説明

導波路型光変調器

【課題】 簡単な構成でマイクロ波帯などの超高周波域で高い変調効率を実現することが可能な導波路型光変調器を提供すること。
【解決手段】 基板2と、マッハツェンダー型光導波路3と、スロット線路で構成された電界印加部4a、5a、位相調整部4b、5b、給電部6とからなる変調電極とを備え、4段の電界印加部4a、5aは周期的に互いに離間して配置され、それらの間は位相調整部4b、5bによってそれぞれ接続されている。変調電極全体が変調信号の周波数において共振器となるように構成され、1段目と3段目の電界印加部で同相の電界となり、2段目と4段目の電界印加部で逆相の反転電界となるように、位相調整部のスロット線路長が調整され、電界印加部4a、5aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/2nfとなるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調や光のスイッチングを行う光変調器に関し、特に光導波路を用いた導波路型光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放送の再送信やネットワークの柔軟性を高める目的で、無線信号をそのまま光伝送する用途が広がっている。この場合、電源設備の不要化や、雷害、ノイズ対策などの理由で、無線電波の受信点から無給電で信号を受信伝送することが望まれることがある。このためには、受信電波のエネルギーだけで光変調を行うために、高速、高効率の光変調器が要求される。
【0003】
従来、マイクロ波帯などの超高周波域での高効率の光変調器は、導波路型光変調器で実現されている。このような導波路型光変調器としては、(1)通常の光通信システムで用いられている進行波型光変調器、(2)外付けの共振回路と組み合わせた分割型電極による光変調器(例えば、非特許文献1参照)、(3)共振型電極による光変調器(例えば、特許文献1参照)、などが知られている。
【0004】
上記(1)の進行波型光変調器は、変調波と光波との速度整合を取ることにより広帯域特性を有し、電極長を大きくして低電圧動作可能な光変調器が実現され、光通信用として実用化されている。しかし、上述したような無給電で光変調する用途には十分でなく、また、電極間容量が大きいため、外付けの共振回路を付加することができない。
【0005】
上記(2)の光変調器方式では、光の通過時間の制限により電極長を短くする必要があるが、分割電極構造により電極間容量を小さくして共振回路の付加を可能とすることにより、印加電圧を大きくして高効率化している。また、上記(3)の共振電極型では、電極を変調波に対して共振器構造とすることにより、光導波路に印加される電圧を増大させ高効率化している。(2),(3)の方式とも帯域は狭いが、無線電波信号の伝送では狭帯域でも使用できる。
【0006】
しかし、(2),(3)の方式でも、マイクロ波帯のように数GHz以上の高周波域では、光波の通過時間による制限のため、有効な電極長がさらに小さくなり、変調効率が低下していた。
【0007】
そこで、光導波路中の変調された光波の速度に整合させて複数の共振電極を周期的に配置する方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。この方法では、共振電極の数だけ変調効率を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3592245号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】電子情報通信学会論文誌C,Vol.J89-C,No.11,pp.925-932
【非特許文献2】電子情報通信学会 信学技報OPE2004-222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の非特許文献2の方式では、独立に一定の周期で配置された複数の共振電極に印加するマイクロ波の位相を同相となるよう調整する必要があり、共振電極の外部における位相調整のための手段が必要となること、また、共振電極単体の長さに対して共振電極が配置される周期が大きいため、光導波路中の光波に対するマイクロ波の作用長を大きくできなく、変調効率が十分でないことなどの問題がある。
【0011】
この場合、変調効率改善のため多くの共振電極を配置しようとすると、それらの間の位相調整の手段がさらに複雑化することになる。
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でマイクロ波帯などの超高周波域で高い変調効率を実現することが可能な導波路型光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、電気光学効果を有する材料からなる基板と、該基板上に形成された入力光導波路、該入力光導波路より分岐した2本の位相シフト光導波路、および該2本の位相シフト光導波路が合流する出力光導波路とを有する光導波路と、前記基板上に配置された前記位相シフト光導波路に電界を印加するための変調電極と、該変調電極に変調信号を印加する変調信号印加手段とを備え、前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに離間して該位相シフト光導波路の近傍に配置された複数の電界印加部と、互いに隣接する前記電界印加部間を接続する位相調整部とを有し、前記変調信号の周波数において、前記電界印加部と前記位相調整部とが全体として共振するように構成されている導波路型光変調器が提供される。
【0014】
