説明

導電性樹脂ペースト

【構成】 (A)平均粒径が20〜50μmで、粒度分布が平均粒径の±5μmで、かつアスペクト比0.7〜1.0である球形有機高分子フィラー、(B)最大粒径が該球形有機高分子フィラーの平均粒径より小さい銀粉、(C)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤を必須成分とし、その重量配合比が(A)/(B)+(C)+(D)=0.3/100〜2/100で、かつ(B)/(B)+(C)+(D)=65/100〜85/100である導電性樹脂ペースト。
【効果】 ペーストの塗布厚みを一定にすることが可能であり、半導体素子への応力を緩和し接着強度と導電性に優れ、極めて信頼性の高い半導体製品または電子部品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、IC、LSI等の半導体素子を絶縁基板や金属フレーム等に接着する導電性樹脂ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来半導体素子を樹脂ペーストで絶縁基板や金属フレームに接着する場合は、ディスペンサーやスタンピングで一定量を塗布し、その上に半導体素子を載せ一定荷重を掛けスクライブした後硬化させていた。しかし、この方法であると塗布厚みが一定せず、半導体素子の面積が大きく、かつ塗布厚みが薄い場合は、半導体素子と基板の熱膨張率が異なることにより半導体素子の歪みが大きくなり、逆に半導体素子の面積が小さく、かつ塗布厚みが厚い場合は、充分な接着強度が得られないという問題があった。そこで、ペースト厚みを一定にするため樹脂ペースト中にスペーサーを添加する技術が提案され、特開昭60−189229号公報、特開平2−173073号公報、特開平4−152642号公報で開示されている。しかし、これらのスペーサーの粒径は100〜120μm(特開平2−173073号公報)や50〜300μm(特開平4−152642号公報)と大きいものであったり、用いるスペーサーの粒径が20〜40μmでもシリカやガラスビーズ等の無機フィラーに関するものである。スペーサーの粒径が大きくなるとペースト層が厚くなり硬化時半導体素子の歪みは小さくなるが、接着強度が弱くなるという問題があった。又、スペーサーとしてシリカなどの無機フィラーを使用すると、硬化時無機フィラーが剛直なためペーストが硬化収縮した場合に、半導体素子や基板との界面で剥離し導電性が低下したり、温度サイクル試験を行った場合ペースト硬化物との熱膨張率が一致せず樹脂との界面で剥離し、その結果信頼性が低下するという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの問題を解決するため種々の検討の結果なされたもので、その目的とするところは半導体素子との導電性や信頼性を低下させることなく、塗布厚みが一定となる導電性樹脂ペーストを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(A)平均粒径が20〜50μmで、その粒度分布が平均粒径の±5μmで、かつアスペクト比0.7〜1.0である球形有機高分子フィラー、(B)最大粒径が該球形有機高分子フィラーの平均粒径より小さい銀粉、(C)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤を必須成分とし、その重量配合比が(A)/(B)+(C)+(D)=0.3/100〜2/100で 、かつ(B)/(B)+(C)+(D)=65/100〜85/100である導電性樹脂ペーストである。
【0005】本発明に用いる球形有機高分子フィラーは、平均粒径が20〜50μmで、粒度分布が平均粒径の±5μmで、かつアスペクト比0.7〜1.0ならば、高分子の種類について特に限定はされない。これらの例としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート等の各種アクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジビニルベンゼン、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリメチルペンテン、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリアセタール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂等があり、これらを適宜変性しても良く、又単独でも混合して用いてもよい。これらの中で熱硬化性樹脂を用いる場合は、半導体素子を搭載する際に、約100gの荷重をかけた場合に、該樹脂の直径が20%以下の変形ならば、どのような硬化度のものでも支障はない。更に、導電性をよくするため球形有機高分子フィラーの表面をAg、Cu、Au、Pt、Ni、Al、Sn、Zn等の導電性金属やその酸化物、合金等で被覆してもよい。表面を被覆された球形有機高分子フィラーの平均粒径、粒度分布、アスペクト比は当然上記の範囲内に入るものである。
【0006】球形有機高分子フィラーの平均粒径は20〜50μmで、粒度分布は平均粒径の±5μmである。平均粒径が20μm未満であると硬化後の半導体素子にかかる歪みを吸収するのに充分なペースト厚みが確保できず、50μmを越えると接着強度が低下し好ましくない。又、その粒度分布が平均粒径の±5μmから外れると、ペーストの厚みにバラツキが発生し、目的とするペースト厚みが得られなかったり半導体素子の傾きが発生し好ましくない。更に、有機高分子フィラーの形状は球形でアスペクト比が0.7〜1.0であり、表面に突起や凹凸があっても上記の条件を満たしていればよい。これよりアスペクト比が小さいとペースト厚みが一定にならないため好ましくない。球形有機高分子フィラーの配合割合は、銀粉とエポキシ樹脂の合計100重量部に対して0.3〜2重量部とする必要がある。配合量が0.3重量部未満だとペースト厚みを調整できず、2重量部を越えると接着強度の低下、ディスペンス時のニードル詰まり、ペースト粘度の上昇といった弊害を生じる。
