説明

導電性接着剤

【課題】 接着性と導電性を兼ね備え、しかも長期に渡って、体積固有抵抗の変化率が小さい電性接着剤を提供する。
【解決手段】 球状の導電性フィラー、リン片状の導電性フィラーおよび有機バインダーからなる導電性接着剤であって、球状の導電性フィラーおよびリン片状の導電性フィラーの少なくとも一方は、導電性粒子と、該粒子表面全体に被膜され有機バインダーの硬化温度近傍で溶融する導電性コーティング層とよりなり、導電性フィラーの総量が70〜95重量%、球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーの割合が1:99〜99:1(重量比)の範囲である導電性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、IC、LSI、その他の半導体素子および各種電気電子部品の組立あるいは基板への接着に用いられる導電性接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ICやLSI、その他の半導体素子および各種電気電子部品の組立あるいは基板への接着には、優れた導電性や高い信頼性の点からSn−Pb共晶はんだが広く使用されてきた。ところで、近年機器の軽薄短小化に伴い、LSI等の半導体素子は小型化、高機能化が進み、それに伴い接続端子の幅および間隔を狭めた微細ピッチの多数接続端子が用いられるようになってきた。このように微細ピッチの多数接続端子化が進むと、はんだは、はんだ付け時にブリッジ現象を起こす危険性を有することから微細ピッチへの対応には限界があった。それに加えて、はんだはリフロー温度が高い為に接合できる部材に制約があり、さらに鉛を含有しているという点で環境保護の観点からの問題も有していた。
【0003】はんだに代わる次世代の接合材料として導電性接着剤が注目されている。このような導電性接着剤には微細な回路の導電性や接着性、さらには体積抵抗の変化率が小さいこと等が要求されている。特に、体積固有抵抗の変化率が大きいと素子の作動不良を引き起こす可能性があることから長期間安定であることが望まれる。該導電性接着剤の適用される部材によって異なるが、例えば体積固有抵抗が5×10-3Ωcm以下であり、接着強度が5kgf以上で、かつヒートサイクル試験(−25〜125℃、各30分)における500サイクル後の体積固有抵抗の変化率が10%以内であることが要求されている。
【0004】一方、最近の導電性接着剤においては導電性や接着性だけでなく、接着剤としての使用時におけるリワーク性も要求されてきている。リワーク性とは、一旦接着した回路において導電性の不十分なところが生じた場合に、その部分の部材を公知の手段を用いて剥がし、不都合な箇所を改善して、正確にもう一度接着し直すことが可能な性質を示し、複雑な回路基板の接続を行う時には必要とされる性質である。
【0005】導電性接着剤として熱可塑性樹脂バインダーと、低融点のスズをコーティングした球状導電性フィラーを用いて接着強度とリワーク性を両立している例があるが(特開平8−227613号公報)、体積固有抵抗の安定性の面から充分なものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、接着性と導電性を兼ね備え、しかも長期にわたって積固有抵抗の変化率が小さい導電性接着剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーを混合して用い、かつ、少なくともいずれか一方の導電性フィラーが、有機バインダーの硬化温度近傍で溶融する導電性コーティング層で、表面全体が被膜された導電性粒子から構成されると、充分な接着性と導電性を兼ね備え、しかも驚くべきことに長期に渡って体積固有抵抗の変化率が小さい導電性接着剤が得られることを見いだし、本発明に至った。
【0008】すなわち、本発明は、(1) 球状の導電性フィラー、リン片状の導電性フィラー、有機バインダーからなる導電性接着剤であって、球状の導電性フィラーおよびリン片状の導電性フィラーの少なくとも一方は、導電性粒子と、該粒子表面全体に被膜され有機バインダーの硬化温度近傍で溶融する導電性コーティング層とよりなり、導電性フィラーの総量が70〜95重量%、球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーの割合が1:99〜99:1(重量比)の範囲であることを特徴とする導電性接着剤、(2) 導電性粒子がCu、Ni、Au、Ag、Al、PdおよびPtからなるグループから選択される1種または2種以上の金属からなり、導電性コーティング層がSn、Zn、In、Bi、PbおよびSbからなるグループから選択される1種または2種以上の金属からなることを特徴とする上記(1)の導電性接着剤、(3) 有機バインダーが熱可塑性樹脂からなる上記(1)または(2)の導電性接着剤、(4) 有機バインダーが熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物からなる上記(1)または(2)の導電性接着剤、(5) 熱可塑性樹脂が水素結合を有する樹脂である上記(3)または(4)の導電性接着剤、(6) 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が相溶するものであることを特徴とする上記(4)の導電性接着剤、を提供するものである。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる導電性コーティング層としては、Sn、Zn、In、Bi、PbおよびSbからなるグループから選択される単独または2種以上の金属が使用できる。SnおよびSnを含む金属は、銅、銀、金などの電極用金属と金属間化合物を形成しやすいので特に好ましい。導電性コーティング層としては金属だけでなく、熱可塑性の導電性ポリマー、例えばポリアニリンなどを使用することもできる。
