説明

射撃訓練システム

【課題】命中判定の精度が向上するように改良された射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【解決手段】一般的な射撃訓練システムでは、標的への命中判定は、2km程度離れている遠隔地から望遠鏡により目視確認を行っているので、正確な命中判定は、困難である。このような事情に対応し、本発明に係る射撃訓練システムは、命中判定を目視で行なわず、自動で判定してパソコンなどの画面に表示させるように工夫がなされている。本発明にかかる射撃訓練システムは、それぞれ射撃の標的となる複数のパネルから構成される標的と、複数のパネルそれぞれを温める発熱体と、パネルそれぞれに取り付けられた温度検出器と、パネルが射撃されたときに、発熱体からの熱を前記温度検出器が検出しなくなったことを以って、射撃されたことを判定する判定装置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、標的への弾着数を自動的に計数する射撃訓練装置を開示する。
【特許文献1】特開平11−142097
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した背景からなされたものであって、命中判定の精度が向上するように改良された射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的のために、本発明にかかる射撃訓練システムは、それぞれ射撃の標的となる複数のパネル(202)から構成される標的(20)と、複数のパネルそれぞれを温める発熱体(208)と、パネルそれぞれに取り付けられた温度検出器(210)と、パネルが射撃されたときに、発熱体からの熱を前記温度検出器が検出しなくなったことを以って、射撃されたことを判定する判定装置(44)とを有する。
なお、この部分の記載において付された符号は、本願発明の技術的範囲の限定を意図していない。
【発明の効果】
【0005】
本発明にかかる射撃訓練システムによれば、命中判定の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[本発明の背景]
本発明の理解を助けるために、まず、本発明がなされるに至った背景を説明する。
一般的な射撃訓練システムでは、標的への命中判定は、2km程度離れている遠隔地から望遠鏡により目視確認を行っているので、正確な命中判定は、困難である。
このような事情に対応し、本発明に係る射撃訓練システムは、命中判定を目視で行なわず、自動で判定してパソコンなどの画面に表示させるように工夫がなされている。
【0007】
[射撃訓練システム1]
図1は、本発明にかかる射撃訓練システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、射撃訓練システム1は、地面を走行する台車3と、台車3に取り付けられた標的装置2、自動式台車制御装置30および移動目標装置32と、中継器40と、制御器42と、操作制御器44とから構成される。
標的装置2は、標的20と、標的制御装置22とから構成される。
標的制御装置22と移動目標装置32、自動式台車制御装置30と移動目標装置32および制御器42と操作制御器44とはそれぞれ、RS−232などのシリアルインターフェースにより有線接続されている。
また、移動目標装置32と中継器40および中継器40と制御器42とはそれぞれ、レーザ信号を介して接続される。
ユーザ10は、ライフル12などで標的20に向けて射撃を行う。
射撃訓練システム1は、これらの構成により、ライフル12から発射された飛翔体14の命中を判定する。
なお、以下、各図において、実質的に同じ構成部分・処理には、同じ符号が付される。
【0008】
[標的装置2]
以下、標的装置2の構成を説明する。
図2(A)は、図1に示した標的装置2の構成を示す図である。
図1を参照して上述したように、標的装置2は、標的20と、標的制御装置22とから構成される。
以下、標的20および標的制御装置22の構成をそれぞれ説明する。
【0009】
[標的20]
標的20は、パネル枠200と、パネル番号が振られた複数のパネル202(図2(A)では、9枚を例示)とから構成される
パネル枠200には、衝撃センサ204が取り付けられている。
各パネル202には、発熱体208と、温度センサ210とが取り付けられている(図2(A)においては、パネル番号9のパネル202において例示)。
各パネル202と、標的制御装置22とは、ワイヤ206により互いに接続されている(図2(A)においては、パネル番号9のパネル202において例示)。
発熱体208と標的制御装置22、温度センサ210と標的制御装置22および衝撃センサ204と標的制御装置22とは、それぞれ、電線212により互いに接続されている。
