説明

導波路型可変光減衰器

【課題】所望の応答時間を得ることができる導波路型可変光減衰器を提供する。
【解決手段】導波路素子の表面に配設されアーム導波路9Cを加熱するためのヒータ4とを備えた導波路型可変光減衰器において、2本のアーム導波路9C,9D間の中央部間寸法Lは、高熱伝導部材を用いることなく、ヒータ4への電圧印加を開始してから10msec以内に、2本のアーム導波路9C,9Dがそれぞれ加熱され、かつ、所定の温度差となる寸法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野で広く用いられている導波路型可変光減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光通信分野においては、光を減衰させるための光導波路として導波路型可変光減衰器が広く用いられている。
【0003】
従来、この種の導波路型可変光減衰器には、図10(a)及び(b)に示すようなものが提案されている(特許文献1参照)。この導波路型可変光減衰器につき、図10(a)及び(b)を用いて説明すると、図10(a)及び(b)において、符号91で示す導波路型可変光減衰器(導波路型光部品)は、所定の間隔をもって並列する入力側Y分岐導波路92・出力側Y分岐導波路93及びこれら両Y分岐導波路92,93を繋ぐ2つのアーム導波路94,95を用いてマッハツェンダ型光干渉系を形成するとともに、この干渉系のアーム導波路94,95のうち一方のアーム導波路94を加熱するための位相シフタとなるヒータ96及びこのヒータ96に電圧を印加するための電極97,98を形成し、かつ両アーム導波路94,95間にアーム導波路95にヒータ熱を伝えないための凹溝99を形成することにより構成されている。
【0004】
このような導波路型可変光減衰器91においては、ヒータ96に電圧を印加すると、アーム導波路94が加熱され、このアーム導波路94の屈折率を変化させる。これにより、両アーム導波路94,95を伝搬する伝搬光は、みかけ上光路長差が付く(熱光学効果により伝搬光の位相が変化する)ことから、ヒータ96への印加電圧を変化させて光信号の強度を任意に制御することができる。
【0005】
また、図11に示すように、従来の導波路型可変光減衰器(光スイッチ)100には、基板101内に一部を除いて埋設された導波路102と、この導波路102を覆うように基板101上にバッファ層103を介して配設されたヒータ104と、このヒータ104を覆う絶縁層105と、ヒータ104に対応する領域に配設された放熱用突起106とからなるものも提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
このような導波路型可変光減衰器においては、ヒータ104がON状態で発生したヒータ熱がOFF状態で放熱用突起106から強制的に放散され、これにより高速スイッチングが可能な光スイッチング素子を得ることができる。
【0007】
ところで、この種の導波路型可変光減衰器を光通信用デバイスとして使用する場合、その応答時間として相当に高い応答時間(10msec以下)が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−84252号公報
【特許文献2】特許第2687362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前者(特許文献1)にあっては、2つのアーム導波路94,95のうち一方のアーム導波路94をヒータ96によって単に加熱するものであるため、所望の応答時間を得ることができない。
【0010】
一方、後者(特許文献2)にあっては、放熱用突起106によってヒータ104からの発生熱を放熱用突起106から放散させて光スイッチとしての高速化を実現しているものの、光導波路102をヒータ104によって単に加熱するものであるため、この場合も特許文献1に示す導波路型可変光減衰器と同様に所望の応答時間を得ることができない。
【0011】
そこで、本発明者は、光干渉系を用いた導波路型可変光減衰器において応答時間を高めることの検討を開始したが、その過程で2つのアーム導波路を熱的に接続すると、ヒータへの電圧印加開始から所定の光減衰量となる(2つのアーム導波路間の温度差が所定の温度差に到達する)までの時間を短縮できることを見出した。
【0012】
