説明

導電性材料前駆体および導電性材料

【課題】本発明の導電性材料前駆体およびそれを用いて導電性材料を製造することで、導電性材料前駆体を長期間保存しても導電性が低下することのない優れた導電性を有する導電性材料を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該ハロゲン化銀乳剤層がメルカプト基を有する含窒素複素環化合物と、一般式1で表される化合物もしくはその誘導体、あるいはメルカプト基を有しない含窒素複素環化合物とを含有することによって本発明の目的を達成するに至った。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材、アンテナ回路、タッチパネル、電子回路等の用途に用いることができる導電性材料を製造するために用いる導電性材料前駆体および導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会が急速に発達するに伴って、情報関連機器に関する技術が急速に進歩し普及してきた。この中で、ディスプレイ装置は、テレビジョン用、パーソナルコンピューター用、駅や空港などの案内表示用、その他各種情報提供用に用いられている。特に、近年プラズマディスプレイが注目されている。
【0003】
このような情報化社会の中にあって、これらのディスプレイ装置から放射される電磁波の影響が心配されている。例えば、周辺の電子機器への影響や人体への影響が考えられている。特に、人体の健康に及ぼす影響は無視することができないものになっており、人体に照射される電磁界の強度の低減が求められ、このような要求に対して様々な導電性材料が開発されている。例えば、特開平9−53030号、特開平11−126024号、特開2000−294980号、特開2000−357414号、特開2000−329934号、特開2001−38843号、特開2001−47549号、特開2001−51610号、特開2001−57110号、特開2001−60416号公報等に開示されている。
【0004】
これらの導電性材料の製造方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって樹脂フィルム上に金属薄膜を形成させる方法、および、支持体に金属箔を貼り合わせた上にレジストパターン層を設け、エッチングを行い、導電性メッシュを得る方法、または、金属や導電性カーボン等の導電性物質を印刷することにより、ストライプまたはメッシュ状に画像形成する方法等が知られている。
【0005】
その他の方法としては近年、銀塩拡散転写法を用いた銀塩写真感光材料を導電性材料前駆体として用いる方法が提案されている。例えば特開2003−77350号公報(特許文献1)、特開2005−250169号公報(特許文献2)や特開2007−188655号公報(特許文献3)などがあり、支持体上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体に、可溶性銀塩形成剤および還元剤をアルカリ液中で作用させて、金属銀パターンを形成させる技術が開示されている。この方式によるパターニングは均一な線幅を再現することができることに加え、銀は金属の中で最も導電性が高いため、他方式に比べ、より細い線幅で高い導電性を得ることができる。従って、上記銀塩拡散転写法を用いた画像形成方法は、例えばディスプレイ装置の電磁波シールド材のような光透過性が求められる用途においては、高透過率、高導電性の両立が可能であるため、とりわけ有用である。
【0006】
しかしながら、上記導電性材料前駆体を長期間保存した場合、導電性材料の導電性が低下するという問題があり改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−77350号公報
【特許文献2】特開2005−250169号公報
【特許文献3】特開2007−188655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、導電性材料前駆体を長期間保存しても導電性材料の導電性が低下することのない導電性材料前駆体および優れた導電性を有する導電性材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該ハロゲン化銀乳剤層がメルカプト基を有する含窒素複素環化合物と、下記一般式1で表される化合物もしくはその誘導体、あるいはメルカプト基を有しない含窒素複素環化合物とを含有することを特徴とする導電性材料前駆体によって本発明の目的を達成するに至った。
【0010】
【化1】

【0011】
式中Qは5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、またこの環は炭素芳香環または複素芳香環と縮合していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電性材料前駆体およびそれを用いて導電性材料を製造することで、導電性材料前駆体を長期保存しても導電性材料の導電性が低下することなく、かつ、透過率が高く、導電性に優れた導電性材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性材料前駆体は支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有し、該ハロゲン化銀乳剤層は、メルカプト基を有する含窒素複素環化合物と、一般式1で表される化合物もしくはその誘導体、あるいはメルカプト基を有しない含窒素複素環化合物から選択される化合物とを含有する。
【0014】
本発明の導電性材料前駆体が有するハロゲン化銀乳剤層が含有する上記メルカプト基を有する含窒素複素環化合物、一般式1で表される化合物もしくはその誘導体、メルカプト基を有しない含窒素複素環化合物の添加量は、それぞれ1〜100mg/mであることが好ましく、より好ましくは5〜50mg/mである。2つの化合物の添加量の合計としては2〜100mg/m、さらに好ましくは10〜50mg/mである。1mg/m未満では導電性材料前駆体を長期間保存することによる導電性材料の導電性低下を防ぐことができず、また、100mg/mを超えると導電性が低下し始める傾向にある。添加方法については、固形分濃度1〜5質量%程度の溶液としてハロゲン化銀乳剤層を設けるための塗布液に含有せしめる方法が好ましい。
【0015】
本発明においてメルカプト基を有する含窒素複素環化合物としては、下記一般式2で表される化合物であることが好ましく、これらの誘導体も使用することができる。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、Qは5または6員の複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。含窒素複素環の例としては、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピロール、ピリジン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、ピラゾール、オキサゾリン、チアゾリン、セレナゾリン、セレナゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、オキサジン、テトラジン、ピロリジンなどが挙げられる。また、上記含窒素複素環は炭素芳香環または複素芳香族環等の縮合環を有していてもよい。このような縮合環を有する好ましい含窒素複素環の例としては、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾセレナゾール、キノリジン、インドリジン、インドール、キノリンなどが挙げられる。