説明

導電性エンドレスベルトおよびその製造方法

【課題】画像不良問題を解消し、かつ低コストで耐久性及び滑性を有する導電性エンドレスベルトを提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂を含む基層1と、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層11とを有する二層の導電性エンドレスベルトであって、該ベルトの表面抵抗率が1×10〜1014(Ω/□)の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式カラープリンタにおいて中間転写ベルト、紙搬送転写ベルト等として用いられる、導電性エンドレスベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の転写ベルトは、主に連続生産が可能で生産コストが低い熱可塑性樹脂を用いた転写ベルトであり、その多くは単層構造を有している。しかし、単層構造ゆえに、トナーに外添剤として用いられている酸化チタン等及びPPC用紙に含まれる炭酸カルシウム等の無機フィラーがベルト表面に蓄積し、クリーニング不良等の画像不良が生じるという難点がある。
【0003】
これらの問題を解決するために基層の上に表層を設けた多層の中間転写ベルトが提案されている。例えば特許文献1では、基層と表層とを有する複層構造の導電性エンドレスベルトにおいて、上記表層が、鉛筆硬度4H以上でn−ドデカンの接触角度20°以上のハードコート層であることを特徴とする導電性エンドレスベルトが提案されている。
【0004】
また特許文献2では、基層1と、表層2とを含む少なくとも2層からなる半導電性シームレスベルトであって、上記基層1が、下記のポリエーテルスルホン樹脂および導電性充填剤を必須成分とする導電性組成物を用いて形成され、かつ、上記表層2は、鉛筆硬度がB〜5Hの範囲内に設定され、かつ、純水の接触角が60°〜120°の範囲内に設定されている導電性エンドレスベルトが提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3においては、該導電性エンドレスベルトとして基層として、ポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデン共重合体、エチレン− テトラフルオロエチレン共重合体のいずれかよりなる層を有し、表層として0.1〜4.0μmのアクリル樹脂コート層を有し、該ベルトの体積抵抗率が1×10〜1×1011Ω・cm、表面粗さRzが0.1〜5.0μmであることを特徴とする導電性エンドレスベルトが提案されている。
【0006】
しかし、上記特許文献は、表層のハードコート剤として、アクリル系ハードコート剤を採用している。一般的にアクリルコート剤は、主に紫外線硬化反応又は電子線硬化反応のような化学反応を伴うものであることから、未硬化による表層の硬度不足及び未反応樹脂のブリード物が発生して感光体汚染を引き起こし、その結果として画像不良につながる恐れがある。更に、特許文献1に記載されているように、紫外線硬化型では、空気中の酸素によるハードコート剤の硬化阻害が発生するため、十分な効果を得るためには、酸素濃度を一定基準以下に制御しなければならず、製造設備面においてコストが上昇する傾向にある。
【0007】
さらに、4H以上のアクリル単膜では、硬度は十分であるものの破断伸度が小さいために、中間転写ベルトとして紙との摺動による表面の摩耗及び印刷毎の駆動に耐えうるだけの耐久性を有しておらず、耐刷試験において表層ワレが発生する。
【0008】
また、一般的に、酸化チタン及び炭酸カルシウム等の無機フィラーのベルト表面への蓄積を防ぐために、単層のポリイミドベルト及びポリアミドイミドベルトが提案されているが、これらの樹脂では押出成形のような連続生産ができず、回転成形等のバッチ生産となるため、生産コストが高くなってしまう。また、これら単層のポリイミドベルト及びポリアミドイミドベルトでは、破断伸度が小さいために、駆動時に局所的にベルト端部に応力がかかるとワレが発生しやすくなることでベルトが破断し、結果としてベルトの寿命が短くなる場合が多く、したがって破断を防ぐためにベルト端部に補強テープを貼るなどの処置を施さなければならず、更に高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−192901号公報
【特許文献2】特開2004−310016号公報
【特許文献3】特開2007−206171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような背景技術に対し、トナーに外添剤として用いられている酸化チタン等及びPPC用紙に含まれる炭酸カルシウム等の無機フィラーがベルト表面に蓄積することによりクリーニング不良等の画像不良が生じるという問題を解消し、さらに表面の滑性を向上させることで、トナーの離型性、即ちクリーニング性を改善し、かつ低コストで耐久性を有する導電性エンドレスベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者は、ポリアミド樹脂を含む基層と、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層とを有する導電性エンドレスベルトとすることで上記の課題を解決できることを見出した。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は下記の導電性エンドレスベルト及びその製造方法を提供する。
項1.ポリアミド樹脂を含む基層と、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層とを有する二層の導電性エンドレスベルトであって、該ベルトの表面抵抗率が1×10〜1014(Ω/□)の範囲内であることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
項2.表面の静摩擦係数が0.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性エンドレスベルト。
項3.表面の表面粗さ(Rz)が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性エンドレスベルト。
項4.前記基層に無機フィラーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
項5.前記表層のシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して酸性処理されたカーボンブラックを1〜60重量部含有してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
項6.前記表層の60°入射角における光沢度が70以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
項7.前記表層がコーティングにより形成されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
項8.カラー画像形成装置における中間転写ベルトである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
項9.芳香族ポリイミド系樹脂を含む表層形成組成物を、基層の外面に積層し、表層を形成する工程を含む、ポリアミド樹脂を含む基層とシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層とを有する、導電性エンドレスベルトの製造方法。
