説明

導出心電図生成システム及び導出心電図生成方法

【課題】被検者の心臓疾患の診断精度を向上させる。
【解決手段】被検者の導出心電図を生成するため被検者から取得した個人係数を記憶する個人係数データベース113と、被検者の導出心電図を生成するため不特定多数の人たちから取得した集団係数を記憶する集団係数データベース114と、個人係数データベースに被検者から取得した個人係数があれば当該個人係数を用いて被検者の導出心電図を生成する一方、個人係数データベースに被検者から取得した個人係数がなければ集団係数データベースにある集団係数を用いて被検者の導出心電図を生成する心電計制御部117とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ない心電図測定電極しか用いなくとも、被検者の心臓疾患の診断精度を向上させることができる、既存技術よりも高い導出精度が得られる導出心電図生成システム及び導出心電図生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の標準12誘導心電図を取得する場合、心電計に接続されている10個の電極を用い、胸部誘導の測定のために6箇所及び四肢誘導の測定のために4箇所、それぞれの箇所に電極を装着する。そして、心電計によって、これら10個の電極から検出される心電位に基づき、標準12誘導の四肢6誘導波形(I、II、III、aVR、aVL、aVF)及び標準12誘導の胸部6誘導波形(V1、V2、V3、V4、V5、V6)を演算させ出力している。
【0003】
一般に、標準12誘導心電図を得るための誘導波形と測定部位における心電位との関係は、次の通りである。
【0004】
I 誘導: vL−vR
II 誘導: vF−vR
III 誘導: vF−vL
aVR 誘導: vR−(vL+vF)/2
aVL 誘導: vL−(vR+vF)/2
aVF 誘導: vF−(vL+vR)/2
V1 誘導: v1−(vR+vL+vF)/3
V2 誘導: v2−(vR+vL+vF)/3
V3 誘導: v3−(vR+vL+vF)/3
V4 誘導: v4−(vR+vL+vF)/3
V5 誘導: v5−(vR+vL+vF)/3
V6 誘導: v6−(vR+vL+vF)/3
ただし、vはそれぞれ電極装着位置で検出された電位である。
【0005】
このように多数の電極を使用して患者の心臓疾患に対する診断を行うことは、設備が完備された病院内等であれば、患者を安静にした状態で可能である。
【0006】
ところが、例えば、在宅療養や救急医療を行う場合においては、患者の状態から見て多数の電極を使用しかつ各電極を生体の体表面上の適正な位置へそれぞれ装着することが困難な場合が多い。さらに、多数の誘導波形を得るために多チャンネルの信号を伝送することも困難な場合がある。このような場合、一般的には、心電図の信号を伝送し得るのは1チャンネル(1つの誘導)程度であり、せいぜい2〜4個の電極を使用して標準12誘導波形の内の幾つかの誘導波形を測定することによって、心臓疾患に対する診断が行われている。
【0007】
このような観点から、本発明者は、公知の標準12誘導心電図を得るための最小限の誘導数からなる誘導システムのサブセットにより、各種の心臓疾患に対する診断および治療を適正に行うことができる標準12誘導心電図を再構築するための導出12誘導心電図の構築方式および心電図検査装置を開発した(下記特許文献1参照)。
【0008】
すなわち、特許文献1に記載の導出12誘導心電図の構築方式においては、最小限のチャンネル数からなる誘導システムのサブセットとして、標準12誘導心電図を得る場合の四肢誘導のI、II誘導と、胸部誘導の2つの誘導であるV1誘導および、V5誘導またはV6誘導とを使用する。これらの誘導により、III誘導とaV誘導(aVR誘導、aVL誘導、aVF誘導)が、上述した各誘導の固有関係に基づいて演算により求められる。また、胸部誘導の残りの誘導であるV2誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導またはV5誘導は、電位・誘導ベクトル・心臓ベクトルの関係を考慮して作成された変換係数(導出用マトリック)を用いて演算により導出される。
【0009】
このようにして、各誘導の固有関係と作成された変換係数から得られる導出12誘導心電図は、従来の標準12誘導心電図の誘導システムのサブセットを使用することから、各電極の装着に際してそれぞれ所定部位への位置決めを容易かつ確実に行うことが可能であり、作業に多くの熟練を要することはない。しかも、高精度の標準12誘導心電図を再構築することができ、各種の心臓疾患に対する診断および治療を適正に行うことができる。
【0010】
したがって、従来の心電計は、標準12誘導心電図を、10個の電極を用いて四肢6誘導と胸部6誘導とから得た場合のみならず、特許文献1に記載された方式により高精度の導出12誘導心電図を導出した場合においても、心電図波形の異常を確認して診断することができる。
【0011】
また、標準12誘導の応用に関わる導出心電図が必要とされるもう一つのケースを説明する。前述の標準12誘導心電図は、心筋梗塞の診断に応用した場合、心筋に血流を提供する冠状動脈の閉塞が生じる前壁・側壁について、心電図波形の異常を確認して診断することは容易である。しかし、後壁、または右後壁については、電極の位置が心臓より遠いので、感度が低くなる。研究論文によると、多数の後壁における急性心筋梗塞(AMI)のST上昇はV7、V8、V9に現れる。そのため、標準12誘導心電図ではしばしばST上昇を見落とすことがある。必要な場合には、上述の付加誘導を測定することも提案されているが、標準心電計を使う場合2回の測定を要し、また、特にV7、V8、V9は背後にあるので、これらを測定し難い点もある。そのため、本発明者は、標準12誘導心電図の測定信号により、下壁梗塞診断にV7、V8、V9の心電図波形を、右室梗塞診断にV3R、V4R、V5Rの心電図波形を導出し、高精度な診断情報を提供することができる、付加誘導機能を備えた心電計及び付加誘導心電図導出方法を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−34943号公報(段落0020−0033参照)
【特許文献2】特許第4153950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、従来の心電図導出方法(例えば特許文献2)にあっては、電極を取り付けない部位の心電図波形、即ち導出心電図の波形は、変換係数を用いて導出するため、変換係数の精度が被検者の導出心電図、さらに心臓疾患の診断精度に影響を与える。通常、変換係数は、不特定多数人から取得した複数の変換係数の平均値(以下、集団係数という)を用いる。集団係数は統計的に、ある種の変換精度を保証できるが、被検者個人としての最適な変換係数と言い難い。そのため、導出心電図とその“真値”(仮に測定すれば出てくる値)との差は臨床で満足できない場合がある。
【0014】
一方、特定の被検者しか適用しない変換係数(以下、個人係数という)を利用して、未測定部位の心電図波形を導出することも考えられるが、いままではそのような具体的提案も、技術も存在しない。
【0015】
また、いままで提案された導出心電図は12誘導心電図を中心とした提案が殆どだが、被検者が特異な心臓病を持っていた場合、心臓疾患の診断精度を向上させるためには、その被検者の特異な心疾患の診断に有効な部位の導出心電図を生成できる係数(集団係数または個人係数)が多数必要とされる。しかしながら、これらの提案と技術は存在しない。
【0016】
さらに、例え被検者固有の個人係数を利用することを理解されても、この個人係数どのように取得するか、どのように利用するか、また、使用する心電計にその特定被検者の個人係数が存在しない場合に使用できない問題をどのように解決するか、このような技術テーマを解決する提案はいままでは存在しない。
【0017】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消するために成されたものであり、少ない心電図測定電極しか用いなくとも、被検者の心臓疾患の診断精度を向上させることができる導出心電図生成システム及び導出心電図生成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る導出心電図生成システムは、個人係数データベース、集団係数データベース、心電計制御部を有する。個人係数データベースには、被検者の心臓疾患の診断に有効な部位の導出心電図を生成できるようにするため、被検者からあらかじめ取得しておいた被検者固有の個人係数を記憶させてある。集団係数データベースには、被検者の標準的な導出心電図を生成できるようにするため、統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である集団係数を記憶させてある。