従って、本発明の目的は、ヒータへの電圧印加開始から所定の光減衰量となるまでの時間を短縮することができ、もって所望の応答時間を得ることができる導波路型可変光減衰器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、光信号伝搬用の導波路を形成するための基板と、前記基板の表面に配設されて、前記導波路の一部を構成する2本のアーム導波路及び前記アーム導波路と前記基板の表面とを覆うクラッドからなる導波路素子と、前記導波路素子の表面に配設され前記アーム導波路を加熱するためのヒータとを備えた導波路型可変光減衰器において、前記2本のアーム導波路間の中央部間寸法Lは、高熱伝導部材を用いることなく、前記ヒータへの電圧印加を開始してから10msec以内に、前記2本のアーム導波路がそれぞれ加熱され、かつ、所定の温度差となる寸法であることを特徴とする導波路型可変光減衰器を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、ヒータへの電圧印加開始から所定の光減衰量となるまでの時間を短縮することができ、所望の応答時間を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器を説明するために示す上面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器のアーム導波路におけるヒータ通電時の温度分布を示すグラフ。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器の熱応答に関し、等価回路に置き換えた場合について説明するために示す断面図と等価回路図。
【図5】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器における光損失と応答時間との関係を示すグラフ。
【図6】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器において用いた高熱伝導性部材の熱伝導率と応答時間との関係を示すグラフ。
【図7】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器の変形例(1)を説明するために示す断面図。
【図8】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器の変形例(2)を説明するために示す平面図。
【図9】本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器の変形例(3)を説明するために示す平面図。
【図10】(a)及び(b)は、従来の導波路型可変光減衰器(1)を説明するために示す平面図とそのB−B断面図。
【図11】従来の導波路型可変光減衰器(2)を説明するために示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器を説明するために示す上面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0017】
〔導波路型可変光減衰器の全体構成〕
図1及び図2において、符号1で示す導波路型可変光減衰器は、光信号伝搬用の導波路9を形成するための基板2と、導波路9及びクラッド8からなる光導波路素子3と、位相シフタとなるヒータ(好ましくは薄膜ヒータ)4と、電圧供給用の電極5,6と、高熱伝導性部材であるチップ7とから大略構成されている。
【0018】
(基板2の構成)
基板2は、全体が石英製の矩形板によって形成され、その上面に光導波路素子3及びヒータ4・電極5,6・チップ7を実装するように構成されている。
【0019】
(光導波路素子3の構成)
光導波路素子3は、図1及び図2に示すように、クラッド8及び導波路9(コア径8μm)からなり、基板2上に配設されている。クラッド8は、SiO2膜によって形成され、導波路9を覆うように構成されている。導波路9は、所定の間隔をもって互いに並列する入力側Y分岐導波路9A・出力側Y分岐導波路9B及びこれら両Y分岐導波路9A,9Bを繋ぐ2本のアーム導波路9C,9Dを有するマッハツェンダー干渉計からなり、比屈折率差0.3%となるGeドープSiO2層によって形成されている。両アーム導波路9C,9D間の中央部間寸法L(図9参照)は、その光学特性の影響を互いに受ける(例えば光が結合する)ようになる間隔と同程度又はそれ以上の間隔をもって配置されている。ここでは、両アーム導波路9C,9D間の中央部間寸法Lは、両アーム導波路間寸法のうち最大の寸法に設定されている。
【0020】
(ヒータ4の構成)
ヒータ4は、図1及び図2に示すように、クラッド8上に配設され、アーム導波路9C,9Dのうち例えば一方のアーム導波路9Cの中央部を被覆して加熱するように構成されている。ヒータ4の抵抗値は300Ω程度に設定されている。なお、ヒータ4は、一方のアーム導波路9Cの中央部を被覆して加熱する代わりに、他方のアーム導波路9Dの中央部を被覆して加熱するような構成としてもよい。