【0010】
衝撃センサ204は、飛翔体14が標的20に命中したときに生じる衝撃を測定し、衝撃値として標的制御装置22に対して出力する。
発熱体208は、標的制御装置22により温度制御されて、熱を発生し、パネルを温める。
温度センサ210は、発熱体208が発生させた熱の温度を、パネル202を介して測定し、温度情報として標的制御装置22に対して出力する。
【0011】
[標的制御装置22]
標的制御装置22は、ワイヤ206の張力を検出し、パネル202の実装情報として、移動目標装置32に対して出力する。
また、標的制御装置22は、温度センサ210から入力された温度情報を、移動目標装置32に対して出力する。
また、標的制御装置22は、衝撃センサ204から入力された衝撃値を、移動目標装置32に対して出力する。
また、標的制御装置22は、移動目標装置32から入力された温度制御情報に基づいて、発熱体208の温度を制御する。
【0012】
[自動式台車制御装置30]
自動式台車制御装置30(図1)は、移動目標装置32から入力された台車制御情報に基づいて、台車3の前進および後退などの動作を制御する。
また、自動式台車制御装置30は、台車3の速度状態および走行状態を、移動目標装置32に対して出力する。
【0013】
[移動目標装置32]
移動目標装置32は、標的制御装置22および自動式台車制御装置30から入力されたデータを、レーザ信号に変換し、中継器40を介して制御器42と通信を行う。
具体的には、移動目標装置32は、標的制御装置22から入力された各パネル202の実装情報、各パネル202の温度情報および衝撃値をレーザ信号に変換し、中継器40を介して制御器42に対して送信する。
また、移動目標装置32は、自動式台車制御装置30から入力された台車3の速度状態および走行状態を、レーザ信号に変換し、中継器40を介して制御器42に対して送信する。
【0014】
また、移動目標装置32は、中継器40を介して入力された制御器42から送信されたレーザ信号を、電気信号に変換し、標的制御装置22および自動式台車制御装置30に対して出力する。
具体的には、移動目標装置32は、中継器40を介して入力された温度制御情報を電気信号に変換し、標的制御装置22に対して出力する。
また、移動目標装置32は、中継器40を介して入力された台車制御情報を、電気信号に変換し、自動式台車制御装置30に対して出力する。
【0015】
[中継器40・制御器42]
中継器40は、移動目標装置32と制御器42との間で通信されるレーザ信号の増幅などを行い、信号の中継を行う。
制御器42は、中継器40を介して入力されたレーザ信号を、電気信号に変換し、操作制御器44に対して出力する。
具体的には、制御器42は、中継器40を介して入力された各パネル202の実装情報、各パネル202の温度情報および衝撃値および台車3の速度状態および走行状態を、電気信号に変換し、操作制御器44に対して出力する。
また、制御器42は、操作制御器44から入力された電気信号を、レーザ信号に変換し、中継器40を介し移動目標装置32に対して送信する。
具体的には、制御器42は、操作制御器44から入力された温度制御情報および台車制御情報を、レーザ信号に変換し、中継器40を介し移動目標装置32に対して送信する。
【0016】
[操作制御器44]
操作制御器44は、操作制御プログラム24(図3を参照して後述)を実行し、取得した各パネル202の温度情報、台車3の速度状態および走行状態を表示する。
また、操作制御器44は、標的20のどのパネル202に飛翔体14が命中したかを判定し、表示する。
また、操作制御器44は、発熱体208の温度を制御するための温度制御情報、台車3の動作を制御するための台車制御情報を、制御器42に対して出力する。
以下、操作制御器44のハードウェア構成および操作制御器44で実行される操作制御プログラム24を、図2(B)および図3を用いて説明する。
【0017】
[操作制御器44のハードウェア構成]
図2(B)は、図1に示した操作制御器44のハードウェア構成を例示する図である。
図2(B)に示すように、操作制御器44は、メモリ102およびCPU104などを含む情報処理装置100、キーボードおよび表示装置などを含む外部入出力装置106、データ通信を行うための通信装置108、および、ハードディスクなどの記録媒体112に対してデータの記録を行う記録装置110などから構成される。
つまり、操作制御器44は、情報処理およびデータ通信が可能なコンピュータとしての構成部分を有している。
【0018】
[操作制御プログラム24]
図3は、図1に示した操作制御器44において実行される操作制御プログラム24の構成を示す図である。
