説明

対象設備の寿命予測の方法、コンピュータプログラム、及び、対象設備の寿命予測のための装置

【課題】対象設備の寿命を予測し、最適保全時期決定の支援方法、コンピュータプログラム、及び、対象設備の寿命予測を行い最適保全時期決定のための支援装置を提供する。
【解決手段】対象設備の電動機の電力もしくは電流の時間変化に基づき、軸受部位の変動応力の繰り返し回数を推定し、寿命消耗率を求めて余寿命を決定するステップ1と、軸受部位に取り付けた振動センサから得られる振動速度の時間変化率の累乗則により、当該劣化状態の進展を追跡し、危険領域への到達時点を推定するステップ2と、前記ステップ2の振動診断の結果、注意領域の晩期において、前記ステップ1とステップ2とより余寿命を決定するステップ3と、前記ステップ3においてステップ1とステップ2の二つの余寿命期間から当該対象設備の寿命を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象設備の寿命予測の方法、コンピュータプログラム、及び、対象設備の寿命予測のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象となる設備の振動データを取得して、対象設備の機械的健全性を診断し、劣化状態の傾向を監視し、寿命を予測することにより、対象設備の保全時期を決定している。
例えば、前記振動データとして、振動変位、振動速度、振動加速度、振動加速度の歪度、振動加速度の尖度、振動加速度の波高率等のデータ、を取得し、取得されたデータを所定の閾値と比較することにより対象設備の異常の有無を判定し、状態予測については従来、正常状態時での当該データが「正規分布」に従うものとして行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
あるいは、前記、特許文献1の課題を解決すべく、振動波形データと振動特徴量を指定の確率分布、通常は正規分布へ変換することによって様々な情報処理手法を駆使して状態判定や状態予測を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許公開2000-171291
【特許文献2】特許WO2004-068078
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象設備の診断や保全において、ユーザは振動データ等によって異常の早期発見だけでなく傾向監視を行う中で対象部品や装置の寿命を予測するが、当該傾向監視や寿命予測の精度が不十分であり、実際に対象設備を停止して劣化部分の回復を行う時期の決定についての客観的な判断基準を保有していない。その大きな理由は、従来技術では正常状態での振動データに基づく診断指標の過去の推移から将来を予測するのであるが、劣化現象が生じた場合には当該振動データの指標の変化は過去の正常状態での推移とは全く異なっているからである。
また、対象設備の運転負荷の時間的変動が大きい場合には、回転軸や軸受部位に作用する印加応力が設計応力より小さいときでも、繰り返し回数が大きくなり、いわゆる金属疲労によって寿命が短くなるが、この疲労による寿命消耗を簡易に推定することが困難であった。
さらに、上記するような運転負荷が大きく変動する対象設備では、運転負荷が変動している時間帯で振動データを採取しても、診断対象部位の劣化事象に起因する振動エネルギが運転変動に起因するエネルギに埋もれてしまうので微小異常の早期検知、傾向監視、寿命予測の精度が実用に供しなかった。
【0005】
本来、対象設備の部品レベルでの寿命を決定するためには、部品または部材に生じている応力として3方向からの外力、摩擦力など、および部品または部材の化学的損傷(腐食など)についての設計・製作仕様と製品品質および運用後の経歴、さらに将来にかけ
ての運用条件の変化など複雑な要因が絡み合っており多方面からの検討が必要である。
ここでは前記する多方面からの要因を取り上げて、対象部品や部材の劣化状態の進展
やその寿命を正確に予測することは最善策ではあるが現実的ではない。だからと言って、従来技術のように劣化(異常)事象が起こっていない正常状態での振動データもしくは
その特徴量の経過・蓄積・分析により、進展のメカニズムが全く異なる劣化状態の推移を予測するという手法は、ほとんど根拠を有していないために実用的ではない。
また、対象設備の金属部位に繰り返し荷重が作用すると、印加荷重の大きさが設計応力より小さくても、当該繰り返し回数によって疲労現象から損傷が発生するが、当該疲労に起因する寿命消耗の考慮がなされていない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは次善の
策ではあるが簡便かつ現実的で実用に供することが可能な劣化状態の予測手法を提供することにある。つまり、下記を特徴とする手法である。
・ 異常の劣化種別に対応した、より普遍的な指標の探索
・ 異常の劣化の度合いに単調的に対応した指標の探索
・ 異常の劣化進展に及ぼす振動速度の影響の実振動データからの構築
・ モータ電流の時間変化から金属部材の変動応力を推定して金属疲労寿命を予測
・ 振動データから推定した余寿命と、モータ電流データから推定した寿命消耗からの結果とを総合的に評価
