説明

導電性プローブ、導電性プローブの製造方法、及び磁気特性測定方法

【課題】耐摩耗性を向上して小型化を図ることにより寿命を損なうことなく磁気特性の測定精度を向上した導電性プローブ、導電性プローブの製造方法、及びその導電性プローブを用いた磁気特性測定方法を提供する。
【解決手段】導電性プローブは、支持部と、支持部から延びるレバーと、レバーの自由端に形成されて測定領域30Aに接触するための探針部13とを有する。探針部13は、自由端から延びる探針13aと、探針13aの表面に形成されてTaからなる下地層14と、下地層14に積層されてRuからなる被覆層15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性プローブ、導電性プローブの製造方法、及び磁気特性測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetic Resistive )効果やトンネル磁気抵抗(TM
R:Tunneling Magnetoresistive )効果を利用する磁気抵抗素子は、優れた磁気抵抗変
化率を有するため、磁気センサ、磁気再生ヘッド、磁気メモリ等の各種の磁気デバイスに広く採用されている。磁気抵抗素子は、AlTiCウェハやSiウェハ等の基板の上に、下部電極層/反強磁性層/固定層/非磁性層/自由層/保護層/上部電極層からなる人工格子多層膜構造を有する。
【0003】
上記非磁性層としては、膜厚が0.4nm〜2.5nmのCu、Al、Mg、これらの合金からなる金属膜、あるいはAlOxやMgO等の金属酸化物膜が用いられる。上記固定層及び自由層としては、Co−Fe膜、Co−Fe−B膜、Ni−Fe膜等の強磁性膜、これらの積層膜、あるいは該積層膜にRu膜を挟入した積層膜が用いられる。磁気抵抗素子は、固定層の自発磁化の方向と、自由層の自発磁化の方向とが平行であるか、あるいは反平行であるかに応じて、自身の電気抵抗値を低抵抗、あるいは高抵抗に切り替える。
【0004】
人工格子多層膜の磁気特性を評価するとき、まず、人工格子多層膜は、基板上で所定の評価サイズ(例えば、磁気デバイスのサイズ)に区画される。次いで、人工格子多層膜は、所定の入力電流が各層の積層方向に沿って入力されることにより、自発磁化の方向に依存する電気抵抗値を、出力電圧の大きさとして出力する。
【0005】
例えば、人工格子多層膜は、その上部電極層と下部電極層に一対の導電性プローブが接続されて、一対の導電性プローブが定電流源に接続されることにより、上部電極層と下部電極層との間に所定の入力電流を入力する。人工格子多層膜の磁気特性を評価するとき、入力電流の入力によって誘起する電圧が一対のプローブを介して測定されて、この測定結果と入力電流値とに基づいて、電気抵抗値が検出される。
【0006】
導電性プローブとしては、探針部を有する接触型のプローブを用いることができ、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope )に利用される走査プローブを用いることができる。例えば、導電性プローブとしては、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope )や、走査型トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope )等の走査プローブを用いることができる(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−357529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記導電性プローブの探針部は、安定した導電性を得るため、耐酸化性に優れたAu、Pt、PtIrからなる導電膜で被覆されている。探針部の先端は、測定対象物の電気抵抗値を計測するたびに、測定対象物の表面に機械的に接触する。そのため、探針部に被覆される導電膜は、電気抵抗値を計測するたびに磨耗して、探針部における導電性を容易に損なってしまう。
【0008】
また、測定対象物の抵抗率が高い場合、導電性プローブは、探針部から大きな電圧を印加して探針部の先端に電界を集中させる。導電膜で被覆される探針部は、SiやSiN等
からなる探針と導電膜との間の密着性が低いため、局所的に電界が集中すると、導電膜の剥がれを来たして導電性を損なってしまう。この結果、上記探針部では、導電性プローブの使用寿命を著しく短くしてしまう。
【0009】
こうした使用寿命の短縮は、導電膜の薄膜化に伴い加速するため、探針部の小型化を大きく阻害し、ひいては測定対象物の縮小化を妨げている。そこで、探針部の接触領域が1μm以下になる場合、上記磁気特性測定方法では、従来から、測定対象物に対して以下の加工を施している。
【0010】
図10(a)〜(c)は、それぞれ上記磁気特性測定に用いる測定試料の形成工程を示す工程図である。図10(a)に示すように、磁気特性測定方法では、まず、基板50の上に人工格子多層膜51(下部電極層52/反強磁性層53/固定層54/非磁性層55/自由層56/保護層57/上部電極層58)が形成され、この人工格子多層膜51に対して、測定領域51Aが規定される。すなわち、人工格子多層膜51の表面にレジストパターンが形成されて、レジストパターンをマスクにする人工格子多層膜51のエッチングにより、測定領域51Aが形成される。
