説明

封着樹脂組成物及びそれを用いた封着構造体

【課題】外部の空気や水蒸気が内部空間に浸透することなく、しかも内部空間から不活性ガスなどの封入ガスが漏出しないように基板間周縁部を封着できる封着樹脂組成物、およびそれを用いたディスプレイ素子、水晶振動子、あるいは複層ガラスなどの封着構造体。
【解決手段】所定の間隔を保持して対向された2枚の基板によって構成される基板間周縁部を封着し、その内部空間が減圧または不活性ガス雰囲気に維持された封着構造体を形成するための封着樹脂組成物であって、基板間周縁部が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂(a)と少なくとも1種の熱硬化性樹脂(b)とを含む樹脂層で封着され、しかも、その外周部分に金属又は無機材料(c)からなる薄膜層が形成されることを特徴とする封着樹脂組成物などによって提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封着樹脂組成物及びそれを用いた封着構造体に関し、外部の空気や水蒸気が内部空間に浸透することなく、しかも内部空間から不活性ガスなどの封入ガスが漏出しないように基板間周縁部を封着できる封着樹脂組成物、およびそれを用いたディスプレイ素子、水晶振動子、あるいは複層ガラスなどの封着構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ素子をはじめ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)、VFD(蛍光表示管)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの薄型のディスプレイ素子が注目され、さらに高機能を有する素子の開発が進められている。
【0003】
液晶ディスプレイ素子には、素子内部を減圧に保つ機能を必要としないことから、通常ガスバリア性やアウトガスの特性が要求されていない。しかしながら、PDP、FED、VFDなどのディスプレイ素子においては、素子の内部空間が減圧され真空状態に維持されているため、基板間の周縁部を封着する封着樹脂には、内部空間から不活性ガスのリークを防止する機能、すなわち減圧を維持する機能が必要とされている。また、有機ELに関しては、内部の有機EL層を構成する有機分子が酸素や水分に対して弱く、輝度低下や寿命短縮といった問題が生じるため、外部からの水蒸気や酸素の進入を防ぐ機能が必要である。
【0004】
PDPなどにおいては、基板を封着した際に発生する不純物を処理するために、封着後に内部空間を高真空に保つ工程が必要になる場合がある。例えば、PDPを製造する際、基板を封着した後、約300℃以上の高温下で加熱排気を行い、水分や炭素などの不純物を排出してから放電ガスを導入する工程を付加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これまでPDP、FED、VFDなどでは、封着樹脂として鉛ガラスが主に用いられている。ところが鉛ガラスは、それを融着焼成するのに最低でも450℃近い温度を必要とするため、素子内の蛍光体の損失が大きくなって性能が低下するだけでなく、環境に問題となる鉛を含有しているので使用上の制約がある。
【0006】
また有機ELに関しては、有機分子では封着樹脂として熱硬化性樹脂、または紫外線硬化型樹脂が使用されているが、樹脂中の内部に残存していた水分の混入が問題となることが多く、現在樹脂改良または封止方法の改善が盛んに進められている(例えば、特許文献2参照)。ここには、封着用に有機樹脂を用いていない有機EL素子の積層構造体が開示され、積層構造体の外表面に、電気絶縁性無機化合物からなる保護層を設けた後、この保護層の外側に、電気絶縁性ガラス、電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁性気密流体から選択されるシールド層を設けることが記載されている。
【0007】
一方、液晶ディスプレイ素子においては、シリカなどのフィラーを含有するエポキシ樹脂が、ガラス基板間を封着する材料として広く利用されている。それは、エポキシ樹脂の硬化物が、耐透湿性や機械的強度に優れているためである。そこで、PDPなどの封着構造体でも、このようなエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂単体からなる低温封着組成物を用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
これによれば鉛ガラスよりも低温で基板間の周縁部を封着できるが、水蒸気、ヘリウム(He)などの不活性ガス、さらには樹脂組成物の内部から発生するアウトガス等を長期にわたって遮蔽する効果が小さい。
【0009】
一般に、例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂は、硬化時にアウトガスを発生し、また、例えばナイロンのような熱可塑性樹脂は、融点以上の温度で分解してアウトガスを発生するという特徴を持っている。このような樹脂を封着用組成物として使用した場合、熱による封着時にアウトガスが発生し、内部空間の減圧状態、又は不活性ガス雰囲気下が破られたり、外部からの空気、又は水蒸気を浸透させたりするという問題があった。
【0010】
また、樹脂を使用した封着用組成物では、鉛ガラスとは異なり、分子間に隙間が存在しているため、完全に外部の空気や水蒸気を遮蔽し、その上内部空間の減圧状態や不活性ガスの封入状態を保つことは難しい。
【0011】
特に、分子サイズが小さいHeガスの浸透、または漏出を防ぐことは困難であり、内部空間にHeガスを封入しているPDPの封着時には問題になる可能性があった。一方、有機ELの封着部分にも水蒸気の浸透を完全に防ぐことが求められているが、一般的に樹脂の吸水率は0%ではない為、封着用材料として使用することに問題があった。そのため、今後、ますます大画面化のニーズが強まっているPDP、有機EL等においては、製品の長期信頼性を維持できないとして問題視されていた。
【0012】
一方、水晶振動子は、周波数および時間の基準源として、様々な電子機器に用いられている。水晶振動子には、絶縁性ベース形状が平坦板形状の表面実装型気密端子を用いたもののほかに、絶縁性ベース形状が凹形状の場合がある。最近では、ダイオードやコンデンサなどの電子部品と同様に、小型化および表面実装化が要求されている。そして、水晶振動子の組立工程やガラスエポキシ、ガラスBTなどの基板への実装工程や基板実装後の冷熱サイクルなどによる外部からの衝撃を緩和できる封着構造体が求められている。
【0013】
また、建築物のガラス窓やショーケースには、従来から単板ガラスが使用されているが、熱貫流率が大きく、冷暖房負荷を増大させていた。このガラス板部の断熱性を高めるために、一対の板ガラスの間に断熱層となる空気層を設け、周縁をシール材で密封し一体的に構成した複層ガラスが提案され、広く知られるようになってきている。この複層ガラスは、ガラス板間に断熱効果の高い空気層があるため、冷暖房負荷を極めて有効に軽減できる。しかし、前記空気層のため複層ガラスの厚さが大きくなり、この複層ガラスを取り付けると、サッシュを含めて美観が損なわれてしまう。
