説明

射撃訓練システム

【課題】射撃時に命中したかどうかの識別を容易にして、より実戦的な交戦訓練を可能にした射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】レーザー光が被弾側隊員に照射された場合、被弾側隊員に対して従来のように光出力部13および音出力部14から光および音で知らせるだけでなく、音声出力部15によって音声で知らせ、被弾側の損耗項目を含む被弾情報を中央局7へ送信し、この中央局7から射撃側隊員が所持する端局装置6a〜6nに送信し、この端局装置6a〜6nでも損耗項目を含む被弾情報を音声に変換して射撃側隊員に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃側のレーザー銃と被弾側に装着した受光装置とを用いた射撃訓練システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるレーザ光線を使った射撃訓練システムとして、射撃側隊員が所持する訓練用レーザー銃から発射されたレーザー光を被弾側隊員に装着した受光器で受光することによって訓練を行うものが知られている。この種の射撃訓練装置で、レーザー光を受光した部位を判定し、かつ受光部位に応じた損耗率を付与するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平9−273895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の射撃訓練システムでは、射撃側隊員が照射したレーザー光が被弾側隊員に当たった場合、その部位を発光するようにしているが、一定時間経過すると消えてしまったり射撃側隊員から見づらくなったりしてしまうと、どの部位に命中したのかが分からなくなってしまうという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、射撃時に命中したかどうかの識別を容易にして、より実戦的な交戦訓練を可能にした射撃訓練システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、射撃側のレーザー銃から発射されたレーザ光を被弾側に装着した受光装置で受光し、これを被弾情報として使用する射撃訓練システムにおいて、前記レーザー銃および前記受光装置の少なくとも一方に接続した端局装置を設け、この端局装置に、損耗項目を含む前記被弾情報を作成する信号処理部と、この損耗項目に対応するように複数の音声データを格納した音声記憶部と、前記損耗項目に対応する前記音声データを音声で出力する音声出力部とを有した信号処理装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による射撃訓練システムによれば、レーザー光が被弾側に照射された場合、被弾側および射撃側の少なくとも一方に対して信号処理装置の音声出力部から被弾情報を音声で知らせることができるため、被弾側および射撃側で損耗項目を含む被弾情報を従来よりも正確に認識することができるようになり、より精度の高い訓練を円滑に実施することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による射撃訓練システムを示す全体構成図である。
隊員または車両などの各被弾側にそれぞれ装着する受光装置1a〜1nには信号処理装置2a〜2nを含む端局装置3a〜3nがそれぞれ接続され、また各射撃側隊員がそれぞれ所持するレーザー銃4a〜4nには信号処理装置5a〜5nを含む端局装置6a〜6nがそれぞれ接続されており、各隊員が所持する端局装置3a〜3n,6a〜6nは、無線信号によって中央局7に接続されて、この中央局7を通して信号の授受が可能になっている。
【0008】
上述した被弾側が隊員であった場合、各部位毎に複数の受光器が配置され、レーザー銃4a〜4nから照射されたレーザー光を受光器によって検出することにより、被弾部位を判定できるようにしている。また各レーザー銃4a〜4nから照射されるレーザー光には、そのレーザー銃の自己認識情報を含むコード化されたデータが含まれており、被弾したレーザー光からどの射撃側隊員が所持するレーザー銃から照射されたものかを判別できるようにしている。
【0009】
図2は、各信号処理装置2a〜2n,5a〜5nの具体構成を示すブロック構成図であり、それぞれ同一構成なのでここでは信号処理装置2aについて説明する
信号処理装置2aは、受光装置1aで検出したレーザー光からそのレーザー光を照射したレーザー銃の自己認識情報を含むコード化されたデータを抽出するIrDA8と、被弾側隊員の各部位に対応して配置した複数の受光器からレーザー光の検出信号を入手するレーザデータ9と、中央局7との間での送受信を行う端局通信部10と、レーザデータ9から取り込んだ入力情報を解析して作成した被弾情報に対応する音声データを取り出す信号処理部11と、被弾情報、特に後述する損耗項目に対応するように複数の音声データを予め記憶した音声記憶部12と、レーザー光を検出した受光器から対応する被弾部位をLEDの点灯によって知らせる光出力部13と、レーザー光を検出した受光器から被弾したことをブザーで知らせる音出力部14と、この信号処理装置2aに接続された端局装置3aを使用している被弾側隊員に音声記憶部12から信号処理部11が取り出した音声データをイヤホンを通して音声で出力する音声出力部15とを備えている。
【0010】
図3は、複数の受光器からの検出信号であるレーザデータ9を解析して得た被弾情報と、音声記憶部12に記憶した音声データとの対応関係を示している。
同図から分かるように、被弾情報項目としては命中度16だけでなく、損耗部位17、一次損耗18、累積損耗19などの損耗項目を含めている。命中度16の音声データとしては「命中」と「至近」、損耗部位17の音声データとしては「頭」と「胴」と「右腕」と「左腕」と「右足」と「左足」、また一次損耗18の音声データとしては「死亡」と「重傷」と「軽傷」と「至近」、さらに累積損耗19の音声データとしては「死亡」と「重傷」と「軽傷」と「健在」とを予め登録している。
【0011】
図4は、上述した射撃訓練システムの動作を示すフローチャートである。
今、ステップS1で図1に示した射撃側隊員が所持するレーザー銃4aから受光装置1aを所持した被弾側隊員に対してレーザー光を照射したとする。レーザー銃4aから照射されたレーザー光が被弾側の受光装置1aで検出されると、信号処理部11はステップS2でレーザデータ9からのデータに基づいて被弾した否かを判定する。ステップS3では、この被弾側隊員がすでに死亡した扱いになっているかどうかを判定し、まだその扱いになっていなければステップS4に進む。
