説明

導電性複合繊維及びそれからなる接触帯電ブラシ

【課題】電子写真装置の感光体を帯電させる帯電ブラシに使用される導電性繊維において、より良好な画質を得るために、感光体をより均一に帯電させることのできる帯電ブラシに使用されるような導電性繊維を得る。
【解決手段】被帯電体に接触配置され、電圧を印加することにより該被帯電体に接触するブラシ接触子に用いられる導電性複合繊維であって、該複合繊維が導電性粒子を含有する熱可塑性重合体からなる導電層と該導電層の熱可塑性重合体と相溶性のある熱可塑性重合体からなる非導電層が接合されてなり、導電層が連続した非導電層により複数の領域に分離され、各導電層の繊度が1.5dtex以下となるようにし、かつ全ての導電層の少なくとも一部が繊維表面に露出するように配されることを特徴とする導電性複合繊維及びその繊維からなる電子写真装置の接触帯電ブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置(コピー、プリンタ、ファクシミリ)に設置される接触帯電ブラシ、クリーニングブラシ、除電ブラシに適する導電性複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真装置(コピー、プリンタ、ファクシミリ)では、光導電性の感光体表面を一様に帯電し、露光によって静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを静電的に付着させて現像し、得られたトナー像を記録用紙に転写、定着させて像を可視化させる。転写後は感光体上に未転写のトナーが残存しているため、クリーニング装置により、清掃、除去を行う。これらの操作を繰り返し行い、連続的に画像を形成している。
【0003】
従来、感光体などの被帯電体を帯電させる装置として、コロナ帯電装置及び接触帯電装置が採用されている。コロナ放電装置は金属ワイヤーとシールド電極からなっているが、高価な数千ボルト(5kV〜8kV程度)の高電圧電源を必要とし、また、コロナ放電時に人体に有害なオゾンが発生するなどの問題点がある。それらのことから、最近では導電性ゴムローラーや導電性繊維を植毛したブラシ或いは導電性のブレードなどの導電体に比較的低電圧(1kV〜2kV程度)を印可し、該導電体を感光体に接触させて直接帯電させる接触帯電方式の帯電装置が提案され、実用化されるようになってきた。接触帯電ブラシは米国特許第4371252号明細書及び特開平6−274009号公報には、導電性繊維からなる帯電ブラシが開示されている。
【0004】
コロナ放電装置と比べて、印加電圧が低電圧で済むことが特徴である接触帯電方式であるが、従来の帯電ブラシの場合、使用される導電性繊維の繊維径の大きさから感光体表面を均一に帯電させることができず、帯電ブラシ使用の画像形成装置で得られる画像の画質はムラ等が生じる場合がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、被帯電体を均一に帯電することができる帯電ブラシ及び帯電ブラシを構成する機械的物性に優れた導電性複合繊維を提供することにある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4371252号
【特許文献2】特開平6−274009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
更に詳しく、本発明の課題を見る。電子写真装置の感光体を帯電させるための帯電ブラシはある一定の導電性を持つ導電性繊維で構成されることは必要不可欠である。さらに良好な画像を得るためには感光体表面を均一に帯電させることが必要で、均一に帯電させるためには、一般に、より繊度の低い導電性繊維が求められている。しかしながら、感光体を十分に帯電させることのできる導電性を持つ程度の導電性粒子の含有率を有する導電性繊維及び導電性複合繊維の繊度を低くすることは繊維形成の紡糸工程、延撚工程において困難であり、改善が求められてきた。さらに、導電層のみで形成される繊維は強度、伸度が低く、さらに繊度を低くすると、ブラシ化する際のパイル織が困難であること、また、ブラシにした場合に毛倒れ、あるいはへたりが生じ、ブラシとしての耐久性に問題が生じる。
【0008】
