導光シート用樹脂組成物及び導光シート
【課題】耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な導光シート用樹脂組成物及び導光シートの提供。
【解決手段】主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量を、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少なくする。
【解決手段】主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量を、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少なくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光シート用樹脂組成物及び導光シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されるように、携帯電話等の液晶パネル用バックライトに用いられ、光源からの光を液晶パネルへ導く導光部として用いられる導光シート(導光フィルム)が知られている。
【0003】
また、このような導光シートとして、例えば特許文献2に開示されるように、ポリエーテル鎖を含むウレタンアクリレート、多官能アクリレート、単官能アクリレート及び光重合開始剤を有する光硬化性樹脂組成物からなるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−186558号公報
【特許文献2】特開2007−332169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の上述したような導光シートには以下の問題点がある。
(1)導光シートが紫外線に曝されることにより、導光シートの材料が劣化する。具体的には、紫外線によりラジカルが発生し、ラジカル起因による酸化によって導光シートの材料が黄変する。
(2)高温高湿下において、主剤(ウレタンアクリレート、単官能アクリレート若しくは多官能アクリレート)の加水分解により、分解物がブリードアウト(析出)する。
(3)切断性が悪く、端面の状態にバラツキが生じ、導光シートの端面に光源を配置する構成の場合、導光シート毎に光の取込効率が異なる。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決したものであり、耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な極めて実用性に秀れた導光シート用樹脂組成物及び導光シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨を説明する。
【0008】
主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量は、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少ないことを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の導光シート用樹脂組成物において、前記光重合開始剤と前記紫外線吸収剤とが1:1〜2の割合で添加されていることを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレートの重量平均分子量が10000〜20000であることを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレート、前記単官能アクリレート及び前記多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定され、前記100重量部のうち、55〜70重量部が前記ウレタンアクリレートであることを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0012】
また、光源からの光を所定の部位に導く導光シートであって、請求項1〜4いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物により形成されていることを特徴とする導光シートに係るものである。
【0013】
また、ウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物からなる導光シートであって、この導光シートは、厚みが50〜200μmに設定され、厚み方向における波長250〜330nmでの光透過率が1%以下であり且つ波長380nmでの光透過率が85%以上であることを特徴とする導光シートに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な極めて実用性に秀れた導光シート用樹脂組成物及び導光シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実験例1の実験条件を示す表である。
【図2】実験例1の実験結果を示す表である。
【図3】実験例2の実験条件を示す表である。
【図4】実験例2の実験結果を示す表である。
【図5】タック性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図6】耐熱性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図7】耐湿熱性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図8】耐光性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図9】厚さ200μmの実施例と比較例との透過率を比較したグラフである。
【図10】厚さ100μmの実施例と比較例との透過率を比較したグラフである。
【図11】図9の一部を拡大したグラフである。
【図12】図10の一部を拡大したグラフである。
【図13】図12の一部を拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
酸化防止剤を加えると共に、光重合開始剤の添加量を紫外線吸収剤の添加量よりも少なくすることで、樹脂硬化後の外部から照射される紫外線による樹脂の劣化・黄変を著しく抑制することができる。具体的には以下のメカニズムによる。
【0018】
即ち、光重合開始剤の主な役目は、ラジカルを発生させることであり、このラジカルは、ある一定の波長(短波長=紫外線)が当たると発生する。そして、このラジカルが活性種となり、主剤であるモノマーやポリマーの末端にある官能基と反応して、三次元網目構造や所望の分子量を有する樹脂を形成する。しかし、硬化された樹脂の中には、未反応の光重合開始剤が存在し、それが外部からの紫外線により、ラジカルを発生させ、樹脂中の分子を攻撃して樹脂を劣化させて黄変させたり、それ自体が黄変したりする場合がある。
【0019】
この点、本発明は、上記の樹脂の劣化や黄変の原因となる、反応に寄与しないラジカルを捕捉するために酸化防止剤を添加し、更に、紫外線吸収剤を光重合開始剤よりも多く加えているため、樹脂硬化後の外部から照射される紫外線を効率よく吸収し、樹脂の劣化・黄変を著しく抑制することが可能となる。尚、反応時に紫外線の照射を多めにすることで十分な硬化を達成することができる。
【0020】
また、多官能アクリレート(モノマー)を加えることで架橋密度が向上し三次元網目構造が形成されることで、秀れた耐熱性が発現する。また、主鎖にポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレートを採用し、更に、例えば耐水性の高い単官能・多官能アクリレート(モノマー)を採用することで、秀れた耐湿熱性や柔軟性が発現する。
【0021】
従って、高温高湿下において主剤の加水分解が抑制され、分解物のブリードアウトを防止できることになる。
【0022】
更に、上記硬化に寄与しない光重合開始剤が少なくなることで、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートを採用したことと相俟って、外部環境の影響を受け難く、それだけ劣化・黄変が起こり難いものとなる。
【0023】
更に、例えば、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートの重量平均分子量を10000〜20000に設定することで、秀れた切断性が発現し、それだけ切り口のバラツキが抑制されて端面の状態が均一化し、透明性にも秀れたものとなり、光の取込効率を均一化することが可能となる。
【0024】
