説明

導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板、その製造方法及びその導電性接合材料

【課題】従来では、はんだボール又ははんだピンを半導体パッケージ基板に搭載するためのはんだ接合を低温で行ない、しかもはんだ接合による回路接続の導電性と接着剤による接合強度の向上の両方を一括で可能にするような導電性接合材料を用いて得られるはんだボール等搭載半導体パッケージ基板は知られておらず、その開発が望まれていた。
【解決手段】半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルホールに導電性ボール又は導電性ピンを搭載した導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板において、該導電性ボール又は導電性ピンは該導通ランド又はスルホールに少なくとも低融点無鉛SnBi系はんだ材料と、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂を含有する導電性接合材料によるリフローにより導電接合されていることを特徴とする導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板、その製造方法及びその導電性接合材料に係わり、特に、導電性ボール又は導電性ピンを半導体パッケージ〔BGA(ボールグリッドアレイ)、PGA(ピングリッドアレイ)基板の導通ランド又はスルーホールに導電接合したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の小型化及び薄型化に伴って、モジュール化された部品の実装や、ICやLSI等の半導体素子その他の各種電子部品の組立て、これらのPWB(プリント配線板)への搭載が行われている。
例えば、上記BGAでは、図1に示すように、回路基板1の一方の片面の回路配線1aに半導体チップ6をバンプ5により接合し、他方の片面の回路配線1bにははんだボールを搭載してバンプ7を形成し、このようにして得られた半導体チップを搭載した回路基板は図示省略したマザーボードにそのバンプ7の溶融による接合により実装される。
このような半導体チップを搭載した回路基板にバンプ7を形成する、いわゆる一般的な半導体パッケージ基板の外部端子形成の手法には、(i)半導体パッケージ基板の導通ランドにはんだペースト又はフラックスを施した後に、はんだボールを搭載し、リフロー(240℃)により溶融させる方法があり、さらにはんだボールを搭載してから、リフローさせるまでのはんだボールの脱落防止と、リフロー後の接着強度を向上させるために、(ii)アンダーフィルを形成する方法(特開2000−349185号公報)、(iii)はんだボールのための接着層を形成する方法(特開2000−277666号公報)、(iv)はんだボールが搭載される脇に、特殊な凹型加工を施す方法(特開2006−54494号公報)が知られている。
【0003】
【特許文献1】 特開2000−349185号公報
【特許文献2】 特開2000−277666号公報
【特許文献3】 特開2006−54494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、(i)の方法では、はんだボールを搭載してからリフローさせるまでに、はんだボールが脱落する可能性がある。特に、最近では基板への部品搭載の高密度化が進み、はんだボールが搭載されるランド間のピッチが狭くなり、ランドとはんだボールの接触面積が小さくなるほど、このはんだボールの脱落する可能性が高くなっている。また、仮に脱落しなかったとしても、リフロー後にフラックスの残さを洗浄しなけれはならない面倒がある。
また、(ii)〜(iv)の方法では、アンダーフィルや接着層、あるいは特殊な凹型加工を行うために工程が余計にかかる。特に、(iii)の接着層を形成するには、圧力を要するので、半導体等の部品や回路基板に過大なストレスがかかることがある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、その目的は、半導体パッケージ基板の導電ランド又はスルーホールに導電性ボール又は導電性ピンの接合を低温で行うことができ、しかもはんだ接合による回路接続の導電性と接着剤による接合強度の向上の両方を一括で可能にすることができる導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板、その製造方法及びその導電性接合材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成しようとして鋭意研究を重ねた結果、樹脂成分に主に硬化成分を使用して未硬化成分の使用による影響がないようにするとともに、樹脂成分が硬化する前にSnBi系はんだを溶融させることができるように融点が130〜170℃のSnBi系はんだを用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
