説明

導電性混繊糸

【課題】 導電性複合繊維の複合形態を最適化することにより、繊維表面での導電性能が高く、かつ製糸工程や高次工程での工程通過性に優れた導電性繊維を提供する。
【解決手段】 導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維からなる導電性混繊糸において、導電性複合繊維が導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有する熱可塑性樹脂Aと、繊維形成性ポリエステル系熱可塑性樹脂Bを接合してなり、その導電性複合繊維の単繊維横断面において、樹脂Aは少なくとも一点以上繊維表面に露出しており、樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線DEの少なくとも一部が樹脂Aに向かって凸であり、その接合面曲線の最小曲線半径rと単繊維半径Rの比、r/Rが1.0以下であり、繊維横断面外周における樹脂Aが占める周長が全周長の2〜40%である導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維からなる導電性混繊糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性混繊糸に関するものであり、詳しくは布帛にした際の布帛表面での導電性能が高く、製織工程での工程通過性および、実使用時の耐久性に優れた導電性混繊糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系熱可塑性樹脂からなる合成繊維は広く衣料用のみならず、産業用分野にまで利用されている。しかしながら、これらの合成繊維は電気抵抗が著しく高く、静電気を帯びやすいという致命的な欠点を有し、衣類においては脱着時の不快感、裾のまとわりつき、汚れの付着等の問題があり、特に作業衣として用いる場合は可燃ガスへの引火の危険性や、精密機器類の破壊の問題がある。これら静電気による欠点を排除すべく、これまで種々の方法が提案されている。
【0003】
従来から除電性能の優れた繊維としての導電性繊維については、種々の提案がなされており、例えば、導電性カーボンブラックを均一分散させたポリマー単体より導電性繊維をえる方法が提案されているが、この導電性繊維はカーボンブラックを多量に含有するために繊維の製造が難しく、且つ繊維物性が著しく低下するという問題があった。これらの問題を解決すべく、芯鞘複合タイプ複合繊維の芯成分ポリマーに導電性カーボンブラックを含有させ、それを通常の繊維形成性ポリマーからなる鞘で包み込む方法が提案されている(特許文献1参照)。この場合、繊維性能を保つため芯部を非導電性の鞘が厚く包囲しているため、導電繊維表面での導電性は劣るものとなり、結果として該導電繊維を使用した混繊糸、またはその混繊糸を使用した織編物において十分な除電性能が得られない。
【0004】
上記の問題を解決するため、カーボンブラックを含有した導電層成分が繊維表面の一部に露出した導電性複合繊維が数々提案されている(特許文献2参照)。これらの導電性繊維は繊維表面に導電層が露出しているため、導電繊維表面における導電性能が高く、混繊糸とした場合に高い除電性能を発揮するが、製糸、混繊、あるいはその後の製織工程における毛羽、ガイド類との擦過による導電層成分の剥離等、種々の問題がある。
【0005】
例えば特許文献2に記載されている導電性繊維は、導電成分を繊維表面の2〜20%の割合で露出せしめ、かつ繊維横断面における導電成分の繊維表面露出長に対し、非導電成分との接合距離が3倍以上とすることにより、優れた導電性能と、耐薬品性、耐久性が得られるとある。しかしながら、例図に示された如き繊維断面形態では実質繊維内に含有せしめる導電成分量が多くなるため、導電繊維が脆くなり、製糸工程や混繊工程、あるいはその後の製織工程での毛羽・糸切れ、実使用時における破断とそれに伴う導電性能の低下を引き起こすという問題がある。
【特許文献1】特開昭55−1337号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2003−278031号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決し、布帛にした際の布帛表面での導電性能が高く、かつ製織工程での工程通過性および、実使用時の耐久性に優れた導電性混繊糸を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維からなる導電性混繊糸において、導電性複合繊維が導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂Aと、繊維形成性ポリエステル系熱可塑性樹脂Bを接合してなり、その導電性複合繊維の単繊維横断面において、樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線DEの少なくとも一部が樹脂Aに向かって凸であり、その接合面曲線の最小曲線半径rと単繊維半径Rの比、r/Rが1.0以下であり、繊維横断面外周における樹脂Aが占める周長が全周長の2〜40%である導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維からなる導電性混繊糸。