説明

導電型巻取器及びそれを備えた導電型安全帯

【課題】従来の巻取器と構造及び部品を大きく換えることなく、通電可能とされた巻取器とそれを備えた安全帯の提供。
【解決手段】安全帯30は、ベルト32と、連結具40と、巻取器42と、フック44とを備えている。巻取器42では、主軸は、フレームに対して回転可能にされている。巻取ベルト84と主軸とは、通電可能にされている。渦巻ばねの一端は、主軸に取り付けられている。渦巻ばねと主軸とは、通電可能にされている。渦巻ばねは、主軸を巻取ベルト84が巻き取られる回転向きに付勢している。渦巻ばねは、フレームに接触している。渦巻ばねとフレームとは、通電可能にされている。ベルト32と連結具40とは、連結されて通電可能にされている。連結具40とフレームとは、連結されて通電可能にされている。フック44と巻取ベルト84とは、連結されて通電可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業に使用される安全帯に関する。詳細には、本発明は、導電型巻取器と、その巻取器を備えた導電型安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業現場では、転落事故が発生する恐れがある。このような転落事故を防止するため、高所作業現場の作業者は安全帯を装着している。高所作業が、可燃性気体や火薬等可燃物を扱う場所でされることがある。例えば、石油精製所及び石油中継所では、タンクローリー車のタンクの上で注油作業が行われる。このような可燃物を取り扱う高所作業では、静電気対策がされた安全帯が装着される。このような転落事故防止及び静電気対策がされた安全帯が、特開2004−97562号公報に記載されている。
【0003】
図7は、タンクローリー車のタンク上での墜落防止装置2の使用状態が示された側面図である。高所作業現場においては、作業者は転落事故を防止するため墜落防止装置2を使用している。この墜落防止装置2は、構造物に固定されたレール4と、レール4に案内されつつ移動可能にされたローラ部6と、ローラ部に吊り下げられた巻取器8と、巻取器8に巻かれた命綱10とを備えている。この命綱10に、作業者の安全帯12が連結されている。
【0004】
図7の安全帯12を装着した作業者は、タンク上を移動する。安全帯12を装着しているので、万一足を滑らせても転落が防止されている。この墜落防止装置2により、作業者は安全に作業できる。このローラ部6は、レール4に移動可能に保持されている。作業者は、レール4の延びる方向に沿って移動可能とされている。この巻取器8は、命綱10を繰り出し及び巻き取り可能にされている。作業者は、巻取器8の位置を中心にして、命綱10が繰り出される範囲で移動可能とされている。この墜落防止装置2では、作業者の移動に伴う命綱10の付け替え作業がない。この墜落防止装置2により、作業者は効率的に作業できる。
【0005】
この墜落防止装置2では、レール4、ローラ6及び巻取器8の主要部は、金属製である。命綱10及びベルト12に、導電性繊維が織り込まれている。この墜落防止装置2では、作業者の静電気は、作業服14から安全帯12へ通電されている。安全帯12に通電された静電気は、命綱10、巻取器8、ローラ6、レール4に順に通電されている。これにより、静電気による放電の発生が抑制されている。この墜落防止装置2は、静電気に起因する火災事故が抑制されている。この墜落防止装置2では、レール4、ローラ6及び巻取器8を備えることにより、静電気対策がされて比較的広い範囲の移動作業が可能とされている。この墜落防止装置2では、レール4、ローラ6及び巻取器8が予め設置されている必要がある。
【0006】