また、例えば、ウレタンアクリレート、単官能アクリレート及び多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定し、前記100重量部のうち、55〜70重量部をウレタンアクリレートとした場合には、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートに、耐熱性・表面硬化性・柔軟性のバランスを取るために最適な割合で単官能アクリレート及び多官能アクリレートを配合することができ、低粘度でもシート状(フィルム状)に加工(塗布加工)することが容易なものとなる。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量は、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少ないものである。
【0027】
ウレタンアクリレート(主剤A)は、耐水性、柔軟性と(反発)弾性を保持するという観点から、主鎖にエーテル基を有するものであれば、特に制限はなく、種々のものを採用できる。
【0028】
ウレタンアクリレートの分子量の範囲は、10000〜20000、好ましくは10000〜15000である。10000〜15000であると柔軟性が高く、破断伸度も向上すると共に、切断性が良好となり、柔軟性・切断性・硬化性・耐久性のバランスに優れるものとなる。20000を大幅に超える分子量になると、柔軟性・切断性は向上するが、粘度が増加し、官能基数が減るため、硬化性が低下する。これによりタック(ベタ付き)が発現し、耐久性が低下する。尚、分子量は重量平均分子量であり、ポリスチレン換算でGPCから求めた。
【0029】
また、ウレタンアクリレート、単官能アクリレート及び多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定され、100重量部のうち、55〜70重量部が前記ウレタンアクリレートとなるようにしている。55〜70重量部に設定することにより、主剤の特性を発揮することができ、硬化後の柔軟性・切断性・硬化性・耐久性の点から好ましい。
【0030】
単官能アクリレート(主剤B)の配合量は、10〜20重量部に設定されている。この場合、樹脂組成中に均一に分散し、さらにウレタンアクリレートとの相溶性にも優れるため希釈性・硬化性の点から好ましいものとなる。
【0031】
単官能モノマーは希釈能が高く、高粘度のウレタンアクリレート(オリゴマー)の低粘度化には必須である。また、単官能であることから、柔軟性を付与できる。しかし、濃度が高くなると、低粘度化する反面、硬化性が低下し、タック(ベタ付き)の発現や、耐久性の低下(未反応モノマーのブリードアウトなど)に繋がる。
【0032】
単官能アクリレート(主剤B)としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレートも利用することができる。
【0033】
多官能アクリレート(主剤C)の配合量は、20〜25重量部に設定されている。この場合、ウレタンアクリレートおよび単官能アクリレートと夫々反応し、硬化時に三次元網目構造を形成し、耐熱性が向上する。
【0034】
また、ウレタンアクリレートに単官能モノマーのみを配合する場合、低粘度化と柔軟性が向上するが、表面硬化性の低下によるタックの発現・反発弾性の低下に繋がる。これを改善するために多官能モノマーを適量添加することで架橋密度を上げ、表面硬化性と高温域での耐久性を改善し、更に反発弾性を得ている。
【0035】
多官能アクリレートとしては、ジメチロールトリシクロデカン(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、変性トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを利用することができる。
【0036】
光重合開始剤(助剤D)の配合量は、1.0〜2.0重量部に設定されている。この場合、導光シートの厚みが数百μmであっても十分に硬化させることが可能となる。
【0037】
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアルキルフェノン系や、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系などを利用することができる。紫外線硬化後のクリア感(透明感)や、耐久性(黄変)の点から、アルキルフェノン系重合開始剤が好ましい。
【0038】
酸化防止剤(助剤E)の配合量は、0.5〜1重量部に設定されている。これにより、酸化劣化を防止することができる。
【0039】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系を利用することができる。紫外線硬化後のクリア感など色味の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0040】
紫外線吸収剤(助剤F)は、塗布厚に応じて適宜加えることができる。
【0041】
紫外線吸収剤としては、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系を利用することができる。これら吸収剤の紫外線を吸収する紫外線吸収波長領域は、重合開始剤の紫外線吸収波長領域よりも狭く、かつ、これら吸収剤の紫外線吸収波長領域が重合開始剤の吸収波長領域の短波長領域にある。つまり、吸収剤の紫外線吸収波長領域と重複しない重合開始剤の紫外線吸収波長領域が存在するため、紫外線吸収剤による硬化阻害の影響を受け難く、更に重合開始剤を従来の添加量よりも低く抑えることができる。これにより、紫外線硬化時の初期着色と紫外線劣化による着色を抑えることができる。さらに紫外線耐性と硬化性のバランスを考慮すると、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤を用いることがより好ましい。
【0042】
また、耐光性をより向上させる目的として、紫外線吸収剤を光重合開始剤よりも多く加えることが好ましい。比率は、紫外線吸収剤が光重合開始剤に対して1〜2の割合とすることが好ましい。ここで、比率とは、紫外線吸収剤の添加部数を光重合開始剤の添加部数で除した値をいう。この割合であれば、紫外線照射時の黄変が改善される。1未満の場合では、樹脂形成後の外部から照射される紫外線を効率よく吸収できないため、耐光性が悪くなる。2より大きい場合では、樹脂組成物の反応が阻害され、硬化時にタックが生じる。また所望の硬化状態を得るためには、後工程において別途紫外線硬化プロセスの追加が必要となり生産効率が低下するため好ましくない。
【0043】
本実施例においては、紫外線吸収剤と光重合開始剤の紫外線を吸収する波長領域の関係は、紫外線吸収剤の吸収波長領域(〜350nm:シクロヘキサン溶液中における濃度が0.001%のときの値(分光透過率から求めた値))が、重合開始剤の吸収波長領域(200〜380nm:アセトニトリル溶液中における濃度が0.01%のときの値(分光透過率から求めた値))よりも狭く、かつ、紫外線吸収剤の吸収波長領域が重合開始剤の吸収波長領域の短波長領域にあることを前提としている。つまり、紫外線吸収剤の吸収波長領域と重複しない重合開始剤の吸収波長領域が長波長側に存在する。この関係にあると硬化阻害が起こらず、紫外線吸収剤に、材料劣化(分解・黄変など)の原因になる短波長側の高エネルギーの紫外線を吸収させ、耐光性を向上させる効果が生じる。
【0044】
また、紫外線耐性(耐光性)の向上のために、上記紫外線吸収剤に加え、ヒンダードアミン系の耐候(光)安定剤を添加しても良い。
【0045】
また、本実施例の樹脂組成物の粘度は、室温25℃付近で10000mPa・s以下に設定している。
【0046】
また、本実施例の硬化後の樹脂組成物の破断伸度は50%以上で引張り応力を5〜50MPa以下に設定している。ここで破断伸度と引張り応力は、次のように測定する。まず、JIS K6251に準拠したダンベル状3号形の試験片を5つ作製する。次に引張り試験装置(島津製作所社製)を用いて、引張り速度を200mm/minとし、試験片が破断するまでの測定を行う。破断伸度は試験片の測定前の長さと測定後の長さの違いから求めた値であり、引張り応力は最大引張り力(N)を試験片の断面積(mm2)で除した値である。
【0047】
上記構成の樹脂組成物を用いて導光シートを作製する。
【0048】
具体的には、塗布装置(例えばスリットダイコーター)を用いて上記樹脂組成物をセパレートフィルム上に塗布することで作製する。尚、スリットダイコーターに限らず、ブレード(ナイフ)コーター、コンマコーター、ロールコーター等、他の塗布装置によって塗布しても良い。
【0049】