【0019】
心電計制御部は、被検者の導出心電図を生成するときに、個人係数データベースに被検者固有の個人係数があるかを見て、個人係数データベースに被検者固有の個人係数があれば、その個人係数を優先的に用いてより精度の高い導出心電図を生成する。個人係数データベースに被検者固有の個人係数がなければ、集団係数データベースにある集団係数を用いて被検者の導出心電図を生成する。
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る導出心電図生成方法は、被検者から取得した個人係数を記憶する個人係数データベースと統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である集団係数を記憶する集団係数データベースとを備えた導出心電図生成システムに適用される。
【0021】
まず、被検者の導出心電図を生成するときに、個人係数データベースに被検者固有の個人係数があるか否かを判断し、次に、個人係数データベースに被検者固有の個人係数があれば、その個人係数を個人係数データベースから取得する。一方、個人係数データベースに被検者固有の個人係数がなければ、被検者の集団係数を集団係数データベースから取得する。そして、取得した個人係数または集団係数を用いて被検者の導出心電図を生成する。
【0022】
被検者の個人係数は、被検者の心臓疾患の診断に有効な任意の部位の導出心電図を生成するために個人に最適な係数として用いられるものである。これに対して、集団係数は、統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である汎用的な係数である。
【0023】
したがって、個人係数を用いることによって、平均的汎用的集団係数を用いるより導出精度を向上でき、被検者の心臓疾患の診断精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被検者の心臓疾患の診断に有効な任意の部位の導出心電図が高い精度で得られるので、被検者の心臓疾患の診断精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る導出心電図生成システムのブロック図である。
【図2】本実施形態に係る心電計のブロック図である。
【図3】本実施形態に係る心電図管理システムのブロック図である。
【図4】本実施形態に係る患者ID管理部のブロック図である。
【図5】本実施形態に係る導出心電図生成方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る導出心電図生成方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】心電計が患者の導出心電図を出力するまでの処理を示すメインフローチャートである。
【図8】図7のメインフローチャートのステップS23(患者ID/患者名照合)のサブルーチンフローチャートである。
【図9】図7のメインフローチャートのステップS25(個人係数検索)のサブルーチンフローチャートである。
【図10】図7のメインフローチャートのステップS28(集団係数検索)のサブルーチンフローチャートである。
【図11】患者の個人係数を算出し、算出した個人係数を個人係数データベースに記憶させるまでの処理を示すメインフローチャートである。
【図12】図11のメインフローチャートのステップS63(個人係数を算出)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【図13】図11のメインフローチャートのステップS64(算出した個人係数をデータベースに登録)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【図14】図13のサブルーチンフローチャートのステップS81(心電計の個人係数データベースに記憶)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【図15】図13のサブルーチンフローチャートのステップS82(心電図管理システムの個人係数データベースに記憶)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態では、被検者の具体例として患者という用語を用いる。被検者には、病院で診察を受ける患者だけではなく、健康診断を行う検診センターや診療所、一般家庭など病院以外の場所での利用者も含まれる。
【0027】
本実施形態の導出心電図生成システム及び導出心電図生成方法は、以下に例示する18(タイプA−タイプR)の導出心電図タイプに対して適用できるのはもちろんのこと、さらに、患者の心臓疾患の診断に有効な任意の部位の導出心電図を生成するための、これら18の導出心電図タイプ以外の患者特有の導出心電図タイプ(オーダーメードの導出心電図タイプ)に対しても適用できる。
【0028】
以下に示す導出12誘導心電図、導出付加誘導心電図(18誘導心電図)はすでに公知の導出心電図タイプである。
【0029】
又、導出付加誘導心電図(ブルガダ診断用導出心電図)及び導出マッピング心電図(160誘導マッピング心電図)は、まだ公知となっておらず一般的には用いられていない導出心電図タイプである。
【0030】
導出付加誘導心電図(ブルガダ診断用導出誘導心電図)のV1+、V2+、V1++、V2++は患者の心臓疾患の診断に有効な部位を示す。V1+はV1誘導の一肋間上の部位、V2+はV2誘導の一肋間上の部位、V1++はV1誘導の二肋間上の部位、V2++はV2誘導の二肋間上の部位である。V1+、V2+、V1++、V2++の部位の導出心電図を取得することによって、ブルガダ症候群と言われる心臓疾患の診断精度が向上する。
【0031】
導出マッピング心電図(160誘導マッピング心電図)は患者の体表面160箇所の導出心電図を生成する。導出マッピング心電図(160誘導マッピング心電図)は任意の部位の導出心電図を容易に得ることができるため、特殊な心臓を持つ患者のどのような心臓疾患でも高精度で診断できる。
A.導出12誘導心電図
(1)4誘導I、II、V2、V4からV1、V3、V5、V6を導出(タイプA)
(2)4誘導I、II、V1、V4からV2、V3、V5、V6を導出(タイプB)
(3)4誘導I、II、V2、V5からV1、V3、V4、V6を導出(タイプC)
(4)4誘導I、II、V1、V5からV2、V3、V4、V6を導出(タイプD)
(5)4誘導I、II、V2、V6からV1、V3、V4、V5を導出(タイプE)
(6)4誘導I、II、V1、V6からV2、V3、V4、V5を導出(タイプF)
B.導出付加誘導心電図(18誘導心電図)
(7)12誘導I、II、V1〜V6から
V7、V8、V9、V3R、V4R、V5Rを導出(タイプG)
(8)12誘導I、II、V1〜V6から
V7、V8、V9、V3R、V4R、V5R、V6Rを導出(タイプH)
(9) 4誘導I、II、V1、V4から
V7、V8、V9、V3R、V4R、V5R、V6Rを導出(タイプI)
(10)4誘導I、II、V2、V5から
V7、V8、V9、V3R、V4R、V5R、V6Rを導出(タイプJ)
(11)4誘導I、II、V1、V5から
V7、V8、V9、V3R、V4R、V5R、V6Rを導出(タイプK)
(12)4誘導I、II、V2、V6から
V7、V8、V9、V3R、V4R、V5R、V6Rを導出(タイプL)
C.導出付加誘導心電図(ブルガダ診断用導出誘導心電図)
(13)12誘導I、II、V1〜V6から
V1+、V2+、V1++、V2++を導出(タイプM)
(14) 4誘導I、II、V1、V4から
V1+、V2+、V1++、V2++を導出(タイプN)
(15) 4誘導I、II、V2、V5から
V1+、V2+、V1++、V2++を導出(タイプO)
(16) 4誘導I、II、V1、V5から
V1+、V2+、V1++、V2++を導出(タイプP)
(17) 4誘導I、II、V2、V6から
V1+、V2+、V1++、V2++を導出(タイプQ)
D.導出マッピング心電図(160誘導マッピング心電図)
(18)12誘導I、II、V1〜V6から
体表面8×20電位マッピングを導出(タイプR)
本実施形態に係る導出心電図生成システムは、標準的に用いられている上記12の導出心電図タイプ(導出12誘導心電図、導出付加誘導心電図(18誘導心電図))に対応する集団係数を記憶したデータベースを備えている。また、上記18の導出心電図タイプのすべてに対応する、又、これら以外のオーダーメードの導出心電図タイプに対応する個人係数を記憶したデータベースを備えている。
【0032】