図8は、転落事故防止及び静電気対策がされた他の安全帯16の正面図である。この安全帯16は、ベルト18、バックル20、D環止め22、D環24、ロープ26及びフック28を備えている。このバックル20、D環止め22、D環24及びフック28は、銅合金製である。ベルト18及びロープ26は、導電性繊維が織り込まれている。この安全帯16のフック28が、構造物に係止される。作業者の静電気は、ベルト18、D環止め22、D環24、ロープ26、フック28に順に通電される。作業者の静電気は、構造物に通電されている。これにより、静電気による放電の発生が抑制されている。この安全帯16では、図7の墜落防止装置2のレール4、ローラ6及び巻取器8を備える必要がない。この安全帯16は、広く一般の高所作業に用いられる。この安全帯16では、作業者は、このロープ26の延びる範囲で移動可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−97562号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】藤井電工株式会社発行のカタログNo.339「SAFETY & EFFICIENCY」 第16頁 製品注文番号 BEA-S590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この安全帯16では、このロープ26を長くすると、ロープが弛んだ状態で作業がされる。他の作業者や資材等がこのロープ26に引っ掛かる恐れがある。長いロープ26は、万一落下したときの落下距離が長くなる。一方で、ロープ26を短くすると、作業者の移動範囲が狭くなる。構造物へのフック28の掛け替え作業が増える。フック28の掛け替え作業は、作業効率を低下させる。フックの掛け替え作業は、高所作業の危険性を増大させる。
【0010】
フック28の掛け替え作業無しに移動範囲を広げる方法として、巻取器を備えた安全帯を用いる方法がある。この安全帯では、巻取器は安全帯に取り付けられている。この巻取器は、巻取ベルトを備えている。ここでいう巻取ベルトとは、巻取器に繰り出し及び巻き取り可能とされたベルトをいう。このような巻取器は、携帯のため軽量化されている。このため、樹脂部品が多用されている。樹脂部品を多用された巻取器は、通電可能とされていない。この巻取器を備えた安全帯は、構造物に係止するフックと腰に巻かれるベルトとの間で通電可能とされていない。また、この巻取器の内部では、巻取ベルトの巻き取りや繰り出しに伴って、巻取ベルトの重なり合った部分同士の摩擦が生じる。この摩擦によって生じる静電気が、巻取ベルトを通じて作業者に帯電することがある。
【0011】
本発明の目的は、従来の巻取器と構造及び部品を大きく換えることなく、通電可能とされた巻取器とそれを備えた安全帯の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る安全帯は、導電性繊維が織り込まれたベルトと、導体からなる連結具と、巻取器と、導体からなるフックとを備えている。この巻取器が導体からなるフレームと、導電性繊維が織り込まれた巻取ベルトと、導体からなる渦巻ばねと、導体からなる主軸とを備えている。この主軸は、フレームに対して回転可能にされている。この主軸は、一方の向きに回転して巻取ベルトが繰り出されるようにされている。この主軸は、他方の向きに回転して巻取ベルトが巻き取られるようにされている。この巻取ベルトと主軸とは、通電可能にされている。この渦巻ばねの一端が主軸に取り付けられて、渦巻ばねと主軸とが通電可能にされている。この渦巻ばねは、主軸を巻取ベルトが巻き取られる回転向きに付勢している。この渦巻ばねがフレームに接触して、渦巻ばねとフレームとが通電可能にされている。このベルトと連結具とは、連結されて通電可能にされている。この連結具とフレームとは、連結されて通電可能にされている。このフックと巻取ベルトとは、連結されて通電可能にされている。
【0013】
好ましくは、安全帯の巻取器は、軸受、ボビン及び導体からなるピンを備えている。上記主軸は、フレームに軸受を介して保持されている。このボビンは、主軸に取り付けられている。このボビンが導体からなる一対の鍔を備えて鍔と主軸とが通電可能にされている。このボビンは、主軸と一体に回転可能にされている。このピンが一対の鍔に架け渡されて、鍔とピンとは通電可能にされている。この巻取ベルトは、一方の鍔と他方の鍔との間でボビンに巻き取られている。この巻取ベルトがピンに接触して、巻取ベルトとピンとは通電可能にされている。
【0014】