ところで、塗布量にバラツキがあると樹脂シートの厚みにそのまま反映されてしまう。特に高粘度の材料を塗布する場合には、樹脂を加熱し粘度を下げた上で塗布する必要がある。このとき、セパレートフィルム上に塗布されると同時に冷却されるため、粘度が上昇し、厚み調整が難しく、泡を抱き込んでしまう。この点、本実施例では、樹脂組成物の粘度を室温で10000mPa・s以下とし、室温での塗布性を調整しているため、塗布後硬化させることで高精度の厚みをもつ樹脂シートを得ることができる。なお、硬化時の積算光量は樹脂シートの厚みにより異なるが、樹脂シートの厚さを200μmとした場合の積算光量は600mJ/cm2である。
【0050】
また、樹脂組成物の破断伸度を50%以上で引張り応力を5〜50MPa以下に設定することで、携帯電話などのボタン操作のように、繰り返し荷重を受ける用途などにおいての破断・破壊などに対して耐性が向上する。
【0051】
以上の作製方法によれば、ウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物からなる導光シートであって、厚みが50〜200μmに設定され、厚み方向における波長250〜330nmでの光透過率が1%以下であり且つ波長380nmでの光透過率が85%以上であるものを作製することが可能となる。
【0052】
具体的には、例えば後述する実施例4の透過率は図9,11(厚さ200μm)及び図10,12(厚さ100μm)に示すように、波長380nmにおいて約90%で、可視域(380〜780nm)での透過率も90%以上となり、黄色味が少なく、より透明なものとなる。これに対し、紫外線吸収剤が少ない図11に示す後述する比較例9の透過率は、波長380nmにおいて約70〜80%である。この場合、同波長領域での吸収が多く、黄色味が多くなる(図12も同様)。また、波長250〜330nmにおける実施例4の透過率は、図13に示すように1%以下となる。これにより特に高いエネルギーをもつ短波長側の紫外線による材料の劣化を阻止することができる。また、この効果は、導光シートの厚みに依らず発現させることができる(比較例9では短波長側の紫外線の透過率が1%を超える部分が存在し、短波長側の紫外線による材料の劣化が生じる。)。なお、図13は、上記説明において、波長250〜330nmにおける実施例4と比較例9の透過率の違いを明らかにするために各導光シートの厚さを100μmにして、透過率を測定した。また、透過率は、日立製作所社製の分光光度計を用い、導光シートに入る前の入射光量(T0)で導光シートを透過した透過光量(T1)を除した値(T1/T0)を百分率(%)で表した値である。
【0053】
また、導光シートのショアA硬度は、85〜98の範囲に設定するのが好ましい。この場合、手扱いが容易になり、さらに携帯電話などのボタンの操作性が向上する。
【0054】
尚、本実施例は導光シート用の樹脂組成物について説明しているが、上記樹脂組成物をフィルム等の基材へ塗布し、これを指向性を制御する形状がパターニングされたスタンパーへ押し付け、硬化させることで、高透明(低ヘイズ)で高耐久性の指向性制御部材(レンズ)を得ることができる。これは、導光シート材料をレンズ材料へそのまま転用できるためである。また、上記樹脂組成物を基材に塗布することで、等方性で且つ高透明のフィルムが得られる。上記樹脂組成物は相溶性の高い材料を使用しているため、硬化速度が均一に進み、均一な硬化状態を維持でき、結果、等方性が発現するためである。
【0055】
本実施例は上述のように構成したから、酸化防止剤を加えると共に、光重合開始剤の添加量を紫外線吸収剤の添加量よりも少なくすることで、樹脂硬化後の外部から照射される紫外線による樹脂の劣化・黄変を著しく抑制することができる。
【0056】
また、多官能アクリレート(モノマー)を加えることで架橋密度が向上し三次元網目構造が形成されることで、秀れた耐熱性が発現する。また、主鎖にポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレートを採用し、更に、例えば耐水性の高い単官能・多官能アクリレート(モノマー)を採用することで、秀れた耐湿熱性が発現する。
【0057】
従って、高温高湿下において主剤の加水分解が抑制され、分解物のブリードアウトを防止できることになる。
【0058】
更に、上記硬化に寄与しない光重合開始剤が少なくなることで、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートを採用したことと相俟って、外部環境の影響を受け難く、それだけ劣化・黄変が起こり難いものとなる。
【0059】
また、本実施例においては配合材料の相溶性が良く、均一に硬化し、更に上記硬化に寄与しない光重合開始剤が少なく、紫外線吸収剤が過度に含まれないことで、未反応物や反応に寄与しない添加物が少なくなり、上記未反応物等のブリードアウトが抑制されることになる。
【0060】
更に、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートの重量平均分子量を10000〜20000に設定することで、秀れた切断性が発現し、それだけ切り口のバラツキが抑制されて端面の状態が均一化し、透明性にも秀れたものとなり、光の取込効率を均一化することが可能となる。
【0061】
また、ウレタンアクリレート、単官能アクリレート及び多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定し、前記100重量部のうち、55〜70重量部をウレタンアクリレートとすることで、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートに、耐熱性・表面硬化性・柔軟性のバランスを取るために最適な割合で単官能アクリレート及び多官能アクリレートを配合することができ、シート状(フィルム状)に加工(塗布加工)することが容易なものとなる。
【0062】
よって、本実施例は、耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【0063】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0064】
以下に実験例における各特性の測定方法について説明する。
【0065】
切断性は、トムソン打ち抜き刃(先端刃角度20度−両刃0.7mm厚み、打ち抜きサイズ10×53mm)を打ち抜き装置(アマダ社製)へ装着し、紫外線硬化させた樹脂シートを打ち抜き、その後切断面をマイクロスコープで観察することで評価した。
【0066】
切断条件は、23℃、湿度60%の雰囲気下とし、上記切断部面をマイクロスコープ(キーエンス社製)にて500倍にて反射像を拡大観察した(反射像観察のため、明るく見えるほど荒れが少なく、切断性が良好といえる。)。
【0067】
評価結果は以下のように示した。
◎:切断面にケバ・荒れが少なく、凹凸が少ない面であった。
○:切断面に一部ケバがあるものの、凹凸が少ない面であった。
×:切断面にケバが多く、荒れた凹凸面であった(凹凸面であると十分な導光機能が発揮されない)。
【0068】
タック性は、図5に図示したように、厚さ50μmで表面が梨地のPETフィルム(東レ社製)を準備し、その梨地面の上に導光シートを静かに載せ、次に、先端がR状となった治具(先端のRは7mm、円柱状のゴム製おもり(ショアA硬度80°))を導光シートの上にのせ、200gの荷重で10秒間保持し、そのおもりを除去した後に、導光シート(のUVが照射される面と反対側の面)がPETフィルムから剥がれるか否かおよび、剥がれるまでの時間で評価した。
【0069】
試験条件は、23℃、湿度60%の雰囲気下で、導光シートからセパレートフィルムを剥離し、剥離帯電を除去した後、10分経過後に上記のタック評価を行った。
【0070】
評価結果は以下のように示した。
◎:PETフィルムに貼り付くことなく、5秒以内に剥がれた。
○:導光シートがPETフィルムに貼り付いたが、20秒以内に導光シートとPETフィルムが分離した。
×:導光シートがPETフィルムと密着し、1分以上経過しても剥がれることがなかった。
【0071】
耐熱性は、図6に図示したように、導光シート単体を、表面が梨地のPETフィルムの上に載せ、125℃の雰囲気に設定された熱風乾燥機(エスペック社製)へ投入し、120時間経過後の外観を目視で観察し、色味の変化を分光光度計(日立製作所社製)を用いて黄変度(ΔYI)により評価した。
【0072】
ここで、ΔYIとは、試験前の黄色度YI(Yellowness Index)と試験後の黄色度YIの差であり、次式ΔYI=試験後YI−試験前YIにより算出されるものである。尚、黄色度YIは、分光光度計により測定した三刺激値(人の目が感じる各色の感度(刺激量))X,Y,Zから次式YI=100(1.28X−1.06Z)/Yにより算出される。
