説明

導電性セパレータ板およびそれを用いた空冷式燃料電池、ならびに空冷式燃料電池システム

【課題】燃料電池の発電部の冷却効率の向上と、空気流路の凝縮水による閉塞の抑制とを同時に実現することが可能な空冷式燃料電池用導電性セパレータ板を提供する。
【解決手段】一方の面に燃料を流す燃料流路を有し、他方の面に空気を流す空気流路を有する空冷式燃料電池用導電性セパレータ板であって、内部に設けられた冷却用空気流路、および前記空気流路と前記冷却用空気流路とを連絡する少なくとも1つの貫通孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式燃料電池に関し、さらに詳しくは空冷式燃料電池に用いられるセパレータ板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球温暖化や大気汚染等の環境問題や資源枯渇の問題を解決し、持続可能な循環型社会を実現させる方策として、燃料電池を用いることが着目されており、燃料電池に関する研究開発が盛んに行われている。燃料電池としては、工場や住宅等に設置する定置型電池および電気自動車用や携帯電子機器用の非定置型電池がある。また、近年、ACアダプターからの充電を必要としないユビキタスモバイル電源として、直接型燃料電池が、特に着目されており、早期実用化に向けて積極的な取り組みが行われている。
【0003】
燃料電池は一般的に発電に伴い発熱するため、燃料電池の作動温度を一定にするためには、冷却水などで燃料電池を冷却する必要がある。このような冷却水を使う水冷式以外の方法としては、例えば、燃料電池システム中に、発電部に空気を供給するファンを新たに設置し、発電部を空冷する空冷式が挙げられる。
【0004】
特に、非定置型燃料電池の場合、重量や設置スペースの観点からタンクが必要な冷却水を使用することは困難であるため、空冷式が使われることが多い。その中でも、電気自動車用燃料電池においては、発電部は所望の出力を得るために単セルを複数個積層したスタック構造を有しており、この発電部の発熱量が大きいことが問題となっていた。この場合、凝縮水の除去に必要な空気流を確保し、発電の安定性を向上させるためには、冷却用空気と発電用空気とを適切な量だけ供給するための専用の補機が必要となり、消費電力の増大やシステムの大型化の問題があった。
【0005】
空気による発電部の冷却、およびセパレータ板の空気流路の凝縮水による閉塞(フラッディング)の抑制のために、以下のような提案がなされている。
例えば、特許文献1では、セパレータ板の燃料流路を有する面と反対側の面に冷却用空気流路を形成し、この冷却用空気流路の圧力損失を空気流路の圧力損失とほぼ同一とすることが提案されている。これにより、反応用空気および冷却用空気を供給するための周辺補器を共通化することができ、燃料電池システムを小型化かつ低コスト化することができる。
【0006】
また、特許文献2では、セパレータ板の一方の面に設けられた蛇行する溝状の空気流路の空気の流れに対して湾曲部より下流側に、セパレータ板の厚さ方向に貫通する貫通孔を設け、空気流路を有する面と反対側の面に上記貫通孔と連絡する水流路を設けたセパレータ板を用いることが提案されている。これにより、空気流路内の凝縮水を適切に貫通孔を介して水流路に排水することができる。
しかしながら、上記のような従来の技術では、発電部の冷却効率の向上と、セパレータ板の空気流路の水による閉塞の抑制とを同時に実現することが困難である。
【特許文献1】特開2004−327089号公報
【特許文献2】特開2005−190774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記従来の問題を解決するために、燃料電池の発電部の冷却効率の向上と、空気流路の凝縮水による閉塞の抑制とを同時に実現することが可能なセパレータ板を提供することを目的とする。また、上記セパレータ板を用いて、安定した出力特性を有する高信頼性の空冷式燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一方の面に燃料を流す燃料流路を有し、他方の面に空気を流す空気流路を有する空冷式燃料電池用導電性セパレータ板であって、内部に設けられた冷却用空気流路、および前記空気流路と前記冷却用空気流路とを連絡する少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴とする。
これにより、セパレータ板内部の冷却用空気流路を通過する冷却用空気を効率的に空気流路に送り込むことができるため、発電部の冷却効率の向上および空気流路の凝縮水による閉塞の抑制を同時に実現させることができる。
【0009】