【課題を解決するための手段】
【0007】
主たる本発明は、対象とする設備の複数の劣化状態を振動データによって診断し、当該劣化状態の進展追跡および寿命を予測した結果と、一方、駆動用モータの電流データの時間的変化から推定した印加応力の変動ループを分析することによって、対象設備の金属部位の寿命消耗率を求めて余寿命を得て、前記した振動データから得た寿命予測との2つの結果を総合的に評価することにある。
振動データにより機械的健全性を診断する簡易診断ステップと、当該機械的劣化の種別および劣化程度を推定する精密診断ステップと、当該劣化状態の進展を追跡する傾向監視ステップと、当該傾向監視ステップでの劣化パターンから当該故障の危険領域への到達時期を予測する振動寿命予測ステップと、対象設備の駆動用モータの電流データから金属部位での変動応力のループを推定し金属疲労による当該部位での寿命消耗率を求め、余寿命を得る余寿命推定ステップと、前記する振動データから得られた寿命予測ステップでの予測結果とを総合的に評価することを特徴とする対象設備の寿命予測システムである。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
対象とする設備の複数の劣化状態を振動データによって診断し、当該劣化状態の進展追跡および寿命を予測した結果と、一方、駆動用モータの電流データの時間的変化から推定した印加応力の変動ループを分析することによって、対象設備の金属部位の寿命消耗率を求めて得た余寿命と、前記した振動データから得た振動寿命予測との2つの結果を総合的に評価することにある。
振動データにより機械的健全性を診断する簡易診断ステップと、当該機械的劣化の種別および劣化程度を推定する精密診断ステップと、当該劣化状態の進展を追跡する傾向監視ステップと、当該傾向監視ステップでの劣化パターンから当該故障の危険領域への到達時期を予測する振動寿命予測ステップと、対象設備の駆動用モータの電流データから金属部位での変動応力のループを推定し金属疲労による当該部位での寿命消耗率を求め、余寿命を得る余寿命推定ステップと、前記する振動データから得られた振動寿命予測ステップでの予測結果とを総合的に評価することを特徴とする対象設備の寿命予測システム。
【0011】
かかる対象設備の振動データによる診断方法、傾向監視および寿命予測結果と、駆動用モータの電流データに基づき金属疲労に起因する寿命消耗率を求めて得られる余寿命予測の結果との、2つの寿命予測結果から総合的に評価することによって対象設備の寿命予測が実用的なものとなる。
【0012】
また、前記の対象設備の簡易診断ステップにおいて、振動の時間波形データに基づく複数の波形特徴量として振動変位、振動速度、振動加速度、振動加速度の歪度、振動加速度の尖度、及び、振動加速度の波高率のうちの少なくとも一つと、当該振動データのスペクトルを分割し当該分割周波数帯域間の強さの時間軸における相関から求めた劣化特異な複数の劣化特異無次元特徴量とを考慮することとしてもよい。
かかる場合には、簡易診断を実行する際に振動波形での判定結果だけでなく、該振動データのスペクトル中の無次元特徴量による判定結果との複合判定により信頼性の高い診断結果を得ることもできる。
【0013】
また、現在の振動速度平均値によるISO絶対判定結果と、振動の時間波形データに基づく前期複数の波形特徴量である振動変位、振動速度、振動加速度、振動加速度の歪度、振動加速度の尖度、及び、振動加速度の波高率のうちの少なくとも一つに基づく判定結果と、当該振動データのスペクトルを分割し当該分割周波数帯域間の強さの時間軸における相関から求めた劣化特異な複数の劣化特異無次元特徴量に基づく判定結果と、の3種類の判定結果を総合して、次の時刻での管理処置を決定することとしてもよい。
かかる場合には、対象設備の劣化進展の度合いに応じて、その後の傾向監視上における処置の種別を決定することが可能となる。
【0014】
また、現在の振動速度の平均値の増減傾向と、前記振動データのスペクトルを分割し当該分割周波数帯域間の強さの時間軸における相関から求めた劣化特異な複数の劣化特異無次元特徴量の中で当該劣化事象に対応する当該劣化特異無次元特徴量の増減傾向とを組み合わせて次の時刻での監視レベルの処置種別を選択することとしてもよい。
かかる場合には、対象設備の当該劣化状態の進展の特性を把握することが可能となり、将来への予測が簡便で、かつ当該精度の向上を実現できる。
【0015】
また、直近の時刻での振動速度の平均値と、現在時刻における振動速度の平均値との比率の累乗則に基づき次の時刻での劣化状態を予測することとしてもよい。
かかる場合には、振動速度による劣化部位における振動エネルギの変化の影響を考慮しているので、劣化部位での亀裂、磨耗等の進展についての特性把握および振動寿命予測の精度を向上させることとなる。
【0016】
また、対象設備の運転開始から運転停止までの駆動用モータの電流データの時間変化から、当該対象設備の金属部位の変動応力を推定し、金属疲労に起因する寿命の消耗率を求
め、当該金属部位の余寿命を推定し、前記振動データから劣化状態を追跡して得られた振動寿命予測結果とを総合的に分析・評価することとしてもよい。