本発明に係る巻取器は、導体からなるフレームと、導電性繊維が織り込まれた巻取ベルトと、導体からなる渦巻ばねと、導体からなる主軸とを備えている。この主軸は、フレームに対して回転可能にされている。この主軸は、一方の向きに回転して巻取ベルトが繰り出されるようにされている。この主軸は、他方の向きに回転して巻取ベルトが巻き取られるようにされている。この巻取ベルトと主軸とは、通電可能にされている。この渦巻ばねの一端が主軸に取り付けられて、渦巻ばねと主軸とは、通電可能にされている。この渦巻ばねは、主軸を巻取ベルトが巻き取られる回転向きに付勢している。この渦巻ばねがフレームに接触して、渦巻ばねとフレームとは通電可能にされている。
【0015】
好ましくは、この巻取器は、軸受、ボビン及び導体からなるピンを備えている。上記主軸は、フレームに軸受を介して保持されている。このボビンは、主軸に取り付けられている。このボビンは、導体からなる一対の鍔を備えている。この鍔と主軸とは、通電可能にされている。このボビンは、主軸と一体に回転可能にされている。このピンが一対の鍔に架け渡されて、鍔とピンとは通電可能にされている。この巻取ベルトは、一方の鍔と他方の鍔との間でボビンに巻き取られている。この巻取ベルトがピンに接触して、巻取ベルトとピンとは通電可能にされている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る安全帯では、ベルトから巻取器を介してフックまでが通電している。これにより、作業者の帯電が抑制される。この巻取器は、従来の巻取器と、構造及び部品を大きく換えることなく通電可能にされている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る安全帯が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の矢印IIで示された安全帯の部分矢視図である。
【図3】図3は、図2の安全帯の一部が示された拡大断面図である。
【図4】図4は、図2の安全帯の他の一部が示された拡大断面図である。
【図5】図5は、図1の安全帯の巻取器の一部が示された分解斜視図である。
【図6】図6は、図1の安全帯の巻取器の他の一部が示された分解図である。
【図7】図7は、従来の墜落防止装置の使用状態が示された概念図である。
【図8】図8は、従来の他の安全帯が示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1に示された安全帯30は、ベルト32、バックル34、連結環36、ショックアブソーバー38、連結具40、巻取器42及びフック44を備えている。説明の便宜上、図1の左右方向が、この安全帯30の前後方向であり、図1の左向きが安全帯30の前方向きである。図1の上下方向が、この安全帯30の左右方向である。紙面に垂直な方向が、安全帯30の上下方向である。
【0020】
ベルト32の形状は、長尺の帯状である。このベルト32は、合成繊維と導電性繊維とからなる。この合成繊維としては、例えばポリエステル、ポリアミド又はアラミドが用いられる。この合成繊維には、導電性繊維が織り込まれている。導電性繊維は、金属、カーボンなど導電性材料で出来た繊維、又はこれらを一部に使用して出来た繊維で、帯電防止性能を有する繊維である。
【0021】
バックル34は、ベルト32の前端に取り付けられている。バックル34は、ベルト32の後端部と係止可能にされている。このバックル34の材質は、導体であることが望ましい。この安全帯30では、バックル34は、金属製であり、銅合金からなる。
【0022】
図2は、図1の矢印IIの向きに見られた、連結環36、ショックアブソーバー38、連結具40及び巻取器42とがベルト32の一部と共に示された底面図である。図3には、図2の連結環36及びショックアブソーバー38の拡大断面図が示されている。図3は、ベルト32の長手方向に沿った断面が示されている。連結環36は、2つの長孔46を備えている。連結環36は、ベルト32のほぼ中央に取り付けられている。ベルト32は、連結環36の2つの長孔46を縫うように通されている。この連結環36は、導体である金属からなる。この安全帯30では、連結環36は、銅合金からなる。