図3に示すように、操作制御プログラム24は、命中判定プログラム26、温度表示部280、台車情報受入部282、台車情報表示部284および制御部286から構成される。
命中判定プログラム26は、衝撃値受入部260、実装情報受入部262、温度情報受入部264、衝撃値判定部266、実装情報判定部268、温度情報判定部270、未実装パネル番号記憶部272、命中パネル番号記憶部274およびパネル番号表示部276から構成される。
【0019】
操作制御プログラム24は、例えば、記録媒体112(図2(B))などを介して操作制御器44に供給され、メモリ102にロードされ、操作制御器44にインストールされたOS(図示せず)上で、操作制御器44のハードウェア資源を具体的に利用して実行される。
操作制御器44は、これらの構成部分により、命中判定などを行なう。
【0020】
衝撃値受入部260は、制御器42から衝撃値を受け入れ、衝撃値判定部266に対して出力する。
衝撃値判定部266は、衝撃値受入部260から受け入れた衝撃値が、所定の基準値以上か否かを判定し、基準値以上の場合は、判定結果を実装情報判定部268に出力する。
実装情報受入部262は、制御器42から各パネル202の実装情報を受け入れ、実装情報判定部268に対して出力する。
【0021】
実装情報判定部268は、衝撃値判定部266から判定結果が入力された場合は、実装情報受入部262から受け入れた各パネル202の実装情報を判定し、未実装パネルを検出する。
具体的には、実装情報は、上述したように、ワイヤ206の張力の大きさを示すので、実装情報が、所定の基準値以下の場合は、そのパネル202は、未実装であると判定する。
また、実装情報判定部268は、未実装パネルを検出した場合には、検出した未実装パネルのパネル番号を、未実装パネル番号記憶部272に対して出力する。
また、実装情報判定部268は、未実装パネルを検出し場合には、未実装パネルが存在することを示す信号を、温度情報判定部270に対して出力する。
未実装パネル番号記憶部272は、実装情報判定部268から入力されたパネル202の番号を、記憶する。
【0022】
温度情報受入部264は、制御器42から各パネル202の温度情報を受け入れ、温度情報判定部270および温度表示部280に対して出力する。
温度情報判定部270は、実装情報判定部268から、未実装パネルが存在することを示す信号が入力された場合には、温度情報受入部264から入力された各パネル202の温度情報と、未実装パネル番号記憶部272に記憶されているパネル番号とから、未実装パネル番号記憶部272に記憶されているパネル番号のパネル202の温度情報が取得可能であるか否かを判定する。
【0023】
また、温度情報判定部270は、未実装パネル番号記憶部272に記憶されているパネル番号のパネル202の温度情報が取得可能でない場合には、そのパネル番号を、命中パネル番号記憶部274に対して出力する。
また、温度情報判定部270は、未実装パネル番号記憶部272に記憶されているパネル番号のパネル202の温度情報が取得可能でない場合には、命中パネルがあることを示す信号を、パネル番号表示部276に対して出力する。
命中パネル番号記憶部274は、温度情報判定部270から入力されたパネル番号を、命中パネル番号として記憶する。
【0024】
図4は、図3に示したパネル番号表示部276が、外部入出力装置106(図2(B))などに表示するパネル202の一覧を例示する図である。
パネル番号表示部276は、温度情報判定部270から、命中パネルがあることを示す信号が入力された場合には、命中パネル番号記憶部274に記憶されているパネル番号を取得する。
また、パネル番号表示部276は、図4に例示するように、取得したパネル番号のパネル202を、画面から消去してパネル202の一覧を表示する。
【0025】
温度表示部280は、温度情報判定部270から入力された各パネル202の温度情報を、外部入出力装置106(図2(B))などに表示する。
台車情報受入部282は、制御器42から台車3の速度状態および走行状態を受け入れ、台車情報表示部284に対して出力する。
台車情報表示部284は、台車情報受入部282から受け入れた台車3の速度状態および走行状態を、外部入出力装置106(図2(B))などに表示する。
操作制御器44は、発熱体208の温度を制御するための温度制御情報、台車3の動作を制御するための台車制御情報を、制御器42に対して出力する。
【0026】
[命中判定プログラム26の処理]
以上説明した、操作制御プログラム24の命中判定プログラム26の処理を、図5を参照して、さらに説明する。
図5は、図4に示した命中判定プログラム26の処理(S10)を示すフローチャートである。
図5に示すように、ステップ100(S100)において、パネル番号表示部276は、パネル202の一覧の表示を初期化して、パネル番号1〜9の全てのパネル202を外部入出力装置106(図2(B))などに表示させる。
