説明

射撃統制システムとその連携処理方法

【課題】 射撃任務ごとにセンサと火器の多対多の直接連携を可能とする。
【解決手段】(1)目標を発見したセンサから火力調整所等に対して射撃要求を行い、(2)各種情報を統合し、目標の分析処理を行い、(3)分析結果から、火器及びセンサの最適な組合せを選定する。続いて、(4)射撃任務(命令)を作成し、(5)各任務を識別するための任務番号を発行し、(6)火力調整所等の宛先解決サーバにおいて、当該任務番号に関係する情報共有グループの宛先(アドレス)を発行し、最終的に(7)射撃任務とともに(6)で発行した情報共有グループの宛先(アドレス)を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを通じて射撃任務等を遂行するための射撃統制システムに係り、特に火器・センサ等間の連携を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射撃統制システムにあっては、回線交換等によって火器・センサ間の1対1の連携を行っており、火器を使用するためには予め対応付けられたセンサからの情報のみに頼っている。しかしながら、実際には火器の移動等により、他のセンサを利用すれば効率がよい場合が多い。これに対し、従来のシステムでは、複数のセンサと複数の火器での多対多の連携は不可能であった。迅速・正確な射撃を効率良く行うためには、複数の火器と複数のセンサの連携(多対多の連携)が必要である。
【0003】
尚、特許文献1にネットワーク化要撃装置において情報の共有化技術が開示されており、この情報の共有化を利用すればセンサ情報を効率的に利用可能となる。しかしながら、単にセンサ情報を共有化しても、その情報を必要とする装置に的確に通知することはできない。
【特許文献1】特開2001−248998公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように従来の射撃統制システムでは、火器とセンサ間が1対1の連携しかなされておらず、迅速・正確な射撃を効率良く行うことができなかった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、複数の火器と複数のセンサの多対多の連携を実現することができる射撃統制システムとその連携処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る射撃統制システムは、複数の火器及び複数のセンサそれぞれの情報を収集して射撃任務(射撃任務とは、射撃に必要な情報を記述したもの)を作成する射撃任務作成手段と、前記射撃任務に対応する通信相手先を管理して情報共有グループを特定する宛先解決手段と、前記射撃任務の通知に際して前記情報共有グループの宛先を付加する通知手段とを具備することを特徴とする。また、前記射撃任務の終了後に前記情報共有グループの宛先を開放する開放手段を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成による射撃統制システムでは、射撃任務における多対多の連携を実現するために、射撃任務に対応する通信宛先を発行し、連携する各メンバーにも射撃任務を通知することにより、連携環境を確立する。また、任務の終了後にはこの連携を開放する。
【発明の効果】
【0008】
以上述べたように、この発明によれば、射撃任務の付与を行う際に、連携を行う複数のセンサと複数の火器の情報共有グループの宛先を含めるようにしている。この結果、射撃任務ごとにセンサと火器の多対多の直接連携が可能な射撃統制システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は本発明に係る射撃統制システムの一実施形態を示すブロック図である。図1において、詳細は図示しないが、各ブロックはネットワークを通じて接続された通信装置を備えたAP(アプリケーション)サーバで構成されているものとする。
【0011】
火力調整所装置(指揮所)11から射撃要請が発せられると、戦術処理装置12は火器群13から部隊現況報告、気象データ(局地気象)、射撃能力図の情報を受け取り、センサ群14から目標情報資料、部隊現況報告、気象データ(高層気象)、観測能力図の情報を受け取り、現況分析から戦術を構想し、観測命令装置15に指示を送って必要なセンサ情報を取得する。戦術確定後、射撃任務装置16に使用火器とその使用時期を指示する。
【0012】
図2は上記戦術処理装置12の処理の流れを示すフローチャートである。まず、一次処理(ステップS1)において、戦術情報の数値化を行う。ここでの戦術構想(いつ、どこに重点をおくか)、地形(目標とセンサ・シュータの地形上の関係)、気象(センサ能力の減衰、射撃精度)、現況(稼働状態、弾薬、燃料)の情報を数値化する。続いて、フィルタ処理(ステップS2)において、時期、センサ及び発射装置の能力、特性に基づいて取捨選択のフィルタリングを行う。次に、リソース割当処理(ステップS3)において、戦術的リソース割当技術、数理最適化手法、高速計算アルゴリズム等(適合度及び効果等の評価)による部隊選定を行い、確認・命令処理(ステップS4)において、戦術決定内容を確認し、対応する火器に対する射撃命令を射撃任務装置16に与える。