【0073】
評価結果は以下のように示した。
◎:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+1.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
○:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+2.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
×:表面にベタツキ(ブリードアウト物)が発生し、梨地PETフィルムへ密着した。
【0074】
耐湿熱性は、図7に図示したように、導光シート単体を、表面が梨地のPETフィルム上へ載せ、85℃−85%RHの恒温恒湿雰囲気に設定された恒温恒湿試験器(エスペック社製)へ投入し、1000時間経過後の外観を目視で観察し、色味の変化を分光光度計(日立製作所社製)を用いて黄変度(ΔYI)により評価した。
【0075】
評価結果は以下のように示した。
◎:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+1.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
○:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+2.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
×:表面にベタツキ(ブリードアウト物)が発生し、梨地PETフィルムへ密着した。
【0076】
耐光性(耐UV(紫外線)性)の評価は、図8に図示したUV(紫外線)照射装置を用いて行った。まず、紫外線を照射する前の導光シート単体の試験前黄色度を分光光度計(日立製作所社製)を用いて測定した。次に、導光シート単体をクリーン紙の上に載せ、高圧水銀ランプのピーク照度を120mW/cm2とし、積算光量が1000mJ/cm2となるようにコンベアスピードを調整し、紫外線を照射した。次に、照射後の導光シート単体を日光等の外光が入らない暗室に室温で120時間放置した。その後、導光シート単体の試験後黄色度を分光光度計を用いて測定し、黄変度(ΔYI)を求め、評価した。
【0077】
評価結果は以下のように示した。
◎:UV照射120時間経過後の、ΔYIが+0.1以下であり、カールが無かった。
○:UV照射120時間経過後の、ΔYIが+0.1を超え+0.2以下であった。
×:UV照射120時間経過後の、ΔYIが+0.2を越えた。
【0078】
尚、溶解性は目視で完全に溶解するか確認し、溶解した場合は○、溶解しない場合は×と評価した。
【0079】
・実験例1
図1は比較例1〜3と実施例1〜3の、主剤A〜Cと助剤D〜Fの各物質名及び配合割合(実験条件)を示すものである。また、図2は各比較例及び実施例の特性の実験結果を示すものである。
【0080】
図1,2より、多官能アクリレートが多すぎると切断性に劣り(比較例1)、単官能アクリレートが多すぎるとタック性、耐熱性及び耐湿熱性に劣り(比較例2)、また、低分子タイプのウレタンアクリレートを採用した場合には、高分子タイプに比し、切断性に劣ることが確認できた(比較例3)。
【0081】
また、実施例1〜3において、主剤A〜Cの配合を変化させて各特性を確認したところ、主剤Aが55〜70重量部で、主剤Bが11.3〜16.9量部、主剤Cが18.7〜28.1重量部の場合には、いずれも良好な結果が得られた。特に実施例1は耐光性に秀れ、実施例2はタック性に秀れ、実施例3は切断性に秀れていることが確認できた。
【0082】
・実験例2
実験例2は、上記実験例1の実施例1の配合割合をベースに、助剤D及び助剤Fの配合割合や材料を変化させて各特性を確認したものである。
【0083】
図3は比較例4〜10と実施例4〜8の、主剤A〜Cと助剤D〜Fの各物質名及び配合割合と塗布厚(実験条件)を示すものである。また、図4は各比較例及び実施例の特性の実験結果を示すものである。尚、比較例及び実施例において、紫外線吸収剤と光重合開始剤の紫外線を吸収する波長領域の関係は、紫外線吸収剤の吸収波長領域(〜350nm:シクロヘキサン溶液中における濃度が0.001%のときの値(分光透過率から求めた値))が、重合開始剤の吸収波長領域(200〜380nm:アセトニトリル溶液中 における濃度が0.01%のときの値(分光透過率から求めた値))よりも狭く、かつ、紫外線吸収剤の吸収波長領域が重合開始剤の吸収波長領域の短波長領域にあるような材料を用いている。
【0084】
図3,4より、紫外線吸収剤が多すぎるとタック性、耐熱性、耐湿熱性(比較例4においては加えて溶解性)に劣ることが確認できた(比較例4,5)。これは、重合開始剤の添加量が少なく、かつ紫外線吸収剤も添加されているため、紫外線を照射しても十分硬化反応が進まず、これにより、未硬化状態となるためと考えられる。また、硬化不足であると、未反応のモノマー単体などのブリードアウトや、三次元架橋(架橋密度)が不足して耐熱性・耐湿熱性に劣るものとなる。具体的には、比較例4では紫外吸収剤が多いため、強いタックが生じると共に紫外線吸収剤の溶解性にも問題が生じる。また、比較例5は、光開始剤の添加量が少ないため、硬化反応が進まずタックが生じる。
【0085】
また、紫外線吸収剤が少なすぎると耐光性に劣ることが確認できた(比較例6,7)。硬化後に紫外線を十分に吸収できないためである。また、比較例8においては加えてタック性、耐熱性、耐湿熱性にも劣る。これは。重合開始剤が多く添加されているため、紫外線が照射されると平面方向に対しての反応は進むが、厚さ方向に対しての反応が進まず、結果的に厚さ方向に対しての硬化が不均一となり、紫外線照射面とは反対面の硬化が不十分となり、タック(べた付き)が生じるためと考えられる。
【0086】
また、紫外線吸収剤の材料を変えても紫外線吸収剤が少なすぎる場合には耐光性に劣ることが確認できた(比較例9,10)。比較例9は、紫外線吸収剤の吸収波長領域と重複しない重合開始剤の吸収波長領域が長波長側に存在するものの、当該重複しない領域が可視領域まで及ぶため、可視光の影響を受けやすく、耐光性に劣ると考えられる。比較例10は、紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と重合開始剤の紫外線吸収波長領域が重複する部分が多く、紫外線吸収剤を多く添加することができないため、耐光性に劣ると考えられる。
【0087】
また、実施例4〜6において、塗布厚を変化させて各特性を確認したところ実施例4及び5についてはいずれも良好な結果が得られた。尚、実施例6においては、シートが厚いため、厚さ方向に対して紫外線照射量が足りず、未硬化部分生じ、べた付きが生じたためにタック性がやや劣る結果になったと考えられる。
【0088】
また、実施例4に比し紫外線吸収剤の割合を増やした実施例7と、実施例4に比し紫外線吸収剤の量を減らした実施例8とは、いずれも良好な結果を示した。よって、紫外線吸収剤が光重合開始剤に対して1〜2の割合となる比率となるように配合するのが好ましいことが確認できた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光シート用樹脂組成物及び導光シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されるように、携帯電話等の液晶パネル用バックライトに用いられ、光源からの光を液晶パネルへ導く導光部として用いられる導光シート(導光フィルム)が知られている。
【0003】
また、このような導光シートとして、例えば特許文献2に開示されるように、ポリエーテル鎖を含むウレタンアクリレート、多官能アクリレート、単官能アクリレート及び光重合開始剤を有する光硬化性樹脂組成物からなるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−186558号公報
【特許文献2】特開2007−332169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の上述したような導光シートには以下の問題点がある。
(1)導光シートが紫外線に曝されることにより、導光シートの材料が劣化する。具体的には、紫外線によりラジカルが発生し、ラジカル起因による酸化によって導光シートの材料が黄変する。
(2)高温高湿下において、主剤(ウレタンアクリレート、単官能アクリレート若しくは多官能アクリレート)の加水分解により、分解物がブリードアウト(析出)する。
