説明

射出成形金型

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ノックアウトプレートまたはノックアウトプレートとエジェクタピンとを備えた射出成形金型において、ノックアウトプレートを確実かつ安定的に開いて成型品を離型することのできる射出成形金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】射出成形金型において型内で冷却固化した成型品を取り出す方法は、主として■エジェクタピン(傾斜ピンを含む)を用いる方法、■ノックアウトプレートを用いる方法および■と■を併用する方法とに分類される。この内、■は広く一般的に用いられている方法で成型品の離型抵抗が比較的小さいものに適用される。■は離型抵抗が大きく、エジェクタピン方式では成型品の変形やエジェクタピンの陥没が懸念され、また意匠的に成型品にエジェクタピンの痕跡を残せないものに適用される。通常は成形機のエジェクト機構により作動させるが、成型品を自動落下で取り出す場合は、固定側型板とノックアウトプレートとをスライダーまたはチェーンで接続し、金型の開く動作を利用して型開き終了直前にノックアウトプレートを作動させるようにしたものもある。■の方法は、のエジェクタピンの痕跡が許容される場合に適用される。これにはエジェクタピンとノックアウトプレートとをそれぞれエジェクタプレートに接続し、成形機のエジェクタロッドを押し出すことにより同時にかつ同一ストロークで作動させる方式と、固定側型板とノックアウトプレートとをスライダーを介して連結し、金型の開く動作を利用して型開き終了直前にノックアウトプレートを先に作動させ、続いてエジェクタピンを任意のストロークで押し出す方式とがある。
【0003】図および図は上記■の方式の異なる態様を例示するもので、図に例示したものは、固定側取付板aに固定側型板bを固定し、ノックアウトプレートcに可動側型板d、スペーサーブロックe、可動側取付板fを順次固定し、スペーサーブロックe内にエジェクタピンgを組み込んだエジェクタプレートhを設け、これを結合部材iによってノックアウトプレートcと連結したもの[図(a)参照]で、成形機エジェクタロッドjによりエジェクタプレートhを押し出すと、ノックアウトプレートcとエジェクタピンgとが同時に作動して成型品kを取出せるようにしている[図(b)参照]。他方、図(a)〜(c)に例示したものは、ノックアウトプレートcと固定側型板bの相対する両側面に、スライダーmを設けてそれぞれを連結し、金型の開き終了直前にノックアウトプレートcがスライダーmに引っ張られて可動側型板dから少し移動するようにしたもので、これにより成型品kを金型から解離させて離型抵抗を減少させ、エジェクタピンgを軽い作用力で作動させて成型品kを取出せるようにしている。このようにノックアウトプレートとエジェクタピンとを併用する方式では、エジェクタピン単独の場合と比較してエジェクタピンの負担が少なく、成型品へのピンの陥没や突き破りが有効に防止できる。ノックアウトプレートの作用は成型品の周縁部分や可動側型板内に埋入している部分にかかり、エジェクタピンよりも作用面積が大きく、しかも押出力が偏らないので成型品の変形が少ない。深い成型品などで離型抵抗が大きい場合でも、ノックアウトプレートは少し移動するだけで成型品を金型から強制的に解離させ、離型抵抗を大幅に減少させてエジェクタピンを軽い力で突き出すことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方式ではストロークが製品の深さによっては相当長くなる場合があり、ノックアウトプレート本来の機能からすると、ストロークが長過ぎて無駄が多く、エジェクタピンの負担も大幅には軽減されない。スライダーを利用する方法はノックアウトプレートのストロークを短くすることができエジェクタピンの負担も軽減される反面、スライダーの長さによって型開きストロークが制限される。ストロークの無駄を解決するには、ノックアウトプレートとエジェクタピンの動作がそれぞれ独立していなければならない。そこでノックアウトプレートの作動には型開き動作または油圧機構などを利用することが必要であり、しかもスライダーのような型開きストロークが制限される方式を避けるためには、例えば固定側と可動側に取り付ける機構部品相互が型開きによって分離する機構でなければならない。

【0005】
本発明はこのスライダー方式を発展させL字状こと直進型の平板カムとを組み合わせることによって、これらの課題を解決したものである。したがって、本発明の目的は、型開きストロークが制限されることなく、ノックアウトプレートのストロークを短くすることができ、ノックアウトプレートを確実かつ安定的に開いて成型品を離型することのできる射出成形金型を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による射出成形金型は、固定側型板と可動側型板との間にノックアウトプレートを備えた射出成形金型であって、固定側型板の側面に、カム部の先端が狭まった形状の可動側に伸びる直進型平板カムを設け、ノックアウトプレートの側面に、その支点を有する2個のL字状てこを対称に設け、それぞれのL字状てこの一端は可動側型板の型面に接触させ、他端の先端部分に装着された車は作用時に直進型平板カムのカム面に接触させていることを特徴とする。
【0007】
【作用】上記構成の射出成形金型では、型開きに際し、2個のL字状てこの他端の先端部分に装着された車を直進型平板カムのカム面に添わせて移動させることで、それぞれのL字状てこを外側に回動させ、その一端で可動側型板の型面を押圧して、可動側型板とノックアウトプレートとを開き、キャビティ内の成形品を可動側型板から解離させることができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明に係る射出成形金型の詳細を、図1〜図に示した実施態様に基づいて説明する。図1は本発明の射出成形金型の実施態様を示すもので、その(a)は縦断面図、(b)は側面図である。図2(a)〜()はこの射出成形金型の開型時の動きを図1()の部分側面図により操作順に示すものである。