メルカプト基を有する含窒素複素環化合物の好ましい構造としては、縮合環を有しない単環構造が好ましく、より好ましくはテトラゾールである。Lは、二価の脂肪族基、二価の芳香族炭化水素基、二価の複素環基またはこれらの組み合わせた連結基を表し、炭素数10以下のものが好ましい。Rは水素原子、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、ホスホン酸基もしくはその塩、アミノ基またはアンモニウム塩、ヒドロキシル基、アルコキシ基、チオアルキル基を表し、好ましくは水素原子である。qは1〜3の整数を表す。具体例としては、特開平6−59456号公報に開示されるメルカプト基を有するトリアゾール化合物とその誘導体、特開2004−138664号公報に開示される2−メルカプト−4−フェニルイミダゾール、2−メルカプト−1−ベンジルイミダゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、1−エチル−2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−ブチル−ベンズイミダゾール、2,2′−ジメルカプト−1,1′−デカメチレン−ジイミダゾリン、2−メルカプト−4−フェニルチアゾール、2−メルカプト−ベンゾチアゾール、2−メルカプトナフトチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジフェニルオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−メルカプト−4−アリル−5−ペンタデシル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ノニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アセタミド−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−アミノ−5−ヘプタデシル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサチアゾール、2−メルカプト−5−n−ヘプチル−オキサジアゾール、2−メルカプト−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−テトラゾール、2−メルカプト−5−ニトロピリジン、3−メルカプト−4−メチル−6−フェニル−ピリダジン、2−メルカプト−5,6−ジフェニル−ピラジン、2−メルカプト−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メルカプト−6−ベンジル−1,3,5−トリアジン等、特開2004−151290号公報に開示されるメルカプトテトラゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトオキサジアゾール類とその誘導体が挙げられるが、中でも、下記に例示する5−メルカプトテトラゾール類とその誘導体が特に好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
本発明において、前記メルカプト基を有する含窒素複素環化合物と併用される一般式1で表される化合物は、その誘導体も使用することができる。
【0020】
【化4】

【0021】
一般式1中Qは、5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Qの例としては、ベンゼン、フラン、ピラン、チオフェンなどが挙げられる。また、この環は炭素芳香族環または複素芳香族環と縮合していてもよい。縮合環を有する5または6員環としては、ナフタレン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾピランなどが挙げられる。Qとしては縮合環を有しない単環構造が好ましく、特に好ましくはベンゼン環である。具体例としては、特開昭56−001057号公報に開示されるメルカプト安息香酸およびその誘導体、特開昭56−009750号公報に開示される2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、特開平9−304936号公報に開示される3−メルカプト安息香酸およびその誘導体が挙げられるが、中でも、下記に例示するメルカプト安息香酸類とその誘導体が特に好ましい。
【0022】
【化5】

【0023】
本発明においてメルカプト基を有しない含窒素複素環化合物としては、下記一般式3で表される化合物であることが好ましく、これらの誘導体も使用することができる。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式3中、Qは5または6員の含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。含窒素複素環の例としては、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピロール、ピリジン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、ピラゾール、オキサゾリン、チアゾリン、セレナゾリン、セレナゾール、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、オキサジン、テトラジン、ピロリジンなどが挙げられる。また、上記含窒素複素環は置換基を有していてもよく、さらに炭素芳香環または複素芳香族環等の縮合環を有していてもよい。このような縮合環を有する好ましい含窒素複素環の例としては、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾセレナゾール、インドリジン、インドール、キノリンなどが挙げられる。メルカプト基を有しない含窒素複素環化合物の構造としては縮合環構造が好ましく、より好ましくはベンゾトリアゾール、トリアゾロピリミジン、イミダゾピリジン環である。Rは水素原子、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、ホスホン酸基もしくはその塩、アミノ基またはアンモニウム塩、ヒドロキシル基、アルコキシ基、チオアルキル基を表し、好ましくは、ヒドロキシル基、チオアルキル基、水素原子である。qは1〜3の整数を表す。例としては、特開平6−59456号公報に公開されるベンゾトリアゾール類とその誘導体、特開2005−114899号公報に公開される5−ニトロベンズイミダゾール、イミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−ベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、2−メチルベンゾオキサゾール、6−メチルプリン、アデニン、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン、2−(カルボメトキシアミノ)−ベンズイミダゾール等、特開2007−201378号公報に開示される有機含窒素ヘテロ環化合物が挙げられる。中でも、下記に例示するベンゾトリアゾール類とその誘導体、トリアゾロピリミジン類とその誘導体、イミダゾピリジン類とその誘導体、メチルイミダゾールとその誘導体が好ましく、とりわけ、ベンゾトリアゾール類とその誘導体、トリアゾロピリミジン類とその誘導体、イミダゾピリジン類とその誘導体が好ましい。
【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