【0010】一方、導電性粒子としては、Cu、Ni、Au、Ag、Al、PdおよびPtからなるグループから選択される単独または2種類以上の金属が使用できる。また、導電性粒子として、平均組成Agx Cu1-x (0.01≦x≦0.4、xは原子比を示す。)で表される銅合金粉末であって、銅合金粉末表面の銀濃度が平均の銀濃度より大きく、かつ内部から表面に向けて銀濃度が次第に増加する領域を有する粉末を使用することもできる。このような銅合金粉末を用いることで、充分な耐酸化性と耐マイグレーション性を得ることができる。xが0.01未満では充分な耐酸化性が得られず、0.4を超える場合には耐エレクトロマイグレーション性が不十分である。
【0011】該銅合金粉末は、すでに公知の方法で得ることができる(特開平1−205561号公報)。中でも、不活性ガスアトマイズ法により作製される銅合金粉末が特に好ましい。該銅合金粉末は、表面の銀濃度が平均の銀濃度より大きく、かつ内部から表面に向けて銀濃度が次第に増加する領域を有しているが、銅合金粉末表面の銀濃度は平均の銀濃度の2.1倍以上が好ましく、さらに3倍以上30倍以下が好ましい。
【0012】さらに、導電性粒子として、高分子材料の表面にCu、Ni、Au、Ag、Al、PdおよびPt等の金属層を形成したものも使用することができる。該高分子材料としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。導電性接着剤において、充分な接着強度と高い導電性、さらに体積抵抗の安定性のすべて兼備するのは非常に困難であり、そのような要求を満たすために導電性フィラーの形状は重要な因子である。
【0013】本発明においては、球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーを混合して用いることが必要であり、さらに、少なくともいずれか一方の導電性フィラーが、有機バインダーの硬化温度近傍で溶融する導電性コーティング層で、表面全体が被覆された導電性粒子からなることが必要である。このような導電性コーティング層で被覆された導電性粒子を含有する導電性フィラーを用いると、接着時に有機バインダーを硬化させる為の加熱の際に導電性コーティング層が溶融するので、隣接する導電性フィラーどうしは互いに溶着して鎖状に連結される。また電極との接触界面では、導電性コーティング層は溶融して電極金属と金属間化合物を形成して強固に結合される。したがって対向する電極間に形成される導電性フィラーによる鎖状連結構造は、金属どうしの溶融接合により機械的および電気的に強固に接続される。特に、本発明は、このような球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーを混合して用いることで、驚くべきことに長期に亘り体積固有抵抗の変化率が小さい導電性接着剤が得られたものである。
【0014】本発明では球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーの配合割合は1:99〜99:1(重量)であることが必要である。この範囲内で球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーが混合されていると、長期に渡り体積抵抗の変化率が小さい、安定な導電性接着剤が得られる。また、導電性フィラーどうしが良好に鎖状に連結されるためには、導電性コーティング層を有する導電性フィラーは、導電性フィラー総量の少なくとも30重量%含まれることが好ましい。
【0015】本発明で用いられる導電性コーティング層を有する導電性フィラーは種々の方法で製造できるが、例えば、導電性粒子表面に湿式メッキあるいは真空蒸着法などの乾式メッキにより導電性コーティング層を形成することで容易に製造することができる。本発明で用いられる球状の導電性フィラーの粒径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。リン片状の導電性フィラーの板面の平均径(長径と短径がある場合には両者の平均)は1μm以上30μm以下であることが好ましい。また、導電性コーティング層の厚さは0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0016】本発明においては有機バインダーとして、熱可塑性樹脂を単独で用いることも、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を混合して使用することもできる。熱可塑性樹脂として、どの様な熱可塑性樹脂でも使用可能であるが、その構造の中に水素結合性を有する官能基を有するものが接着性が優れることから好ましい。水素結合性を有する官能基としては水酸基、アミド基、ウレア基、イミド基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ケトン基などである。この様な熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリイミドシロキサン、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリビニルエーテル、ポリサルホン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル、メタクリル樹脂、アイオノマー樹脂などが挙げられる。水素結合性を有する官能基を有する熱可塑性樹脂が特に優れている理由は明らかではないが金属との間で水素結合をすることで濡れが良くなるためと考えられる。
