説明

射撃訓練システム

【課題】標的への命中の有無に関わらず、着弾地点を発射側で確認できるようにした射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】無線機能を有する複数の現示器301,302と、射撃方向に関する情報を取得して送信する射撃装置100と、射撃装置100から送信された射撃方向に関する情報を受信して着弾位置を算出する統制装置200とを備え、訓練を行う領域を複数のセルに分割し、各セルに現示器301,302を配置すると共に、統制装置200は、算出した着弾位置に存在する現示器301,302に対して動作指示情報を送信し、当該動作指示情報を受信した現示器301,302は、少なくとも発煙、発光、発音のいずれかの現示動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザを使用した射撃訓練システムが知られている(例えば特開2004−308924号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−308924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシステムでは、標的に発煙や発光等の現示器を設け、当該射撃対象物にレーザが命中した際に現示器を動作させることで、射撃側に命中の有無を知らせることができる。
【0005】
しかし、射撃側から発射したレーザが常に標的に当たるとは限らない。標的に命中しなかった場合、射撃側ではどの程度着弾位置がずれていたのか確認することができず、発射方向の再調整を行えないという不都合があった。
【0006】
よって本発明の目的は、標的への命中の有無に関わらず、着弾地点を発射側で確認できるようにした射撃訓練システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係る射撃訓練システムは、射撃を模擬する射撃訓練システムにおいて、無線機能を有する複数の現示器と、射撃方向に関する情報を取得して送信する射撃装置と、前記射撃装置から送信された射撃方向に関する情報を受信して、着弾位置を算出する統制装置と、を備え、訓練を行う領域を複数のセルに分割し、各セルに前記現示器を配置すると共に、前記統制装置は、前記算出した着弾位置に存在する現示器に対して動作指示情報を送信し、当該動作指示情報を受信した現示器は、少なくとも発煙、発光、発音のいずれかの現示動作を行うことを特徴とする。
【0009】
また、無線機能を有する移動訓練器材を備え、前記現示器は、前記動作指示情報を受信したとき、自己のセルの範囲に被弾情報を送信し、前記被弾情報を前記移動訓練器材が受信したとき、前記移動訓練器材は、自己に対して損耗度を付与することを特徴とする。
【0010】
また、前記セルは、前記射撃装置からの着弾による影響を受ける範囲よりも小さい範囲で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る射撃訓練用システムを用いる事で、標的への命中の有無に関わらず、着弾地点を発射側で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る射撃装置及び統制装置の構成を表すブロック図である。
【図2】本発明に係る射撃訓練システムにおける現示器配置例を表す図である。
【図3】本発明に係る射撃訓練システムにおける現示器配置例を表す図である。
【図4】本発明に係る移動体訓練器材を表す概念図である。
【図5】移動訓練器材への被弾情報の送信を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。しかし、特に明示した場合を除き、それは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものでなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0014】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合を除き、必ずしも必須のものでないことは言うまでもない。
【0015】
以下、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る射撃装置100及び統制装置200の構成を表すブロック図である。
【0017】
本発明に係る射撃装置100は、設置センサ101、装填センサ102、発射操作検出センサ103、タイマ回路104、角度センサ105、制御部106、無線部107、現示部108を含んで構成される。