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、布帛にした際の布帛表面での導電性能が高く、かつ製織工程での工程通過性および、実使用時の耐久性に優れた導電性混繊糸得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維における導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂Aとしては、カーボンブラックの分散性や熱可塑性樹脂Bとの接合性等の面から、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、およびそれらの共重合体等のポリエステル系熱可塑性樹脂、あるいは、ナイロン6やナイロン66、ナイロン10、ナイロン12、およびそれらの共重合体等のポリアミド系熱可塑性樹脂が好適に用いることができる。中でも、ナイロン6、ポリブチレンテレフタレートを主たる成分とする樹脂類が好ましい。また、熱可塑性樹脂Aには、導電性能を損なわない範囲内であれば耐熱剤や流動化剤等を添加してもよい。
【0011】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維における導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂Aにおける導電性カーボンブラックの含有量は15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%であることが重要である。導電性カーボンブラックの含有量が15重量%より少ない場合には十分な除電性能は発揮されない。一方、50重量%を超える場合では、導電性複合繊維は著しく脆くなり、導電性混繊糸とする工程、あるいは製織工程等において毛羽を誘発し易くなる。
【0012】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維に使用する導電性カーボンブラックとしては、10−3〜10Ωcmの固有体積抵抗を有するものが良く、具体的にはファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが好適に用いることが出来る。
【0013】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維における繊維形成性ポリエステル系熱可塑性樹脂Bはポリエステル系樹脂である。導電性繊維の主たる用途の1つに防塵衣が挙げられるが、導電性繊維を構成する主たる樹脂成分が、例えばN6に代表されるポリアミドである場合、雰囲気湿度の変化により繊維径が変化するため、布帛目開きの大きさが変化し、濾過性能が劣るものとなるため、ほこりが通過しやすく、防塵衣としての用途に用いることのできないものとなる。
【0014】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維における繊維形成性ポリエステル系熱可塑性樹脂Bとしてはポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンフタレート等が挙げられるが、中でも前者のテレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素原子数2〜6のアルキレングリコール成分、即ちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、及びヘキサメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のグリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルが好適に用いることができる。かかるポリエステルは任意の方法で製造されるもので、例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコールを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、又はテレフタル酸とエチレンオキサイドを反応させるかして、テレフタル酸のグリコールエステル及び/またはその低重合体を生成させ、ついでこの生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで縮重合反応させることで容易に製造される。なお、このポリエステルはそのテレフタル酸成分の一部を他の二官能基カルボン酸成分で置き換えてもよく、また、上記グリコール成分の一部を他のグリコール成分と置き換えてもよい。この他、本発明の繊維形成性ポリエステル系熱可塑性樹脂Bは通常のポリエステルと同様に酸化チタン等の顔料のほか、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤が添加されていても勿論よい。