項10.前記表層を形成する工程において、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を溶媒に溶解し、当該表層形成組成物を基層の外面にコーティングすることにより表層を形成する、請求項9に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性エンドレスベルトは、表層にシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含むことにより、基層上に硬化反応等の化学反応を経ずに安定した表層を形成し得ると共に、フィルミングを防ぐことができる。また、表面の静摩擦係数が小さいことでトナーの離型性に優れており、高いクリーニング性を有する。さらに、基層に連続生産可能なポリアミド樹脂を用いているため、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の複層構造の導電性エンドレスベルトの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.導電性エンドレスベルト
本発明の導電性エンドレスベルトは、ポリアミド樹脂を含む基層の外面上に、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層を形成した、複層構造のエンドレスベルトである。
以下、各層毎に説明する。
【0016】
(a)基層
本発明の基層には、ポリアミド樹脂を含む。基層は、ポリアミド樹脂に導電剤が分散された層であり、ポリアミド樹脂及び導電剤を含む基層形成組成物によって形成される。
【0017】
前記ポリアミド樹脂としては、特に限定されず、種々の公知のものを用いることができる。例えば、ポリアミド6(ポリ(ε−カプロラクタム))、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド11(ポリ(ウンデカンラクタム))、ポリアミド12(ポリ(ラウリルラクタム))等、及びこれらの共重合体、例えばポリアミド6−66共重合体、ポリアミド6−610共重合体等の、脂肪族ポリアミド樹脂が挙げられる。これらのポリアミド樹脂を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
中でも、吸水率が小さいポリアミド樹脂を用いることが好ましい。吸水率が小さいポリアミド樹脂を用いることにより、環境による寸法変動を抑えることができるため、得られる導電性エンドレスベルトの電気抵抗値の環境変動を低減させることができる。ここでいう吸水率とは、乾燥オーブン内で100℃、24時間、試料を乾燥させた後に、23℃、50%RH環境下において24時間放置した後の試料の単位重量あたりに増加した重量を指す。当該吸水率が1.0wt%以下、好ましくは0.8wt%以下であることが好ましい。
【0019】
当該吸水率の小さい(1.0wt%以下)ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド11(吸水率0.9wt%)、ポリアミド12(吸水率0.8wt%)等が挙げられる。特に好ましくは、ポリアミド12である。
【0020】
また、前記ポリアミド樹脂のMFR(2.16kgf、235℃)は、チューブ状に製膜できる範囲であれば特に限定されないが、通常10〜30g/10minであり、好ましくは15〜25g/10minであり、より好ましくは18〜22g/10minである。
【0021】
本発明の基層中に分散される導電剤としては、公知の電子導電性物質、イオン導電性物質を用いることができる。
【0022】
電子導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーなどが挙げられる。
【0023】
また、イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、トリデシルメチルジヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、ラウリルトリメチルアンモニウムパークロレート、変性脂肪族・ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3’−ドデシロキシ−2’−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムエトサルフェート、3−ラウルアミドプロピル−トエイメチルアンモニウムメチルサルフェート、ステアルアミドプロピルジメチル−β−ヒドロキシエチル−アンモニウム−ジハイドロジェンフォスフェート、テトラブチルアンモニウムホウフッ酸塩、ステアリルアンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウムの過塩素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、メチルサルフェート塩、リン酸塩、ホウフッ化水素酸塩、アセテート等の有機イオン性導電物質、あるいは電荷移動錯体などが挙げられる。
【0024】
これらの導電剤を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
前記導電剤のうち、カーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ガスブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。より少量の混合で所望の導電率を得るのに有効なものとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックとオイルファーネスブラックが挙げられる。なお、ケッチェンブラックとは、コンタクティブファーネス系のカーボンブラックである。
【0026】
上記の導電剤を適宜用いて、基層に導電性を付与することができる。導電剤の含有量は、所望の基層の表面抵抗率などにより変動するが、基層を形成するポリアミド樹脂組成物100重量%中、5〜50重量%、好ましくは8〜40重量%である。導電剤として上記電子導電性物質を用いる場合、基層を形成するポリアミド樹脂組成物100重量%中、5〜20重量%、好ましくは8〜12重量%である。導電剤として上記イオン導電性物質を用いる場合は、基層を形成するポリアミド樹脂組成物100重量%中、10〜50重量%、特に20〜40重量%用いることが好ましい。
【0027】
上記の導電剤を適宜用いて、基層の表面抵抗率を、例えば、1×10〜1×1014(Ω/□)、好ましくは1×10〜1×1014(Ω/□)に制御することができる。上記表面抵抗率は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0028】
また、基層の体積抵抗率を、例えば、1×10〜1×1014(Ω・cm)、好ましくは1×10〜1×1013(Ω・cm)に制御することができる。上記体積抵抗率は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0029】
また、本発明の基層には、無機フィラーを添加することもできる。当該無機フィラーとしては、特に限定されず、樹脂に添加しうる種々の公知の無機フィラーを用いることができる。例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、酸化チタン等が挙げられる。特に、ポリアミド樹脂との相溶性の観点から、タルクが好ましい。さらに、上記無機フィラーのポリアミド樹脂に対する相溶性を向上させるために、上記無機フィラーに適宜表面処理を施すこともできる。当該表面処理方法としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤による公知の処理が挙げられる。