このようなことから、最近、複層ガラスの前記空気層を真空にして2枚のガラス板の間隙部を縮小しても、所望の断熱効果が得られるようにした真空複層ガラスが開発された。この真空複層ガラスは、前記間隙部に多数のスペーサが点在配置され、周縁封着材とともに、真空複層ガラスを構成するガラス板が減圧状態においても所定の間隔を確保できるようにしている。以下、真空複層ガラスを単に複層ガラスと記述する。
しかし、この2枚のガラス板は、外見上平坦にみえるが、板厚偏差、ウエーブなどを無くすことはできない。また、周縁封着材の厚みをスペーサの厚み(高さ)と同一にするのは至難である。また、スぺーサが振動や衝撃でしばしば所定の位置より動き、美観が低下するだけでなく、ガラス板の応力状態のバラツキが大きくなり、強度的に弱くなることが指摘されている。
【0014】
このような状況下、鉛を含有せず、水蒸気、Heガスなどの不活性ガスやアウトガス等の長期にわたる遮蔽効果が大きく、PDP、有機EL等の長期信頼性が確保できる封着樹脂組成物の出現が切望されていた。
【特許文献1】特開2000−243280号公報
【特許文献2】特開平5−089959号公報
【特許文献3】特開2003−183624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、外部の空気や水蒸気が内部空間に浸透することなく、しかも内部空間から不活性ガスなどの封入ガスが漏出しないように基板間周縁部を封着できる封着樹脂組成物、およびそれを用いたディスプレイ素子、水晶振動子、あるいは複層ガラスなどの封着構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定間隔を保持して対向された2枚の基板の基板間周辺部を封着する際に、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂を多層構造とするとともに、外周部分である樹脂表面に金属やガラス、又はセラミックスなどの無機材料を用いて薄膜層を設けることにより、得られる封着構造体は、この内部空間の減圧状態、又は不活性ガス雰囲気が保たれ、さらに外部からの空気や水蒸気の浸透を完全に妨げることができ、PDP、有機EL等のディスプレイ素子に応用することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、所定の間隔を保持して対向された2枚の基板によって構成される基板間周縁部を封着し、その内部空間が減圧または不活性ガス雰囲気に維持された封着構造体を形成するための封着樹脂組成物であって、基板間周縁部が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂(a)と少なくとも1種の熱硬化性樹脂(b)とを含む樹脂層で封着され、しかも、その外周部分に金属又は無機材料(c)からなる薄膜層が形成されることを特徴とする封着樹脂組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、熱可塑性樹脂(a)の融点が、160℃以上であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、熱可塑性樹脂(a)が、ポリアミド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、又はエチレン−ビニルアルコール共重合体から選ばれるいずれか1種以上、であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、熱硬化性樹脂(b)が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂又はフェノール樹脂から選ばれるいずれか1種以上、であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、金属又は無機材料(c)が、金属、ガラス、又はセラミックスから選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0022】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、ガラスが、常温反応型ガラスコーティング材であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0023】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記樹脂層は、表面をカップリング処理した無機微粒子を含有し、その含有量が熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)からなる樹脂成分の合計量に対して30〜95質量%であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0024】
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)の割合が、重量比で1:30〜30:1であることを特徴とする、封着樹脂組成物が提供される。
【0025】
一方、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明に係る封着樹脂組成物によって、基板間周縁部が封着されてなる封着構造体が提供される。
【0026】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、基板間周縁部がそれぞれ独立して互いに隣接した多層構造の樹脂層で封着され、その外側に薄膜層が形成されてなる封着構造体が提供される。
【0027】
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、樹脂層は、基板間周縁部の中央部分に形成される第1有機樹脂層と、その両側部分に隣接して形成される第2有機樹脂層からなることを特徴とする、封着構造体が提供される。
【0028】
さらに、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、第1有機樹脂層が熱硬化性樹脂により形成され、第2有機樹脂層が熱可塑性樹脂によって形成されるか、又は第1有機樹脂層が熱可塑性樹脂により形成され、第2有機樹脂層が熱硬化性樹脂によって形成されていることを特徴とする、封着構造体が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の封着樹脂組成物は、鉛を含有せず、樹脂成分として熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含み、これを用いて得られた封着構造体は、基板間周縁部が樹脂層で封着され、その外側に無機材料による薄膜層が形成されているため、水蒸気、Heガスなどの不活性ガスやアウトガス等の長期にわたる遮蔽効果が大きく、内部が減圧に維持される必要があり、かつ耐熱性を要求されるPDP、有機EL等のディスプレイ素子において優れた性能を発揮する。また、特別な装置を用いることなく容易に基板上に描画することができることから、本発明の封着樹脂組成物の工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
1.封着樹脂組成物