【0015】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維は繊維表面に樹脂Aが少なくとも一点以上露出している。樹脂Aが導電性複合繊維表面に露出していない場合、その繊維表面は絶縁体となるため、導電性複合繊維自体の繊維表面での導電性は不十分なものなり、結果的に導電性混繊糸やそれを用いた織編物の表面での導電性能が不十分なものとなる。また、本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維横断面において樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線DEが樹脂Aに向かって凸である。導電成分である樹脂Aを繊維表面に露出させた導電性複合繊維においては、繊維横断面における導電成分が繊維表面に露出している長さに対し、導電成分と非導電成分の接合距離を大きくすることが、成分同士の剥離を抑制するために有効であるが、例えば図2の如く、導電性繊維横断面における樹脂Aの形状が繊維外側に向かって凸ではなく、繊維内側に広がっている球状形態の場合、本発明のように接合面曲線DEが樹脂A向かって凸のものと同一露出距離・同一接合距離として比較すると、成分間の剥離は抑制されるものの、実質繊維内に含有させる導電成分量が多くなるため、導電性複合繊維が脆くなり、導電性混繊糸を得る工程、あるいは製織工程での毛羽を誘発させるばかりか、実使用時の破断により導電性能低下を引き起こす恐れがある。導電性複合繊維横断面における樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線が導電樹脂A内側に向かって凸になっている接合面曲線においては、その接合面曲線の最小曲線半径rと単繊維半径Rとの比r/Rが1.0以下である。r/Rが1.0を超える値となると、接合面曲線が直線に近づき、接合面距離が小さくなるため、導電性複合繊維が擦過された場合、導電成分の樹脂Aが剥離し易くなるという問題がある。さらに、r/Rが0.6以下であれば、擦過に対する耐久性はより好ましいものとなる。
【0016】
本発明の導電性混繊糸を構成する、導電性複合繊維横断面周長における樹脂Aの占める長さは、導電性複合繊維横断面全周長の2〜40%である。樹脂Aの占める長さが全周長の2%未満の場合、繊維表面における電気抵抗値が増大し、導電性複合繊維の表面での導電性能が劣るものとなり、結果的に導電性混繊糸の導電性能が不十分となる。また、樹脂Aの占める長さが全周長の40%を超える場合は、導電性複合繊維が擦過された場合、樹脂Aが剥離し易くなるという問題がある。より好ましくは5〜30%の範囲である。
【0017】
本発明の導電性混繊糸を構成する導電性複合繊維横の単繊維繊度は2〜50dtexであることが好ましい。2dtex以上であれば、導電性混繊糸を得る工程や、製織工程、導電性混繊糸を織編物とし実使用する際に、導電性複合繊維に毛羽が発生し難くなるため、導電性維持の観点から、好ましいものとなり、50dtex以下であれば、導電性混繊糸を織編物とした際、風合いが柔らかく、混繊糸の交絡性が優れるものとなる。より好ましくは、2〜30dtexである。
【0018】
本発明の導電性混繊糸を構成する導電性複合繊維を製造するには、従来公知のポリエステル系複合繊維の溶融紡糸方法を適用すればよい。例えば、前記した樹脂A、樹脂Bをそれぞれ溶融押出機に供給し、得られる導電性複合繊維の断面が前記の断面形状となるように設計された従来公知の複合口金より紡糸し、200〜4000m/分程度の速度で引き取った後、加熱延伸を施す方法であれば、良好な製糸操業性のもと、導電性能優れる導電性複合繊維を得ることが出来る。
【0019】
本発明の導電性混繊糸を構成する非導電性ポリエスル系繊維は、本発明の導電性混繊糸を構成する導電性複合繊維同様に、ポリエステル系繊維である。前述したとおり、導電性混繊糸の主たる用途の一つである防塵衣では、埃の通過を防ぐ目的から、導電性混繊糸の寸法安定性が求められるため、導電性混繊糸を構成する導電性複合繊維、非導電性ポリエステル系繊維、共にポリエステル系である。本発明の導電性混繊糸を構成する非導電性ポリエスル系繊維の単繊維繊度は0.5〜4dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、非導電性ポリエステル系繊維に毛羽が発生し難くなり、4dtex以下であれば、風合いがよく、導電性複合繊維との交絡性に優れた導電性混繊糸が得られる。より好ましくは1〜3dtexである。