【0017】また、本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が300℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が300℃を超えると、接着剤としての使用時および熱リワーク時に300℃以上の高温にする必要があることから、接着する部材の劣化等の問題があり好ましくない。このような熱可塑性樹脂の中ではフェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルブチラールがより好ましく、特にフェノキシ樹脂が好ましい。
【0018】本発明の有機バインダーで用いられる熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、メラニン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(クレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型、レゾルシン型、テトラヒドロキシフェノルエタン型、ポリアルコールポリグリコール型、グリセリントリエーテル型、ポリオレフィン型、エポキシ化大豆油、シクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどが挙げられ、なかでもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(クレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】また、C12,13混合アルコールグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグルシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどの低分子エポキシ化合物などを使用することもできる。中でもネオペンチルグリコールジグルシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましい。
【0020】本発明で用いるエポキシ硬化剤としては、一般的なエポキシ硬化剤を用いることができる。例えば、脂肪族ポリアミン系としてトリエチレンテトラミン、m−キシレンジアミンなどがあり、芳香族アミン系としてはm−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォンなどがあり、第三級アミン系としてはベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノールなどがあり、酸無水物系としては無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などがあり、三フッ化ホウ素アミンコンプレックス系としてはBF3−ピペリジンコンプレックスなどがある。あるいはビスフェノールAなどのビスフェノール化合物でも良い。また、ジシアンジアミド、2−エチル−4−メチルイミダゾール、トリス(メチルアミノ)シランなども挙げられる。樹脂系硬化剤としてはリノレン酸二量体とエチレンジアミンなどから作られるポリアミド樹脂、両端にメルカプト基を有するポリスルフィド樹脂、ノボラック系フェノール樹脂なども挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0021】硬化剤の添加量は硬化剤の種類により異なる。例えば酸無水物系などのように化学量論的にグリシジル基と反応する場合は、エポキシ当量から最適添加量が決められる。また触媒的に反応する場合は、3〜30重量%が一般的である。これらの硬化剤の室温での反応性が高い場合は、使用直前に開始剤を含む液を接着剤に混合したり、硬化剤を100μm程度のゼラチンなどのカプセルに封入してマイクロカプセルにして用いることが好ましい。
【0022】本発明において有機バインダーとして熱可塑性樹脂を単独で用いると、導電性接着剤が容易にリワークできるという利点を有する。すなわち熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱することでリワークできる。さらに熱可塑性樹脂を溶解する溶剤を使用することでもリワークすることができる。なお、本発明においてリワークとは、接着物を熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、接着する部材の劣化温度以下の範囲で加熱すること、あるいは溶剤を使用することで剪断強度が3kgf以下になり、ピンセットで引張る等のわずかな力を加えることで被接着物が部材から脱離することをいう。
