用いて水中の対象物が発する光の撮像を行なう際に、所定時間経過後の出力から、パルス出力における気泡からの散乱光の影響が確認できる。これを認識することによって、警報を発する。
また、本発明の対象物検出方法は、前記撮像ステップによって得られた画像信号に基づいた画像を表示させる表示ステップを具備することを特徴とする。
この発明においては、撮像された画像が表示ステップにおいて表示される。
また、本発明の対象物検出方法は、複数の波長領域にそれぞれ対応させて前記撮像ステップを行い、前記複数の波長領域に対応する撮像結果から、前記対象物側から戻る光のスペクトルを算出するステップを具備することを特徴とする。
この発明においては、複数の波長における撮像結果が得られる。従って、特に対象物から戻ってくる光のスペクトルが測定される。
また、本発明の対象物検出方法において、前記対象物が発する光は、前記対象物が発する蛍光であり、前記照明光は前記蛍光の励起光であることを特徴とする。
この発明においては、特に対象物が発する蛍光の画像が得られる。
また、本発明の対象物検出方法は、前記深さ算出ステップにおいて算出された深さに基づいて、前記照明光の出射光学系及び前記撮像素子の入射光学系を制御することを特徴とする。
この発明においては、算出された深さに基づいて撮像条件が制御される。
【0016】
また、本発明の請求項14に係るライダー装置は、照明光を水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出するライダー装置であって、前記照明光をパルス状に発振して前記対象物に向けて照射する照射部と、前記対象物側から戻る光を検出してパルス出力をする光検出部と、前記パルス出力に基づいて前記対象物の水面からの深さを算出する制御部と、前記パルス出力に基づいて、前記対象物側が発する光と略同一の波長の光に対して露光を行い画像を得る撮像部と、を具備することを特徴とする。
この発明のライダー装置においては、水中にある対象物に対して照射部が照明光を発する。その後、高感度の光検出部が対象物側から戻る光を検出する。制御部は、この光検出部のパルス出力におけるピークに基づいて、対象物の深さを算出する。また、この出力におけるピークからは、蛍光が撮像部において検出されるタイミングも認識できるため、撮像部は、このタイミングで前記対象物側が発する光と略同一の波長の光に対して露光を行う。これにより、この波長で撮像を行うことができる。
また、本発明のライダー装置において、前記光検出部には、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光する第1の光検出部と、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光する第2の光検出部とが含まれ、前記制御部は、前記第1の光検出部からの第1のパルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出し、前記撮像部は、前記第2の光検出部からの第2のパルス出力における二つ目のピークに基づいて露光を行う、ことを特徴とする。
この発明においては、前記のライダー装置における光検出部として、散乱光を検出する第1の光検出部と、対象物が発する光(例えば蛍光)を検出する第2の光検出部が共に用いられる。第1の光検出部の出力における二つのピークの時間差から深さが算出されると共に、第2の光検出部の出力における二つ目のピークに基づいて露光タイミングが設定されることにより、撮像が行われる。
また、本発明のライダー装置において、前記照射部は、第1のパルス状の照明光を発振してから所定間隔の後に第2のパルス状の照明光を発振し、前記撮像部は、前記第1のパルス状の照明光の発振後に得られた前記パルス出力に基づいて設定された露光タイミングで、前記第2のパルス状の照明光の発振後に露光を行うことを特徴とする。
この発明においては、照射部は、第1のパルス状の照射光を発した後に第2のパルス状の照明光を発する。この際、露光タイミングは、第1のパルス状の照明光を用いて設定され、第2のパルス状の照明光が発せられた後で、この露光タイミングを用いて撮像が行われる。
【0017】
また、本発明のライダー装置は、前記撮像部から出力された画像信号に基づいた画像を表示させる表示部を具備することを特徴とする。
この発明においては、撮像された画像が表示部によって表示される。
また、本発明のライダー装置は、前記対象物が発する光の波長として、複数の波長が設定され、前記複数の波長に対応する撮像結果から、前記対象物側から戻る光のスペクトルを算出する情報処理部を具備することを特徴とする。
この発明においては、複数の波長における撮像結果が得られる。従って、特に対象物から戻ってくる光のスペクトルが測定される。
また、本発明のライダー装置において、前記複数の波長の中には、水ラマン散乱の波長が含まれることを特徴とする。
この発明においては、水に固有な波長をもつ水ラマン散乱による光が基準として測定される。
また、本発明のライダー装置は、前記照射部における前記照明光の出射口、前記第1及び第2の光検出部における光の入射口、及び前記撮像部における光の入射口が水面と空間を介して設けられたことを特徴とする。
この発明においては、ライダー装置における照射部、光検出部、及び撮像部からなるヘッド部が、水上に設けられて水中の対象物に対する測定が行われる。例えば、このライダー装置のヘッド部を船体における水上に配した場合に対応する。
また、本発明のライダー装置は、前記照射部における前記照明光の出射口、前記第1及び第2の光検出部における光の入射口、及び前記撮像部における光の入射口が水中に設けられたことを特徴とする。
この発明においては、ヘッド部が水中に設けられて水中の対象物に対する測定が行われる。例えば、このライダー装置のヘッド部を水中に配した場合に対応する。
【0018】
本発明の請求項22に係る環境測定方法は、前記対象物を珊瑚として前記対象物検出方法を行い、前記珊瑚の生死を判定することを特徴とする。
この発明においては、特に水中の珊瑚を測定の対象とすることによって、海中環境の測定を行う。
また、本発明の環境測定方法は、特定の前記対象物に対して、複数の移動体から前記対象物検出方法を行うことを特徴とする。
この発明においては、特に複数の移動体から前記環境測定が行われる。
また、本発明の環境測定方法において、前記複数の移動体の中には、人工衛星、航空機、船舶のうち少なくとも1種以上が含まれることを特徴とする。
この発明においては、人工衛星、航空機、船舶等を用いて前記環境測定が行われる。
また、本発明の環境測定方法は、基点を定め、該基点を含む領域において前記対象物の測定を経時的に行うことを特徴とする。
この発明においては、環境の経時変化が測定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の対象物検出方法、ライダー装置は以上のように構成されているので、水上、あるいは水中から発した照明光を用いて、海底にある微弱な蛍光を発する対象物を含む地形の詳細な情報を高いシグナル−ノイズ比で得ることができる。この際、異なる波長に対応する二つの光検出部を用いる場合には、特に、深さの算出、露光タイミングの設定を正確に行うことができる