【0007】本発明に用いる銀粉の最大粒径は、スペーサーとなる球形有機高分子フィラーの平均粒径より小さいこと必要である。スペーサーの平均粒径より大きな粒径の銀粉を含有していると、ペースト厚みが厚くなったり、半導体素子の傾きが発生したり、ペースト塗布時にディスペンサーのニードル詰まりが発生するため好ましくない。また、銀粉の形状はフレーク状、樹枝状、球状等が用いられる。これらは、ペーストに必要とされる粘度によって異なるが、通常平均粒径が2〜10μmのものが用いられる。必要により形状や粒径の異なる2種以上のものを適宜混合して用いてもよい。銀粉の配合割合は、銀粉とエポキシ樹脂の合計100重量部中に65〜85重量部含有することが必要である。銀粉の量が65重量部未満だと硬化物の電気導電性が低下し、85重量部を越えるとペーストの粘度が高くなり過ぎ、塗布作業性が悪化し実用的でない。
【0008】本発明に用いるエポキシ樹脂は特に限定されないが、エポキシ樹脂は常温で液状のものか固形でも希釈剤に溶解し液状にしたものが好ましい。これは常温で液状のものでないと樹脂ペーストの作業性の調整のため多量の溶剤を必要とするためである。多量の溶剤は硬化時のボイド発生原因となり、接着強度、導電性、熱伝導率を低下させてしまうので好ましくない。本発明に用いるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック類等とエピクロルヒドリンとの反応で得られるポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ、ジグリシジルヒダントイン等の複素環式エポキシ、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、アリサクリックジエポキシ−アジペイトのような脂環式エポキシ、更にはn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテルといった通常のエポキシ樹脂の希釈剤として用いられるものがある。これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0009】本発明に使用するエポキシ樹脂の硬化剤としては、ペーストのシェルフライフを損なわないものであれば、特に限定されない。例えば、ヘキサヒドロフタール酸無水物、メチルヒドロフタール酸無水物、ナジック酸無水物等の酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂等のポリフェノール類、及びジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イミダゾール、ジシアンジアミド等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0010】また、必要により触媒を添加しても良い。触媒の例としてはトリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン等の有機フォスフィン類、これらの有機ボレート塩、1,8−ジアザビシクロウンデセン等のジアザ化合物等が挙げられる。更に可撓性付与剤、消泡剤、カップリング剤等の添加剤を用いても差し支えない。本発明の製造方法は、銀粉、エポキシ樹脂、硬化剤を予備混合した後、三本ロールを用いて混練し、球状有機高分子フィラーを添加撹拌後、真空下脱泡し導電性樹脂ペーストを得ることができる。
【0011】以下、本発明を実施例で具体的に説明する。なお組成物の配合割合は重量部である。
実施例1〜10エポキシ樹脂として、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルエーテルビスフェノールA(エポキシ当量180)70重量部、クレジルグリシジルエーテル(エポキシ当量185)30重量部、硬化剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール5重量部の割合で配合したもの(以下樹脂成分という)と、表1に示す銀粉を、表1に示す割合で配合し、三本ロールで混練後、表1に示す球形有機高分子フィラー(以下スペーサーという)を添加撹拌し真空チャンバーにて、2mmHgで30分間脱泡して導電性樹脂ペーストを得た。この得られた導電性樹脂ペーストを以下の方法で各種性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0012】評価方法粘度:(株)東京計器社製のE型回転粘度計(3度コーン)を用い、25℃、2.5rmpにおける粘度を測定した。
体積抵抗率:スライドガラス上にスペーサー添加前のペーストを巾4mm、厚さ30μmに塗布し、120℃オーブン中で60分硬化した後、硬化物の体積抵抗率を測定した。
接着強度:2×2mmのシリコンチップを導電性樹脂ペーストを用いて銅フレーム上にマウントし、120℃のオーブン中で60分硬化した。硬化後プッシュプルゲージを用い300℃での熱時接着強度を測定した。
チップ反り:6×15mmのシリコンチップを導電性樹脂ペーストを用いて銅フレーム上にマウントし、120℃オーブン中で60分硬化した。硬化後、接触式表面粗さ計を用いチップの反りを測定した。
T/C(温度サイクル試験)後接続抵抗変化:接続抵抗評価用の半導体素子を基板上にマウントし硬化後、T/C試験機により−40℃/30分後85℃/30分処理を行い、再び−40℃で処理する工程を1000サイクル行う。この前後での接続抵抗を測定した。
【0013】比較例1〜10表2に示す配合割合で実施例と全く同様にして導電性樹脂ペーストを得た。評価結果を表2に示す。
【0014】
【表1】


【0015】
【表2】


【0016】
【発明の効果】本発明は、ペーストの塗布厚みを一定にすることが可能になり、半導体素子への応力を緩和し接着強度と導電性に優れ、極めて信頼性の高い半導体製品または電子部品を得ることのできる導電性樹脂ペーストである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)平均粒径が20〜50μmで、その粒度分布が平均粒径の±5μmで、かつアスペクト比0.7〜1.0である球形有機高分子フィラー、(B)最大粒径が該球形有機高分子フィラーの平均粒径より小さい銀粉、(C)エポキシ樹脂及び(D)硬化剤を必須成分とし、その重量配合比が(A)/(B)+(C)+(D)=0.3/100〜2/100で、かつ(B)/(B)+(C)+(D)=65/100〜85/100であることを特徴とする導電性樹脂ペースト。