かかる場合には、運転状態や運転負荷が大きく変動する対象設備の繰り返し荷重が金属部位に与える疲労事象の特性も考慮することが可能になり、寿命予測の精度向上が可能となる。
【0017】
また、振動データのスペクトルを分割し当該分割周波数帯域間の強さの時間軸における相関から求めた劣化に特異な複数の劣化特異無次元特徴量の中で当該劣化事象に対応する当該劣化特異無次元特徴量について、当該劣化事象の発生開始に対応する第一次注意閾値と、当該注意領域から危険領域へ移行する危険閾値との間に、第二次注意閾値を設けて、前記第一次注意閾値と当該第二次注意閾値との間で、上記劣化状態の予測を行うこととしてもよい。
かかる場合には、当該劣化事象に関する進展特性を抽出する期間を簡易に規定しながら、当該劣化状態の予測精度の大幅な向上を図ることが可能になる。
【0018】
また、対象設備の寿命予測システムを実現するためのコンピュータプログラムも実現可
能である。
かかるコンピュータプログラムによれば、対象設備の診断、傾向監視、寿命予測におけ
る当該劣化事象の進展と当該劣化部分の金属疲労も考慮した寿命予測の実行が簡便なも
のとなる。
【0019】
また、前記コンピュータプログラムを備えたコンピュータを有することを特徴とする対
象設備の寿命予測装置も実現可能である。
かかる対象設備の寿命予測装置によれば、対象設備の診断、傾向監視、寿命予測における当該劣化事象の進展と当該劣化部分の金属疲労も考慮した寿命予測の実行が簡便なも
のとなる。
【0020】
===本実施の形態に係る対象設備の寿命予測手法の全体フローについて===
図1に振動データによる簡易診断、精密診断、傾向監視、寿命予測の実行と、駆動用モータの電流データの時間変化から診断対象部位の変動応力を推定し金属疲労を考慮した余寿命の決定と、振動データから得た寿命予測結果と電流データから得た余寿命結果とを総合的に分析評価する各ステップのフローチャートを、図2に振動データに基づく3つの判定手法による各判定結果による総合判定の手順と当該総合判定結果から今後の監視処置の分類例を示す。
【0021】
対象設備の振動データを採取し、当該振動データから波形特徴量および劣化特異無次元特徴量を抽出し、ISO絶対判定基準に基づく判定手法1の判定結果と、高周波(Hi)・中周波(Mid)・低周波(Lo)での波形特徴量に基づく判定手法2の判定結果と、劣化特異無次元特徴量に基づく高周波(Hi)・中周波(Mid)・低周波(Lo)領域での判定手法3の判定結果との総合判定を行い、異常の有無および今後の監視についての処置を判定する。
判定手法1による判定結果は、良好・注意レベル1・注意レベル2・危険の4段階判定であり、これらは駆動モータの大きさや対象設備の基礎状態に応じてISO10816-1によって規格化されている。
【0022】
次に、判定手法2では前記判定手法1での高周波(Hi)・中周波(Mid)・低周波(Lo)における加速度のピーク値・平均値・2乗平均値、速度の平均値・2乗平均値、変位のピーク値などの有次元特徴量および下記の[数1]、[数2]で定義する無
次元特徴量において、正常時の各値を基準として、当該基準値の数倍、通常では2〜3倍を注意閾値とし、当該注意閾値の2〜3倍を危険閾値とする。
【0023】
【数1】

【0024】
【数2】

【0025】
次に、判定手法3では特許第3382240号にて開示されている数式4にて求めた第1主成分得点から第m主成分得点を判定の指標とする。前記、高周波(Hi)・中周波(Mid)・低周波(Lo)の周波数領域毎に正常時の振動データについて上記主成分得点を求め、当該主成分得点を指標とした判定方法については、前記特許第3382240号の中の図6およびパラグラフ[0037]から[0042]に具体的に記載してある。そして、本判定手法3では第一次注意閾値、第二次注意閾値、危険閾値を設定して良好・注意レベル1・注意レベル2、危険領域の4段階の判定を行う。
【0026】
前記、手法1での結果に応じて、つまり手法1の判定結果が良好もしくは注意レベル1のときは図2の表1を適用し、手法1の判定結果が注意レベル2もしくは危険領域のときは表2に示すような総合判定およびその後の監視処置の分類を行う。
つまり、表2では、手法1の判定結果、低周波領域の振動速度平均値が大きく劣化傾向として深刻な状況にある確率が高いので、手法2と手法3との総合判定やその後の監視処置については、表1の場合と比較して厳しい監視処置を選定することによって対象設備の劣化進展を確実に把握して安全運転の確保は当然のこと、さらに劣化特性を抽出することによって寿命予測の精度を向上させるのである。
なお、上述した判定手法において、高周波(Hi)、中周波(Mid)、低周波(Lo)の3つの周波数帯域に分割し各々の帯域において判定を実行するのは、高周波領域では、対象部位の磨耗や傷の初期現象が多く発生すること、中周波領域では自励振動が主体的であること、低周波領域ではアンバランス等の構造的な異常が主体的に発生すること、を考慮することによって当該異常の検出性能を向上させ、また異常原因の特定に有効であることにある。
ちなみに、本実施例では、高周波領域は5kHz〜30kHz、中周波領域は1kHz〜10kHz、低周波領域は5Hz〜1kHzの周波数帯域での診断を行った。
【0027】