ここで、前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記電界印加部により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するように形成されていてもよい。
【0015】
この場合、前記複数の電界印加部は、前記位相シフト光導波路の等価屈折率をn、前記変調信号の周波数をf0、真空中での光速をcとすると、前記位相シフト光導波路の延伸方向における前記複数の電界印加部の中心間距離Pは、P=c/2nf(但し、f=0.4f0〜1.3f0)となるように配置されていることが望ましい。
【0016】
また、前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記電界印加部により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに同相となるように形成されていてもよい。
【0017】
この場合、前記複数の電界印加部は、前記位相シフト光導波路の等価屈折率をn、前記変調信号の周波数をf0、真空中での光速をcとすると、前記位相シフト光導波路の延伸方向における前記複数の電界印加部の中心間距離Pは、P=c/nf(但し、f=0.4f0〜1.3f0)となるように配置されていることが望ましい。
【0018】
また、前記電界印加部および前記位相調整部はスロット線路またはコプレーナ線路により構成されていてもよく、前記位相調整部は前記位相シフト光導波路から離間して配置されたスロット線路またはコプレーナ線路を有していてもよい。
【0019】
また、前記変調電極は前記変調信号印加手段に接続される給電部を有し、該給電部と前記電界印加部または位相調整部との境界部、および前記電界印加部または位相調整部の終端部において前記変調信号が反射を生じることにより、前記変調電極が前記変調信号の周波数において全体として共振するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導波路型光変調器では、上記のように、電界印加部と位相調整部とが一体となって変調電極を構成し、かつ、その変調電極が変調周波数において全体として共振し、さらに、互いに隣接する電界印加部により各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するか、または互いに同相となるような共振モードを使用することにより、変調電極の外部における位相調整のための手段が不要となる。
【0021】
また、互いに隣接する電界印加部により各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するように構成した場合、位相シフト光導波路近傍に位相シフト光導波路の延伸方向に互いに離間して配置される電界印加部の周期は上記非特許文献2に記載の導波路型光変調器に比べて半分とできるため、光導波路中の光波に対するマイクロ波の作用長を従来に比べて2倍とすることができ、より高い変調効率が得られる。
【0022】
以上のように、本発明の導波路型光変調器によれば、簡単な構成でマイクロ波帯などの超高周波域で高い変調効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、(b)(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図。
【図2】図1(a)におけるA−A断面図。
【図3】(a)本発明の第2の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、(b)(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図。
【図4】(a)本発明の第1の実施の形態の変形例1に係る導波路型光変調器を示す平面図、(b)(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図。
【図5】図4(a)におけるA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0026】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための構造や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1(a)は本発明の第1の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、図1(b)は図1(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図、図2は図1(a)におけるA−A断面図である。
【0028】
図1、図2に示すように第1の実施の形態に係る導波路型光変調器1は、基板2と、マッハツェンダー型光導波路3(以下、単に光導波路3ということもある)と、バッファ層10と、電界印加部4a、5a、位相調整部4b、5b、給電部6とからなる変調電極と、変調信号入力端子8とを備える。
【0029】
基板2は、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LiNbO)からなる。第1の実施の形態では、LiNbOのXカット基板を用いる。
【0030】
光導波路3は、基板2の上面側にTi拡散により形成され、入力光導波路3aと、この入力光導波路3aから分岐した2本の位相シフト光導波路3b,3cと、位相シフト光導波路3b,3cが合流した出力光導波路3dとを有する。位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向の中央部分は互いに平行であり、この中央部分の間隔は20〜50μm程度である。
【0031】