前記セパレータ板は、前記空気流路の一方の端と連絡する空気入口および前記空気流路の他方の端と連絡する空気出口を有し、前記空気流路は、前記カソードと対応する部分において湾曲部を有し、前記貫通孔は、前記空気流路における前記空気の流れに対して前記湾曲部よりも上流側に設けられているのが好ましい。
これにより、空気流路の湾曲部で発生しやすい凝縮水による閉塞を抑制することが可能となるため、燃料電池の出力特性が安定化する。
【0010】
前記セパレータ板は、前記冷却用空気流路の一方の端と連絡する冷却用空気入口を有し、前記冷却用空気流路の他方の端は前記貫通孔に連絡するのが好ましい。
これにより、空気流路の最も下流側に位置する湾曲部で、貫通孔を通じて冷却用空気を空気流路に送り込み易くなる。そして、発電部を効率的に冷却しつつ、水の凝縮が最も発生しやすい空気流路の最も下流側に位置する湾曲部において、水の排出性を確保することができる。
【0011】
前記セパレータ板は、前記貫通孔内における前記空気流路側に、前記貫通孔を塞ぐように、空気を通し、かつ水を通さない膜を有するのが好ましい。
これにより、燃料電池を搭載した携帯用電子機器の傾き等の姿勢の影響により、空気流路内に存在する凝縮水が貫通孔を介して冷却用空気流路へ流れ込むのを防止することができる。
【0012】
前記セパレータ板は、さらに、内部に、前記空気流路から前記冷却用空気流路に流れ込んだ水を排出するための排水路を有するのが好ましい。
これにより、空気流路に存在する水が冷却用空気流路に流れ込み、冷却用空気流路内部に水が滞留するのを防止することができる。
【0013】
本発明の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板の第1の好ましい形態は、前記セパレータ板は、第1の板体と第2の板体からなり、前記第1の板体は、一方の面に前記空気流路および前記貫通孔を有し、前記第2の板体は、一方の面に前記冷却用空気流路を有し、他方の面に前記燃料流路を有し、前記第1の板体および前記第2の板体は、前記第1の板体における前記空気流路を有する面と反対側の面と、前記第2の板体における前記冷却用空気流路を有する面とが対向するように重ね合わせられている。
これにより、セパレータ板内部に冷却用空気流路や貫通孔を精度よく、容易に形成することができる。
【0014】
本発明の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板の第2の好ましい形態は、前記セパレータ板は、第1の板体と第2の板体からなり、前記第1の板体は、一方の面に空気流路を有し、他方の面に冷却用空気流路を有し、前記空気流路と前記冷却用空気流路とを連絡する前記貫通孔を有し、前記第2の板体は、一方の面に前記燃料流路を有し、前記第1の板体および前記第2の板体は、前記第1の板体における前記冷却用空気流路を有する面と、前記第2の板体における前記燃料流路を有する面と反対側の面とが対向するように重ね合わせられている。
これにより、セパレータ板内部に冷却用空気流路や貫通孔を精度よく、容易に形成することができる。
【0015】
また、本発明は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟むアノードおよびカソードとからなる膜電極接合体の複数個を、上記の導電性セパレータ板を介して前記燃料流路を有する面が前記アノードに対向し、前記空気流路を有する面が前記カソードに対向するように積層してなる空冷式燃料電池に関する。
さらに、本発明は、上記の空冷式燃料電池と、前記空気流路および前記冷却用空気流路にそれぞれ空気を供給する1つの空気供給手段とを具備する空冷式燃料電池システムに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一方の面に空気流路および他方の面に燃料流路を有するセパレータ板が、内部に設けられた冷却用空気流路、および空気流路と冷却用空気流路とを連絡する少なくとも1つの貫通孔を有することにより、空気流路の途中で冷却用空気流路内の冷却用空気を送り込むことができる。これにより、発電部を効率よく冷却することができるとともに、空気流路の凝縮水による閉塞を抑制することができる。
上記セパレータ板を用いることにより、安定した出力特性を有する高信頼性の空冷式燃料電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を示すが、本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
本発明に係る導電性セパレータ板の一実施の形態を図1に示す。図1は、本実施の形態の導電性セパレータ板の分解斜視図である。