したがって、本発明の課題は、電子写真装置の感光体を帯電させる帯電ブラシに使用される導電性繊維において、より良好な画質を得るために、感光体をより均一に帯電させることのできる帯電ブラシに使用されるような導電性複合繊維の発明にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、被帯電体に接触配置され、電圧を印加することにより該被帯電体に接触するブラシ接触子に用いられる導電性複合繊維であって、該複合繊維が導電性粒子を含有する熱可塑性重合体からなる導電層と該導電層の熱可塑性重合体と相溶性のある熱可塑性重合体からなる非導電層が接合されてなり、導電層が連続した非導電層により複数の領域に分離され、各導電層の繊度が1.5dtex以下となるようにし、かつ全ての導電層の少なくとも一部が繊維表面に露出するように配されることを特徴とする導電性複合繊維及びその繊維からなる電子写真装置の接触帯電ブラシである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、繊維形成、ブラシ化におけるパイル織も容易で、かつ、電子写真装置の帯電ブラシとして使用した際にへたり等もなく、感光体表面を均一に帯電させることができ、良好な画質を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の導電性複合繊維の導電層に使用される導電性粒子としては、カーボンブラック、導電性酸化チタンが知られている。カーボンブラックにはファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが知られているが、繊維形成時の帯電ブラシ用途での導電性能を満たすならばこれに限らない。導電性皮膜を有する酸化チタンの導電性皮膜には酸化錫をドーピングしたアンチモンが知られている。
【0012】
導電性粒子を含有する導電層に使用される熱可塑性重合体と非導電層を構成する熱可塑性重合体は相溶性があることが必要である。導電層と非導電層の組み合わせの一例として、導電層、非導電層を形成する重合体がともにポリアミド、もしくは、導電層、非導電層を形成する重合体がともにポリエステルとなる組み合わせがあるが、両ポリマーが相溶性であればこれに限らない。導電層がポリアミド、非導電層がポリエステルでは相溶性がなく、繊維を延伸する際、または、繊維に物理的な負荷をかけた際に導電層が脱落し、感光体を均一に帯電させる機能が低下する。
【0013】
導電層、非導電層に使用されるポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びこれらを主成分とする共重合体が知られているが、これらだけでなく、繊維形成能を持つポリアミドであればよい。導電層、非導電層に使用されるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらを主成分とする共重合体が知られているが、これらだけでなく、繊維形成能を持つポリエステルであればよい。
【0014】
導電性粒子の重量含有率は、帯電ブラシの要求性能により、10wt%〜80wt%であることが必要であり、15〜70%であればより好ましい。10wt%未満であると導電性が発現しにくく、80wt%であると、繊維形成が困難となる。例えば、導電性粒子が30wt%前後含有した導電層部を繊維質量に対し30wt%〜60wt%配することで、比抵抗が1×10Ω・cm程度の導電性を示す導電性繊維を得ることができる。
【0015】
本発明の導電性複合繊維は図1から図3に示した代表例のように、導電性粒子を含有した導電層が非導電層によって複数の領域に分離し、かつ、各導電層の一部が繊維表面に露出し、さらには、導電層:非導電層の断面積比が3:2〜10:1で、該導電性複合繊維の単糸繊度が7.5dtex以下、導電層の繊度が1.5dtex以下となる繊維断面を
持つ。
【0016】
導電性粒子を含有した導電層が繊維断面において非導電層によって複数の領域に分離され、各導電層の繊度が1.5dtex以下となることが必要であり、0.1dtex〜1.0dtexであるとより好ましい。各導電層の繊度が1.5dtexを超えると感光体を均一に帯電させることができない。
【0017】
導電層:非導電層の断面積比は3:2〜10:1であることが必要であり、2:1〜8:1であるとより好ましい。導電層:非導電層の断面積比が3:2よりも非導電層が大きくなると、感光体に接触する導電層が少なくなり、感光体を均一に帯電することができない。導電層:非導電層の断面積比が10:1よりも導電層が大きくなると、繊維形成が困難となる。
【0018】
各導電層の一部が繊維表面に露出していることが必要である。導電層が露出していないと、ブラシの繊維先端が感光体に斜めから接触するために、導電層が感光体に接触することが難しくなり、感光体を十分に帯電させることができない。
【0019】
導電層の比抵抗は帯電ブラシの要求性能により、1×10Ω・cm〜1×1012Ω・cmであることが望ましく、この範囲であれば、この導電性繊維を用いて作製されたブラシを帯電ブラシとして用いた場合、良好な画質を得ることができる。
【0020】