【0020】
本発明の導電性混繊糸における導電性複合繊維の混率は10〜80%であることが好ましい。10%以上であれば、より導電性に優れた導電性混繊糸が得られ、80%以下であれば、製織工程、や導電性混繊糸を織編物とし、実使用した際の耐久性が優れるものとなる。より好ましくは20〜60%である。また、本発明の導電性混繊糸の横断面において、横断面の外接円周と、外接円周から、外接円の中心に向かって外接円半径の0.1倍までの区間に、少なくとも一部が含まれた導電性複合繊維の単糸数と、導電性複合繊維の単糸繊維繊度の積が、導電性混繊糸全体の繊度の2〜80%であることが好ましい。この値は、導電性混繊糸表面に存在する導電性複合繊維の量を示すもので、2%以上であれば、導電性混繊糸表面での導電性能が優れるものとなり、80%以下であれば、製織工程や、導電性混繊糸を織編物とし、実使用した際の耐久性が優れるものとなる。前記記載の導電性混繊糸における導電性複合繊維の混率10〜80%の範囲内であれば従来公知の混繊方法によって、導電性混繊糸の横断面において、横断面の外接円周と、外接円周から、外接円の中心に向かって外接円半径の0.1倍までの区間に、少なくとも一部が含まれた導電性複合繊維の単糸数と、導電性複合繊維の単糸繊維繊度の積が、導電性混繊糸全体の繊度の2〜80%が配された形態の導電性混繊糸が得られ易い。特に、導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維を合糸した後、100〜1000T/m程度の撚りを加える混繊方法や、導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維を気体乱流処理する混繊方法であれば、容易に導電性能に優れた導電性混繊糸を得ることが出来る。いずれの方法で混繊加工する場合でも、導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維を給糸する際には、導電性複合繊維の繊度当り給糸張力が非導電性ポリエステル系繊維の繊度当り給糸張力を大幅に上回らないようにすると、導電性複合繊維が非導電性ポリエステル系繊維より弛みながら給糸されるため、導電性混繊糸外周に導電性複合繊維が配され易くなる。逆に、導電性混繊糸外周に配される導電性複合繊維の量を減らしたければ、導電性複合繊維の繊度当り給糸張力を非導電性ポリエステル系繊維の給糸張力より大幅に上回らないように調整すればよい。
【実施例】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。尚、実施例中の評価は以下の評価方法に従った。
1.繊度、単糸繊維繊度(dtex)
浅野機械製作(株)製検尺機を用い、フィラメントを100mサンプリングして重量を測定し、10000mに換算した重量値を繊度とした。単糸繊維繊度を求める場合は、前記繊度を単糸数で割ることによって求めた。
2.比抵抗値
導電性混繊糸を束ねて約2000デニールとし、弱アニオン系洗剤を用い、十分に精錬して油剤などを除いた後、20℃、40%RHの状態で24時間放置し、同温度、湿度下にて、混繊糸両端を銅箔にて固定し、銅箔間に500Vの電圧を付加した際に流れた電流値を測定することによって導電性混繊糸の比抵抗ρ[Ωcm]を求めた。導電糸混繊糸の比抵抗値が10以下を合格(○)とし、10を超える場合を不合格(×)とした。
3.混繊糸表面における導電性複合繊維混率
導電性混繊糸に2g/dtexの荷重をかけたまま、スリーボンド社製紫外線感光性樹脂3055に浸漬し、セン特殊光源社製高圧水銀ランプHL100Gにて10分間紫外線を照射し、紫外線感光性樹脂を固化せしめた。紫外線感光性樹脂により固められたサンプルを繊維横断面方向にミクロトームで切断し、断面観察用サンプルを得た。得られた断面観察用サンプルは光学顕微鏡にて断面形態を撮影し、下記式により混繊糸表面における導電性複合繊維混率Xを算出した。ここで、混繊糸外周に配された導電性複合繊維の単糸数Nは、横断面の外接円周と、外接円周から、外接円の中心に向かって半径の0.1倍までの区間に、少なくとも単糸の一部が配された導電性複合繊維の単糸数であり、糸長100m毎に10サンプル測定した平均値とした。
【0022】
X=100×N×導電性複合繊維単糸繊維繊度÷混繊糸繊度
4.混繊工程通過性
後述する実施例の方法で導電性混繊糸を得るに当たり、混繊糸100kg当りに発生した糸切れ発生数が5回未満を○、5〜10回を△、10回を超える場合×とし、○および△を合格とした。
5.製織性
導電性混繊糸をタテ・ヨコ共に84dtex72フィラメントのポリエステル繊維に対して80本に1本の間隔でタテ30本/cm、ヨコ20本/cmのツイル布帛をとする際に、製織長60m当りに発生した糸切れ、毛羽の発生数が5回未満を○、5〜10回を△、10回を超える場合を×とし、○および△を合格とした。
6.総合評価