ステップ102(S102)において、衝撃値判定部266は、衝撃値が所定の基準値以上か否かを判断する。
衝撃値が所定の基準値以上のときには、命中判定プログラム26は、S104の処理に進み、これ以外のときには、S100の処理に戻る。
【0027】
ステップ104(S104)において、実装情報判定部268は、未実装のパネルがあるか否かを判断する。
未実装のパネルがあるときには、命中判定プログラム26は、S106の処理に進み、これ以外のときには、S100の処理に戻る。
ステップ106(S106)において、未実装パネル番号記憶部272は、未実装であると検出したパネルの番号を記憶する。
【0028】
ステップ108(S108)において、温度情報判定部270は、未実装パネル番号記憶部272が記憶したパネル番号のパネル202から、温度情報が取得できるか否かを判定する。
温度情報が取得できないときには、S110の処理に進み、これ以外のときには、S100の処理に戻る。
ステップ110(S110)において、命中パネル番号記憶部274は、温度情報が取得できないパネル202のパネル番号を命中パネルとして記憶する。
ステップ112(S112)において、パネル番号表示部276は、命中パネル番号記憶部274が記憶したパネル番号のパネル202を消去して、パネル202の一覧を、外部入出力装置106(図2(B))などに表示させる。
【0029】
つまり、飛翔体14がパネル202に命中したときには、パネル202が落下したり、粉砕したりするので、操作制御器44は、その命中したパネル202の温度センサ210から温度情報を取得できないことを以って、命中したと判断することができる。
なお、上述した射撃訓練システム1では、実装情報は、ワイヤ206の張力の大きさである場合を具体例としたが、例えば各パネル202に、スイッチを取り付けることにより、パネル202の実装情報を取得してもよい。
以上説明したように、本発明に係る射撃訓練システム1によれば、標的20に対する命中判定の精度を向上させることができる。
また、ユーザが目視で命中の判定を確認することなく、操作制御器44の外部入出力装置106(図2(B))などに表示されたパネル202の一覧で確認をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる射撃訓練システムの構成を示す図である。
【図2】(A)は、図1に示した標的装置の構成を示す図である。(B)は、図1に示した操作制御器のハードウェア構成を例示する図である。
【図3】図1に示した操作制御器において実行される操作制御プログラムの構成を示す図である。
【図4】図3に示したパネル番号表示部が、外部入出力装置(図2(B))などに表示するパネルの一覧を例示する図である。
【図5】図4に示した命中判定プログラムの処理(S10)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1・・・射撃訓練システム
10・・・射撃手
12・・・ライフル
14・・・飛翔体
100・・・情報処理装置
102・・・メモリ
104・・・CPU
106・・・外部入出力装置
108・・・通信装置
110・・・記録装置
112・・・記録媒体
2・・・標的装置
20・・・標的
200・・・パネル枠
202・・・パネル
204・・・衝撃センサ
206・・・ワイヤ
208・・・発熱体
210・・・温度センサ
212・・・電線
24・・・操作制御プログラム
26・・・命中判定プログラム
260・・・衝撃値受入部
262・・・実装情報受入部
264・・・温度情報受入部
268・・・実装情報判定部
270・・・温度情報判定部
272・・・未実装パネル番号記憶部
274・・・命中パネル番号記憶部
276・・・パネル番号表示部
280・・・温度表示部
282・・・台車情報受入部
284・・・台車情報表示部
286・・・制御部
3・・・台車
30・・・自動式台車制御装置
32・・・移動目標装置
40・・・中継器
42・・・制御器
44・・・操作制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ射撃の標的となる複数のパネルから構成される標的と、
前記複数のパネルそれぞれを温める発熱体と、
前記パネルそれぞれに取り付けられた温度検出器と、
前記パネルが射撃されたときに、前記発熱体からの熱を前記温度検出器が検出しなくなったことを以って、射撃されたことを判定する判定装置と
を有する射撃訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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