バッファ層10は、基板2上に形成されるSiOからなる厚さ100〜3000nm程度の層であり、光導波路3を伝搬する光の一部が、変調電極によって吸収されることを防止する等の目的で設けられるものである。
【0032】
変調電極の電界印加部4a、5a、位相調整部4b、5bは、電界印加部4aと位相調整部4bを構成する第1のスロット線路と電界印加部5aと位相調整部5bを構成する第2のスロット線路の2つのスロット線路からなり、それらのスロット線路はそれぞれ給電部6のスロット線路に接続されている。
【0033】
電界印加部4aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3cが位置し、電界印加部5aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3bが位置するように配置される。
【0034】
この電界印加部4a、5aは、図2に示すように、それぞれ位相シフト光導波路3c,3bにZ軸方向の互いに逆向きの電界Ezを印加するためのものである。
【0035】
すなわち、電界印加部4aを構成する第1のスロット線路と電界印加部5aを構成する第2のスロット線路の位相シフト光導波路3b,3cに挟まれる部分の電極を変調信号を印加する共通電極とし、それらの対向側を接地電極とすることにより、位相シフト光導波路3cに印加される電界の方向と、位相シフト光導波路3bに印加される電界の方向とが反対方向になる。
【0036】
スロット線路は金(Au)等の導電性材料からなり、バッファ層10を介して基板2上に設けられている。
【0037】
図1に示すように、4段の電界印加部4a、5aが位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向に周期的に互いに離間して配置されており、それらの間は位相調整部4b、5bによってそれぞれ接続されている。
【0038】
変調電極は、給電部6と初段の電界印加部4a、5aとの境界部においてそのインピーダンスが異なることにより変調信号の反射が生じ、さらに4段目の電界印加部4a、5aの終端部7が開放端となることにより変調信号の反射が生じるように構成され、電界印加部4aと位相調整部4bとが全体として変調信号の周波数において共振器となるように構成されている。
【0039】
この場合の共振モードは、1段目と3段目の電界印加部で同相の電界となり、2段目と4段目の電界印加部でそれらの逆相の反転電界となるように、位相調整部のスロット線路長が調整されている。このため、位相調整部4b、5bは、位相シフト光導波路3c、3dから離間する方向に配置され、その離間距離などの長さでスロット線路長が調整されている。
【0040】
また、位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加部4a、4bの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/2nfとなるように配置されている。
【0041】
上記のように構成された導波路型光変調器1において、導波路型光変調器1の入力光導波路3aの入射口から、図示しない光源からの光を光導波路3に導入し、変調信号入力端子8により変調電極に変調信号を印加すると、上述のように電界印加部4a、4bにより、2本の位相シフト光導波路3b,3cに、Z軸方向に互いに逆向きの電界が印加される。
【0042】
これにより、位相シフト光導波路3b,3cにおける電気光学効果による屈折率変化の方向が互いに逆向きとなり、位相シフト光導波路3b,3cの伝搬光に互いに逆向きの位相シフトが生じ、この伝搬光が出力光導波路3dへの合流時に干渉して光強度が変調される。
【0043】
ここで、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、真空中での光速をcとすると、変調された光は位相シフト光導波路3b,3c中をc/nの速度で進行する。したがって、ある時点でみると、変調信号の周波数fで変調された光は、図1(b)に示すように、位相シフト光導波路3b,3c中では光伝搬方向にΛ=c/nfの周期で位相シフト量が変化しており、Λ/2=c/2nfの周期で位相シフト量が反転していることになる。具体的な数値例としては、等価屈折率n=2.15、変調信号の周波数f=10GHzとしたとき、Λ=14mmとなる。
【0044】
第1の実施の形態に係る導波路型光変調器1では、互いに離間した電界印加部の中心間距離Pを、P=Λ/2=c/2nfとなるように配置している。これにより、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して、変調電極への印加電界により加算的に位相シフトを与えることができるので、実効的な変調電極長が長くなり、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0045】
この場合、変調効率の周波数特性はP=Λ/2=c/2nfを満たす周波数fの付近を中心におおよそガウス分布に近い特性となっており、電界印加部の段数が増加するに従って変調効率のピークはfより小さい値からfに近づいて行き、変調可能な周波数帯域幅も電界印加部の段数が増加するに従って狭くなる。
【0046】
また、位相シフト光導波路上に占める電界印加部と位相調整部の比率にも依存する。すなわち、電界印加部の段数が2段のとき、変調効率がピークとなる周波数および変調可能周波数が上記fの値に対して最も低周波側となり、例えば、電界印加部に対する位相調整部の比率を0.2〜1としたとき、0.4f〜1.3f程度の周波数であれば電界印加部が1段の場合よりも高い変調効率が得られる。
【0047】