導電性混繊糸の比抵抗値、混繊工程通過性、製織性の全てが合格の場合合格(○)とし、いずれかが×の場合不合格(×)とした。
【0023】
実施例1
固有粘度0.64のPETチップ(樹脂B)と導電性カーボンブラックが35重量%となるよう常法にて混錬したN6チップ(樹脂A)をそれぞれプレッシャメルターにて溶融押出しし、樹脂Aの分割数が2、繊維横断面外周における樹脂Aの占有率が25%、繊維横断面における導電樹脂Aと非導電樹脂Bの接合面が内側に向かって凸であり、r/Rが0.5となる複合紡糸口金より紡糸した。紡糸した糸条は空冷し、紡糸油剤を付与した後、1500m/分の速度で巻き取り、導電性複合繊維の未延伸糸を得た。得られた未延伸糸は表面温度90℃のホットローラーにて加熱した後、2.7倍の延伸倍率を付与しつつ、表面温度180℃のホットプレート上を通過させた後、ボビン状に巻き取り、28dtex3フィラメントの導電性複合繊維を得た。
【0024】
得られた導電性複合繊維2糸条と54dtex24フィラメントのポリエチレンテレフタレートからなる繊維をダウンツイスターにて、300T/mの撚りをかけながら混繊した。得られた混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、十分な導電性を有していた。得られた導電性混繊糸はタテ・ヨコ共に84dtex72フィラメントのポリエステル繊維に対して80本に1本の間隔でウォータージェットルーム製織機を用い、タテ30本/cm、ヨコ20本/cmのツイル布帛をとした。混繊工程通過性としては、糸切れ発生数が1回、製織性としては糸切れ発生数3回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0025】
実施例2
導電性複合繊維を5糸条使用し、導電性複合繊維と混繊する非導電性ポリエステル系繊維を33dtex12フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維とした以外、実施例1と同様の方法で、導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。導電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであった。混繊工程での糸切れ発生数は1回、製織工程での糸切れ発生数は7回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0026】
実施例3
導電性複合繊維を1糸条使用し、導電性複合繊維と混繊する非導電性ポリエステル系繊維を110dtex48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維3糸条とした以外実施例1と同様の方法で、導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。導電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであった。混繊工程での糸切れ発生数は0回、製織工程での糸切れ発生数は2回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0027】
実施例4
18dtex10フィラメントの導電性複合繊維を用いた以外、実施例1と同様の方法で導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。導電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであった。混繊工程での糸切れ発生数は7回、製織工程での糸切れ発生数は7回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0028】
実施例5
導電性複合繊維と混繊する非導電性ポリエステル系繊維を56dtex180フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維とした以外実施例1と同様の方法で、導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。導電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであった。混繊工程での糸切れ発生数は1回、製織工程での糸切れ発生数は6回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0029】
実施例6
樹脂Aとして導電性カーボンブラックを25重量%となるように混連した、固有粘度0.72のポリブチレンテレフタレートを使用した以外、実施例1と同様の方法で導電性混繊糸を得た。導電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであった。混繊工程通過性としては、糸切れ発生数が2回、製織性としては糸切れ発生数3回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0030】