(3)切断性が悪く、端面の状態にバラツキが生じ、導光シートの端面に光源を配置する構成の場合、導光シート毎に光の取込効率が異なる。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決したものであり、耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な極めて実用性に秀れた導光シート用樹脂組成物及び導光シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨を説明する。
【0008】
主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量は、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少ないことを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の導光シート用樹脂組成物において、前記光重合開始剤と前記紫外線吸収剤とが1:1〜2の割合で添加されていることを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0010】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレートの重量平均分子量が10000〜20000であることを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレート、前記単官能アクリレート及び前記多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定され、前記100重量部のうち、55〜70重量部が前記ウレタンアクリレートであることを特徴とする導光シート用樹脂組成物に係るものである。
【0012】
また、光源からの光を所定の部位に導く導光シートであって、請求項1〜4いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物により形成されていることを特徴とする導光シートに係るものである。
【0013】
また、ウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物からなる導光シートであって、この導光シートは、厚みが50〜200μmに設定され、厚み方向における波長250〜330nmでの光透過率が1%以下であり且つ波長380nmでの光透過率が85%以上であることを特徴とする導光シートに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な極めて実用性に秀れた導光シート用樹脂組成物及び導光シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実験例1の実験条件を示す表である。
【図2】実験例1の実験結果を示す表である。
【図3】実験例2の実験条件を示す表である。
【図4】実験例2の実験結果を示す表である。
【図5】タック性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図6】耐熱性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図7】耐湿熱性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図8】耐光性の測定方法を説明する概略説明図である。
【図9】厚さ200μmの実施例と比較例との透過率を比較したグラフである。
【図10】厚さ100μmの実施例と比較例との透過率を比較したグラフである。
【図11】図9の一部を拡大したグラフである。
【図12】図10の一部を拡大したグラフである。
【図13】図12の一部を拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
酸化防止剤を加えると共に、光重合開始剤の添加量を紫外線吸収剤の添加量よりも少なくすることで、樹脂硬化後の外部から照射される紫外線による樹脂の劣化・黄変を著しく抑制することができる。具体的には以下のメカニズムによる。
【0018】
即ち、光重合開始剤の主な役目は、ラジカルを発生させることであり、このラジカルは、ある一定の波長(短波長=紫外線)が当たると発生する。そして、このラジカルが活性種となり、主剤であるモノマーやポリマーの末端にある官能基と反応して、三次元網目構造や所望の分子量を有する樹脂を形成する。しかし、硬化された樹脂の中には、未反応の光重合開始剤が存在し、それが外部からの紫外線により、ラジカルを発生させ、樹脂中の分子を攻撃して樹脂を劣化させて黄変させたり、それ自体が黄変したりする場合がある。
【0019】
この点、本発明は、上記の樹脂の劣化や黄変の原因となる、反応に寄与しないラジカルを捕捉するために酸化防止剤を添加し、更に、紫外線吸収剤を光重合開始剤よりも多く加えているため、樹脂硬化後の外部から照射される紫外線を効率よく吸収し、樹脂の劣化・黄変を著しく抑制することが可能となる。尚、反応時に紫外線の照射を多めにすることで十分な硬化を達成することができる。
【0020】
また、多官能アクリレート(モノマー)を加えることで架橋密度が向上し三次元網目構造が形成されることで、秀れた耐熱性が発現する。また、主鎖にポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレートを採用し、更に、例えば耐水性の高い単官能・多官能アクリレート(モノマー)を採用することで、秀れた耐湿熱性や柔軟性が発現する。
【0021】
従って、高温高湿下において主剤の加水分解が抑制され、分解物のブリードアウトを防止できることになる。
【0022】
更に、上記硬化に寄与しない光重合開始剤が少なくなることで、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートを採用したことと相俟って、外部環境の影響を受け難く、それだけ劣化・黄変が起こり難いものとなる。
【0023】
更に、例えば、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートの重量平均分子量を10000〜20000に設定することで、秀れた切断性が発現し、それだけ切り口のバラツキが抑制されて端面の状態が均一化し、透明性にも秀れたものとなり、光の取込効率を均一化することが可能となる。
【0024】
また、例えば、ウレタンアクリレート、単官能アクリレート及び多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定し、前記100重量部のうち、55〜70重量部をウレタンアクリレートとした場合には、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートに、耐熱性・表面硬化性・柔軟性のバランスを取るために最適な割合で単官能アクリレート及び多官能アクリレートを配合することができ、低粘度でもシート状(フィルム状)に加工(塗布加工)することが容易なものとなる。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量は、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少ないものである。
【0027】
ウレタンアクリレート(主剤A)は、耐水性、柔軟性と(反発)弾性を保持するという観点から、主鎖にエーテル基を有するものであれば、特に制限はなく、種々のものを採用できる。
【0028】
ウレタンアクリレートの分子量の範囲は、10000〜20000、好ましくは10000〜15000である。10000〜15000であると柔軟性が高く、破断伸度も向上すると共に、切断性が良好となり、柔軟性・切断性・硬化性・耐久性のバランスに優れるものとなる。20000を大幅に超える分子量になると、柔軟性・切断性は向上するが、粘度が増加し、官能基数が減るため、硬化性が低下する。これによりタック(ベタ付き)が発現し、耐久性が低下する。尚、分子量は重量平均分子量であり、ポリスチレン換算でGPCから求めた。
【0029】
また、ウレタンアクリレート、単官能アクリレート及び多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定され、100重量部のうち、55〜70重量部が前記ウレタンアクリレートとなるようにしている。55〜70重量部に設定することにより、主剤の特性を発揮することができ、硬化後の柔軟性・切断性・硬化性・耐久性の点から好ましい。
【0030】
単官能アクリレート(主剤B)の配合量は、10〜20重量部に設定されている。この場合、樹脂組成中に均一に分散し、さらにウレタンアクリレートとの相溶性にも優れるため希釈性・硬化性の点から好ましいものとなる。
【0031】
