説明

導電性塗料

【課題】 安価な銅粉を用い、導電性が良好で密着性に優れ、且つ高湿度下における導電性変化の少ない導電性塗料を提供する。
【解決手段】 チタネート系カップリング剤及び有機溶媒を、平均粒径が30μm以下の銅粉又は銀めっき銅粉、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂を含む塗料組成の固形分に対して0.001〜5.0重量%の範囲で含有してなる導電性塗料であり、上記成分のうち、銅粉としてフレーク状又は樹枝状のもの、ビニル化合物の重合体及びその共重合体の一部分とアミノ樹脂の一部分が、塗膜形成時に化学結合するもの、ビニル化合物の重合体及びその共重合体が、親水基を有するもの、アミノ樹脂が、トリアジン環を有するものを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価な銅粉を用い、導電性が良好で密着性に優れ、且つ高湿度下における導電性変化の少ない導電性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性塗料は、導電性フィラー粉末を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂バインダー溶液中に分散せしめてなるものであり回路用ペースト、導電性インク、導電性接着剤、電磁波シールド剤等の多くの用途に使用される。
【0003】
近年、電子機器の急速な普及により、電磁的相互干渉(EMI、すなわちErectro Magnetic Interference)が問題視されるようになってきたが、このEMIが導電性塗料を塗布することにより解決できる技術が開発され、いわゆるEMIシールド技術として知られるようになり、導電性塗料はこの分野において多量に使用されるようになった。
【0004】
導電性塗料に用いられる導電性フィラーとしては、例えば金、銀、銅、ニッケル、モリブデン、タングステン等が用いられるが、その中で金、銀等の貴銅粉末は高価なために、特殊な用途の導電性塗料に使用されるにすぎない。
また、導電性又は導電性の持続性の面から、シールド用を中心としてニッケル粉末が多用されている。
【0005】
一方、銅粉末はニッケル粉末よりも安価であり、かつ銅は地金ペースでみてニッケルよりも電気伝導度が約4倍も高いので、銅粉末を導電性フィラーとする導電性塗料は安価に有利に供給でき、既に実用化されているものもあるが、使用中に導電性が急激に低下する問題をかかえていた。
【0006】
この種の導電性塗料における銅粉末の酸化防止技術に関しては、特許文献1に記載の脂肪酸アミド、特許文献2に記載のアントラセン又はその誘導体、特許文献3に記載のハイドロキノンの誘導体、特許文献4に記載のフェニレンジアミン誘導体、特許文献5に記載の高級脂肪酸アミン、特許文献6に記載の不飽和脂肪酸等種々の化合物を用いる方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特公昭61−014175号公報
【特許文献2】特公昭61−036796号公報
【特許文献3】特開昭57−055974号公報
【特許文献4】特開昭58−225168号公報
【特許文献5】特開昭61−200179号公報
【特許文献6】特開昭61−211378号公報
【0008】
しかしながら、これらの提案は、塗料の貯蔵安定性、塗膜の耐湿性、耐熱性及び耐ヒートサイクル性等及び塗料液や塗膜に緑青発生が少なくなっている等の改良がみられるものの必ずしも十分とはいえず、初期導電性や、その導電性の長期安定性のさらなる改良が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、安価な銅粉を用い、導電性が良好で密着性に優れ、且つ高湿度下における導電性変化の少ない導電性塗料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、チタネート系カップリング剤及び有機溶媒を、平均粒径が30μm以下の銅粉又は銀めっき銅粉、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂を含む塗料組成の固形分に対して0.001〜5.0重量%の範囲で含有してなる導電性塗料に関する。
【0011】
また、本発明は、前記銅粉が、フレーク状又は樹枝状である前記の導電性塗料に関する。
また、本発明は、前記ビニル化合物の重合体及びその共重合体の一部分とアミノ樹脂の一部分が、塗膜形成時に化学結合する前記の導電性塗料に関する。
【0012】
また、本発明は、前記ビニル化合物の重合体及びその共重合体が、親水基を有する前記の導電性塗料に関する。
また、本発明は、前記アミノ樹脂が、トリアジン環を有する前記の導電性塗料に関する。
【0013】
さらに、本発明は、前記チタネート系カップリング剤が、少なくとも炭素数1〜60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤又はアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤から選ばれる1種類以上を含む前記の導電性塗料に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の導電性塗料は、導電性が良好で密着性に優れ且つ高湿度下における導電性変化が少ない。また、銅粉を用いているため安価である。
請求項2の導電性塗料は、請求項1の導電性塗料の効果を奏し、さらに銅粉同士の接触が良くなり、導電性が向上する。