【0013】
上記の処理において重要な点は、目標の状態(位置・種類等)、地形条件及び広域に展開した各センサ・火器のステータス情報から適した火器及びセンサ等を選定し、情報共有グループを生成することにある。火器、センサそれぞれのステータス情報の内容としては、例えば図3に示すような位置、能力、状態その他の情報がある。
【0014】
図4は、上記システムにおいて、連携環境の確立を実現するための処理を示している。
【0015】
(1)射撃要求:目標を発見したセンサから火力調整所等に対して射撃要求を行う。
(2)目標分析処理:各種情報を統合し、目標の分析処理を行う。
(3)火器・センサ等選定:(2)の結果から、火器及びセンサの最適な組合せを選定する。
(4)射撃任務(命令)作成:射撃任務(命令)を作成する。
(5)当該任務の任務番号発行:各任務を識別するための任務番号を発行する。
(6)当該任務番号の情報共有グループの宛先発行:火力調整所等の宛先解決サーバにおいて、当該任務番号に関係する情報共有グループの宛先(アドレス)を発行する。
(7)射撃任務(命令)+当該任務の情報共有グループの宛先通知:射撃任務とともに、(6)で発行した情報共有グループの宛先(アドレス)を通知する。
【0016】
図5は、上記システムにおいて、確立された連携環境を開放するための処理を示している。
【0017】
(8)射撃終了報告:火器から火力調整所等に対して射撃終了報告を送信する。この時、報告には任務番号を含める。
(9)目標分析処理(効果判定):センサ等からの情報を基に射撃効果の判定を行う。
(10)火器・センサ等開放:火器とセンサの連携を開放する。
(11)任務番号開放:(5)で発行した任務番号を開放する。
(12)当該任務番号の情報共有グループの宛先開放:(6)で発行した当該任務番号の情報共有グループの宛先(アドレス)を開放する。
【0018】
以上のように情報共有グループによる連携環境の確立・開放を運用し、射撃任務の付与を行う際に、連携を行う複数のセンサと複数の火器の情報共有グループの宛先(アドレス)を含めることにより、射撃任務ごとにセンサと火器の多対多の直接連携が可能となる。
【0019】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る射撃統制システムの一実施形態を示すブロック図。
【図2】図1に示す戦術処理装置の処理の流れを示すフローチャート。
【図3】火器・センサ選定処理において指標となるステータス情報内容の例を示す図。
【図4】上記射撃統制システムにおいて、連携環境の確立を実現するための処理を示す図。
【図5】上記射撃統制システムにおいて、確立された連携環境を開放するための処理を示す図。
【符号の説明】
【0021】
11…火力調整所装置(指揮所)、12…戦術処理装置。13…火器群、14…センサ群、15…観測命令装置、16…射撃任務装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火器及び複数のセンサそれぞれの情報を収集して射撃任務を作成する射撃任務作成手段と、
前記射撃任務に対応する通信相手先を管理して情報共有グループを特定する宛先解決手段と、
前記射撃任務の通知に際して前記情報共有グループの宛先を付加する通知手段と
を具備することを特徴とする射撃統制システム。
【請求項2】
さらに、前記射撃任務の終了後に前記情報共有グループの宛先を開放する開放手段を備えることを特徴とする請求項1記載の射撃統制システム。
【請求項3】
複数の火器及び複数のセンサを用いて射撃を統制する射撃統制システムに用いられ、
目標を発見したセンサから指揮所に対して射撃要求を行う射撃要求ステップと、
前記火器及びセンサの各種情報を統合し、前記目標の分析処理を行う目標分析処理ステップと、
前記目標の分析処理結果から前記火器及びセンサの最適な組合せを選定する火器・センサ選定ステップと、
前記選定に基づいて射撃任務を作成する射撃任務作成ステップと、
前記射撃任務を識別するための任務番号を発行する任務番号発行ステップと、
前記任務番号に関係する情報共有グループの宛先を発行する宛先発行ステップと、
前記射撃任務とともに前記情報共有グループの宛先を通知する通知ステップと
を具備することを特徴とする射撃統制システムの連携処理方法。
【請求項4】
さらに、
前記火器から指揮所に対して射撃終了を任務番号を含めて報告する射撃終了報告ステップと、
前記センサからの情報を基に射撃効果の判定を行う目標分析処理ステップと、
前記火器とセンサの連携を開放する開放ステップと、
前記発行された任務番号を開放する任務番号開放ステップと、
前記発行された任務番号の情報共有グループの宛先を開放する宛先開放ステップと
を具備することを特徴とする請求項3記載の射撃統制システムの連携処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−96065(P2008−96065A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280412(P2006−280412)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】