集団係数又は個人係数を使用して導出心電図を生成することができるのは、次のような原理に依るものである。この原理を上記のタイプCの導出12誘導心電図を例に説明する。
【0033】
タイプCの導出12誘導心電図を生成する場合、患者の体表面に合計6個の心電図測定電極を装着する。心電図測定電極の装着箇所は、I及びII誘導の心電信号を検出するための左右腕部(電極L、R)と左右下肢(電極LL、RL)の4箇所と、胸部誘導の2誘導(V2、V5)の心電信号を検出するための第4肋間胸骨左縁位置と左前腋窩線と第5肋間を横切る水平線との交点位置の2箇所である。
【0034】
これらの心電図測定電極によって検出されるI及びII誘導と胸部誘導の2誘導(V2、V5)の4誘導分の心電信号から、個人係数又は集団係数を用いて、心電図測定電極で実際には測定していない残りの4つのV1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導の胸部誘導の導出心電図を生成する。
【0035】
V1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導(導出誘導ベクトル)の胸部誘導の誘導心電図は、下記の行列式に、個人係数又は集団係数とI及びII誘導と胸部誘導の2誘導(V2誘導、V5誘導)の4誘導分の心電信号(測定誘導ベクトル)を代入し、行列演算することによって求めることができる。
【0036】
【数1】

【0037】
タイプCの導出12誘導心電図の場合、次のような手順で個人係数又は集団係数を求める。
【0038】
患者の個人係数を求める場合、患者の体表面の10箇所に心電図測定電極を装着する。装着する箇所は、I誘導、II誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、V6誘導の10の心電信号を検出できる部位である。10の心電図測定電極から、導出誘導ベクトルであるV1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導と測定誘導ベクトルであるI誘導、II誘導、V2誘導、V5誘導が実測できる。これらの誘導を上記の行列式に代入して患者の個人係数(T1I、T1II、T12、T15、T3I、T3II、T32、T35、T4I、T4II、T42、T45、T6I、T6II、T62、T65)を最小二乗法によって求めることができる。個人係数は、導出心電図生成システムのデータベースに、患者別、導出心電図タイプ別に時系列に記憶する。
【0039】
集団係数を求める場合、統計的に有効な母集団の中の不特定多数の個人から上記のようにして取得した複数の変換係数(T1I、T1II、T12、T15、T3I、T3II、T32、T35、T4I、T4II、T42、T45、T6I、T6II、T62、T65)の平均値を求める。集団係数は、性別、年代別に求め、導出心電図生成システムのデータベースに性別、年代別、導出心電図タイプ別に記憶させる。
【0040】
特異な心臓を持つ患者の心臓疾患の診断に有効な任意の部位の導出心電図を求めたい場合には、心臓疾患の診断に最も有効な部位を選択して心電図測定電極を装着し、上記のような原理を用いて、個人係数を求め、データベースに記憶させておく。その患者の心電図測定を行なう際に、その個人係数を用いれば、その患者の心臓疾患の診断に有効なオーダーメードの導出心電図を高精度で得ることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る導出心電図生成システム及び導出心電図生成方法では、特定の患者の導出心電図の生成に必要な個人係数を作成することができ、その作成した個人係数を用いて導出心電図を生成することで患者の心臓疾患の診断精度を向上させることができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る導出心電図生成システムの構成について説明する。
【0043】
図1は、本実施形態に係る導出心電図生成システムのブロック図である。
【0044】
導出心電図生成システム500は、病院Aが備える心電図管理装置100、病院Bが備える心電図管理装置200、病院Aと病院Bの患者ID(固有IDと個別ID)を管理する患者ID管理部300及び接続回線400を有する。心電図管理装置100、200、患者ID管理部300は接続回線400で相互に接続される。
【0045】
本実施形態では、心電図管理装置100、200を病院に備える場合を例示するが、心電図管理装置100、200は病院に備える場合に限らず、例えば、健康診断を行う検診センターや診療所、学校、老人用施設など病院以外の施設に備えても良い。患者ID管理部300は、心電図管理装置100、200の外部に設けたが、例えば病院Aの心電図管理装置100内に備えても良い。接続回線400は、心電図管理装置100、200と患者ID管理部300を接続する専用回線でも良いし、セキュリティー対策を講じた有線又は無線のインターネット回線であっても良い。
【0046】
病院Aの心電図管理装置100は、心電計110、120、130、心電図管理システム(EMS)140、表示装置150を備える。心電計110、120、130、心電図管理システム(EMS)140、表示装置150は、院内回線160で相互に接続される。病院Bの心電図管理装置200は、心電計210、220、230、心電図管理システム(EMS)240、表示装置250を備える。心電計210、220、230、心電図管理システム(EMS)240、表示装置250は、院内回線260で相互に接続される。院内回線160、260は、心電計110、120、130、210、220、230、心電図管理システム(EMS)140、240及び表示装置150,250を接続するための専用回線でも良いし、有線又は無線のイントラネット回線又はセキュリティー対策を講じた有線又は無線のインターネット回線であっても良い。
【0047】
心電計110、120、130、210、220、230は、患者の個人係数又は集団係数を検索する機能、患者の個人係数を算出し記憶する機能、患者の導出心電図を生成する機能を有する。したがって、心電計110、120、130、210、220、230は、これらの機能を発揮するためのプログラムをインストールしている。ここで、個人係数とは、特定の患者から取得した変換係数である。集団係数とは、統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である。個人係数又は集団係数は、患者の導出心電図を生成するときに使用する。
【0048】
心電図管理システム140は、院内回線160によって、心電計110、120、130と相互に接続される。心電図管理システム140は、心電計110、120、130との間で、患者情報、生成した心電図データ、個人係数など、導出心電図に関する情報の授受を行ない、導出心電図に関する情報を管理する。心電図管理システム240は、院内回線260によって、心電計210、220、230と相互に接続される。心電図管理システム240は、心電計210、220、230との間で、患者情報、生成した心電図データ、個人係数など、導出心電図に関する情報の授受を行ない、導出心電図に関する情報を管理する。
【0049】
心電図管理システム140、240は、心電計110、120、130、210、220、230が接続回線400を介して要求してきた患者の個人係数を検索し、検索した個人係数を要求した心電計に向けて出力する機能を備えている。したがって、心電図管理システム140、240は、この機能を発揮するためのプログラムをインストールしている。
【0050】
表示装置150は、心電計110、120、130が生成した患者の導出心電図を心電図管理システム140から取り込み、操作者が指定する患者の導出心電図を表示する。また、心電計110、120、130で取得した導出心電図に関する情報を表示する。表示装置250は、心電計210、220、230が生成した患者の導出心電図を心電図管理システム240から取り込み、操作者が指定する患者の導出心電図を表示する。また、心電計210、220、230で取得した導出心電図に関する情報を表示する。
【0051】
患者ID管理部300は、心電図管理システム140、240が互いに特定の患者の個人係数を検索し合うときに、同一の患者に対し異なる病院で付された個別IDをその病院の個別IDに変換する機能を備えている。例えば、同一患者に対してA病院では「A123」という個別IDが付され、B病院では「B456」という個別IDが付されていた場合に、「A123」の個別IDを「B456」に、「B456」の個別IDを「A123」に相互に変換する。病院間における個別IDの変換には固有IDを用いる。固有IDは、その患者に対して世界に1つだけ与えられるIDである。このIDは世界中のどの病院に行っても共通に使用できるその患者に固有のものであり、同一の患者に対して二重登録はできないようになっている。患者ID管理部300は、固有IDと個別IDの対照表を持っており、その対照表は心電図管理システム140、240からの要求によって常に更新されている。