【0023】
ショックアブソーバー38は、第一ベルト48、第二ベルト50、一対の摩耗防止布52及びカバー54を備えている。第一ベルト48の両端部は、それぞれ摩耗防止布52に覆われている。第一ベルト48の後端部は、後方の摩耗防止布52で覆われている。第一ベルト48の後端部と後方の摩耗防止布52とは、縫製されている。第一ベルト48の前端部は、前方の摩耗防止布52で覆われている。第一ベルト48の前端部と前方の摩耗防止布52とは、縫製されている。
【0024】
第一ベルト48は、長尺の帯状である。この第一ベルト48は、合成繊維と導電性繊維とからなる。この合成繊維としては、例えばポリエステル、ポリアミド又はアラミドが用いられる。この合成繊維に、導電性繊維が織り込まれている。第二ベルト50は、長尺の帯状である。第二ベルト50は、第一ベルト48と同様の合成繊維からなる。この第一ベルト48及び第二ベルト50の中間部は折り畳まれた状態で接着されている。この第一ベルト48及び第二ベルト50の折り畳まれた中間部は、カバー54により覆われている。
【0025】
摩耗防止布52は、導電性繊維からなる。第一ベルト48の後端部は、連結環36の一方の長孔46に通されて折り返されている。後方の摩耗防止布52は、連結環36に接触させられている。第二ベルト50の後端部は、第一ベルト48の後端部に挟み込まれている。
【0026】
図4には、図2のショックアブソーバー38の一部、連結具40及び巻取器42の一部の拡大断面図が示されている。図4は、ベルト32の長手方向に沿った断面が示されている。この連結具40は、本体58及び連結ピン60を備えている。本体58は、長尺の平板状の金属からなる。本体58の長尺の両端が曲げられて、U字状にされている。連結ピン60は、丸棒状の金属からなる。本体58の両端に連結ピン60が架け渡されている。この安全帯30では、本体58及び連結ピン60は銅合金からなる。本体58と連結ピン60とは、通電可能に接触している。連結具40の本体58には、第一ベルト48の前端部が巻かれて折り返されている。折り返された第一ベルト48の前端部は、第二ベルト50の前端部を挟み込んでいる。
【0027】
巻取器42は、フレーム62、軸受64、主軸66、主軸カラー68、ボビン70、渦巻ばね72、ばねケース74、爪軸76、爪78、爪受ギア80、段付きリベット82、巻取ベルト84及び樹脂ケース86を備えている。
【0028】
図5は、この巻取器42の一部が示された分解斜視図である。フレーム62に、図4の樹脂ケース86が固定されている。このフレーム62は、金属板を略U字状に折り曲げた形状である。このフレーム62は、第一プレート88、第二プレート90及び連結部92を備えている。第一プレート88と第二プレート90とは、その平面が互いに平行に対向している。第一プレート88及び第二プレート90に、主軸孔94が形成されている。第一プレート88と第二プレート90とは、連結部92を介して一体である。連結部92は、略U字状に折り曲げられている。
【0029】
軸受64は、筒状の本体とその本体に軸方向一方端に形成された鍔とからなる。軸受64は、樹脂からなる。この樹脂として、ポリアセタールが例示される。この軸受64は、フレーム62の主軸孔94に通され固定されている。
【0030】
主軸66は、軸本体96及び段付きブッシュ98を備えている。軸本体96及び段付きブッシュ98は、金属からなる。この巻取器42では、軸本体96及び段付きブッシュ98は、鉄鋼からなる。軸本体96の先端が第一プレート88に固定された軸受64に通されている。軸本体96の後端には、軸線方向に平行な溝99が形成されている。段付きブッシュ98の外形は、大径部と小径部との段付き円筒形状である。段付きブッシュ98に、その軸線を通る貫通孔が形成されている。この貫通孔に、軸本体96の先端が通されている。段付きブッシュ98の小径部が、第二プレート90に固定された軸受64に通されている。これにより、主軸66は、フレーム62に、軸受64を介して回転可能に取り付けられている。この主軸66は、主軸カラー68に通されている。主軸カラー68は、軸受64と同様に、ポリアセタールからなる。