【0015】
請求項3の導電性塗料は、請求項1又は2の導電性塗料の効果を奏し、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂とを反応させることによりビニル化合物の重合体及びその共重合体中の吸湿性を有する置換基を減少させ、吸湿率が下がるため、高湿度下における導電性変化が少ない。
【0016】
請求項4及び5の導電性塗料は、請求項3の導電性塗料の効果を奏し、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂との化学結合を容易にする。
請求項6の導電性塗料は、請求項1、2、3、4及び5の導電性塗料の効果を奏し、さらに密着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の導電性塗料において、導電成分は平均粒径が30μm以下の銅粉又は銀めっき銅粉を用いることが必要とされる。このような銅粉を用いることで、塗膜の均一性及び導電性を向上させることができる。
【0018】
また、上記銅粉の形状がフレーク状又は樹枝状であると銅粉同士の接触が良くなり、導電性がより向上するので好ましい。なお、他の形状の銅粉をスタンピング等の処理をしてフレーク状にして用いてもよい。
【0019】
また、銀めっき銅粉における銀めっきは、電解めっき法、無電解めっき法、置換めっき法等の何れの方法でめっきしたものでもよく特に制限はない。
さらに、本発明の導電性塗料における上記銅粉の配合割合は、塗料組成物に対して10〜90重量%、好ましくは40〜80重量%であり、塗料塗膜の導電性が最高になり、しかもその導電性が長時間維持されるように選定するのが望ましい。
【0020】
本発明の導電性塗料に含まれるビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂は、銅粉同士の接着剤として作用するものである。
本発明におけるビニル化合物の重合体及びその共重合体は、親水基を有することが必要であり、親水基としては、−OH、−COOH、−NH、>CO、−SOH、−CN、−NHCONH、−CONH、−OCH、−CHOCH、−COOCH 等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるビニル化合物の重合体及びその共重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロ二トリル、ポリビニリデンシアニド等が挙げられる。
【0022】
ビニル化合物の重合体及びその共重合体は、GPCでポリスチレン換算した平均重合度が100〜3,000であることが好ましく、300〜1,000であることがより好ましい。
【0023】
本発明の導電性塗料に含まれるアミノ樹脂は、トリアジン環を有することが必要であり、
アミノ樹脂としては、ベンゾグアナミン、メラミン等の1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物と、ホルムアルデヒド等のアルデヒドとを反応(付加反応)させた反応物に、さらにブタノール等のアルコール等を反応(エーテル化反応)させたものであり、このような樹脂が1種類で又は2種類以上組合せてもよい。
【0024】
このようなアミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン共縮合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂とメラミン樹脂との混合物等を挙げることができる。トリアジン環を含まないアミノ樹脂では、ビニル化合物の重合体及びその共重合体との反応性が低く、吸湿率を下げる効果が得られず高温高湿下での導電性変化が大きくなる傾向がある。
【0025】
アミノ樹脂は、GPCでポリスチレン換算した重量平均分子量が300〜5,000であることが好ましく、2,000〜5,000であることがより好ましい。
【0026】
前記ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂の重量比は99/1〜30/70の範囲内に入っていることが好ましく、95/5〜50/50の範囲内に入っていることがより好ましく、90/10〜70/30の範囲内に入っていることが特に好ましい。99/1より大きいと吸湿率を下げる効果が得られず高温高湿下での導電性変化が大きくなる傾向があり、30/70より小さいと密着性が低下する傾向にある。
【0027】
本発明の導電性塗料に含まれるチタネート系カップリング剤は、上記の銅粉とビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂を分散する際に添加することで、樹脂の銅粉表面へのぬれ性を向上し、銅粉と樹脂の密着性を向上するだけでなく、銅と酸素の接触を妨げ、銅の酸化を防止する作用をする。
【0028】
本発明に用いるチタネート系カップリング剤は、少なくとも炭素数1〜60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤又はアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0029】
具体的にはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0030】