本発明における物理現像核層は物理現像核を含有する。該物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で0.1〜10mg/mであることが好ましい。
【0029】
本発明の物理現像核を支持体に塗布するために用いる塗液には、物理現像核の安定化、塗布を容易にさせる等種々の目的で、親水性ポリマーを含有させることができる。具体的にはポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アミノ基を有する水溶性高分子などが挙げられる。
【0030】
上記親水性ポリマーの中でもアミノ基を有する水溶性高分子が好ましい。1級アミノ基もしくは2級アミノ基を有する水溶性高分子としては下記のような水溶性高分子が挙げられる。ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等のタンパク質、ヒアルロン酸などムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、アミノ基およびエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを単独で重合してなるホモポリマー、アミノ基およびエチレン性不飽和二重結合を有する複数種のモノマーを共重合してなるコポリマー、例えば酢酸ビニル、ビニルピロリドンなどの1級もしくは2級アミノ基を有さない他のモノマーと、アミノ基およびエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合してなるコポリマー等が挙げられる。ホモポリマーとしては例えばポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミンなど、アミノ基とエチレン性不飽和の二重結合とを有する複数種のモノマーを共重合してなるコポリマーとしては例えばアリルアミンとジアリルアミンの共重合体など、アミノ基およびエチレン性不飽和二重結合を有さないモノマーと、アミノ基およびエチレン性不飽和の二重結合を有するモノマーとを共重合してなるコポリマーとしては例えばジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体などが挙げられる。この中でも最も好ましいのがポリエチレンイミンである。
【0031】
上記親水性ポリマーの好ましい添加量は10〜100mg/mであり、より好ましくは30〜70mg/mである。
【0032】
本発明に用いる物理現像核層には架橋剤を含有させることができる。該架橋剤としてはホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グリオキザール、グルタルアルデヒドである。架橋剤は1〜20mg/m含有させるのが好ましく、特に3〜10mg/mが好ましい。さらにはエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物を併用することが好ましい。エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物の好ましい添加量は3〜80mg/mである。
【0033】
さらに物理現像核層にはリサーチ・ディスクロージャー#17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。
【0034】
物理現像核層の塗布方式としては特に制限はなく、ディップコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法などにより塗布することができる。
【0035】
本発明の導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層が含有するハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の当業界では周知の方法が用いられる。中でも同時混合法の一種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0036】
ハロゲン化銀乳剤層は、親水性ポリマーをバインダーとして含む。ここでいう親水性ポリマーとは、現像液で容易に膨潤し、下層の物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体等が挙げられる。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤層が含有する親水性ポリマーの量については、親水性ポリマー量が少ないと塗布性に悪影響を及ぼし、また安定したハロゲン化銀粒子も得られなくなる場合がある。一方、多過ぎると導電性の低下や、めっき膜を形成する際、めっき性の低下が見られるようになる場合がある。好ましい親水性ポリマー量は、ハロゲン化銀(銀換算)と親水性ポリマーとの質量比(銀/親水性ポリマー)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0038】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、リサーチ・ディスクロージャー#17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0039】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩もしくはその錯塩を共存させてもよい。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、リサーチ・ディスクロージャー#17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0040】
本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることができる。これらの非感光性層は、親水性ポリマーを主たるバインダーとする層である。ここでいう親水性ポリマーとは、前述のハロゲン化銀乳剤層に用いる親水性バインダーと同様、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0041】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい親水性ポリマーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0042】
また必要に応じて設けられる物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間の非感光性層(中間層)はアルカリ処理液で銀錯塩拡散転写現像し、温水で水洗するときに物理現像核層上の不要になった層の除去を促進するのに好適である。
【0043】
本発明における導電性材料前駆体には必要に応じて支持体のハロゲン化銀乳剤層とは反対面に裏塗り層を設けることができる。
【0044】
導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としてはハロゲン化銀乳剤層と支持体の間の中間層やあるいは裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として0.5以上である。
【0045】
本発明の導電性材料前駆体に用いられる支持体としては、プラスチック樹脂フィルムが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ガラス板などが挙げられる。さらに好ましくは全光線透過率が60%以上のものがよい。さらに本発明においては支持体上にハロゲン化銀乳剤層との接着性を向上させるための下引き層や帯電防止層などを必要に応じて設けることもできる。