【0031】
ボビン70は、ボビン本体100及び一対の鍔102を備えている。ボビン本体100及び鍔102は、金属からなる。このボビン本体100及び鍔102は、鉄鋼からなる。ボビン本体100の形状は、筒状の側面を軸方向に切り欠いた形状である。鍔102の形状は、円板状である。一方の鍔102は、ボビン本体100の軸方向の一方端に固定されている。他方の鍔102は、ボビン本体100の軸方向の他方端に固定されている。ボビン本体100は、一対の鍔102の間に位置している。鍔102には、回止孔103が形成されている。この回止孔103は、主軸66が通されて回止される。鍔の102の回止孔103と主軸66とが接している。これにより、ボビン70と主軸66とが一体に回転可能とされている。このボビン本体100は、クッションゴム104が取り付けられている。クッションゴム104の形状は、筒状の側面を軸方向に切り欠いた形状である。ボビン本体100に、クッションゴム104が被せられている。ボビン本体100とクッションゴム104との切り欠かれた部分は、円周方向の位置が一致させられている。ボビン本体100には、主軸カラー68及び主軸66が通されている。ボビン70は、フレーム62の第一プレート88と第二プレート90との間に位置している。
【0032】
爪軸76は、一対の鍔102に架け渡される一のピンである。爪軸76は、一対の鍔102に架け渡されて固定されている。この爪軸76は、金属からなる。爪軸76は鉄鋼からなる。爪78は、フレーム62の第二プレート90とボビン70との間に位置している。爪78の一端部が、爪軸76に取り付けられている。爪78は、爪軸76に対して回動可能にされている。爪78の他端部には、コイルばね106の一端が取り付けられている。コイルばね106の他端は、鍔102に取り付けられている。これにより、主軸66を回転軸に回転したときに、爪78の他端部が外径方向に回動すると、コイルばね106により内径向きに引き戻す力が働くようにされている。
【0033】
爪受ギア80は、フレーム62の第二プレート90とボビン70との間に位置している。この爪受ギア80は、主軸66の軸方向において爪78と同じ位置に位置している。爪受ギア80は、第二プレート90のボビン70に対向する側面に固定されている。爪受ギア80は、第二プレート90の平面に平行にリベットにより鋲着されている。爪受けギア80は、金属製の板からなる。爪受けギア80は、中央に穴108を備えている。この穴108には、爪78と係合可能に複数の係合部110を備えている。
【0034】
渦巻ばね72は、ばねケース74に収められている。渦巻ばね72の外径端は、このばねケース74に固定されている。渦巻ばね72は、金属からなる。この渦巻ばね72は、ステンレス鋼からなる。ばねケース74は、樹脂からなる。このばねケース74が、第一プレート88に着脱可能に取り付けられている。このばねケース74が、フレーム62に取り付けられることにより、渦巻ばね72がフレーム62の第一プレート88の外側面に接して位置している。この外側面は、ボビン70に対向する側面の反対側の側面である。渦巻ばね72の内径端は、主軸66の後端の溝99に係止させられている。
【0035】
段付きリベット82は、一対の鍔102に架け渡される他のピンである。段付きリベット82は、一対の鍔102に架け渡されて固定されている。段付きリベット82の一端は、一方の鍔102に固定されている。段付きリベット82の他端は、他方の鍔102に固定されている。この段付きリベット82は、金属からなる。段付きリベット82は鉄鋼からなる。
【0036】
図6には、巻取ベルト84が、巻取器42に巻き取られた状態が示されている。図6の2点鎖線は、鍔102の外径を示している。巻取ベルト84の長手方向に垂直な断面の形状は、長方形である。巻取ベルト84は、合成繊維と導電性繊維とからなる。この合成繊維としては、例えばポリエステル、ポリアミド又はアラミドが用いられる。この合成繊維に、導電性繊維が織り込まれている。
【0037】