該導電性複合繊維の導電層に使用される樹脂と導電性粒子の混合は二軸混練機などの公知の方法にて混練することができる。得られた導電性樹脂と非導電層に使用される樹脂をそれぞれ溶融し、例えば図1に示す断面形状になるような紡糸口金より吐出する。吐出した導電性複合繊維を冷風にて冷却後、適当な油剤を付与し、公知の巻き取り機にて巻き取り、マルチフィラメントの未延伸糸を得る。巻き取り速度は導電層、非導電層の組み合わせ、比率等により適正なスピードであれば良いが、繊維物性、巻き取り易さ等により、600m/min〜1200m/minが望ましい。得られた未延伸糸を70℃〜120℃の熱をかけながら延伸して、延伸糸を得る。延伸後の繊維全繊度は後の織機の能力、糸密度にもよるが、50dtex〜500dtexが望ましい。得られた導電性複合繊維をパイル織等で例えば12.4kf/cm〜31.0kf/cmの帯電ブラシ容基布とし、該基布の裏面に導電性のバックコート剤を塗布し、金属の芯材に両面テープ等で貼り付けブラシを得る。ブラシ状にした後、起毛処理、シャーリング処理を行い、帯電ブラシを得る。
【0021】
以上のように構成される導電性複合繊維は、電子写真装置の感光体表面を均一に帯電させることが可能で、かつ、繊維形成、ブラシ化のパイル織も容易となり、帯電ブラシとして適する。また、本ブラシは感光体のクリーニングブラシ及び中間転写ブラシ等の電子写真装置に用いられるあらゆるブラシに使用することができる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例において、本発明の詳細を説明する。なお、実施例における比抵抗は導電性繊維全フィラメントを11cm採取してその両端0.5cmに導電性ペーストを塗布しアルミ箔に接着させ、アルミ箔を電極として測定した電気抵抗値より換算した。
【0023】
電気抵抗測定機は、ヒューレットパッカード社製ハイレジスタンスメーター4339Bを使用した。
【0024】
また、紡糸性の評価は未延伸糸採取時の1ボビンの巻き取り時間を1時間とし、10ボビン巻き取りのうち何ボビン糸切れを起こすか(ボビン率)で判断し、ボビン率が80%
以上であれば紡糸性良好とした。
【0025】
ブラシ作製時の毛倒れ、へたりについては目視にて評価した。毛倒れ、へたりがなければ○、あれば×とした。
【0026】
帯電ブラシとしての評価は、一般に感光体を均一に帯電させることができれば画質が良好となるため、下記実施例、及び比較例の方法にて作製したブラシを電子写真装置に組み込み、テスト画像を印刷して、目視にて評価した。評価結果は良好であれば○、不良であれば×とした。
【0027】
[実施例1]
ナイロン12にカーボンブラック(ファーネスブラック)を全重量の27wt%となるように、二軸混練機にて溶融混練し、定法によりチップ化し、導電性複合繊維の導電層として使用する導電性ナイロン12チップを得た。得られた導電性ナイロン12チップと非導電層として使用されるナイロン12チップをそれぞれ270℃にて溶融し、図2に示す繊維断面形状で、導電性粒子を含有する導電層と非導電層の繊維断面積比率が2:1となるように紡糸口金から吐出する。吐出した導電性複合繊維を室温の冷却風にて冷却後、油剤を付与し、700m/minで巻き取り機にて巻き取り、273.0dtex/28fの未延伸糸を得る。得られた未延伸糸を80℃の熱をかけながら延伸し、100℃でセットし、最終的に130.0dtex/28fの延伸糸を得る。得られた導電性複合繊維の比抵抗は3×10Ω・cmであった。得られた導電性複合繊維をパイル長3mm、幅14mmのパイル織として、パイル密度21.7kf/cmのブラシ用基布を得た。該基布に、導電性バックコート剤を塗布し、金属の芯材に両面テープで貼り付け、その後、起毛処理、シャーリング処理を行って、帯電ブラシとした。本帯電ブラシを電子写真装置に組み込み、テスト印刷し、画質を評価した。評価結果を表1の実施例1に示した。
【0028】
[実施例2]
実施例1と同様な方法の混練法により導電性チップを作製した。実施例1における導電性複合繊維の断面形状が図2となるような紡糸口金を使用する代わりに、図3に示す如き形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率を2:1となるように吐出した。吐出後の冷却、巻き取り条件は実施例1と同様とし、546.1dtex/50fの未延伸糸を得た。延伸の条件は実施例1と同様とし、260.0dtex/50fの延伸糸を得た。得られた導電性複合繊維の比抵抗は3×10Ω・cmであった。実施例1と同様の方法にて帯電ブラシを作製し、電子写真装置に組み込み、画質を評価した。評価結果を実施例2に示した。
【0029】