本発明の封着樹脂組成物は、所定の間隔を保持して対向された2枚の基板によって構成される基板間周縁部を封着し、その内部空間が減圧または不活性ガス雰囲気に維持された封着構造体を形成するための封着樹脂組成物であって、基板間周縁部が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂(a)と少なくとも1種の熱硬化性樹脂(b)とを含む樹脂層で封着され、しかも、その外周部分に金属又は無機材料(c)からなる薄膜層が形成されることを特徴とする。なお、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)のいずれか、又は両者には無機微粒子を配合することができる。
【0031】
(a)熱可塑性樹脂
本発明において用いる熱可塑性樹脂は、加熱により可塑性を示し冷却すると硬化し、さらに加熱すれば再び可塑性を示すような可逆的熱特性を持つ合成樹脂であり、かつ融点が120℃以上で熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高いものである。この熱可塑性樹脂は、原料モノマーの単独重合体だけでなく、他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品なども含まれる。
【0032】
例えば、ポリブテン樹脂(mp.125−135℃)、ポリメチルペンテン樹脂(mp.230−245℃)などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂(mp.243℃)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール樹脂(mp.167−178℃)、ポリカーボネート樹脂(mp.220−260℃)、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、エチレン−ポリテトラフロロエチレン共重合樹脂、4ナイロン(mp.267℃)、6ナイロン(mp.223℃)、6,6ナイロン、4,6ナイロン、ナイロン6T、ナイロン9T、芳香族系ナイロン等のポリアミド樹脂などの単独重合体や共重合体が挙げられる。
【0033】
これらの熱可塑性樹脂は、特に限定されることなく単独で又は混合して使用できる。不活性ガスに対するガスバリア性に優れた樹脂、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、又は芳香族ナイロン、ナイロン9T等のポリアミド樹脂は、数種選択して組み合わせるのが好ましい。
【0034】
本発明において用いる熱可塑性樹脂は、その融点が120℃以上であり、熱硬化性樹脂の硬化温度よりも高いものでなければならない。それは、加熱により可塑性を示し冷却すると硬化して基板間を封着するが、その後、さらに熱硬化性樹脂を硬化させるために硬化温度で加熱した際、再び可塑性を示して流動化するので封着力が低下してしまうためである。したがって、熱硬化性樹脂の硬化温度を勘案すると、熱可塑性樹脂の融点は、160℃以上、特に250℃以上であることが望ましい。
【0035】
熱可塑性樹脂には、プラスチック成形用滑剤や種々の安定剤等を添加することができる。滑剤としては、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類);ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類;ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物;窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
【0036】
また、安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2、4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダード・アミン系安定剤のほか、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤等が挙げられる。
【0037】
本発明において、各成分の混合方法は特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機あるいは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して実施される。
こうして、各成分を混合することで、熱可塑性樹脂(組成物)は、パウダー、ビーズ、ペレットあるいはこれらの混合物の形で得られるが、取扱い易い点で、ペレットが望ましい。得られた組成物は、各種の熱可塑性樹脂成形機、好ましくはホットメルト・ガン等により塗布できるものとなる。
【0038】
(b)熱硬化性樹脂
一方、本発明で用いられる熱硬化性樹脂は、一旦硬化すると三次元の網目構造を形成し、再加熱しても軟化溶融しない不可逆的熱特性をもつ合成樹脂である。
【0039】
熱硬化性樹脂は、基板間周縁部を多層構造の樹脂層で封着するために、前記熱可塑性樹脂と組み合わせて用いられる。そのため、熱硬化性樹脂は、硬化温度が熱可塑性樹脂の融点よりも低いものを用いることが望ましい。熱硬化性樹脂の硬化温度は、樹脂の種類にもよるが例えば100〜250℃、特に120〜220℃であることが好ましい。硬化温度が100℃未満の樹脂では、熱可塑性樹脂を塗布した際に硬化を開始してしまう恐れがあり、一方、250℃を超える樹脂では、硬化に時間がかかり生産性が低下するため好ましくない。
【0040】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂等が挙げられ、いずれか単独もしくは2種以上の熱硬化性樹脂混合物として用いられる。
【0041】
エポキシ樹脂の場合、脂環式エポキシ樹脂、水素添加型エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
脂環式エポキシ樹脂は、シクロヘキサンなどの脂環部分とエポキシ部分とを有する熱硬化性樹脂である。この脂環式エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などに代表される、ベンゼン環を有するエポキシ樹脂を水素化反応してシクロヘキサン環化した水素添加型エポキシ樹脂や、シクロヘキセン環の二重結合を過酢酸で酸化してエポキシ化した、脂肪族環状エポキシ樹脂などが挙げられる。例えば、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、(3,4−3’,4’−エポキシシクロ)ヘキシルメチルヘキサンカルボキシレート、ポリ(エポキシ化シクロヘキセンオキサイド)などがある。これらの脂環式エポキシ化合物は、単独で用いても、混合して使用しても差し支えない。
【0042】
また、水素添加型エポキシ樹脂であれば、ベンゼン環のシクロヘキサン環化率が80%以上、好ましくは90%以上で、かつ不純物残留成分となる全塩素の含有率が0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であることが望ましい。シクロヘキサン環化率は、ベンゼン環がシクロヘキサン環に変化した割合で、核磁気共鳴分析装置などで求めることが出来る。