【0011】
次いで、図10(b)に示すように、測定領域51Aを覆うSiO2等の層間絶縁膜59が積層され、測定領域51A上の層間絶縁膜59がエッチングされることにより、測定領域51A上に開口するコンタクトホール59Hが形成される。コンタクトホール59Hの内部と層間絶縁膜59の表面には、それぞれCu、Au、Ru等からなる引出電極60が成膜され、これにより測定領域51Aを拡張した接触領域60Aが形成される。そして、導電性プローブ61の探針部61aは、自身に対して十分に大きい接触領域60Aに接触することにより、その入力電流を測定領域51Aに入力する。
【0012】
しかしながら、上記する磁気特性測定方法では、層間絶縁膜59を成膜する工程、コンタクトホール59Hを形成する工程、引出電極60を形成する工程等、各種の処理工程が、人工格子多層膜51の磁気特性に対し、物理的、又は化学的な影響を与えてしまう。
【0013】
例えば、コンタクトホール59Hを形成する工程では、エッチング量に過不足があると、上部電極層58の欠損や層間絶縁膜59の残渣の形成によって、正確な出力電圧を得られなくなってしまう。また、引出電極60を形成する工程では、コンタクトホール59Hに埋め込み不良を生じると、コンタクト抵抗やプラグ抵抗の増大により、出力電圧を大幅に増大させてしまう。
【0014】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、耐摩耗性を向上して小型化を図ることにより寿命を損なうことなく磁気特性の測定精度を向上した導電性プローブ、導電性プローブの製造方法、及びその導電性プローブを用いた磁気特性測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載する導電性プローブは、支持部と、前記支持部から延びるレバーと、前記レバーの自由端に形成されて測定対象物に接触する探針部と、を有する導電性プローブであって、前記探針部は、前記自由端から延びる探針と、前記探針の表面に形成されてタンタルからなる下地層と、前記下地層に積層されてルテニウムからなる被覆層と、を有することを要旨とする。
【0016】
請求項1に記載する導電性プローブによれば、タンタルからなる下地層は、被覆層が探針の表面に直接積層される場合に比べて、被覆層と探針の表面との間の密着性を向上させる。また、ルテニウムからなる被覆層は、探針部の表面が酸化される場合であっても、そ
の導電性を維持することができる。しかも、ルテニウムからなる被覆層は、被覆層がAuやPtからなる場合に比べて、探針部の表面の耐摩耗性を向上させる。したがって、請求項1に記載する導電性プローブは、耐摩耗性を向上できる分だけ、その小型化を図ることができる。この結果、請求項1に記載する導電性プローブは、その寿命を損なうことなく、磁気特性の測定精度を向上することができる。
【0017】
請求項2に記載する導電性プローブの製造方法は、導電性プローブの製造方法であって、基板に設けられた探針の表面にタンタルからなる下地層を形成する工程と、前記下地層の表面にルテニウムからなる被覆層を形成する工程と、を有することを要旨とする。
【0018】
請求項2に記載する導電性プローブの製造方法によれば、タンタルからなる下地層は、探針表面に被覆層を直接成膜する場合に比べて、探針表面と被覆層との間の密着性を向上させる。ルテニウムからなる被覆層は、探針部表面が酸化される場合であっても、その導電性を維持することができる。しかも、ルテニウムからなる被覆層は、被覆層がAuやPtからなる場合に比べて、探針部の表面の耐摩耗性を向上させる。したがって、請求項2に記載する導電性プローブの製造方法は、耐摩耗性を向上できる分だけ、その小型化を図ることができる。この結果、請求項2に記載する導電性プローブの製造方法は、その寿命を損なうことなく、磁気特性の測定精度を向上することができる。
【0019】
請求項3に記載する導電性プローブの製造方法は、請求項2に記載の導電性プローブの製造方法であって、前記下地層を形成する工程は、斜入射スパッタ法を用いて前記下地層を形成し、前記被覆層を形成する工程は、斜入射スパッタ法を用いて前記被覆層を形成することを要旨とする。
【0020】
請求項3に記載する導電性プローブの製造方法によれば、下地層と被覆層は、それぞれ斜入射スパッタ法を用いて成膜されるため、垂直入射式のスパッタ法やCVD法を用いて成膜される場合に比べて、探針の被覆性やその膜厚均一性を向上させることができる。したがって、請求項3に記載する導電性プローブの製造方法は、下地層及び被覆層の被覆性や膜厚均一性を向上させる分だけ、その耐摩耗性を向上することができ、ひいては小型化を促進させることができる。
【0021】
請求項4に記載する導電性プローブの製造方法は、請求項2又は3に記載の導電性プローブの製造方法であって、前記被覆層を形成する工程は、前記下地層を形成する真空系を用いて前記被覆層を形成することを要旨とする。
【0022】