【0030】
上記の無機フィラーを適宜添加することにより、基層の引張弾性率を向上させることができる。例えば、引張弾性率(JIS K7127準拠)2.0GPa以上、さらに2.0〜2.5GPaにすることができる。上記引張弾性率は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。当該引張弾性率が2.0GPa以上であると、得られる導電性エンドレスベルトの駆動ロールでの張架による伸びを抑えること、つまりクリープ特性の改善ができる。
【0031】
また、上記の無機フィラーを適宜添加することにより、基層の引張破壊時呼び歪みは低減するものの、例えば、引張破壊時呼び歪み(JISK7161準拠)100%以上、さらには100〜180%にすることができる。上記引張破壊時呼び歪みは、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。引張破壊時呼び歪みが100%以上であると、得られる導電性エンドレスベルトが、ベルト駆動時にベルト端部に局所的に荷重がかかった場合においても、ベルト端部が破断することがなく、耐久性に優れる。
【0032】
無機フィラーの添加量は、上記所望の物性により変動するが、基層を形成するポリアミド樹脂組成物100重量%中、通常、20重量%以下であり、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。
【0033】
具体的には、導電剤および無機フィラーを併用する場合、導電剤が電子導電性物質の場合、基層を形成するポリアミド樹脂組成物100重量%中、電子導電性物質6〜20重量%、好ましくは8〜12重量%、無機フィラー0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。また、導電剤がイオン導電性物質の場合は、基層を形成するポリアミド樹脂組成物100重量%中、イオン導電性物質10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、無機フィラー0〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0034】
また、基層の厚みは、100〜140μm、好ましくは110〜130μmである。当該厚みが100μm以上であれば、ベルトの取扱性が良く、オレ不良が少なく、歩留も良い。また、当該厚みが140μm以下であれば、ハンドリング性にも製造コストにも優れる。
【0035】
なお、基層には、必要に応じて、樹脂に添加される公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、光安定剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、接着剤、難燃剤、分散剤などを適宜配合することができる。
【0036】
(b)表層
本発明の表層には、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む。表層は、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層形成組成物によって形成される。
【0037】
前記シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂としては、特に限定されず、種々の公知のものを用いることができる。通常、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂は、無水トリメリット酸に代表される酸成分と、芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネート成分と、シリコーン化合物とを公知の方法により縮重合して製造される。すなわち、まず、当該酸成分と芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネート成分とを、溶媒中に溶解させ、50〜230℃、好ましくは80〜200℃で攪拌することによりポリアミドイミド樹脂を合成する。反応を促進するために、トリエチルアミン、ルチジン、ピコリン、ウンデセン、トリエチルジアミン等のアミン類、リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムメトキサイド、カリウムブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属化合物、あるいはコバルト、スズ、亜鉛などの金属、半金属化合物などの触媒の存在下に行ってもよい。次いで、当該ポリアミドイミド樹脂に前記シリコーン化合物を加え、反応させることにより、前記シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂とすることができる。
【0038】
この際に用いる溶媒としては、例えば,N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルトリアミド、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、メチルアルコール、テトラヒドロフラン、エタノール、キシレン等が挙げられる。
【0039】
当該溶媒は、前記表層形成組成物が基層上にコーティングされ、表層が形成された後、乾燥工程により除去される。その際、基層のポリアミド樹脂の耐熱温度を考慮すると、100℃以下の加熱でベルト内の残溶媒濃度が十分に低くなる必要があるため、沸点が低く、蒸発速度の速い溶媒が好ましい。また、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂に対して溶解性の高い溶媒であることが好ましく、以上のことから、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンが好適である。さらに、蒸発速度を調整するために、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ヘキサンベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合してもよい。また、これらを単独で用いても、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0040】
前記表層形成組成物に用いられる酸成分としては、例えば、トリメリット酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、1,4−ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のアルキレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’−、4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、3,3’−、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸無水物、4、4’−オキシフタル酸無水物、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独あるいは複数で用いることができる。なかでも、反応性、耐熱性、コストなどから、トリメリット酸無水物が好適に用いられる。