そして、芳香族エポキシ樹脂は、1以上の芳香族核と2以上のエポキシ基を有する化合物であり、脂環を有しない化合物である。芳香族エポキシ樹脂におけるエポキシ基は、グリシジル基であることが好ましい。代表的芳香族エポキシ樹脂は、ポリフェノール類のグリシジルエーテルであり、また芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステル、芳香族アミンのグリシジルアミノ化物などがある。またこれらグリシジル化合物のオリゴマー化物も使用できる。具体的な芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックポリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリンなどがある。
【0043】
本発明で使用する硬化剤は、上記の熱硬化性樹脂と反応し、透明な硬化物が得られるものであれば何ら制限は無い。例えば、ヒドラジド系硬化剤、酸無水物類やジシアンジアミドおよびその変性物など様々な硬化剤を使用でき、それらは単独でも複数種で使用しても差し支えない。
【0044】
このようなヒドラジド系硬化剤としては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボジヒドラジド、或いは1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどが挙げられ、単独で用いても混合して使用しても構わない。
【0045】
酸無水物であれば、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸やヘキサヒドロ無水フタル酸等の、構造中の6員環部分がシクロ環になっているものが望ましく、さらには、一液性潜在性硬化剤として作用し、硬化物もより透明なものが得られやすい、ヒドラジド系硬化剤が望ましい。
【0046】
硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等や、その有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫やアルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物類;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三ふっ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物、塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0047】
さらには、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、アミンをエポキシ樹脂等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤、イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤、アミン塩型潜在性硬化促進剤、ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型で熱カチオン重合型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。これらの硬化促進剤は単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
ここで、熱硬化性樹脂(主剤:エポキシ樹脂)と硬化剤の使用量は、重量比率で、(a):(c)が97:3〜80:20、好ましくは95:5〜85:15とすることが望ましい。これは(c)が3未満では粘度が低いままで、粘ちょうな液状樹脂物質とはならず、(c)が20より多いと硬化反応が進行しすぎて、液状とならない場合があるためである。
【0049】
この熱硬化性樹脂は、上記樹脂成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。例えば、溶媒を配合して組成物の粘度を下げ、組成物の塗工性を向上させることができる。また、溶媒を使用することにより、上記各成分を混合する際の混合性を向上できる。
【0050】
溶媒としては、通常の溶媒が使用できる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジエチルエーテル、エタノール、プロパノール、イソブタノール、四塩化炭素、アセトン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒を用いることができる。
【0051】
この他、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)及び硬化剤と反応しない溶剤としては、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシジペンタンイソブチレート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−イソブチレート、イソブチルブチレート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、或いは2−ヒドロオキシプロパン酸エチル等が挙げられる。
【0052】
また、加熱時に熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)および硬化剤と反応し得る溶剤としては、フェニルグリシジルエーテル、エチルヘキシルグリシジルエーテルや、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる
【0053】
上記樹脂層となる熱可塑性樹脂(a)及び/又は熱硬化性樹脂(b)には、封着部分の性能を改善するために無機微粒子を含有させることができる。
無機微粒子としては、粒径が50μm以下のシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物が使用できる。基板がガラス基板であれば、無機微粒子としてシリカを用いることが好ましい。その含有量は、樹脂組成物全体に対して、30〜95重量%、好ましくは35〜90重量%とすることができる。本発明においては、無機微粒子は任意成分であるが、封着部分の耐熱性を高めるだけでなく、強度を高めガスのリークをさらに抑制することが期待できる。含有量が30重量%未満ではその効果が小さく、95重量%を超えると塗布性が悪化する。
【0054】
また、無機微粒子には、微粒子重量に対して1〜5重量%のエポキシシラン、アミノシランなどのシランカップリング剤で表面処理を実施する必要がある。表面処理実施しない場合、樹脂と無機微粒子の接着性が低下し、水蒸気、ガス等のリークの原因となる。
【0055】
(c)金属又は無機材料
本発明において、金属又は無機材料は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の多層構造を有する膜の外周部分に薄膜層を形成するための材料である。これには金属、ガラス、セラミック、及び金属とセラミックスの複合材などが用いられ、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂の遮蔽性を保つために、樹脂表面に形成される。
【0056】