この際、異なる波長に対応する二つの光検出部を用いる場合には、特に、距離の算出、露光タイミングの設定を正確に行うことができる。この際、光検出部に光が入射してから出力が得られるまでの遅れがあっても、距離の算出におけるその影響を除去することができる。
あるいは、照明光と略同一の波長、あるいは対象物が発する光と略同一の波長を検出する単一の光検出部を用いて、同様の動作を行うこともできる。この場合には、より単純な構成で同様の効果を得ることができる。
更に、照明光を照射する際に、照射ステップと再照射ステップの2回の照射を行い、照射ステップを用いて露光タイミングを設定し、再照射ステップ後にこの露光タイミングで撮像を行えば、より適正な撮像を行うことができる。
あるいは、再照射ステップを用いずに、照射ステップ後に撮像までを行えば、より早く撮像結果が得られる。この方法は特に対象物が照明光を吸収してから蛍光を発するまでの時間が長い場合や、蛍光を発している時間が長い場合、あるいは測定地点の水深が予めわかっている場合に有効である。
また、特に水中から照明光を発する場合においては、警告ステップを用いて測定に与える水中の気泡の影響等、測定環境が適正か否かを測定者に知らせることができるため、より正確な測定を行うことができる。
また、水上から水中の対象物に照明光を発する場合に、光検出部の出力には、水面と対象物に起因する二つのピークが現れる。これらのピークを解析することによって、深さの算出や露光タイミングの設定を適正に行うことができる。また、水中から水中の対象物に照明光を発する場合においても、ヘッド部直下の気泡や海水等によって散乱光や蛍光が発生するため、二つのピークが現れるため、同様に深さの算出や露光タイミングの設定を行うことができる。これらの二つのピークが見られなかった場合には、測定が適切に行われていない旨の警告を発することもできる。
【0020】
また、撮像された画像を表示させることにより、利用者はこれを見て更に照射部や撮像部の光学系の調整をより正確に行うことができ、より精密な測定が可能となる。
また、対象物から戻ってくる光のスペクトルを測定することにより、対象物に関するより詳細な情報を得ることができる。
また、対象物から戻ってくる光として、蛍光を検出する構成とすることにより、蛍光を発する物質の同定ができ、対象物の同定が可能となる。
また、深さをフィードバックして撮像を行えば、より適正な画像を得ることができ、最適な条件での撮像が可能となる。
また、本発明のライダー装置において、ヘッド部を水上に設けた構成とすれば、例えばこれを船体に設置した場合、ヘッド部が船体の移動に与える影響や、ヘッド部によって発生する気泡が測定に与える影響を低減することができる。
一方、ヘッド部を水中に設けた構成とすれば、水面あるいは水面に存在する浮遊物等が測定に与える影響を低減することができる。
【0021】
また、本発明の環境測定方法によれば、広範囲から挟範囲にわたって海底の環境を測定することができる。
この際、珊瑚を対象物とすれば、珊瑚の生死を指標として環境の評価を容易に行うことができる。
また、この測定を複数の移動体から行えば、広範な環境測定を更に精密に行うことができる。特に、移動体として人工衛星、航空機、船舶等を用いれば、広い範囲かつ詳細な環境測定が可能である。更に、この測定を経時的に行えば、環境の経時変化が測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態となるライダー装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態となるライダー装置を船舶に設置する2種類の形態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態となるライダー装置を水上型として用いた場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施の形態となるライダー装置を半没型として用いた場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】各種珊瑚の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態となるライダー装置について説明する。図1は、このライダー装置10の構成を示す図である。このライダー装置10は、例えば船体に設置され、海底からの蛍光を撮像することができる。このライダー装置10においては、光源としてパルス状の光を発するレーザー光が用いられ、対象物に照射される。対象物から発された蛍光は、光電子増倍管によって受光され、その後に撮像素子によって撮像される。
【0024】
図1において、制御部11は、例えばパーソナルコンピュータであり、このライダー装置10全体を制御する機能を有する。従って、以下に説明する各構成要素は全てこの制御部11に接続され、制御される。
【0025】
レーザー電源部12は、レーザーヘッド13を発光させるための電源となる。あるいは、レーザーヘッド13を冷却するための電源ともなる。なお、図1でこれらは別体とされているが、これらが一体化された構成としてもよい。レーザー電源部12は、レーザーヘッド13にパルス電圧を入力し、レーザー光をパルス状に制御して発振させる。
【0026】
レーザーヘッド(照射部)13は、制御部11からの制御によって、レーザー光を発する。例えば、その発光波長は355nmであり、フラッシュランプで励起され、Qスイッチによって駆動される固体レーザーである。このレーザーヘッド13は、レーザー電源部12によって駆動され、特に、Qスイッチによって、前記のパルス電圧に対応したパルス状の大強度の光を発することができ、この光は、対象物50に照射される。このため、図示していないが、レーザーヘッド13の光出射口には、この照射光の広がりや照射位置を制御するための出射光学系が設置されており、この出射光学系も制御部11に接続される。これにより、適正な条件で対象物50にレーザー光を照射することができる。
【0027】
ここで、遅延信号発生器14は、制御部11の制御により、レーザー電源部12を介してレーザーヘッド13が発するパルス状のレーザー光のタイミングを制御する。また、光電子増倍管15、16の光検出タイミング、カメラ22の撮像(露光)タイミングも制御する。
【0028】
第1の光電子増倍管(光検出部)15は、対象物50側から戻ってきた散乱光を高感度、高時間分解能で検出し、特に、微弱な光を光子単位で検出することができる。第1の光電子増倍管15はレーザー光の散乱光を検出するため、このレーザー光の波長を選択的に透過させるフィルタが入射側に設置される。すなわち、レーザー光(照射光)と略同一の波長の光を検出することができる。また、光検出のタイミングを短い時定数で制御することが可能なゲート機能付きの光電子増倍管であることが好ましい。この光電子増倍管15の出力は、プリアンプ等を経ることにより、検出した光子数に対応するパルス高をもつパルスとして出力される。第1の光電子増倍管15は、これに入射した散乱光を検出して単一の出力を行い、この出力はオシロスコープ17に入力され、利用者がこれを直接観測できる。また、制御部11、遅延信号発生器14にも入力される。なお、光電子増倍管15の光入射側においても、対象物50側からの散乱光を高効率で検出できるように、入射光学系(図示せず)が設けられ、この光を高効率で検出できるように適宜制御される。
【0029】