単官能モノマーは希釈能が高く、高粘度のウレタンアクリレート(オリゴマー)の低粘度化には必須である。また、単官能であることから、柔軟性を付与できる。しかし、濃度が高くなると、低粘度化する反面、硬化性が低下し、タック(ベタ付き)の発現や、耐久性の低下(未反応モノマーのブリードアウトなど)に繋がる。
【0032】
単官能アクリレート(主剤B)としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレートも利用することができる。
【0033】
多官能アクリレート(主剤C)の配合量は、20〜25重量部に設定されている。この場合、ウレタンアクリレートおよび単官能アクリレートと夫々反応し、硬化時に三次元網目構造を形成し、耐熱性が向上する。
【0034】
また、ウレタンアクリレートに単官能モノマーのみを配合する場合、低粘度化と柔軟性が向上するが、表面硬化性の低下によるタックの発現・反発弾性の低下に繋がる。これを改善するために多官能モノマーを適量添加することで架橋密度を上げ、表面硬化性と高温域での耐久性を改善し、更に反発弾性を得ている。
【0035】
多官能アクリレートとしては、ジメチロールトリシクロデカン(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、変性トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを利用することができる。
【0036】
光重合開始剤(助剤D)の配合量は、1.0〜2.0重量部に設定されている。この場合、導光シートの厚みが数百μmであっても十分に硬化させることが可能となる。
【0037】
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアルキルフェノン系や、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系などを利用することができる。紫外線硬化後のクリア感(透明感)や、耐久性(黄変)の点から、アルキルフェノン系重合開始剤が好ましい。
【0038】
酸化防止剤(助剤E)の配合量は、0.5〜1重量部に設定されている。これにより、酸化劣化を防止することができる。
【0039】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系を利用することができる。紫外線硬化後のクリア感など色味の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0040】
紫外線吸収剤(助剤F)は、塗布厚に応じて適宜加えることができる。
【0041】
紫外線吸収剤としては、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系を利用することができる。これら吸収剤の紫外線を吸収する紫外線吸収波長領域は、重合開始剤の紫外線吸収波長領域よりも狭く、かつ、これら吸収剤の紫外線吸収波長領域が重合開始剤の吸収波長領域の短波長領域にある。つまり、吸収剤の紫外線吸収波長領域と重複しない重合開始剤の紫外線吸収波長領域が存在するため、紫外線吸収剤による硬化阻害の影響を受け難く、更に重合開始剤を従来の添加量よりも低く抑えることができる。これにより、紫外線硬化時の初期着色と紫外線劣化による着色を抑えることができる。さらに紫外線耐性と硬化性のバランスを考慮すると、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤を用いることがより好ましい。
【0042】
また、耐光性をより向上させる目的として、紫外線吸収剤を光重合開始剤よりも多く加えることが好ましい。比率は、紫外線吸収剤が光重合開始剤に対して1〜2の割合とすることが好ましい。ここで、比率とは、紫外線吸収剤の添加部数を光重合開始剤の添加部数で除した値をいう。この割合であれば、紫外線照射時の黄変が改善される。1未満の場合では、樹脂形成後の外部から照射される紫外線を効率よく吸収できないため、耐光性が悪くなる。2より大きい場合では、樹脂組成物の反応が阻害され、硬化時にタックが生じる。また所望の硬化状態を得るためには、後工程において別途紫外線硬化プロセスの追加が必要となり生産効率が低下するため好ましくない。
【0043】
本実施例においては、紫外線吸収剤と光重合開始剤の紫外線を吸収する波長領域の関係は、紫外線吸収剤の吸収波長領域(〜350nm:シクロヘキサン溶液中における濃度が0.001%のときの値(分光透過率から求めた値))が、重合開始剤の吸収波長領域(200〜380nm:アセトニトリル溶液中における濃度が0.01%のときの値(分光透過率から求めた値))よりも狭く、かつ、紫外線吸収剤の吸収波長領域が重合開始剤の吸収波長領域の短波長領域にあることを前提としている。つまり、紫外線吸収剤の吸収波長領域と重複しない重合開始剤の吸収波長領域が長波長側に存在する。この関係にあると硬化阻害が起こらず、紫外線吸収剤に、材料劣化(分解・黄変など)の原因になる短波長側の高エネルギーの紫外線を吸収させ、耐光性を向上させる効果が生じる。
【0044】
また、紫外線耐性(耐光性)の向上のために、上記紫外線吸収剤に加え、ヒンダードアミン系の耐候(光)安定剤を添加しても良い。
【0045】
また、本実施例の樹脂組成物の粘度は、室温25℃付近で10000mPa・s以下に設定している。
【0046】
また、本実施例の硬化後の樹脂組成物の破断伸度は50%以上で引張り応力を5〜50MPa以下に設定している。ここで破断伸度と引張り応力は、次のように測定する。まず、JIS K6251に準拠したダンベル状3号形の試験片を5つ作製する。次に引張り試験装置(島津製作所社製)を用いて、引張り速度を200mm/minとし、試験片が破断するまでの測定を行う。破断伸度は試験片の測定前の長さと測定後の長さの違いから求めた値であり、引張り応力は最大引張り力(N)を試験片の断面積(mm2)で除した値である。
【0047】
上記構成の樹脂組成物を用いて導光シートを作製する。
【0048】
具体的には、塗布装置(例えばスリットダイコーター)を用いて上記樹脂組成物をセパレートフィルム上に塗布することで作製する。尚、スリットダイコーターに限らず、ブレード(ナイフ)コーター、コンマコーター、ロールコーター等、他の塗布装置によって塗布しても良い。
【0049】
ところで、塗布量にバラツキがあると樹脂シートの厚みにそのまま反映されてしまう。特に高粘度の材料を塗布する場合には、樹脂を加熱し粘度を下げた上で塗布する必要がある。このとき、セパレートフィルム上に塗布されると同時に冷却されるため、粘度が上昇し、厚み調整が難しく、泡を抱き込んでしまう。この点、本実施例では、樹脂組成物の粘度を室温で10000mPa・s以下とし、室温での塗布性を調整しているため、塗布後硬化させることで高精度の厚みをもつ樹脂シートを得ることができる。なお、硬化時の積算光量は樹脂シートの厚みにより異なるが、樹脂シートの厚さを200μmとした場合の積算光量は600mJ/cm2である。
【0050】
また、樹脂組成物の破断伸度を50%以上で引張り応力を5〜50MPa以下に設定することで、携帯電話などのボタン操作のように、繰り返し荷重を受ける用途などにおいての破断・破壊などに対して耐性が向上する。
【0051】
以上の作製方法によれば、ウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物からなる導光シートであって、厚みが50〜200μmに設定され、厚み方向における波長250〜330nmでの光透過率が1%以下であり且つ波長380nmでの光透過率が85%以上であるものを作製することが可能となる。
【0052】
具体的には、例えば後述する実施例4の透過率は図9,11(厚さ200μm)及び図10,12(厚さ100μm)に示すように、波長380nmにおいて約90%で、可視域(380〜780nm)での透過率も90%以上となり、黄色味が少なく、より透明なものとなる。これに対し、紫外線吸収剤が少ない図11に示す後述する比較例9の透過率は、波長380nmにおいて約70〜80%である。この場合、同波長領域での吸収が多く、黄色味が多くなる(図12も同様)。また、波長250〜330nmにおける実施例4の透過率は、図13に示すように1%以下となる。これにより特に高いエネルギーをもつ短波長側の紫外線による材料の劣化を阻止することができる。また、この効果は、導光シートの厚みに依らず発現させることができる(比較例9では短波長側の紫外線の透過率が1%を超える部分が存在し、短波長側の紫外線による材料の劣化が生じる。)。なお、図13は、上記説明において、波長250〜330nmにおける実施例4と比較例9の透過率の違いを明らかにするために各導光シートの厚さを100μmにして、透過率を測定した。また、透過率は、日立製作所社製の分光光度計を用い、導光シートに入る前の入射光量(T0)で導光シートを透過した透過光量(T1)を除した値(T1/T0)を百分率(%)で表した値である。