ディスプレイ素子を製造する工程では、一般に上記のような熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)は、硬化時にアウトガスを発生し、また、熱可塑性樹脂(例えばナイロン)は、融点以上の温度で分解してアウトガスを発生するという特徴を持っている。このような有機樹脂を封着樹脂組成物として使用した場合、加熱による封着時にアウトガスが発生し、内部空間の減圧状態、又は不活性ガス雰囲気下が破られたり、外部からの空気、又は水蒸気を浸透させたりする場合がある。
【0057】
また、有機樹脂を使用した封着樹脂組成物では、鉛ガラスとは異なり、分子間に隙間が存在しているため、完全に外部の空気や水蒸気を遮蔽し、その上内部空間の減圧状態や不活性ガスの封入状態を保つことは難しい。
【0058】
特に、分子サイズが小さいHeガスの浸透、または漏出を防ぐことは困難であり、内部空間にHeガスを封入しているPDPの封着時には問題になる可能性があった。一方、有機ELの封着部分にも水蒸気の浸透を完全に防ぐことが求められているが、一般的に樹脂の吸水率は0%ではない為、封着用材料として使用できない場合があった。
【0059】
そこで、本発明では樹脂層の外側に金属、ガラス、又はセラミックス及び金属とセラミックスの複合材などの薄膜層を形成するようにしている。
薄膜層を形成するための材料としては、Ti、Cr、Al、Cu、Zn、Ni、Sn、Fe、Mn、Coなどから選ばれる1種以上の金属、Al、Si、Ti、Zr、Bなどの金属酸化物(アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ボリアなど)、金属窒化物、金属炭化物、炭窒化ホウ素(BCN)系超硬質材から選ばれる1種以上のセラミックスなどがある。これらのうち、好ましいのは金属またはガラスである。
【0060】
好ましい無機材料であるガラスには、常温で塗布した後、乾燥させて薄膜層となる材料、例えば、ガラスの薄膜層を形成するヒートレスグラス、シラグシタールのような常温反応型ガラスコーティング材がある。この他に、アルコキシシランを主成分とし、場合により、これにコロイダルシリカを配合した熱硬化性の塗料も挙げられる。
【0061】
ヒートレスグラスは、IPA(イソプロピルアルコール)を希釈剤とする液中ガラス成分が40〜57%で、乾燥後にSiOを主成分とする非晶質のガラス膜が得られる無機質コーティング剤(塗料)である。これには、SiOなどを主剤とする1液型のものと、液状の主剤を硬化するための架橋剤、硬化触媒などの添加剤と組み合せて用いる2液型のものがある。主剤としては、液状のメチル基もしくはフェニル基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。架橋剤としては、アルコキシ基、アシロキシ基、オキシム基などの官能性側鎖を有するオルガノシロキサンが挙げられる。また、硬化触媒としては、Zn、Al、Co、Sn等の含金属有機化合物、B+ハロゲンなどが挙げられる。前記主剤成分には、必要に応じAl、TiO、ZrOなどの顔料・骨材が配合される。
【0062】
ガラス膜の成分がSiOとなるヒートレスグラス GS600−1をはじめ、ガラス膜の主成分であるSiOのほかに、Al、TiO、あるいはZrOを含むヒートレスグラスがあり、それぞれGS600−2、GS600−3、GS600−4として伊藤忠非鉄マテリアル(株)、(株)ミクロ技術研究所などで製造されている。また、シラグシタール(SIRAGUSITAL)は、上記のヒートレスグラス GS600−1と同様に、IPAを希釈剤とする液中ガラス成分が57%、乾燥後にSiOの成分が得られる無機質コーティング剤(塗料)である。
【0063】
ヒートレスグラスの硬化機構は、主剤のオルガノポリシロキサン官能基が、第一段階で空気中の水分により加水分解を受けて水酸基に変化し、第二段階で該オルガノポリシロキサンの水酸基を架橋剤であるオルガノシロキサンの官能基がアタックし、硬化触媒の作用も受けて脱アルコール反応を起こし、三次元構造の高分子化合物のポリシロキサン硬化体、すなわち常温領域において金属酸化物ガラスを形成するものと考えられている。
【0064】
2.封着構造体
本発明の封着構造体は、基板間周縁部が上記封着樹脂組成物の樹脂層で封着された封着構造体、すなわち、所定間隔を保持して対向された2枚の基板の基板間周縁部がそれぞれ独立して互いに隣接した多層構造の樹脂層で封着され、及びその外側に薄膜層が形成されており、内部空間に不活性ガスが封入され、又は減圧に維持された封着構造体である。
【0065】
基板としては、ディスプレー素子、水晶振動子や複層ガラスを構成できるものであれば、ガラス基板、金属やセラミックスなどの耐熱性基板でよく、特に限定されないが、2枚の基板のうち少なくとも一方はガラス基板であることが好ましい。基板の一方をガラス基板とした場合、他方は金属やセラミックスなどの耐熱性材料からなる基板を用いてもよい。
【0066】
基板である下板と上板のサイズは特に限定されず、小面積のものから大面積のものまで使用できる。例えば、縦50〜500mm、横50〜800mm、厚さ3〜10mmのものなどである。下板と上板のいずれかには排気用に、直径(一辺)が3〜10mmの孔を有するものが適している。なお、水晶振動子の場合は、縦横、厚さがこれら下限値よりも小さく、通常は直径(一辺)が10mm以下であり、最近は、小型化、薄膜化が進み5mm以下という小さなものが増えている。これに対して、複層ガラスの場合は、縦横、厚さがこれら上限値を超えるものがある。下板と上板のいずれかには、直径(一辺)が3〜10mmの排気用の孔を設けることが好ましい。
【0067】
本発明においては、2枚の基板の間にスぺーサーを介在させることができる。スぺーサーは、前記基板の中央部分が切り抜かれた枠状の板状体である。外形(縦、横の長さ)は基板(下板と上板)のサイズと同じであるが、例えば、内形(中空部分)は縦30〜800mm、横30〜2480mm、厚さ0.5〜5mmとすることができる。これにより、基板間周縁部の幅が、20〜50mm確保される。なお、水晶振動子の場合は、縦横、厚さがこれら下限値よりも小さく、通常は10mm、あるいはそれ以下である。また、複層ガラスの場合は、縦横、厚さがこれら上限値を超えるものがある。
【0068】
2枚の基板間周縁部は、互いに隣接する多層構造の樹脂層によって封着されている。多層構造の樹脂層は、樹脂成分として、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)とを含むとともに、封着により得られる樹脂層がそれぞれ独立して形成され、互いに隣接した多層構造になる。多層構造とは、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)とが各1層である場合だけでなく、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)のいずれかが2層以上である場合を包含している。基板間周縁部において、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)の位置関係は特に限定されない。熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)とが各1層である場合、熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)は、どちらが内部空間側に位置していても良い。
【0069】