図1に示すように、セパレータ板1は、例えばカーボンからなる第1の板体1aおよび第2の板体1bで構成される。第1の板体は、一方の面に、空気入口2a、空気出口2b、および空気入口2aと空気出口2bとを連絡し、空気を流す空気流路2を有する。空気流路2は、後述するカソードと対向する面においてS字状に蛇行し、湾曲部6aおよび6bを有する。湾曲部6aは湾曲部6bよりも空気の流れに対して上流側に位置する。また、第1の板体1aは、空気流路2と、他方の面とを貫通する2つの貫通孔3aおよび3bを有する。貫通孔3aは貫通孔3bよりも空気の流れに対して上流側に位置する。
【0018】
第2の板体1bは、図1に示すように、一方の面に冷却用空気流路4を有し、図2に示すように、他方の面(後述するアノードと対向する面)に燃料入口12a、燃料出口12b、および燃料入口12aと燃料出口12bとを連絡し、燃料を流す燃料流路12を有する。燃料流路12は、後述するアノードと対向する面においてS字状に蛇行する。第2の板体1bにおいて、冷却用空気流路4の一方の端は、第2の板体1bに設けられた冷却用空気入口4aに接続され、冷却用空気流路4の他方の端(下流側の端)は閉じられている。
【0019】
セパレータ板1は、第1の板体1aの空気流路2を有する面と反対側の面と、第2の板体1bの冷却用空気流路4を有する面とが対向するように、第1の板体1aと第2の板体1bとを重ね合わせることにより構成される。第1の板体1aと第2の板体1bとの密着方法としては、例えば密着させる面に導電性ペーストを塗布することが挙げられる。
貫通孔3aおよび3bは、空気流路2と冷却水用空気流路4とを連絡する。冷却用空気流路4は、空気流路2の空気入口2aから貫通孔3bまでの形状に対応する。
上記のように第1の板体1aと第2の板体1bとを組み合わせてセパレータ板1を構成することにより、セパレータ板1内部に、冷却用空気流路4と、貫通孔3aおよび3bとを、精度良くかつ容易に形成することができる。
【0020】
貫通孔3aおよび3bは、それぞれ空気流路2における空気の流れに対して湾曲部6aおよび6bよりも上流側に設けられている。これにより、湾曲部6aおよび6bで発生しやすい空気流路の凝縮水による閉塞をより効果的に抑制することができる。
また、冷却用空気流路4の下流側の端は閉じられており、空気流路2の最も下流側に位置する湾曲部6bよりも上流側で、貫通孔3bを介して冷却用空気流路4内の冷却用空気のすべてが空気流路2へ流れ込むため、発電部を効率よく冷却することができるとともに、水の凝縮が最も発生しやすい空気流路2の下流側の湾曲部6bでの水の排出性を十分に確保することができる。
【0021】
さらに、冷却用空気流路4は、貫通孔3aよりも下流側において断面積が減少するように形成されている。すなわち、冷却用空気流路4において、空気流路2の貫通孔3aから湾曲部6aに対応する部分に、上流側から下流側にかけて上方に傾斜する傾斜部7b、および空気流路2の湾曲部6aに対応する湾曲部に、傾斜部7bに連なる棚部7aが設けられている。これにより、冷却用空気流路4内を通る冷却用空気が上流側に位置する貫通孔3aに流れ込みやすくなる。
また、空気流路の圧力損失の低減化および発電部の冷却効率の向上の観点から、図1に示すように、冷却用空気流路4は空気流路2よりも幅が広いのが好ましい。
【0022】
燃料電池の発電部は、例えば、上記のセパレータ板1と、膜電極接合体とを交互に複数個積層することにより構成される。膜電極接合体は、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟むアノードおよびカソードとからなる。アノードはセパレータ板1の燃料流路を有する面に対向し、カソードはセパレータ板1の空気流路2を有する面に対向する。
ここで、図3に、周囲に外部マニホルドを配した発電部におけるセパレータ板1中の燃料および空気の流れを示す。図3中の実線aは空気の流れ、破線bは冷却用空気の流れ、破線cは燃料の流れを示す。なお、セパレータ板1中の冷却用空気の流れは省略する。
各セパレータ板1の燃料入口12aおよび燃料出口12bは、それぞれ発電部の周囲に設けられた外部マニホルドに接続される。各セパレータ板の燃料流路2内の燃料は、外部マニホルドの燃料供給部24から燃料入口2aより供給される。燃料供給部24の燃料はポンプ27により送り込まれる。また、燃料流路2内の燃料は、各セパレータ板1の燃料出口2bから外部マニホルドの燃料排出部25へ排出される。
【0023】