【0052】
図2は、本実施形態に係る心電計のブロック図である。以下では心電計110の構成について説明するが、心電計120、130、210、220、230の構成も心電計110の構成と同一である。
【0053】
心電計110は、患者情報入力部111、患者情報記憶部112、個人係数データベース113、集団係数データベース114、心電図測定電極115、表示部116、心電計制御部117、通信部118を備える。
【0054】
患者情報入力部111は患者情報を入力する。患者情報入力部111は、操作者がキーを操作することにより、患者ID(固有IDと個別ID)(個人係数取得用)、患者名(個人係数取得用)、患者年齢(集団係数取得用)、患者性別(集団係数取得用)、測定誘導数(個人係数取得/記憶用)、測定誘導名(個人係数取得/記憶用)、導出誘導数(個人係数取得/記憶用)、導出誘導名(個人係数取得/記憶用)を入力する。測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名を入力することによって、導出心電図タイプの特定ができる。
【0055】
例えば、病院Aでは、操作者が、患者IDとして固有ID「C123」と個別ID「A123」を入力し、続いて、患者名、患者年齢、患者性別を入力する。上述したタイプCの導出12誘導心電図を取得したいのであれば、操作者が、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」を入力する。
【0056】
患者情報記憶部112は、患者情報入力部111より入力した患者情報を記憶する。例えば、上述の場合、患者の固有ID「C123」と患者の個別ID「A123」、患者名、患者年齢、患者性別、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」をそれぞれ記憶する。
【0057】
個人係数データベース113は、特定の患者からあらかじめ取得しておいた、前述した18の導出心電図タイプ(タイプAからタイプR)のすべてに対応する、又、これら以外のオーダーメードの導出心電図タイプに対応する患者固有の個人係数を記憶する。特定の患者の心臓疾患の診断に有効な部位の導出心電図を生成するためである。
【0058】
患者の個人係数は、患者別、導出心電図タイプ別に時系列に記憶する。例えば、上述の場合、患者を特定するために、患者の固有ID「C123」と患者の個別ID「A123」を、導出心電図タイプを特定するために、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」を、それぞれ個人係数の付加情報として付加し時系列に記憶する。
【0059】
通常、導出心電図を生成するときには1つの最新の個人係数を用いれば足りる。それでも時系列に複数の個人係数を記憶しておくのは、個人係数の変化又は過去の個人係数から現在の個人係数を用いて生成される導出心電図の変化を見ることによって病状の進行、回復の状態を把握できる場合があるからである。
【0060】
集団係数データベース114は、患者の標準的な導出心電図タイプ(例えば上述したタイプCの導出12誘導心電図)を生成するため、統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である集団係数を記憶する。集団係数は、患者の年齢、性別、導出心電図タイプを集団係数の付加情報として付加し記憶する。
【0061】
心電図測定電極115は患者の体表面に装着する電極である。心電図測定電極115は、患者の導出心電図を取得するとき、患者の個人係数を取得するときに使用される。
【0062】
表示部116は、患者情報入力部111で入力する患者情報をディスプレイに表示したり、生成した導出心電図をプリントアウトしたりする。
【0063】
心電計制御部117は、心電計110の動作を総括的に制御する。心電計制御部117は、患者の個人係数を個人係数データベース113から、又は、集団係数を集団係数データベース114から選択する機能、患者の個人係数を演算して個人係数データベース113に記憶する機能、選択した個人係数又は集団係数を用いて患者の導出心電図を生成する機能を有する。心電計制御部117は、これらの機能を実現するためのプログラムを備えている。心電図制御部117の詳細な動作は後述する。
【0064】
通信部118は、患者の個人係数を心電図管理システム140に送信し、逆に、要求された患者の個人係数を心電図管理システム140から受信する。個人係数の送受信は院内回線160を介して行なう。
【0065】
図3は、本実施形態に係る心電図管理システムのブロック図である。以下では心電図管理システム140の構成について説明するが、心電図管理システム240の構成も心電図管理システム140の構成と同一である。
【0066】
心電図管理システム140は、患者情報記憶部142、個人係数データベース143、個人係数管理部147、通信部148を備える。
【0067】
患者情報記憶部142は、心電計110、120、130の患者情報記憶部(心電計110では患者情報記憶部112)が記憶する患者情報と同一の患者情報を記憶する。患者情報記憶部142は、院内回線160に接続する心電計110、120、130の患者情報のすべてを一括して記憶する。
【0068】
個人係数データベース143は、心電計110、120、130の個人係数データベース(心電計110では個人係数データベース113)に記憶される個人係数と同一の個人係数を記憶する。個人係数データベース143は、院内回線160に接続する心電計110、120、130の個人係数のすべてを一括して記憶する。
【0069】
個人係数管理部147は、心電図管理システム140の動作を総括的に制御する。個人係数管理部147は、患者情報記憶部142に患者情報を記憶する機能、患者の個人係数を個人係数データベース143に記憶したり個人係数データベース143から取り出したりする機能を有する。個人係数管理部147の詳細な動作は後述する。
【0070】
通信部148は、患者情報及び個人係数を心電計110、120、130から受信し、又、個人係数を心電計110、120、130に送信する。さらに、通信部148は、患者ID管理部300に患者IDを送信し、変換された患者IDを受信する。患者情報及び個人係数の送受信は院内回線160を介して行ない、患者IDの送受信は接続回線400を介して行なう。
【0071】
図4は、本実施形態に係る患者ID管理部のブロック図である。
【0072】
患者ID管理部300は、患者IDデータベース310、患者ID変換部320、通信部330を備える。
【0073】
患者IDデータベース310は、患者の固有IDと個別IDとを対応付けて記憶する。例えば、固有IDが「C123」、A病院の個別IDが「A123」、B病院の個別IDが「B456」であるときには、「C123」−「A123」、「C123」−「B456」と記憶する。
【0074】
患者ID変換部320は、患者の固有IDを参照して各病院の個別IDに変換する。
【0075】
例えば、A病院からB病院に個人係数を捜しに行く場合、固有ID「C123」を頼りに、患者IDデータベース310にアクセスし、A病院の個別ID「A123」をB病院の個別ID「B456」に変換する。
【0076】
通信部330は、心電図管理システム140、240から送信される患者の固有ID及び個別IDを受信し、患者ID変換部320で変換された個別IDを心電図管理システム140、240に送信する。
【0077】
本実施形態に係る導出心電図生成システムの構成は上述の通りである。
【0078】
次に、図5及び図6のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係る導出心電図生成システムの動作を説明する。図5のフローチャートにおいて、ステップS1からS3、ステップS8の動作は心電計の操作者が行ない、ステップS4からS7の動作は心電計制御部117が行なう。ステップS4からS7の動作は本実施形態に係る導出心電図生成方法の手順を示す。心電計制御部117の動作は、上述したタイプCの導出12誘導心電図を取得する場合を想定して説明する。
【0079】
まず、図2に示す心電計110の操作者が患者の体表面の所定の部位に心電図測定電極115を装着する。タイプCの導出12誘導心電図を取得する場合は、I及びII誘導の心電信号を取得するために左右腕部(電極L、R)と左右下肢(電極LL、RL)の4箇所と、胸部誘導の2誘導(V2誘導、V5誘導)の心電信号を取得するために第4肋間胸骨左縁位置と左前腋窩線と第5肋間を横切る水平線との交点位置の2箇所の、合計6箇所の測定部位に心電図測定電極115を装着する(ステップS1)。