【0021】
(電極5,6の構成)
電極5,6は、図1に示すように、クラッド8上に配設され、かつヒータ4に接続されている。そして、ヒータ4に電源電圧を供給するように構成されている。
【0022】
(チップ7の構成)
チップ7は、図1及び図2に示すように、クラッド8上にヒータ4を介在させ接着剤10によって配設(接着)され、かつ両アーム導波路9C,9D周辺の領域に跨る(両アーム導波路9C,9D及びこれら両アーム導波路9C,9D間の領域を覆う)ような位置に配置され、熱伝導率を160W/mKとするSi(シリコン)からなる平面矩形状の高熱伝導性部材によって形成されている。そして、両アーム導波路9C,9Dを熱的に接続し、導波路型可変光減衰器1の応答時間を短縮するように構成されている。チップ7の平面サイズ(縦横寸法)は、アーム導波路9C,9Dの中央部及びヒータ4を覆うような縦横寸法(例えば縦39.6mm,横5.6mm)に設定されている。また、チップ7の厚さは、両アーム導波路9C,9D間の熱伝導が効率的に行われるに十分な寸法(例えば1mm)に設定されている。
【0023】
なお、チップ7の材料としては、Siの他に、SiO2(石英ガラス)の熱伝導率1.3W/mKより十分に高い熱伝導率をもつAl(アルミニウム:熱伝導率237W/mW)やCu(銅:熱伝導率401W/mK)が用いられる。また、接着剤10としては、熱伝導率が比較的高いシリコーン樹脂グリース(1.1W/mK)が用いられるが、チップ7とクラッド8との接着を可能にするものであれば、他の材料でもよい。
【0024】
次に、本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器1の製造方法について説明する。
【0025】
〔導波路型可変光減衰器1の製造方法〕
先ず、基板2上に導波路9となるGeドープSiO2膜をCVD(化学気相成長法)を用いて形成する。次に、フォトリソグラフィ技術などを用いて導波路9(マッハツェンダー干渉計)のパターンをGeドープSiO2膜に形成した後、RIE(リアクティブイオン・エッチング)などのエッチング技術を用いて導波路9を形成する。そして、CVDなどの成膜技術を用い、導波路9上にクラッド8となるSiO2膜を形成する。この後、フォトリソグラフィ及びRIEなどの半導体製造技術を用い、クラッド8上にヒータ4及び電極5,6を形成してから、ヒータ4及び電極5,6の一部・アーム導波路9C,9Dの中央部上方を覆うようにSi製のチップ7を接着剤10によって接着する。
【0026】
次に、本実施の形態におけるマッハツェンダー型光干渉回路を用いた導波路型可変光減衰器1の応答時間を決定する伝熱メカニズム(熱応答)について、図3及び図4を参照しながら等価回路を用いて考察する。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器のアーム導波路(図1のA−A線付近)におけるヒータ通電時の温度分布を示すグラフである。なお、T3はヒータ4を通電しないとき(ヒータ4の非通電時)のアーム導波路9C,9Dの温度で、一般的には雰囲気温度(Ta)である。ヒータ通電時にはチップ7によってアーム導波路9Dにも伝熱するため、アーム導波路9Dの温度をT2とすると、温度T2>T3となる。アーム導波路9Cはヒータ4の直下付近に配置されているため、アーム導波路9Cのヒータ通電時の温度をT1とすると、T1>T2>T3となる。この温度差(T1−T2)を利用して本導波路型可変光減衰器1は光を減衰させる。そして、T2>T3であることによって高速スイッチングすることができる。
【0028】
図4は、本発明の実施の形態に係る導波路型可変光減衰器の熱応答に関し、等価回路に置き換えた場合について説明するために示す図である。図4(a)は導波路型可変光減衰器の断面図であり、図4(b)はその等価回路図である。
【0029】
図4に示すように、2本のアーム導波路9C,9D間の温度差は等価回路において電位差V12と置き換えることができる。
【0030】
ヒータ4は、電源からの電圧に応じて特定の熱量を供給するため、その特定熱量を電流Iの電源と置き換えることができる。これにより、導波路型可変光減衰器1の消費電力は等価回路における電流Iに比例する。
【0031】
アーム導波路9Cはヒータ4からの熱量を自身の熱容量分だけ吸収し、吸収されない熱量をアーム導波路9D(コア)の周辺領域(コアを含む領域)に熱伝導率に応じて放出する。このため、両アーム導波路9C,9D間の体積がもつ熱容量を静電容量Cのコンデンサと、またアーム導波路9Cに吸収されない熱量をアーム導波路9D(コア)の周辺領域(コアを含む領域)に放出する際の熱抵抗(熱伝導率に応じたもの)を抵抗Rとそれぞれ置き換えることができる。