==本実施の形態に係る振動データによる診断方法、傾向監視、寿命予測について==
本実施の形態に係る対象設備の振動データによる診断方法、傾向監視、寿命予測につい
て説明する。
なお、本明細書では、対象となる設備として、回転機械、例えば、モータにより駆動される攪拌機、を例に挙げて説明するが、対象設備は、当然のことながら、これに限定されるものではない。
ここでは、攪拌機の軸受傷、ミスアライメント(軸ズレ)、アンバランス回転の劣化事
象の診断において、本発明を軸受傷の発生検知とその進展、寿命予測に適用した実施例を
示す。
【0028】
図3に振動データによる設備診断を開始してからの劣化特異無次元特徴量Z1,Z5,Z8の時間経過を示す。
軸受傷は特徴量Z1、ミスアライメントは特徴量Z5、アンバランス回転は特徴量Z8が各劣化事象に対応した劣化特異特徴量である。図3では、特徴量Z1が22.0ヶ月経過した時点で当該第一次注意閾値である8.0を超えており、その後24.7ヶ月後に同第二次注意閾値である20に到達している。一方、図4にも示すように、この期間では特徴量Z5は、24.0ヶ月後に同第一次注意閾値を超えており、特徴量Z8は第一次注意閾値には達していない。つまり、当該軸受傷の劣化状態が注意領域の晩期になると、ミスアライメントの劣化状態も注意領域に入っていたことが分かる。
【0029】
軸受傷が先行して劣化進展しており、図4に軸受傷の劣化特異特徴量Z1を、図5に振動速度平均値Vrmsの推移を示す。また、図6には特徴量Z1の増減符号と振動速度平均値Vrmsの増減符号との組み合わせに応じた、将来の振動監視のクラス分類を示す。ここでは、下記の4つのクラスに分けた場合を示す。
AA:直近での予測時期における診断周期間隔を延長
A:そのまま経過観察
B:診断周期を短縮して経過観察
C:特徴量Z1と振動速度平均値Vrmsとの関連を検討して危険閾値への到達時期を予測
【0030】
図7には、22.0ヶ月以降における図4、図5に示す特徴量Z1と振動速度平均値Vrmsの各診断周期毎に、図6の分類にしたがって監視クラスの分類、Z1の予測、振動速度平均値の比率の累乗則における指数nの推移を示す。クラスCの場合にのみ特徴量Z1の予測を行い、当該Z1の実測値とを比較することによって累乗則の指数nを修正してゆく。
【0031】
この累乗則の指数nの修正状況を図8に示す。
つまり、軸受傷の劣化特異無次元特徴量Z1が第一次注意閾値を超えてから第二次注意閾値に達するまで(図3で、T1=22.0ヶ月〜T2=24.7ヶ月)の期間で、図6のクラス分類と図8の累乗則に則った特徴量Z1の予測・実測および振動速度平均値Vrmsの実測により、当該劣化事象の進展特性を、当該累乗則の指数nとして抽出するものである。この累乗則の指数nの変化について図7に示す。
【0032】
初期値0.8からスタートして0.67、0.17、最後に0.34で当該劣化事象である軸受傷の劣化特異無次元特徴量Z1の第二次注意閾値を超えた事例である。
ある時刻iでの振動速度平均値をViとし、当該劣化特異無次元特徴量をZ1(i)として、
下記の[数3]、[数4]を用いてZ1の予測値と実測値から予測係数Cを修正してゆくも
のである。




Z1の予測係数 Cとして
【0033】
【数3】

指数n と予測係数 C との関係を
【0034】
【数4】

【0035】
上記する軸受傷の劣化特異無次元特徴量Z1の予測に関して、振動速度平均値Vrmsの累乗則を適用する根拠は、回転部位の金属の疲労現象がVrmsに比例すること、回転部位の亀裂や磨耗がVrmsの2乗で進行するという物理現象が存在すること、さらに当該物理現象が当該劣化事象の進展に及ぼす影響は、振動エネルギの全てが劣化進展に反映するものではないことから、劣化進展期間における指数nの修正という手法によることによって解決することにある。
そして、特徴量Z1が第二次注意閾値に到達した時点で、当該危険閾値に到達する時期を予測する。
ただし、対象設備の運転負荷の変動が大きい場合など、振動データ自体が変動するようなときには上記する振動速度平均値Vrmsの累乗側に基づく劣化進展の推定には誤差が大きくなる傾向を呈す。当該課題については、別途、駆動用モータの電流データの時間変化に基づく余寿命推定と、振動データを採取するタイミングを考慮した余寿命推定ステップに関する詳細な説明を行う。
【0036】
ところで、上述した軸受傷の劣化進展モデルは、基本的にミスアライメントやアンバランス回転のような劣化事象にも妥当である。その理由を以下に記載する。
【0037】
まず、ミスアライメント(軸ズレ)について記載する。軸ズレの進展要因は、
(1)駆動側と被駆動側との偏った磨耗などによる回転アンバランス
(2)接続配管や機械本体の基礎部分から受ける外力や変位の作用、などにある。したがって、振動エネルギの増大が、磨耗やアンバランス度合の増大を介して間接的にミスアライメント現象の劣化度合を進展させるので軸受の傷進展における劣化予測モデルとアナロジーを有する。
【0038】