各セパレータ板1の空気入口2aおよび冷却用空気入口4aは、それぞれ発電部の周囲に設けられた外部マニホルドに接続される。各セパレータ板の空気流路2内および冷却用空気流路4内の空気は、外部マニホルドの空気供給部22から空気入口2aおよび冷却用空気入口4aより供給される。空気供給部22の空気、すなわち空気流路2を流れる空気および冷却用空気流路を流れる冷却用空気は、1つのファン26により送り込まれる。また、空気流路2内の空気は、各セパレータ板1の空気出口2bから外部マニホルドの空気排出部23へ排出される。上記のように、第2の板体1bにおける冷却用空気流路4の下流側端部は閉じられているため、冷却用空気流路4内の空気のすべては、貫通孔3aおよび3bを経由して空気流路2に流れ込む。
【0024】
上記セパレータ板1では、冷却用空気流路4内の冷却用空気を効率よく空気流路2に送り込むことが可能となり、発電部の冷却効率の向上と、空気流路の凝縮水による閉塞の抑制とを同時に実現することができる。従って、上記セパレータ板1を用いることにより、安定した出力特性を有する高信頼性の空冷式燃料電池が得られる。
【0025】
また、燃料電池を搭載した携帯用電子機器の傾き等の姿勢の影響により、空気流路2内に存在する凝縮水が貫通孔3aおよび3bを介して冷却用空気流路4に流れ込まないように、貫通孔3aおよび3b内の空気流路2側に、貫通孔3aおよび3bを塞ぐように、空気を通して水を通さない気体透過膜を設けることが好ましい。膜厚は、例えば10〜200μmである。この膜には、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂からなる撥水性を有する多孔質シートが用いられる。孔の大きさは、例えば0.05〜5μmである。
【0026】
さらに、上記の空冷式燃料電池と、空気流路2および冷却用空気流路4にそれぞれ空気を供給する1つの空気供給手段とを具備する空冷式燃料電池システムを構成することにより、1つの空気供給手段(例えば、図3に示すファン26)で、空気流路2と冷却用空気流路4の両方に空気を供給することができる。このように、1つの空気供給手段で空気流路2と冷却用空気流路4の両方に空気を供給することができ、ファン等の周辺補器の消費電力を効率よく低減することができるため、燃料電池システムの小型化および低コスト化が可能となる。
【0027】
本実施の形態では、外部マニホルドを備えた燃料電池の一例を示したが、セパレータ板および膜電極接合体の周縁部にそれぞれ空気流路、燃料流路、および冷却用空気流路に接続する内部マニホルドを設けてもよい。
また、本発明のセパレータ板における、貫通孔の数、ならびに冷却用空気流路および空気流路の形状は本実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態2)
本実施の形態のセパレータ板の分解斜視図を図4に示す。本実施の形態のセパレータ板1’は、実施の形態1の図1に示すセパレータ板1における第2の板体1bの冷却用空気流路4を有する面に、さらに排水路8を設けた構成である。すなわち、図4に示すように、第2の板体1b’は、第1の板体1aと対向する面(空気流路2を有する面と反対側の面)において、冷却用空気流路4および排水路8を有する。排水路8は、空気流路2に存在する水が冷却水用空気流路4に流れ込んだ場合、その水を排出する役割を有する。
【0029】
排水路8は、上流側で排水路9aと排水路9bの2つに枝分かれし、下流側の排水出口8a付近で2つの排水路9aおよび9bが1つに合流する形状を有する。排水路8の下流側の端は排水出口8aに接続され、排水路8の上流側の端は、2つに枝分かれした排水路9aおよび9bの末端において、冷却用空気流路4の貫通孔3aおよび3b付近に設けられた図2中の排水入口10aおよび排水入口10bにそれぞれ接続されている。
【0030】
同一面に冷却用空気流路4および排水路8を有するため、排水路8に水が排出されやすいように、排水路8は、冷却用空気流路4よりも底の位置が低くなるように形成されている。また、排水路8内の水を排水出口8aより排出しやすくするために、排水路8の底を上流から下流にかけて下方に傾斜させてもよい。排水路8は貫通孔3aおよび3b付近で冷却用空気流路4に接続されているため、空気流路2に存在する水は、冷却用空気流路4に流れ込むことなく、貫通孔3aおよび3bを経由して効率よく排水入口10aおよび10bより排水路9aおよび9bへ排出される。また、棚部7aや傾斜部が7bが存在するため、冷却用空気流路4の湾曲部(棚部7aの部分)に水が溜まりにくい。
【0031】
上記セパレータ板1’では、冷却用空気流路4内の冷却用空気を効率よく空気流路2に送り込むことが可能となり、発電部の冷却効率の向上と、空気流路の凝縮水による閉塞の抑制とを同時に実現することができる。従って、上記セパレータ板1’を用いることにより、安定した出力特性を有する高信頼性の空冷式燃料電池が得られる。
【0032】
(実施の形態3)