【0032】
ここで、導波路型光干渉回路の熱応答は、アーム導波路9Cに電源(電流I)を接続し、コンデンサCと抵抗Rとを両アーム導波路9C,9D間に並列接続した等価回路として置き換えることができる。
【0033】
導波路型可変光減衰器1の応答時間については、光の減衰出力が両アーム導波路9C,9D間の温度差によって決まることから、前記した等価回路においてアーム導波路9Dを「0」電位とした場合のアーム導波路9Cの電位差V12の過渡応答特性によって置き換えることができる。
【0034】
過渡応答の理論により、電位差V12の応答を求めると次の式で表される。
12(t)=IR[1−exp(−t/τ)] 但しτ=RC
ここで、τは次定数であり、V12が最終値の63.2%の値になるまでの時間に等しい。
【0035】
よって、τ(=RC)の値を小さくすることが等価回路においてV12の応答時間を短縮することになる。V12の応答時間を短縮することは、導波路型可変光減衰器1の両アーム導波路9C,9D間において温度差を付ける時間を短縮することになる。すなわち、導波路型可変光減衰器1の応答時間を短縮するためには、両アーム導波路9C,9D間の熱的距離(熱抵抗R)を小さくすればよい。
【0036】
12の応答時間はτ=RCで表される。
一方、光減衰器の消費電力は消費電流I=V12/Rで表される。
上記2式より、
τI=V12C(V12は設計で決まる定数)
τIは応答時間と消費電力の積の値であり、従って、応答時間及び、消費電力を小さくするためには熱容量Cを小さくすればよい。
【0037】
本発明ではアーム導波路9C,9D間の熱的距離(熱抵抗R)と熱容量Cを小さくできるので、光減衰器の応答時間を短縮することができる。また、同時に消費電力を低減することも可能である。
【0038】
従って、本実施の形態においては、導波路型可変光減衰器1の応答時間を短縮するために、高熱伝導性部材(Si)からなるチップ7によって両アーム導波路9C,9Dが熱的に接続されている。
【0039】
次に、熱伝導率が互いに異なる高熱伝導性部材を用いた導波路型可変光減衰器と、高熱伝導性部材を用いない導波路型可変光減衰器との応答時間について比較考察する。
【0040】
高熱伝導性部材として各熱伝導率が互いに異なるSiチップまたはAlチップ若しくはCuチップを用いた導波路型可変光減衰器と従来の(高熱伝導性部材を用いない)導波路型可変光減衰器を用意し、これら各導波路型可変光減衰器のヒータに電圧を印加して光導波路出力を所定の時間毎に測定した。
【0041】
この結果、各光導波路出力の90%となった時間を各導波路型可変光減衰器の応答時間とすると、従来の導波路型可変光減衰器の応答時間は30msecであるのに対し、高熱伝導性部材としてSiチップまたはAlチップ若しくはCuチップを用いた導波路型可変光減衰器の応答時間はそれぞれ約8msec,約2.5msec,約2.0msecとなった。
【0042】
よって、高熱伝導性部材を用いた導波路型可変光減衰器の応答時間は高熱伝導性部材を用いない導波路型可変光減衰器の応答時間に比べて短縮されることが、また高熱伝導性部材を用いた導波路型可変光減衰器の中では高熱伝導性部材の熱伝導率が高い程応答時間が短縮されることが確認された。このことは、図5のグラフ(縦軸は規格化した光出力(無単位)を、横軸は応答時間(msec)を示す。)に示す通りである。
【0043】
また、次に示すことが確認された。すなわち、導波路型可変光減衰器において、熱伝導率αが500W/mKより大きい熱伝導率をもつ高熱伝導性部材を用いた場合その応答時間に大きな影響はなく、また100W/mKより小さい熱伝導率をもつ高熱伝導性部材を用いた場合その応答時間が10msec以上となり、実用的に効果がない。
【0044】
よって、高熱伝導性部材の熱伝導率αは100w/mK≦α≦500W/mKの範囲内にある熱伝導率に設定されていることが望ましい(高熱伝導性部材の材料としてα>500W/mKの材料を用いても何等差し支えない)。このことは、図6のグラフ(縦軸は応答時間(msec)を、横軸は熱伝導率(W/mK)をそれぞれ示す)に示す通りである。
【0045】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0046】
2本のアーム導波路9C,9Dは、高熱伝導性部材であるチップ7によってそれぞれが互いに熱的に接続されているため、ヒータ4への電圧印加開始から所定の光減衰量となるまでの時間を短縮することができ、所望の応答時間を得ることができる。