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレートにカーボンブラック(ファーネスブラック)を全重量の26wt%となるように、二軸混練機にて溶融混練し、定法によりチップ化し、導電性複合繊維の導電層として使用する導電性ポリエチレンテレフタレートチップを得た。導電性複合繊維の導電層に使用される導電性ポリエチレンテレフタレートチップと非導電層に使用されるポリエチレンテレフタレートを溶融する温度をそれぞれ290℃としたことと、巻き取り速度を1000m/minとしたこと以外は全て実施例1と同様として、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸は390.1dtex/28fであった。得られた未延伸糸を100℃の熱をかけながら延伸し、140℃でセットし、導電性複合繊維の延伸糸を得た。得られた導電性複合繊維は130.2dtex/28fで、比抵抗は5×10Ω・cmであった。実施例1と同様の方法で帯電ブラシを作製し、電子写真装置に組み込み、画質を評価した。評価結果を表1の実施例3に示した。
【0030】
[実施例4]
実施例3と同様のチップを用いて図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用する代わりに、図3に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率が2:1となるように吐出した。得られた導電性複合繊維は260dtex/50fで、比抵抗は4×10Ω・cmであった。紡糸、延撚条件、及び、ブラシ作製条件は実施例3と同様とし、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込み、画質評価行った。評価結果を表1の実施例4に示した。
【0031】
[実施例5]
ナイロン6にカーボンブラック(ファーネスブラック)を全重量の26wt%となるように、二軸混練機にて溶融混練し、定法によりチップ化し、導電性複合繊維の導電層として使用する導電性ナイロン6チップを得た。導電性複合繊維の導電層に使用される導電性ナイロン6と非導電層に使用されるナイロン6を溶融する温度をそれぞれ265℃としたことと、巻き取り速度を800m/minとしたこと以外は全て実施例1と同様とし、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸は325.0dtex/28fであった。得られた未延伸糸を90℃の熱をかけながら延伸し、120℃でセットし、導電性複合繊維の延伸糸を得た。得られた導電性複合繊維は130.0dtex/28fで、比抵抗は2×10Ω・cmであった。実施例1と同様の方法で帯電ブラシを作製し、電子写真装置に組み込み、画質を評価した。評価結果を表1の実施例5に示した。
【0032】
[実施例6]
実施例5と同様のチップを用いて図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用する代わりに、図3に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率が2:1となるように吐出した。紡糸、延撚条件、及び、ブラシ作製条件は実施例5と同様とし、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込み、画質評価行った。評価結果を表1の実施例6に示した。
【0033】
[比較例1]
ナイロン12にカーボンブラック(ファーネスブラック)を全重量の9wt%となるように、二軸混練機にて溶融混練し、定法によりチップ化し、導電性複合繊維の導電層として使用する導電性ナイロン12チップを得た。得られた導電性ナイロン12チップと非導電層として使用されるナイロン12チップをそれぞれ270℃にて溶融し、図2に示す繊維断面形状で、導電性粒子を含有する導電層と非導電層の繊維断面積比率が2:1となるように紡糸口金から吐出する。吐出した導電性複合繊維を室温の冷却風にて冷却後、油剤を付与し、700m/minで巻き取り機にて巻き取り、273.0dtex/28fの未延伸糸を得る。得られた未延伸糸を80℃の熱をかけながら延伸し、100℃でセットし、最終的に130.0dtex/28fの延伸糸を得る。得られた導電性複合繊維の比抵抗は3×1013Ω・cmであった。得られた導電性複合繊維をパイル長3mm、幅14mmのパイル織として、パイル密度21.7kf/cmのブラシ用基布を得た。該基布に、導電性バックコート剤を塗布し、金属の芯材に両面テープで貼り付け、その後、起毛処理、シャーリング処理を行って、帯電ブラシとした。本帯電ブラシを電子写真装置に組み込み、テスト印刷し、画質を評価した。評価結果を表1の比較例1に示したように、導電性粒子含有率が少ないことから、比抵抗が高くなり、この導電性繊維から作られるブラシを用いては均一な帯電ができないため、帯電ブラシ用途には適さない。
【0034】
[比較例2]
ナイロン12にカーボンブラック(ファーネスブラック)を全重量の85wt%となるように、二軸混練機にて溶融混練し、定法によりチップ化し、導電性複合繊維の導電層として使用する導電性ナイロン12チップを得た。非導電層としてナイロン12チップを用いて、実施例1と同様の方法にて紡糸を行った。表1の比較例2に示すように、数回の糸切れがあったものの、273.0dtex/28fの未延伸糸を得る。実施例1と同様の