【0041】
前記表層形成組成物に用いられる芳香族ジアミンとしては、例えば、m−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、2,4−アミノトルエン、2,6−アミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナルタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノナフタレンビフェニル、ベンジジン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビスーアミノフェニルプロパン等が挙げられる。好ましくは、芳香族ジアミン成分として、p−フェニルジアミン、又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を用いて得られるポリアミドイミド樹脂である。
【0042】
また、前記表層形成組成物に用いられる芳香族ジイソシアネートとしては、ジシクロヘキシル4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジクロロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジクロロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルビフェニル、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、溶解性、耐熱性の点から、ジシクロヘキシルメタン4,4−’ジイソシアネート及び/またはイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0043】
前記表層形成組成物に用いられるシリコーン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】

(上記一般式(1)中、R、R’、R”は置換していてもよいアルキル基またはアリール基を示し、Xは水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を2個以上有するアルキル基またはアリール基を示す。nは2〜300の整数を示す。)
【0044】
上記シリコーン化合物を用いることで、溶媒及びポリアミドイミド樹脂への十分な相溶性が得られる。
【0045】
前記R、R’およびR”のアルキル基としては、例えば、C1−6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。また、前記R、R’およびR”のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、置換していてもよい基としては、C1−6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。例えば、置換基を有するアリール基として、具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0046】
前記Xとしては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等官能基を2個以上有する、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、あるいはフェニル基、ベンジル基、前記アルキル基が置換したフェニル基、ベンジル基等のアリール基が挙げられる。
【0047】
前記シリコーン化合物の具体例としては、X−22−176DX、X−22−176F(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0048】
該シリコーン化合物の共重合または変性量は、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。シリコーン化合物の共重合または変性量が0.1〜50重量%であれば、形成される表層表面の滑性が充分に改良され、また、耐熱性や膜の強度に優れたものとすることができる。該シリコーン化合物の共重合または変性は、ポリアミドイミドの合成と同時に行ってもよく、ポリアミドイミドの合成が終わってから行ってもよい。
【0049】
また、該シリコーン化合物の変性の際に発泡が生じると生産性が低下するため、生産性向上を目的として、表層形成組成物に消泡剤を配合することもできる。該消泡剤の種類としては、アクリル系消泡剤やシリコーン系消泡剤等が挙げられるが、シリコーン系消泡剤はその粒子が外観不良の原因となるおそれがあるため、アクリル系消泡剤が好ましい。
【0050】
また、本発明の表層には、前記の基層中に分散される導電剤と同様の導電剤を分散させることができる。
【0051】
前記導電剤のうち、特に環境変動が小さいことから、電子導電性物質が好まれる。電子導電性物質としては、上記カーボンブラック、金属及び金属酸化物、導電性ポリマーが挙げられる。中でも、溶媒が限定されずに、安定してワニスに分散しうるカーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ガスブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
【0052】
また、前記導電剤としては、酸化処理によりカーボンブラックの揮発分含有量が2〜5重量%に調整されたものが好ましく、揮発分含有量2.5〜5重量%がより好ましい。酸化処理により揮発分2〜5重量%に調整されたカーボンブラックの表面には、フェノール性水酸基やカルボニル基、カルボキシル基等の酸素官能基(特に、カルボキシル基)を含むため、ポリイミド前駆体溶液中での流動性及び分散安定性が向上し、またポリイミド樹脂への親和性も向上する。
【0053】
酸化処理で用いる酸化剤としては、硝酸を含む窒素酸化物、オゾン、次亜塩素酸類、硫酸ガス等の酸化剤を挙げることができる。これらの中でも、酸化処理後のカーボンブラックに酸化剤の残存が少なく、未分解原料炭化水素(PAH)が分解される点から、オゾンを含む酸化剤が好ましく、オゾンが特に好ましい。
【0054】
さらに、上記導電剤の、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂に対する相溶性若しくは分散性を向上させるために、当業界で公知の一般的な分散剤を用いることもできる。当該分散剤としては、例えば、ポリエーテルリン酸エステル及びそのアミン塩、脂肪族多価カルボン酸、ポリエステルのアミン塩、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0055】
当該公知の分散剤の添加量としては、表層に添加する導電剤重量に対して、通常、50〜200重量%以下である。
【0056】
上記の導電剤を適宜用いて、表層に導電性を付与することができる。導電剤の含有量は、所望の表層の表面抵抗率などにより変動するが、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂(固形分)100重量部に対し、1〜60重量部、好ましくは2〜50重量部、更に好ましくは5〜40重量部である。導電剤として上記電子導電性物質(特にカーボンブラック)を用いる場合、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂(固形分)100重量部に対し、1〜60重量部、好ましくは2〜50重量部、更に好ましくは5〜35重量部である。導電剤として上記イオン導電性物質を用いる場合は、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂(固形分)100重量部に対し、2〜50重量部、特に5〜40重量部用いることが好ましい。導電剤の量が少なすぎると、前画像の電荷が減衰せず、一方、導電剤の量が多すぎると、ベルト表面に発生させた電荷がトナーを転写する前に減衰してしまう。