【0080】
次に、操作者は、患者情報入力部111から患者情報を入力する。例えば、病院Aでは、患者IDとして固有ID「C123」と個別ID「A123」を入力する。続いて、患者名、患者年齢、患者性別を入力する。そして、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」を入力する(ステップS2)。
【0081】
そして、操作者は、心電計110の測定スイッチ(図示せず)をONする。測定スイッチがONされることによって、導出心電図の生成が開始される(ステップS3)。
【0082】
心電計制御部117は、患者に装着した6個の心電図測定電極115から測定部位の心電図信号を取得する(ステップS4)。
【0083】
次に、心電計制御部117は、患者情報に合致した個人係数が導出心電図生成システム内にあるか否かを判断する。具体的には、患者情報入力部111から入力した固有ID「C123」と個別ID「A123」、測定誘導数「12」、測定誘導名「I、II、V2、V5」、導出誘導数「4」、導出誘導名「V1、V3、V4、V6」に合致した個人係数が、個人係数データベース113、143、心電図管理システム240の個人係数データベースにあるか否かを判断する。心電計制御部117が個人係数を検索する順番は、心電計110内の個人係数データベース113、次に、病院A内にある心電図管理システム140の個人係数データベース143、そして、最後に病院B内にある心電図管理システム240の個人係数データベースである。本実施形態の場合は、このような順番で個人係数を検索するようにしているが、この順番は任意の順番であってもよい。
【0084】
なお、心電図管理システム240の個人係数データベースに対して個人係数の検索をする場合、個人係数データベースはB病院の心電図管理システム240にあるので、患者ID管理部300により、A病院の個別ID「A123」をB病院の個別ID「B456」に変換する。個別ID「A123」から個別ID「B456」への変換は、固有ID「C123」に基づいて行なう。そして、心電計制御部117は、変換された個別ID「B456」、測定誘導数「12」、測定誘導名「I、II、V2、V5」、導出誘導数「4」、導出誘導名「V1、V3、V4、V6」に合致した個人係数が心電図管理システム240の個人係数データベースにあるか否かを判断する(ステップS5)。
【0085】
心電計制御部117は、個人係数データベース113、143、243のいずれかに患者情報に合致した個人係数があれば、個人係数データベース113、143、心電図管理システム240の個人係数データベースのいずれかから個人係数を取得する。なお、個人係数が複数ある場合には(ステップS5:YES)、最新の個人係数を取得する。そして、心電計制御部117は、取得した個人係数を用いて6個の心電図測定電極115から取得した心電図信号に基づいてタイプCの導出12誘導心電図を生成し出力する。このときに生成される導出心電図は患者固有係数を用いたため、患者に最適な導出12誘導心電図である(ステップS6)。
【0086】
心電計制御部117は、個人係数データベース113、143、心電図管理システム240の個人係数データベースのいずれにも患者情報に合致した個人係数がなければ(ステップ5:NO)、集団係数データベース114から患者情報として入力した患者年齢、患者性別、測定誘導数「12」、測定誘導名「I、II、V2、V5」、導出誘導数「4」、導出誘導名「V1、V3、V4、V6」に合致する集団係数を取得する。そして、心電計制御部117は、取得した集団係数を用いて6個の心電図測定電極115から取得した心電図信号に基づいてタイプCの導出12誘導心電図を生成し出力する。このときに生成される導出心電図は平均的精度を有する導出12誘導心電図となる(ステップS7)。
【0087】
最後に、操作者または診断者、あるいは自動診断プログラムは、心電計110が出力したタイプCの導出12誘導心電図の心電図波形を見て、患者の心臓疾患の有無や程度を診断する(ステップS8)。
【0088】
以上のように、心電計110は、患者の個人係数がある場合には、その個人係数を用いて導出心電図を生成し、患者の個人係数がない場合には、集団係数を用いて導出心電図を生成する。
【0089】
したがって、特異な心臓を持つ患者の個人係数を個人係数データベース113、143に記憶しておくことによって、その患者の心臓疾患の診断に有効な部位の導出心電図を高精度に生成することができる。又、患者の個人係数がない場合でも集団係数を用いて標準的な導出心電図を取得することができる。この場合、平均的な精度を有する導出心電図が取得できる。いずれも、失敗することなく、臨床に実用的な導出心電図を得ることができる。
【0090】
患者の心臓疾患の診断にとって有効な部位の導出心電図を取得できるようにするためには、あらかじめ患者固有の個人係数を作成し個人係数データベース113、143に記憶させておく必要がある。次に、図6のフローチャートを参照しつつ、心電計制御部117で個人係数を算出し個人係数を個人係数データベース113、143に記憶させるまでの手順を説明する。
【0091】
図6のフローチャートにおいて、ステップS10からS12の動作は心電計の操作者が行ない、ステップS13からS15の動作は心電計制御部117が行なう。ステップS13からS15の動作は本実施形態に係る導出心電図生成方法の手順を示す。心電計制御部117の動作は、上述したタイプCの導出12誘導心電図を取得する場合を想定して説明する。
【0092】
まず、図2に示す心電計110の操作者が患者の体表面の任意の部位に心電図測定電極115を装着する。タイプCの導出12誘導心電図の個人係数を求める場合、導出誘導部位と測定誘導部位に対応する患者の体表面の10箇所に心電図測定電極115を装着する。装着する箇所は、I誘導、II誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、V6誘導の10の心電信号を取得する部位である。他の導出心電図タイプの個人係数を求める場合は、患者の診断に有効な導出心電図が生成できる任意の部位に心電図測定電極115を装着する(ステップS10)。
【0093】
次に、操作者は、患者情報入力部111から患者情報を入力する。例えば、病院Aでは、患者IDとして固有ID「C123」と個別ID「A123」を入力する。続いて、患者名、患者年齢、患者性別を入力する。そして、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」を入力する(ステップS11)。
【0094】
そして、操作者は、心電計110の測定スイッチ(図示せず)をONする(ステップS12)。心電計制御部117は患者に装着した10個の心電図測定電極115から測定部位の心電図信号を取得する。10箇所の心電図測定電極115から、導出誘導ベクトルであるV1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導と測定誘導ベクトルであるI誘導、II誘導、V2誘導、V5誘導が実測できる(ステップS13)。
【0095】
心電計制御部117は10個の心電図測定電極115によって実測した誘導を前述の行列式に代入して患者の個人係数を算出する(ステップS14)。心電計制御部117は算出した個人係数を個人係数データベース113に記憶し、同時に、心電図管理システム140の個人係数データベース143にも、その個人係数を記憶させる。個人係数を記憶するときには、患者の固有ID「C123」と患者の個別ID「A123」、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」を個人係数の付加情報として付加し時系列に記憶する(ステップS15)。
【0096】
以上が本実施形態に係る導出心電図生成システム及び導出心電図生成方法の概略の動作である。
【0097】
次に、図7から図14のフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る導出心電図生成システムの動作をさらに詳細に説明する。
【0098】
図7は、心電計110が患者の導出心電図を出力するまでの処理を示すメインフローチャートである。このメインフローチャートは、心電計110の心電計制御部117によって処理される。
【0099】