このように本発明の封着構造体は、樹脂層が、基板間周縁部の中央部分に形成される第1有機樹脂層と、その両側部分に隣接して形成される第2有機樹脂層からなることを特徴とする。本発明の封着構造体は、第1有機樹脂層が熱硬化性樹脂により形成され、第2有機樹脂層が熱可塑性樹脂によって形成されるか、又は第1有機樹脂層が熱可塑性樹脂により形成され、第2有機樹脂層が熱硬化性樹脂によって形成されていることが好ましい。
ただし、基板間周縁部の中央部分が熱硬化性樹脂の樹脂層によって封着され、その熱硬化性樹脂層の両側に熱可塑性樹脂層が隣接していることが好ましい。それは、樹脂成分のうち、熱可塑性樹脂(a)が主としてガスのリークを抑制する機能を担うのに対して、熱硬化性樹脂(b)が主として基板同士を接着する機能を担っているためである。
【0070】
熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)のいずれか、又は両者には無機微粒子を配合できる。無機微粒子は任意成分であるが、前記の通り、封着部分の耐熱性を高めるだけでなく、樹脂層の機械的強度を高めガスのリークをさらに抑制する。また、スぺーサーとしてシリカなどのセラミック粒子を樹脂組成物に含有させた場合、粒径が比較的大きいセラミック粒子が沈降して相分離することを防止する効果もある。
【0071】
熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)の割合は、特に限定するわけではないが、重量比で30:1〜1:30であることが好ましい。熱可塑性樹脂(a)よりも熱硬化性樹脂(b)の量が極端に少ない、30:1未満であると、封着部の機械的強度が小さくなり、一方、熱可塑性樹脂(a)よりも熱硬化性樹脂(b)の量が1:30よりも多くなりすぎると、ガスのリークを十分には抑制できない場合があり好ましくない。
【0072】
薄膜層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の多層構造を有する樹脂層の外周部分であればよいが、樹脂層に隣接して設けられることが好ましい。金属又は無機材料(c)の使用量は、その種類や成膜方法の違いによって異なるので規定することができないが、樹脂層に隣接して形成される薄膜の厚さが、例えば0.1〜20μmになる量であればよい。薄膜の厚さが0.1μmよりも薄いと、封着が不完全となる場合があり、20μmを超えるほど厚くなると材料費や成膜時間がかかり生産コストの面で好ましくない。
【0073】
本発明の封着構造体は、2枚の基板間周縁部が封着されて形成される内部空間が減圧〜真空に維持されるPDP、FED、VFDなどのディスプレイ素子、水晶振動子あるいは複層ガラスとして有用である。ディスプレイ素子としては特にPDPが好ましい。
【0074】
3.封着構造体の製造方法
本発明においては、(1)2枚の基板を重ね、必要によりスぺーサーを介在させることにより、2枚の基板間を所定の間隔に維持した状態で、(2)基板周縁部に本発明の封着樹脂組成物である熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを塗布し、加圧し、所定の時間保持して、多層構造の樹脂層を形成して封着し、引き続き、(3)該樹脂層の外側に金属又は無機材料からなる薄膜層を形成し、最後に、(4)基板間の内部空間を減圧、排気してから、基板の排気孔を閉じることにより封着構造体が製造される。
【0075】
(1)基板など材料の配置
すなわち、本発明の封着方法を図面により説明すれば、図1の基板2枚とスぺーサーを用意し、これらを図2のように重ね合わせ、基板の周縁でスぺーサーの上下に熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを塗布できるようにする。
【0076】
基板のサイズは前記のとおりであり、特に限定されない。基板である下板1と上板2の間に挿入するスぺーサーとしては、枠状の中板3を用いることができる。
以下の手順では、封着構造体の製造方法を説明する。
【0077】
(2)封着樹脂組成物の塗布、封着
次に、基板の周縁部に封着樹脂組成物を塗布する。そのためには、上記封着樹脂組成物をディスペンサーから2枚の基板間周縁部に吐出させ、2枚の基板間を所定の間隔に維持した状態で樹脂組成物と密着させる。
【0078】
封着樹脂組成物は、樹脂成分として熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の樹脂成分とを含むが、各樹脂成分を同時に基板の周縁に吐出してもよいし、いずれかを先に吐出してもよい。すなわち、熱可塑性樹脂を先に塗布し、次に熱硬化性樹脂を塗布してもよいし、その逆であってもよい。
【0079】
また、2枚の基板のうち、いずれか1枚に樹脂成分を塗布して、封着させてから、次に他の基板に樹脂成分を塗布して、封着させてもよいし、重ね合わせた2枚の基板の間に樹脂成分を吐出・注入して、一度に封着させてもよい。すなわち、重ね合わせた基板(上板)を取り去ってから、基板(下板)の周縁に封着用組成物を吐出し、次いで基板(上板)を重ね合わせて加圧し、2枚の基板間隔を所定の間隔としてから、封着樹脂組成物の熱硬化性樹脂を硬化させる方法;間隔を保って重ねた2枚の基板の周縁間隙に封着樹脂組成物を吐出して注入し、2枚の基板間を加圧して間隙を所定間隔に保持した後、封着樹脂組成物の熱硬化性樹脂を硬化する方法などを採用できる。
【0080】
この際、封着樹脂組成物が熱可塑性樹脂のみを用いたものであったり、熱硬化性樹脂を併用したとしても熱可塑性樹脂の融点が120℃よりも低いものであっては、気密性が不足する。また、従来技術のように熱硬化性樹脂のみを用いたのでは、シール部分に気泡が発生し、気密性も不足してしまう。
【0081】
封着樹脂組成物を塗布する手段は特に限定されないが、熱可塑性樹脂を吐出するにはホットガンを用い、熱硬化性樹脂はディスペンサー等を用いて、それぞれ基板上に塗布することが有利である。
【0082】
ホットガンは、熱可塑性樹脂をホットメルト装置の中で溶融温度以上に加熱し、押し出し機構を用いて溶融状態の部材を直接封着すべき基板に吐出させるものである。ここでホットメルト装置内に原材料である熱可塑性樹脂を充填し、熱可塑性樹脂の溶融温度まで加熱しながら基板の所定の位置に吐出する。
【0083】
一方、熱硬化性樹脂は、例えばディスペンサー等を用いて基板上に塗布されるが、当該ディスペンサーのシリンジ中や吐出部における組成物の粘度は10Pas〜70Pasであることが好ましく、そのため樹脂の種類にもよるが温度を80℃以上に維持して吐出を行うことが好ましい。熱硬化性樹脂の硬化温度は、前記の通り100〜250℃、特に120〜220℃であることが好ましい。この温度条件における硬化時間は、樹脂の種類にもよるが1〜20時間程度が好ましい。
【0084】
樹脂成分を塗布後は速やかに加圧し、この樹脂層を100〜250℃の範囲で所定時間加熱する。樹脂層は、基板への熱的ダメージを抑えるために段階的に加熱し昇温することが好ましい。加熱条件は、用いる熱硬化性樹脂の種類によって異なるが、例えば、エポキシ樹脂であれば、100〜180℃で0.1〜5時間、180〜210℃で0.3〜5時間、200〜220℃で0.3〜5時間、210〜250℃で0.3〜5時間加熱することで樹脂を硬化させることができる。
【0085】
(3)金属又は無機材料による薄膜層の形成
次に、基板周縁部の樹脂層の外側に、金属又は無機材料を用いて薄膜を形成する。薄膜の形成方法は、無機材料などの種類によって異なるが、2枚の基板間を所定の間隔に維持した状態で無機材料などが樹脂層に接触するようにして薄膜を形成する。