【0057】
上記の導電剤を適宜用いて、表層の表面抵抗率を、例えば、1×10〜1×1014(Ω/□)、好ましくは1×10〜1×1014(Ω/□)に制御することができる。上記表面抵抗率は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0058】
また、表層には、必要に応じて、樹脂に添加される公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、防曇剤、スリップ剤、難燃剤、表面調整剤などを適宜配合することができる。表面調整剤とは、乾燥過程の塗膜表面に配向して、塗膜の表面張力を均一化し、浮きまだらやハジキを防止し、被塗物への濡れを改良するものである。具体的には、例えば、市販のアクリル系表面調整剤及びシリコーン系表面調整剤を使用することができる。
【0059】
当該公知の添加剤の添加量としては、表層を形成する表層形成組成物中、通常、0.01重量%以下である。
【0060】
また、表層の厚みは、0.5〜10μm程度の範囲で自由に設定できる。ただし、導電剤を表層に含まない絶縁の表層とする場合には、膜厚は0.5〜3.0μm程度に設定することが好ましい。膜厚が0.5〜3.0μm程度であれば、絶縁の表層を用いても、転写時に印加された電圧が転写後に減衰される、すなわち、次の画像形成時に前画像の電荷が残る恐れがない。
【0061】
上記表層の引張弾性率は、1.5GPa以上とすることができる。1.5GPa以上であれば、フィルミングに対して効果があり、特に2.0GPa以上とすると、さらに耐フィルミング性に優れる。
【0062】
上記表層の引張破壊歪みは、10%以上とすることができる。10%以上であれば、耐屈曲性がよい。特に20%以上とすると、さらに耐屈曲性に優れる。
【0063】
導電性エンドレスベルトの諸物性値
本発明の導電性エンドレスベルトは、以下の諸物性値を有する。
導電性エンドレスベルト全体の厚み(総厚み)は、通常、100〜140μm、好ましくは110〜130μm、さらに好ましくは115〜125μmである。前記範囲内にあることで、ハンドリング性にも製造コストにも優れた導電性エンドレスベルトとすることができる。
【0064】
また、導電性エンドレスベルトの表面抵抗率は、1×10〜1014(Ω/□)、好ましくは1×10〜1014(Ω/□)である。上記表面抵抗率は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0065】
また、導電性エンドレスベルトの体積抵抗率は、1×10〜1×1014(Ω・cm)、好ましくは1×10〜1×1013(Ω・cm)に制御することができる。上記体積抵抗率は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0066】
本発明の導電性エンドレスベルトの表層の表面粗さ(Rz)は、1.0μm以下であるとよい。1.0μm以下であれば、クリーニングブレードでのトナーのすり抜けがなく、画像不良も生じにくい。上記表層の表面粗さは、基層の表面粗さの影響を受けるため、基層の表面粗さが小さければ、表層の表面粗さも小さくなる。また、表層に低分子量のシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を用いる場合、その表面粗さは小さくなる傾向にある。さらに、塗液粘度の影響も考えられ、塗液粘度が小さければ、形成される表層の表面粗さも小さくなる傾向がある。上記表面粗さ(Rz)は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0067】
さらに、本発明の導電性エンドレスベルトの表層の光沢度は、60°入射角に対して70以上であるとよい。光沢度が70以上であれば、トナー濃度補正の光学センサーが機能し、高画質で印刷を行うことができる。上記表層の光沢度は、表層の表面粗さに反比例するため、上記表面粗さが小さいと、上記光沢度は高くなる。上記光沢度は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0068】
また、本発明の導電性ベルト表層側の静摩擦係数は、0.25以下であるとよい。静摩擦係数が0.25以下であると、トナークリーニング時にトナーの離型性に優れ、クリーニングブレードの滑りが向上するためビビリの発生を抑制することができる。上記静摩擦係数は、例えば、実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0069】
2.導電性エンドレスベルトの製造方法
以上のような構成を有する導電性エンドレスベルトの製造方法については、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。
【0070】
本発明の導電性エンドレスベルトは、以下の工程を含む製造方法によって得ることができる。
(1)ポリアミド樹脂および導電剤、必要に応じて無機フィラーを含む、基層形成組成物を押出成形して基層を形成する工程
(2)シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層形成組成物を、上記(1)で得られた基層の外面に積層し、表層を形成する工程。
【0071】
以下、各工程について説明する。なお、本発明の製造方法において使用する原料やその含有量等は、前述のとおりである。
【0072】
工程(1)(基層の形成)
ポリアミド樹脂を含む基層は、ポリアミド樹脂および導電剤、必要に応じて無機フィラーを含む基層形成組成物を押出成形することによって製造することができる。例えば、次のようにして製造できる。
【0073】
まず、ポリアミド樹脂および導電剤、必要に応じて無機フィラー等を混合し、基層形成組成物を調製する。当該混合には、公知の混合手段を適用可能であり、例えば二軸押出機を用いることができる。二軸押出機を用いる場合、バレル温度約160〜250℃で加熱混練して十分に分散混合することが好ましい。
【0074】
次に、上記基層形成組成物について、押出成形を行う。当該押出成形には、公知の押出成形手段を適用可能であり、例えば単軸押出機と押出成型用のサーキュラーマンドレルダイを用いることができる。得られる基層の厚みは、サーキュラーマンドレルのリップ幅及び押出成型条件を適宜設定して調節することができる。吐出後のチューブの形状を精度よく保持するために、ダイ出口にエアーリング等のマンドレルを使用してもよい。また、二軸押出機の先端にサーキュラーマンドレルダイを設置することにより、一度にエンドレスベルトを成形することも可能である。
【0075】
当該押出成形により、基層は連続したチューブとして得られるので、中間転写ベルトとして使用する場合には、必要な幅で横断し、ベルトとして使用できるようにする。
【0076】
工程(2)(表層の形成と2層化)
シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層は、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂および溶媒、必要に応じて導電剤を含む表層形成組成物を、基層の外面に積層することによって製造することができる。