請求項4に記載する導電性プローブの製造方法において、ルテニウムからなる被覆層は、タンタルからなる下地層を大気に曝すことなく、同下地層を覆うことができる。したがって、請求項4に記載する導電性プローブの製造方法は、下地層の酸化を抑制することができ、下地層と被覆層との間の密着性を向上させることができる。よって、請求項4に記載する導電性プローブの製造方法は、導電性プローブの耐摩耗性を、さらに向上させることができる。
【0023】
請求項5に記載する導電性プローブの製造方法は、請求項2〜4のいずれか一つに記載の導電性プローブの製造方法であって、前記下地層を形成する工程は、第一ターゲットと第二ターゲットを有する真空槽の圧力を10−6Pa以下にして前記基板を前記真空槽に搬入し、前記真空槽にアルゴンを導入して前記真空槽の圧力を0.03Pa〜0.10Paにした後に前記第一ターゲットをスパッタすることにより前記タンタルからなる前記下地層を形成し、前記被覆層を形成する工程は、前記下地層を形成した後に前記基板を前記真空槽に配置し続けるとともに、前記第二ターゲットをスパッタすることにより、前記下地層の表面に前記ルテニウムからなる前記被覆層を形成することを要旨とする。
【0024】
請求項5に記載する導電性プローブの製造方法において、下地層と被覆層は、それぞれ共通する真空槽を用いて連続的に積層される。したがって、タンタルからなる下地層は、その酸化を確実に抑えることができ、被覆層との間の密着性を、より確実に向上させることができる。したがって、請求項5に記載する導電性プローブの製造方法は、導電性プローブの耐摩耗性を、さらに向上させることができ、ひいては導電性プローブの寿命を損なうことなく、磁気特性の測定精度を向上することができる。
【0025】
請求項6に記載する磁気特性測定方法は、一対の電極層間に磁性層を有する積層膜の磁気特性を測定する磁気特性測定方法であって、前記一対の電極層の少なくともいずれか一方にエッチングを施して前記積層膜に測定領域を区画する工程と、請求項2〜5のいずれか一つに記載の導電性プローブの製造方法を用いて製造した導電性プローブの探針部を前記測定領域の前記電極層に接続して前記積層膜の電気抵抗値を検出する工程と、を有することを要旨とする。
【0026】
請求項6に記載する磁気特性測定方法において、導電性プローブは、その耐摩耗性を向上させる分だけ、その寿命を損なうことなく、プローブのサイズを小さくできる。積層膜の測定領域は、導電性プローブのサイズを小さくできる分だけ、そのサイズを小さくできる。したがって、請求項6に記載する磁気特性測定方法では、導電性プローブのサイズを小さくできる分だけ、測定領域と導電性プローブとを結ぶ引出電極等の追加工が不要になる。この結果、請求項6に記載する磁気特性測定方法は、磁気特性の測定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
上記するように、本発明によれば、耐摩耗性を向上して小型化を図ることにより、寿命を損なうことなく磁気特性の測定精度を向上した導電性プローブ、導電性プローブの製造方法、及びその導電性プローブを用いた磁気特性測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に従って説明する。図1は、導電性プローブ10の全体を模式的に示す平面図及び側面図であり、図2は、図1における探針部13を示す要部側断面図である。
【0029】
(導電性プローブ10)
図1において、導電性プローブ10は、支持部11、レバー12、及び探針部13を有する。支持部11は、レバー12の一端を支持する剛体であって、例えば単結晶シリコンを用いることができる。支持部11は、定電流電源(図5(c)参照)に接続されることにより、定電流電源からの入力電流をレバー12に供給する。
【0030】
レバー12は、支持部11から延びる撓曲可能なレバーであって、その一端を支持部11に固定されることにより片持ち梁構造を成す。レバー12は、探針部13と支持部11との間を電気的に接続して、支持部11からの入力電流を探針部13に供給する。レバー12は、例えば単結晶シリコン、導電性の被膜を有するシリコン窒化物、あるいは導電性の被膜を有するシリコン酸化物を用いることができる。レバー12は、その自由端12aに探針部13を有する。探針部13は、その先端を測定対象物の表面に当接させて、レバー12からの入力電流を測定対象物に入力するためのものである。
【0031】
図2において、探針部13は、自由端12aから延びる円錐状の探針13aと、探針13aの表面を覆う下地層14と、下地層14の覆う被覆層15とを有する。探針13aは、レバー12の自由端12aと一体に形成されるが、これに限らず、自由端12aと異な
る構成であっても良い。
【0032】
下地層14は、タンタル(以下、Ta)からなる薄膜であって、探針13aの表面の全体にわたり層状に形成されている。下地層14は、探針13aの表面の全体にわたり、極薄(数〜数十原子層:例えば、1〜5nm)の膜厚を均一に有する。なお、Taからなる薄膜とは、薄膜の構成元素が実質的にTaであれば良く、下地層14を成膜するときの成膜原料中の不純物や成膜雰囲気中の気体を不純物として含む構成であっても良い。
