説明

導体ペースト

【目的】 半田付けが容易で、しかも半田付け後のエージングによるセラミック基板との接合強度の劣化の小さい電形を形成するための導体ペーストを提供する。
【構成】 銀とパラジウムを含む複合導電粉末とガラス粉末及び酸化ビスマス粉末をビヒクルに分散混練した導体ペーストであって、固形分中にガラス粉末が2〜9重量%含有され、ガラス粉末10重量部当り酸化ビスマスを5〜45重量部、コージェライト粉末を2〜5重量部及びアルミナ粉末を1〜3重量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半田付けした状態で熱履歴を受けたときの接合強度の劣化の小さい電極を形成するための導体ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】厚膜電極材料として、銀とパラジウムを含む複合粉末と、無機結合剤とをビヒクル中に分散したAg−Pd系導体ペーストが用いられている。銀とパラジウムを含む複合粉末としては、銀とパラジウムの混合粉の外、銀パラジウム合金粉、銀パラジウム共沈粉またはこれらと銀粉及び/又はパラジウム粉との混合粉が用いられ通常Ag/Pd比が1.5〜19になる組成でペースト固形分中に85〜95重量%含有される。
【0003】無機結合剤には、通常ガラスフリットと酸化ビスマス粉末が用いられる。ガラス粉末は、PbO−B2 3 −SiO2 系ガラス、PbO−B2 3 −ZnO系ガラス等が使用される場合が多い。導体ペーストは、セラミック基板に印刷、焼成されるため、ガラスはセラミック基板の熱膨張係数に近い値の熱膨張係数を持つものが使われており、例えば、アルミナ基板に対しては、70〜75×10-6/℃程度の熱膨張係数をもつガラスが用いられる。ガラス粉末はペースト固形分中に2〜7重量%含有される。又酸化ビスマス粉末は、ペースト固形分中に3〜13重量%含有される。
【0004】これらの固形物粉末を均一に混合してセラミック基板上に印刷できるようにするために、固形分をビヒクルと混練してペースト状の組成物にする。このビヒクルとして有機溶剤と樹脂の混合物が用いられている。有機溶剤としてはターピネオール、ブチルカルビトール等が、又樹脂としてはエチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル等が用いられる。ターピネオール中にエチルセルロースを20重量%含有するものが用いられる事が多い。また、印刷を円滑にするため、銀とパラジウムを含む複合粉末、ガラス粉末及び酸化ビスマス粉末は325メッシュより小さいものが用いられる場合が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】セラミック基板上に形成された電極は、半田付けの工程を経た後ある時間の熱履歴を受ける場合がある。例えば、前記電極を有する部品を樹脂モールドする際に150℃程度の温度で数時間の熱履歴を受けるし、完成部品を熱的雰囲気に曝される自動車などに搭載した場合などには熱履歴を受ける。このような熱履歴を受けると、半田中のSnが導体層へ徐々に拡散して金属間化合物を多く生成し、これにより体積膨張を起こしてセラミック基板との接合強度が低下する。甚だしい場合には、半田付け直後の接合強度の10%以下にまで低下し、その結果リード付け部分が取れてしまうことがある。
【0006】この欠点は、金属成分を減らし、ガラス分を多くすることにより、ある程度解消するが、そのようにすると今度は半田濡れ性が低下し、半田付けが困難になる。したがって、半田付け特性を維持しながらエージング特性を高めるには無機結合剤に何らかの工夫が必要である。
【0007】本発明の目的は半田付け後のエージングによるセラミック基板との接合強度の劣化を抑制し、しかも半田付けが容易な電極が形成できる導体ペーストを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明者等は種々研究の結果、ガラス粉末、酸化ビスマス粉末のほかに添加剤としてコージェライト粉末及びアルミナ粉末を用いれば良いことを見いだして本発明に到達した。さらに詳しくは、本発明のペーストは、銀とパラジウムを含む混合粉末、ガラス粉末及び酸化ビスマス粉末がビヒクル中に分散されているAg−Pd系導体ペーストであって、ペースト固形分中にガラス粉末を2〜9重量%含有しかつ該ガラス粉末10重量部当り酸化ビスマス粉末を5〜45重量部、コージェライト(2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 )粉末を2〜5重量部及びアルミナ粉末を1〜3重量部含有する点に特徴がある。