第2の光電子増倍管(光検出部)16も、同様に対象物50側から戻ってきた光を高感度で検出する。第2の光電子増倍管16は、測定対象とする蛍光を検出するため、蛍光の波長を選択的に透過させるフィルタが入射側に設置される。すなわち、対象物50が発する光(蛍光)と略同一の波長の光を検出することができる。また、光検出のタイミングを短い時定数で制御すること、プリアンプ等を介して出力がなされること、出力がオシロスコープ17で観測できること、入射光学系が設けられること等については第1の光電子増倍管15と同様である。
【0030】
なお、オシロスコープ17としては、二つの光電子増倍管の出力パルスを観測するために、2チャンネル以上の出力ができるものが好ましく用いられる。
【0031】
一方、対象物50側から戻ってきた光は、撮像部20で撮像される。撮像部20は、検出光学系21を介してカメラ22、光学フィルタ23、光学フィルタ選択機24から構成される。撮像部20は、第2の光電子増倍管16とは異なり、対象物50側から戻ってきた光を画像として検出する。従って、撮像部20の光検出感度および時間分解能は第2の光電子増倍管16よりも劣るが、撮像をすることが可能である。
【0032】
検出光学系21は、カメラ22が撮像する画像の倍率を制御部11の制御等によって変動させることができ、複数の光学素子(レンズ、鏡等)から構成される。これにより、カメラ22で撮像する範囲を利用者が自由に設定することができる。なお、第1の光電子増倍管15の入射光学系、第2の光電子増倍管16の入射光学系、及び検出光学系21を共用とし、光を適宜ビームスプリッタで分割して用いることもできる。ただし、この場合においても、第1の光電子増倍管15、第2の光電子増倍管16はそれぞれ散乱光、蛍光に対応する波長の光を選択的に検出する構成とする。
【0033】
カメラ22は、その内部に結像光学系と撮像素子を具備し、入射した光の2次元画像を得て、これに対応する画像信号を出力する。結像光学系は複数の光学素子(レンズ、鏡等)で構成され、撮像素子上に対象物50を含む画像を結像させる。撮像素子としては、固体撮像素子の一種であるICCD(Image Intensified Charge Coupled Device)が好ましく、特に、第1の光電子増倍管15と同様に、その露光(電子シャッター)タイミングを短い時定数で制御することが可能なゲート機能付きのものが好ましい。この露光動作は、光電子増倍管15からの出力に同期して開始する。ICCDは、2次元光撮像素子であるCCDの入射側に映像増強部(イメージインテンシファイヤ)を設けた構成であり、微弱な光の2次元画像を撮像することができる。その出力は、通常の可視光におけるCCDイメージセンサと同様になされる。従って、この画像信号は画像表示装置(表示部)18に入力され、利用者はこの2次元画像を見ることができる。
【0034】
また、カメラ22と検出光学系21との間には、光学フィルタ選択機24が設けられている。光学フィルタ選択機24には、複数の挟帯域の光学フィルタが設けられ、そのうちの一つの光学フィルタ23が制御部11からの制御によって選択され、これを透過した光がカメラ22に入射する構成となっている。この光学フィルタ23の透過波長は、第2の光電子増倍管16と同様に、蛍光の波長に対応する。すなわち、この構成によって、蛍光の波長の光を選択してカメラ22で検出することができる。
【0035】
なお、図1中において、レーザーヘッド13、光電子増倍管15、16、撮像部20は、ヘッド部30として一体化され、例えば船舶における船体の外部に設置され、対象物50側へレーザー光を照射する、及び対象物50側から戻ってきた光を検出することができる構成となっている。他の構成要素は、ヘッド部30と分離され、船の中の船室中に設置することができる。
【0036】
このライダー装置10を実際に船舶の船体60に取り付けて使用する際の形態を図2(a)(b)に示す。図2(a)は、このライダー装置10のヘッド部30全体が海面70の上側にある場合(水上型)、図2(b)は、ヘッド部30における光入出射口31が海面(水面)70の下側にある場合(半没型)を示す。ここで、光入出射口31とは、レーザーヘッド13における光出射口、第1の光電子増倍管15における光入射口、及び撮像部20における光入射口として共通に設定された窓である。どちらの場合にも、ヘッド部30は船体60に固定されている。ヘッド部30が海面と空間を介して設けられている水上型(a)の場合には、レーザー光あるいは対象物50から戻った光の海面70での反射、散乱等、海面70の影響は発生するものの、ヘッド部30自身が造波による気泡発生源となることはないため、船体60を高速走行させながら行う測定に適している。一方、半没型(b)の場合には、船体60の移動に伴って海水中にヘッド部30の造波による気泡が発生するためにその影響が出る一方、海面70の影響は除去される。従って、船体60が停止あるいは低速走行をする場合の測定に適している。すなわち、このライダー装置10(ヘッド部30)を船体60に設置して使用するにあたっては、その使用の態様に応じて船体への設置方法を適宜選択することができる。
【0037】
このライダー装置10は、特に海底にある対象物50からの蛍光を撮像するのに適している。海底の対象物50を観測するにあたり、特に重要な情報は、海底の深さであり、これは海面から海底(対象物50)までの距離となる。このライダー装置10においては、この海面から海底までの距離を算出することができ、この距離情報を蛍光の撮像動作にフィードバックすることができる。
【0038】
以下、このライダー装置10の具体的な動作について、水上型(図2(a))と半没型(図2(b))の場合のそれぞれについて説明する。
【0039】
まず、水上型(図2(a))の場合の動作について説明する。この場合には、光入出射口31が海面よりも上になる。なお、図2(a)ではこのライダー装置10を船体60(船舶)に設置した場合について記載したが、航空機やヘリコプター等の飛翔体に設置した場合も同様である。また、海底にある対象物50は蛍光を発する物体であれば任意であるが、ここでは珊瑚を対象とする。
【0040】
図3は、対象物50が発する蛍光を水上型のライダー装置10が検出する際の動作、すなわち、このライダー装置10において実行される対象物検出方法の動作を示すタイミングチャートであり、横軸は時間となっている。図3において、(a)はレーザーヘッド13に用いられるフラッシュランプの動作、(b)はレーザーヘッド13に用いられるQスイッチの動作であり、どちらもパルス駆動され、そのタイミングによりその動作が制御される。同図(c)はレーザーヘッド13の発光動作である。また、同図(d)はこのレーザー光を受けて海面及び対象物で散乱される散乱光、(e)はこの散乱光による第1の光電子増倍管15の出力、(f)はこのレーザー光を受けて海面及び対象物で発せられる蛍光、(g)はヘッド部30への到着時におけるこの蛍光、(h)はこの蛍光による第2の光電子増倍管16の出力、(i)は第1、第2の光電子増倍管15、16の出力を元に制御部11が遅延信号発生器14によって設定させたカメラ22における露光タイミングである。なお、図3では単純化して(b)におけるQスイッチの動作におけるパルスは一つであるが、実際にはこのパルスは一定周期で反復して発せられる。すなわち、レーザー光は一定周期でパルス状に発振される。図3における(a)〜(h)はこの一つ目のパルス(第1のパルス状の照明光)に対応して表示されているが、図3(i)だけは次回に発振されたパルス(第2のパルス状の照明光)に対応して表示されている。