【0033】
被覆層15は、ルテニウム(以下、Ru)からなる薄膜であって、下地層14の表面の全体にわたり層状に形成されている。被覆層15は、下地層14の表面の全体にわたり、例えば20nmの膜厚を有する。なお、Ruからなる薄膜とは、薄膜の構成元素が実質的にRuであれば良く、被覆層15を成膜するときの成膜原料中の不純物や成膜雰囲気中の気体を不純物として含む構成であっても良い。
【0034】
Ruの抵抗率は7.7μΩ・cmであり、酸化した状態、すなわちRuOの状態においても、その抵抗率は35μΩ・cmである。AuやPtは、その抵抗率が2.0μΩ・cmと低く、酸化し難い材料であるが、その引張強さが13.3kgf/mmと小さいために摩耗し易い。一方、Ruは、その引張強さが50kgf/mmと高いために磨耗し難い。したがって、被覆層15は、導電性プローブ10の使用期間や使用環境に関わらず、探針部13の電気抵抗値の増加を軽減させることができる。
【0035】
導電性プローブ10は、Taからなる下地層14が被覆層15と探針13aとの間で密着性を発現する分だけ、被覆層15の剥がれを抑えることができる。また、導電性プローブ10は、Ruからなる被覆層15によって探針部13の表面を覆う分だけ、被覆層15の剥がれや磨耗を軽減することができる。したがって、導電性プローブ10は、そのサイズを小型化する場合に、小型化に伴う剥がれや磨耗の加速、すなわち使用寿命の短縮を、下地層14の密着性や被覆層15の耐磨耗性によって抑制することができる。これにより、導電性プローブ10は、その使用寿命を短くすることなく、小型化を図ることができる。また、導電性プローブ10は、下地層14の膜厚を極薄の膜厚で形成する分だけ、その小型化を容易に図ることができる。
【0036】
(導電性プローブ10の製造方法)
図3は、斜入射スパッタ装置20を模式的に示す側断面図であり、図4(a)〜(c)は、それぞれ導電性プローブ10の製造工程を示す工程図である。まず、下地層14及び被覆層15を成膜するための斜入射スパッタ装置20について以下に説明する。
【0037】
図3において、斜入射スパッタ装置20は、真空槽(以下単に、チャンバ本体21という。)を有する。チャンバ本体21の内部には、複数の上記探針13aを有する基板S(図4(a)参照)が搬入される。チャンバ本体21には、供給配管22を介してArのマスフローコントローラMFCが連結されるとともに、排気配管23を介して排気系PUが連結されている。排気系PUが駆動するとき、チャンバ本体21の内部圧力は、例えば10−6Pa以下に減圧される。排気系PUが駆動し、かつ、マスフローコントローラMFCが駆動するとき、チャンバ本体21は、供給配管22からの所定流量のArを受けて、内部圧力を0.03Pa〜0.10Paにする。
【0038】
チャンバ本体21の内部には、基板ホルダ24が配設されている。基板ホルダ24は、チャンバ本体21の内部に搬入される基板Sを載置し、その探針13aを上側にして位置決め固定する。基板ホルダ24は、チャンバ本体21の下側に搭載されるホルダモータ25の出力軸に連結されて、ホルダモータ25が駆動するとき、基板Sの中心を通る鉛直線Aを回転中心にして基板Sを回転する。基板ホルダ24の周囲には防着板26が配設され
ている。防着板26は、チャンバ本体21の内壁に対してスパッタ粒子の付着を軽減する。
【0039】
基板ホルダ24の斜め上方には、第一カソードC1と第二カソードC2が配設されている。第一カソードC1と第二カソードC2は、それぞれ円盤状の第一ターゲットT1と第二ターゲットT2とを搭載する。第一ターゲットT1は、Taを主成分とするターゲットであり、第二ターゲットT2は、Ruを主成分とするターゲットである。第一ターゲットT1と第二ターゲットT2は、それぞれ内表面の法線を鉛直線Aから所定角度、例えば22°だけ傾斜させる。第一カソードC1と第二カソードC2は、それぞれ外部電源に接続されて、外部電源が駆動するとき、第一ターゲットT1と第二ターゲットT2とに所定の直流電圧を供給する。第一カソードC1と第二カソードC2は、それぞれ第一磁気回路M1と第二磁気回路M2とを搭載する。第一磁気回路M1と第二磁気回路M2とは、それぞれ第一ターゲットT1の内表面と第二ターゲットT2の内表面に沿ってマグネトロン磁場を形成する。
【0040】
第一ターゲットT1と第二ターゲットT2の内表面には、対向するシャッタ27が配設されている。シャッタ27は、自身の一部に開口を有し、鉛直線Aを中心にして回転することにより、その開口の位置を、第一ターゲットT1と対向する位置と、第二ターゲットT2と対向する位置との間で切り替える。なお、図3においては、シャッタ27の開口が第一ターゲットT1と対向する状態を示す。
【0041】
斜入射スパッタ装置20は、下地層14を成膜するとき、排気系PUを駆動してチャンバ本体21の内部を10−6Pa以下に減圧し、基板ホルダ24を駆動して基板Sを回転する。次いで、斜入射スパッタ装置20は、マスフローコントローラMFCを駆動してArをチャンバ本体21に供給し、内部圧力を0.03Pa〜0.10Paに調整する。また、斜入射スパッタ装置20は、シャッタ27を駆動してシャッタ27の開口を第一ターゲットT1と対向する位置に配置する。そして、斜入射スパッタ装置20は、第一カソードC1を駆動して第一ターゲットT1に所定電圧を印加し、第一ターゲットT1の内表面に高密度のプラズマを生成して第一ターゲットT1をスパッタする。