次に、アンバランスについて記載する。この劣化要因は、回転体や軸の偏った磨耗や傾き、もしくは軸受部での保持状態の不良などの機械的・機構的な要因であるので、振動エネルギの増加による欠陥、磨耗の進展という軸受傷の進展の場合の予測モデルとアナロジーを有する。また、このアンバランスの直接的要因が腐食のような化学的もしくは電気化学的な要因にある場合は、振動エネルギの増加から受ける直接的な影響は小さいが、振動エネルギの増大や磨耗、偏芯度の増大を介して悪循環に入り込むので、腐食現象も間接的な要因となり振動エネルギを考慮するという本発明の寿命予測モデルに合致するものである。
【0039】
そして、特徴量Z1が第二次注意閾値に到達した時点で、当該危険閾値に到達する時期を予測する。
【0040】
このような傾向監視ステップと寿命予測ステップとを実行すれば、軸受傷の進展中の特性を考慮した予測が可能になり、寿命予測の精度が実用的となるのである。
なお、軸受傷・ミスアライメント・アンバランス回転に対するそれぞれの劣化特異無次元特徴量であるZ1、Z5、Z8と、実際の劣化状態の物理的進展の程度との関係を図9、図10、図11に示す。これらは、回転機械のシミュレータを用いた試験装置において各劣化事象に対する振動試験の結果から得られた知見である。これらの図には、各々の劣化事象における第一次注意閾値、第二次注意閾値および危険閾値を示している。
【0041】
さて、現場の駆動用モータ容量が800kWの大型攪拌機に、本発明の診断方法、傾向監視、寿命予測手法を適用した状況と結果を述べる。
前記、図3に示すように、軸受傷、ミスアライメント、アンバランスの簡易診断、傾向監視におけるそれぞれの劣化特異無次元特徴量Z1,Z5,Z8の推移と軸受傷の劣化傾向監視結果から、経過開始からT3=31.8ヶ月後に危険閾値に達するという寿命予測の結果が得られた。これは、軸受傷に関する特徴量Z1が第一次注意閾値8.0に達した時点T1=22.0ヶ月後から当該特徴量Z1が第二次注意閾値20に達した時点T2=24.7ヶ月までの期間において、図4および図5に示す当該特徴量Z1及び振動速度平均値Vrmsの実測値と図6のクラス分類、図7・図8の累乗則の指数変化からの予測との繰り返しを行い、軸受傷に対応する特徴量Z1の第二次注意閾値20を超えた時点で、当該Z1の危険閾値28に到達する時期を予測したものである。
【0042】
前記の寿命予測を実行したのち、対象攪拌機の注意深い運転継続によって当該寿命予測の精度が十分であることを検証した。つまり、予測した時点T3=31.8ヶ月後に当該攪拌機を停止・分解して対象軸受部の点検を行ったところ、当該軸受の外輪傷の深さが約600μであったことから、図9に示す当該劣化特異無次元特徴量Z1の危険閾値28とほぼ一致していることが明らかになり、当該寿命予測手法が有効であった。
【0043】
=本実施形態に係る対象設備の振動データによる最適保全時期の決定について=
まず、当該劣化事象の進展により生じるエネルギ損失量を振動データから推定する手法を述べる。図12にミスアライメント量と対象ポンプ用モータ電力の損失割合を、
図13にアンバランス量と前記モータ電力の損失割合を示す。
【0044】
劣化事象が、ミスアライメントの場合には、前記図10に示す劣化特異無次元特徴量Z5と現場の攪拌機主軸とモータ軸とのミスアライメント量(軸ズレ量)との関係から、振動データから得た当該特徴量Z5の値によりミスアライメント量を推定し、図12から当該劣化によるエネルギ損失量を推定できる。
【0045】
同様に、アンバランスの場合には、前記図11を利用して振動データから求めた劣化特異無次元特徴量Z8よりアンバランス量を推定し、前記図13によって当該劣化によるエネルギ損失量の推定が可能になる。
なお、軸受傷の進展に応じてのエネルギ損失量は、前記のミスアライメントやアンバランスといった劣化事象の場合と比較して小さいので考慮していないが、軸受傷の進展が他の劣化事象と比べて無視できない場合には、本発明と同様な手法で予めエネルギ損失割合を求めておく。
【0046】
次に、当該劣化である軸受傷が進展し、前記傾向監視ステップおよび振動寿命予測ステップにより危険領域への到達時期の予測が可能になるが、当該軸受の新品部品との交換復旧という保全に関しては、エネルギ負担が生じることとなる。このエネルギ負担量は当該軸受部品の製造に必要な二酸化炭素排出量として定量評価が可能である。
【0047】
転がり軸受の素材、製造、輸送に係る二酸化炭素排出量については、(社)日本ベアリング工業会 地球環境対策委員会が調査、検討した報告書に記載されている。
(「転がり軸受のLCA(Life Cycle Assessment)の調査・研究について」)
【0048】
前述した現場でのモータ容量800kWの実機攪拌機に、本発明の診断方法、傾向監視、寿命予測手法を適用した結果、図3に示すように当該劣化事象である軸受傷の振動寿命予測の結果は、T3=31.8ヶ月であった。
前記劣化監視、振動寿命予測の結果を踏まえて、ミスアライメント、アンバランスの劣化進展による電力エネルギ損失の増加、軸受部品の新品交換に伴うエネルギ負担と、ミスアライメントが対象攪拌機内部部品に与える損傷を復旧する場合のエネルギ負担と、当該攪拌機が運転開始時点から攪拌効率が年間当り1.5%ずつ低下することによる電力エネルギ損失の増加と、前記攪拌機の劣化部位の復旧のために停止した日数に応じた生産損失と、を考慮した場合の最適保全時期決定のために経過月数に対して検討した結果を図14に示す。