【0009】
【作用】ガラス量をペースト固形分中に2〜9重量%とするのは、2重量%未満では半田濡れ性は良いが、セラミック基板との接合力が不充分となり、又9重量%を超えると、逆に、セラミック基板との接合力は向上するが、半田濡れ性が低下し、実用上不都合を生じるからである。
【0010】酸化ビスマス粉末はセラミック基板と導体との境界層付近でガラスと金属のマトリクスを強固に形成するために必要である。酸化ビスマスがガラス10重量部当り5重量部未満では強固な層が形成されず、又半田濡れ性が不充分となる。一方45重量部を超えると焼成中の導体粘性が低下し過ぎ、ペースト印刷時のパターンを維持できなくなる。
【0011】コージェライトをガラス粉末10重量部当り2〜5重量部とするのは、2重量部未満ではセラミック基板と導体との境界に生じる熱応力を緩和する効果が小さく、接合強度の向上にあまり寄与せず、5重量部を超えると焼成時に無機結合剤の流動性が悪くなるため接合強度が低下し、半田濡れ性も悪くなるからである。
【0012】アルミナ粉末を添加する理由は、コージェライトだけでは焼成膜内部にガラスが残存し、ガラス部分の脆性破壊の原因となるので、ガラス部分を結晶化させ靱性を付与するためである。アルミナ粉末をガラス粉末10重量部当り1重量部未満とするとこの結晶化の効果が小さ過ぎ、又3重量部を超えると結晶化温度が低くなり過ぎて金属粉末の焼結を阻害し、導体表面に無機結合剤成分が残留し、半田濡れ性が悪化するので、1〜3重量部とする必要がある。粉末はいずれも325メッシュより小さいものが好ましい。
【0013】
【実施例】平均粒径1μmの銀粉、平均粒径0.2μmのパラジウム粉を用い、ガラス粉末、酸化ビスマス粉末、コージェライト粉末及びアルミナ粉末を種々の割合で配合したAg−Pd系導体ペーストを調製し、試験に供した。ペーストの組成を表1に示す。ガラスは重量比でPbO:B2 3 :SiO2 :CaO:Al2 3 =55:10:15:10:10からなる組成のものを用いた。ビヒクルはターピネオール中にエチルセルロースを20重量%含有するものを用いた。
【0014】試験は下記の方法により行なった。
(1)接合強度2.54cm角のアルミナ基板に導体ペーストを2mm角のパターンで5個印刷し、850℃で焼成後、導体部に0.65mmφの錫メッキ導線を鉛37重量%、残部錫のPb−Sn半田で接合し、引張り試験を行なった。半田接合直後の初期接合強度、150℃の炉に24時間放置した後の強度の2種類についてそれぞれ基板を10枚用意し測定を行なった。初期強度は平均値が4.5kg、150℃で24時間放置後の強度は平均値が1.5kg以上を合格とする。
【0015】(2)半田濡れ性2.54cm角のアルミナ基板に導体ペーストを10mm角パターンで印刷し、850℃で焼成後導体部にフラックスを滴下し、直径4mm、高さ2.85mmの円柱状に成形された鉛37重量%、残部錫のSn−Pb半田をのせ、該基板を230℃の半田浴上に浮かべ、10秒後に取り出し、溶融固化した半田の広がり直径を測定した。直径5.6mm以上を合格とした。
【0016】試験結果を表1にまとめて示す。
【0017】
【表1】


【0018】表1からガラス10重量部当り酸化ビスマスを5〜45重量部、コージェライト粉末を2〜5重量部及びアルミナ粉末1〜3重量部で良好な結果が得られていることが分る。
【0019】
【発明の効果】本発明の導体ペーストにより、半田付け後のエージングによるセラミック基板との接合強度の劣化を抑制し、しかも半田付けが容易な電極を形成できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 銀とパラジウムを含む複合粉末、ガラス粉末及び酸化ビスマス粉末がビヒクル中に分散されている導体ペーストにおいて、ペースト固形分中にガラス粉末を2〜9重量%含有しかつ該ガラス粉末10重量部当り酸化ビスマス粉末を5〜45重量部、コージェライト(2MgO・2Al2 3 ・5SiO2 )粉末を2〜5重量部及びアルミナ粉末を1〜3重量部含有することを特徴とする導体ペースト。