【0042】
この際、ターゲット表面から飛散したTa粒子は、第一ターゲットT1が基板Sの表面に対して斜め上方に配置しているため、基板Sの表面に到達した際に、探針13aの傾斜面のある片面にのみ着弾することになるが、基板Sの回転に伴い探針13aの表面の全体にわたり均一に着弾する。図4(b)に示すように、探針13aの表面に着弾するTa粒子は、探針13aの表面の全体にわたり層状に成長し、均一な膜厚からなる下地層14を形成する。これにより、斜入射スパッタ装置20は、探針13aのサイズや形状に関わらず、探針13aの表面の全体にわたり極薄のTa層を均一に成膜することができる。
【0043】
この状態から、斜入射スパッタ装置20は、被覆層15を成膜するとき、第一カソードC1を停止するとともに、シャッタ27を駆動してシャッタ27の開口を第二ターゲットT2と対向する位置に配置する。そして、斜入射スパッタ装置20は、第二カソードC2を駆動して第二ターゲットT2に所定電圧を印加し、第二ターゲットT2の内表面に高密度のプラズマを生成して第二ターゲットT2をスパッタする。
【0044】
この際、ターゲット表面から飛散したRu粒子は、第二ターゲットT2が基板Sの表面に対して斜め上方に配置しているため、基板Sの表面に到達した際に、探針13aの傾斜面のある片面にのみ着弾することになるが、Ta粒子と同じく、基板Sの回転に伴い下地層14の表面の全体にわたり均一に着弾する。図4(c)に示すように、下地層14の表面に着弾するRu粒子は、下地層14の表面の全体にわたり層状に成長し、均一な膜厚からなる被覆層15を形成する。これにより、斜入射スパッタ装置20は、探針13aのサ
イズや形状に関わらず、下地層14の表面の全体にわたりRu層を均一に成膜することができる。
【0045】
(磁気特性測定方法)
次に、上記導電性プローブ10を用いる磁気特性測定方法ついて以下に説明する。図5(a)〜(c)は、それぞれ磁気特性測定方法を示す工程図である。
【0046】
図5(a)において、測定対象物としての積層膜30は、素子基板31の表面から順に、下部電極層32、反強磁性層33、固定層34、非磁性層35、自由層36、保護層37、及び上部電極層38を有する。
【0047】
詳述すると、下部電極層32は、素子基板31の表面荒れを緩和する導電性のバッファ層であって、反強磁性層33の結晶配向を規定するシード層である。下部電極層32としては、単層構造に限らず、例えばバッファ層とシード層からなる2層構造で構成しても良く、例えばTa、Ti、W、Cr、又はこれらの合金を用いることができる。
【0048】
反強磁性層33と固定層34は、それぞれ反強磁性体と強磁性体からなる層であって、固定層34の磁化方向は、反強磁性層33との間の相互作用により一方向に固定される。反強磁性層33としては、例えばIrMn、PtMn、PdPtMnを用いることができる。固定層34は、単層構造に限らず、例えば強磁性層/磁気結合層/強磁性層からなる公知の積層フェリ構造で構成しても良い。固定層34としては、例えばNiFe、CoFe、CoFeBを用いることができる。
【0049】
非磁性層35は、非磁性の絶縁膜であって厚さ方向にトンネル電流が流れる程度の膜厚を有する。非磁性層35の電気抵抗値は、固定層34の自発磁化と自由層36の自発磁化が平行であるか、あるいは反平行であるかによって変化する。非磁性層35には、例えばMgOやAlを用いることができる。
【0050】
自由層36は、自発磁化の方向を回転にする保磁力を有した強磁性体からなる層であって、自発磁化の方向を、固定層34の自発磁化の方向と平行、あるいは反平行にする。自由層36としては、例えばCoFeの単層構造、CoFeにNiFeを積層した積層構造を用いることができる。
【0051】
保護層37は、外気に対するバリア層であって、バリア性の高い不動態を形成して自由層36の自発磁化を保護する。保護層37としては、例えばTa、Ti、W、Cr、またはこれらの合金を用いることができる。上部電極層38は、積層膜30の表面荒れを緩和するバッファ層であって、周辺回路と積層膜30の接続を円滑にする。上部電極層38としては、例えばRu、Ti、W、Cr、又はこれらの合金を用いることができる。
【0052】
積層膜30の磁気特性を測定するとき、積層膜30は、まず、測定領域30Aを規定する。すなわち、図5(a)に示すように、上部電極層38の上面には、測定領域30Aに応じたレジストパターンPRが形成される。次いで、図5(b)に示すように、積層膜30には、レジストパターンPRをマスクにする上部電極層38、保護層37、及び自由層36のエッチングが施され、下部電極層32、反強磁性層33、固定層34、及び非磁性層35を共通にする複数の測定領域30Aが形成される。
【0053】
測定領域30Aが形成されると、図5(c)に示すように、各測定領域30Aの上部電極層38には、測定順序に従って導電性プローブ10の探針部13が接続される。この状態において、積層膜30には、素子基板31の面方向に沿う所定磁界が印加されて、測定領域30Aの上部電極層38と下部電極層32との間には、探針部13からの入力電流が