心電計制御部117は、患者情報入力部111から入力された患者情報を取得する。患者情報は、患者ID(固有IDと個別ID)、患者名、患者年齢、患者性別、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名である。測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名は導出心電図タイプを示す。患者ID、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名は、患者の個人係数を検索するときに使用される。患者年齢、患者性別、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名は、集団係数を検索するときに使用される(ステップS21)。
【0100】
心電計制御部117は、患者に装着した複数の心電図測定電極115から測定部位の心電図信号を取得する(ステップS22)。心電計制御部117は、患者IDと患者名を患者情報記憶部112に記憶されている患者IDと患者名と照合する(ステップS23)。
【0101】
患者情報記憶部112に一致する患者IDと患者名があれば照合OKであるので(ステップS24:YES)、個人係数データベース113、143または心電図管理システム240の個人係数データベースに記憶されている個人係数を検索する(ステップS25)。
【0102】
個人係数データベース113、143または心電図管理システム240の個人係数データベースのいずれかにその患者の個人係数があれば(ステップS26:YES)、心電計制御部117は、個人係数データベース113、143または心電図管理システム240の個人係数データベースのいずれかからその患者の個人係数を取得する。心電計制御部117は、複数の心電図測定電極115が取得した心電図信号を、取得した個人係数を用いて加工し導出心電図を生成する(ステップS27)。
【0103】
一方、患者情報記憶部112に一致する患者IDと患者名がない場合(ステップS24:NO)、又は、個人係数データベース113、143または心電図管理システム240の個人係数データベースのいずれにも、その患者の個人係数がない場合(ステップS26:NO)には、心電計制御部117は、集団係数データベース114に記憶されている集団係数を検索する(ステップS28)。
【0104】
心電計制御部117は、患者の性別と年齢、導出心電図タイプを見て、集団係数データベース114から患者に最適な集団係数を取得する。心電計制御部117は、複数の心電図測定電極115が検出した心電図信号を、取得した集団係数を用いて加工し導出心電図を生成する(ステップS29)。心電計制御部117は生成した導出心電図を表示部116に出力する(ステップS30)。
【0105】
図8は、図7のメインフローチャートのステップS23(患者ID/患者名照合)のサブルーチンフローチャートである。このサブルーチンフローチャートは心電計制御部117によって処理される。
【0106】
心電計制御部117は、患者情報入力部111から入力された患者情報のうち、患者IDと患者名を取得する(ステップS31)。心電計制御部117は、患者情報記憶部112、142に記憶されている患者IDを検索する(ステップS32)。患者情報記憶部112、142のいずれかに患者情報入力部111から入力された患者IDと同一の患者IDがあれば(ステップS33:YES)、心電計制御部117は、患者情報記憶部112に記憶されている患者名を検索する(ステップS34)。患者情報記憶部112、142のいずれかに患者情報入力部111から入力された患者名と同一の患者名があれば(ステップS35:YES)、照合OKの信号を出力する(ステップS36)。患者情報記憶部112、142のいずれかに患者情報入力部111から入力された患者IDと同一の患者IDがない場合(ステップS33:NO)、又は、患者情報記憶部112、142のいずれかに患者情報入力部111から入力された患者名と同一の患者名がない場合には(ステップS35:NO)、照合NGの信号を出力し、心電計制御部117は、表示部116に、「個人係数を作成するため実測を行い登録してください。」とのメッセージを表示する(ステップS37)。
【0107】
つまり、入力された患者IDと患者名が心電計110または心電図管理システム140に登録されている患者IDと患者名に一致していれば照合OKとし、入力された患者IDまたは患者名のいずれかが一致しなければ照合NGとする。照合NGの場合には、個人係数データベース113、143に患者の個人係数は記憶されていないので、個人係数の取得を促すメッセージを出力する。
【0108】
図9は、図7のメインフローチャートのステップS25(個人係数検索)のサブルーチンフローチャートである。このサブルーチンフローチャートは心電計制御部117によって処理される。
【0109】
心電計制御部117は患者情報入力部111から入力された患者情報のうち導出心電図タイプを取得する。例えば、タイプCの導出心電図を指定している場合には、測定誘導数「12」、測定誘導名「I、II、V2、V5」、導出誘導数「4」、導出誘導名「V1、V3、V4、V6」を取得する(ステップS41)。次に、心電計制御部117は心電計110の個人係数データベース113から患者ID、導出心電図タイプに合致する個人係数を検索する。つまり、心電計110に患者が指定した導出心電図タイプの個人係数があるかを検索する(ステップS42)。心電計110に患者が指定した導出心電図タイプの個人係数があれば(ステップS43:YES)、心電計制御部117は個人係数データベース113からその個人係数を取得する(ステップS44)。
【0110】
一方、心電計110の個人係数データベース113に患者が指定した導出心電図タイプの個人係数がなければ(ステップS43:NO)、心電計制御部117は心電図管理システム140の個人係数データベース143から患者ID、導出心電図タイプに合致する個人係数を検索する。つまり、心電図管理システム140に患者が指定したタイプの個人係数があるかを検索する(ステップS45)。心電図管理システム140に患者が指定したタイプの個人係数があれば(ステップS46:YES)、心電計制御部117は個人係数データベース143からその個人係数を取得する(ステップS44)。
【0111】
一方、心電図管理システム140の個人係数データベース143に患者が指定した導出心電図タイプの個人係数がなければ(ステップS46:NO)、心電計制御部117は心電図管理システム140、240間で患者ID、誘導心電図タイプに合致する個人係数を検索する。本実施形態の場合、心電図管理システム240から患者ID、導出心電図タイプに合致する個人係数を検索する。心電図管理システム140、240間の個人係数の検索は、患者ID変換部320が患者の固有IDを用いて変換した個人IDを用いることによって行なう(ステップS47)。心電図管理システム240の個人係数データベースに患者が指定した導出心電図タイプの個人係数があれば(ステップS48:YES)、心電計制御部117は心電図管理システム240の個人係数データベースからその個人係数を取得する(ステップS44)。
【0112】
心電図管理システム240の個人係数データベースにその個人係数がなければ、心電計制御部117は、表示部116に、「個人係数を作成するため実測を行い登録してください。」とのメッセージを表示する(ステップS49)。
【0113】
図10は、図7のメインフローチャートのステップS28(集団係数検索)のサブルーチンフローチャートである。このサブルーチンフローチャートは心電計制御部117によって処理される。
【0114】
心電計制御部117は患者情報入力部111から入力された患者情報のうち導出心電図のタイプを取得する。例えば、タイプCの導出心電図を指定している場合には、測定誘導数「12」、測定誘導名「I、II、V2、V5」、導出誘導数「4」、導出誘導名「V1、V3、V4、V6」を取得する(ステップS51)。
【0115】
次に、心電計制御部117は心電計110の集団係数データベース114から患者ID患者性別、患者年齢、導出心電図タイプに合致する集団係数を検索する。つまり、心電計110に患者が指定した導出心電図タイプの集団係数があるかを検索する(ステップS52)。心電計制御部117は心電計110の集団係数データベース114からその集団係数を取得する(ステップS53)。
【0116】
図11は、患者の個人係数を算出し、算出した個人係数を個人係数データベースに記憶させるまでの処理を示すメインフローチャートである。このメインフローチャートは心電計制御部117によって処理される。
【0117】