【0023】本発明において、有機バインダーとして熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を混合して使用することもでき、混合することで、熱硬化性樹脂の架橋構造により、充分な強度を発現し、また熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱したり、硬化物の強度を弱くする溶剤を使用する事によりリワークが可能になる。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を混合する場合は、有機バインダーの全樹脂に対して熱硬化性樹脂は97重量%以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂の含量が97重量%より多いとリワークすることができない。
【0024】また、充分な接着強度を発現するためには熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂が相溶するような組み合わせを選定し、相溶するような混合割合で使用することが好ましい。なお、本発明において相溶するとは、両方の樹脂を溶剤を使用せずに単独で混合した後で白濁しない、あるいは溶剤に溶解して混合した後、溶剤を留去した状態で白濁しないことをいう。このような樹脂の組合せとして、例えばエポキシ樹脂とフェノキシ樹脂を挙げることができる。
【0025】本発明の導電性接着剤においては、導電性フィラーは、70〜95重量%含有することが必要である。導電性フィラーが70重量%未満では充分な導電性が得られず、また95重量%を超えると作業性や半導体チップとのなじみ性が悪くなる。本発明における導電性接着剤には添加物として硬化促進剤、難燃剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、沈降防止剤、カップリング剤、モノエポキシ化合物、顔料、消泡剤、腐食防止剤、粘着性付与剤など各種の添加剤を用いることができる。
【0026】導電性接着剤として用いるためには、使用時の粘度が重要なファクターとなる。粘度を調整するためにモノエポキシ化合物や例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、カルビトールアセテート、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等の溶剤を単独あるいは複数を適当量混合して用いることも可能である。得られる溶液もしくはペースト状物の粘度が5000〜400000cp、より好ましくは20000〜70000cpであることが作業性の面から好ましい。
【0027】本発明の導電性接着剤は上記の各種成分をボールミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等の各種混練機を用いて常法により、例えば10〜60分間混練する事により得られる。混練した導電性接着剤は、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等の方法により、絶縁基体やリードフレームに塗布する。
【0028】本発明の導電性接着剤の加熱硬化条件は、樹脂が充分硬化するとともに、熱による劣化が問題にならない範囲であれば特に制限はない。一般的な温度範囲としては、150℃〜220℃であるが、固形の硬化剤を溶融する目的あるいはボイドの生成を防ぐ目的でこれより低い温度で予備加熱を行っても良い。
【0029】
【発明の実施の形態】以下の実施例と比較例によって本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例において評価は下記のように行った。
剪断強度:銅板上に導電性接着剤を膜厚70〜100μmを保って、幅2mm、長さ2mmに塗布し、銅チップ(2mm×2mm×1mm)を5つのせて所定温度で硬化させ、作成した硬化物にプッシュプルゲージの先端を押し込みチップ脱落時の強度を読み取ることで測定した。
リワーク性:上記作成した硬化物をオーブンで180℃×10分加熱した直後に銅チップをピンセットで引張り、脱落するかどうかで評価した。
体積固有抵抗値:導電性接着剤をFR4基板上に膜厚50〜100μmを保って、幅1cm、長さ7cmに塗布し所定温度で硬化させ作成した導体の1cmの抵抗値(R)をデジタルマルチメーターを用いて測定し、次式に数値を代入することで算出した。
体積固有抵抗値=R×t×10-4Ωcm R:抵抗値 t:膜厚μm体積固有抵抗の長期安定性:ヒートサイクル試験機(−25〜125℃、各30分)に、体積固有抵抗値測定用サンプルを入れ、500サイクル後の体積固有抵抗を測定して、体積固有抵抗の長期安定性を評価した。
【0030】なお、各実施例を行うにあたって、各実施例の樹脂の配合割合で互いに相溶することを目視で確認した。
【0031】
【実施例1】フェノキシ樹脂(PAPHEN(株)製 PKHC)のDMF30重量%溶液333.3重量部、および平均粒径5μmの球状銅粉に平均0.5μmの厚みにスズをコーティングしたフィラー810重量部と、平均径5μmのリン片状銅粉に平均0.5μmの厚みにスズをコーティングしたフィラー90重量部を3本ロールで混練して得たペーストを金属へらで5分間混練した。この導電性接着剤を80℃×15分間、230℃×30分硬化させて上記方法で評価したところ、本硬化物はリワーク可能であった。剪断強度は7.8kgf、体積固有抵抗は3.1×10-5Ωcmであった。ヒートサイクル後の体積固有抵抗を測定したところ3.2×10-5Ωcmであった。充分な強度と導電性を兼備し、体積固有抵抗の変化率が非常に小さく、しかもリワーク性を有する導電性接着剤である。