当該図14の結果から、総合コストが最小になるのは診断開始から28〜30ヶ月経過後であることが分かり、当該劣化した軸受部品の交換やアライメント調整の保全作業は当該期間中に実行するのが最適であることが明らかになった。
【0049】
なお、前記した軸受部品の新品交換を当該軸受の製造に係る二酸化炭素排出量として評価し、当該排出量をコスト換算したエネルギ負担と、およびミスアライメントに対応した当該攪拌機の内部部品の復旧に対応した二酸化炭素排出量として評価し、当該排出量をコスト換算したエネルギ負担と、を保全コストとして経過月々にて算出することによって最適保全時期を決定することもできる。
【0050】
ここで、当該劣化軸受部品は、型式NU306であり当該部品の素材を含んだ製造に対する二酸化炭素排出量は前記「転がり軸受のLCA(Life Cycle Assessment)の調査・研究について」を参照して1,190 kgCO2、対象攪拌機の製造に係る二酸化炭素排出量は「事例 大型ポンプの生産活動におけるLCA」から推定して53,000kgCO2、ミスアライメントによる当該攪拌機の内部損傷に及ぼす割合が約5.5%程度(2,920kgCO2)として、前記軸受部品の排出量と合計すると4,100kgCO2となる。
【0051】
当該二酸化炭素排出量を環境負荷における標準的な単価として170円/kgCO2を採用して、軸受新品部品のエネルギ負担は約20万円、ミスアライメント調整に関するエネルギ負担は約50万円と評価した。
【0052】
なお、上述した実施例では、軸受部品の新品との交換およびミスアライメント(軸ズレ)を修正するアライメント調整作業が負担するエネルギ量として、当該保全により生じる二酸化炭素排出量として評価し、当該排出量を保全コストという金額に換算したが、その理由は当該保全作業のための対象攪拌機の停止による生産損失をコスト(金額)として評価したためであって、保全時期の最適化の目的においては二酸化炭素排出量を統一指標とし、当該排出量を最小化する時期を探索することも可能である。
【0053】
==本実施の形態に係る対象設備の駆動用モータの電流データによる
余寿命予測手法について===
対象設備である攪拌機、駆動用モータ、電気盤、インターネット接続器などの全体構成
を図16に示す。
原料は、原料投入口から間欠的に投入され、攪拌機で攪拌されて製品として製品取出し口から排出される。攪拌機の中では、駆動用モータから軸受を経由して羽根を回転させるようになっている。当該駆動用モータへは電源盤から例えば400Vの電圧で回転エネルギが供給される。インターネット接続器へは当該軸受部に取り付けた加速度センサーからの電圧信号、電気盤から駆動用モータへ供給される電流信号および対象設備の攪拌機の運転開始・停止のON/OFF信号を入力する。
【0054】
対象設備の攪拌機の駆動用モータ電流値の測定例を横軸に運転時間、縦軸に当該モータ電流値をとって図17に示す。まず、駆動用モータを起動すると起動電流が大きく立ち上がり、その後一旦、運転負荷が無い状態での電流値に低下する。次に、原料投入を開始すると攪拌機で製品製造による負荷がかかりモータ電流値は上昇し、間欠的な原料投入―攪拌の仕事量に対応してモータ電流が変化しているのがわかる。そして、運転開始から45分後くらいで原料投入を終了し、製品製造が完了する段階では次第にモータ電流値が低下して無負荷の電流値になっている。
【0055】
上記する原料投入時期から原料投入を終了し、製品製造が完了するまでの当該駆動用モータの電流値の時間変化を、金属疲労に関与する攪拌機の回転部分に印加される変動応力の繰り返しの評価を説明するために、図18にモータ電流値と印加応力との関係を、図19に変動応力の繰り返し回数と応力幅の関係を、図21に軸受材料の応力―繰り返し曲線(通常SNカーブと呼ばれる)を示す。
【0056】
図18は、対象設備である攪拌機駆動用モータの定格電流値15(A)と攪拌機の回転における軸受部位での印加応力の設計値8.0(Kg/mm2)とが対応していることから、原点とを結ぶ直線によって得ることができ、当該駆動用モータ電流値を計測することにより、図18を使って軸受部での印加応力を推定することが可能となる。
【0057】
図20には、前記する図17のモータ電流値の時間変化の図を90度回転させ上から下へ時間が経過するようにし、1回目の原料投入開始時 1 から2、3、4・・・、製品製造完了時 9 までを、応力の繰り返し評価の対象期間としている。本実施例では4回の原料投入の場合を示している。
当該モータ電流値の極大値、極小値に着目し、ある応力幅と当該繰り返し回数の分析は、レインフロー法という計測法を適用すればよい。このレインフロー法では、図20において時間経過とともに 1 から 4 へ、2 から 9 へ、・・・と、半サイクルの応力幅とサイクルの回数を得ることが可能となる。その結果、各サイクルでの応力幅は、サイクル (イ);7.1Kg/mm2、(ロ);5.6Kg/mm2、(ハ);1.9Kg/mm2、(ニ);1.9Kg/mm2
(ホ);2.2Kg/mm2、(ヘ);1.8Kg/mm2、となる。
ここで、図20の当該モータ電流値の極大・極小値に対応する印加応力の大きさは、上記した図18を利用して変換することによって得ることができ、図19に示す。