同様に、電界印加部の段数を5段以上としたときは、段数の増加に従って変調効率のピーク値は大きくなるが、1段の場合より高い効率が得られる変調可能帯域は0.7〜1.25f程度となる。
【0048】
[第2の実施の形態]
図3(a)は本発明の第2の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、図3(b)は図3(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図である。
【0049】
図3に示す第2の実施の形態の導波路型光変調器20は、変調電極の位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向に周期的に互いに離間して配置された電界印加部の配置の周期を図1に示す導波路型光変調器1に対し2倍とした構成である。
【0050】
XカットLiNbO基板を基板2として用いること、電界印加部4aと位相調整部4bを構成する第1のスロット線路と電界印加部5aと位相調整部5bを構成する第2のスロット線路の2つのスロット線路からなり、それらのスロット線路はそれぞれ給電部6のスロット線路に接続されていること、電界印加部4aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3cが位置し、電界印加部5aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3bが位置するように配置されることなどは導波路型光変調器1と同様である。
【0051】
但し、位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加部4a、5aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/nfとなるように配置されている。
【0052】
また、導波路型光変調器1と同様に、電界印加部と位相調整部とが全体として変調信号の周波数において共振器となるように構成されているが、導波路型光変調器1と異なり、この場合の共振モードは、1段目から4段目のすべての電界印加部で同相の電界となるように、位相調整部のスロット線路長が調整されている。
【0053】
このようにしても、導波路型光変調器1と同様に、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して加算的に位相シフトを与えることができ、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0054】
導波路型光変調器20は電界印加部が配置される周期が導波路型光変調器1に比べ大きいため、光導波路中の光波に対するマイクロ波の作用長は導波路型光変調器1に比べ小さく、変調効率も小さいが、従来の光変調器に比べて構成が簡単で位相調整の手段が不要になるという利点がある。
【0055】
[第3の実施の形態]
図4(a)は本発明の第3の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、図4(b)は図4(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図、図5は図4(a)におけるA−A断面図である。
【0056】
図4、図5に示す第3の実施の形態に係る導波路型光変調器30は、図1に示す導波路型光変調器1に対し、基板をLiNbOのZカット基板である基板32に置き換え、変調電極を構成する電界印加部14、位相調整部15、給電部16をコプレーナ線路に置き換えた構成である。
【0057】
導波路型光変調器30では、基板32がZカット基板であるため、電界印加部14において印加電界がZ軸方向に印加されるように、コプレーナ線路の信号電極14aは位相シフト光導波路3b上に配置され、その両側の接地電極の一方の端部14bが位相シフト光導波路3c上に配置される。
【0058】
これにより、位相シフト光導波路3cに印加される電界の方向と、位相シフト光導波路3bに印加される電界の方向とが反対方向になる。
【0059】
導波路型光変調器30においても4段の電界印加部14が位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向に周期的に互いに離間して配置されており、それらの間は位相調整部15によってそれぞれ接続されている。
【0060】
変調電極は、給電部16と初段の電界印加部14との境界部においてそのインピーダンスが異なることにより変調信号の反射が生じ、さらに4段目の電界印加部14の終端部17が短絡端となることにより変調信号の反射が生じるように構成され、電界印加部14と位相調整部15とが全体として変調信号の周波数において共振器となるように構成されている。
【0061】
この場合の共振モードは、1段目と3段目の電界印加部で同相の電界となり、2段目と4段目の電界印加部でそれらの逆相の反転電界となるように、位相調整部のコプレーナ線路長が調整されている。
【0062】
このため、位相調整部15は、位相シフト光導波路3c、3dから離間する方向に配置され、その離間距離などの長さでコプレーナ線路長が調整されている。
【0063】
また、導波路型光変調器1と同様に位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加部14aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/2nfとなるように配置されており、これにより、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して、変調電極への印加電界により加算的に位相シフトを与えることができるので、実効的な変調電極長が長くなり、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0064】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1、第2および第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0065】