【0041】
まず、レーザー電源部12は、図3(a)に示されるタイミングでフラッシュランプをオンする。ただし、オン直後の時点ではQスイッチはオフであるため、レーザー光はレーザーヘッド13から発されない。
【0042】
次に、レーザー電源部12は、図3(b)に示されるタイミングでQスイッチをオンする。このタイミングは、充分な光強度を得るためには、フラッシュランプの立ち上がり時から1μs程度とすることが好ましい。これにより、大強度かつ一定の波長のレーザー光がレーザーヘッド13から発せられるが、そのタイミングは、図3(c)に示されるように、Qスイッチの立ち上がり時からT(Tは典型的には100ns程度)だけ遅延する。これにより、パルス状のレーザー光(第1のパルス状の照明光)が対象物50に照射される(照射ステップ)。
【0043】
このレーザー光は、まず、海面70に到達し、そこで散乱される。光入出射口31から海面までの到達時間をTとする。その後、レーザー光は海底の対象物50に到達する。海面70から対象物50(海底)までの到達時間をTとする。従って、レーザー光の発振波形、タイミングを反映して、散乱光は、図3(d)のように発生する。
【0044】
海面70からの散乱光はTの時間を経て第1の光電子増倍管15(光入出射口31)に入射し、対象物50からの散乱光はT+Tの時間を経て第1の光電子増倍管15に入射する。ただし、一般に光電子増倍管の出力には検出の遅延時間(TDP)が存在するため、第1の光電子増倍管15の出力は、図3(e)に示されるようになり、二つのピークが現れる(受光ステップ)。ここで、TDPは典型的には10ns程度であり、光電子増倍管の特性に応じて予めその値はわかっている。一つ目のピークは海面70からの散乱光に対応し、レーザー光の発振から2T+TDP後に検出され、二つ目の山は対象物50からの散乱光に対応し、レーザー光の発振から2×(T+T)+TDP後に検出される。
【0045】
同様に、到達したレーザー光によって海面70からも微弱ながらも蛍光が発せられる。このタイミングは上記の散乱光と同様である。その後、海底の対象物50から蛍光が発せられる。ただし、一般に蛍光は励起光を吸収してから一定時間経過後に発せられ、この時間を海面70、対象物50についてそれぞれTDL1、TDL2とする。TDL2については、例えば対象物50が珊瑚である場合、10ns程度である。すなわち、これらが発する蛍光は上記の散乱光からそれぞれTDL1、TDL2だけ遅延して発せられる。また、対象物50(珊瑚)からの蛍光はある一定時間だけ持続する。従って、図3(f)のタイミングで蛍光は発生する。
【0046】
海面70からの蛍光はTの時間を経て第2の光電子増倍管16に入射し、対象物50からの蛍光はT+Tの時間を経て第2の光電子増倍管16に入射する。すなわち、第2の光電子増倍管16に到着時の蛍光は図3(g)のタイミングとなる。この際。第2の光電子増倍管16の入射側の光学系の影響によって、第2の光電子増倍管16に入射時の蛍光の減衰時定数は、海面70からのものと海底からのものとでは異なる。以下に説明するように、このライダー装置10においては、このタイミングに合わせてカメラ22の撮像を行う。
【0047】
従って、第2の光電子増倍管16の出力においては図3(h)に示されるような二つのピークが現れる(受光ステップ)。ただし、散乱光の検出の場合(図3(e))と同様に、第2の光電子増倍管16が蛍光を検出するに際しても、TDPの検出遅れが存在する。一つ目のピークは海面70からの蛍光に対応し、レーザー光の発振から2T+TDL1+TDP後に検出され、二つ目のピークは対象物50からの蛍光に対応し、レーザー光の発振から2×(T+T)+TDL2+TDP後に検出される。
【0048】
従って、次のレーザー光のパルス(第2のパルス状の照明光)が発せられた際(再照射ステップ)に、図3(i)に示されるように、図3(h)の出力における対象物50の蛍光による出力が得られる時点よりもTDPだけ早い時点に合わせてカメラ22の露光開始タイミングを設定すれば、この蛍光が発せられている短い期間だけの撮像動作を行うことができる(撮像ステップ)。すなわち、この露光タイミングは、制御部11が、第2の光電子増倍管16の出力(図3(g))における二つ目のピークに基づいて設定すればよい(露光タイミング設定ステップ)。
【0049】
露光終了タイミングは、このピークの形状に応じて適宜設定することが可能であるが、例えば出力がそのピーク値の1/2になるタイミングよりもTDPだけ早い時点に設定することが可能である。また、対象物50の蛍光時間が予めわかっている場合には、露光開始タイミングのみを制御し、露光終了タイミングはこの一定の蛍光時間経過後とする設定もできる。この場合、例えばこの時間を100ns程度とすることができる。
【0050】
また、例えばICCDにおけるゲート機能においても、動作の遅延時間TDCが存在し、この値は例えばトリッガをかけてから55ns程度であり、ICCDの特性に応じて決まっている。従って、図3(i)のタイミングで実際の露光が行われるように、遅延信号発生器14等を適宜制御すればよい。
【0051】
この際、光学フィルタ23の透過波長は、第2の光電子増倍管16と同様に、蛍光の波長となっているため、蛍光の波長の光を選択してカメラ22で検出することができる。これにより、この蛍光が微弱であっても、高効率でその撮像を行うことができる。
【0052】
海底の深さは海面70と対象物50との間の距離であり、この間の光到達時間がTとなる。従って、Tを求めればこれに水中の光速度を乗じた値がこの深さとなる。前記の通り、第1の光電子増倍管15の出力(図3(e)における一つ目のピークはレーザー光の発振から2T+TDP後、二つ目のピークはレーザー光の発振から2×(T+T)+TDP後に現れる。従って、この二つのピークの時間差は2×Tであり、これからTを算出することができ、海底までの深さが求まる(深さ算出ステップ)。この際、このレーダー装置10において実際に出力として得られるのは、図3においては、第1の光電子増倍管15の出力(e)、第2の光電子増倍管の出力(h)である。特に第1の光電子増倍管15の出力(e)のみからT、すなわち対象物50の深さが算出されるため、例えばレーザー光の正確な発振タイミング(図3(c))等が不明であっても、これを算出することができる。また、TDPの値に関わりなくこの値を算出することができる。
【0053】
第2の光電子増倍管16の出力(h)における二つの山の時間差は2×T+TDL2−TDL1となるため、TDL1、TDL2のうちの少なくともどちらかが不明の場合にはTを算出することが困難である。しかしながら、これらが共に正確にわかっている、あるいはこれらがほぼ同一の値である場合には、第2の光電子増倍管16の出力(h)からもTを算出することができる。すなわち、この場合には第1の光電子増倍管15は不要となり、深さ算出ステップにおいて、単一の光電子増倍管(第2の光電子増倍管16)のみを用いればよい。
【0054】