従って、本発明は、(1)、半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルホールに導電性ボール又は導電性ピンを搭載した導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板において、該導電性ボール又は導電性ピンは該導通ランド又はスルホールに少なくとも低融点無鉛SnBi系はんだ材料と、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂を含有する導電性接合材料によるリフローにより導電接合されていることを特徴とする導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板を提供するものである。
また、本発明は、(2)、低融点無鉛SnBi系はんだ材料の融点が130℃〜170℃であり、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂がエポキシ系樹脂及び硬化剤からなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板、(3)、上記(1)又は(2)の導電性接合材料、(4)、半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルホールに導電性ボール又は導電性ピンを搭載する導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板の製造方法において、該導通ランド又はスルホールに少なくとも低融点無鉛SnBi系はんだ材料と、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂を含有する導電性接合材料を施して導電性接合材料層を形成し、該導電性接合材料のリフローにより該導電性ボール又は導電性ピンを導電接合する導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明において、導電性接合材料について「フラックス作用を有する」とは、通常のロジン系フラックスのように、その塗布膜は被はんだ付け体の金属面を覆って大気を遮断し、活性剤成分によりはんだ付け時にはその金属面の金属酸化物を還元し、この塗布膜が溶融はんだに押し退けられてその溶融はんだと金属面との接触が可能となり、その残さ膜は回路間を絶縁する機能を有するものである。
このフラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂の主成分としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂が挙げられ、これらのグループから選択される少なくとも1種又は2種混合系で使用することができ、常温で液状のものが好ましく、固形のものでも液状のものと併用することが好ましい。
このうち、エポキシ樹脂としては、公知のものが用いられ、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型が挙げられ、これらのグループから選択される少なくとも1種又は2種混合系で使用することができ、常温で液状のものが好ましく、固形のものでも液状のものと併用することが好ましい。
【0009】
本発明において、フラックス作用を高めるためには、有機酸を用いてもよく、側鎖にアルキル基を有する二塩基酸が好ましい。該二塩基酸としては種類は問わないが、炭素数6以上(炭素数が少なくとも6の二塩基酸)のものも好ましく、側鎖にアルキル基としては炭素数1〜5の低級アルキル基も好ましく、それを単数又は複数有してもよく、複数のときは同一でも異なってもよい。例えば、直鎖または分枝状の炭素数1〜5の低級アルキル基が挙げられ、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル等が挙げられる。側鎖にアルキル基を有する二塩基酸として、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−エチル−3−プロピルグルタル酸等の側鎮にアルキル基(低級アルキル基)を有するグルタル酸が挙げられ、これらも好ましいが、2,5−ジエチルアジピン酸(エチル基を2箇所に有するアジピン酸)も好ましく、側鎖にアルキル基(低級アルキル基)を有するアジピン酸も上げられる。
側鎖にアルキル基を有する二塩基酸を使用すると、エポキシ樹脂あるいはこれと硬化剤の混合物(両者を樹脂等ということがある)中への溶解性がより良く、保管中におけるその結晶の析出が起こりにくい。そのために、樹脂等中へ均一に混ざることから、そのまま硬化させた硬化物について樹脂等膜の絶縁信頼性の低下を起こしにくい。側鎖にアルキル基を有する二塩基酸、特に、2,4−ジエチルグルタル酸又は2,5−ジエチルアジピン酸は、エポキシ樹脂あるいは樹脂等中に1〜10重量%の範囲で混ぜることが好ましい。側鎖にアルキル基を有する二塩基酸、特に2,4−ジエチルグルタル酸又は2,5−ジエチルアジピン酸が1重量%以上の場合には、はんだ付け性に優れ、健全なチップ部品への濡れ性が確保し易くなる。また、10重量%以下の場合には、硬化樹脂等膜の絶縁信頼性が優れている。更に、補助活性剤として、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等も少量添加して使用することができる。
【0010】