【0018】
設置センサ101は、射撃装置100の水平度を検出するものであり、水平面に対する射撃装置100の傾きを検出し、制御部106に出力する。
【0019】
装填センサ102は、模擬弾の装填がなされているか否かを判定するセンサであり、模擬弾が銃砲内のスイッチを押下する等に応じた信号を制御部106に出力する。
【0020】
発射操作検出スイッチ103は、訓練者が実際の発射操作を正確に再現できているかを検知するセンサであり、少なくともトリガの操作に応じた信号を制御部106に出力する。
【0021】
タイマ回路104は、発射までにかかった時間を測定するタイマ回路であり、例えば、射撃準備に入ることを示すスイッチ等が操作されてから、トリガが操作されるまでの時間を計測して制御部106に出力する。
【0022】
角度センサ105は、砲身の射角を検知する角度センサであり、方位と仰角(あるいは俯角)を示す情報を制御部106に出力する。
【0023】
制御部106は、上記の各種センサから出力された信号を解析、フォーマット化し、無線部107を介して統制装置200に送信する制御部である。
【0024】
無線部107は、無線を通じて統制装置200とデータ通信を行うための無線通信器である。
【0025】
現示部108は、発射時の音、振動、煙などを模擬する出力部である。
【0026】
これらは、図示しない電源装置を電源として稼動する。
【0027】
本発明に係る統制装置200は、射撃装置100の無線部107から送信される各種センサ情報(特に設置センサ101と角度センサ105で検出した角度および方位)に基づき弾道を計算し、着弾点(あるいはエリア)に存在する現示器へ無線により動作指示情報の送信を行う。
【0028】
統制装置200は、制御装置201と無線部202を含んで構成される。
【0029】
制御装置201は、射撃装置100の無線部107から送信される各種センサ情報に基づいて弾道計算を行い、着弾点(エリア)を算出するコンピュータである。これにより、曲射が再現される。
【0030】
着弾点を算出すると、制御装置201は着弾点(エリア)近傍の本図では図示しない現示器を自動的に選択し、現示指示を出力する。
【0031】
無線部202は、射撃装置100の無線部107から送信されるデータを受信し、現示器に対して、現示指示を出力するための無線部である。
【0032】
尚、統制装置200は、装填センサ102の出力に基づき、訓練者が模擬弾の装填を忘れた状態でトリガを操作したと判定されるときは、その発射操作を無効とする。
【0033】
また、統制装置200は、発射操作検出スイッチ103の出力に基づき、訓練者が発射操作を正確に再現できていない場合も、その発射操作を無効とする。
【0034】
さらに、統制装置200は、タイマ回路104で計測した時間を、訓練者の情報と対応付けて管理する。
【0035】
また、上記では設置センサ101と角度センサ105で検出した角度および方位に基づき弾道を計算するようにしたが、着弾の判定手法はそれに限られない。
【0036】
例えば、方位および角度の調整の際に操作者が目視する射撃装置100に設置された図示しない水準器やメモリ(砲身の角度を示すメモリ)の値を検知し、その値を統制装置200に送信するようにしてもよい。統制装置200では、受信した値に基づき、弾道と着弾点の計算を行う。ここで、水準器やメモリの値を検知するセンサとしては、例えばそれらを撮像するカメラ(図示せず)を設け、画像認識にて水準器やメモリが指し示す位置を数値化することが考えられる。また、統制装置200から射撃装置100の操作者に対して射撃諸元(射撃目標の座標等)を送信する場合には、統制装置200において、送信した射撃諸元と受信した値とに基づき、目標位置に射撃されたか否か判定してもよい。
【0037】
図2は、本発明に係る射撃訓練システムの現示器の配置例を示す図である。
【0038】
本発明に係る射撃訓練システムにあっては、訓練に使用する領域(地理的な領域)を複数のセルに分割し、当該各セルに、図2において符号301,302で示す各現示器を配置する。
【0039】
図2の例では、中継器としての機能を果たす現示器301を設けている。現示器301は、図1の統制装置200から送信される動作指示情報を受信し、当該動作指示情報を周辺の現示器302‐x(x=1、2、3、・・・n)に再送信(中継)する。
【0040】
現示器301および現示器302‐x(x=1、2、3、・・・n)は、いずれも発煙、発光、発音等の現示機能を備え、動作指示情報を受信すると、それらの少なくとも一つで現示動作を行う。
【0041】