また、第2の光電子増倍管16の出力(g)における対象物50からの蛍光による出力(二つ目のピーク)と、第1の光電子増倍管15の出力(e)における対象物50からの散乱光による出力(二つ目のピーク)との時間差は、TDL2となる。従って、特に露光時間を一定とする制御を行う場合、予めTDL2の値がわかっている場合には、第2の光電子増倍管16を用いずに、第1の光電子増倍管15のみを用いて露光タイミングの制御を行うことも可能である。すなわち、図3(g)に示されるように、第1の光電子増倍管15における二つ目のピークの時刻よりもTDL2−TDPだけ後に露光開始タイミングを設定すればよい。この際、第1の光電子増倍管15の出力から深さを算出できることは前記の場合と同様である。従って、この場合には第2の光電子増倍管16は不要である。
【0055】
また、前記の例では、照射ステップにおいて第1のパルス状の照明光を照射し、再照射ステップにおいて、第2のパルス状の照明光を照射する設定とし、第2のパルス状の照明光によって発生した蛍光の撮像が行われる設定とした。しかしながら、対象物50が蛍光を発する時間が充分に長い場合には、再照射ステップを行わず、第1のパルス状の照明光によって発生した蛍光の撮像を行う設定とすることもできる。この場合には、露光タイミング設定ステップにおいて、二つ目のピークの立ち上がりが確認された時点を露光開始タイミングとすればよい。すなわち、このピークに同期して撮像部20に露光を開始させればよい。露光終了タイミングは、二つ目のピークの出力がある値以下になった場合、あるいは、露光開始タイミングから一定時間後とすることができる。この場合においては、TDPやTDCの存在のために、実際の蛍光の開始からは遅れて撮像が開始される。しかしながら、蛍光の時間が充分長ければ、この場合においても蛍光に対する撮像を充分に行うことができる。この際に、第1の光電子増倍管15のみ、あるいは第2の光電子増倍管16のみを用いてこの制御を行うことができることは、再照射ステップにおいて撮像を行う場合と同様である。また、水深が予めわかっている場合、または背景光が少なく撮像部20の露光開始タイミングと露光終了タイミングの設定に余裕のある夜間等では、予め設定した露光タイミングを用い、第1のパルス状の照明光によって発生した蛍光の撮像を行う設定とすることもできる。
【0056】
なお、図3(e)(g)(i)の比較より、特にTDL2がTDPよりも大きな場合には、第1の光電子増倍管15の出力における二つ目のピークよりも、蛍光の到着は遅れるため、この二つ目のピークの立ち上がりよりもTDL2−TDP後に露光開始タイミングを設定すればよい。従って、例えばTDL2が長い場合には第1の光電子増倍管15のみを用いる構成は特に有効である。
【0057】
また、特に船体60を移動させながら上記の測定を行う場合、対象物50(海底)の深さは時々刻々変化する。こうした場合において、海底までの深さの変化がわかれば、例えばこれに応じてレーザーヘッド13の出射光学系、カメラ22に対する検出光学系21等の設定を最適化することが容易になる。従って、深さ算出ステップによって得られた深さを元にして制御部11がこれらの光学系を制御することが可能となり、この点によっても良好な画像を得ることができる。
【0058】
なお、以上の動作において、第1、第2の光電子増倍管15、16の光検出タイミングは、遅延信号発生器14によって制御され、図3(b)におけるQスイッチのパルスをトリッガとしたゲート機能によって光検出動作が開始される設定とすることが好ましい。
【0059】
この出力は、制御部11及び遅延信号発生器14に入力される。遅延信号発生器14は、光電子増倍管15、16の出力信号のパルスをトリッガとしたゲート機能を用いて、図3(i)に示されるように、カメラ22の撮像素子の電子シャッターをオンして露光を開始する。この際、対象物50側から戻り、光学フィルタ23を通過した特定の波長領域の光に対してのみ露光が行われる(第3のステップ)。
【0060】
ここで、蛍光の波長におけるバックグラウンド光の強度の時間依存性がない場合には、Qスイッチを図3(b)のタイミングでオンとした後で、第2の光電子増倍管16の出力が図3(h)の形で得られた場合、この出力増加をもたらす光は、蛍光のみとなる。従って、上記の動作により、カメラ22は、蛍光が発せられている時間のみ撮像をすることができる。すなわち、このライダー装置10においては、蛍光による画像を得るために適切なタイミングでカメラ22が制御される。
【0061】
その後、撮像部20(カメラ22)からの画像信号を画像表示装置18に出力させれば、利用者がこの画像を目視で確認することができる(表示ステップ)。ただし、このステップを省略し、この画像信号を記憶媒体に記憶した後で各種のデータ処理を行い、その後に画像表示装置18に出力させることもできる。
【0062】
また、第2の光電子増倍管16の出力(図3(h))に二つのピークが見られない場合には、例えば、海底に対象物50(珊瑚)が存在しない場合、あるいは、異物が存在したり海底が深すぎることによって照明光が対象物50まで到達しない場合等に対応する。従って、この場合には、制御部11がアラームを発する構成とすることができる。
【0063】
一方、図4は、対象物50が発する蛍光を半没型のライダー装置10が検出する際の動作を図3と同様に示す。図4(a)〜(c)は図3と同様であるため、説明は省略する。ここで、光入出射口31が海面70の直下にあるため、光入出射口31は海面70と同じ高さにあるとみなせる。この場合の特徴は、光入出射口31が海面下にあるため、船体60の運動に応じて海中(水中)に気泡が発生することである。ただし、水上型の場合のような海面70の影響は全く現れない。
【0064】
発せられたレーザー光(第1のパルス状の照明光)は、深さ方向の広い範囲において海中の気泡や海水等で散乱され、透過成分は減光される。その後、対象物50(海底)に到達して、そこでも散乱される。従って、図4(d)のタイミングで散乱光は発生する。ここでも、対象物50までのレーザー光の到達時間はTである。この場合には、図3の場合とは異なり、ヘッド部30は海面下にあるため、照明光による海面からの散乱光は発生しない。ただし、ヘッド部30の直下では気泡や海水等により散乱光が発生するために、図4(d)においては、対象物50からの散乱光の他に、照射直後に発生する一つ目のピークが存在する。すなわち、図3(d)の場合と同様に、二つのピークが発生する。
【0065】
一つ目のピーク(気泡や海水等による散乱光)は、深さに応じた時間後に第1の光電子増倍管15(光入出射口31)に入射し、対象物50からの散乱光はTの時間を経て第1の光電子増倍管15に入射し、それぞれ遅延時間TDP後に検出される。従って、第1の光電子増倍管15の出力においては図4(e)に示されるような二つのピークが現れる(受光ステップ)。一つ目の幅の広いピークは様々な深さの気泡や海水等からの散乱光に対応し、第1のパルス状の照明光の発振直後(TDP後)において既に第1の光電子増倍管15の出力として認識される。二つ目のピークは対象物50からの散乱光に対応し、レーザー光の発振から2×T+TDP後に検出される。
【0066】
ここで、第1のピークの指標として、 第1のパルス状の照明光の発振から所定時間経過後における第1の光電子増倍管15の出力をモニターすることができる。ここで、この所定時間とは、図4(e)より、TDPとすることができる。すなわち、この値が大きな場合には、気泡が多く発生して正確な測定が困難であるため、制御部11が画像表示装置18においてアラームを発することができる(警告ステップ)。あるいは、この値が大きな間は撮像ステップを行わない設定とすることもできる。なお、第1の光電子増倍管15の出力において、第1のパルス状の照明光の発振直後の値ではなく、気泡による散乱光を一つ目のピークとして認識することができれば、このピーク値を代わりにモニターしてもよい。