本発明の導電性接合材料において、硬化促進剤(硬化剤とともに用い、その硬化補助剤としても用いられるが、単独でも用いることができ硬化剤の1種ということもできる)を用いてもよく、硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いるものであり、具体的には、例えば潜在性硬化促進剤としては、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)、脂肪族ポリアミン系としては、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)、エポキシ樹脂アミンアダクト系としては、アミキュアPN−23、MY−24、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS(旭電化工業社製、商品名)等が挙げられる。また、イミダゾール系硬化促進剤としては、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(以上、商品名)等が挙げられる。
【0011】
本発明に用いるSnBi系はんだ材料として好ましく用いられる低融点無鉛系はんだ材料としては、融点(液相と固相が共存する状態)が130℃〜170℃、好ましくは138℃〜170℃、さらに好ましくは150℃〜170℃のものが挙げられ、Sn42Bi58系の共晶はんだが効果的に用いられるが、SnBi系はんだ材料はSnBiで表され、x=40重量%〜42重量%、y=58重量%〜60重量%を満たすはんだ材料も用いられる。更に、Sn42Bi58系の共晶はんだ等のこれらのはんだ材料に、Ag、Ni、Fe、Ge、Cu及びInよりなる群から選択された少なくとも1種を含有するはんだ材料を用いてもよい。Sn42Bi58系はんだ等のこれらのはんだ材料の機械的な特性向上の目的では、Ag、Ni、Fe等又はGe等(これらの少なくとも1種、すなわち1ないし4種)の添加金属も適宜使用される。
導電性接合材料中の低融点無鉛系はんだ粉末の配合割合は、10〜90重量%の範囲とすることが好適であるが、40〜80重量%が好ましい。その場合フラックス(フラックス作用を有するエポキシ系接着剤等、以下同様)は90〜10重量%が挙げられ、60〜20重量%が好ましい。低融点無鉛系はんだ粉末の配合が10重量%以上である場合には、チップ部品へのフィレットの形成がよく行われ、また、90重量%以下の場合には、接着させたチップ部品の接合強度の補強がより十分となる。
はんだ粉末の粒子は球状又はフレーク状であってもよく、はんだ粉末の粒子径に関しては、特に限定はないが、粒子径を1〜100μm、さらに好適には25〜80μm、より好適には30〜60μmにすることが好ましい。さらに平均粒子径が50μm以下とすることが好ましい。粒子径を小さくし過ぎると、粒子接合が良好に達成されず、一方、大きくしすぎると、ファインピッチ化された部分の接合に不満となる。さらに平均粒子径が50μm以下であると、ランドがファインピッチの回路基板に対する印刷性に良い影響を与えることがある。以上の粒子径はレーザー回折法により測定値である。
【0012】
また、本発明の導電性接合材料には、上記の材料以外に必要に応じて、上記以外の活性剤、チキソ剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤等の添加剤を添加して均一に混合してもよい。これらの活性剤、チキソ剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤等の添加剤の含有量は、フラックス組成物(接着剤組成物)に対して0.01〜10重量%の範囲であることが好ましく、0.05〜5重量%の範囲であることがさらに好ましい。上記範囲未満だとそれぞれの添加剤の効果を奏することができない。一方、上記範囲を超えると、接合効果を奏することができなくなる。
【0013】
本発明の導電性接合材料は、はんだ材料が粉末であるときは、上記した必須成分及び必要に応じて添加される上記添加剤と共に混練処理することにより容易に製造することができ、ペースト状にすることもできる。このようにして得られた導電性接合材料は、導電性ボール又は導電性ピンを半導体パッケージ〔BGA(ボールグリッドアレイ)、PGA(ピングリッドアレイ)〕基板の導通ランド又はスルーホールにリフローにより導電接合するために用いられるが、モジュールの製造や各種電子部品類等の接着に好適にも用いることができる。例えば半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルーホールや、電子機器のモジュールへのチップ実装に用いる場合、プリント配線板へのチップ実装に用いる場合には、シリンジによる吐出、もしくはメタルマスクによる印刷によって、導電性接合材料を介して導電性ボール又は導電性ピンをその接着樹脂のタック力(粘着力)により接合(接着)し、導電性ボール又は導電性ピンの脱落を防ぐことができ、また、チップ部品をマウントし、加熱により低融点はんだを溶融させる。このとき、導電性接合材料は、はんだが溶融してフラックス成分(接着剤成分)(樹脂等のはんだ以外の成分からなる)と分離し、はんだは、はんだ付け部の金属を濡らし、はんだ接合するが、接着剤は樹脂膜を形成し、はんだの溶融と同時にその熱により硬化が始まり、はんだ付けが終了した後に、主なその硬化が終了し、はんだ付け部のフラックス(接着剤)接合もする。はんだ粉末の溶融前に硬化が加速するとはんだ付け性が低下(はんだ付強度が低下)して、硬化物中にはんだボールが多発する。本発明の導電性接着剤を用いてはんだ付け及び硬化をするに当たっては、通常、150〜180℃に加熱するが、好適には150〜170℃に設定される。