なお、当該するレインフロー法については、[非特許文献1]に詳述されている。
[非特許文献1]
遠藤達雄ほか、「変動応力を受ける材料の疲れー疲れ寿命の推定(第一報)」、
日本機械学会講演論文集 No.185、pp.41-48
【0058】
次に、上記する図20によって得た応力サイクル(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)を基に、図21に示す軸受材料の応力―繰り返し曲線から各サイクルでの疲労限界となる繰り返し回数 N を求める。その結果、サイクル(イ);Nイ=1.02E+05、(ロ);Nロ=1.25E+05、(ハ);Nハ=3.08E+05、(ニ);Nニ=4.91E+05、(ホ);Nホ=4.91E+05、
(ヘ);Nヘ=6.02E+05 となる。
【0059】
図21によって求めた各応力サイクルでの疲労限界となる繰り返し回数 N に対して、
本実施例での運転による対象設備である攪拌機の軸受部位の余寿命は、次の[数5]によって得る寿命消耗率 D から求めることができる。
【0060】
【数5】

なお、当該寿命消耗率の定義については[非特許文献1]に記載されている。
【0061】
つまり、本実施例での1回の運転によって運転時間が約70分であったから本運転
パターンを 繰り返すものとすれば、金属疲労による軸受けの寿命は、
70(分)/ 5.36E-05 = 1.31E+06 (分) = 2.5年(30カ月)
であると推定できる。

【0062】
==対象設備の振動データおよび電流データにより寿命予測し、最適保全時期を
決定するための装置==
次に、上述した対象設備の簡易診断、精密診断、劣化傾向監視、寿命予測、最適保全時期決定方法を実現するための対象設備の最適保全時期決定支援装置(以下、当該保全支援装置とも呼ぶ)の一例について、図22を用いて説明する。図22は、保全支援装置の一例を示す概念図である。
【0063】
本実施の形態において、当該保全支援装置は当該保全支援装置本体3と、振動センサ1と、電流センサ2とからなる。そして当該保全支援装置本体3は、振動センサおよび電流センサ2からのアナログの電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器100と、図1に記載した簡易診断、精密診断、傾向監視、寿命予測、エネルギ損失評価、復旧エネルギ負担評価、余寿命算出、最適保全時期決定の計算および判定、処置を実行するメイン計算機200と、劣化エネルギ損失データベース300と、復旧エネルギ負担データベース400と、軸受材料のSNカーブデータベース500と、当該メイン計算機200での結果を表示する結果表示器600と、を備えている。
【0064】
メイン計算機200は、上述した寿命予測や最適保全時期決定方法を実現するためのコンピュータプログラム200aを有しており、当該コンピュータプログラム200aをメイン計算機200に設けられたCPUが処理することにより、上述した寿命予測や最適保全時期決定方法が実行される。前記コンピュータプログラム200aは、上述した寿命予測や最適保全時期決定方法を実行するためのコードから構成されている。なお、当該メイン計算機200は、一つの装置ではなく、複数の装置からなることとしてもよい。また、かかる際に、コンピュータプログラム200aは、複数の装置の各々に分かれて、備えられていることとしてもよい。
結果表示器600は、対象設備の良否判定、劣化状態監視、寿命予測、最適保全時期決定を実行する当該保全支援装置3の操作者に各種情報を与える機能を有する。
【0065】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係る対象設備の簡易診断、精密診断、劣化傾向監視、寿命予測、最適保全時期決定方法を説明したが、上記発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0066】
本発明の上記した実施例では、当該劣化傾向監視での注意領域において
(Vi / Vi-1 ) ≧ 1.0 ( < 1.0 のとき劣化は進展せず)の全ての値の中で
(1)最大値 ・・・・劣化部分への振動エネルギが急峻な進展を示す場合
(2)平均値 ・・・・進展の変動が中程度あり、平均化にて代表できる場合
(3)最小値 ・・・・振動エネルギの劣化進展に与える影響が比較的小さい場合
のいずれかを採用して、第二次注意閾値を超えたときに寿命予測を実行することも本発明の実施形態の一つである。
【0067】
つまり、前記実施例では、第二次注意閾値を超えた時点での直近のZ1とVの増減によって予測したが、注意領域における劣化状態の進展が変動する場合には、直近の状況のみでは予測精度が低下するので、第一次注意閾値を超え、第二次注意閾値までの注意領域全般での劣化特性を平均化するか、もしくは最大、最小値を採用することによって劣化進展を代表することも本発明の他の実施形態の一つである。

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の全体フローチャートである。
【図2】3つの判定手法の総合判定手順及び監視処置の分類である。