【0067】
図3の場合と同様に、海底の対象物50からは遅延時間(TDL2)を経て蛍光が発せられる。海水からも微弱ながらも蛍光(遅延時間TDL1)が発せられる。従って、図4(f)のタイミングで蛍光は発生する。
【0068】
これらの蛍光は図4(g)に示されるタイミングで第2の光電子増倍管16に入射する。すなわち、対象物50からの蛍光はTの時間を経て第2の光電子増倍管16に入射する。ここでも、以下に示すように、水上型の場合と同様に、このタイミングに合わせてカメラ22の撮像を行う動作が行われる。
【0069】
第2の光電子増倍管16の出力においては図4(h)に示されるようにピークが現れる(受光ステップ)。この二つ目のピークは対象物50からの蛍光に対応し、レーザー光の発振から2×T+TDL2+TDP後に検出される。なお、一つ目のピークはレーザー光の発振直後に現れるため、一つ目のピークと二つ目のピークとの識別は容易である。
【0070】
従って、次のレーザー光のパルス(第1のパルス状の照明光)が発せられた際(再照射ステップ)に、図4(i)に示されるように、露光タイミングを設定すれば(露光タイミング設定ステップ)、高効率でその撮像を行うことができる(撮像ステップ)。すなわち、第2の光電子増倍管16の出力(図4(h))における二つ目のピークよりもTDPだけ前に露光開始タイミングを設定すればよい。この点については図3の場合と同様である。
【0071】
前記の通り、第1の光電子増倍管15の出力(図4(e))における一つ目のピークはレーザー光の発振からTDP後に現れ、二つ目のピークはレーザー光の発振から2×T+TDP後に現れる。従って、水上型(図3)の場合と同様に、一つ目のピークと二つ目のピークとの時間差は、2×Tとなり、第1の光電子増倍管15の出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差に基づいてTを算出することができる。あるいは、レーザー光の発振から二つ目のピークは、レーザー光の発振(図4(c))から2×T+TDP後に検出されるため、このレーザー光の出力とこの二つ目のピークとの時間差からもTを算出することができる。従って、以上のどちらの方法によっても、第1の光電子増倍管15の出力に基づいてTを算出することができ、海底までの深さが求まる。制御部11がこの深さを元にしてレーザーヘッド13の出射光学系、カメラ22に対する検出光学系21等の設定を最適化することが可能な点も水上型の場合と同様である。
【0072】
第2の光電子増倍管16の出力(g)における二つ目のピークはレーザー光の発振から2×T+TDL2+TDP後となるため、TDL2が不明の場合にはTを算出することが困難である。TDL2が2×Tと比べて無視できる、あるいは予め正確にわかっている場合には、第2の光電子増倍管16の出力(g)からもTを算出することができる。すなわち、この場合には第1の光電子増倍管15は不要となり、深さ算出ステップにおいて、単一の光電子増倍管(第2の光電子増倍管16)のみを用いればよい。
【0073】
また、水上型の場合(図3)と同様に、TDL2の値が予めわかっており、かつ露光時間を一定とする制御を行う場合には、第2の光電子増倍管16を用いずに、第1の光電子増倍管15のみを用いて露光タイミングの制御を行うことも可能である。この場合には、第1の光電子増倍管15における二つ目のピークの時刻よりもTDL2−TDPだけ後に露光開始タイミングを設定すればよい。この際、水上型の場合と同様に、第2の光電子増倍管16は不要である。
【0074】
また、対象物50が蛍光を発する時間が充分に長ければ、再照射ステップを特に設けず、第1のパルス状の照明光によって発生した蛍光の撮像を行う設定とすることもできる。この場合には、露光タイミング設定ステップにおいて、二つ目のピークの立ち上がりが確認された時点を露光開始タイミングとすることができることも、水上型の場合と同様である。
【0075】
なお、画像信号を画像表示装置18に出力させることができる点についても水上型の場合と同様である(表示ステップ)。
【0076】
従って、半没型のライダー装置10を用いて、海底にある対象物50が発する蛍光の画像と、海底までの深さを求めることができる。
【0077】
なお、半没型のライダー装置10においては、気泡の影響を低減するため、ヘッド部30を海面よりも深く設置して測定することもできる。この場合、上記の説明における深さとは、ヘッド部30から対象物50までの距離となり、正確な深さはこの距離とヘッド部30の深さとの和となる。ヘッド部30の深さはライダー装置10の設置状況に応じて認識することができるため、正確な深さを算出することができる。すなわち、この場合でも、上記の時間差に基づいて正確な深さを算出することができる。
【0078】
以上の動作により、水上型、半没型の場合共に、水中にある対象物からの微弱な蛍光の画像を容易に得ることができ、対象物までの距離情報も得ることができる。すなわち、海中(水中)の対象物を含む3次元的な情報を得ることができる。また、対象物までの距離情報を得ることにより、撮像条件を最適化することができるため、より良好な画像を得ることができる。
【0079】
また、透過波長を例えば2nm毎に変化させた複数の光学フィルタを光学フィルタ選択機24に設置し、このライダー装置10と対象物50との位置関係を固定して上記の測定を光学フィルタ毎に行うことによって、対象物50から戻ってくる光のスペクトルを得ることもできる。この場合、取り扱うデータが多くなるため、各撮像における画像信号を記憶する記憶部(ハードディスク等)と、画像信号間の演算を行う演算処理部(CPU等)からなる情報処理部を図1の構成に加えて設けることが好ましい。
【0080】
この際、例えば、光学フィルタのうちの一つを水ラマン散乱光の波長に適合させることができ、これらを光学フィルタ選択機24に組み込んだ場合、対象物からの蛍光の画像とその周囲にある水の画像の両方を得ることができる。この際、情報処理部がこれらの2種類の画像を適宜合成することによって、更に鮮明な対象物の画像を得ることもできる。あるいは、水ラマン散乱の波長の光が確認できない場合に、ライダー装置10が故障している、水中を臨んでいない、あるいは海面や水中に異物があるために照明光が海中に到達しないことを確認できる。
【0081】
また、例えば、利用者が画像表示装置18の画像を見て、利用者が特に観測したい対象を確認することができる。この場合、利用者は、レーザーヘッド13の出射光学系を制御部11を介して制御することにより、レーザー光をこの対象物50に絞り込み、この対象物50からのみ発せられる蛍光を検出することができる。
【0082】