尚、図2の例では中継器としての機能を果たす現示器301を設けているが、全ての現示器が統制装置200から送信される動作指示情報を受信するようにしてもよい。
【0042】
また、中継器としての機能を果たす現示器301を設ける場合は、図2(a)(b)に示すように、中継器としての機能を果たす現示器301と現示器302の間を有線で接続してもよいし、無線(例えば特定省電力無線)で接続するようにしてもよい。
【0043】
各現示器には個別のアドレスが割り当てられており、現示器301及び統制装置200は、各現示器を特定して現示指示を行うことが可能である。
【0044】
図3を参照し、本発明に係る射撃訓練システムにおける現示器配置例についてさらに説明する。
【0045】
図2に示したように、中継器としての機能を果たす現示器301を設けた場合には、現示器301と一つまたは複数の現示器302を一つのグループとして配置する。現示器301と現示器302とを比較すると、より遠方の統制装置200からの信号を受信する必要のある現示器301の方が、構成が複雑になる。しかし、現示器301と一つまたは複数の現示器302を一つのグループとして配置することで、広い訓練エリアをカバーするのに必要な現示器301の数を抑制することができる。
【0046】
上記した各セルは、射撃装置100が模擬している火器から発射された弾が着弾した際に影響を及ぼす範囲(エリア)よりも小さい範囲に設定される。そして、統制装置200において、着弾点と射撃装置100が模擬している火器の情報から被弾エリアを算出し、当該エリアに存在する現示器301,302のアドレスを指定して動作指示情報を送信して現示動作を行わせることで、射撃側に着弾点をより詳細に確認させることができる。
【0047】
尚、射撃装置100が模擬している火器の情報は、統制装置200の記憶装置で管理してもよいし、射撃装置100が有する記憶装置で管理しておき、各種センサ情報とともに統制装置200に送信するようにしてもよい。
【0048】
また、複数の現示器に一度に現示させたい場合には、統制装置200および/または現示器301から、対象となる現示器の全てのアドレスを含む信号によってマルチキャスト送信を行う。また、マルチキャスト送信に限らず、個別に現示器のアドレスを指定し、ユニキャスト送信を複数回行っても良い。
【0049】
これにより、標的への命中の有無に関わらず、着弾地点を発射側で確認することができる。
【0050】
動作指示情報を受信した現示器301,302は、被弾情報を自己のセルの範囲に送信する。尚、この被弾情報の送信には例えば特定省電力無線が使用され、セルの範囲と無線の到達範囲が一致するように出力レベルが設定される。
【0051】
現示器301,302から送信された被弾情報は、当該現示器が受け持つセルに存在する移動訓練器材に受信される。
【0052】
図4は移動訓練器材400を表す概念図である。
【0053】
移動訓練器材400は、訓練者や車両など、訓練領域の移動体に装着される。
【0054】
移動訓練器材400は、少なくとも被弾情報を受信する無線部401と、受信した被弾情報に基づいて損耗度を算出し、自己(装着している移動体)に損耗度を累積付与する制御装置402を備える。また、図示は省略するが、累積付与された損耗度に応じた現示動作(振動、発音等)を行う現示部も備える。
【0055】
図5は、移動訓練器材への被弾情報の送信を示す概念図である。図5の例では、中継器としての機能を果たす現示器301を設け、当該現示器301のグループに属する現示器302のエリアに着弾したと統制装置200によって判断されているものとする。
【0056】
先ず、統制装置200では、現示器301のアドレスを指定した動作指示情報を現示器302宛に送信する。現示器302は、当該動作指示情報を特定省電力無線により再送信(中継)する。中継された動作指示情報を受信した現示器301は、同じく特定省電力無線で自己のエリア内に被弾情報を送信する。この被弾情報には、火器の情報も含まれる。
【0057】
移動体訓練器材400が被弾情報を受信すると、当該被弾情報に基づいて自己に損耗度を付与する。この損耗度は、上述した移動体訓練器材400が備える無線部401から統制装置200に定期的あるいは損耗度に変化があったときに送信され、統制装置200で管理される。
【0058】
尚、被弾情報が送信されたセル内において、移動体訓練器材400が物陰等に存在して当該被弾情報を受信できなかった場合は、実際の被害も回避できたと考えられることから、損耗度の算出、付与はなされない。
【0059】