また、チタネート系カップリング剤の添加量は、チタネート系カップリング剤の種類や銅粉の平均粒径、銅粉の形状等によって変わるが、塗料組成物中(導電性塗料)の固形分に対し0.001〜5.0重量%の範囲とされる。チタネート系カップリング剤の添加量が0.001重量%未満では、銅の露出表面を十分に保護することが出来ないため、抵抗の変化率が大きくなり、また5.0重量%を越えると、塗料のポットライフや導電性が低下する。なお、チタネート系カップリング剤は銅粉をフレーク状に処理する際に添加してもよい。
【0031】
本発明の導電性塗料には、上記の各必須成分のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。
特に、銅粉末の沈降防止のために、増粘剤又はチクソ剤などの沈降防止剤を、導電性を妨げない範囲内で配合するのが望ましい。
【0032】
かかる沈降防止剤としては、例えば、水素添加ひまし油、金属石けん、アルミニウムキレート、有機ベントナイト、コロイダルシリカ、酸化ポリエチレンワツクス、長鎖ポリアミノアミド、ポリカルボン酸アルキルアミン等が挙げられ、特に好ましい沈降防止剤は、一般式RCONH又は(RCONH)2A(式中、Rは炭素数5〜21のアルキル基、Aは炭素数1〜6のアルキレン基である)で表される脂肪族アミド及びかかる脂肪族アミドとワックス類との複合物である。
【0033】
脂肪族アミドの具体例としてはオレイン酸アミド、カプロン酸アミド、リノール酸アミド、ヘヘン酸アミド等のモノアミド類、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド類が挙げられる。
【0034】
また、脂肪族アミド類とワックスとの複合物としては、上記のビスアミド類と分子量1,000〜9,000のポリオレフィンワックスとの共粉砕によって得られた複合物が挙げられる(特許文献7参照)。これらの沈降防止剤は1種類を単独使用してもよいし、2種以上を併用することも可能である。
【特許文献7】特開昭56−065056号公報
【0035】
さらに必要に応じてシリコーンや高沸点ケトン等のレベリング剤、界面活性剤及び難燃剤等を本発明の導電性塗料に配合することができる。
【0036】
本発明の導電性塗料は、上記の銅粉、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂、チタネート系カップリング剤、及び必要に応じて添加される添加剤を有機溶剤と共に擂潰(らいかい)機、ニーダー等に入れて混合する方法や、ホモジナイジング、ペイントシェイキング、ボールミリング等のように粉砕しながら分散する方法により、銅粉を、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂を含む有機溶媒中に均一に分散させることによって得られる。
【0037】
なかでもメディアを使った分散は、銅粉と樹脂の接着性が良好である。メディアはジルコニアビーズ、アルミナビーズ等の比重が3以上の材料を用いたビーズが好ましく、このビーズ径としては、0.2〜5mm(φ)とすることが好ましく、φ1.0〜5mm(φ)とすることがより好ましい。
【0038】
また、本発明に用いる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられ、特に制限はない。
【0039】
有機溶剤は、バインダー樹脂の種類等に応じて適当なもの1種類を単独使用してもよく、2種類以上を適宜に併用することもできる。
また、有機溶剤の配合量は、各塗料固形分の配合量などを考慮に入れ、塗料の塗布・印刷作業性が良好な粘度となるよう適宜決定すればよく、特に限定されない。
【0040】
なお、被塗物がプラスチツクなどの場合には、使用溶剤は被塗物を溶解する恐れのないものを選定するなどの配慮も必要となる。
このようにして得られる本発明の導電性塗料は、スプレー、ハケ塗り、デイツピング、オフセツトプリント塗り、スクリーン印刷等の適宜の方法で、被塗物に塗装又は印刷をすることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を説明するが、本発明はこれによって制限するものではない。
(1)ビニル化合物の重合体及びその共重合体
ポリビニルアセタール樹脂:エスレックKS−1(KS−1)固形分100重量% (積水化学工業株式会社製)
GPCでポリスチレン換算の平均重合度:約550
ポリビニルブチラール樹脂:エスレックBL−S(BL−S)固形分100重量% (積水化学工業株式会社製)
GPCでポリスチレン換算の平均重合度:約350
【0042】
(2)アミノ樹脂
ベンゾグアナミン樹脂:メラン351W(ML351W)固形分60% (日立化成工業株式会社製)
GPCでポリスチレン換算の重量平均分子量:2,800
メラミン樹脂:メラン2000(ML2000)固形分50% (日立化成工業株式会社製)
GPCでポリスチレン換算の重量平均分子量:2,500
【0043】
実施例1
(KS−1)35重量部と(ML2000)15重量部を、トルエン95重量部及びエタノール95重量部に溶解した。得られた樹脂液に、平均粒径が10μmの樹枝状銅粉(福田金属株式会社製、商品名FCC−CP−10)100重量部と、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名KR238S)0.5重量部を投入後、擂潰機に入れ、混合して均一に分散させ、導電性塗料を得た。
【0044】
実施例2
実施例1で用いた樹枝状銅粉に替えてフレーク状銀めっき銅粉(福田金属株式会社製、商品名2L3)を使用した以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0045】