心電計制御部117は、患者情報入力部111から入力された患者情報を取得する。患者情報は、患者ID(固有IDと個別ID)、患者名、患者年齢、患者性別、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名である。測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名は導出心電図タイプを示す。患者ID、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名は、患者の個人係数を個人係数データベースに記憶させるときに使用する(ステップS61)。
【0118】
心電計制御部117は患者に装着した複数の心電図測定電極115から任意の測定部位の心電図信号を取得する。タイプCの導出12誘導心電図の個人係数を算出する場合、導出誘導部位と測定誘導部位に対応する患者の体表面の10箇所に心電図測定電極115を装着する。装着する箇所は、I誘導、II誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、V6誘導の10の心電信号を検出する部位である。心電計制御部117は10箇所の心電図測定電極115から、導出誘導ベクトルであるV1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導と測定誘導ベクトルであるI誘導、II誘導、V2誘導、V5誘導を実測する(ステップS62)。
【0119】
心電計制御部117は10個の心電図測定電極115によって実測した誘導を前述の行列式に代入して患者の個人係数を演算する(ステップS63)。
【0120】
次に、心電計制御部117は演算した個人係数を、導出心電図生成システムのデータベースに、導出心電図タイプ別、患者別、時系列に記憶させる(ステップS64)。
【0121】
心電計制御部117は、ステップS61で取得した患者情報を、心電計110の患者情報記憶部112に記憶させ、同時に、心電図管理システム140の患者情報記憶部142に記憶させる。患者情報記憶部142に患者情報を記憶させる場合には、心電計制御部117が通信部118から院内回線160を介して患者情報を送信し、これを心電図管理システム140の通信部148を介して個人係数管理部147が受信する。次に、個人係数管理部147が受信した患者情報を患者情報記憶部142に記憶させる(ステップS65)。そして、心電計制御部117は、ステップS61で取得した患者情報のうちの患者ID(固有IDと個別ID)を患者ID管理部300の患者IDデータベース310に記憶させる。患者IDデータベース310に患者IDを記憶させる場合には、心電計制御部117が通信部118から院内回線160及び接続回線400を介して患者IDを送信し、これを患者ID管理部300の通信部330を介して患者ID変換部320が受信する。次に、患者ID変換部320が受信した患者IDを患者IDデータベース310に記憶させる(ステップS66)。
【0122】
図12は、図11のメインフローチャートのステップS63(個人係数を算出)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。このフローチャートは心電計制御部117によって処理される。
【0123】
心電計制御部117は、10個の心電図測定電極115によって実測した、導出誘導ベクトルであるV1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導と測定誘導ベクトルであるI誘導、II誘導、V2誘導、V5誘導の値を上述した行列式に代入する(ステップS71)。次に、心電計制御部117は、V1誘導、V3誘導、V4誘導、V6誘導の値とI誘導、II誘導、V2誘導、V5誘導の値とから、変換係数の値を求める(ステップS72)。最後に、心電計制御部117は、求めた変換係数に患者情報を付加して個人係数を算出する。具体的には、付加する患者情報は、患者ID(固有IDと個別ID)、導出心電図タイプを示す測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名である。上記の場合、患者の固有ID「C123」と患者の個別ID「A123」、測定誘導数として「12」、測定誘導名として「I、II、V2、V5」、導出誘導数として「4」、導出誘導名として「V1、V3、V4、V6」を付加情報として付加し個人係数を算出する(ステップS73)。
【0124】
図13は、図11のメインフローチャートのステップS64(算出した個人係数をデータベースに登録)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。このフローチャートは心電計制御部117と個人係数管理部147とによって処理される。
【0125】
まず、心電計制御部117は、算出した個人係数を個人係数データベース113に記憶する(ステップS81)。次に、個人係数管理部147は、心電計制御部117から送られてきた個人係数を個人係数データベース143に記憶する(ステップS82)。これらのステップの詳細な処理は図14及び図15のサブルーチンフローチャートに示す。
【0126】
図14は、図13のサブルーチンフローチャートのステップS81(心電計の個人係数データベースに記憶)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。このフローチャートは心電計制御部117によって処理される。
【0127】
まず、心電計制御部117は、患者情報入力部111から入力された患者情報を取得する。患者情報は、患者ID(固有IDと個別ID)、患者名、患者年齢、患者性別、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名である(ステップS91)。心電計制御部117は、患者IDを患者情報記憶部112に記憶されている患者IDと照合する(ステップS92)。患者情報記憶部112に一致する患者IDがあれば照合OKであるので(ステップS93:YES)、患者情報記憶部112に記憶されている個人係数の導出心電図タイプを照合する。導出心電図タイプは、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名を使用して照合する(ステップS94)。個人係数データベース113に一致する導出心電図タイプの個人係数があれば照合OKであるので(ステップS95:YES)、心電計制御部117は、個人係数データベース113における患者の同一導出心電図タイプの記憶領域に個人係数を追加記憶する。つまり、同一の患者が同一の導出心電図タイプの個人係数を既に持っている場合には、新たに算出された個人係数が時系列に追加記憶されることになる(ステップS96)。個人係数を時系列に更新することによって、いつも患者の心臓状態に最適な係数を選べ、高精度な導出心電図を生成できる。
【0128】
一方、患者情報記憶部112に一致する患者IDがなく照合NGとなったとき(ステップS93:NO)、又は、個人係数データベース113に一致する導出心電図タイプの個人係数がなく照合NGとなったときには(ステップS95:NO)、患者の個人係数が個人係数データベース113にないので、心電計制御部117は、個人係数データベース113に個人係数を新規記憶する(ステップS97)。
【0129】
図15は、図13のサブルーチンフローチャートのステップS82(心電図管理システムの個人係数データベースに記憶)の処理を示すサブルーチンフローチャートである。このフローチャートは個人係数管理部147によって処理される。
【0130】
まず、心電図管理システム140の個人係数管理部147は、心電計110から患者情報を取得する。患者情報は、患者ID(固有IDと個別ID)、患者名、患者年齢、患者性別、測定誘導数、測定誘導名、導出誘導数、導出誘導名である(ステップS101)。個人係数管理部147は、患者IDを患者情報記憶部142に記憶されている患者IDと照合する(ステップS102)。患者情報記憶部142に一致する患者IDがあれば照合OKであるので(ステップS103:YES)、患者情報記憶部142に記憶されている個人係数の導出心電図タイプを照合する(ステップS104)。個人係数データベース143に一致する導出心電図タイプの個人係数があれば照合OKであるので(ステップS105:YES)、個人係数管理部147は、個人係数データベース143における患者の同一導出心電図タイプの記憶領域に個人係数を追加記憶する。つまり、同一の患者が同一の導出心電図タイプの個人係数を既に持っている場合には、新たに算出された個人係数が時系列に追加記憶されることになる(ステップS106)。
【0131】
一方、患者情報記憶部142に一致する患者IDがなく照合NGとなったとき(ステップS103:NO)、又は、個人係数データベース143に一致する導出心電図タイプの個人係数がなく照合NGとなったときには(ステップS105:NO)、患者の個人係数が個人係数データベース143にないので、個人係数管理部147は、個人係数データベース143に個人係数を新規記憶する(ステップS107)。