本実施の形態のセパレータ板の分解斜視図を図5に示す。図5に示すように、セパレータ板11は、第1の板体11aと第2の板体11bからなる。第1の板体11aは、一方の面に、空気入口2a、空気出口2b、および空気入口2aと空気出口2bとを連絡し、空気を流す空気流路2を有する。第1の板体11aは、他方の面に、冷却用空気入口14、冷却用空気入口14に接続する冷却用空気流路、ならびに空気流路2と冷却用空気流路とを連絡する貫通孔3aおよび3bを有する。第2の板体11bは、図2の第1の板体1bの場合と同様に、一方の面に燃料入口12a、燃料出口12b、および燃料入口12aと燃料出口12bとを連絡し、燃料を流す燃料流路12を有する。
【0033】
第1の板体11aおよび第2の板体11bは、第1の板体11aにおける冷却用空気流路を有する面と、第2の板体11bにおける燃料流路12を有する面と反対側の面とが対向するように重ね合わせられている。そして、冷却用空気流路14は、実施の形態1の冷却用空気流路4と左右対称の形状を有する。すなわち、本実施の形態の第1の板体11aと第2の板体11bとを重ね合わせたセパレータ板11は、実施の形態1の第1の板体1aと第2の板体1bとを重ね合わせたセパレータ板1と形状は同じである。
【0034】
上記のように第1の板体11aと第2の板体11bとを組み合わせてセパレータ板11を構成することにより、セパレータ板11内部に、冷却用空気流路と、貫通孔3aおよび3bとを、精度良くかつ容易に形成することができる。
上記セパレータ板11では、冷却用空気流路内の冷却用空気を効率よく空気流路2に送り込むことが可能となり、発電部の冷却効率の向上と、空気流路の凝縮水による閉塞の抑制とを同時に実現することができる。従って、上記セパレータ板11を用いることにより、安定した出力特性を有する高信頼性の空冷式燃料電池が得られる。
【0035】
(実施の形態4)
本実施の形態のセパレータ板の分解斜視図を図6に示す。本実施の形態のセパレータ板11’は、実施の形態3の図5に示すセパレータ板11の第2の板体11bの燃料流路12を有する面と反対側の面に、さらに排水路18を設けた構成である。すなわち、図6に示すように、第2の板体11b’は、第1の板体11aと対向する面において、排水路18を有する。排水路18は、空気流路2に存在する水が冷却水用空気流路14に流れ込んだ場合、その水を排出する役割を有する。
【0036】
排水路18は、上流側で排水路19aと排水路19bの2つに枝分かれし、下流側の排水出口18a付近で2つの排水路19aおよび19bが1つに合流する形状を有する。排水路18の下流側の端は排水出口18aに接続され、2つに枝分かれした排水路19aおよび19bの上流側端部20aおよび20bは、冷却用空気流路4の貫通孔3aおよび3bの真下にそれぞれ設けられている。
【0037】
排水路8の上流側端部20aおよび20bは貫通孔3aおよび3bの真下に設けられているため、空気流路2に存在する水が貫通孔3aおよび3bを経由して冷却用空気流路14に流れ込んでも、効率よく上流側端部20aおよび20bより排水路19aおよび19bへ排出される。また、排水路18内の水を排水出口18aより排出しやすくするために、排水路18の底を上流から下流にかけて下方に傾斜させてもよい。
【0038】
上記セパレータ板11’では、冷却用空気流路内の冷却用空気を効率よく空気流路2に送り込むことが可能となり、発電部の冷却効率の向上と、空気流路の凝縮水による閉塞の抑制とを同時に実現することができる。従って、上記セパレータ板11’を用いることにより、安定した出力特性を有する高信頼性の空冷式燃料電池が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の空冷式燃料電池は、携帯電話や携帯情報端末(PDA)、ノートPC、ビデオカメラ等の携帯電子機器用の電源として好適に用いられる。また、電動スクータや自動車用の電源にも用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1の空冷式燃料電池用セパレータ板の分解斜視図である。
【図2】図1の板体11bの背面からみた斜視図である。
【図3】外部マニホルドを周囲に配した発電部におけるセパレータ板中の燃料および空気の流れを示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2の空冷式燃料電池用セパレータ板の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態3の空冷式燃料電池用セパレータ板の分解斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態4の空冷式燃料電池用セパレータ板の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1、1’、11、11’ セパレータ