方法にて延伸し、130.0dtex/28fの延伸糸を得る。得られた導電性複合繊維の比抵抗は5×10Ω・cmであった。得られた導電性複合繊維をパイル長3mm、幅14mmのパイル織として、パイル密度21.7kf/cmのブラシ用基布を得た。該基布に、導電性バックコート剤を塗布し、金属の芯材に両面テープで貼り付け、その後、起毛処理、シャーリング処理を行って、帯電ブラシとした。本帯電ブラシを電子写真装置に組み込み、テスト印刷し、画質を評価した。評価結果を表1の比較例2に示したように、導電性粒子含有率が高いことからボビン率が低く、紡糸操業性が著しく悪いため、実用に適さない。
【0035】
[比較例3]
導電層に実施例1と同様に作製された導電性ナイロン12チップを用い、非導電層にポリエチレンテレフタレートチップを用いて、図1に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率を2:1となるように吐出した。巻き取り速度を1000m/minとし、得られた未延伸糸は273.0dtex/28fであった。得られた未延伸糸を80℃の熱をかけながら延伸し、100℃でセットした。得られた導電性複合繊維は130.0dtex/28fで、比抵抗は3×10Ω・cmであった。ブラシ作製条件は実施例1と同様とし、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込んで、画質評価を行った。評価結果を表1の比較例3に示したように、非相溶性のチップを用いたことによるブラシ化の際の脱落からブラシ化した際に毛倒れが生じ、均一な帯電ができないため、帯電ブラシには適さない。
【0036】
[比較例4]
実施例1と同様のチップを用いて、図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率を15:1となるように吐出した。巻き取り条件は実施例1と同様とし、表1の比較例4に示すように数回の糸切れはあったものの未延伸糸を得た。得られた導電性複合繊維の未延伸糸は200.4dtex/28fであった。延伸条件も実施例1と同様に延伸を行い、得られた延伸糸は96.1dtex/28fで比抵抗は2×10Ω・cmであった。実施例1と同様の条件にてブラシ化を行い、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込んで画質評価を行った。評価結果を表1の比較例4に示したように、導電性粒子を含有した導電層が繊維断面のほとんどを占めることから、ボビン率が低くなり、紡糸操業性が悪く、実用に適さない。
【0037】
[比較例5]
実施例1と同様のチップを用いて、図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率を1:2となるように吐出した。巻き取り条件は実施例1と同様とし、得られた導電性複合繊維の未延伸糸は420.0dtex/28fであった。延伸条件も実施例1と同様に延伸を行い、得られた延伸糸は200.0dtex/28fで比抵抗は3×10Ω・cmであった。実施例1と同様の条件にてブラシ化を行い、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込んで画質評価を行った。評価結果を表1の比較例5に示したように、導電性粒子を含有しない非導電層が繊維断面の多くを占めることから、この導電性繊維を用いたブラシでは感光体を均一に帯電できないため、帯電ブラシには適さない。
【0038】
[比較例6]
実施例1と同様のチップを用いて、図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率を2:1となるように吐出した。巻き取り条件は実施例1と同様とし、得られた導電性複合繊維の未延伸糸は470.0dtex/28fとなるように吐出量を調整した。延伸条件も実施例1と同様に延伸を行い、得られた延伸糸は224.2dtex/28fで比抵抗は3×10Ω・cmであった。実施例1と同様の条件にてブラシ化を行い、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込んで画質評価を
行った。評価結果を表1の比較例6に示したように、繊度が高いことによって、この導電性繊維を用いて作られるブラシでは感光体を均一に帯電できないために、帯電ブラシ用途には適さない。
【0039】
[比較例7]