【0014】
この際、加熱速度を毎秒1.8℃(1.8℃/秒)以上にすることで、後述する実施例1で述べるように、例えば図2に示すように、加熱に伴う温度変化履歴を示すリフロープロファイルにおいて、温度が直線的に上昇する範囲において、フラックス成分(接着剤成分)が硬化するより先にはんだが溶融するようにできるので、温度コントロールが容易であり、すばやくはんだを溶融状態にすることができ、これにより電気的接続及びはんだ接合がなされ、その後、フラックス成分(接着剤成分)の硬化により導電性ボール又は導電性ピン接合や、部品接合をさせることをよりよく行うことができる。
このようにして半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルーホールに導電性ボール又は導電性ピンを導電性接合材料を用いて導電接合した導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板や、チップ部品をチップ搭載基板に導電性接合材料を用いて接合した電子部品モジュールが得られるが、例えばQFNやボールバンプレスのLGA部品の下面の電極とチップ搭載基板とを導電性接合材料を用いてはんだ接合かつ接着剤接合をした電子モジュールが得られる。チップ搭載基板の代わりにプリント配線板を用いても同様に、チップ部品を導電性接合材料を用いてはんだ接合かつ接着剤接合をしたプリント配線板が得られる。
【0015】
これまで、Ag系の導電性接着剤で接着し、更に封止剤による固定、アンダーフィルによる強度補強等の複雑な工程をとっていたものについては、本発明の導電性接合材料による接合強度が従来のソルダーペーストや接着剤による接合強度よりも大幅に向上されることにより、これらの工程を省き大幅に工程を削減することができ、また、銀のはんだ材料を使用しないことにより錫めっきをした電極を有する部品に対しても銀がマイグレーションするようなこともないとともに、コストを削減でき、さらには鉛フリーはんだの高温リフローによらずに電子部品を実装できることから、耐熱性の弱い電子部品でさえも効率よく実装することができる。
【0016】
エポキシ系樹脂、硬化剤(硬化促進剤)、側鎖にアルキル基を有する二塩基酸からなる無溶剤系フラックス組成物(接着剤組成物)に、SnBi系の低融点はんだ粉末を混合してなるSnBi系導電性接合材料は、低融点はんだによる接合によって回路接続の導通を確保し、接着剤によってはんだ付け部品の接着強度を補強でき、これらの導通と接着強度の補強の両方を一括して解決でき、リペア性を有する導電性接合材料である。従来の非溶融型導電性接着剤とソルダーペーストのよい点を組み合わせ、さらに発展させたとも言える。
このように従来にない導電性接合材料による接合強度が得られるので、単純なリフロープロファイルによる接合も実用性を持ち、冷熱サイクル、再リフローなどでは高い信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂のタック力により半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルーホールからの導電性ボール又は導電性ピンの脱落を防ぐことが可能となるとともに、通常のフラックスのような残さ膜を作らないので洗浄処理の必要がなく、また、導電性ボール又は導電性ピンを半導体パッケージ基板に搭載するためのリフローはんだ接合を160℃でも可能なように低温で行うことができ、しかもはんだ接合による回路接続の導電性とフラックス(接着剤)による接合強度の向上の両方を一括で可能になり、工程数を大幅に減少させることができる。また、そのリフローはんだ付けは加圧の必要もないので、半導体パッケージやはんだ接合部に余計なストレスを加えることもなく、製品の信頼性を損なわないようにすることができる。
【0018】
以下に実施例と比較例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下「部」とは「重量部」(「質量部」としてもよく、上記においても同様)を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0019】
例えば、図1に示すように、(i)導体パターンを形成した回路基板1の一方の片面には回路配線1a、他方の片面には回路配線1bが形成されているが、(ii)それぞれの面にソルダーレジスト組成物を塗布し、硬化させて硬化塗膜2a、2bを形成し、(iii)ついでレーザーを照射してビアホール4a、4bを形成し、(iv)それから回路配線1aに金メッキを施すか、プリフラックス処理した後、半導体チップ6をその下面に搭載した金バンプやはんだバンプ5により接合したり、(iv)’あるいは回路配線1aにバンプ5と同様のバンプを形成し、このバンプにより半導体チップ6の下面の電極を接合し、さらにいずれの場合もその回路基板の反対側にバンプ7を形成する((iv)’は図示省略)。
この際、回路配線1aにバンプ5と同様のバンプを形成するには回路配線1aにソルダーペーストを塗布した後、リフローにより加熱溶解し、さらに冷却固化させてもよいが、バンプ7を形成するには、回路配線1bに下記の導電性接合材料をシリンジによる吐出、もしくはメタルマスクによる印刷によって、導電性接合材料膜3(図の(iii))を形成する。
【0020】