入力される。測定領域30Aは、探針部13からの入力電流が各層の積層方向に沿って入力されることにより、自由層36の自発磁化の方向に応じた電気抵抗値を出力電圧の大きさとして出力する。
【0054】
この際、積層膜30の測定領域30Aは、導電性プローブ10のサイズを小さくできる分だけ、そのサイズを小さくできる。換言すれば、上記磁気特性測定方法では、導電性プローブ10のサイズを小さくできる分だけ、測定領域30Aと導電性プローブ10とを結ぶ引出電極60(図10(c)参照)等の追加工が不要になる。したがって、上記磁気特性測定方法は、磁気特性の測定精度に対して、追加工の影響を回避させることができる。そのため、上記磁気特性測定方法は、磁気特性の測定精度を向上させることができる。
【0055】
なお、上記磁気特性測定方法において、入力電流は、測定領域30Aの積層方向に沿って入力され、接地領域の積層方向に沿って出力される。この際、入力電流は、非磁性層35、固定層34、及び反強磁性層33を2回にわたり通過するが、接地領域の断面積(1cm)が測定領域30Aの断面積(1μm〜100μm)よりも十分に大きいため、接地領域側の電気抵抗値を無視することができる。
(実施例)
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明する。図6は、上記磁気特性測定方法を用いて測定した電流‐電圧曲線(以下単に、IV曲線という。)を示す図である。図7は、上記磁気特性測定方法を用いて測定した磁気抵抗曲線を示す図であり、図8は、上記磁気特性測定方法を用いて測定した素子基板31の各位置における磁気抵抗変化率を示す図である。
【0056】
基板Sとして、直径が8インチのシリコン基板を用い、基板Sを斜入射スパッタ装置20に搬入して、膜厚が5nmのTaからなる下地層14と、膜厚が20nmのRuからなる被覆層15とを成膜することにより実施例の導電性プローブ10を得た。また、下地層14と被覆層15を、それぞれ垂直入射のスパッタ法を用いるCr層とAu層に変更し、その他の製造工程を同じくすることにより、比較例の導電性プローブを得た。
【0057】
素子基板31として、直径が8インチのシリコン基板を用い、積層膜30としてTa(5nm)/PtMn(15nm)/CoFe(2.5nm)/Ru(0.9nm)/CoFeB(2.5nm)/MgO(3.0nm)/CoFeB(3nm)/Ta(30nm)/Ru(7nm)を形成した。次いで、積層膜30の上面にレジストパターンPRを形成し、レジストパターンPRをマスクにするエッチングにより、複数の測定領域30Aを形成した。なお、各測定領域30Aは、それぞれ積層方向から見た断面積を1μm〜100μmにする。
【0058】
詳述すると、レジストパターンPRを有する積層膜30に対してArプラズマを照射し、Ruからなる上部電極層38をArイオンによってエッチングした。次に、積層膜30に対してClとBClとの混合ガスを用いる反応性イオンエッチングを施し、Taからなる保護層37とCoFeBからなる自由層36をエッチングした。次いで、積層膜30にHプラズマを照射することにより、積層膜30の表面に残存するClを除去し、その後、積層膜30をアセトンに浸漬して洗浄することにより、レジストパターンPRを剥離した。続いて、圧力が10−4Pa以下の真空槽に積層膜30を搬入し、素子基板31の面方向に沿って約10kOeの磁界を印加しつつ、積層膜30を約360℃の下で約二時間保持することにより、各測定領域30Aを得た。
【0059】
そして、素子基板31の面方向に沿って+100Oe〜−100Oeの範囲で外部磁界を印加しつつ、実施例の導電性プローブ10を測定順序に従って各測定領域30Aの上部電極層38に接続して、各測定領域30Aにそれぞれ+0.01mA〜−0.01mAの
範囲で入力電流を入力した。
【0060】
また、素子基板31の面方向に沿って+100Oe〜−100Oeの範囲で外部磁界を印加しつつ、比較例の導電性プローブを測定順序に従って各測定領域30Aの上部電極層38に接続して、各測定領域30Aにそれぞれ+0.01mA〜−0.01mAの範囲で入力電流を入力した。これにより、各測定領域30Aに対して、実施例と比較例の電気抵抗値と、該電気抵抗値の外部磁界の依存性を得た。
【0061】
図6に示すように、実施例のIV曲線は、同じ測定領域30Aにおける比較例のIV曲線に比べて、大幅に小さい傾きを有する。比較例のIV曲線では、測定領域30Aの電気抵抗値が約1.9kΩであるのに対し、実施例のIV曲線では、測定領域30Aの電気抵抗値が約0.3kΩである。これは、実施例の磁気特性測定方法が、0.3kΩ程度の低い電気抵抗値を有する測定領域30Aに対して、その磁気輸送特性を、より高い精度の下で測定できることを示す。換言すると、これは、下地層14による密着性の向上、被覆層15による耐摩耗性の向上、下地層14及び被覆層15の被覆性の向上等により、磁気特性の測定精度を向上できることを示す。
【0062】