【0086】
薄膜層は、前記の通り、金属、ガラス、セラミックス、又は金属とセラミックスの複合材などから選ばれる一種以上の金属又は無機材料で成膜できる。
薄膜層を形成する材料が、Ti、Cr、Al、Cu、Zn、Ni、Sn、Fe、Mn、Coなどから選ばれる1種以上の金属であるか、Al、Si、Ti、Zr、Bなどの金属酸化物(アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ボリアなど)、金属窒化物、金属炭化物、炭窒化ホウ素(BCN)系超硬質材から選ばれる1種以上のセラミックスであれば、化学的蒸着法(CVD)と物理的蒸着法(PVD)等の気相法及び溶射法によって薄膜層を形成することができる。ただし、多くのCVD処理は処理温度が850℃以上であるため、本発明ではPVD処理のほうが好ましい。なお、PVD処理では真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が主なものである。イオンプレーティング方式にはアークプラズマ方式とホロカソード(HCD)方式があるが、処理温度が200℃程度で実施できるアークプラズマ方式がより好ましい。
【0087】
無機材料として、ガラスの薄膜層を形成するヒートレスグラス、シラグシタールのような常温反応型ガラスコーティング材を用いる場合は、基板周縁部の外側から樹脂層に、所定量の常温反応型ガラスコーティング材を塗布する。2液型のヒートレスグラスであれば、液状の主剤に予め、それを硬化するための架橋剤、硬化触媒などの添加剤を混合してから塗布する。塗布の手段は、特別な方法によることなく、刷毛やスプレーなどによることができる。
【0088】
塗布された常温反応型ガラスコーティング材は、常温で2〜24時間程度乾燥させる。十分に乾燥することにより、ヒートレスグラスは、SiOを主成分とする非晶質のガラス薄膜となる。ヒートレスグラスGS−600シリーズであれば、塗膜硬化時間は、指触乾燥(気温20℃)で2〜3時間、硬度H〜2Hとするための標準硬化が24時間である。また、焼き付けの場合は120℃で30分間を目安とし、必要により30〜150℃で10〜60分間加熱することができる。
【0089】
薄膜層の厚さは、無機材料などの種類によって異なり、一概に規定できないが、常温反応型ガラスコーティング材であるヒートレスグラスであれば、例えば5〜20μmの範囲であり、一方、PVDなどによって成膜される金属、セラミックなどであれば、例えば0.1〜5μmの厚さに形成できる。通常、1層でよいが、必要であれば2層以上の多層構造としてもよい。
【0090】
(4)内部空間の排気
次いで、このようにして封着された2枚の基板間の内部空間を減圧にする。基板(上板)中央部の孔から真空ポンプを用いて脱気し、内部空間を10−8〜10−10Torrの真空にする。その後、アウトガスが実質的に排出されてから、最後に減圧にするために用いた排気孔を閉じる。
【0091】
この工程で、基板間の内部空間に空気以外のガスを封入してもよい。通常ガスを封入するには、基板間の内部空間から空気を充分排出した後、空気以外のガスを導入して排気孔を閉じる。封入する不活性ガスとしては、例えば封着構造体がPDPである場合、ネオン、キセノン、ヘリウム、アルゴンなどの放電ガスが用いられる。封着構造体の内部空間における減圧度は特に限定されるものではなく、0.5atm以下、特に 0.1atm以下が好ましい。不活性ガスが充填されている場合の減圧度もこの範囲が好ましい。
【0092】
これにより、上記封着樹脂組成物で封着された封着構造体、すなわち、所定間隔を保持して対向された2枚の基板の基板間周縁部が封着され、その内部空間が減圧に維持された封着構造体が製造される。
こうして得られる本発明の封着構造体は、気密性が高く、空気や水蒸気の浸透や不活性ガスの漏出が少ないという特徴を有する。本発明における封着樹脂組成物は、例えば、ヘリウム(He)リークディテクターで評価すると、封着樹脂層のHeリークの値を10−10[Pa・m/s]以下にすることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の実施例および比較例を具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、これらに限定されるものでは無い。本実施例、比較例で使用した原材料および評価法を以下に示す。
【0094】
[原材料]
A 熱可塑性樹脂
・熱可塑性樹脂1:ナイロン9T
(商品名:ジェネスタ G2330 (株)クラレ製)、融点306℃。
・熱可塑性樹脂2:ポリエチレンナフタレート(PEN)
(商品名:テオネックス TN8065S 帝人化成(株)製)、融点265℃。
B 熱硬化性樹脂
・主剤1:ビスフェノール型エポキシ樹脂
(商品名:エピコート828 ジャパンエポキシレジン(株)製)
・主剤2:ノボラック型エポキシ樹脂
(商品名:エピコート152 ジャパンエポキシレジン(株)製)
・硬化剤1:ジシアンジアミド
(商品名:DICY7 ジャパンエポキシレジン(株)製)
・硬化剤2:酸無水物系硬化剤
(商品名:YH307 ジャパンエポキシレジン(株)製)
C 無機微粒子:ガラスフリット
(商品名:無鉛系Pタイプ、東罐マテリアルテクノロジー(株)製)、平均粒径10μm
D 薄膜層:金属
(材料:Al、大和金属粉工業(株)製)
薄膜層:常温反応型ガラスコーティング材
(商品名:SIRAGUSITAL−B4373、(株)ミクロ技術研究所製)
【0095】
[評価法]
(1)ポットライフ:熱硬化性樹脂組成物が硬化する一定の所定温度(150℃)で樹脂を加熱しながらその粘度を測定した。その結果を、ある粘度に到達するまでの時間で次のように相対評価した。
○;粘度上昇開始までの時間が長い。
×;粘度上昇開始までの時間が短い。
【0096】
(2)気泡の有無:目視および光学顕微鏡観察により、次のように評価した。
○;硬化樹脂中に気泡が無い。
×;硬化樹脂中に気泡が存在する。
【0097】
(3)気密性:周縁部を封着した基板(上板)中央部の孔から真空ポンプを用いて脱気し、内部空間を10−10Torrの真空にした後、リークの有無を測定した。
リークの有無の測定は、ULVACヘリウムリークディテクター HELIOTを用いたフード法で行った。最初にバックグラウンド値が1.5×10−11[Pa・m/s]になるまでサンプル内を真空排気した後、フード内にヘリウムガスを導入し、10分間ヘリウムガスのリークレートを測定し、ヘリウムガスのリークレートの最大値を記録してリークの有無を確認した。
○;フード内にHeガスを投入して24時間Heリークレートを観測した時、その値に殆ど変動が無く、24時間後のHeリークレートがバックグラウンド値以下である。
×;フード内にHeガスを投入して24時間Heリークレートを観測した時、その値が変動し、24時間後のHeリークレートがバックグラウンド値より高い。
【0098】
(実施例1)
図1に示すソーダライムガラス板3枚を用意し、下板1と中板(スぺーサー)3との間、上板2と中板3との間に、図2のように封着樹脂組成物を挟んで加圧して、樹脂層の多層構造(内部空間側からみて、a、b、aの3層)が形成されるように積層した。なお、ガラス板のサイズは、下板1;100mm×200mm×5mm、孔4を有する上板2;100mm×200mm×5mm、孔の直径5mm、枠状の中板4;外形100mm×200mm、内形70mm×170mm、厚さ5mmとした。なお、封着樹脂組成物のうち、熱硬化性樹脂成分には、無機微粒子を樹脂成分の合計に対して、50質量%配合しておいた。