【0132】
以上のように、本実施形態に係る導出心電図生成システム及び導出心電図生成装置によれば、患者の心臓疾患の診断に最適な導出心電図を取得するための患者固有の個人係数を用いるので、診断精度を向上させることが可能になる。
【0133】
なお、本実施形態では、個人係数を、患者別、導出心電図タイプに時系列に記憶させる場合を例示したが、心電計の記憶容量が少ない場合には、時系列ではなく、最新の個人係数のみを更新記憶させるようにしても良い。また、本実施形態では、特定の患者の個人係数が存在する場合には、その個人係数が例えば2、3年前であっても使用することができるようになっている。しかし、患者の心臓疾患を高精度で診察できるようにするためには、なるべく近い時期に取得した個人係数を用いて導出心電図を生成することが望ましい。したがって、個人係数の使用可能期限(例えば取得から1年間)を設け、その使用期限が過ぎている場合には、個人係数が存在しないときと同様に、個人係数の取得を促し、図12に示したような処理を行なわせるようにしても良い。
【0134】
また、本実施形態では、病院間での個人係数の検索、取得のために個別IDの変換を行なっている。この個別IDの変換は固有IDにより行なっている。IDの変換手法には公知となっている様々な手法があるので、本実施形態で例示したIDの変換手法に限らず、公知となっている様々な手法を利用しても良い。例えば、病院間のIDの変換ソフトとしては、OpenPIXPDQというオープンソフトが知られているが、このようなオープンソフトを用いてIDの変換を行なっても良い。
【0135】
なお、図1から図4に示した本実施形態に係る導出心電図生成システムの構成は本発明を実施するための一形態であり、本発明はこの形態に限定されるものではない。患者固有の個人係数と集団係数を有し、患者固有の個人係数あるときにはその個人係数を用いて、患者の個人係数がないときには集団係数を用いて、導出心電図を生成するものは本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0136】
100、200 心電図管理装置、
110、120、130、210、220、230 心電計、
111 患者情報入力部、
112 患者情報記憶部、
113 個人係数データベース、
114 集団係数データベース、
115 心電図測定電極、
116 表示部、
117 心電計制御部、
118 通信部、
140、240 心電図管理システム、
142 患者情報記憶部、
143 個人係数データベース、
147 個人係数管理部、
148 通信部、
150、250 表示装置、
160、260 院内回線、
300 患者ID管理部、
310 患者IDデータベース、
320 患者ID変換部、
330 通信部、
400 接続回線、
500 導出心電図生成システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の導出心電図を生成するため前記被検者から取得した被検者固有の個人係数を記憶する個人係数データベースと、
前記被検者の導出心電図を生成するため統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である集団係数を記憶する集団係数データベースと、
前記個人係数データベースに前記被検者から取得した個人係数があれば当該個人係数を用いて前記被検者固有の導出心電図を生成する一方、前記個人係数データベースに前記被検者から取得した個人係数がなければ前記集団係数データベースにある集団係数を用いて前記被検者の導出心電図を生成する心電計制御部と、
を有することを特徴とする導出心電図生成システム。
【請求項2】
被検者の体表面の任意の測定部位に装着して心電図信号を検出する複数の心電図測定電極をさらに有し、
前記心電計制御部は、前記心電図測定電極が取得した心電図信号から前記被検者の個人係数を算出し、算出した個人係数を前記個人係数データベースに記憶することを特徴とする請求項1に記載の導出心電図生成システム。
【請求項3】
前記被検者の個人係数は、導出心電図タイプ別に前記個人係数データベースに記憶することを特徴とする請求項2に記載の導出心電図生成システム。
【請求項4】
前記心電計制御部は、前記個人係数データベースに前記被検者から取得した個人係数がなければ、前記個人係数の作成を促すメッセージを表示することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導出心電図生成システム。
【請求項5】
前記導出心電図生成システムは、前記被検者の導出心電図を生成する心電計、前記心電計の導出心電図に関する情報を管理する心電図管理システムを有し、
前記個人係数データベースは、前記心電計と前記心電図管理システムにそれぞれ設けられ、前記集団係数データベース及び前記心電計制御部は、前記心電計に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の導出心電図生成システム。
【請求項6】
前記導出心電図生成システムは、前記心電計と前記心電図管理システムを有する心電図管理装置を複数備え、複数の心電図管理装置は接続回線で相互に接続されることを特徴とする請求項5に記載の導出心電図生成システム。
【請求項7】
前記心電図管理装置が有する前記心電計の心電図制御部は、前記心電計の個人係数データベース、前記心電図管理装置が有する心電図管理システムの個人係数データベース、当該心電図管理装置とは異なる心電図管理装置が有する心電図管理システムの個人係数データベースのいずれかから前記被検者の個人係数を取得することを特徴とする請求項6に記載の導出心電図生成システム。
【請求項8】
前記心電図管理装置が有する前記心電計の心電図制御部は、取得する個人係数を、前記心電計の個人係数データベース、前記心電図管理装置が有する心電図管理システムの個人係数データベース、当該心電図管理装置とは異なる心電図管理装置が有する心電図管理システムの個人係数データベースの順番に検索することを特徴とする請求項7に記載の導出心電図生成システム。
【請求項9】
前記個人係数は、前記被検者に最適な導出心電図を生成するための前記被検者固有の個人係数を含み、導出心電図タイプ別、被検者別、時系列に記憶されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の導出心電図生成システム。
【請求項10】
前記集団係数は、前記被検者の心臓疾患を診断する導出心電図を生成するため、性別、年代別、導出心電図タイプ別に記憶されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の導出心電図生成システム。
【請求項11】
被検者から取得した個人係数を記憶する個人係数データベースと統計的に有効な母集団の不特定多数の人から取得した複数の変換係数の平均値である集団係数を記憶する集団係数データベースとを備えた導出心電図生成システムにおける導出心電図生成方法であって、
前記被検者の導出心電図を生成するときに、前記個人係数データベースに被検者固有の個人係数があるか否かを判断する段階と、
前記個人係数データベースに前記被検者固有の個人係数があれば、当該個人係数を前記個人係数データベースから取得する一方、前記個人係数データベースに前記被検者固有の個人係数がなければ、前記被検者の導出心電図を生成するための集団係数を前記集団係数データベースから取得する段階と、
取得した個人係数または集団係数を用いて前記被検者の導出心電図を生成する段階と、
を含むことを特徴とする導出心電図生成方法。
【請求項12】
さらに、前記個人係数データベースに前記被検者固有の個人係数がない場合、被検者の体表面の任意の測定部位に複数の心電図測定電極を装着して心電図信号を取得する段階と、
取得した心電図信号から前記被検者の個人係数を算出する段階と、
算出した個人係数を前記個人係数データベースに記憶させる段階と、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の導出心電図生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−29904(P2012−29904A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172483(P2010−172483)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(500342628)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】