【0012】
このステップS4で信号処理部11は、IrDA8からのデータに基づいて受光装置1aで検出したレーザー光を照射したレーザー銃4aの自己認識情報を抽出し、またレーザデータ9からのデータを解析し、光出力部13は対応する着弾位置のLEDを点灯させ、音出力部14は着弾したことをブザーによって被弾側隊員に知らせる。さらに信号処理部11はレーザデータ9からのデータを解析して被弾情報を作成し、図3に示すようにこの被弾情報の中の損耗項目に対応する音声データを含めて、被弾情報に対応する音声データを音声記憶部12から取り出す。この音声記憶部12から取り出された音声データは信号処理部11によって音声出力部15に出力され、イヤホンを通して被弾側隊員に命中度、損耗部位、一次損耗、累積損耗等の音声情報を伝える。従って、被弾側隊員は、光出力部13と音出力部14による被弾情報だけでなく、音声出力部15を通しても被弾情報を確実に得ることができる。
【0013】
上述したステップS4に前後したステップS5では、音声記憶部12から取り出した音声データに対応する被弾情報と、レーザー銃4aの自己認識情報等を含む情報を端局通信部10から中央局7へ送信する。これを受信した中央局7は、ステップS6でレーザー銃4aの自己認識情報に基づいて対応する端局装置6aを特定し、指定のフォーマットに変換してその端局装置6aにデータを送信する。これを端局通信部10を通して受信した端局装置6aは、ステップS7で信号処理部11によって解析し対応する音声データを音声記憶部12から取り出し、ステップS8で音声出力部15に出力する。従って、この射撃側隊員はイヤホンを通して先程の自分の発砲に対する結果、つまり命中度、損耗部位、一次損耗、累積損耗等の被弾情報を得ることができる。ここでは、ステップS3で説明したように被弾側隊員の累積損耗19が「死亡」となるまでは上述した処理を行うが、「死亡」後は上述した処理を行わないようにしている。
【0014】
このような射撃訓練システムによれば、従来の射撃訓練システムと同様にレーザー光が被弾側隊員に照射された場合、被弾側隊員に対して光や音で知らせるだけでなく、音声出力部15によって音声で知らせることができる。また被弾側の被弾情報を中央局7へ送信し、この中央局7から射撃側隊員が所持する端局装置6a〜6nに送信し、この端局装置6a〜6nでも射撃情報を音声に変換して射撃側隊員に伝達される。このため、被弾側および射撃側で被弾結果および射撃結果を正確に認識することができるようになり、より精度の高い訓練を円滑に実施することができるようになる。このように音声情報を含めることによって、これまでの光や音だけでは見づらかったりして識別判断が難しい場合でも、正確な射撃結果の情報を入手することができる。
【0015】
また図1に示すように二人の射撃側隊員がそれぞれのレーザー銃4a,4nで同一被弾側隊員を射撃した場合でも、最初の被弾になったレーザー銃4aによって被弾側隊員が死亡していれば、その後、別の射撃側隊員のレーザー銃4nによる二番目の射撃によって被弾側隊員に命中したとしても、図4に示したステップS3の判定によって既に死亡とされており、音声情報が与えられないのでレーザー銃4nによる二番目の射撃が有効でなかったことを識別することができる。
【0016】
さらに、図3に示したように被弾情報項目として損耗情報を含めているため、被弾側隊員は自分の損耗状況を音声により、また射撃側隊員は射撃結果を正しく認識でき、分かりづらかった損耗状況についても正確に把握することができ、より精度の高い訓練を円滑に実施することができるようになる。
【0017】
上述した本発明の実施の形態では被弾側および射撃側の双方に設けた端局装置3a〜3nおよび端局装置6a〜6nにそれぞれ音声出力部15を有する信号処理装置2a〜2nおよび信号処理装置5a〜5nを設けたものについて説明したが、他の実施の形態では、被弾側および射撃側の少なくとも一方の端局装置に音声出力部15を有する信号処理装置を設けても良く、この場合、音声出力部15を有する信号処理装置を付加した側で被弾結果および射撃結果を正確に認識することができるようになり、より精度の高い訓練を円滑に実施することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明による射撃訓練システムは図示のものに限らず、その他の構成の射撃訓練システムにも適用することができ、損耗状況の項目およびこれに対応する音声データも図3に示したものに限らず設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態による射撃訓練システムを示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した射撃訓練システムの信号処理装置を示す概略構成図である。
【図3】図2に示した信号処理装置における被弾情報と音声データとの対応関係を示す説明図である。
【図4】図1に示した射撃訓練システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
1a〜1n 受光装置
2a〜2n 信号処理装置
3a〜3n 端局装置
4a〜4n レーザー銃
5a〜5n 信号処理装置
6a〜6n 端局装置
7 中央局
8 IrDA
9 レーザーデータ
11 信号処理部
12 音声記憶部
15 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射撃側のレーザー銃から発射されたレーザ光を被弾側に装着した受光装置で受光し、これを被弾情報として使用する射撃訓練システムにおいて、前記レーザー銃および前記受光装置の少なくとも一方に接続した端局装置を設け、この端局装置に、損耗項目を含む前記被弾情報を作成する信号処理部と、この損耗項目に対応するように複数の音声データを格納した音声記憶部と、前記損耗項目に対応する前記音声データを音声で出力する音声出力部とを有した信号処理装置を設けたことを特徴とする射撃訓練システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−70011(P2008−70011A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247488(P2006−247488)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】