熱可塑性樹脂aはホットガンを用い、熱硬化性樹脂bは、ディスペンサー等を用いてそれぞれ基板上に同時に塗布し、速やかに加圧した(合計シール幅6mm)。なお、熱可塑性樹脂aと熱硬化性樹脂bは、重量比が10:1の割合となるように吐出した。次に、この積層体を180℃で2時間、200℃で4時間、210℃で4時間、220℃で4時間かけて加熱し、熱硬化性樹脂bの硬化を行った。樹脂表面には常温反応型ガラスコーティング材(c)をスプレー式にて塗布し、24時間室温で乾燥させて10ミクロンの薄膜層を形成した。その後、上板中央部の孔4から真空ポンプを用いて脱気し、内部空間を10−10Torrの真空にして、リークを測定した。
ポットライフ、気泡の有無、気密性を前記の要領で評価して、その結果を表1に示した。
【0099】
(実施例2〜4)
樹脂層の外側、樹脂表面に常温反応型ガラスコーティング材(c)の代わりに、金属材料のAlを用いてアークプラズマにより、基板温度:200℃、成膜速度:170nm/mmの条件で薄膜層を形成するか、熱可塑性樹脂の種類を表1のように変更して封着した以外は実施例1と同様にして実験した。
ポットライフ、気泡の有無、気密性を前記の要領で評価して、その結果を表1に示した。
【0100】
(比較例1、2)
薄膜層を設けず、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂からなる封着樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実験した。ポットライフ、気泡の有無、気密性を前記の要領で評価し、結果を表2に示した。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
「評価」
実施例1〜4は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を含む封着樹脂組成物で基板間周縁部に樹脂層を形成して封着し、その樹脂層の外側に常温反応型ガラスコーティング材や金属で薄膜層を設けたので、ポットライフ、気泡の有無、気密性のいずれも良好な封着構造体が得られている。
これに対して、比較例1、2は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のみを封着樹脂組成物として用いたために、ポットライフ、気泡の有無は良好であるが、気密性は不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】封着構造体を構成する基板などの平面図である。
【図2】本発明の封着樹脂組成物を基板に吐出した状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 基板(下板)
2 基板(上板)
3 スぺーサー(中板)
4 孔
a 熱可塑性樹脂
b 熱硬化性樹脂
c 無機薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を保持して対向された2枚の基板によって構成される基板間周縁部を封着し、その内部空間が減圧または不活性ガス雰囲気に維持された封着構造体を形成するための封着樹脂組成物であって、
基板間周縁部が、少なくとも1種の熱可塑性樹脂(a)と少なくとも1種の熱硬化性樹脂(b)とを含む樹脂層で封着され、しかも、その外周部分に金属又は無機材料(c)からなる薄膜層が形成されることを特徴とする封着樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(a)の融点が、160℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の封着樹脂組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(a)が、ポリアミド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、又はエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から選ばれるいずれか1種以上、であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の封着樹脂組成物。
【請求項4】
熱硬化性樹脂(b)が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂又はフェノール樹脂から選ばれるいずれか1種以上、であることを特徴とする、請求項1に記載の封着樹脂組成物。
【請求項5】
金属又は無機材料(c)が、金属、ガラス、又はセラミックスから選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の封着樹脂組成物。
【請求項6】
ガラスが、常温反応型ガラスコーティング材であることを特徴とする、請求項5に記載の封着樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂層は、表面をカップリング処理した無機微粒子を含有し、その含有量が熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)からなる樹脂成分の合計量に対して30〜95質量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の封着樹脂組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂(a)と熱硬化性樹脂(b)の割合が、重量比で1:30〜30:1であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の封着樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の封着樹脂組成物によって、基板間周縁部が封着されてなる封着構造体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の封着樹脂組成物によって、基板間周縁部がそれぞれ独立して互いに隣接した多層構造の樹脂層で封着され、その外側に薄膜層が形成されてなる封着構造体。
【請求項11】
樹脂層は、基板間周縁部の中央部分に形成される第1有機樹脂層と、その両側部分に隣接して形成される第2有機樹脂層からなることを特徴とする、請求項10に記載の封着構造体。
【請求項12】
第1有機樹脂層が熱硬化性樹脂により形成され、第2有機樹脂層が熱可塑性樹脂によって形成されるか、又は第1有機樹脂層が熱可塑性樹脂により形成され、第2有機樹脂層が熱硬化性樹脂によって形成されることを特徴とする、請求項11に記載の封着構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−241361(P2006−241361A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60850(P2005−60850)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】