【図3】軸受傷、ミスアライメント、アンバランスに対応した劣化特異無次元特徴量 の推移及び寿命予測結果を示した図である。
【図4】軸受傷に対応する劣化特異特徴量の推移である。
【図5】図4に対応する振動速度平均値の実測値の推移である。
【図6】劣化特異特徴量と振動速度平均値との組合せによる劣化進展のクラス分類図 である。
【図7】劣化傾向監視における累乗則の指数の変化図である。
【図8】軸受傷の劣化進展における累乗則による予測値と実測値の推移である。
【図9】軸受傷の大きさと当該劣化特異無次元特徴量との関係を示す図である。
【図10】ミスアライメント量と当該劣化特異無次元特徴量との関係を示す図である
【図11】アンバランス量と当該劣化特異無次元特徴量との関係を示す図である。
【図12】ミスアライメント量と当該電力損失の割合との関係を示す図である。
【図13】アンバランス量と当該電力損失の割合との関係を示す図である。
【図14】本発明の最適保全時期決定支援の実施例を示す図である。
【図15】本発明の最適保全時期決定のための総合コストの評価図である。
【図16】本発明の実施例の対象設備の構成図である。
【図17】本発明の実施例のモータ電流値の運転時の変化状況を示す図である。
【図18】本発明の実施例の印加応力とモータ電流との関係を示す図である。
【図19】本発明実施例での変動応力の繰り返し回数と応力幅の関係を示す図である。
【図20】本発明実施例での電流値変化からの応力の繰り返しを評価した図である。
【図21】本発明実施例での軸受材料の応力―繰り返し曲線から疲労限界となる繰り 返し回数を検討した図である。
【図22】本発明実施例の寿命予測・最適保全時期決定の支援装置を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 振動センサ
2 電流センサ
3 最適保全時期決定支援装置
100 A/D変換器
200 メイン計算機
200a コンピュータプログラム
300 劣化エネルギ損失データベース
400 復旧エネルギ負担データベース
500 材料のSNカーブデータベース
600 表示器
400 復旧エネルギ負担データベース
500 材料のSNカーブデータベース
600 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象設備の電動機の電力もしくは電流の時間変化に基づき、軸受部位の変動応力の繰り返し回数を推定し、寿命消耗率を求めて余寿命を決定するステップ1と、軸受部位に取り付けた振動センサから得られる振動速度の時間変化率の累乗則により、当該劣化状態の進展を追跡し、危険領域への到達時点を推定するステップ2と、前記ステップ2の振動診断の結果、注意領域の晩期において、前記ステップ1とステップ2とより余寿命を決定するステップ3と、前記ステップ3においてステップ1とステップ2の二つの余寿命期間から当該対象設備の寿命を決定することを特徴とする対象設備の寿命決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のステップ1で決定した余寿命とステップ2で決定した危険領域到達時期とを比較し、いずれか短い時期を余寿命とすることを特徴とする対象設備の寿命決定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のステップ3において、ステップ1による余寿命期間とステップ2による危険領域到達時期との間に、ある閾値を超える差異がある場合には、振動・電力以外の油分析もしくは超音波信号等による精密診断を行って余寿命を決定することを特徴とする対象設備の寿命決定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の振動センサからの時間信号と電力もしくは電流センサからの時間信号と対象設備の電動機への電源ON−OFF信号とを入力信号とし、当該ON−OFF信号をトリガーとして振動センサーからの時間信号の取り込み時期を決定することを特徴とする対象設備の寿命決定方法。
【請求項5】
請求項1に記載の対象設備の診断方法を実現するためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
対象となる設備の振動データとして、振動変位、振動速度、振動加速度、振動加速度の
歪度、振動加速度の尖度、及び、振動加速度の波高率のうちの少なくとも一つのデータと、振動加速度の波形データと、を取得するためのセンサと、劣化エネルギ損失データベースと、復旧エネルギ負担データベースと、軸受材料のSNカーブデータベースと、請求項
5に記載のコンピュータプログラムを備えたコンピュータと、を有することを特徴とする
対象設備を診断するための装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−139248(P2010−139248A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313148(P2008−313148)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(500262511)
【Fターム(参考)】