このライダー装置10は、特に、海底にある物体の蛍光画像を得るのに適しているが、例えば、珊瑚の発する蛍光の撮像に好適である。508nmの波長の光を発する緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む珊瑚(例えばキクメイシ)は、この波長の光を発する。特に、この発光を生ずるのは生きた珊瑚だけであるため、このライダー装置10を用いた測定によって、海底中の生きた珊瑚の分布が測定可能である。図5は、365nmの波長の励起光を用いた場合の各種珊瑚の発光スペクトルを測定した結果である。なお、図5においては、励起光自身も同時に検出されている。前記のGFPによる508nmのピークをもつものが多いが、他の波長にもピークをもつものが存在する。従って、GFP以外の発光物質を含む珊瑚に対しても、これに対応する波長の光学フィルタ23を用いることにより、同様にその分布を測定することができる。あるいは、前記の通り、複数の波長で上記の測定を行って発光スペクトルを得ることにより、珊瑚の種類も判定することが可能である。すなわち、上記のライダー装置10、あるいはこの対象物検出方法を用いて、生きた珊瑚の分布等、海中における環境を評価する指標となる量の分布を広い範囲において測定する環境測定が可能である。特に、ある決まった地点(基点)近傍に対してこの測定を経時的に行うことにより、環境の経時変化を測定することも可能である。
【0083】
同様に、海底にある他の物体、例えば沈没船や各種廃棄物等に対しても、その表面に蛍光物質があれば、これを同様に検出することが可能である。この場合においても、環境の指標をこれらの対象物とした環境測定が同様に可能である。
【0084】
また、船舶以外にも、このライダー装置10を各種の移動体に取り付け、遠距離から微弱な蛍光を撮像することが可能である。例えば、移動体として、人工衛星、航空機、あるいは人間(ダイバー)等を用いることができる。この際、光学フィルタの透過波長を例えば2nm程度に区切って測定を行えば、対象物から戻る光のスペクトルが得られる。
【0085】
また、複数のライダー装置10をこれらの移動体に取り付け、異なる地点、距離から測定を行うことにより、様々な測定条件で環境測定を行うことができる。例えば、海中の珊瑚を対象物とする場合、人工衛星からは広い視野(10km×10km以上)でかつ低分解能(2〜3m)で浅い水域(水深0〜5m)の解析、船舶からは狭い視野(3m×3m程度)でかつ中分解能(10cm程度)で深い水域(5〜30m程度)の解析、ダイバーからは極狭い領域において高分解能(1cm程度)で浅い領域(0〜10m程度)の解析をそれぞれ行うことができる。従って、同一の領域において、これらの移動体を同時に用いて測定を行えば、広範なデータを取得することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
上記のライダー装置及び対象物検出方法は、上記の通り、様々な測定対象の分布を測定することができる。従って、上記の環境測定を初めとして、海底探査等にも用いることができる。また、海中に限らず、大気中における対象物の探査に用いることもできる。
【符号の説明】
【0087】
10 ライダー装置
11 制御部
12 レーザー電源部
13 レーザーヘッド(照射部)
14 遅延信号発生器
15 第1の光電子増倍管(第1の光検出部)
16 第2の光電子増倍管(第2の光検出部)
17 オシロスコープ
18 画像表示装置(表示部)
20 撮像部
21 検出光学系
22 カメラ
23 光学フィルタ
24 光学フィルタ選択機
30 ヘッド部
31 光入出射口
50 対象物
60 船体
70 海面(水面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を水上から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、
第1のパルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、
前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、
前記パルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出する深さ算出ステップと、
前記パルス出力における二つ目のピークに基づいて撮像素子の露光タイミングを設定する露光タイミング設定ステップと、
第2のパルス状の前記照明光を再度前記対象物に照射する再照射ステップと、
前記露光タイミングで前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光を前記撮像素子で撮像する撮像ステップと、
を具備することを特徴とする対象物検出方法。
【請求項2】
前記受光ステップにおいて、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光する第1の光検出部と、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光する第2の光検出部とが用いられ、
前記深さ算出ステップにおいて、前記第1の光検出部からの第1のパルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出し、
前記露光タイミング設定ステップにおいて、前記第2の光検出部からの第2のパルス出力における二つ目のピークに基づいて前記露光タイミングを設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の対象物検出方法。
【請求項3】
照明光を水上から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、
パルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、
前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、
前記パルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出する深さ算出ステップと、
前記パルス出力における二つ目のピークに同期して、前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光における撮像を撮像素子が開始する撮像ステップと、
を具備することを特徴とする対象物検出方法。
【請求項4】
照明光を水中から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、
第1のパルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、
前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、前記パルス出力におけるピークに基づいて前記深さを算出する深さ算出ステップと、
前記パルス出力におけるピークに基づいて撮像素子の露光タイミングを設定する露光タイミング設定ステップと、
第2のパルス状の前記照明光を再度前記対象物に照射する再照射ステップと、
前記露光タイミングで前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光を前記撮像素子で撮像する撮像ステップと、
を具備することを特徴とする対象物検出方法。
【請求項5】
前記受光ステップにおいて、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光する第1の光検出部と、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光する第2の光検出部とが用いられ、