実施例3
実施例1で用いたKS−1に替えて(BL−S)を使用した以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0046】
実施例4
実施例1で用いた(ML2000)に替えて(ML351W)を使用した以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0047】
実施例5
実施例1で用いたビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートを0.15重量部とした以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0048】
実施例6
実施例1で用いたビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートに替えてイソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名KR 38S)を使用した以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0049】
比較例1
実施例1におけるビス(オクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートを使用しない以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0050】
比較例2
実施例1における樹枝状銅粉に替えて平均粒径が40μmのフレーク状銅粉(福田金属株式会社製、商品名2L3−H)を使用した以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0051】
比較例3
実施例1における(ML2000)を使用しない以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0052】
比較例4
実施例1におけるビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートを10重量部とした以外は実施例1と同様にして導電性塗料を得た。
【0053】
次に、各実施例及び各比較例で得られた導電性塗料について、その体積抵抗率及び密着性を下記の方法により測定した。
体積抵抗率:上記各実施例及び各比較例で得た導電性塗料をそれぞれ5mm厚のABS板に巾1.4mm×長さ60mmとなるように塗布して試験片を作製した。
【0054】
次いで、得られた試験片の初期体積抵抗率をロレスタHP(型式 MCP−T410三菱化学株式会社製)を用い測定した。さらに、各試験片を温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽中に500時間放置し劣化させた後の体積抵抗率を測定し、体積抵抗率の変化率を算出した。
【0055】
密着性:初期及び劣化後の塗膜とABS板の密着性を評価するため、碁盤目試験法 (JIS K5400、6.15)に従い、上記各試験片に1mm間隔で切傷をつけた後、その上にセロハン粘着テープを貼り、次いでテープを剥がす操作を3回繰り返し、塗膜の剥離状態でそれぞれの密着性を評価した。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0056】
【表1】

1)密着性: ○ → まったく剥離を認めず
△ → わずかに剥離
× → 塗膜が完全に剥離し、下地(ABS板)が見える
【0057】
【表2】

1)密着性: ○ → まったく剥離を認めず
△ → わずかに剥離
× → 塗膜が完全に剥離し、下地(ABS板)が見える
【0058】
表1及び表2に示されるように、実施例の導電性塗料は比較例の導電性塗料に比べて、初期体積抵抗率が低く、抵抗変化率が小さく、また密着性にも優れていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタネート系カップリング剤及び有機溶媒を、平均粒径が30μm以下の銅粉又は銀めっき銅粉、ビニル化合物の重合体及びその共重合体とアミノ樹脂を含む塗料組成の固形分に対して0.001〜5.0重量%の範囲で含有してなる導電性塗料。
【請求項2】
前記銅粉が、フレーク状又は樹枝状である請求項1記載の導電性塗料。
【請求項3】
前記ビニル化合物の重合体及びその共重合体の一部分とアミノ樹脂の一部分が、塗膜形成時に化学結合する請求項1又は2記載の導電性塗料。
【請求項4】
前記ビニル化合物の重合体及びその共重合体が、親水基を有する請求項1、2又は3記載の導電性塗料。
【請求項5】
前記アミノ樹脂が、トリアジン環を有する請求項1、2、3又は4記載の導電性塗料。
【請求項6】
前記チタネート系カップリング剤が、少なくとも炭素数1〜60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤又はアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤から選ばれる1種類以上を含む請求項1、2、3、4又は5記載の導電性塗料。

【公開番号】特開2007−284593(P2007−284593A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114403(P2006−114403)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】