1a、11a 第1の板体
1b、1b’、11b、11b’ 第2の板体
2 空気流路
2a 空気入口
2b 空気出口
3a、3b 貫通孔
4 冷却用空気流路
4a、14 冷却用空気入口
6a、6b 湾曲部
7a 棚部
7b 傾斜部
8、9a、9b、18、19a、19b 排水路
8a、18a 排水出口
10a、10b 排水入口
12 燃料流路
12a 燃料入口
12b 燃料出口
20a、20b 端部
22 空気供給部
23 空気排出部
24 燃料供給部
25 燃料排出部
26 ファン
27 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に燃料を流す燃料流路を有し、他方の面に空気を流す空気流路を有する空冷式燃料電池用導電性セパレータ板であって、
内部に設けられた冷却用空気流路、および前記空気流路と前記冷却用空気流路とを連絡する少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴とする空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項2】
前記セパレータ板は、前記空気流路の一方の端と連絡する空気入口および前記空気流路の他方の端と連絡する空気出口を有し、
前記空気流路は湾曲部を有し、
前記貫通孔は、前記空気流路における前記空気の流れに対して前記湾曲部よりも上流側に設けられている請求項1記載の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項3】
前記セパレータ板は、前記冷却用空気流路の一方の端と連絡する冷却用空気入口を有し、
前記冷却用空気流路の他方の端は前記貫通孔に連絡する請求項1記載の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項4】
前記セパレータ板は、前記貫通孔内における前記空気流路側に、前記貫通孔を塞ぐように、空気を通し、かつ水を通さない膜を有する請求項1記載の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項5】
前記セパレータ板は、さらに内部に、前記空気流路から前記冷却用空気流路に流れ込んだ水を排出するための排水路を有する請求項1記載の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項6】
前記セパレータ板は、第1の板体と第2の板体からなり、
前記第1の板体は、一方の面に前記空気流路および前記貫通孔を有し、
前記第2の板体は、一方の面に前記冷却用空気流路を有し、他方の面に前記燃料流路を有し、
前記第1の板体および前記第2の板体は、前記第1の板体における前記空気流路を有する面と反対側の面と、前記第2の板体における前記冷却用空気流路を有する面とが対向するように重ね合わせられている請求項1記載の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項7】
前記セパレータ板は、第1の板体と第2の板体からなり、
前記第1の板体は、一方の面に空気流路を有し、他方の面に冷却用空気流路を有し、前記空気流路と前記冷却用空気流路とを連絡する前記貫通孔を有し、
前記第2の板体は、一方の面に前記燃料流路を有し、
前記第1の板体および前記第2の板体は、前記第1の板体における前記冷却用空気流路を有する面と、前記第2の板体における前記燃料流路を有する面と反対側の面とが対向するように重ね合わせられている請求項1記載の空冷式燃料電池用導電性セパレータ板。
【請求項8】
高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟むアノードおよびカソードとからなる膜電極接合体の複数個を、請求項1〜7のいずれかに記載の導電性セパレータ板を介して、前記燃料流路を有する面が前記アノードに対向し、前記空気流路を有する面が前記カソードに対向するように積層してなる空冷式燃料電池。
【請求項9】
請求項8記載の空冷式燃料電池と、前記空気流路および前記冷却用空気流路にそれぞれ空気を供給する1つの空気供給手段とを備えた空冷式燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−27748(P2008−27748A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199319(P2006−199319)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】