前記深さ算出ステップにおいて、前記第1の光検出部からの第1のパルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差に基づいて前記深さを算出し、
前記露光タイミング設定ステップにおいて、前記第2の光検出部からの第2のパルス出力におけるピークに適合して前記露光タイミングを設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の対象物検出方法。
【請求項6】
照明光を水中から水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出する対象物検出方法であって、
パルス状の前記照明光を前記対象物に照射する照射ステップと、
前記対象物側から戻った光を光検出部で検出し、パルス出力をする受光ステップと、
前記パルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差に基づいて前記深さを算出する深さ算出ステップと、
前記パルス出力におけるピークに同期して、前記対象物が発する光と略同一波長をもつ光における撮像を撮像素子が開始する撮像ステップと、
を具備することを特徴とする対象物検出方法。
【請求項7】
前記光検出部は、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光することを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4、請求項6のいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項8】
前記光検出部は、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光することを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4、請求項6のいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項9】
前記受光ステップ後に、
前記照射ステップから所定時間経過後の前記光検出部からのパルス出力の値に応じて、警告を発する警告ステップを具備することを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項10】
前記撮像ステップによって得られた画像信号に基づいた画像を表示させる表示ステップを具備することを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項11】
複数の波長領域にそれぞれ対応させて前記撮像ステップを行い、
前記複数の波長領域に対応する撮像結果から、前記対象物側から戻る光のスペクトルを算出するステップを具備することを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項12】
前記対象物が発する光は、前記対象物が発する蛍光であり、前記照明光は前記蛍光の励起光であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項13】
前記深さ算出ステップにおいて算出された深さに基づいて、前記照明光の出射光学系及び前記撮像素子の入射光学系を制御することを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の対象物検出方法。
【請求項14】
照明光を水中の対象物に向かって照射し、該対象物が発する光の画像及び前記対象物の深さを検出するライダー装置であって、
前記照明光をパルス状に発振して前記対象物に向けて照射する照射部と、
前記対象物側から戻る光を検出してパルス出力をする光検出部と、
前記パルス出力に基づいて前記対象物の水面からの深さを算出する制御部と、
前記パルス出力に基づいて、前記対象物側が発する光と略同一の波長の光に対して露光を行い画像を得る撮像部と、
を具備することを特徴とするライダー装置。
【請求項15】
前記光検出部には、前記照明光と略同一の波長をもつ光を受光する第1の光検出部と、前記対象物が発する光と略同一の波長をもつ光を受光する第2の光検出部とが含まれ、
前記制御部は、前記第1の光検出部からの第1のパルス出力における二つ目のピークと一つ目のピークとの時間差から前記深さを算出し、
前記撮像部は、前記第2の光検出部からの第2のパルス出力における二つ目のピークに基づいて露光を行う、
ことを特徴とする請求項14に記載のライダー装置。
【請求項16】
前記照射部は、第1のパルス状の照明光を発振してから所定間隔の後に第2のパルス状の照明光を発振し、
前記撮像部は、前記第1のパルス状の照明光の発振後に得られた前記パルス出力に基づいて設定された露光タイミングで、前記第2のパルス状の照明光の発振後に露光を行うことを特徴とする請求項14又は15に記載のライダー装置。
【請求項17】
前記撮像部から出力された画像信号に基づいた画像を表示させる表示部を具備することを特徴とする請求項14から請求項16までのいずれか1項に記載のライダー装置。
【請求項18】
前記対象物が発する光の波長として、複数の波長が設定され、
前記複数の波長に対応する撮像結果から、前記対象物側から戻る光のスペクトルを算出する情報処理部を具備することを特徴とする請求項14から請求17までのいずれか1項に記載のライダー装置。
【請求項19】
前記複数の波長の中には、水ラマン散乱の波長が含まれることを特徴とする請求項18に記載のライダー装置。
【請求項20】
前記照射部における前記照明光の出射口、前記第1及び第2の光検出部における光の入射口、及び前記撮像部における光の入射口が水面と空間を介して設けられたことを特徴とする請求項14から請求項19までのいずれか1項に記載のライダー装置。
【請求項21】
前記照射部における前記照明光の出射口、前記第1及び第2の光検出部における光の入射口、及び前記撮像部における光の入射口が水中に設けられたことを特徴とする請求項14から請求項19までのいずれか1項に記載のライダー装置。
【請求項22】
前記対象物を珊瑚として請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の対象物検出方法を行い、前記珊瑚の生死を判定することを特徴とする環境測定方法。
【請求項23】
特定の前記対象物に対して、複数の移動体から請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の対象物検出方法を行うことを特徴とする環境測定方法。
【請求項24】
前記複数の移動体の中には、人工衛星、航空機、船舶のうち少なくとも1種以上が含まれることを特徴とする請求項23に記載の環境測定方法。
【請求項25】
基点を定め、該基点を含む領域において前記対象物の測定を経時的に行うことを特徴とする請求項22から請求項24までのいずれか1項に記載の環境測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−216904(P2010−216904A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62189(P2009−62189)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】