図7に示すように、実施例において、印加磁界が−100Oeの場合、積層膜30の電気抵抗値は、8.8kΩである。また、印加磁界が+100Oeの場合、積層膜30の電気抵抗値は、29.3kΩに増大する。これは、積層膜30における固定層34の自発磁化と自由層36の自発磁化の方向とが平行から反平行に変化するためである。この電気抵抗値の変化の値から磁気抵抗変化率(以下単に、TMR比という。)を算出すると、測定領域30AのTMR比は、100×(29.3−8.8)/8.8=約233%である。
【0063】
図8において、接合抵抗は、磁気抵抗曲線における電気抵抗値の最小値と、測定領域30Aの断面積の積を示す。また、図8における横軸は、素子基板31の中心位置を0mmとして、中心位置から径方向外側に沿う座標系を示す。図8に示すように、素子基板31の中心位置(0mm)において、TMR比は234%を示し、素子基板31の外縁に近づくに連れて徐々に低下して、最外周近傍(90mm)において204%に達する。一方、接合抵抗は、素子基板31の中心位置(0mm)において3.7×10Ω・(μm)を示し、素子基板31の外縁に近づくに連れて徐々に増加して、最外周近傍(90mm)において9.0×10Ω・(μm)に達する。
【0064】
TMR比の低下と接合抵抗の増加は、一般的に、MgOからなる非磁性層35の膜厚分布や膜質分布、並びに反応性イオンエッチングによる積層膜30の酸化に起因する。反応性イオンエッチングによる積層膜30の酸化は、増大する電気抵抗値が接合抵抗に重畳してTMR比を大きく低下させる。一方、図8においては、接合抵抗が一桁以上増大しているのに対して、TMR比の低下は、高々10%程度である。したがって、実施例におけるTMR比の低下と接合抵抗の増加は、MgOからなる非磁性層35の膜厚分布や膜質分布によることを示唆している。
【0065】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態において、導電性プローブ10は、支持部11と、支持部11から延びるレバー12と、レバー12の自由端12aに形成されて測定領域30Aに接触するための探針部13とを有する。探針部13は、自由端12aから延びる探針13aと、探針13aの表面に形成されてTaからなる下地層14と、下地層14に積層されてRuからなる被覆層15とを有する。
【0066】
Taからなる下地層14は、被覆層15が探針13aの表面に直接積層される場合に比べて、被覆層15と探針13aの表面との間の密着性を向上させることができる。Ruか
らなる被覆層15は、探針部13の表面が酸化される場合であっても、その導電性を維持することができる。しかも、Ruからなる被覆層15は、AuやPtからなる場合に比べて、探針部13の表面の耐摩耗性を向上させることができる。
【0067】
したがって、導電性プローブ10は、耐摩耗性を向上できる分だけ、その小型化を図ることができる。この結果、導電性プローブ10は、測定領域30Aの磁気特性を測定するとき、引出電極60等の追加工を要しないため、その寿命を損なうことなく、磁気特性の測定精度を向上することができる。
【0068】
(2)上記実施形態において、導電性プローブ10の下地層14と被覆層15は、それぞれ斜入射スパッタ法を用いて成膜される。したがって、下地層14と被覆層15は、それぞれ垂直入射式のスパッタ法やCVD法を用いて成膜される場合に比べて、探針13aの被覆性や膜厚均一性を向上させることができる。この結果、導電性プローブ10は、下地層14及び被覆層15の被覆性や膜厚均一性を向上させる分だけ、その耐摩耗性を向上することができ、ひいては小型化を促進させることができる。
【0069】
(3)上記実施形態において、導電性プローブ10の被覆層15は、下地層14を大気に曝すことなく下地層14の表面に成膜される。したがって、導電性プローブ10の下地層14は、大気に曝されない分だけ、その酸化を抑制することができ、被覆層15との間の密着性を向上させることができる。よって、導電性プローブ10は、その耐摩耗性を、さらに向上させることができる。
【0070】
(4)上記実施形態において、斜入射スパッタ装置20は、チャンバ本体21の圧力を10−6Pa以下にして基板Sを搬入し、チャンバ本体21の内部にArを導入して内部圧力を0.03Pa〜0.10Paする。その後、斜入射スパッタ装置20は、第一ターゲットT1をスパッタすることによりTaからなる下地層14を成膜し、第二ターゲットT2を連続してスパッタすることにより、下地層14の表面にRuからなる被覆層15を成膜する。
【0071】
したがって、下地層14と被覆層15は、それぞれ共通するチャンバ本体21の内部で連続的に積層される。この結果、Taからなる下地層14は、その酸化を確実に抑えることができ、被覆層15との間の密着性を、より確実に向上させることができる。
【0072】
(5)上記実施形態において、磁気特性測定方法は、積層膜30の上部電極層38、保護層37、及び自由層36にエッチングを施して積層膜30に複数の測定領域30Aを形成する。そして、測定領域30Aにある上部電極層38に導電性プローブ10の探針部13を接続し、測定領域30Aの積層方向に沿って入力電流を入力する2端子法により、電気抵抗値を検出する。