【0032】
【実施例2】フェノキシ樹脂(PAPHEN(株)製 PKHC)のDMF30重量%溶液333.3重量部、および平均粒径5μmの球状銅粉に平均0.5μmの厚みにスズをコーティングしたフィラー810重量部と、平均径5μmのリン片状銅粉90重量部を3本ロールで混練して得たペーストを金属へらで5分間混練した。この導電性接着剤を80℃×15分間、230℃×30分硬化させて上記方法で評価したところ、本硬化物はリワーク可能であった。剪断強度は7.5kgf、体積固有抵抗は3.5×10-5Ωcmであった。500サイクル後の体積固有抵抗を測定したところ3.6×10-5Ωcmであった。充分な強度と導電性を兼備し、体積固有抵抗の変化率が非常に小さく、しかもリワーク性を有する導電性接着剤である。
【0033】
【実施例3】フェノキシ樹脂(PAPHEN(株)製 PKHC)のDMF30重量%溶液16.7重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製、AER2664)95重量部、および平均粒径5μmの球状銅粉に平均0.5μmの厚みにスズをコーティングしたフィラー810重量部と、平均径5μmのリン片状銅粉に平均0.5μmの厚みにスズをコーティングしたフィラー90重量部を3本ロールで混練して得たペーストに、マイクロカプセル型エポキシ硬化剤(旭化成工業(株)製 ノバキュアHX3613)を36重量部加え、金属へらで5分間混練した。この導電性接着剤を80℃×30分間、230℃×1時間硬化させて上記方法で評価したところ、本硬化物はリワーク可能であった。剪断強度は20.5kgf、体積固有抵抗は1.8×10-5Ωcmであった。500サイクル後の体積固有抵抗を測定したところ1.9×10-5Ωcmであった。充分な強度と導電性を兼備し、体積固有抵抗の変化率が非常に小さく、しかもリワーク性を有する導電性接着剤である。
【0034】
【比較例1】フェノキシ樹脂(PAPHEN(株)製 PKHC)のDMF30重量%溶液333.3重量部、および平均粒径5μmの球状銅粉900重量部を3本ロールで混練して得たペーストを金属へらで5分間混練した。この導電性接着剤を80℃×15分間、230℃×30分硬化させて上記方法で評価したところ、本硬化物はリワーク可能であった。剪断強度は3.3kgf、体積固有抵抗は5.2×10-3Ωcmであった。500サイクル後の体積固有抵抗を測定したところ6.8×10-3Ωcmであった。強度、導電性は不充分であり、ヒートサイクル後の体積固有抵抗の変化率が31%もあり、要求値を満たさない導電性接着剤である。
【0035】
【比較例2】フェノキシ樹脂(PAPHEN(株)製 PKHC)のDMF30重量%溶液333.3重量部、および平均径5μmのリン片状銅粉900重量部を3本ロールで混練して得たペーストを金属へらで5分間混練した。この導電性接着剤を80℃×15分間、230℃×30分硬化させて上記方法で評価したところ、本硬化物はリワーク可能であった。剪断強度は2.3kgf、体積固有抵抗は2.2×10-3Ωcmであった。500時間後の体積固有抵抗を測定したところ3.5×10-3Ωcmであった。強度、導電性は不十分であり、さらにヒートサイクル後、体積固有抵抗の変化率が59%もあり、要求値を満たさない導電性接着剤である。
【0036】
【発明の効果】本発明の導電性接着剤は接着性と良好な導電性を兼ね備え、しかも長期に渡って体積固有抵抗の変化率が非常に小さく、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 球状の導電性フィラー、リン片状の導電性フィラー、有機バインダーからなる導電性接着剤であって、球状の導電性フィラーおよびリン片状の導電性フィラーの少なくとも一方は、導電性粒子と、該粒子表面全体に被膜され有機バインダーの硬化温度近傍で溶融する導電性コーティング層とよりなり、導電性フィラーの総量が70〜95重量%、球状の導電性フィラーとリン片状の導電性フィラーの割合が1:99〜99:1(重量比)の範囲であることを特徴とする導電性接着剤。
【請求項2】 導電性粒子がCu、Ni、Au、Ag、Al、PdおよびPtからなるグループから選択される1種または2種以上の金属からなり、導電性コーティング層がSn、Zn、In、Bi、PbおよびSbからなるグループから選択される1種または2種以上の金属からなることを特徴とする請求項1記載の導電性接着剤。
【請求項3】 有機バインダーが熱可塑性樹脂からなる請求項1または2記載の導電性接着剤。
【請求項4】 有機バインダーが熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物からなる請求項1または2記載の導電性接着剤。
【請求項5】 熱可塑性樹脂が水素結合を有する樹脂である請求項3または4記載の導電性接着剤。
【請求項6】 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が相溶するものであることを特徴とする請求項4記載の導電性接着剤。