この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0066】
例えば、上記第1、第2および第3の実施の形態においては、電界印加部の段数が4段の例について説明したが、電界印加部の段数は2段、3段および4段以上であってもよい。電界印加部の段数の増加に伴って変調効率は高くなる。
【0067】
また、上記の実施の形態においては、電界印加部や位相調整部をスロット線路やコプレーナ線路で構成した例について説明したが、他のマイクロ波線路を用いることができる。
【0068】
給電部、電界印加部、位相調整部で互いに異なるマイクロ波線路を用いることも可能である。変調電極を共振器として機能させる手段についても、上記の実施の形態以外のインピーダンスの不連続構造を反射点として用いることも可能である。
【0069】
電界印加部や位相調整部への変調信号の給電方法なども公知のマイクロ波の結合方法を利用した手段が可能である。
【0070】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0071】
1,20、30…導波路型光変調器
2,32…基板
3…マッハツェンダー型光導波路(光導波路)
3a…入力光導波路
3b,3c…位相シフト光導波路
3d…出力光導波路
4a、5a、14 電界印加部
4b、5b、15 位相調整部
6、16 給電部
7、17 終端部
8 信号入力端子
10…バッファ層
14a 信号電極
14b 接地電極の一方の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなる基板と、
該基板上に形成された入力光導波路、該入力光導波路より分岐した2本の位相シフト光導波路、および該2本の位相シフト光導波路が合流した出力光導波路を有する光導波路と、
前記基板上に配置された前記位相シフト光導波路に電界を印加するための変調電極と、
該変調電極に変調信号を印加する変調信号印加手段とを備え、
前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに離間して該位相シフト光導波路の近傍に配置された複数の電界印加部と、互いに隣接する前記電界印加部間を接続する位相調整部とを有し、
前記変調信号の周波数において、前記電界印加部と前記位相調整部とが全体として共振するように構成されていることを特徴とする導波路型光変調器。
【請求項2】
前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記電界印加部により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光変調器。
【請求項3】
前記位相シフト光導波路の等価屈折率をn、前記変調信号の周波数をf0、真空中での光速をcとすると、前記位相シフト光導波路の延伸方向における前記複数の電界印加部の中心間距離P1が、P1=c/2nf(但し、f=0.4f0〜1.3f0)となるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の導波路型光変調器。
【請求項4】
前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記電界印加部により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに同相となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光変調器。
【請求項5】
前記位相シフト光導波路の等価屈折率をn、前記変調信号の周波数をf0、真空中での光速をcとすると、前記位相シフト光導波路の延伸方向における前記複数の電界印加部の中心間距離P2が、P2=c/nf(但し、f=0.4f0〜1.3f0)となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の導波路型光変調器。
【請求項6】
前記電界印加部および前記位相調整部はスロット線路またはコプレーナ線路により構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導波路型光変調器。
【請求項7】
前記位相調整部は前記位相シフト光導波路から離間して配置されたスロット線路またはコプレーナ線路を有することを特徴とする請求項6に記載の導波路型光変調器。
【請求項8】
前記変調電極は前記変調信号印加手段に接続される給電部を有し、該給電部と前記電界印加部または位相調整部との境界部、および前記電界印加部または位相調整部の終端部において前記変調信号が反射を生じることにより、前記電界印加部と前記位相調整部とが前記変調信号の周波数において全体として共振するように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導波路型光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−243822(P2010−243822A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92857(P2009−92857)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】