【0073】
したがって、上記磁気特性測定方法は、導電性プローブ10の耐摩耗性を向上させる分だけ、測定領域30Aのサイズを小さくでき、引出電極60等の追加工が不要になる。この結果、上記磁気特性測定方法は、磁気特性の測定精度を向上することができる。
【0074】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、積層膜30は、上部電極層38、保護層37、及び自由層36のエッチングにより、複数の測定領域30Aを形成する。これに限らず、例えば、積層膜30は、図9に示すように、上部電極層38、保護層37、自由層36、非磁性層35、固定層34、及び反強磁性層33のエッチングにより、複数の測定領域30Aを形成する構成であっても良い。
【0075】
・上記実施形態において、磁気特性測定方法は、1つの導電性プローブ10を用いる2端子法により、測定領域30Aの電気抵抗値を測定する。これに限らず、例えば、磁気特性測定方法は、2つ以上の導電性プローブを用いる4端子法により、測定領域30Aの電気抵抗値を測定する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】導電性プローブを示す平面図及び側面図。
【図2】探針部を示す側断面図。
【図3】斜入射スパッタ装置を模式的に示す断面図。
【図4】(a)〜(c)は、それぞれ導電性プローブの製造工程を示す工程図。
【図5】(a)〜(c)は、それぞれ磁気特性測定方法を示す工程図。
【図6】導電性プローブの入力電流に対する出力電圧を示す図。
【図7】導電性プローブを用いて計測した磁気抵抗曲線を示す図。
【図8】導電性プローブを用いて計測した磁気抵抗変化率の分布を示す図。
【図9】変更例の磁気特性測定を示す工程図。
【図10】(a)〜(c)は、それぞれ従来例の磁気特性測定方法を示す工程図。
【符号の説明】
【0077】
10…導電性プローブ、11…支持部、12…レバー、13…探針部、13a…探針、14…下地層、15…被覆層、30…積層膜、31…下部電極層、38…上部電極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
前記支持部から延びるレバーと、
前記レバーの自由端に形成されて測定対象物に接触する探針部と、
を有する導電性プローブであって、
前記探針部は、
前記自由端から延びる探針と、
前記探針の表面に形成されてタンタルからなる下地層と、
前記下地層に積層されてルテニウムからなる被覆層と、
を有することを特徴とする導電性プローブ。
【請求項2】
導電性プローブの製造方法であって、
基板に設けられた探針の表面にタンタルからなる下地層を形成する工程と、
前記下地層の表面にルテニウムからなる被覆層を形成する工程と、
を有することを特徴とする導電性プローブの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性プローブの製造方法であって、
前記下地層を形成する工程は、斜入射スパッタ法を用いて前記下地層を形成し、
前記被覆層を形成する工程は、斜入射スパッタ法を用いて前記被覆層を形成すること、を特徴とする導電性プローブの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電性プローブの製造方法であって、
前記被覆層を形成する工程は、前記下地層を形成する真空系を用いて前記被覆層を形成することを特徴とする導電性プローブの製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一つに記載の導電性プローブの製造方法であって、
前記下地層を形成する工程は、
第一ターゲットと第二ターゲットを有する真空槽の圧力を10−6Pa以下にして前記基板を前記真空槽に搬入し、前記真空槽にアルゴンを導入して前記真空槽の圧力を0.03Pa〜0.10Paにした後に前記第一ターゲットをスパッタすることにより前記タンタルからなる前記下地層を形成し、
前記被覆層を形成する工程は、
前記下地層を形成した後に前記基板を前記真空槽に配置し続けるとともに、前記第二ターゲットをスパッタすることにより、前記下地層の表面に前記ルテニウムからなる前記被覆層を形成することを特徴とする導電性プローブの製造方法。
【請求項6】
一対の電極層間に磁性層を有する積層膜の磁気特性を測定する磁気特性測定方法であって、
前記一対の電極層の少なくともいずれか一方にエッチングを施して前記積層膜に測定領域を区画する工程と、
請求項2〜5のいずれか一つに記載の導電性プローブの製造方法を用いて製造した導電性プローブの探針部を前記測定領域の前記電極層に接続して前記積層膜の電気抵抗値を検出する工程と、
を有することを特徴とする磁気特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−92554(P2009−92554A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264521(P2007−264521)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】