比較例1
図2の如く、導電性複合繊維の繊維横断面おける樹脂Aと樹脂Bの接合曲線が、樹脂Bに向かって凸となる複合紡糸口金を用い、導電性複合繊維におけるAの配合量を43%とした以外、実施例1と同様の方法で導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであったが、混繊工程での糸切れ発生数は16回、製織工程での糸切れ発生数は21回であり、いずれも生産可能なレベルになかった。
【0031】
比較例2
導電性複合繊維横断面における樹脂Aと樹脂Bの接合曲線の最小曲線半径と単糸繊維半径Rの比、r/Rが1.4となるような複合紡糸口金を使用した以外、実施例1と同様の方法で導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なであり、混繊工程での糸切れ発生数は8回と生産可能なレベルにあったが、製織工程での糸切れ発生数は14回であり、生産可能なレベルになかった。
【0032】
比較例3
導電性複合繊維横断面外周における樹脂Aの占有割合が1%となる複合紡糸口金を使用した以外、実施例1と同様の方法で導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は不十分なものとなった。混繊工程での糸切れ発生数は0回、製織工程での糸切れ発生数は1回であり、いずれも生産可能なレベルにあった。
【0033】
比較例4
導電性複合繊維横断面外周における樹脂Aの占有割合が60%となる複合紡糸口金を使用した以外、実施例1と同様の方法で導電性混繊糸および、それからなる布帛を得た。電性混繊糸の比抵抗値は10Ωcmであり、導電性能は十分なものであったが、混繊工程、製織工程いずれにおいても糸切れ、毛羽多発し、生産不可能であった。
【0034】
以上の実施例を表1に、比較例を表2にそれぞれまとめた。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態を示す、導電性複合繊維の横断面模式図
【図2】比較例1で得られた導電性複合繊維の単繊維横断面模式図
【図3】本発明で用いる導電性複合繊維の単繊維横断面の一例
【図4】本発明で用いる導電性複合繊維の単繊維横断面の一例
【図5】本発明で用いる導電性複合繊維の単繊維横断面の一例
【符号の説明】
【0038】
1:樹脂A
2:樹脂B
D:導電性複合繊維横断面における樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線と繊維表面の接点
E:導電性複合繊維横断面における樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線の頂点
r:導電性複合繊維横断面における樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線の最小曲線半径
R:導電性複合繊維の単繊維直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性複合繊維と非導電性ポリエステル系繊維からなる導電性混繊糸において、導電性複合繊維が導電性カーボンブラックを15〜50重量%含有する熱可塑性樹脂Aと、繊維形成性ポリエステル系熱可塑性樹脂Bを接合してなり、その導電性複合繊維の単繊維横断面において、樹脂Aは少なくとも一点以上繊維表面に露出しており、樹脂Aと樹脂Bの接合面曲線DEの少なくとも一部が樹脂Aに向かって凸であり、その接合面曲線の最小曲線半径rと単繊維半径Rの比、r/Rが1.0以下であり、繊維横断面外周における樹脂Aが占める周長が全周長の2〜40%であることを特徴とする導電性混繊糸。
【請求項2】
導電性混繊糸を構成する導電性複合繊維の混率が10〜80重量%であり、導電性混繊糸の横断面において、横断面の外接円周と、外接円周から、外接円の中心に向かって外接円半径の0.1倍までの区間に、少なくとも一部が含まれている導電性複合繊維の単糸数と、導電性複合繊維の単糸繊維繊度の積が、導電性混繊糸の繊度の2〜80%であることを特徴とする請求項1記載の導電性混繊糸。
【請求項3】
導電性複合繊維の単繊維繊度が2〜50dtexであり、非導電性ポリエステル系繊維単繊維繊度が0.5〜4dtexであることを特徴とする請求項1または2記載の導電性混繊糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−119975(P2007−119975A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316257(P2005−316257)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】