実施例1と同様のチップを用いて、図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率を8:1となるように吐出した。巻き取り条件は実施例1と同様とし、得られた導電性複合繊維の未延伸糸は423.0dtex/28fとなるように吐出量を調整した。延伸条件も実施例1と同様に延伸を行い、得られた延伸糸は202.1detex/28fで比抵抗は2×10Ω・cmであった。実施例1と同様の条件にてブラシ化を行い、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込んで画質評価を行った。評価結果を表1の比較例7に示したように、各導電層の繊度が高いことによって、この導電性繊維を用いて作られるブラシでは感光体を均一に帯電できないために、帯電ブラシ用途には適さない。
【0040】
[比較例8]
実施例1と同様のチップを用いて、図2に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用する代わりに、図4に示す繊維断面形状になるような紡糸口金を使用し、導電層と非導電層の断面積比率が2:1となるように吐出した。巻き取り条件は実施例1と同様とし、得られた導電性複合繊維の未延伸糸は410.0dtex/28fであった。延伸条件は実施例1と同様とし、得られた延伸糸は195.2dtex/28fであり、比抵抗は5×10Ω・cmであった。ブラシ作製条件は実施例1と同様とし、得られた帯電ブラシを電子写真装置に組み込んで、画質評価を行った。評価結果を表1の比較例8に示したように、導電性粒子を含有する導電層が繊維表面に露出していないために、この導電性繊維を用いて作られるブラシでは感光体を均一に帯電できず、帯電ブラシ用途には適さない。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
現在、IT産業の一部である電子写真装置の画質向上を目的として数多くの製品、製法が生み出されてきている。本発明はそれら電子写真装置の心臓部である感光体を均一に帯電させることのできる帯電ブラシ、または該帯電ブラシに使用される導電性複合繊維であって、帯電ブラシだけにとどまらず、クリーニングブラシ、中間転写ブラシ等、電子写真装置に内蔵されているあらゆるブラシに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に用いる3領域分離型導電性複合繊維の単糸の横断面図である。
【図2】発明及び比較例に用いる4領域分離型導電性複合繊維の単糸の横断面図である。
【図3】本発明に用いる8領域分離型導電性複合繊維の単糸の横断面図である。
【図4】比較例の海島型導電性複合繊維の単糸の横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1:導電性粒子を含有した導電層
2:導電性粒子を含有しない非導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子を10wt%〜80wt%含有する熱可塑性重合体からなる導電層と該導電層の熱可塑性重合体と相溶性のある熱可塑性重合体からなる非導電層から形成され、該複合繊維(導電性粒子を含有する)導電層が非導電層により複数領域に分離された形状を持ち、かつ、導電層/非導電層の断面積比が3:2〜10:1で、該複合繊維の単糸が7.5dtex以下、さらには導電層の1つの領域の繊度が1.5dtex以下であり、全ての導電層の一部が繊維表面に露出していることを特徴とする導電性複合繊維。
【請求項2】
導電層が導電性粒子を含有するポリアミドで非導電層がポリアミドあることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
【請求項3】
導電層が導電性粒子を含有するポリエステルで非導電層がポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
【請求項4】
前記導電性複合繊維の比抵抗が10〜1012Ω・cmであることを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
【請求項5】
前記導電性複合繊維の導電層が導電性カーボンブラック粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
【請求項6】
前記導電性複合繊維の導電層が導電性皮膜を有する酸化チタン粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の導電性複合繊維。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された導電性複合繊維を接触子とする電子写真式画像形成装置の接触帯電ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−97146(P2006−97146A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281295(P2004−281295)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】