(導電性接合材料)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート 828(ジャパンエポキシレジン社製))18.6部、2P4MZ(四国化成工業社製硬化剤)1.2部、2,4−ジエチルグルタル酸 2.2部を、らいかい機を用いて混合し、フラックス(フラックス作用を有するエポキシ接着剤)を製造した。このフラックス22部とSn42Bi58(数値は重量%、以下これに準ずる)はんだ粉末(粒径20〜40μm)78部をプラネタリーミキサーで3時間混合して、ペースト状の無溶剤系の導電性接合材料を製造した。表1にその配合を示す。
【0021】
上記導電性接合材料膜3上に導電性ボール又は導電性ピンとしてはんだボール又ははんだピン(図1の場合は前者)を載置し、リフロー処理をする。
そのリフロー処理は、後述する「(3)BGAボール接合強度」におけると同様に試験片をセットして加熱したところ、図2に「導電性接合材料」の実線で示すリフロープロファイルによる温度により処理され、その立ち上がりのほぼ直線部分ではんだ粉末が溶融し、その溶融した後に温度の平坦部分(約160℃)でフラックス成分の樹脂成分が硬化し、その硬化を完了させたことがフラックス膜の硬度等により確認された。
【0022】
このようにして、図1(iv)に示すはんだボールを導電性接合材料によるリフロー接合により搭載してバンプ7を有する半導体パッケージ基板(はんだボール搭載半導体基板)が得られるが、このはんだボール搭載半導体パッケージ基板はマザーボードにバンプ7の溶融による接合により実装される。
なお、図示省略したが、導体回路パターンを形成した回路基板1の基板にはスルーホールが形成され、回路配線1aと1bはスルーホール内壁に形成されためっき膜により接続されている。
【実施例2】
【0023】
実施例1において、フラックス組成において、各使用成分を表1の実施例2の欄に記載したように、2,4−ジエチルグルタル酸の代わりに2,5−ジエチルアジピン酸を用いたこと以外は同様にして無溶剤系導電性接着剤を調製し、この無溶剤系導電性接合材料を用いたこと以外は実施例1と同様にしてはんだボール搭載半導体パッケージ基板を製造した。配合を表1に示す。
【0024】
(比較例1、2)
鉛フリー用フラックス(ロジン系鉛フリーフラックス(組成:水添ロジン 50部、グルタル酸 4部、チキソ剤 8部、ブチルジグリコール 38部を混合したもの))10部にSn42Bi58のはんだ粉末(平均粒径20〜40μm)90部を混練したSn42Bi58系ソルダーペースト(比較例1)、上記ロジン系鉛フリー用フラックス(比較例2)を調製し、これらのソルダーペースト、フラックスを導電性接合材料の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様にしてはんだボール搭載半導体パッケージ基板を製造した。配合を表1に示す。
【0025】
実施例1における導電性接合材料の代わりに比較例1のソルダーペーストや、比較例2のフラックスを用いたところ、図2の「鉛フリーソルダーペースト」の実線で示すリフロープロファイルによる温度により処理され、はんだは温度上昇のピークを経過しなければ完全には溶融しないことが認められた。
【0026】
上記実施例、比較例で得られた導電性接合材料、ソルダーペースト、フラックスについて以下の(1)〜(3)の評価、試験を行った。その結果は表2、図3、4に示す。
(1)タック力の評価
はんだボールの保持力(脱落性)を評価するために、導電性接合材料、ソルダーペースト及びフラックスのそれぞれの塗布時の「タック力」評価(JIS Z 3284に規定)により比較した。
(2)洗浄処理の有無の評価
ソルダーペーストを使用したものは「洗浄処理」を「×」(必要)とし、接着性樹脂を用いた導電性接合材料や、接着剤を用いたものは「洗浄処理」を「○」(不要)とした。
(3)BGAボール接合強度試験
SP−059A基板(厚さ1.6mm)(図1の基板1)、ランド径直径0.6mm(図1の回路配線1b)に各種材料(上記実施例及び比較例に記載の表1に示す材料)をメタルマスク(厚さ0.08mm)を用いて印刷した後、この上にBGAボール(Sn/3.0Ag/0.5Cuの直径760μm)をリフロー条件160℃、6分と、240℃、1分で処理した。これをボンドテスター(SERIEC 4000/(株)アークテック社製)により強度測定をした。表2の測定値はサンプル数10個の平均値である。
また、BGAボールとランドの界面の接合状態を観察して図3に示す写真を撮り、また、光学顕微鏡によりその接合個所の断面の観察を行って、図4に示す写真を撮った。
図3(a)、(b)は上記実施例1の導電性接合材料を用いてそれぞれ順にリフロー条件160℃、6分と、240℃、1分で処理したもの、図3(c)は上記比較例2のフラックスを用いてリフロー条件240℃、1分で処理したものについての原寸実物写真であり、図4(a)、(b)は図3の(a)、(b)の各写真のボール搭載部分の縦断面写真で、100倍、180倍、500倍、5000倍の拡大写真である。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
上記表2の結果から、実施例1、2の導電性接合材料を用いた場合は、タック力が十分にあり、経時変化も小さい(液状樹脂を使用した場合は特に小さい)ため、BGAボールを載せた際の脱落率を低下させることが可能である。比較例1、2では短時間の間にタック力が低下し、脱落不良を多発する可能性がある。