【0046】
上記導電性材料前駆体を用い、導電性材料を作製するための方法は、例えばメッシュ状パターンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パターンに露光されるが、露光方法として、メッシュ状パターンの透過原稿と導電性材料前駆体を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることができる。
【0047】
露光後、導電性材料前駆体をアルカリ処理液で銀錯塩拡散転写現像し、温水で水洗し、ハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層を除去する。このアルカリ処理液とは物理現像処理である銀錯塩拡散転写現像を行う際に用いる液である。物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ処理液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0048】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤および還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0049】
可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸アンモニウムおよびチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸およびその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物が挙げられる。
【0050】
還元剤としては写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸およびその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、p−メチルアミノフェノール、p−アミノフェノール、p−ヒドロキシフェニルグリシン、p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0051】
上記の可溶性銀錯塩形成剤および還元剤は、物理現像核層と一緒に支持体に塗布してもよいし、ハロゲン化銀乳剤層中に添加してもよいし、またはアルカリ処理液中に含有させてもよく、さらに複数の位置に含有してもよい。上記した可溶性銀錯塩形成剤および還元剤は、少なくともアルカリ処理液中に含有させるのが好ましい。
【0052】
アルカリ処理液中への可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり0.1〜5モルの範囲で用いるのが適当であり、還元剤は現像液1リットル当たり0.05〜1モルの範囲で用いるのが適当である。
【0053】
アルカリ処理液のpHは10以上が好ましく、さらに11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、燐酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。本発明において銀錯塩拡散転写現像を行うためのアルカリ処理液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流されたアルカリ処理液中に、物理現像核層およびハロゲン化銀乳剤層が設けられた導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上にアルカリ処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0054】
本発明において、アルカリ処理液を適用するときのアルカリ処理液の温度を18〜22℃とすることが適当である。また、アルカリ処理液の適用時間は、20秒〜3分程度が適当である。この態様は、特に浸漬方式の場合に好適である。
【0055】
本発明では、前記露光および現像処理により形成された現像銀部にさらに高い導電性を付与する目的で、現像処理の後にめっき処理を行うことが好ましい。本発明において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、または無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。
【0056】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき,無電解コバルトめっき、無電解金めっき、無電解銀めっきなどを用いることができるが、低コストにて十分な導電性と光透過性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0057】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール4酢酸,グリコールエーテルジアミン4酢酸、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル,o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることもできる。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行うことが好ましい。
【0058】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うとよい。
【0059】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法などを用いることができる。
【0060】
本発明においては無電解めっき以外にも電解めっきを施すこともできる。電解めっきとしては銅めっきやニッケルめっき、亜鉛めっき、カドミウムめっき、錫めっき、合金めっきなど種々のめっき法が知られている、無電解めっき同様低コストで光透過性、導電性を確保するためには銅めっきを用いることが好ましい。銅めっき法としては公知の硫酸銅めっき、ホウフッ化銅めっき、シアン化銅めっき、ピロリン酸銅めっきなどいずれの方法でも用いることができるが、廃液の簡便さから硫酸銅めっき、特にハイスロ−硫酸銅めっきを用いることが好ましい。これら電解めっき法の詳細は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p75〜112などに記載されている。
【0061】
本発明では、めっき処理の前に金属銀部を無電解めっきの促進目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形でもよいし、また金属パラジウムであってもよい。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることがよい。
【0062】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
本発明における導電性材料を得るために、支持体として、全光線透過率が90%以上、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この透明支持体上に下記組成の裏塗り層を塗布、乾燥した。
【0064】
<裏塗り層組成>1m当たり
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