【0053】
また、導光シートのショアA硬度は、85〜98の範囲に設定するのが好ましい。この場合、手扱いが容易になり、さらに携帯電話などのボタンの操作性が向上する。
【0054】
尚、本実施例は導光シート用の樹脂組成物について説明しているが、上記樹脂組成物をフィルム等の基材へ塗布し、これを指向性を制御する形状がパターニングされたスタンパーへ押し付け、硬化させることで、高透明(低ヘイズ)で高耐久性の指向性制御部材(レンズ)を得ることができる。これは、導光シート材料をレンズ材料へそのまま転用できるためである。また、上記樹脂組成物を基材に塗布することで、等方性で且つ高透明のフィルムが得られる。上記樹脂組成物は相溶性の高い材料を使用しているため、硬化速度が均一に進み、均一な硬化状態を維持でき、結果、等方性が発現するためである。
【0055】
本実施例は上述のように構成したから、酸化防止剤を加えると共に、光重合開始剤の添加量を紫外線吸収剤の添加量よりも少なくすることで、樹脂硬化後の外部から照射される紫外線による樹脂の劣化・黄変を著しく抑制することができる。
【0056】
また、多官能アクリレート(モノマー)を加えることで架橋密度が向上し三次元網目構造が形成されることで、秀れた耐熱性が発現する。また、主鎖にポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレートを採用し、更に、例えば耐水性の高い単官能・多官能アクリレート(モノマー)を採用することで、秀れた耐湿熱性が発現する。
【0057】
従って、高温高湿下において主剤の加水分解が抑制され、分解物のブリードアウトを防止できることになる。
【0058】
更に、上記硬化に寄与しない光重合開始剤が少なくなることで、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートを採用したことと相俟って、外部環境の影響を受け難く、それだけ劣化・黄変が起こり難いものとなる。
【0059】
また、本実施例においては配合材料の相溶性が良く、均一に硬化し、更に上記硬化に寄与しない光重合開始剤が少なく、紫外線吸収剤が過度に含まれないことで、未反応物や反応に寄与しない添加物が少なくなり、上記未反応物等のブリードアウトが抑制されることになる。
【0060】
更に、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートの重量平均分子量を10000〜20000に設定することで、秀れた切断性が発現し、それだけ切り口のバラツキが抑制されて端面の状態が均一化し、透明性にも秀れたものとなり、光の取込効率を均一化することが可能となる。
【0061】
また、ウレタンアクリレート、単官能アクリレート及び多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定し、前記100重量部のうち、55〜70重量部をウレタンアクリレートとすることで、ポリエーテル骨格のウレタンアクリレートに、耐熱性・表面硬化性・柔軟性のバランスを取るために最適な割合で単官能アクリレート及び多官能アクリレートを配合することができ、シート状(フィルム状)に加工(塗布加工)することが容易なものとなる。
【0062】
よって、本実施例は、耐熱性、耐湿熱性、耐光性及び切断性等に秀れ、樹脂の劣化及び黄変を防止できると共に、光の取込効率も改善することが可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【0063】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0064】
以下に実験例における各特性の測定方法について説明する。
【0065】
切断性は、トムソン打ち抜き刃(先端刃角度20度−両刃0.7mm厚み、打ち抜きサイズ10×53mm)を打ち抜き装置(アマダ社製)へ装着し、紫外線硬化させた樹脂シートを打ち抜き、その後切断面をマイクロスコープで観察することで評価した。
【0066】
切断条件は、23℃、湿度60%の雰囲気下とし、上記切断部面をマイクロスコープ(キーエンス社製)にて500倍にて反射像を拡大観察した(反射像観察のため、明るく見えるほど荒れが少なく、切断性が良好といえる。)。
【0067】
評価結果は以下のように示した。
◎:切断面にケバ・荒れが少なく、凹凸が少ない面であった。
○:切断面に一部ケバがあるものの、凹凸が少ない面であった。
×:切断面にケバが多く、荒れた凹凸面であった(凹凸面であると十分な導光機能が発揮されない)。
【0068】
タック性は、図5に図示したように、厚さ50μmで表面が梨地のPETフィルム(東レ社製)を準備し、その梨地面の上に導光シートを静かに載せ、次に、先端がR状となった治具(先端のRは7mm、円柱状のゴム製おもり(ショアA硬度80°))を導光シートの上にのせ、200gの荷重で10秒間保持し、そのおもりを除去した後に、導光シート(のUVが照射される面と反対側の面)がPETフィルムから剥がれるか否かおよび、剥がれるまでの時間で評価した。
【0069】
試験条件は、23℃、湿度60%の雰囲気下で、導光シートからセパレートフィルムを剥離し、剥離帯電を除去した後、10分経過後に上記のタック評価を行った。
【0070】
評価結果は以下のように示した。
◎:PETフィルムに貼り付くことなく、5秒以内に剥がれた。
○:導光シートがPETフィルムに貼り付いたが、20秒以内に導光シートとPETフィルムが分離した。
×:導光シートがPETフィルムと密着し、1分以上経過しても剥がれることがなかった。
【0071】
耐熱性は、図6に図示したように、導光シート単体を、表面が梨地のPETフィルムの上に載せ、125℃の雰囲気に設定された熱風乾燥機(エスペック社製)へ投入し、120時間経過後の外観を目視で観察し、色味の変化を分光光度計(日立製作所社製)を用いて黄変度(ΔYI)により評価した。
【0072】
ここで、ΔYIとは、試験前の黄色度YI(Yellowness Index)と試験後の黄色度YIの差であり、次式ΔYI=試験後YI−試験前YIにより算出されるものである。尚、黄色度YIは、分光光度計により測定した三刺激値(人の目が感じる各色の感度(刺激量))X,Y,Zから次式YI=100(1.28X−1.06Z)/Yにより算出される。
【0073】
評価結果は以下のように示した。
◎:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+1.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
○:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+2.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
×:表面にベタツキ(ブリードアウト物)が発生し、梨地PETフィルムへ密着した。
【0074】
耐湿熱性は、図7に図示したように、導光シート単体を、表面が梨地のPETフィルム上へ載せ、85℃−85%RHの恒温恒湿雰囲気に設定された恒温恒湿試験器(エスペック社製)へ投入し、1000時間経過後の外観を目視で観察し、色味の変化を分光光度計(日立製作所社製)を用いて黄変度(ΔYI)により評価した。
【0075】
評価結果は以下のように示した。
◎:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+1.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
○:収縮、カール、ベタツキが無く、ΔYIが+2.0以下であった。また、梨地PETフィルムへの密着も無い。
×:表面にベタツキ(ブリードアウト物)が発生し、梨地PETフィルムへ密着した。
【0076】
耐光性(耐UV(紫外線)性)の評価は、図8に図示したUV(紫外線)照射装置を用いて行った。まず、紫外線を照射する前の導光シート単体の試験前黄色度を分光光度計(日立製作所社製)を用いて測定した。次に、導光シート単体をクリーン紙の上に載せ、高圧水銀ランプのピーク照度を120mW/cm2とし、積算光量が1000mJ/cm2となるようにコンベアスピードを調整し、紫外線を照射した。次に、照射後の導光シート単体を日光等の外光が入らない暗室に室温で120時間放置した。その後、導光シート単体の試験後黄色度を分光光度計を用いて測定し、黄変度(ΔYI)を求め、評価した。
【0077】
評価結果は以下のように示した。
◎:UV照射120時間経過後の、ΔYIが+0.1以下であり、カールが無かった。