【0077】
具体的には、基層の外面に表層形成組成物をコーティングする。コーティング方法としては、公知のスプレーコート法、ディップコート法及びフローコート法等のいずれを用いても良い。例えば、次のようにして製造できる。
【0078】
まず、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、および必要に応じて前記(b)に記載した公知の添加剤を、γ−ブチロラクトン等の前記(b)に記載した溶媒に溶解させ、表層形成組成物を調製する。
【0079】
上記表層形成組成物中におけるシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂は、固形分濃度として、通常、5〜30質量%、特に10〜20質量%が好ましい。ここで、固形分濃度とは、固体を有機溶媒中に溶解させた場合の固体の重量をその溶液の重量で除した値をパーセント(%)表示したものである。
【0080】
次に、上記表層形成組成物を、基層の外表面に積層する。
【0081】
具体的には、基層を金属製のマンドレルに外装した後、別途表層形成組成物の溶液で満たされたバスに、基層を外層したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させた後、一定速度で引き上げることにより、基層上に表層を形成する。基層上の表層の厚みは、乾燥前の塗膜の厚み(h)に比例し、その厚みは塗液溶液の密度(d)および粘度(η)並びに引き上げ速度(u)に関係することが知られており、下記の式(1)で示される関係がある。
h=a(ηu/dg)1/2 (1)
(ここで、gは重力加速度を表す。)
【0082】
その後、オーブン等の加熱炉に入れ、表層塗液の溶媒を乾燥させることにより、基層上に表層を定着させる。例えば、80〜120℃、30〜240分の条件下で乾燥させるとよい。
【0083】
また基層と表面層の密着性が不十分である場合には、コーティング前処理として基層の外周表面を高周波プラズマ、コロナ放電、もしくはサンドブラスト等によって表面処理し、表層との密着性を向上させることができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。本発明において、各値は以下のとおり測定した。
【0085】
(固形分濃度)
表層を形成するシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を精秤し、この時の重量をCgとする。電子天秤上で当該樹脂を溶剤に溶かすために、攪拌しながら溶剤を徐々に加え、最終的な溶液重量をDgとしたときの固形分濃度は、次式(I)となる。
固形分濃度=C/D×100(%) (I)
【0086】
(表面抵抗率)
<測定装置>
抵抗計:ハイレスタ-UP(三菱化学株式会社製)
電極:URSプローブ(三菱化学株式会社製)
<測定条件>
測定雰囲気:23℃/50%RH, 印加電圧:100V, 印加時間:10sec
得られたエンドレスベルト(直径120mm・幅238mm)を切開し、幅方向中央、周方向に等間隔16点を前記測定装置、前記測定条件にて測定し、その平均値を求めた。なお、測定時の荷重は2.0kgとした。
【0087】
(体積抵抗率)
<測定装置>
抵抗計:ハイレスタ-UP(三菱化学株式会社製)
電極:URSプローブ(三菱化学株式会社製)
<測定条件>
測定雰囲気:23℃/50%RH, 印加電圧:100V, 印加時間:10sec
得られたエンドレスベルト(直径120mm・幅238mm)を切開し、幅方向中央、周方向に等間隔16点を前記測定装置、前記測定条件にて測定し、その平均値を求めた。なお、測定時の荷重は2.0kgとした。
【0088】
(引張弾性率)
<測定装置>
オートグラフ:AG−500E(株式会社島津製作所製)
<測定条件>
測定雰囲気:23℃/55%RH,試験スピード:50mm/min,試験片幅:25mm×250mm
チャック間距離:200mm
試験片引張方向:ベルト周方向 JIS K7127準拠
N数 5の平均値
基層の引張弾性率は、各実施例及び比較例に記載の方法で製造後、上記条件に従って測定した。
【0089】
(引張破壊時呼び歪み)
<測定装置>
オートグラフ:AG−500E(株式会社島津製作所製)
<測定条件>
測定雰囲気:23℃/55%RH,試験スピード:50mm/min,試験片幅:25mm×250mm
チャック間距離:200mm
試験片引張方向:ベルト周方向 JIS K7161準拠
N数 5の平均値
基層の引張破壊時呼び歪みは、各実施例及び比較例に記載の方法で製造後、上記条件に従って測定した。
【0090】
(ベルト厚み)
精度0.001mmのダイヤルゲージ゛にて、得られたエンドレスベルトの幅方向中央1点、ベルト周方向に等間隔に16点、計16点測定した値の平均値を求めた。
【0091】
(表層厚み)
<測定装置>
レーザー顕微鏡 VK−9510(株式会社キーエンス製)
得られたエンドレスベルト(直径120mm・幅238mm)を切開し、幅方向中央、周方向に等間隔16点のベルト断面を前記測定装置にて倍率3000倍にて観察した後、表層厚みを測定し、その平均値を求めた。
【0092】
(光沢度)
<測定装置>
PG−1M(日本電色工業株式会社製)
<測定条件>
JIS Z8741準拠 入射角60°
得られた導電性エンドレスベルトにおいて、表層側を幅方向中央、周方向に等間隔に8点測定し、その平均値を求めた。
【0093】
(表面粗さ(Rz))
<測定装置>
Surfcom480A(東京精密株式会社製)
<測定条件>
JIS B0601:1994準拠
評価長さ: 4.0mm, 測定速度: 0.15mm/sec, カットオフ: 0.8mm
得られた導電性エンドレスベルトにおいて、表層側を幅方向中央、周方向に等間隔に8点測定し、その平均値を求めた。
【0094】
(静摩擦係数(μs))
<測定装置>
HEIDON μs94i 対SUS
得られた導電性エンドレスベルトにおいて、表層側を幅方向中央、周方向に等間隔に8点測定し、その平均値を求めた。
【0095】
(ブリードアウト性、耐フィルミング性、耐久性)
下記実施例および比較例により得られた導電性エンドレスベルトを中間転写ベルトとして、実機(カラーレーザープリンタ「CLP−315k」、SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD製)に装着し、マゼンタ色のハーフトーン画像を印刷することにより、ブリードアウト性、耐フィルミング性、耐久性を確認した。
ブリードアウト性評価方法;
HH環境下(32.5℃ 85%RH)において、2万枚の耐刷試験を行い、5千枚毎に感光体表面及び画像を確認した。
×:感光体表面にブリード物が目視で確認でき、かつ画像不良が発生するもの
△:感光体表面にブリード物は確認できないが、画像不良が発生するもの
○:感光体表面にブリード物も確認できず、画像不良も発生しないもの
耐フィルミング性評価方法;
×:印刷枚数1万枚未満で、クリーニング不良が発生
△:印刷枚数1万枚以上3万枚未満で、クリーニング不良が発生
○:印刷枚数3万枚以上
耐久性評価方法;
×:印刷枚数1万枚未満で、表面にクラック発生もしくはベルト破断
△:印刷枚数1万枚以上3万枚未満で、表面にクラック発生もしくはベルト破断
○:印刷枚数3万枚以上
【0096】
(トナークリーニング性)
下記実施例および比較例により得られた導電性エンドレスベルトを駆動ロールに装着後、ウレタン製のブレードをベルトの回転に対して鋭角に押し当てブレードクリーニング試験機とした。この装置を用いてHH環境下(32.5℃ 85%RH)において市販のトナーをブレードの上流に散りばめてブレードを通過したベルトを観察し、トナーの除去性を確認した。回転速度は700mm/sec。