界面活性剤(S−1) 400mg
染料1 200mg
【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
次に裏塗り層を有する透明支持体の、裏塗り層とは反対側の面に下記のようにして作製した硫化パラジウムを含有する物理現像核層塗液を塗布、乾燥した。
【0068】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0069】
<物理現像核層塗液の調製>各1m当たり
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキザール水溶液 0.2ml
界面活性剤(S−1) 4mg
デナコールEX−830 50mg
(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)
10質量%SP−200水溶液 0.5mg
(日本触媒(株)製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0070】
続いて、支持体に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層E−1〜10、および保護層を上記物理現像核層の上に塗布し、導電性材料前駆体1〜10を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1g当たり0.5gのゼラチンを含む。
【0071】
<中間層組成>1m当たり
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0072】
<ハロゲン化銀乳剤層組成>1m当たり
<E−1>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
B−1 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0073】
<E−2>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
C−3 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0074】
<E−3>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
C−8 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0075】
<E−4>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
C−14 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0076】
<E−5>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
D−1 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0077】
<E−6>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
C−8 14mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0078】
<E−7>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0079】
<E−8>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 14mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0080】
<E−9>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
F 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0081】
【化11】

【0082】
<E−10>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
A−1 4mg
G 10mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0083】
【化12】

【0084】
<保護層組成>1m当たり
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 15mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0085】
このようにして得た導電性材料前駆体1〜10を、ADVANTEC社製FI−612耐熱試験機内で50℃7日間保管した。
【0086】
このようにして得た未加温の導電性材料前駆体1〜10と、50℃7日間加温保管した導電性材料前駆体1〜10を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、細線幅20μmで格子間隔250μmのメッシュ状パターンの透過原稿を密着させてそれぞれ露光した。
【0087】
露光した導電性材料前駆体を下記組成のアルカリ処理液(銀錯塩拡散転写用現像液)で20℃で60秒の浸漬処理をそれぞれ行ったのち40℃温水で水洗、乾燥した。このようにして銀薄膜パターンを有する導電性材料を得た。
【0088】
<アルカリ処理液>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0089】
上記のようにして得られたメッシュ状銀薄膜パターンが形成された導電性材料の表面抵抗率を、(株)ダイアインスツルメンツ製、ロレスタ−GP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1において>10とは(株)ダイアインスツルメンツ製、ロレスタ−GP/ESPプローブで測定できないほど抵抗率が高いという意味である。
【0092】
表1に示した結果において、抵抗率の加温/未加温値は導電性の変動を表す指標であり、1に近いほど導電性の変動が少ないといえる。本発明のハロゲン化銀乳剤層がメルカプト基を有する含窒素ヘテロ環化合物と、一般式1で表される化合物もしくはその誘導体、あるいはメルカプト基を有しない含窒素複素化合物とを含有する導電性材料前駆体は、抵抗率の未加温/加温値が16以下であり、比較例に比べ前記値が小さく導電性材料前駆体を長期間保存しても導電性が低下することのない、導電性に優れた導電性材料を提供することができる導電性材料前駆体であるといえる。中でも、メルカプト基を有しない含窒素縮合環化合物を含有する場合がより効果的であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該ハロゲン化銀乳剤層がメルカプト基を有する含窒素複素環化合物と、下記一般式1で表される化合物もしくはその誘導体、あるいはメルカプト基を有しない含窒素複素環化合物とを含有することを特徴とする導電性材料前駆体。
【化1】

(式中Qは5または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、また、この環は炭素芳香環または複素芳香環と縮合していてもよい。)
【請求項2】
前記メルカプト基を有しない含窒素複素環化合物が、メルカプト基を有しない含窒素縮合環化合物である請求項1記載の導電性材料前駆体。
【請求項3】
請求項1記載の導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料。