また、各セル内には、図5に示すような標的装置500を設置してもよい。標的装置500は、隠顕動作が可能な標的部と、発煙、発光等が可能な現示部とを備えると共に、移動訓練器材400と同様に、少なくとも被弾情報を受信する無線部と、受信した被弾情報に基づいて損耗度を算出し、自己に損耗度を累積付与する制御装置を備える。標的装置500は、累積付与した損耗度に基づき、隠顕動作を行うと共に、現示動作を行う。
【0060】
このように、本発明に係る射撃訓練システムにあっては、無線機能を有する複数の現示器301,302と、射撃方向に関する情報を取得して送信する射撃装置100と、射撃装置100から送信された射撃方向に関する情報を受信して着弾位置を算出する統制装置200とを備え、訓練を行う領域を複数のセルに分割し、各セルに現示器301,302を配置すると共に、統制装置200は、算出した着弾位置に存在する現示器301,302に対して動作指示情報を送信し、当該動作指示情報を受信した現示器301,302は、少なくとも発煙、発光、発音のいずれかの現示動作を行うように構成したので、標的への命中の有無に関わらず、着弾地点を発射側で確認することができる。
【0061】
さらに、無線機能を有する移動訓練器材400を備え、現示器301,302は、動作指示情報を受信したとき、自己のセルの範囲に被弾情報を送信し、当該被弾情報を移動訓練器材400が受信したとき、当該移動訓練器材400は、自己に対して損耗度を付与するように構成したので、上記した効果に加え、着弾による影響範囲が広い火器も模擬することができる。
【0062】
また、訓練領域を分割して形成されるセルは、射撃装置100からの着弾による影響を受ける範囲よりも小さい範囲で形成されるように構成したので、被弾エリアに存在する現示器301,302を指定して動作指示情報を送信して現示動作を行わせることで、射撃側に着弾点をより詳細に確認させることができる。
【0063】
また、射撃装置100に水平面に対する射撃装置100の傾きを検出する設置センサ101を設けたので、射撃装置100の発射方向をより精度良く求めることができる。
【0064】
さらに、模擬弾の装填がなされているか否かを判定する装填センサ102を設けたため、訓練者が模擬弾の装填を忘れた状態でトリガを操作した際の発射を無効にすることができる。
【0065】
さらに、訓練者が実際の発射操作を正確に再現できているかを検知する発射操作検出スイッチ103を設けたため、訓練者の操作の妥当性を判定することができる。
【0066】
さらに、射撃準備から発射までに要した時間を測定するタイマ回路104を設けたため、訓練者の熟練度も判定することができる。
【符号の説明】
【0067】
100…射撃装置、101…設置センサ、102…装填センサ、
103…発射操作検出センサ、104…タイマ回路、105…角度センサ、
106…制御部、107…無線部、108…現示部、
200…統制装置、201…制御装置、202…無線部、
301…現示器、302…現示器、
400…移動体訓練器材、401…受信器、402…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射撃を模擬する射撃訓練システムにおいて、
無線機能を有する複数の現示器と、
射撃方向に関する情報を取得して送信する射撃装置と、
前記射撃装置から送信された射撃方向に関する情報を受信して、着弾位置を算出する統制装置と、を備え、
訓練を行う領域を複数のセルに分割し、各セルに前記現示器を配置すると共に、前記統制装置は、前記算出した着弾位置に存在する現示器に対して動作指示情報を送信し、当該動作指示情報を受信した現示器は、少なくとも発煙、発光、発音のいずれかの現示動作を行うことを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
無線機能を有する移動訓練器材を備え、
前記現示器は、前記動作指示情報を受信したとき、自己のセルの範囲に被弾情報を送信し、
前記被弾情報を前記移動訓練器材が受信したとき、前記移動訓練器材は、自己に対して損耗度を付与することを特徴とする請求項1に記載の射撃訓練システム。
【請求項3】
前記セルは、前記射撃装置からの着弾による影響を受ける範囲よりも小さい範囲で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の射撃訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−163271(P2012−163271A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24782(P2011−24782)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)