【0009】
図1および図2において、21は固定側取付板、22は固定側型板、23はノックアウトプレート、24は可動側型板、25はスペーサーブロック、26は可動側取付板、27はエジェクタピン、28はエジェクタプレート、29はキャビティ、30は成形機エジェクタロッドである。31、31はノックアウトプレート23の側面に、間隔を置いて左右対称に、それぞれ支点32、32において回動自在に設けられた2個のL字状てこで、それぞれの一辺33、33は可動側型板24の型面(または図示のように型面に沿って取り付けられた支持板34の面、以下本発明では両者を型面とする)に接し、その反対側の端には車35、35が回動自在に設けられている。36は固定側型板22の側面に基部37が固設されて先端の狭まった形状のカム部38が可動側に伸びる直進型平板カムで、閉型時には基部37とカム部38との間のカム部38より狭くなっている部分39が両L字状てこ31、31の車35、35間に位置するように装着されている。
【0010】この射出成形金型において、キャビティ29内に溶融樹脂を注入・固化すると、可動側取付板26、同型板24、ノックアウトプレート23などの後退により型開きが行われる。するとノックアウトプレート23の動きにつれて、これに設けられている1対のL字状てこ31、31は、それぞれの車35、35がその間に位置する直進型平板カム36の左右両側面、とくにカム部38の両側面の形状に沿って互いに外側に移動することになり、特にカム部38の周辺を移動する際には両L字状てこ31、31の車35、35の間を押し広げ、それと共に両L字状てこ31、31は支点32、32を中心に外側に回動し、反対側の端で可動側型板24の型面を押圧することで、ノックアウトプレート23と可動側型板24との間を一定距離開き、キャビティ29内の成型品(図示せず)を可動側型板24から解離させる。型開き完了後、本装置ではノックアウトプレート23には関係なく、成形機エジェクタロッド30の作用により成型品が取り出される。型閉めに際しては、ノックアウトプレート23と可動側型板24とが一定距離開いたままの状態で可動側取付板26などと前進すると、左右対称に回動して車35、35の間が開いた両L字状てこ31、31は直進型平板カム36のカム部38の左右両側方を通り、ノックアウトプレート23が固定側型板22に接した時点で、両L字状てこ31、31の車35、35が直進型平板カム36の狭くなっている部分19の左右両側方に至り、次のノックアウトプレート23と可動側型板24との密着によって、両L字状てこ31、31は支点32、32を中心に回動して、両L字状てこ31、31の車35、35が直進型平板カム16を狭くなっている部分19で挟持する、旧の状態に復する。
【0011】本発明は、L字状この形状構造について上記実施態様に示したものに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
【0012】
【発明の効果】本発明の射出成形金型によれば、L字この増力作用によりノックアウトプレートを確実かつ安定的に必要量だけ開けることができる。■型開きストロークの最大量が制限されない。L字状こを金型の側面に取り付けるので既存の金型の改造が簡単であり、また使用中の点検調整が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による射出成形金型の実施態様に係り、その(a)は縦断面図、(b)は側面図である。
【図2】(a)〜()は、それぞれ図1に示した射出成形金型について開型時の動きを図1()の部分側面図により操作順に示すものである。
【図3】(a)および(b)はそれぞれ従来の射出成形金型の一例を、操作順に示す縦断面図である。
【図4】従来の射出成形金型の別の例に係り、その(a)は縦断面図、(b)および(c)はこの金型の開型時の動きを部分側面図により操作順に示すものである。
【符号の説明】
21‥固定側取付板、 22‥固定側型板、
23‥ノックアウトプレート、 24‥可動側型板、
25‥スペーサーブロック、 26‥可動側取付板、
27‥エジェクタピン、 27‥エジェクタプレート、
29‥キャビティ、 30‥成形機エジェクタロッド、
31‥L字状てこ、 32‥支点、
33‥一辺、 34‥支持板、
35‥車、 36‥直進型平板カム、
37‥基部、 38‥カム部、
39‥狭くなっている部分
a‥固定側取付板、 b‥固定側型板、
c‥ノックアウトプレート、 d‥可動側型板、
e‥スペーサーブロック、 f‥可動側取付板、
g‥エジェクタピン、 h‥エジェクタプレート、
i‥結合部材、 j‥成形機エジェクタロッド、
k‥成型品、 m‥スライダー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】固定側型板と可動側型板との間にノックアウトプレートを備えた射出成形金型であって、固定側型板の側面に、カム部の先端が狭まった形状の可動側に伸びる直進型平板カムを設け、ノックアウトプレートの側面に、その支点を有する2個のL字状てこを対称に設け、それぞれのL字状てこの一端は可動側型板の型面に接触させ、他端の先端部分に装着された車は作用時に直進型平板カムのカム面に接触させていることを特徴とする射出成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2969137号
【登録日】平成11年(1999)8月27日
【発行日】平成11年(1999)11月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−138535
【出願日】平成6年(1994)6月21日
【公開番号】特開平8−1727
【公開日】平成8年(1996)1月9日
【審査請求日】平成8年(1996)6月12日
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【参考文献】
【文献】実開 昭50−67169(JP,U)
【文献】実開 昭49−116468(JP,U)