×:抜け、ブレードビビリ・めくれによりベルト上にトナーが残存
○:トナーがブレードによって全て回収
【0097】
実施例1
ポリアミド樹脂(UBESTA PA−12 3020U、宇部興産(株)製)80重量%、タルク(ナノエースKS−873N1000、日本タルク(株)製)10重量%及びカーボンブラック(ケッチェンブラック、ケッチェンブラックインターナショナル(株)製)10重量%を配合した後、2軸スクリュー押出機に投入し(シリンダー温度160〜250℃)、ペレット状原料Aを作製した。
上記ペレットAを、φ50mm単軸押出機(シリンダー温度:160〜250℃)を用いて、サーキュラーマンドレルダイにて内周長376mm、厚み120±7μm、幅238mm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm、引張弾性率2.1GPa、引張破壊時呼び歪み180%の円筒状のチューブ(基層)を製膜した。その後、春日電機(株)製高周波電源AGF−A60とアルミ電極(有効長:300mm)を用いて、基層の外周表面に、30W・min/mで、コロナ処理を行った。
次に、反応容器に、モノマーを構成する、トリメリット酸無水物0.5モル、シクロヘキサンジカルボン酸0.5モル、イソホロンジイソシアネート1モルと、触媒としてナトリウムメトキサイド0.02モルを仕込み、当該モノマー濃度が50重量%となるように、溶剤γ−ブチロラクトンを加えた。この溶液を攪拌しながら100℃で2時間反応させた後、シリコーンX−22−176DX(信越化学工業製;水酸基含有ポリジメチルシロキサン)を、前記モノマーを反応させて得られたポリアミドイミド樹脂に対して3重量%となるように加え、1時間反応させた後、180℃で更に3時間反応させた後に、固形分濃度12重量%となるように溶解させ、ワニスAを得た。
上記で得られた表面処理済みの基層(幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を金属製のマンドレルに外装した後、上記ワニスAで満たされたバスに、基層を外装したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させ、厚み0.8μmの表層を形成しうるように引上げ速度を調整した後、オーブンにて乾燥させ、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、120.8μm、表面抵抗率は3×1010Ω/□、体積抵抗率は3×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.17、表面粗さRzが0.6μmであった。
【0098】
実施例2
実施例1と同様にして、基層(内周長376mm、厚み120μm、幅238mm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を得た。
その後、春日電機(株)製高周波電源AGF−A60とアルミ電極(有効長:300mm)を用いて、基層の外周表面に、30W・min/mで、コロナ処理を行った。
実施例1のワニスAにカーボンブラック(スペシャルブラック4、テグサジャパン社製)をこのワニスAの樹脂固形分100重量部に対し35重量部となるように配合し、さらに分散剤(楠本化成(株)ディスパロンKS−873N)をカーボンブラックと同量配合した後に、ボールミルを用いて25℃において30分混合させ調整した。その後この分散液をSUS304の300メッシュにてろ過して導電ワニスBを得た。
上記で得られた表面処理済みの基層(幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を金属製のマンドレルに外装した後、上記導電ワニスBで満たされたバスに、基層を外装したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させ、厚み5.0μmの表層を形成しうるように引上げ速度を調整した後、オーブンにて乾燥させ、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、125.0μm、表面抵抗率は1×1010Ω/□、体積抵抗率は6×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.18、表面粗さRzが0.5μmであった。
【0099】
実施例3
実施例1と同様にして、基層(内周長376mm、厚み120μm、幅238mm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を得た。
その後、春日電機(株)製高周波電源AGF−A60とアルミ電極(有効長:300mm)を用いて、基層の外周表面に、30W・min/mで、コロナ処理を行った。
実施例1のワニスAにカーボンブラック(スペシャルブラック4、テグサジャパン社製)をこのワニスAの樹脂固形分100重量部に対し60重量部となるように配合し、さらに分散剤(楠本化成(株)ディスパロンKS−873N)をカーボンブラックと同量配合した後に、ボールミルを用いて25℃において30分混合させ調整した。その後この分散液をSUS304の300メッシュにてろ過して導電ワニスCを得た。
上記で得られた表面処理済みの基層(幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を金属製のマンドレルに外装した後、上記導電ワニスCで満たされたバスに、基層を外装したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させ、厚み5.0μmの表層を形成しうるように引上げ速度を調整した後、オーブンにて乾燥させ、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、125.0μm、表面抵抗率は1×10Ω/□、体積抵抗率は6×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.18、表面粗さRzが0.5μmであった。
【0100】
実施例4
実施例1と同様にして、基層(内周長376mm、厚み120μm、幅238mm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を得た。
その後、春日電機(株)製高周波電源AGF−A60とアルミ電極(有効長:300mm)を用いて、基層の外周表面に、30W・min/mで、コロナ処理を行った。
その後、シリコーンをX−22−176F(信越化学工業製;水酸基含有ポリジメチルシロキサン)に変えた以外は、実施例1と同様にしてワニスDを得た。
上記で得られた表面処理済みの基層(幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を金属製のマンドレルに外装した後、上記ワニスDで満たされたバスに、基層を外装したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させ、厚み0.8μmの表層を形成しうるように引上げ速度を調整した後、オーブンにて乾燥させ、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、120.8μm、表面抵抗率は3×1010Ω/□、体積抵抗率は3×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.17、表面粗さRzが0.6μmであった。