この巻取ベルト84の後端部112が主軸カラーに巻かれて折り返されている。この折り返された後端部112と主部114とが重ね合わされている。この後端部112と主部114は、ボビン本体100とクッションゴム104の切り欠かれた部分から径方向外側に引き出されている。後端部112と主部114は、爪軸76に沿って折り返されて、クッションゴム104の周りに巻かれている。巻取ベルト84の後端部112がクッションゴム104に接して巻かれている。クッションゴム104に巻かれた巻取ベルト84は、段付きリベット82により、径方向内向きに押し付けられている。この段付きリベット82により、巻取ベルト84の後端部112と主部114の後端部側の一部が、ボビン本体100に巻かれた状態が保たれている。
【0038】
図1に示されるように、この巻取ベルト84の先端には、摩耗防止布116に覆われている。この摩耗防止布116は、ショックアブソーバー38の摩耗防止布52と同じ材質のものが用いられている。
【0039】
フック44は、フック本体118、外れ止め120及び安全装置122を備えている。フック本体118の形状は、鉤型である。フック本体118は、摩耗防止布116と連結されている。フック本体118の開口には、外れ止め120が回動可能に取り付けられている。この外れ止め120が反時計回りに回動して、フック本体118の開口が開かれる。外れ止め120が時計回りに回動して、フック本体118の開口が閉じられる。図示されない外れ止めばねにより、フック本体118に対して外れ止め120がフック本体118の開口を塞ぐように付勢されている。フック本体118は、金属からなる。このフック44では、フック本体118は、銅合金からなる。
【0040】
この安全帯30のベルト32が、作業服を着た作業者の腰に巻かれる。このベルト32と作業服とが接している。このベルト32の後端が、バックル34に通されて係止される。このバックル34と作業服とが接している。バックル34とベルト32とが通電可能とされている。外れ止め120と安全装置122とが握られた状態で、フック本体118が構造物に係止される。作業者がフック44から手を離すことにより、外れ止め120が回動して、フック本体118の開口を塞ぐ。これにより、フック44が、構造物から外れない様にされている。
【0041】
このベルト32と連結環36とが接している。これにより、ベルト32と連結環36とが通電可能にされている。連結環36とショックアブソーバー38の後方の摩耗防止布52とが接している。連結環36とショックアブソーバー38とが通電可能にされている。ショックアブソーバ38の前方の摩耗防止布52が連結具40に接している。これにより、ショックアブソーバ38と連結具40とが通電可能にされている。この連結具40と巻取器42のフレーム62が接している。これにより、連結具40とフレーム62とが通電可能とされている。なお、安全帯30は、ショックアブソーバー38を備えなくてもよい。その場合、ベルト32に連結具40が取り付けられる。ベルト32と連結具40とが通電可能とされる。
【0042】
このフレーム62の第一プレート88と渦巻ばね72とが、接している。フレーム62と渦巻ばね72とが通電可能とされている。この渦巻ばね72の内径端が、主軸66の溝99に係止されて、通電可能とされている。この主軸66とボビン70の回止孔103とが接して、主軸66とボビン70とが通電可能とされている。ボビン70の一対の鍔102に、ピンとしての爪軸76が接している。ボビン70と爪軸76とが通電している。
【0043】
図6に示されるように、爪軸76は巻取ベルト84と接している。爪軸76と巻取ベルト84とが通電可能とされている。図1に示されるように、巻取ベルト84は、摩耗防止布116と接している。巻取ベルト84と摩耗防止布116とが通電可能とされている。摩耗防止布116とフック44とが接している。摩耗防止布116とフック44とが通電可能とされている。また、この巻取器42では、もう一方のピンとしての段付きリベット82が、ボビン70の一対の鍔102に接している。ボビン70と段付きリベット82とが通電している。段付きリベット82は巻取ベルト84と接している。段付きリベット82と巻取ベルト84とが通電可能とされている。