また、比較例1、2のソルダーペースト、フラックスを使用してリフロー処理したものはフラックスを洗浄する必要があるが、実施例1、2の導電性接合材料を使用してリフロー処理したものはそのような洗浄を必要としない。
また、「BGAボール接合強度」は、実施例1、2のものは、一般的なSn/3.0Ag/0.5Cuボールの接合強度で問題ないレベルの1000gf(目標値)よりも強い値を示し、この目標値を十分に満足している。しかも、低温リフロー条件160℃、6分でも十分な強度を示している。また、図3、4の(a)、(b)(実施例1の導電性接合材料を使用し、リフロー条件160℃、6分と、240℃、1分で処理のもの)、特に図4(a)、(b)ではBGAボールの断面を見ても、ボールとランドの界面の接合状態は、リフロー条件が160℃、6分と、240℃、1分のいずれもはんだのハジキやボイド(空気泡による空胞)などの不具合がなく、十分な接合状態を示している。
なお、図3の(a)、(b)のそれぞれに対応するはんだボール搭載基板の上に、もう一度基板を接合した場合の横からみた写真(省略)も撮り、その基板を剥離した場合の「下側基板」、「上側基板」のそれぞれの写真(省略)も撮ったが、上側基板にもはんだが濡れており、はんだ接合がなされていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の導電性接合材料は低温で接合可能な導電性及び接着性を有する導電性接合材料であるため、確実かつ効率的に導電性ボール又は導電性ピンを半導体パッケージ基板にリフローによる接合により搭載することができるが、その他電子部品等をプリント基板等実装する分野に利用可能である。
例えば各種電子部品モジュール化等のためのプリント配線板(PWB)等へ、CPU、MPU等のLSI、チップインダクタ、チップコンダクタ等の電子部品(能動素子、受動素子)及びそれ以外の導電性端子や導電性配線材料を、実装する際にPWBとの間で溶融し固化させることによって導電接合するために利用することができる。さらに詳細には、例えば自動車のように強い衝撃を受ける状態が発生しても、PWBから電子部品が脱落することがなく良好な導電性をも確保することができる引張強度等の接合力が必要とされる導電性接合材料等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 はんだボールを搭載した半導体パッケージ基板を示す断面説明図である。
【図2】 本発明の実施例の導電性接合材料と比較例の鉛フリーソルダーペースト用いたリフロープロファイルを示す。
【図3】 (a)、(b)は本発明の実施例の導電性接合材料を用いてリフロー条件を変えて処理したはんだボール搭載基板の上面斜視写真、(c)は比較例のフラックスを用いてリフロー処理したはんだボール搭載基板の上面斜視写真である。
【図4】 図3の(a)、(b)の各写真に示されるボール搭載部分の縦断面写真で、100倍、180倍、500倍、5000倍の拡大写真である。
【符号の説明】
【0032】
1a、1b 回路配線
2a、2b ソルダーレジストの硬化塗膜
3 導電性接合材料膜
4a、4b ビアホール
5、7 バンプ
6 半導体チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルホールに導電性ボール又は導電性ピンを搭載した導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板において、該導電性ボール又は導電性ピンは該導通ランド又はスルホールに少なくとも低融点無鉛SnBi系はんだ材料と、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂を含有する導電性接合材料によるリフローにより導電接合されていることを特徴とする導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板。
【請求項2】
低融点無鉛SnBi系はんだ材料の融点が130℃〜170℃であり、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂がエポキシ系樹脂及び硬化剤からなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性接合材料。
【請求項4】
半導体パッケージ基板の導通ランド又はスルホールに導電性ボール又は導電性ピンを搭載する導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板の製造方法において、該導通ランド又はスルホールに少なくとも低融点無鉛SnBi系はんだ材料と、フラックス作用を有する熱硬化型の接着性樹脂を含有する導電性接合材料を施して導電性接合材料層を形成し、該導電性接合材料のリフローにより該導電性ボール又は導電性ピンを導電接合する導電性ボール等搭載半導体パッケージ基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−193036(P2008−193036A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47953(P2007−47953)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000108823)タムラ化研株式会社 (23)