【0101】
実施例5
ポリアミド樹脂(UBESTA PA−12 3020U、宇部興産(株)製)90重量%及びカーボンブラック(ケッチェンブラック、ケッチェンブラックインターナショナル(株)製)10重量%を配合した後、2軸スクリュー押出機に投入し(シリンダー温度160〜250℃)、ペレット状原料Bを作製した以外は実施例1と同様にして、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した基層は、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm、引張弾性率1.6GPa、引張破壊時呼び歪み250%の円筒状のチューブであり、当該基層を用いて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、120.8μm、表面抵抗率は3×1010Ω/□、体積抵抗率は3×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.17、表面粗さRzが0.2μmであった。
【0102】
比較例1
実施例1と同様にして、基層(内周長376mm、厚み120μm、幅238mm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を得た。
その後、春日電機(株)製高周波電源AGF−A60とアルミ電極(有効長:300mm)を用いて、基層の外周表面に、30W・min/mで、コロナ処理を行った。
次に、反応容器にトリメリット酸無水物0.5モル、シクロヘキサンジカルボン酸0.5モル、イソホロンジイソシアネート1モル、ナトリウムメトキサイド0.02モルを溶剤γ−ブチロラクトンと共に仕込み、モノマー濃度を50重量%とした。この溶液を攪拌しながら100℃で2時間反応させた後、180℃で更に3時間反応させた後に固形分濃度12重量%となるように溶解させ、ワニスEを得た。
上記で得られた表面処理済の基層(幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を金属製のマンドレルに外装した後、上記ワニスEで満たされたバスに、基層を外装したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させ、厚み0.8μmの表層を形成しうるように引上げ速度を調整した後、オーブンにて乾燥させ、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、120.8μm、表面抵抗率は3×1010Ω/□、体積抵抗率は3×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.30、表面粗さRzが0.6μmであった。
【0103】
比較例2
上記実施例1において、表層を形成することなく、幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cmの単層導電性エンドレスベルトを作成した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは120μm、表面抵抗率は1×1010Ω/□、体積抵抗率は6×10Ω・cmであり、静摩擦係数が0.17、表面粗さRzが1.2μmであった。
【0104】
比較例3
ムキコート3000VH R−2クリヤー主剤とムキコート3000T-4硬化剤(ともに川上塗料株式会社製)を溶剤の酢酸エチルに固形分濃度15質量%となるように溶解させてワニスFを得た。
実施例1と同様に得られたコロナ表面処理済の基層(幅238mm、内周長376mm、厚み120μm、表面抵抗率1×1010Ω/□、体積抵抗率6×10Ω・cm)を金属製のマンドレルに外装した後、上記ワニスFで満たされたバスに、基層を外装したマンドレルをバスに対して垂直に浸漬させ、厚み0.8μmの表層を形成しうるように引上げ速度を調整した後、オーブンにて乾燥させ、図1に示した構造の導電性エンドレスベルトを作製した。
なお、上記にて作製した導電性エンドレスベルトの厚みは、120.8μm、表面抵抗率は2×1010Ω/□、体積抵抗率は2×10Ω・cmであり、静摩擦係数は0.12、表面粗さRzが0.5μmであった。
【0105】
試験例1
各導電性エンドレスベルトを中間転写ベルトとして、上記の方法に従ってブリードアウト性、耐フィルミング性、耐久性を確認し、結果を表1に示した。また、光沢度、表面粗さ、表層厚み、表面抵抗率、静摩擦係数についても、上記の方法に従って測定し、結果を表1に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
1 基層
11 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂を含む基層と、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層とを有する二層の導電性エンドレスベルトであって、該ベルトの表面抵抗率が1×10〜1014(Ω/□)の範囲内であることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
【請求項2】
表面の静摩擦係数が0.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項3】
表面の表面粗さ(Rz)が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項4】
前記基層に無機フィラーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項5】
前記表層のシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して酸性処理されたカーボンブラックを1〜60重量部含有してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項6】
前記表層の60°入射角における光沢度が70以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項7】
前記表層がコーティングにより形成されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項8】
カラー画像形成装置における中間転写ベルトである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性エンドレスベルト。
【請求項9】
芳香族ポリイミド系樹脂を含む表層形成組成物を、基層の外面に積層し、表層を形成する工程を含む、ポリアミド樹脂を含む基層とシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を含む表層とを有する、導電性エンドレスベルトの製造方法。
【請求項10】
前記表層を形成する工程において、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を溶媒に溶解し、当該表層形成組成物を基層の外面にコーティングすることにより表層を形成する、請求項9に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−88728(P2013−88728A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231110(P2011−231110)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】