【0044】
作業者がフック44から離れる向きに移動すると、巻取器42から、巻取ベルト84が繰り出される。作業者がフック44に近づく向きに移動すると、渦巻ばね72により巻取ベルト84が巻き取られる。この巻取器42は、巻取ベルト84の弛みの発生が抑制されている。この安全帯30を装着した作業者は、この巻取ベルト84が繰り出される範囲で移動可能とされている。
【0045】
万一、作業者が高所から落下すると、巻取ベルト84が急速に繰り出される。これにより、ボビン70が急速に回転させられる。ボビン70の急速な回転により、爪78の他端部がコイルばね106の付勢力に抗して、径方向外側に回動させされる。この爪78が爪受ギア80の係合部110に係合する。ボビンの回転が阻止される。巻取ベルト84の繰り出しが阻止される。これにより、作業者の落下距離が最小限にされている。
【0046】
作業者が作業中に帯電することがある。この巻取器42は、フレーム62から巻取ベルト84及び摩耗防止布116まで通電可能とされている。この安全帯30は、ベルト32からフック44まで通電可能とされている。これにより、作業者の静電気が構造物に通電する。これにより、作業者に静電気が帯電することが抑制されている。作業者に帯電した静電気が放電する際のショックが軽減されている。また、静電気の放電による火花の発生が抑制されている。この火花が可燃物に着火することによる爆発事故が抑制されている。
【0047】
一般に、巻取器42では、巻き取られた状態から巻取ベルト84が繰り出されると、剥離帯電が発生する。この巻取器42の巻取ベルト84は、通電可能とされている。これにより、剥離帯電が抑制されている。この巻取器42は、巻取ベルト84の巻き戻し及び繰り出しを繰り返しても、剥離帯電が抑制されている。この安全帯30では、フック本体118が銅合金からなる。これにより、構造物に衝突した際に発生する火花が抑制されている。この観点から、フック本体118は、アルミ合金であってもよい。
【0048】
渦巻ばね72は、渦巻ばね72の外径端がばねケース74に係止されて、ばねケース74に収容されているので、渦巻ばね72の取り付け取り外しが容易になっている。ばねケース74をフレーム62に取り付け取り外しすることで、渦巻ばね72の取り付け取り外しが可能とされている。一方で、この渦巻ばね72は、フレーム62と接するように配置されることにより、確実に渦巻ばね72とフレーム62との間の通電が可能とされている。渦巻ばね72の内径端が主軸66の溝99に係止されることにより、確実に渦巻ばね72と主軸66との間の通電が可能とされている。
【0049】
万一、作業者が落下した場合の巻取器42では、フレーム62、爪受けギア80、爪78、爪軸76及び主軸66が、大きな力を受ける。これらの部品は、強度を必要とされる。この巻取器42では、巻取ベルト84が最大限引き出されると、巻取ベルト84の引き出しを止めるために段付きリベット82が大きな力を受ける。段付きリベット82は、強度を必要とされる。このため、巻取器42では、フレーム62、爪受けギア80、爪78、主軸66及び段付きリベット82の材質は金属が好ましい。この巻取器42では、渦巻ばね72を介して主軸66とフレームとが通電可能にされている。これにより、金属が機能的に好ましいフレーム62と、主軸66と、爪軸76及び段付きリベット82とを通電経路としている。この巻取器42は、更に、鍔102の材質を金属製とすることにより、通電可能としている。この巻取器42では、通電可能とするための特別な部品を必要としない。
【0050】
この巻取器42では、軸受64が樹脂からなる。主軸66は、スムーズに回転可能に支持される。この巻取器42は、樹脂部品が多用されており軽量である。この巻取器42は、従来の巻取器の部品が流用可能とされている。これにより、導電型である巻取器42を製作するための設計変更は、最小限にされている。耐久試験等の性能試験を再度実施することが抑制される。この巻取器42は、低コストで製作可能とされている。
【符号の説明】