【0047】
以上、本発明の導波路型可変光減衰器を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0048】
(1)本実施の形態では、チップ7がクラッド8上に接着剤10によって接着されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図7に示すようにヒータ4を覆うSiO2層からなる保護膜としての電気絶縁層61(厚さ3μm)をクラッド8上に形成するとともに、この電気絶縁層61上に接着剤10によってチップ7を配設してもよい。この場合、電気絶縁層61の厚さに接着剤10の厚さを加えた寸法は30μm以下の寸法に設定されている。接着剤10としては、チップ7と電気絶縁層61との接着を可能にする材料であればよい。
【0049】
(2)本実施の形態では、チップ7がヒータ4の上方であって両アーム導波路9C,9D及びこれら両アーム導波路9C,9D間の領域を覆うような位置に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図8に示すようにアーム導波路9C及びこのアーム導波路9Cとアーム導波路9Dの近傍位置との間の領域を覆うような位置にチップ7を配置してもよい。すなわち要するに、本発明はヒータ4の発生熱がアーム導波路9Dに伝達されるのであれば、少なくともヒータ4による加熱対象側のアーム導波路を覆うような位置にチップ7が配置されていればよい。
【0050】
(3)本実施の形態において、両アーム導波路9C,9D間の中央部付近の間隔(ギャップ)L(図9参照)については、各アーム導波路9C,9Dが互いに接近するような位置に配置されていることが望ましい。この場合、熱抵抗Rの低減のために、高熱伝導部材を用いて熱的距離を小さくするかわりに物理的距離を小さくして熱的距離を小さくすることができる。これにより、前述したように、両アーム導波路9C,9D間の熱抵抗Rを小さくすると共に、両アーム導波路9C,9D間の熱容量Cを小さくすることができるため、応答時間を短縮し、消費電力を低減することができる。また、比屈折率差0.3%,コア径8μmの光導波路素子の場合、両アーム導波路9C,9Dの間隔Lが30μmより小さくなると、両アーム導波路9C,9Dで光結合するようになり、光学特性に影響を及ぼすため、間隔Lの下限値は30μm程度にするとよい。一方、従来の一般的間隔である250μm程度にした場合でも、高熱伝導部材を用いることにより、間隔L=30μmの場合と同程度の応答時間を得ることができる。
【0051】
(4)本実施の形態では、チップ7がアーム導波路9C,9Dの上方に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、アーム導波路9C,9Dの下方にチップ7を配置しても実施の形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1…導波路型可変光減衰器、2…基板、3…光導波路素子、4…ヒータ、5,6…電極、7…チップ、8…クラッド、9…導波路、9A…入力側Y分岐導波路、9B…出力側Y分岐導波路、9C,9D…アーム導波路、10…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号伝搬用の導波路を形成するための基板と、
前記基板の表面に配設されて、前記導波路の一部を構成する2本のアーム導波路及び前記アーム導波路と前記基板の表面とを覆うクラッドからなる導波路素子と、
前記導波路素子の表面に配設され前記アーム導波路を加熱するためのヒータとを備えた導波路型可変光減衰器において、
前記2本のアーム導波路間の中央部間寸法Lは、高熱伝導部材を用いることなく、前記ヒータへの電圧印加を開始してから10msec以内に、前記2本のアーム導波路がそれぞれ加熱され、かつ、所定の温度差となる寸法であることを特徴とする導波路型可変光減衰器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−150378(P2011−150378A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107770(P2011−107770)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2005−273836(P2005−273836)の分割
【原出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】