○:UV照射120時間経過後の、ΔYIが+0.1を超え+0.2以下であった。
×:UV照射120時間経過後の、ΔYIが+0.2を越えた。
【0078】
尚、溶解性は目視で完全に溶解するか確認し、溶解した場合は○、溶解しない場合は×と評価した。
【0079】
・実験例1
図1は比較例1〜3と実施例1〜3の、主剤A〜Cと助剤D〜Fの各物質名及び配合割合(実験条件)を示すものである。また、図2は各比較例及び実施例の特性の実験結果を示すものである。
【0080】
図1,2より、多官能アクリレートが多すぎると切断性に劣り(比較例1)、単官能アクリレートが多すぎるとタック性、耐熱性及び耐湿熱性に劣り(比較例2)、また、低分子タイプのウレタンアクリレートを採用した場合には、高分子タイプに比し、切断性に劣ることが確認できた(比較例3)。
【0081】
また、実施例1〜3において、主剤A〜Cの配合を変化させて各特性を確認したところ、主剤Aが55〜70重量部で、主剤Bが11.3〜16.9量部、主剤Cが18.7〜28.1重量部の場合には、いずれも良好な結果が得られた。特に実施例1は耐光性に秀れ、実施例2はタック性に秀れ、実施例3は切断性に秀れていることが確認できた。
【0082】
・実験例2
実験例2は、上記実験例1の実施例1の配合割合をベースに、助剤D及び助剤Fの配合割合や材料を変化させて各特性を確認したものである。
【0083】
図3は比較例4〜10と実施例4〜8の、主剤A〜Cと助剤D〜Fの各物質名及び配合割合と塗布厚(実験条件)を示すものである。また、図4は各比較例及び実施例の特性の実験結果を示すものである。尚、比較例及び実施例において、紫外線吸収剤と光重合開始剤の紫外線を吸収する波長領域の関係は、紫外線吸収剤の吸収波長領域(〜350nm:シクロヘキサン溶液中における濃度が0.001%のときの値(分光透過率から求めた値))が、重合開始剤の吸収波長領域(200〜380nm:アセトニトリル溶液中 における濃度が0.01%のときの値(分光透過率から求めた値))よりも狭く、かつ、紫外線吸収剤の吸収波長領域が重合開始剤の吸収波長領域の短波長領域にあるような材料を用いている。
【0084】
図3,4より、紫外線吸収剤が多すぎるとタック性、耐熱性、耐湿熱性(比較例4においては加えて溶解性)に劣ることが確認できた(比較例4,5)。これは、重合開始剤の添加量が少なく、かつ紫外線吸収剤も添加されているため、紫外線を照射しても十分硬化反応が進まず、これにより、未硬化状態となるためと考えられる。また、硬化不足であると、未反応のモノマー単体などのブリードアウトや、三次元架橋(架橋密度)が不足して耐熱性・耐湿熱性に劣るものとなる。具体的には、比較例4では紫外吸収剤が多いため、強いタックが生じると共に紫外線吸収剤の溶解性にも問題が生じる。また、比較例5は、光開始剤の添加量が少ないため、硬化反応が進まずタックが生じる。
【0085】
また、紫外線吸収剤が少なすぎると耐光性に劣ることが確認できた(比較例6,7)。硬化後に紫外線を十分に吸収できないためである。また、比較例8においては加えてタック性、耐熱性、耐湿熱性にも劣る。これは。重合開始剤が多く添加されているため、紫外線が照射されると平面方向に対しての反応は進むが、厚さ方向に対しての反応が進まず、結果的に厚さ方向に対しての硬化が不均一となり、紫外線照射面とは反対面の硬化が不十分となり、タック(べた付き)が生じるためと考えられる。
【0086】
また、紫外線吸収剤の材料を変えても紫外線吸収剤が少なすぎる場合には耐光性に劣ることが確認できた(比較例9,10)。比較例9は、紫外線吸収剤の吸収波長領域と重複しない重合開始剤の吸収波長領域が長波長側に存在するものの、当該重複しない領域が可視領域まで及ぶため、可視光の影響を受けやすく、耐光性に劣ると考えられる。比較例10は、紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と重合開始剤の紫外線吸収波長領域が重複する部分が多く、紫外線吸収剤を多く添加することができないため、耐光性に劣ると考えられる。
【0087】
また、実施例4〜6において、塗布厚を変化させて各特性を確認したところ実施例4及び5についてはいずれも良好な結果が得られた。尚、実施例6においては、シートが厚いため、厚さ方向に対して紫外線照射量が足りず、未硬化部分生じ、べた付きが生じたためにタック性がやや劣る結果になったと考えられる。
【0088】
また、実施例4に比し紫外線吸収剤の割合を増やした実施例7と、実施例4に比し紫外線吸収剤の量を減らした実施例8とは、いずれも良好な結果を示した。よって、紫外線吸収剤が光重合開始剤に対して1〜2の割合となる比率となるように配合するのが好ましいことが確認できた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量は、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少ないことを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の導光シート用樹脂組成物において、前記光重合開始剤と前記紫外線吸収剤とが1:1〜2の割合で添加されていることを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレートの重量平均分子量が10000〜20000であることを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレート、前記単官能アクリレート及び前記多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定され、前記100重量部のうち、55〜70重量部が前記ウレタンアクリレートであることを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項5】
光源からの光を所定の部位に導く導光シートであって、請求項1〜4いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物により形成されていることを特徴とする導光シート。
【請求項6】
ウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物からなる導光シートであって、この導光シートは、厚みが50〜200μmに設定され、厚み方向における波長250〜330nmでの光透過率が1%以下であり且つ波長380nmでの光透過率が85%以上であることを特徴とする導光シート。
【請求項1】
主鎖中にポリエーテルを有するウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物であって、前記光重合開始剤の添加量は、前記紫外線吸収剤の添加量よりも少ないことを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の導光シート用樹脂組成物において、前記光重合開始剤と前記紫外線吸収剤とが1:1〜2の割合で添加されていることを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレートの重量平均分子量が10000〜20000であることを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物において、前記ウレタンアクリレート、前記単官能アクリレート及び前記多官能アクリレートの合計が100重量部になるように設定され、前記100重量部のうち、55〜70重量部が前記ウレタンアクリレートであることを特徴とする導光シート用樹脂組成物。
【請求項5】
光源からの光を所定の部位に導く導光シートであって、請求項1〜4いずれか1項に記載の導光シート用樹脂組成物により形成されていることを特徴とする導光シート。
【請求項6】
ウレタンアクリレートと、単官能アクリレートと、多官能アクリレートと、光重合開始剤と、酸化防止剤と、紫外線吸収剤とを含む導光シート用樹脂組成物からなる導光シートであって、この導光シートは、厚みが50〜200μmに設定され、厚み方向における波長250〜330nmでの光透過率が1%以下であり且つ波長380nmでの光透過率が85%以上であることを特徴とする導光シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−137124(P2011−137124A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260(P2010−260)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】
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