【0051】
30・・・安全帯
32・・・ベルト
34・・・バックル
36・・・連結環
38・・・ショックアブソーバー
40・・・連結具
42・・・巻取器
44・・・フック
48・・・第一ベルト
50・・・第二ベルト
52・・・摩耗防止布
58・・・本体
60・・・連結ピン
62・・・フレーム
64・・・軸受
66・・・主軸
70・・・ボビン
72・・・渦巻ばね
74・・・ばねケース
76・・・爪軸
82・・・段付きリベット
84・・・巻取ベルト
88・・・第一プレート
90・・・第二プレート
92・・・連結部
102・・・鍔
114・・・主部
116・・・摩耗防止布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維が織り込まれたベルトと、導体からなる連結具と、巻取器と、導体からなるフックとを備えており、
この巻取器が導体からなるフレームと、導電性繊維が織り込まれた巻取ベルトと、導体からなる渦巻ばねと、導体からなる主軸とを備えており、
この主軸がフレームに対して回転可能にされており、
この主軸が一方の向きに回転して巻取ベルトが繰り出されるようにされており、
この主軸が他方の向きに回転して巻取ベルトが巻き取られるようにされており、
この巻取ベルトと主軸とが通電可能にされており、
この渦巻ばねの一端が主軸に取り付けられて、渦巻ばねと主軸とが通電可能にされており、
この渦巻ばねが主軸を巻取ベルトが巻き取られる回転向きに付勢しており、
この渦巻ばねがフレームに接触して渦巻ばねとフレームとが通電可能にされており、
このベルトと連結具とが連結されて通電可能にされており、
この連結具とフレームとが連結されて通電可能にされており、
このフックと巻取ベルトとが連結されて通電可能にされている安全帯。
【請求項2】
上記巻取器が軸受、ボビン及び導体からなるピンを備えており、
上記主軸がフレームに軸受を介して保持されており、
このボビンが主軸に取り付けられており、
このボビンが導体からなる一対の鍔を備えて鍔と主軸とが通電可能にされており、
このボビンが主軸と一体に回転可能にされており、
このピンが一対の鍔に架け渡されて鍔とピンとが通電可能にされており、
この巻取ベルトが一方の鍔と他方の鍔との間でボビンに巻き取られており、
この巻取ベルトがピンに接触して巻取ベルトとピンとが通電可能にされている請求項1に記載の安全帯。
【請求項3】
導体からなるフレームと、導電性繊維が織り込まれた巻取ベルトと、導体からなる渦巻ばねと、導体からなる主軸とを備えており、
この主軸がフレームに対して回転可能にされており、
この主軸が一方の向きに回転して巻取ベルトが繰り出されるようにされており、
この主軸が他方の向きに回転して巻取ベルトが巻き取られるようにされており、
この巻取ベルトと主軸とが通電可能にされており、
この渦巻ばねの一端が主軸に取り付けられて、渦巻ばねと主軸とが通電可能にされており、
この渦巻ばねが主軸を巻取ベルトが巻き取られる回転向きに付勢しており、
この渦巻ばねがフレームに接触して渦巻ばねとフレームとが通電可能にされている巻取器。
【請求項4】
上記軸受、ボビン及び導体からなるピンを備えており、
上記主軸がフレームに軸受を介して保持されており、
このボビンが主軸に取り付けられており、
このボビンが導体からなる一対の鍔を備えて鍔と主軸とが通電可能にされており、
このボビンが主軸と一体に回転可能にされており、
このピンが一対の鍔に架け渡されて鍔とピンとが通電可能にされており、
この巻取ベルトが一方の鍔と他方の鍔との間でボビンに巻き取られており、
この巻取ベルトがピンに接触して巻取ベルトとピンとが通電可能にされている請求項3に記載の巻取器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−240325(P2010−240325A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95374(P2009−95374)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】